○
山添政府委員 自作農創設特別措法竝びに農地調整法の
改正案でございまするので、
條文の讀みにくい點がございます。
從つて逐條説明をごく
簡單にいたしたいと思います。初めに
自作農創設特別措置法の方から申し上げます。
第
一條に横線の引つぱ
つてあります「又
土地の
農業上の
利用を増進し、」という文句を加えましたのは、未
墾地買收の場合に、
從來は
自作農創設のためのみの
農地以外の
土地の
買收でごごいましたのを、今囘は大
規模の
土地改良事業を行いますときに、その
水路等の
所要の
土地を
買收し得る、こういう
規定を設けましたので、それに對應する
土地改良事業のための
所要の
土地をこの
法律によ
つて買收する。こういう
意味において加えたのであります。
それから第
二條であります。この第
二條の
關係は
牧野というものの
定義を掲げました。その
牧野の中には家畜を放牧します固有の
牧野と、草を刈る
採草地等を含んでおるのであります。この二つを含めて
牧野の
定義を掲げたのであります。これは新たに
牧野を
農地改革の
對象として、
一定の
面積以上の
牧野については、これを
政府が
買收するということにいたしましたので、その
關係上加えたのであります。そして三項に
自作牧野と
小作牧野、こういう
農地と同じような
定義をいたしたのであります。
それから第
二條の末の方の項でありますが、これは今までの
規定でありますと「戸主若しくは家族」という文字が
使つてあ
つたわけでありますが、家の制度の廢止に伴いまして「親族若しくはその
配偶者」とかえたのでありまして、これは
内容が變
つたわけではございません。民法の
改正に伴う言葉の
改正であります。
それから第三條については、これは
字句を
整理したものでありまして、初めの方には申すことはありません。第三條の末項でございますが、第三號の前の項に「
自作農でその者の
營む耕作の業務が適正でないものの所有する
面積」うんぬんとありまして、御
承知のように内地におきましては
平均三
町歩の
所有限度をつけております。それ以上の大きな
面積を
耕作しております場合においては、その
農業經營が適正であるかどうかということを
判斷いたしまして、適正である場合においては三
町歩の
制限を超えてもそのままその
經營を認めておる、しかしそれが適正でない場合には三
町歩まで
政府が買うという
規定でございまして、ここに筋を
ひつぱつて第三條の末項に附加えましたのはその適正なりや否やということの
判斷の
基準を掲げたのであります。しかしこの
規定は新しく設けたのではないのでありまして、今まで
勅令に書いてありましたのを、重要なことでありますので
法律に繰上げたのでありまして、
實質上現在行
つておりますこと何らかわりはございません。
それから第
五條第三號でありますが、
政府が
買收しない
土地として、
試験研究のほか「主として省令で定める
耕作以外の目的に供してゐる
農地、」すなわちこれは特殊の鑛物をとる
土地というようなものがございまするので、そういうものを指定いたすのであります。
それから第四號に、
都市計畫法によるところの「
土地區畫整理を施行する
土地その他
主務大臣の指定するこれに準ずる
土地」を申しますのは、
都市計畫法等が施行せられます前に、
耕地整理法等によりまして
區畫整理事業をや
つておるのがあるわけでありまして、こういうのは
實質上
都市計畫法に基くところの
區畫整理地區と同様でなければならぬというので、これを中に入れることにいたしたのであります。
それから第五號は、近く用途の
變更を目的とする
土地につきまして、
都道府
縣農地委員會自體においても指定することができる、こういう
意味であります。
それから第六號は、一時
賃貸借の
規定でございまするが、一時
賃貸借をいたしておりました場合には、それを
自作地と同様の
取扱いをいたしておることは御
承知の通りであります。しかし
面積は
内地平均三
町歩という
限度があることはこれまた當然のことでありますが、その
事柄を明瞭にしたわけであります。
それから第七號は、今回
牧野を
政府が
買收いたしまするが、殘された
牧野、すなわち
所有者の手もとに殘
つておる
牧野を開發して
農地にした場合はどうなるか、それはそのままでよろしいので、
農地にな
つたからとたんに今度は
買收するということではないのであ
つて、きわめてあたりまえのことを念のために書いたのであります。
