○
山添政府委員 非常に擴範なる御質問でありまして、また
成瀬委員はこの
方面の
専門家でおられるわけでありますから、私は
簡單にお答えいたしたいと
思います。
第一に、第三次
農地改革を即時斷行する
意思ありや否やという問題でありますが、これは
國務大臣から
答辯されなければならない問題でありまして、私
ども事務當局といたしましては、まずも
つて現在
遂行途上にありまする第二次の
改革を完全に
徹底し、かつ速やかに完了するということに全力をあげております。それが完了しました曉においての、
農地に關する
方針、
方法等につきましては、これはいろいろそれぞれ
考えてはおりますけれ
ども、それを述べましても、これは結局私見にわたることになりますので、ともかくわれわれといたしましても、今はわき目もふらずに、第二次
農地改革を速やかに
徹底し、かつ完全に行うことに專念をしておることを申し上げておきたいと
思います。
その次に
北海道の
旭川の裁判についての
お尋ねがございました。詳細のことにつきましては、文書を取り寄せました上で
お話を申し上げたいと
思いまするが、この
内容はきわめて
簡單なのでありまして、そもそも
憲法違反であるとかいうふうに訴状の中にはうた
つてありますけれ
ども、
内容から申せば、ある
旭川市の
土地が
買収に
なつた、その
土地は近く
用途を變更するのを相當とする
土地である。これを
農地として
買収する。
農地ではありますけれ
ども、そういう
意味から他に
用途か轉換されるべき
土地を
買収の對象にすべきにあらず、こういう
簡單なことでありまして、これについて
憲法違反とか、いろいろな文句はあげてありまするけれ
ども、讀んでみますと、何ら
憲法違反という
論點には、實質的にはふれていない問題であります。これはこちらでも三囘ばかり人も参りまして、大體結末
はついておると
思います。取調べまして後に御報告いたしたいと
思います。
それから
土地の取上げの問題に關連いたしまして、農林省、内務省、司法省の参事官の名前をもちまして、
土地取上げの
防止、
取締りの
徹底、
司法當局につきましても、これらのことについて十分その運用よろしきを得てもらいたいという
通牒は夏ごろと記憶しておりまするが、發したのであります。
當時鹿児島縣その他に
小作立入禁止というような、今から
考えると大分古風な、一昔前の判決と言いますか、假處分をやつたところがあります。私
どもも
食糧増産の緊急のときに、田植を前にしてそういう
措置が出ることがいいか悪いかということには、非常な疑問をもつわけでありまして、さようなこともあり、
通牒を發して、
土地取り上げに關する不法不當な
行為の
取締り、またそれに對する
心持等についての
通牒をいたしたのであります。したしこの
土地取上げに關する問題は、申すまでもなく現在の
農地改革の
進行と同時にそれ
自身の結果として、またその問題を離れましても、今の
食糧事情、あるいは他に仕事が求められない
事情、この
一般の
社會、
經濟的事情から頻發しているのでありまして、なかなか
一つの
通牒だけではその
目的を達することは至難であります。また今までの
状況によりますと、これに
警察官等の協力を求めるということも、實際問題として望みがないのでありまして、局に當ります者が、この
方面になお今後とも氣を配り、強力に
努力いたしますと同時に、やはりこれは
農民自身の
團結の力によるということが最も必要であります。そういう
農民組合等の
團結等の力によりまして、公正なる
小作人の
地位が保持されるというところでは、この
土地取上げの問題も、まず比較的ないわけであります。やはりこういう問題は
法律上の問題でありますと同時に、ひとつは
社會上の問題でありますので、その
解決の
方法といたしましても、
ひとり行政ないしは
法律的な主段のみならず、
社會的なそういう
運動と申しますか、そういうことの
防止に役立つようなことが
當然必要であり、またそういうことを期待いたしておるのであります。それから、とかくこの
小作調停法が保主的に運用されるということにつきましては、これは
一般的な輿論、觀察にな
つておるのであります。これにつきましては、最近司法省から何から
通牒は出されたようなことを承
つておりますが、この點につきましてはなお取調べまして、お答えをいたしたいと
思います。その行き方といたしまして、われわれの
考えといたしましては、
農地調整法によるところの
農地委員會の判斷、その裁定、これが優先的というよりも、むしろそこで片づけられるべきものである。その運用によるべきものである。こういう觀念はも
つております。しかしながら今ありますこの小作
調停の制度を、即時に廢止するや否やということにつきましては、これを廢止するほど一方の
農地委員會の組織なりその運用なりが、まだ完成の境に近づいているわけでもございません。でありますのでこれは當面兩建てでまいりまして、そういう
