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1947-08-19 第1回国会 衆議院 文化委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十二年八月十九日(火曜日)     午前十時五十三分開議  出席委員    委員長 福田 繁芳君    理事 佐藤觀次郎君 理事 最上 英子君       猪俣 浩三君    榊原 千代君       馬場 秀夫君    原 彪之助君       森山 武彦君    高橋 長治君       並木 芳雄君    奥村 竹三君       佐々木盛雄君    田口助太郎君       竹尾  弌君    木村  榮君  出席國務大臣         文 部 大 臣 森戸 辰男君  出席政府委員         文部事務官   柴沼  直君     ————————————— 八月十一日  神橋改修に關する請願(船田享二紹介)(第  一〇九號) の審査を本委員會に附託された。     ————————————— 本日の會議に付した事件  史跡名勝及び天然記念物等に關する國政調査  承認要求件竝びに委員派遣承認申請の件  新日本建設國民運動竝びに文化省建設問題につ  き意見交換     —————————————
  2. 福田繁芳

    福田委員長 これより會議をひらきます。お諮りいたします。本委員會調査事項として所管事項のうち、史跡名勝及び天然記念物等に關する事項を取り上げまして、規則第九四條により國政調査承認を得たいと思いまするが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 福田繁芳

    福田委員長 御異議がなければさよういたします。  なおただいまの國政調査に關しまして、先日の本委員會打合せ會等におきまして調査檢討中登呂遺跡發掘に關しましては、委員より、現地に赴いて實地に調査したいとの御要望がありますので、この際規則第五十五條により委員派遣いたしたいと思いまするが、これまた御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 福田繁芳

    福田委員長 それでは派遣の期日は八月二十二日、二十三日兩日と定めまして、本委員會より委員七名の派遣方を申請いたすことにします。  これにて、文部大臣の都合によりまして、午後二時まで休憩いたすことにいたします     午前十時五十五分休憩      ————◇—————     午後二時四十二分開議
  5. 福田繁芳

    福田委員長 休憩前に引續き會議を開きます。  これより先に政府より發表になりました新日本建設國民運動に關しまして、文部大臣より發言を求めておりますので、これを許します。森戸國務大臣
  6. 森戸辰男

    森戸國務大臣 新日本建設國民運動につきましては、すでに政府が要領を發表しておりまするので、皆様はその大綱については御存知のことと思うのであります。  その趣旨とするところは、政府は今日の事態が容易ならざる危機に直面しておるという見地に立ちまして、四黨政策協定をいたし、さらに連立の政府をつくつたのでありますが、この危機は容易ならざるものであり、さしあたり、最も直接的には經濟的危機がそのままに捨ておけない状態であるという事情に鑑みまして、經濟危機對策を發表し、續いて諸種の領域にその具體化を策しておることは御存じの通りでありますが、この經濟緊對策は、ただ政策として政府がこれを立てたということにのみならず、これが現實に行われるためには、國民がこれにふさわしい心構えをもたなければならぬという見地に立ちまして、この經濟緊對策と表裏いたしまして、新日本建設國民運動を提唱したというのが直接の動機であります。  しかし、もつと根本的に申しますれば、戰爭に負けた日本の再起は、古い日本をそのままに復活させることだけではいけない。新しい日本建設されなければならない。その方向民主的革命という方向一つでありますと同時に、それほどはつきりはいたしておらないが、しかし經濟面においても、個人的利益追求に放任した經濟組織では、この敗戰日本危機は切り抜けられない、こういう建前から計畫經濟と、また公共の利益を私の利益以上に高く評價する經濟原則によつて、この危機が切り抜けられなければならないという見地に立つて、この二つの大きな政治的、經濟的變革による新しい日本建設は、同時に、これに表裏した精神的、文化的な變革が行われないと、十分なる效果をあげることができない。いくらよい科學的な政策をたとえ政府が權力をもつてこれを強行いたそうとしても、國民の各自の心構えがそれと矛盾するものであつては、その效果をあげることはできないと思う。從つて、實は政治的經濟變革がその效果を収めるためには、精神的、文化的な變革が、それに照應するのでなければならない。さらにこのことが必要であるのは、明治以來、新しい日本が建てられた過程を見ますと、その重點をおいたところはいわゆる富國強兵で、軍國主義建設資本主義建設という點にあつて、この點では、百年足らずの間に日本のなしたところはまことに大きかつたので、世界文化西洋文化からとり殘された日本が、この小さな資源のない島國で、百年足らずに大體資本主義においても世界一流の國に算えられ、軍國主義においては世界の先頭に立つということになつたのであります。その善し惡しは別として、大きな一つ目標への到達があつた。かような富國強兵に力を入れた反面には、精神的、文化的の側面が非常に經く見られておつたという問題がある。西洋では政治的、經濟的變革に先だつて、あるいはそれに表裏して、たとえば文藝復興とか、宗教改革とか言う精神面文化的な大きな變革があつたのでありますが、日本にはそれがなかつたので、あたらしい日本建設においてはそのことが非常に大きな障害となり、新しい日本建設においては、このことが特に留意されなければならぬと思うのであります。そこで新しい日本建設か要望しております政治的、經濟的變革と竝んで、私どもはそれにふさわしい精神的文化的なる變革を行つていかなければならぬというところにこの運動の根本的な性格があると考えられるのであります。  かような運動としてこの運動を提唱いたしました場合に、三つの點を私ども考えに入れたわけであります。第一はこの運動がいわゆる精神運動、あるいは道義運動となつてしまつて、實際的の生活から遊離したものになつてはならないということであります。從來戰前及び戰時にかけて、政治はいろいろな形で精神運動道義運動を行いましたが、しかし一時的な效果はありましたけれども、結局は國民の反感すら買つた場合もあるという状況であります。私どもはその覆轍を再び繰返さないようにいたさなければならぬと思います。  第二の點は、この運動政府運動であり、いわゆるお上運動である。あるいはもつと惡いのは、いわゆる官僚運動であるという形になつてはならない。從來運動は、しばしば精神總動員運動といわれておりまして、戰爭目的のために、物資、勞力を動員したのに伴いまして、人間の心をも戰爭の目的に動員するために、いわゆる精神運動が行われた。こういう運動であつてはならぬとわたしどもはかんがえます。むしろ、これは國民の間から盛り上る運動でなければならぬと思うのであります。もちろん、現内閣は國民大衆の支持の上に立つておる民主政府でありまするから、それが先になつてなしたといつても、官僚運動ではございませんけれども、五月三日から新憲法が行われ、新國會をもつようになつた國としては、民社的な政治を立て、民主國民である本質を發輝いたしますためには、國民の間から盛り上がる運動に、新日本建設目標を立たすというのが本筋である、こういうふうに考えたのであります。從つてどもは、この運動國民の間からわき上がつてくる運動でなけれぱならぬと考えたのであります。  第三の點は、この運動畫一的運動であつてはならぬ。從來のいわゆる精神運動は、お上が定めた、政府の定めたものを運動の基準といたして、無理押しにこれを押しつけた形でありますが、國民職域には、宗教もあれば勞動もあり、また體育もあれば經濟もあるというように、いろいろなその職域における性質の異なつた團體に、畫一的目標を課するということは無理な所があり、運動を自然な形で發展せしめることは困難であるという考えから、私どもは、これらの運動畫一的運動であつてはならぬと、こういうふうに考えます。政府は七つの目標を掲げておりまするが、この運動は必ずしもそういう目標をすべてもたなくてはならぬとも、そのうちの必ず一つをもたなければならぬとも考えておらぬのであります。實際に生まれた運動が、その運動にふさわしい具體的目標を掲げて發展せられれば、かようなもろもろ地域職域における運動が、立體的な多面的なものとして、全體として活き活きとした國民運動になることが望ましいのではないか、こういうふうに考えたのであります。そして、こういう形の運動が、私どもは新しい日本建設のための民主政治のもとにおいては、最も望ましいものであり、かような運動政府の施策として並行していくことによつて、このわが國の立つている重大な危機が突破され得るのである。そうしてこの突破の上に新しい日本建設可能性も存しているのである。こういうふうに考えたのであります。  そうしてこの運動の要項がきまりまして、六月二十七日には首相官邸各種團體をお招きしてこの趣意を發表いたしまして、諸團體の奮起を願うということにしたのであります。これが第一囘に國民に訴えたところであります。その後各種の職種また地域において、かような運動が起こることを望む意味協議會を開いたのであります。七月三日には婦人團體のお集まりを願い、また七月二十一日には宗教團體のお集まりを願い、七月二十七日には青年團體のお集まりを願い、さらに二十九日には第二囘の婦人團體のお集まりを願い、八月二日には京都で京阪神の諸團體のお集まり願つて協議會を開きました。なお婦人團體はさらに八月八日に第三囘の會合を開き、青年團體は八月十六日に第二囘目の會合を開いていただいた。こういうような順序で各團體にお集まり願つて、この運動趣旨説明して、各團體において、自主的に新日本建設國民運動が展開せられるように、實は政府としてお願いをしつつある次第であります。そしてかような政府の要請に應じてだんだんと國民運動が諸地域職域の間に起る機運にあるようであります。社會黨の提唱いたします新生活運動は、諸團體協力を得て發生するような準備がすでに整えられたのであります。婦人團體青年團體の間でも、そういう準備をなされているようなわけであります。また他面では、農業復興會議救援米醵出運動を展開しつつあるという状況でございますし、漸次政府は各地域においても國民運動の必要を説いて、諸地域でかような運動が展開せられることを期待しているという状況であります。私自身もできるだけの機會を利用してこの運動の必要を、各地方で實は國民に訴えているのでありまして、先ほど申した京都にまいりましたついでに、大阪、神戸において國民運動の會を新聞社主催で開かれたのであります。なお廣島の平和祭に列席しました際には、廣島縣の福山市、尾道市、三原市、呉市等では、市の主催國民運動講演會が開かれましたし、また一昨日は千葉縣の東金、成東、片貝等の町の主催國民運動講演會があつつて、私も出席をいたしまして趣旨説明したような次第であります。實はかようにしてこの運動國民の間から起こつてくることを、私どもは期待しております。特にこれは國會皆様のご協力によりまして、國民の間に、みずから進んでこの危機を突破するという心構え、各黨各階級を越えた祖國再建のの意欲と熱意とをもつた運動が起ることによつてのみ、この危機は突破されるのではないかと存じます。殊にこの問題については、多くの關心をもつておいでになりまする文化委員の方々に、力強き御協力を願いたいと思つておる次第であります。
  7. 福田繁芳