それから第
五條の二に
規定しておりますのは、御
承知のように各地域に
技術指導のための
指導農場というものを設置してございます。その
指導農場の敷地に提供するために、
農業會なり府縣なりが
土地を借りておるのでありまするが、この場合に
不在地主の
土地であるとかいうようなものが提供をされておる。それが
試験研究の
用地でございまするから、
原則的に
政府の
買收にならぬということになるのでありまするが、それでは
土地を買われる側からい
つてみますと、均衡を缺くという點がございまするので、
指導農場に提供された
農地をいえどもこれは
政府の
買收の
對象になるということを
規定いたしたものであります。しかしながら中には非常に奇篤な方もございまして、
指導農場の
趣旨に共鳴をされて、自分が
自作しておるのをそのまま
農場に提供され、そうして自分はその
農場に營農に從事しておられるという方もあるのでありまして、そういう場合にこれをそのまま
小作地として扱うことはひどいわけでありますから、さような場合におきましては
平均三
町歩の
限度までは、現在提供されて、形は
小作地にな
つておりましても、
政府は
買收をしないということにいたしたのであります。
それから第六條は
地租法が
土地臺帳法に變るという
關係における
條文の
整理であります。
それから第六條の二におきましては、いわゆる遡及に關する
規定を書いております。御
承知のように
昭和二十年十一月二十三日現在をもちまして、そのときの
状況によ
つて農地の
買收をするというのが
原則でありまして、現在の
法律におきましても附則をも
つてその
事柄を明記いたしております。また
勅令等におきましても
小作者の方から申し立がございますれば、
政府はそれを必ず
買收しなければならぬ。またその申し立がない場合におきましても、
農地委員會は十一月二十三日現在と今日と
機利關係の
變更を來しておるものにつきましてはよく事情を調べて、相當と認めるときは買収する、こういう
原則にな
つておるのでありますが、これも非常に重要な
事柄でありまするので、これを
法律事項にいたしまするとともにその間における
判斷の
基準を一層明確にいたしたのでありまして、
内容におきましては現在行
つておることと差違はございませんが、これを
法律に明確にいたしたということであります。
第六條の二の第一項は、
昭和二十年十一月二十三日現在において
小作農であ
つた人が
土地の取上げをされたというような場合、またその當時は
不在地主についての
小作農であ
つた、ところがその
地主さんが國に歸
つてこられて在
村地主にな
つた、かような場合にいずれも遡及して買い得るのでありますが、そういう
人たちが
農地委員會に對して
政府が
土地の
買收をなすべきことを
請求した場合には、
農地委員會は買わなければならぬという今まであります
原則を掲げまして、しかしながら、次の各號の場合には
農地委員會は
買收することができない、こういう
原則を明確にいたしたのであります。それは第一號に、
昭和二十年十一月二十三日現在においてはその申し立をした
小作人との間における
小作地でありましても、その
小作地の
返還が適法かつ正當であ
つて、すなわち何ら非難すべきところのない
土地返還、これは
買收の
對象にならないということです。
それから第二號に掲げましたのは、前號のほか
市町村農地委員會において
小作者の
請求が信義に反すると認めた場合、すなわち
土地返還について
手續上かりに多少の瑕疵があるといたしましても、それは今にな
つて土地の
買收を要求することが民法の
一般原則であるところの
誠實信義の
原則に反するという場合は
買收してはいけないということであります。
第三號におきましては、申し立をいたしました
小作者が三
町歩以上の大
面積について
經營をいたしておるという場合、これは三
町歩に
制限をするという
趣旨から見まして當然そう過大な要求は認められない、こういうことであります。
第四號は、
社會的な
觀點におきまして
土地取上げがかりにありましても、これはこのまま認めるべきではないか。たとえて申しますると、海外から
引揚げてきた人がある。そこで他に何ら食う手段がないので二反歩か何か返してもら
つて今
自作している、これが生活の基礎であるというような場合に、たまたまその
返還の
手續き等におきまして十分でなか
つたといたしましても、たとえば