農地關係の事柄はまず
農地委員會において
解決するというような指導を
考えておるのであります。小作
調停のことにつきましては現在の問題といたしましては、實質上
調停委員になるような人に理解のある人を選ぶ、この人によるところの運用について考慮が十分拂われるようにということを絶えず要望いたしておるのであります。と同時に、なお今囘の
法律改正におきましても、小作
調停によるところの
調停は、當然これはいはゆる合意でありましてこれは判決ではないのであります。
從つて調停にかかりました件といえ
ども、やはり
農地委員會の承認を受ける。この合意ということを含ませます結果、そういうことになるわけでありまして、もとより公正なる當事者の合意でありますから、普通問題はないと
思いますけれ
ども、もしその開停途上において、耕作者の方で眞意によらざるところの合意であるというようなことでありますれば、これはまた
農地委員會の方でそれを改めて處理をする。非常に例外的な場合でありますが、そういうこともあり得ようかというふうに
考えているのでありまして、いずれにいたしましても、
農地に關する問題は、この
農地調整法によるところの農業
委員會によ
つて處理していくことを原則とする。そうして裁判所によるところの
調停は、將來これの
措置につきましては、
状況をにらみ合わせて
考えていきたい。こういう
考えでいるわけであります。
それから現物小作料を耕作者の方で希望する場合には認めるといういわゆる代物辯濟の
規定を削りましたけれ
ども、それによ
つてはたして
徹底的なる取締が期待し得られるや否やという點の御質問でございます。それは岩手縣等刈分小作の行われているような所では、
農民の意識も非常に水準が低い。そこで何ということなしに、まあ今までの慣行通りというようなことが行われている場合が相當あるように聽いております。そういうことが行われますのも、もとより
農民自身の知識の問題でありますと同時に、一
方法律の但し書が惡用されるということがありますので、今囘は言いがかり、あるいは言い逃れというような、脱法の穴を塞いだのであります。しかし、それのみをも
つてしては、この
農地問題のごとき、こういう
社會、
經濟的な
事情は一擧に
解決がつくというようなことは、期待できません。從來といえ
どもこの
農地改革につきましては、
政府はあらゆる手段を盡し、また各
方面の協力を得て、これの啓蒙宣傳の
農民に對する
徹底を企圖しているのでありますが、今後ともこの
方面のことにつきまして、いろいろな手段をも
つてするところの宣傳に努めますとともに、また
取締りの
方面からいたしますれば、こういう拔け穴のようなものがなく
なつたのでありますから、いやしくもその
事實があれば違法だということは明瞭でありまして、相當こういう遺憾な
事實の發生に對しては、將來強硬に
取締りの必要があり、またそういうふうにいたすつもりであります。この事柄はひとり小作者と
地主との
關係だけではない。一面から言えば供出の
關係にも響いてくるの問題であります。斷固こういうことは
徹底をいたしたいと思
つております。
それから
農地の
集團化の問題につきまして、特に小さい
農家についての
關係において
お尋ねがありました。これは健全なる
自作農として農業に專心する見込みのある者という範圍につきましては、大體二段歩未滿の人は、これは農業に專心する見込みのある者として
取扱わない。しかしながら
農地の非常に少い島であるとか、あるいは山村等におきましては必ずしも二段歩にとらわれる必要はなく、もつと小さい人でもよろしい。あるいは果樹、酪農等によ
つて、
土地の面積よりもむしろ別の
意味で非常に高い收入をあげておる。かような特殊
農家についてもまた別である。しかし
一般的には二段歩未滿、
北海道では五段歩未滿の
農家には、
土地を賣渡さないということを
通牒をいたしております。しかしながらこれはもとよりその人の耕作權を尊重するということとは、兩立といいまするか、兩立することは當然でありまして、
政府がその人に
土地を賣渡さないで、第一に、
政府が
買收しないところの他の小作地と
政府がその
買收いたしました二段歩未滿の
農家の耕作をしておる
土地とを交換分合して、そうして二段歩以下の
農家は、相變らず別の
土地について小作者の
地位におるわけでありますから、
政府としては、他のそれ以上の
農家に
土地を賣渡すという手段をとりたい。そういうことを第一の原則にいたしております。かりにその事柄が手取り早く行きません場合におきましても、當然小さい
農家の方々の耕作權はこれを保障しておるのでありまして、
政府はそれに對して何ら耕作權を解消するというようなことがございませんことは御
承知の通りであります。
成瀬委員の御
意見は、進んでそのような
農家の
人たちに、安定したところの農業者として將來の希望を與え、その發展を庶幾するために、協同組合の組織によりまして、そういう