    福田委員長 ただいまの新日本建設國民運動、あるいはまたわが委員會所管中のことについて、文部大臣にいろいろ御質問があるようでありまするが、委員會運營上、もう一つ併せて、本日は文部大臣が御出席でありまするから、御答辯あるいは御所見がありますればお願いいたしたいと思うのでございますが、實は過般來しばしばわが委員會の中におきまして、文化省を設置したらどうかという御意見が相當出ておるのでございます。これに對して文部大臣、何か御意見がありますれば、承れれば結構と思います。
  8. 森戸辰男

    森戸國務大臣 實は今日の文部省は、その起こりからいいますれば、教育中心に、特に學校教育中心に建てられたものでありますから、從つて文化——文化解釋もいろいろありますが、廣い意味でなく、狭い意味文化に限つて申しますると、文化の育成ということとは、非常な交錯はいたしておりまするが、役割も違つた所やねらわれておる點も存在しておるのであります。そこで從來文部省中心としてやつておるところと違つた立場から、文化ということにおもな目あてをおいた行政廳をつくることが考えられるのは、理由のあることであると存じます。ただそれを文化省という文部省と別なものにするか、あるいは文化院という文部省の外局的なものにするか、あるいは文部省の中の文化局という一局にするかという點については、いろいろな意見があるのであります。文部省におきましては、文化院という外局的なものを設けるというような一つ考え方も存在しておつたのでありまするし、また私どもも、文化院という形にするか、あるいは文化局という形にするか、從來この問題は社會教育局という局で取扱われておつたのでありますが、社會教育局教育中心とした觀點のみでそこに重點を置いて取扱うのでは、狭い意味文化を育成していくということには不十分ではないであろうかということが考えられておるのであります。あるいはこの點をもう少し徹底して、それでは文部省より獨立した文化省を設けるがいいではないかという考え方も成り立つのでありますが、實は文化教育ということは、中心をいえば、異なつた所に重點が置かるべきであるという面もありまするが、他面では交錯した面が非常に多いのでありまして、從つてこれを文化省と獨立な一省として設けるという點には、多くの疑點がありはしないかとも考えられるのであります。そこで文部省の中に外局として設けろということが考えられたのであります。あるいは、それはどの程度に豫算等でいかないならば、社會教育局からわかれて、文化局というような一局を設けることが、現実の諸事情から、それに即した解決として考えられるのではないか、こういうふうにも考えられておるのでありますが、まだ省として具體的な方針がきまつておるのではないのであります。かような状況であります。
  9. 福田繁芳

    福田委員長 委員諸君に申し上げます。ただいま森戸文部大臣より、文化省設置問題に對する御所感があつたわけでありまするが、ちようど文部大臣出席のこの機會に、わが文化委員會所管事項にわたつて文部省關連事項に對して御質問を許したいと思います。御發言を願います。
  10. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 文部大臣ちよつと御所見を承りたいと思うのでありますが、日本平和維持のために、またさらに進んでは世界平和の維持確保というために、世界平和の維持の成否のかぎが國際連合部門によつて握られておるといつても過言ではないと思いますが、それと表裏一體をなすものは、つまり國際連合教育科學文化機關、つまりユネスコであるということは御承知の通りでありますが、われわれはこの國際連合竝びにユネスコへの贊加の一日も速やかならんことを熱望しておるのであります。しかし現下の國際情勢などから見まして、國際連合への急速な加入と言うことは容易に望むべくもないのでありまするが、ただそれの裏づけをなすところのユネスコ、これへの參加は、このユネスコ憲章などを讀んでみますと、國際連合の非加盟國にしても、なおかつ執行委員會紹介があり、總會の三分の二の贊成があつたならば、實現できるような規定も見えるようであります。われわれもまた、このユネスコへの參加の一日も早くできるよう、それによつて世界平和維持のために、教育文化科學等を通じて、一日も早く貢献するときを望むものでありますが、文部大臣はこのユネスコ參加の見透しなり、それに對する御感想を、どんなふうに御考えになつているかということをお聽きしておきたいということを申し上げ、さらにもう一つは、いずれにいたしましても、このユネスコへの參加の前提となしますものは國内の協力團體の十分な態勢を整えるべきではなかろうかと考える。從つて一日も速やかに他日ユネスコへの參加態勢を備えて國内にそういう委員會をつくり、その受入態勢をつくり、それによつて促進する必要がありはしないかと考えますが、これらに關する文部大臣の御所見をお伺いいたしたいと存じます。
  11. 森戸辰男

