○犬丸
説明員 今の局長のお話を補足いたします。大體局長の今の御
説明で盡きておるのでありますが、この
研究發掘が行われました動機を申し上げておきたいと思うのであります。
新聞で非常に
研究費が足りないということを書いておりますが、なぜ
文部省が五萬圓しか出さなかつたかということを、私から御
説明しておきたいと思います。
それはこういうわけでございます。さつき局長も申しましたように、
昭和十八年に、住友金屬工業の工場を建てる場合に、工事をした
場所から偶然木器が出たのがその端緒であります。當時は戰争中でありましたので、ただ静岡市の郷土史
研究家が中心になりまして、多少ほかの者がはいりましたが試掘をしたのであります。その後戰争がだんだん激しくなりましたので、とうていその發掘か行われなかつた。ところが戰争が濟みましてから、考古學者の一人がこれを思い出しまして、戰争も濟んだことであるから、これを繼續してや
つてみたい。しかしこういう食糧難であり、また經劑難のこういうまだおちつかないときであるから、なかなか大規模にはとてもできないであろう、そこで試掘の
程度でや
つてみたいということでありまして、
文部省の方にそういう希望を申してまいりました。當時突然のことでありましたから、もちろん
政府に登呂
遺跡試掘のための
研究費はあるはずがありません。たまたま
政府が、廣い
意味で科學
研究費という
豫算を計上しておりましたから、その中の一部分をも
つてこれを行うならば、その
研究者の目的に副うことができる。そこでその
研究費を出してくれという
意味の希望を申し出ることを勸めたのであります。そのときの
研究者は、これは試掘であるからその多額の金は要らない、せいぜい五萬圓もあればいいだろうということであつたものですから、その計畫を立てて、これを申請してきたわけであります。
文部省はこれを
決定する前に、學術
研究會議に設けました專門學者をも
つて組織した科學
研究費
審査委員會の
審査を經て、そうして
決定したのであります。
審査委員會はこれを全願承認いたしました。
國家の
研究費はなかなか思う
通りの
豫算が
通りませんので、大抵の場合は
削減を受けるものでありますが、この登呂の發掘
研究費につきましては、ほとんど例外的に全額を認めたわけであります。そしてこれが
決定した。そうすると地元の縣と市でも、
國家がそういう
研究費を出すならば、これは地元のことであるから、われわれも援助したいというので、
國家と同額の五萬圓ずつがあとから寄附になりまして、合計十五萬圓に
なつたのであります。
從つて初めは
研究者の方でも、この
程度の金で十分であるという見込みでとりかかつた事業であつた。ところがや
つていきますうちに、だんだんと豫想以上に規模が大きいこともわかり、また物價が上
つてまいりましたり、豫想以上の人員が參加を申込んで來ましたり、そういうことでだんだん金がいるように
なつたのであります。しかし今年の計畫においては、初め
研究者が計畫した
通り、
研究程度の發掘は行われたのであります。それで
新聞に、金がないためにあれをまた埋めるのだという記事がでましたけれども、あれは決して、そうではないのでありまして、ただあとそのままにしておきますと、
通りがかりの人がいろいろ自己的興味から、せつかく發掘したところを傷めるようなことがあ
つてはならないというので、五寸くらいの厚さで土をかぶせておくということでありまして、せつかく掘つたところを埋めてしまうような記事がありましたが、決してそういうことではないということを申しておきたいのであります。そしてあとは静岡縣の方で史跡に假指定をいたしまして、これを損うことがないような法的處置をとることにな
つて手續を進行中であります。それからこの
研究報告として、十一月上旬に、登呂
遺跡發掘調査會、國立博物館、
文部省の人文科學
研究課が三者共同主催で上野の國立博物館の會場を利用いたしまして、後援會竝びに發掘した遺物の展覧会を行う豫定であります。それで、これらの
請願者からも
請願がありました
通りに、
日本古代の
文化と集團生活の科學的
研究をなす上に、大いに寄與をなすものでありますから、
國家として引續き援助をしなければならぬと考えまして、局長の御
説明しましたような
豫算を組んでおるのであります。この
遺跡は住友金屬工業の工場を造るときに工場建設のために二メートルの高さにわた
つて地盛りをしております。その地盛りの下が
遺跡のある所であるから、その地盛りを掘る金はほんとうの
研究費でありませんので、
文部省はほんとうの
研究のための
豫算を計上して、地盛りをとるための金は全體の三分の一近くの金を占めておりますから、これはいわゆる公共事業費の
豫算で要求してもらいたいと考えております。これにつきましては、地元の縣とも
相談してございます。縣もそのようにしたいということで話合いがついておりますので、そういう方向に進むと思います。なお御
質問がございましたら
お答えいたします。