人たちの
土地を持ち寄
つて、これを相當規模の
農業經營に切りかえていつたらどうか、こういう御
意見であります。そういうことができますれば非常に結構なことだと
思いますが、ここに
考えなければならないことは、現在の
状況におきましては、また今後も相當そういう期間が續くと
思いまするが、狭い
土地にわずかな面積でありましても、農業に從事する以外に他に職がない。こういう事態が現にあり、またやはり續くだろうと思うのであります。おそらく國全體としても、相當程度の失業者が顯在的にか、潛在的にかあるという
状況は、相當續かざるを得ぬのでありまして、その
意味から申して、從來適正規模ということを
考えておりましたもつぱら能率本位の獨立
自作農という
觀點は、大幅に現實の問題として修正をされたというわけでありまするが、さてそれに代うるに、しからばただちにそういう小さい人が協同組合組織によ
つてうまくやれるかどうかということにつきましては、これは今後試むべき問題でありまして、必ずそれでいくかどうかというところまではまい
つていないと
思います。そういう
農家の
人たちが協同組合をつく
つて、耕作についても相當の能率をあげると同時に、むろんその場合には大部分の勞力は餘剰になるわけでありますから、これを農産加工その他
農村工業の方に向けていく、こういうことと併せた指導ないし施設でなければならぬのであります。一面全體的に申しますれば、國の經濟が早く囘復をいたしまして、むしろ人手が足りない。一段歩や二段歩の
農家はそこから離脱をしてい
つて、他の職業について、その勞力を十分に利用するという
状況が一番望ましく、過小農の處理、整理ということが、國全體として一番望ましい
状況でありますけれ
ども、それも當面期待できないということにも
考えられますので、
成瀬委員の
お話になりましたようなことは、研究の問題、試むべき問題の
一つであろう、かように
考えるのであります。
それから不正なる
農地委員に對して
罰則規定を設けることはどうかということであります。
農地委員は公務員に關する身分をも
つております。
從つて當然官吏と同じように、收賄というような事柄、あるいは一定の
利益というようなものを得て不公平な
取扱いをするということでありますれば、これは當然刑法の適用があるわけであります。
それから
海外から引揚げてきた人の問題でございますが、これは
土地取上げということに關連する問題でございます。しかし
土地取上げの問題については、もとより
農地調整法第九條に書いてある通りの運用
方法でありまして、これについて別段最近に至
つて、當初からの
方針を變更したというようなことはございません。これは耕作權の尊重、しこうしてそれが
土地を返還した方がいいという場合には、むしろ
土地所有者の方に耕作をせしめれば、全體的に
生産力も上がる。そういうような場合も、實際上は今ほとんどないと
思いますが、そういう理論的な運營をいたしておるのであります。實際問題といたしまして、この第九條の運用をめぐりまして、いろいろな事態が起こるのであろうということは當然想像もされ、
考えておるところであります。そこで
海外から引揚げた人といえ
ども、あるいはその他の事業で他に職がないという人といえ
ども、他に職がないということによ
つて當然
農地の返還を受ける。こういうものではないわけでありまして、これはいかなる
方法をも
つてしても他に
生活の
方法がないというような場合におきまして、しこうしてその
土地返還ということが行われても、それは一人の耕作者に過大なる負擔をかけるものではないというような場合に、諸般の双方の
事情を考慮して、
農地委員の方でそういう
方法を採用するわけであります。これは
農地委員長會同をやりましても、絶えず
農地法の要請をするところと、一種のヒユーマニズムと申しますか、その要求するところがぶつか
つて、身につまされると同時に困難な問題であります。これに對してわれわれが申しておりますのは、今あげましたように、絶對に他に生存の途がないのじやないか。そういう場合はほとんどない。あ
つても非常にまれな場合であります。昨日
説明いたしましたのは、現にそういうような理由で小作者との間に話がな
つて、
土地の返還を受けて、今二段なり何なりや
つているところが遡及して買うという
規定を今囘非常に明確にいたしましたので、いやしくもその合意の返還でありましても、たとえば手續に違うとか何とかいうことでありますれば、たちまちまた
政府に買われてしまうというような事態が起る。ところがそういう場合に
政府がまた買
つてしまうということは、これはいかにも不合理ではないか、また忍びないではないかというので、從來の小作者と現に耕しておる
地主の
状況とを比べて、いかにも
地主の方が氣の毒だ、こういう場合に
政府が買わないという
規定を設けたのであります。なお
旭川の問題等につきましては後にお答えいたしたいと
思います。