    森戸國務大臣 ただいまユネスコに對する御質問がありました。私ども新しい日本は、憲法にも定めてありますように、平和主義民主主義とを二つの大きな目標といたしておるのであります。そしてわが國は、軍國主義を一擲して、平和國家として、一日も早く行われるには、日本平和國家としての態勢を備えていかなければならない。この點で民主主義については、諸團體、諸運動が多くその目標に向かつて努力をいたしておるのでありますが、平和主義については、實はそれほど顯著な運動日本國民の間に起こつておらぬのであります。軍國主義戰爭によつてこれだけの慘禍を受けて、憲法でも明らかに平和な國として立とうとする日本國民の間に、この平和國家としての、平和日本としての準備運動とが十分に展開されていないということは、私はきわめて遺憾なことであると存じております。これは御質問あられた方と、私はまことに同じ見解をもつております。  そこで、平和主義の展開については、いろいろな方法があると思いまするが、私は教育文化科學のめんにおいて、諸民族、諸國が互いに提携をしていくということが、實は國際平和をもつてくる上の重要な基礎條件であると存じておるのであります。私どもは、できれば國際連合が、平和會議の後に國際連合に加入できるという名譽を與えられるに先だつて、實はユネスコ參加することを許されることが、私どもにとつてはこの上ない仕合せであると思いますし、また世界の平和にとつても、重要なことであると存じておるのであります。ただそれの許容ということは、連合軍あるいはユネスコ團體の人々の日本に對する認識度によることであると存じまするが、われわれといたしましては、國家國民も、できるだけユネスコ參加し得るような態勢を整えていくことが必要であると存じております。それで、政府といたしましても、渉外關係においては、外務省、竝びにまた教育文化科學等行政を扱つております文部省とが協力いたしまして、これに參加し得る國内の態勢を整えたいと思つて、そのような準備に歩を進めておる次第であります。同時に、このことは政府だけがすることではない、民間團體においても、これに即應するあるいはこれを鞭撻するような仕組のできることが、きわめて適切であろうと存じておりまして、もろもろ團體がそういう意圖をもつてユネスコ參加促進の運動を起されることも、きわめて適切なことであろうと存じております。私個人として關係いたし、委員長の職を得ております民主外交協會も、この點に著目いたしまして、不日民間團體にお集まり願つて、かような問題の御協議を願いたいと存じておるような次第であります。
  12. 竹尾弌

    竹尾委員 民主主義革命實現ということにつきましては、各方面で非常に強くまたいろいろな御意見が出ておるようでございます。今、文部大臣も、民主革命を徹底させるというお言葉がございましたが、これにつきまして、わが國で行わるべき民主革命方法と内容につきまして、概略の説明をしていただきたいと思います。これは政府の責任ある立場としてお願いいたしたい。具体的には、一つ政治的經濟的變革の問題と、それから政治文化的な變革の問題を通じて、大體の御説明を願いたいと思います。  それから第二は、今民間で行われようとしておる政府主催精神運動についても、文相は、畫一的運動であつてはならない、これは下から盛り上がるべき運動であるというお言葉がございましたが、そういうお言葉は、終戰前からわれわれは何囘となく聽かされておりますことで、はたしてこれが下からどういうふうにして盛り上つていくかというような點につきましては、相當私は疑問をもつておりまするそこで文教及び文化方面の擔當者といたされまして、そうした文化活動に對して、大體どういう考えをもつておられるか。これはここに猪俣委員もおられますが、森戸文相は、日本文化人連盟理事長に御就任されたとき、その席上でも私お話したと思いますが、日本民主化日本農村民主化絶體條件にするという大きな問題にぶつかつておるときに、私どもはどうしても農村文化具體的に進めなくてはならぬということを毎日考えておりまして、その具體的方向を實は考えておるのですが、そういうときに文教當局としては、指導してはいかぬ——つて農村指導に當るべきであつたでありましようが、あの映畫をもつていく、映畫で農村文化を進めたいというようなことで、あるいは移動映畫連盟でございましたか、あるいはまた移動演劇連盟というような、文部省外郭團體ができておつたのですが、そういうことをしては相ならぬということで、補助金も何も取り上げられたというようなことを聞いておりまするが、今後そうした方面當局としては指導していかぬのかどうかというような具體的な面を、最後にお尋ねいたしたいと思います。
  13. 森戸辰男

    森戸國務大臣 ただいまの御質問の第一點、民主革命の大きな方向は、どういう所にあるかということでございますが、大體私は政治的面經濟的面と、そして文化的面において、それぞれ民主的な制度が、また民主的な心構え實現されることが必要なことである。こういうように考えておるのであります。政治的面におきましては、日本憲法が、大きな方向においては、天皇が統治權總攬者であつた日本國柄が、國民主權となつた國民に主權が移つたというところに根本の變化がありますし、さらにこの國の大きな變化に照應して、家においても、殊に男と女、また子供と親との間に大きな民主的な正しき建て直しが行われておるというところに、大きな方向があるのじやないかと思います。その他地方自治あるいは裁判、財政その他の面にもあるのでありますが、大きなところは私は社會的にみてそこにあるのではないかと思います。  第二の經濟的の面は、從來の働く者、また貧乏な者が、經濟生活の主體とならずにむしろ對象となつような形であつたのでありますが、しかし經濟生活國民の協同的な基礎の上に築き上げるべきものであつて、最も中心的なものは國民の共同の利益だという點、そういう點に實は民主的革命中心がおかれなければならぬのではないかと見ております。  さらに文化的側面におきましては、先ほども申しましたように、日本文化は、いわゆる文藝復興も、宗教改革も、十分な形では經由することなしに、實は人間の心の深甚な變革なしに近代國家にはいつてきて、從つて封建的中世的なものが、なお精算されずに國民の心に相當殘つておるのである。かようなものが正しい形において精算されるとともに、また資本主義がもつてきた側面においても、また過ぎ去つたいろいろな弊害が顯著に存在しておりますので、こういうような資本主義文化がもつてきた多くの弊害をも克服していこうというところに目標があるのではないかと存じております。  それから第二の點でありますが、一體、精神運動國民がやつてもらわなければならぬので、政府が直接に先に立つてやるのではないということを言うが、一體そういうことでこの運動ができるかどうか、こういうお話で……。
  14. 竹尾弌

    竹尾委員 大體そういうことも質問一つでございまして、その指導を大體法的な……。
  15. 福田繁芳

    福田委員長 竹尾君に申し上げます。いちおう大臣答辯を聽かれて、それでなお足らないときには、改めて追加質問をしていただきたい。
  16. 森戸辰男

    森戸國務大臣 つまり政府國民の間に日本建設運動が展開せられることが望ましいので、政府は、先に立つて政府運動としてこの運動はやらないと言つたのでありますが、そういう形で、一體日本でこの運動の目的が達せられるかどうかと、こういう御質問のように思つたのですが、そうでございますか。
  17. 福田繁芳