地方長官の許可をまだ受けていないというようなことがあるといたしましても、これは
小作人の状態から比べて、むしろ
地主である
自作者の方が氣の毒じやないか、こういうような場合に、
手續きの問題を論じて
政府が買収するということは苛酷になるわけでありますから、そういう場合には買収をしない、こういう諸點を明確にいたしたのであります。それ以外の場合は厳格に買収をする。なおお斷りと言いますか、附け加えておきたいことは、かようにある
小作地につきまして
買收をしない場合がございましても、
面積計算は絶えず
昭和二十年十一月二十三日現在によるわけでありまして、その
昭和二十年に一
町歩以上の
小作地をも
つておりますれば、現在
土地返還も受けて
小作地が減少しておるという場合におきましても、その當時の
小作地の
面積をも
つて計算されるということに相なるわけであります。
それから第六條の三は、この
事柄に附随するところの村の
農地委員會で決定をしない場合に、
都道府縣の
農地委員會に對して指示をすることの
請求ができる、これは現にあります
規定であります。
それから第六條の四、これは
擬装自作と申しますか、
實質的内容は
小作關係でありましても、それを請負その他の名目をも
つて自作地としている。かようなものは
當然小作地とみなして
買收の
對象になることは、この
法律に
規定してございますが、そういう場合に
請負者をしてお
つたような人を
小作者とみなし、そうして
遡及規定が適用になる、こういうことであります。
第六條の五は先ほど申しましたが、かような
申立がない場合におきましても、
市町村の
農地委員會はみずから二十年十一月二十三日現在と
權利關係の異
つている
農地、または
不在地主か在
村地主かという
關係の異
つている
農地につきましては、
状況を
審査をして
買收計畫を定めなければならないということが
規定してあるのでありまして、これは現在の
勅令に書いてあることを
法律事項にいたしたのであります。
第七條の二項に、在
村地主についての
小作者が
土地の
買收について異議の
申立をすることができるということが書いてございます。これは今までなか
つたのでございますが、
農地を買うということは、
原則としてそのままその
農地を現に
使つている人に賣渡すということになるのでありまするから、
耕作者に
利害關係が非常に大きいわけであります。
從つて農地買收計畫についての異議の
申立權を認めた、
從つて甲の
土地でなく、乙の
土地を
買收してもらいたい、こういう
請求ができるわけでありまして、
耕作者の間における公平を期するという
意味であります。
第十
二條の二は
簡單な
事柄でありまして、
電氣事業者等はいろいろ
設備をも
つているわけでありますが、これが借地の上にいろいろな
設備をも
つているということでございますれば、十
二條によりましてその
措置を使うところの
權利等は保護されますけれども、自己の
所有地でありますと
政府が
買收し、かつそれを賣渡すという場合に、その
使用に關する
權利は消えてしますわけであります。それでは困りますので、
電氣事業者の所有する
土地を
政府が
買つて、これを
耕作者に賣渡した場合におきましても、
電氣事業者は依然としてその
事業設備をするところの
土地の
賃借權を存續しても
つておる、こういう
關係にいたしたのでありまして、別に變
つたことはございません。
それから第十三條の
改正點は、
供託をするということを
原則にいたしたのでありますが、
農地が擔保にはい
つている場合に、代金であるところの
農地證券を
供託するか否か。
從來の
規定によりますると、
所有者から
供託をしてくれというような場合に初めて
供託をするのでありましたが、今囘は
原則としてともかく
供託をする。しかし
擔保權者の方から、いやそれは
供託しなくてもよいという場合に
限つて供託をしない、こういうことにいたしたのであります。
それから第十四條は別に申すことはございません。
第十
五條の
改正點は、
政府が
農地を
買收いた下につきまして、その
農地について
自作農となるべき人が附随的に
農業用施設等を
買收の
申立ができるという
規定でございまするが、これに水の
使用に關する
權利と
立木を加えたのであります。水の
使用に關する
權利、
溜池等の水を
使つているような場合、あるいはそのほかの水を
使つておる場合に、水に關する
施設そのものは
農業用施設でありまするから、これは