    福田委員長 どうぞそれでやつてください。
  18. 森戸辰男

    森戸國務大臣 それはある點私はごもつともな點があると思うのであります。たとえば、中國における新生活運動は、實は當時の政權をとつた國民黨の政府が先に立つて展開した運動であつて、當時の中國の民衆の文化程度からいつても、そういうことが必要であり、また一黨の獨裁であつた蒋介石政府においてはそれが可能であつたと思うのです。ところで日本の今日、しかも民主主義國家として五月三日から初めて發程をした日本としては、私は日本民主主義を育てるためにも、こういう運動國民の中から起こつてくるようなふうに、あらゆる形で國民にこの運動の喚起を促すということがいいのであつて政府が眞先に立つてこの運動をやるということは、民主主義國家として發程し、そういうことで新しい國が興ろうとするときには、實は遠慮した方がいいのではないかと私ども考えたのが、この運動政府運動とせず、國民運動として起ることを期待しておるゆえんであります。この點につきまして、都會におきましてはある程度そのことが可能であろうが、殊に農村におきましては、農村文化事情から、あるいは政府が積極的に先に立つてつた方がいいのではないかという意味の、後からの含みのあるお言葉であつたと思うのでありますが、それもまた非常に理由のあることと存じますけれども、しかし同時に今日農村におきましても、ようやく民主的な力が興つてきておりますし、またそれには多くの期待をかけていいと思いまするので、私は農村においても、そういう自主的な運動が特に青年層の間に起つてきて、そしてこういう運動が新しい日本建設を擔うというふうに導く、そういう空氣をつくることが、日本の門主國家的な形體をつくるのには最もふさわしい努力ではないかと存じておる次第であります。
  19. 竹尾弌

    竹尾委員 文部大臣のお言葉は非常に御愼重を極めまして、いろいろ含みのほども、大體わかる點もございますが、もう少し、いわば露骨に、具體的に御返答を願いたいと思つておりますのは、第一に民主革命の内容といたしまして、政治面においては、新憲法云云ということをおつしやられて、そして主權在民というようなお言葉に飜譯されると思いますが、承るところを私流に解釋すれば、今まで今世デモクラシーとして定義されて來たような内容を實現するのだ、こういうふうに私は今のお言葉ではとれますが、それでよろしいかどうか、お答え願いたいと思います。  それから第二番目に、經濟面におきまして國民の共同の利益をはからなければならぬというところに主眼を置かれる、こういうお言葉でございましたが、國民共同の利益云々ということは、從來何囘も叫ばれて來たところでありまして、そうした利益を運ぶところの經濟組織をどうするかということが、やはり民主革命といわれる以上は、そこに一つ變革がなければならぬと思いますので、そうした變革をどういう方向へもつていかれるおつもりでございましようか、そういう點を一つお答え願いたいと思います。つまり、はつきり申し上げますれば、資本主義制度を否定されていくのか、社會主義經濟を實現されるとなればどういう程度の、いわゆるソーシヤル・デモクラシーで行かれるのか、そこは學者である文部大臣のことでございますから、いろいろお考えがございましようが、そうした經洲的變革方向を、もつと具體的にお返答を願いたいと思います。
  20. 森戸辰男

    森戸國務大臣 第一のデモクラシーの問題でありますが、これは近代デモクラシーとおつしやられても、それで適當であると思つております。家と國とが近代的デモクラシーにふさわしいような組織になるということが、私はわが國という一つの歴史的な場の上に、また日本の民族という一つの主體が、この近代デモクラシーを實現していくという制約があることは、申すまでもないことであります。  それから第二の點につきましては、私、國務大臣としてお答えし得ることは從來の、個人が自分の利益を追求する、それに任せておけば、それで國が榮え、經濟が繁榮していくという建前は、根本的に改められなければならない。そしてそれは個人の勝手にやらすのではなくて、人間の理性に基づき、科學的、總合的な經濟計畫ということが、經濟の一つの重要な基礎にならなければならない。そしてそれを遂行するまでは、個人利益ということは無視できないけれども、しかし個人利益が万能でなく、それよりも上に共同の利益ということが置かれなければならない。こういう建前から今日の經濟の變革を現政府はとつておる、こういうふうに御承知願いたいのであります。私の社會黨の一人としての個人的の考えは、別の機會に申し上げます。
  21. 田口助太郎

    ○田口委員 文部大臣にお伺いいたしますが、まず一つは、先ほど大臣から、文化省あるいは文化院の問題につきまして、文部省中心に、院なり局なりつくるような方向に努力されているやに聽いたのでありますが、われわれの考え文化院といたしましては、そういう考え方はもつておらないのであります。現在文化の問題は各省にまたがることが非常に多いのであります。たとえば觀光事業をみましても、これらの觀光事業あるいは觀光地帶の構想は、自然美の中に總合した文化を入れる、あるいは人工美の中に總合した文化を取入れるというような觀點からいくべきではないか。そのためには、現在鐵道省が觀光事業を主としてやられている、あるいは國立公園は厚生省でやつている、その他史跡名勝、國立美術というようなものは文部省でやつているというようなことでなく、觀光事業そのものを總合的に取上げてしかもこれを日本文化の象徴として諸外國に見てもらうというような場合においては、實に不便であり、セクシヨナリズムの幣にたえられない場面があるので、われわれは、文化省という構想は、一文部省ではだめだから、これを切り離して、文化省なり文化院なりをつくりたいというのが希望でありまして、決して文部省だけでやることを希望しておらないのであります。もし、かりに文部省でやるといたしますならば、院にしても局にしても、觀光事業というようなもの、あるいは國立公園というようなものまで、全部各省が文部省に任せるように、閣議なりその他で決定できるかどうかというような見透しもお聽かせ願いたい。もしそういうことができ得ないならば、われわれとしては、文部大臣考え方が違うということを申し上げます。  それから新生活國民運動について大臣の御所見を承りましたが、これが政黨政派を超越して展開しなければならないというのが、現在の日本のあり方であることは、私もまつたく同感であります。しかもその重點が現實と遊離しないようにということも、まつたく同感でありますが、しかし政治面、文化面などにおいては、理想がなければ發展しない。ただ單なる廢墟の中、貧しき生活の中から文化をまけといつても、それはできない。それは精神的に虚脱状態に陥り、昏迷に陥る。今、日本國民に一番缺けているものは、理想がないという點も相當あると思いますから、現實と理想というものを、相當調和した考え方でなければならない。いたずらに現實のみを見て理想を捨てるという考え方も、よくない考え方ではないかと思います。また畫一運動はとらないということも、非常に贊政でありまして、これは從來官僚が小さな頭から考えて、これを押しつけるような官僚的な指導ということは、われわれも反對であつて大臣と同じ考えであります。しかしながら、現在の日本經濟的基礎から考えて、下からの自由に盛り上がつてくる力がわいてくるかどうか。現在一般國民大衆は、その日の糧にも困つている、また指導者が指導せんとする場合においても、やはり經濟的な問題にぶつかる。あるいは農村文化運動などは、低俗なる、いわゆる隈變な芝居や歌で終つてしまうのではないかというような危險も、相當あるのではないかと私は思われます。そこで運動方法として、官僚が何も畫一的にする必要はない。國家はある程度力を入れて、具體的な資料を提供する。こういう方法政府はいいと思うのだがどうかというような、資料を提供する程度の目標を與えることも一つ方法であらうし、また政府がやらずして、各種團體に国家の豫算から物質的援助を與えて、そうして下から盛り上がる力を結集せしめる、あるいは活かすようにする。でない限りにおいては、ただ掛聲に終る危險が相當に濃厚にあらう。國家は下からの力を待つということはね非常に結構であるが、しかし、その待つにも、ある程度の呼び水が要る。あるいは經濟的な援助を與える、資料を與えるという面まで國家が乘り出しても、決して從來のような大政翼贊運動に堕せずに、民主的に運營することが可能であると考えておりますが、この點に對して大臣の御所見を、もう一遍承りたいと思います。
  22. 森戸辰男

    森戸國務大臣 ただいま文化省の問題で、どうも文部省中心考えては困るので、もつと廣い見地から考えなければならぬ。たとえば、觀光事業などは各省にわたつておるので、從つてこれを文部省的な見地でのみ扱うということであると、なかなかこの事業はうまくいかないのではないかという意味の、第一の御質問であつたと思います。これは非常にごもつともなことでありまして、實はいろいろな現象、殊に文化現象はいろいろな面があります。殊に觀光事業のごとく自然的經濟的な面のよけい含まつた事業は、實は文部省一つに集中することは困難であります。たとえば、教育という面でもそうであります。不良兒等の教育ということになりますと、司法省の保護院の關連もありましようし、また厚生省との關連もありまして、その歸屬もいろいろ問題になるのであります。しかし殊に觀光事業というのは、大體においては文化の限界線、グレンツにあるのではないか。文化省ということであると、その重點は觀光事業ということよりは、もつとほかの面に重點があるので、觀光事業はその外側にあつて、たとえば運輸交通、あるいは保健厚生というような面と境を接する所にあるのでありまして、これの歸屬は、理論的の見地から、あるいは實際的の見地からいたしましても、どこに屬しても無理な點があるので、多少これはどこかが辛抱するか、あるいはそれだけは別の所でやるということにならざるを得ぬのではないかと存じております。文化自身ということになりますと、こういう外側の文化問題ではなく、中心的な問題になりますと、純粹な文化の育成ということと、教育ということとの二面であつて、この二つは共通する領域が非常に多いので、一つの形の異なつた面として取扱われることも、相當理由のあることではないかと私は考えておるのであります。これが第一點に對するお答えであります。  第二點に對しては、國民運動は、一面かなり現實面に即して、理想という面を忘れておりはしないか今日の國民危機に對する心構えをつくつていくのには、理想というものも非常に必要であるというお考えであります。これはまさにその通りであると存じております。しかも新日本建設という運動は、それ自身の中に高い理想をもつておるのではないか。新しい日本が、勞動を尊重する民主的、平和的文化國家でなければならぬというのが、新しい日本のわれわれに課せられた姿であります。しかもこれはおそらく昔から哲學者や政治家の考え國家理想の中では、最も優れた國家理想と斷言してはばからないものであろうと思うのであります。ただ從來はこの理想が、現實の政治家からは、それは夢のようなことだ、ユートピアだとして排斥されたものが、敗戰の日本では、宿命的な事態の結果ではありましたけれども、現實の目標として取上げられた新日本の姿は、勞動を尊重する民主的、平和的な文化國家でなければならぬという約束のもとに、新日本建設が行われておるので、この運動の展開は、この理想を常に國民の前に掲げていくものでありますので、その點では私は御心配はないのではないかと存じております。  その次の點は、むしろそれとは逆に、この運動には物質的な援助、あるいは基礎が必要ではなかろうかという御質問で、これは私はきわめてごもつともな御質問であると存じております。殊に貧乏で食うに困つておる國民の状態ですから、新しい運動をするにも、早い話が、金も要れば、事務所も要れば、いろいろなものが要りますので、實はこういう點では、できるだけ政府がこれを援助するということも、その運動趣旨に反したことではないと私は思つております。ただこの運動を提唱いたしましたものとしては、眞先に集まつた人から、政府はいくら補助してくれるのか、それができなければどうも運動はできぬというような質問をしばしば聞くので、私はそれはどうも昔の運動と同じような形になる。在來の運動が、大體精神總動員等、まず政府で金をもらつて、それから始めるということであるが、實際みんな運動を手辯當でもやつて、こういうところに金が足らぬのだということであれば、できるだけわれわれはあらゆる形で考慮したい。まず金はこれだけ出すから、それで運動をやるようにと言う形はとりたくないと思うのであります。ただいまの御質問は、もちろんそういう意味ではなくて、運動が起り、また必要な場合には費用を提供するとか、あるいはある程度の物質的の援助をすることはしかるべきではないかというお話で、私もその點はきわめて贊成であります。ただ日本の財政状態が六・三制も、實は政府の現状からいいますと、最小限しかできない状態にありますので、この運動が非常に大事であるとは考えながらも、これに對して十分な豫算をもつことができないという事情がありますので、私ども、この運動に對してある程度豫算も必要であると存じているのでありますが、大體においては、實は手辯當的な決心と勇氣をもつてつていただくというとこに重點をおいていただきたい。これは勝手なことでありまして、まことに濟まぬのでありますが、それだけの元氣が、少くとも國民の先に立つてこういう運動を起こそうという方々の中に、できるだけあつてほしいというふうに私は希望しているのであります。
  23. 田口助太郎

    ○田口委員 大體了承いたしましたが、心構えとしては、文化運動あるいは國民運動指導者が、獻身的にやれ、またやられていることと思うのでありますが、しかし現在これらの運動に挺身する者、まじめな人ほど生活に苦しんでおつて、なかなか理想通りにはいかないと思う。特に文化人で、まじめな仕事をしている者は、相當生活に追われている。現に登呂の遺跡發掘に當つている科學者は、經費のためにまたあれをやめなければならぬというところまでいつているというようなこと、その他食糧難のために勉強もできないというような場面も相當多く聞き、特にまじめな文化人ほど生活に苦しんでいる、勞働者以上に苦しんでいるのでありますから、できるだけ政府もこういう運動をとらえたときには、これらの現状を認識されて、物質面においてもできるだけ豫算をとられまして、まじめなそしてほんとうに國民のためにやる團體その他の者に對しては、呼び水あるいはそれ以上のできるだけの援助をされるようにしなければならないと考えます。  それから文化革命の問題について先ほど文部大臣からお話がありましたが、これからの文化革命は從來のブルジヨア的な、資本主義的な、あるいは武士階級、宮廷階級のような古い封建的な文化というものは捨てて、新しい經濟機構に立脚した、あるいは政治機構に立脚した文化をつくり出すのだ、だから革命だというようなお言葉を私は聞いたのでありますが、このお言葉には相當誤解が世間にもたれるおそれがあると思います。現に文部省所管している史跡名勝、天然記念物というようなものの指定に、相當の豫算もとられておりますが、これからやはりこれらの問題も、古い文化として私たちは愛護し、これを守つてつて、後の世代の人に守り續けて渡さなければならない。こういう敗戰國家この變革期にある場合においては、こういう文化というものを經視されて將來何百年、何千年後の子孫に對して、實にわれわれが新釋ない場面を展開するようなことが、しばしばあるのではないか。特にこの前の委員會でも問題になつたのでありますが、天然記念物あるいはその他のものを破壊されたり、いろいろの名所舊跡の樹木を伐られたり、汚されたりしている場面が非常にあります。非常に不潔にされている場面もあるので合つて、ただ單に文化革命で、古いものより新しきものへだけでは、一般國民も誤解して、昔の文化というものを保存するどころではなくして、破壊するような結果になるおそれがあります。必ずしも文部大臣は、昔の文化、古い文化というものを全部捨てて、新しい、これから生れる文化建設するのだというようなことではないかと私は考えますが、もしあつたら、私たちは徹底的に反對しなければならぬのであります。おそらくないと思いますが、ないにしても、先ほど言つたようなお言葉では、相當一般國民が誤解されるので、もう一遍その點に對して、文部大臣の御所見を伺いたいと思います。
  24. 森戸辰男