當然買收の
申立ができるわけであります。普通の場合におきますると、
農業施設にはその水の
使用に關する
權利も一體にな
つておるのが普通でありまするが、所によ
つて慣行上、水に關する
權利が獨立したものとして扱われておるところもあり、さような場合に處するために、水の
使用に關する
權利というものを掲げたのであります。それから
立木と申しまするのは、たとえば
果樹園等を買収するという場合に、現在ではこれは
土地の從物として扱
つておるわけであります。しかしこれはその上にある
立木——字はおかしいかしれませんが、木は木として扱
つていく、こういう
意味であります。十
五條の
規定も
實質的には別段新しいことがあるわけではございません。
それから第十六條でございますが、御
承知の通りに
政府の買いました
農地は、そのまま
耕作者に賣渡しますが、
都合によ
つてはこれを
市町村であるとか
團體等に——今まででありますると
農業會に賣渡すこともできるということにな
つておるのであります。その
團體に賣渡した場合における
農地の管理または賣渡しに關して
根據規定をおいたのであります。ひつきよう
政府がやると同じような
趣旨で、同じようなことをや
つてもらわなければならぬ。たとえば
團體から
耕作者が
土地を買受けた場合に、
耕作者が
自作をやめた場合には
團體が買戻すというように、
政府のやることと同じことをや
つてもらう、こういうことにいたす
規定を設けるのであります。
それから第二十
二條でございまするが、
買收した
農地を
耕作者に
政府が賣渡します場合におきましては、その
耕作に支障を來すような
權利は
當然消滅をいたすのでありまするが、但書で
電氣事業者のためには、これは消滅しないで存續するということを
規定いたしたのであります。そのほか特に御
説明をいたすことはございません。
それから第二十六條の二でございますが、これは
政府が賣り渡しました
農地の對價を徴收する、拂
つてもらう、これを今まではある
團體に、現在で申せば
農業會、將來は
協同組合、そういうところに委託して取立ててもらうのが便利ではないか、こういう考え方をいたしておりましたが、それではいけないということで
市町村にお願いをすることになりました。その
市町村が對價を取立ててくれる。こういう
規定をしたのであります。これに對してはもとより
市町村に
一定の
手數料を支拂うわけであります。
それから第二十八條、この
規定は
政府から
土地の買受けをした人が
自作をやめたという場合に、
政府がそれを買戻しをしなければならぬというふうな
規定が現にあるわけでありますが、その
規定について補充をいたしたのでありまして、
團體を通じて賣渡したという場合、あるいはある
團體に
政府が
土地を賣
つたという場合、
團體がその管理とか賣
渡し等の
規定に違反した場合に
政府が買戻しをする、かような場合を
規定し、そのほかいはば
字句の補充をいたしたのでありまして、別に
變つた點がございません。
それから二十九條も
字句の
整理であります。
それから第三十條、この三十條は第
一條の
規定のところで申しました
土地の
農業上の
利用を増進するという
字句を入れました。これは先ほど申しますように、
土地改良等を行います場合における
水路等の敷地を
買收する、こういう必要に基いての
規定であります。第一號に
農地及び
牧野と「及び
牧野」を加えましたのは
牧野は後の
規定によ
つて當然買收になります。さような
關係で
字句の
整理をいたしたのでありまして、第八號に「
農地の
開發上必要な
土地」と申しますのが、先ほど申しましたように
水路敷であるとかいうような、
土地改良の施行に伴
つて必要な
土地を
買收できるということにいたしたのであります。
それから第三十條の二でございますが、第三十條の二は開拓するための
未墾地の
買收竝びに大
規模な
土地改良事業を行いますための
所要の
用地、これらを
買收いたします場合に、
主務大臣が
豫め買收または
使用の
豫定地域を指定することができる、一應綱をかけると言うと、少し大きいのでありますが、一
應指定地區を指定する、そして
買收そのものはこれは
一筆ごとに當
つて詳細にやらなければなりませんので、
買收そのものには
具體的な計畫を立てて
買收をする。
豫め主務大臣がある
豫定地域を指定しておく、こういうことにいたしたのであります。これは
開拓用地等につきましても、御承地のように現在では下の