    森戸國務大臣 初めのお話で、文化人は非常に困つておるから、殊にこの運動に挺身するのには、物質的な補助も必要であるから、できれば援助をすることもしかるべきであろうというお話でこれについてはまことにごもつともでありまして、私どもも經濟の許す限り、そういうことをすべきだと思つております。  それから第二の點でありますが、私は文化革命と申しましたがこれは古いものをぶち壊して新しい者を立てるので、日本の古い文化を壊す、あるいは無視するのではないかという御心配があつたのであります。これはまつたく、お話にもあつたように、そうではないのであります。文化というものの發展は、古い文化を倒し、破壊していつて、その上にできるのなくして、文化の発展は、古い文化基礎の上に、新しい文化をつくりあげていくということでなければならない。殊に私どもはただ根のない、個性のない文化をつくるのではなくして、日本文化をつくらなければならないと存じております。これは歴史的な傳統の上にのみ可能なものであつて、ただ外国の文化をうのみにするということで、私はいわゆる新しい文化はできるものではないと考えておるのであります。さようにして、日本の新しい文化というものは、日本文化的傳統の上にのみ築かれていくといたしますれば、日本の古い文化について、私どもは十分の敬意をはらい、これを保ち、これを維持することによつて、新しい文化が、またわれわれの求めておる文化革命が、よりよく、より健全に實現されるものと存じておるのであります。
  25. 田口助太郎

    ○田口委員 大體了承いたしましたが、ただ私は説明でなく、一般國民も相當に誤解して天然記念物その他を破壊し、あるいは毀損しておる、あるいは不潔にしておる場面が相當ありますので、文部省も大いに注意されて、これらのないようにしてほしい。それから文化革命——今の文部大臣の言うことは決して革命ではありません。革命などという言葉を使うので、國民が誤解を生ずると思う。從來文化を、もつとよく磨きをかけていくというならば決して革命ではないと思いますから、革命とというようなお言葉は、政治面でも経済面でも、その他の面でも、定義というものが日本ではまだ確定していない、非常に誤解される場面があるので經々しく革命というお言葉を使われると、從來のものを全部捨てて、新しい政治機構なり經濟機構なり、あるいは文化機構にすると、一般國民考えられますので、特に文化問題については、革命というようなお言葉を使われないようにせられんことを望みます。  それから觀光事業は、先ほど文部大臣のお話では、これは文化問題の根本ではないというお考えのように伺いましたが。私たちはそうは思わない、わが日本文化を總合するものが、これからの觀光事業であり、あるいはこれを機會につくり出すべきだ、文化の水準をこれによつて海外に示すべきだとさえ考えておりますので、この一點を取上げたのであります。しかし、單に私たちは文化院の必要ということは、觀光事業の必要だけから言つておるのではありません。たとえば國立公園の問題をとらえてみても、これは單なる保健、衛生という面だけから取上げらるべきものではなくて、やはり文化あるいは教育という面からも取上げられなければならない。ただ單に、行けば新鮮な空氣を吸つてくるというだけではなくて、目に、あるいは耳に入る國立公園の價値というものは、相當大きいものであつて、また大きくすることが、われわれに課せられた任務であると考えます。あらゆる面において、総合した機關をもたなければならぬ。セクシヨナリズム的な小さい考え方では、とうてい大きな新しい文化は生れてこないというような觀點から、私たちは文部省というような考え方ではなくこれをもつと廣い觀點で考えてほしい。特に文部大臣としては、自分の所管のことでありますから、答えにくいでしようが、國務大臣という觀點から、もつと大きく考えられまして、ただ私は國際觀光事業というものは、一つの例に申し上げたのにすぎないので、あらゆる場面について、なわ張りがあつてはやりにくい、あるいは總合的な文化が生れないというふうに考えますので、この點について文部大臣としてでなく、國務大臣として、もつと廣い觀點から所見を承りたいと思います。
  26. 森戸辰男

    森戸國務大臣 革命という言葉で御心配があるようでありますが、政治の面でも、經濟の面でも、また文化の面でも、ただいまの時代は新しい日本をつくる時代で、それは古い日本が、そのままであつてはならぬという時代にあるのであります。そういうときに、私どもが特に力點をおくところは、保存ということではなくて、變るというところに重點をおいて考えるべきが、時代としては正しいのではないか。變るといいましても、すべてのものがなくなるのではなくて、實は文化側面では、飛躍ではなく、有機的な成長という一面をもつのでありますから、私どもは、この意味で常に文化は尊重されなければならぬと思いますが、しかし根本的に新しいものが社會的經濟的變化に即しながらつくられていくということは、それは否定するものでないと思います。こういう意味で革命ということには、多少暴力革命というようなことと結びついて誤解があり得るかも知れませんが、根本的な變革という意味に解すれば、むしろ今の時代では、保守ということよりは、この變革といい、あるいは革命という言葉がはつきり示された方が、新しい日本をつくつていくには、適切ではないかと考えておるわけであります。  それからなお、文化省の問題は文部大臣というセクシヨナリズムにとらわれないで、國務大臣として答えろというお話でありまして、これごもつともなことでありますが、私が文部大臣になつたのは、二箇月ほど前でありまして、文化のことには關心を強くもつておりますが、文部省というセクシヨナリズムには、それほど強い關心をもつて育てられたものではないのでありますから、その點は御安心願いたいと思います。(拍手)そういう點を入れましても、文化の問題は、廣い意味から考えれば、いろいろな方面に關係しておるのですけれども、しかし、もちろん國立公園というものも文化に重大な關係をもつておりますので、實はさきに文部省の立案しました文化院の中には、觀光事業ははいつておるのであります。そういう意味でこれを無視するということはないのでありますが、文化ということの重點は、觀光事業という點でこの問題を考えるのではない、もつと中心的なところにおいて處理するということがいいのではないかというのが、私の考えであります。
  27. 猪俣浩三

    猪俣委員 この新生活運動にしろ民主化、平和化にしろ、農村まで浸透することが大切なことで、これは竹内氏が常に言つていることで私も同感でありますが、これはなかなか容易ならぬことで、その根本の問題は、やはりその村に適當な指導者がいないということであります。下から盛り上がる運動といいましても、やはり下のそれぞれの單位に、適當なインテリゲンチヤがおりまして、それをしどういたしませんと、これを盛り上がる力に結成できない。そこで、今、農村について考えてみますと、專門學校を卒業したような者は、實に寥々たるものである。私ども實際運動をいたしまして、いつもそれを痛感するのでありますが、一等目をつけるのは、小學校、中學校の先生であります。これが眞に思想轉換をいたしまして、農村文化中心になつて、中央と呼應してやつてくれますならば、新生活運動なり、いわゆる平和革命なりが完成すると思うのでありますが、この學校の先生方、長い間の師範教育その他文部省のいわゆる國體の本義的教育を受けた連中が、今現に職に在つて活動している状態でありまして、この先生方の思想を脱皮させることが、私は重要問題だと思うのであります。これに關連いたしまして、戰時中それを受けまして、感銘深く活動いたしましたのは、小學校の先生たちでありますが、この先生方の懐いているフアツシヨ的な、國體の本義的な、いわゆる文部省的な思想を脱却せしめまして、新しい平和民主思想に切りかえるような、いかなることを文部省としてやつておいでになるか、今の先生方の精神革命を文部省はいかなる指導のもとにやつておられるか、その點について伺いたい。これが第一點であります。  第二點は、農村におきまする農民運動、あるいは勞働運動をいたしまするところの指導者として、現職の先生が、はいつていいのか惡いのか。教員組合運動ば別としまして、その他の勞働運動なり、殊に農民運動であります。こういうものの幹部となり、指導者となつて彼らが活動することによりまして、私はいわゆる全體主義的な、フアツシヨ思想的な思想から脱却する一つの訓練が行われると思うのでありますが、地方におきましては、校長がそういうことに興味をもつている訓導を呼んで、それをやめさせるということが、頻々として私の耳にはいるのであります。これは文部省の教員はさような農民組合運動にはいつてはいけないという御趣旨であるのか。もちろん、その本職である教育をなおざりにいたしましてやつては、それはいけないと思いますが、近頃の學校の先生というものは、みなたいてい自分の學校の近くから通われる組織になつておりますので、その村におきましては、それぞれの指導立場におかれておるのであります。そういう人が積極的にこの民主化運動——農村における民主化運動といえば、農民組合運動であります。それ以外のなにものもありません。そういうことに對しまして、積極的に參加することを阻止なさる意思があるかどうか、あるいは奨勵なさる意思があるかどうか、これが第二點であります。  それから第三點といたしましては、地方文化というものの高揚は、民主日本建設に必要であつて、東京にばかりもやもやいろいろな思想が起つて地方では知らぬ顔をしているというのが、今までの日本のかたわの状態であります。この意味におきまして、なるべく大學を地方に分散する。そういう趣旨から、今、地方にありますところの師範學校を、これをみな學藝大學に昇格し、いやしくも國民教育に從事する者は、みな大學の卒業生であるというような根本方針を堅持してしていつたらどうか。そういう師範學校を大學に昇格するという御方針があるかどうか。あるいはまた、全部はできないが、一部の特別の基準を設けて、その基準に合格したものだけ昇格させるというような御意思かどうか、豫算の關係上、いろいろむずかしいことがありましようが、文部省はそれに對して構想を持つておられるかどうかということ、この三點についてお伺いいたします。
  28. 森戸辰男

    森戸國務大臣 猪俣君の御質問の第一點は、農村においては指導者が必要である。ところがその指導者が今日不足しておるということ、これはまことにその通りであります。そこで學校の先生たちは、適當にその指導者になれるのではないか。しかるにその學校の先生が、どうも文部省的な、フアツシヨ的な考えをもつておるということで、それは何かと改めてもらわねば困るということでありました。多少誤解があるのでありますが、私も文部大臣として、近頃文部省はそうフアツシヨ的なことは考えておりません、まつたく民主的な方針に立つておりますので、これはもとの文部省ということでありますから、誤解のないようにお願いをいたします。從來文部省は、軍國主義、あるいは軍部に壓迫されまして、實は軍國思想の取次をやらざるを得ないことになりまして、學校の先生も、從つてその意思いかんにかかわらず、實はそういう方向に向けられておる。場合によつ手は、その幾分かの方々は、本氣でそういう考えをもたれるというようなことになつたということもあると思います。ただ、ただいま聽かれたように今日の學校の先生が、大部分がそうであるというのは、ちよつと言い過ぎではないかと思います。今日の先生方も、おそらく、半分以上は、もう從來考えは精算されて、新しい方向に向い——半分以上というよりは、もつと多いと思います。ただ、中には多少地朴につては古い考えがまだ殘つておる人もありますので、これは非常に殘念なことであると思います。これは、一つには、先生方が進んで新しい時代に處するように勉強していただかなければならぬ、そして文部省は新しい教育について制度と設備を設けるということとともに、先生方がこの新しい教育に副うような先生になつていただきたい。先ほどおつしやつた古い文部省的な考え方を精算してもらわなければならぬ。その一つは、いわゆる教育パージで、極端な方々にはお気の毒であるがやめていただいたのであります。殘つておる方々についても、檢定の制度によつて、これに適格なんが先生になつていただかなければならぬという建前になつておりまして、ただいまその檢定の委員をつくつて、檢定の方法具體化するように準備中であります。しかし、それまで、教育をやめることはできませんので、先生方には新しい時代に即するようになつて、古い文部省的なものを脱皮していただかなければならぬ。これは先ほど申し上げましたように、先生方が進んで勉強していただくことが一つ、もう一つ文部省もこれをお助けし、いわゆる講習會を開いて、そうして文部省、縣その他で、講習その他の施設を設けて、古い思想、古い心構えの精算、新しい心構えの獲得に資すようにいたしておるのであります。これが過般多少問題になりました認定講習會というものが、それであります。  それから第二の點は、學校の先生が農民組合運動をやつては惡いのかというお話であります。先ほども仰せになつたように、農村指導者が少い。しかも先生はそれにふさわしいものであるが、古い文部省教育はしばしばそれを不適當にした。しかし組合運動の中にもはいれば、だんだんとみずからを教育する機會もあるし、またこういう運動にも役目つのである。ある地方では校長さんかだれかは、それはいかぬと言つたというようなお話でありましたが、これは文部省といたしましては、それを阻止することはないのであります。しかしまた先生は農民組合運動をやらなければならぬという奨勵もいたしませんけれども、やつてはならぬということを禁止もいたしておりません。先生は國民として、政治的な活動の自由をもつておるのであります。そのことは、もちろん、教室で政治的な特殊の政黨の意見を子供に教える自由ではありません、それはいけないのですけれども、しかし個人として政治的な活動の自由はもつておると思う。從つて政黨に屬しても結構であります。私は廣島縣の福山市でありますが、社會黨の支部の書記長は、中學校の先生であります。そういうように、私は學校の先生が自分の教育という仕事を忘れては困りますけれども、そういうことでない限りにおいては、政黨の運動に學校の外で従事することも、それだけのことでは、別に先生の仕事と反するものでもないと思います。文部省としては、それはしてはならぬというような指令をしたことはないと思います。ただ、やらなけれならぬ、大いにやれと奨勵したということもないと思います。それから第三の問題は地方文化の振興ということで、從來日本文化が大都會に集中したということは、これははなはだよくない。戰爭機會文化地方的に擴がつていくということは、適當なことでありまするし、高等學校、殊に大學の設立においても、大學が在來のように大都會に集中しないように、國土計畫の上から、また産業状態等を通じて、地方的に分散されることが望ましい、こういうような見地に立つてのお説であります。從つて大學は大都會にのみできることはなくして、國土計畫的に、また地方の産業等に應じて地方にも置かなければならぬ。ところで、師範學校は、みな大學に昇格できるかという問題であります。これは師範教育の問題と關連しておりまして、師範教育は、先生を養成することを主たる目的とする學藝大學、それからもう一つは、普通の大學の教育の課程を終え、竝びに教育學科の修めた者に、みんな先生になつていただけるような形になると思いまするが、その學藝大學に、今日ある師範學校がみんななれるかどうかということが、ただいまの問題でありますが、これはまだ大學設置の基準の委員會等で、その基準をどこに設けるかということがはつきりきまつておりませんので、私から確言はできませんけれども、學校の先生が非常に不足しておるという現状から考えて、師範學校も學藝大學となりますか、どういう形になりますか、大學的なものに昇格するという可能性が相當にあるのではないかと存じますが、これはまだ確定しておりませんから、何とも申し上げかねます。
  29. 福田繁芳