委員會、小さいものでありますと村の
委員會、大きいものでございますと
都道府縣の
農地委員會でもつ
ぱら決定をいたすのでありますが、こういう三十條の二の一項のような
規定によりまして、
政府において計畫的に
開拓農地等を指定する、こういうやり方をいたすわけであります。すなわち總合的な
觀點から計畫的に進める、その
事柄が。また
買收を圓滑にするというわけであります。しかし
買收そのものは
從來の
手續によることには變りはございません。かようにして、一年を超えない期間、この指定をいたしますと、その
地區内におきましては木を伐
つてしもうというような
事柄は
制限をされるのであります。この
土地は
開墾地になりそうだということになると、御
承知のように現在では木がなくな
つて丸はだかにな
つてしまう。こういうことがよく行われるのでありますが、それでは支障がございますので、
土地の性質の
變更であるとか、あるいは木を伐
つてしまうには知事の許可を受けなければならぬということで、
制限をいたしたのであります。
それから第三十條の二は、
農地關係の
委員が無償で
土地臺帳とかその他のものを見せてもらえるという
簡單な
事柄でございます。
それから第四十條の二に移ります。それ以下は
牧野の
買收に關する
規定でございまして、
牧野と申しますのは、第
二條の
定義にございますごとく家畜を放牧する所、
竝びに採草地を含めてのそれでございます。これは
北海道に相當の
面積の
牧野がございます。これが粗笨の
經營をされている。そこで現在の國の要請からいたしますと、これをもつと集約的な
利用をいたしまして、
耕作のできる所におきましては作物をつく
つて、
土地當りの收穫のできる
カロリー量を多くする。あるいはそこまでゆきませんでも大體は畜産を主とする
經營になると思いますが、そういうところに
自作者を移植いたしまして、牧畜を主とするところの
農業經營を營ませる、そういうことによ
つて同時に
土地の
集約利用をしてゆく。またかりにそういうような普通な作物をつくるところの
農地にはならない、また
牧草栽培という形における畜産上の
集約利用もできないというような
土地につきましては、これを
共同牧野といたします。しかしながら現在よりはよほど改良された
牧野にしてゆきたい。こういう
觀點から今囘
牧野につきましても
一定の
面積を超えるものにつきましては、これを
政府が
買收し、そして
土地の
状況によりまして
自作農創設の可能な所はこれを
共同牧野といたしまして、全體的にともに
集約利用をはか
つてゆく、こういう趣意であります。
第四十條の二の「左に掲げる
牧野は
政府が、これを
買收する。」それから一號はいわゆる
不在地主の他に貸している
牧野を
買收する。二番目は普通の
農地と同じような
取扱いで、いわば
牧野についての在
村地主は
北海道については一
町歩、都府縣別に定める
面積は
平均三反歩、それを留保することができるという留保の
規定であります。第三號がほんとうの
規定でありまして、「
牧野の
所有者が所有する
自作牧野の
面積(その者が
農地を所有する場合にあ
つては、その者が第三條の
規定による
買收を受けることのない
農地の
面積を加算して得た
面積以下同じ。)すなわち
牧野と
農地と合わせてその
農地なるものが、
農地改革の
終つた後にその者が保有することのできる
農地という
意味です。これを合わせて
北海道にあ
つては二十
町歩、都府縣にあ
つては
平均五
町歩を
基準としてきめるところの
地域別の
面積を超える場合に、その超える部分の
牧野を
買收するというのであります。この
北海道二十
町歩と申します場合に、東部の根室あるいは釧路という地帶におきましては、おおむね四十
町歩に近い數字になると思います。と同時に、全體を通じまして
農地と
牧野と合わせまして四十
町歩を超えることはできないということに相な
つておるわけであります。内地におきましては、これは地方々々の事情に應じて、
平均五
町歩を
基準にして、現在
農地できめておりますがごとく
面積をきめるのでございますが、津輕半島、下北半島というような
北海道と事情が同様だという所においては、相當大きな
面積になると思います。第四號は、第三號で申したことと趣意は同様でありまして、
自作牧野のほかに
小作牧野をも
つてお
つたらどうするか。その
小作牧野も
面積の勘定の中にはいるということを書いたのでございます。