    福田委員長 このあたりでちよつと委員長といたしまして、文部大臣に違つた角度から、二、三項目御質問いたしたいと思うのですが、まず第一番に、オリンピツクの參加に對する見透しと對策に對して、文部大臣としての御所管を承りたい。  その次は、わが國の古典藝術と申しますか、一例をあげますれば、大阪の浪華文化といわれておる人形浄瑠璃と申しますか、こういつたものの保持育成に對する御對策のもちあわせがあるかないか。  その次は、重要美術品が、最近御承知の時局柄、相當海外に流出しておりますので、これに對する對策のおもち合わせがあるかないか。  最後にもう一つ、先ほど田口君がちよつと申されましたが、靜岡縣の登呂において、御案内の考古學者なり、學徒が古墳を發掘いたしております。われわれ文化委員の全員があげて、これは彌生文化の相當貴い資料を得られるというので、實は待望いたしておる際に、聞くところによりますと、全然經費がないので、今日の時節柄中止しなければいけない、こういうことが耳にはいつて、今後の文化國再建のために、非常に嘆かわしく考えておるのですが、こういう點に對して、文部大臣としていかなるお考えをおもちになつておられるか。この四項目をちよつと一つ答辯願いたいと思います。
  30. 森戸辰男

    森戸國務大臣 第一のオリンピツクの問題でありますが、これは直接國際連合とは關係がないので、私どもは、國際連合日本が加入を許される前にも、できるだけこのオリンピツクに參加させてもらいたいと、實は考えておりました。しかし、これはユネスコとは違つた、まつた民間團體でありますので、オリンピツク委員の方の御意見なり、またかつてのオリンピツクの準備會もありましたので、そういうような方面の力によつてそれが促進されることを、私どもは非常に期待いたしておるのであります。私個人のことを申して濟みませんが、私の理事長をいたしております民主外交協會におきましても、オリンピツク參加運動を實は展開しておりまして、諸種の團體に呼びかけておるのであります。殊に過般の水上競技におきまして、日本は實は世界的な從來のレコードを破つて、國際的にもオリンピツクに参加し得る實質を少くとも日本傳統の水泳においては、もつことが明らかになつたのであります。こういう資格における内面的の充實とともに、また制度的にも、一日も早くオリンピツクに參加できるようにまたこのことが、殊に青年の間に明朗な健康な文化をつくつていく上に、非常に意義のあることと存じますので、政府の直接擔當するところではありませんが、民間の主力が連合國の、殊にオリンピツク關係の諸勢力と連絡をとつて、一日も早く日本の國が參加できる運びになることを、心から念じておる次第であります。  第二の古典藝術につきましては、これに政府はどういう態度をもつておるか。殊に大阪の古典藝術である。まことに日本のすぐれた古い藝術の一つでありまして、それが衰亡することは、わが國としてはまことに遺憾なことであります。できれば、私どもは藝術を理解する民間の力が、これをできるだけ維持し、發展するように働いていただきたいと思つておるのであります。同時に政府としても、いろいろな状況が許す限りは、こういうものについても、できるだけの補助を與えていくような状況にいたしたいと思つておるのであります。ただ今日の状況では、御承知のようにもつと緊切な救濟制度も十分にできぬ、失業の救濟制度も十分にできぬ、失業の救濟も思うようにいつていない状況でありますので、思うように運ばない點があり得るということも、ひとつ御了承願いたいと思うのであります。  第三點は、重要美術品が、今日遺憾ながら外國に流出するという、これはまことに殘念なことであると思つております。もちろん、これは火事で焼けて灰になるのではなくて、外国に行つて、どこかの適當な所に納まつておれば、日本のよい美術がそこで解せられることになるということも考えられますが、しかし、こういう美術はその國の國土に置いて、また適當な背景をもちつつ鑑賞されることによつて、初めて十分なその文化的な意義を發輝することでもありますし、また日本國民としては、こういう美術がわれわれの間にあることが、何よりも望ましいことであると存じております。しかるに、ただいまも委員長のおつしやつたように、經濟的のいろいろな理由からではありましようが、殊に貴族のいろいろな點での没落とも關連いたしまして、よい藝術品が外國に流出するというようなことがあるやに聞いているのであります。もちろん人々は經濟的な自由をもつておりますので、政府がこれを直接禁止するということは、今の經濟の建前から許されないと思うのでありますけれども、しかし適當な方法で、個人團體等、あるいは場合によつて政府が、これを買うて日本に保存するというようなことは、できればやらなければならぬことであると思つております。殊に國立博物館等で購入の費用がありますが、できればそういう費用を相當に増額して、そういうようなものを強制的ではなく、適當な値段で了解を得つつ買うて、日本の國に最も保存するに適當な所に、保存しておくことは、きわめて望ましいことであると存じております。  第三の登呂の遺跡の發掘についてでありますが、これは日本の古代史研充の上には、畫期的なことでございまして、當委員會も、これに對して重大な關心をもつていただいたことは、私は日本文化發展のために慶賀にたえないことであると思つております。關連しておりまする省といたしましては、この事業ができるだけで十分に展開されて、この歴史的な發見された遺跡が、殘りなく正しい形でわれわれの上に再現されるように望んでおるのであります。經濟的の點でいろいろ困つておられるということも承つておりましたし、食糧の點でも困つておられるということも承りまして、それらについては、適當な手配をいたしておるのであります。なおこの發掘は、七月で一應終わりまして、來年また始めることになるのでありますが、今期の發掘は、大體不十分ではありますけれども文部省、靜岡縣、靜岡市等の協力で、まず不十分ではあるが行われるような事態になつたのであると承つております。もちろん、これは發掘しておられるところの、まことに同情にたえないほどな努力に對して、十分な條件をつくつておるとは申されません。しかし、ともかく今年はそれで大體の目的が達せられたような状況に相なつております。來年の夏休みには、さらに擴大された發掘が行われまして、それについてはわれわれといたしましても、十分の準備を整え、經濟的にもできるだけ窮屈なことのないようにいたしたいと存じておる次第であります。
  31. 福田繁芳

    福田委員長 ただいま私が御質問申し上げました四項目目に對して、文部大臣の御理解あるお答えで、大體了承することができましたが、ただ遺憾な點は、その中の二、三項目が、何といつても敗戰後の今日で、こういう國家財政でというお言葉がありましたのは、非常に遺憾に存ずるのです。さようなこともよく存じておるのですが、何を言いましても、文化國家再建ということが、今後の日本國民の行くべき途である。さすれば、日本國民といたしましては、この文化部面に關することは、精神的な主食と等しいものである。そういう點から考えまして、今質問申し上げました二、三項目に要するところの費用というものはおそらく今の内閣でやつておられます石炭國家管理に投ずる費用からみますれば、千分の一どころか萬分の一にも足りない、こういう數字をもつて精神的の食糧であるところの平和國家再建に重要なる役割を演ずるのが、今の二、三項目でありますから、最近の文部大臣の中においても、最も文化人だといわれております森戸文部大臣におかれましては、(拍手)よくその點を御冷靜に御檢討下さいまして、もし閣内に文化人の顔に疎い官僚かあつたとしますれば、大いに文部大臣として啓蒙されて、是が非でも、石炭國家管理に要するおそらく萬分の一に足りない費用でけつこう實現できるのでございますから最新の御注意と深甚な御同情をくださらんことを、文化委員全員の名のもとにお願い申し上げる次第であります。(拍手)  本日は時間の都合にて、これにて散會いたします。     午後四時三十五分散會