三八ページにまいりまして、第一項の
牧野のほか、左に掲げるものについては、
政府が相當と認めれば
買收ができるというのでありまして、一號は在村の牧場をも
つておる人について、
北海道では一
町歩、内地では三段歩をもてると申しましたが、しかしながら全然
農地をも
つていないような人が、かような
農業に縁のない人がそういうものをも
つておることも無
意味でございますので、そういう場合には、全部
政府が
買收できるという
規定でございます。
それから第二號は
平均二十
町歩、内地では
平均五
町歩までの
面積は認められるわけでありますが、しかしこれを集約事業をするならば、それと同等な生産をあげることができるじやないか。かような場合におきましては、
一定の
制限の範圍内で、すなわち二割五分の範圍内でさらに食いこんで
買收することができる。こういう
規定でございます。これは、運用には愼重を期する必要があると考えております。
第三號は「
耕作又は養畜を主たる業務としない法人その他の
團體の所有する
牧野」これは
農地と同じ趣意でありまして、法人につきましては、
農業を營むことがその法人の主要業務ということでなければ保有を認めない。こういう
意味であります。四號は放棄されておる
牧野、五號は
所有者の方から
政府に
買收を申しこまれた
牧野であります。
それから末項は、この
政府が
買收するところの
牧野に附随して、その
牧野の上にある
立木または建物その他の工作物を
買收できる。こういう
規定でございます。第二號はその
牧野を
農地にする場合に、
農地の
利用上必要な
農業施設または水に關する
權利、これを
買收する
規定であります。
それから第四十條の三は
買收をしない場合であります。一號は
都道府縣、または
市町村がも
つておりまして、これを多くの人に使わせておる、すなわち共同
利用に供しておる、または
試験研究のために
使用しておる、すなわちあるいは種畜場等の
用地として
使つておる、こういう場合に
買收をしない。第二番目には
市町村、財産區、すなわち、部落であります、または
農業協同組合でも
つておるもので、共同
利用に供されておるものは
買收をしない。ここに
農業協同組合とございますが、現状におきましては、
牧野組合等が所有しておると思います。これを
農業協同組合に改組をするということによ
つて、
買收の
對象にはならないということに相なるわけであります。しかしながらかように共同所有に屬し——これは部落等あるいは
市町村の場合でも一種の共同所有の觀念でありますが、一種の共同所有の場合におきましても、わずかな者が大
面積を所有しておる。こういう場合には、
一定の
基準で計算いたしました
面積以上は、やはり
買收の
對象になる。さような場合は實際上少ないと思いますが、理論上こういうことにいたしておるわけであります。
第三番目は、教育機關の所有に屬して
試験研究の目的に供しておる
牧野、それから第四號は「省令の定めるところにより、
主務大臣の指定した
牧野」これは畜産の改良發達上どうしても優良なる種畜を供給するところの
牧野につきましては、相當
面積を要するわけでありまして、そういう優良な國の畜産の改良發達上必要なる種畜生産を主とする牧場等につきましては、
主務大臣がこれを指定する。そうして二百
町歩とか、あるいはそういう必要なる
限度の
面積はこれを保存する。そうして畜産の改良のために盡瘁してもらう。こういう
規定であります。なおそういう牧場のほかに
都市その他に對する牛乳等の供給上缺くべからざるものを、この第四號をも
つて指定いたしたい希望をも
つております。第五號は
農地の場合における一時
賃貸借と同様の
趣旨の
規定を設けたのであります。
それから第四十條の四は、これは
買收の
手續でございまして、
市町村農地委員會できめるわけでありますが、數箇村にまたがる場合、あるいは
自作農創設のために遺留をするというような場合、かような場合におきましては、
都道府縣
農地委員會で計畫を立てるということであります。これから對價は
未墾地と同じで、類似の畑の四割五分以内で適當に定める。こういうことであります。
第四十
一條でございますが、これも
字句の
整理等でございまして、
從來や
つておりますことと何ら變
つたことはございません。
第四十
一條の二という
規定でございますが、これは
政府が買いました
農地または
未墾地等を、
一定期間
都道府縣知事の定める條件により
使用させることができるという
規定を設けたのでありまして、これは財政法等の
關係により、こういう
規定を設けることが必要にな
つたというので設けたのでありまして、
内容的に
從來と別に變
つた所はございません。以下それぞれ
字句の
整理はございますけれども、
内容的に違
つた點は別にございません。
附則の一番おしまいの第六條でございますが、これは四十七條の二の
規定によりまして、行政上の處分で違法なものの取消または
變更を求める訴えは、當事者がその處分のあ
つたことを知
つた日から一箇月以内にこれを提起しなければならない。但し處分の日から二箇月を經過したときは訴えを提起することはできない。かように行政廳の違法處分に對する訴えの期間を一般の例よりも短縮しております。かように短縮しておりますけれども、第六條によりまして、この
法律が施行にな
つてから一箇月間は、その期間が經過してお
つてもよろしい。こういう救濟
規定を設けたのであります。この
改正法律施行後一箇月間以内は、二箇月を經過してお
つても訴えできる。こういうのであります。
次に
農地調整法の方にはいります。
農地調整法の第
二條においては、今囘
農地調整法の第
二條で、薪炭林及び採草地、放牧地の
定義を掲げました。それは
農業と密接不可分の
關係にありますこれらの
土地につきまして、
農業者の
賃借權その他の
權利の保護、これを
農地と同様に扱いますその
事柄と、それからこれらのものを
利用するところの
權利の設定という
規定を設けましたので、それに伴う
定義といたしたのであります。
第四條の
改正でありますが、第四條は申すまでもなく、
農地所有權等の移動を統制いたしておる
規定でございまするが、今囘
自作農創設特別措置法によりまして、採草地、放牧地等も
買收の
對象になります。またその保有
限度も
農地と一體的に考えられる。こういう
趣旨でありまするので、
農地と同様の移動についての統制をするということであります。
第九條の一項、二項、第三項に「合意解約ヲ含ム」の
字句を入れました。この第九條は
土地の
返還に關する
規定でありまして、この場合
農地の
返還につきましては、
市町村農地委員會の承認を受けなければならぬ。現在は暫定的に
都道府縣知事の認可をようするというわけでございますが、この場合當事者の合意による解約の場合を含むか否かということについて、解釋上疑義がございます。これは先般のまだ帝國議會の時分でありまするが、
牧野博士あるいは我妻博士等の解釋においては、當然立法の
趣旨から、合意解約といえどもこれは一應
市町村農地委員會の承認を受けるべきではないかという御
意見、農林當局は前々そういう解釋をと
つております。しかしこれは司法省との間に
意見の一致を見ておりませんような事情にありましたので、今回これを疑義なからしめるために、明文をも
つていたしました。從
つて合意の解約でありましても、一應は
市町村農地委員會の承認を受けなければならない。しかして
市町村農地委員會はそれが眞に合意解約であれば、もとよりこれを
簡單に承認をする。しかし合意解約を裝
つてお
つても、
實質上そうでないという場合には、
市町村農地委員會はよく
審査をする。こういうことに相なるわけであります。
農地改革に伴うところの最大の缺點は、
土地の
返還であることは申すまでもありません。それについてこれを防止しますために、明文をも
つてかような
規定を設けたのであります。
それから第九條の二は、これは小作料金納化の
規定でございます。小作料を金納化するにつきまして、但書が現在の
法律にはついております。すなわち「小作料債務ガ辨濟期ニ在ルトキ債務者ガ債權者ノ承諾ヲ以テ其ノ支拂ニ代ヘテ他ノ給付ヲ為ス場合ハ此ノ限ニ在ラズ」
小作者の方から金にしないで雜穀なら雜穀にしてもらいたい、こういう申出をして、債權者の方で同意したらよろしいということにな
つておるのでありますが、現在の情勢におきまして
小作者の方からそういう希望を言うということは、およそ想像し得ないのであります。しかるにある地方、たとえば岩手縣等におきましては、こういう但書がありますために、惡用をせられて、物納が相變らず行われておるというような事例もございますので、さような違法、脱法の行為をなからしめるために、但書をこの際落してしまう。こういう
改正でございます。
それから新舊對照表の十ページでございますが、第十四條の二であります。これは先ほど申しました、薪炭林、採草地または放牧地の
賃貸借その他の
權利について、
農地同様の保護をする。同様というのは、第九條を適用して、すなわちむやみに貸してあるところの山であるとか、
採草地等を取上げてはいかぬ、すなわち
農地と同様に第九條によるところの保護を受けるわけでありまして、
農地委員會の承認がなければならない、しかして
農地委員會は第九條に掲げておりますところの
基準をも
つて判斷をするという
耕作者保護の
規定でございます。
それから第十四條の三は、
耕作者または
耕作者の
團體すなわち
協同組合であるとか、農民組合であるとかいう
團體に對して、自家用の薪または木炭の原料に用いる原木、枝條、落枝等の採取云々、かような森林ないしは
牧野、採草地について、
利用權を設定するところの
規定でございます。これはもとより當事者間の話合いで話はつくと思いますが、話がつかないときに、
市町村農地委員會においては當事者はもちろん、そのほか山林、
牧野というような
關係者の
意見を廣く聽いて裁定する。その裁定により
使用權が設定になるというのであります。こういうことの必要な場合として、一つには今までに落葉をと
つたり、草をと
つたりする
權利をも
つていた者が、
農地改革に關連してその
權利を取上げられたとき、その
權利を囘復するという場合もありましよう。また
未墾地の開拓
買收ということによりその
土地の農家が今まで山林、原野から
農業用あるいは自家用燃料の資源を得ていたのが得られなくな
つた。それに對して替地を提供しなければならぬという場合がございます。これはもとより山の奥にはいることはやむを得ませんが、それに代るべきところの山林、原野の
利用權を取得せしめる必要もございます。また場合によ
つてはわずかの人が廣い
面積にわた
つて草とと
つたり、落葉をと
つたりする
權利をも
つているときに、これを他の人にも中間入りをさせる必要のある場合もございます。すなわち
權利の配分調整というような場合が豫想せられるのでありまして、
農業經營に密接不可分の
關係をも
つております自家用燃料資源の採取または推肥原料あるいは家畜のえさにする草等を廣くとる慣行ないし
權利をも
つておりますから、これらのことについて
農業經營を安定せしめるために必要な
措置をするということでございます。
なお第十四條の四は裁定に關する
手續を書いたものであ
つて、別に變
つたことはございません。
それから第十四條の五は、自家用燃料をとる場合の原木に關する
規定であります。農家に薪炭林の
利用權を認めると申しましても、原木については事がはなはだ重要性をも
つておるわけであります。農家にだけは不足の際は特にたくさんの燃料を供給するという
意味でないことはもちろんであります。また原木となると山林の
經營そのものとも
關係をも
つてくるわけであります。そこで原木の採取を
内容とするところの
利用權については特に
制限を設けて、ここに一號、二號の場合に
原則的に限定する。すなわち
昭和二十年十一月二十三日現在の原木を採取するところの
權利をも
つてお
つた。ところがそれが山持ちの方から取消された。これを囘復する場合が第一點、第二點は慣行上原木の採取をなすところの
權利をも
つている場合に、その
使用權を明確にするという
意味をも
つて權利を設定する場合、この二つに
原則として限りまして、第一項の但書でしかしそれ以外の場合においては、先ほど申した未
墾地買收によ
つて今まで原木採取の
權利を失
つた場合、それに替地を提供する。その場合前も
つておりました
權利の範圍内において原木の採取を認めるようにいたしたのであります。
それから第十
五條の二は
都道府縣
農地委員會に關する
規定でありますが、これは現在行
つておることをそのまま法文にしたのでありまして、
實質的に何ら
變更したところはございません。そのほかは
都道府縣
農地委員會の
委員の選擧が、今後は直接選擧になります。これは
市町村、
都道府縣の
農地委員會の
委員の兼職が禁止をされました
關係上、そういうことに相なります。これもしかし新しい
法律ではないわけであります。
附則にまいります。附則の第三條ですが、附則の第三條以下をもちまして不當なる
土地の取上げが行われた場合における
耕作權の囘復の途を開いたわけであります。
從來は合意解約の場合には
市町村農地委員會の承認を受けなくてもよいというような解釋もございました
關係上、相當不當な
土地取上げが行われておるわけでありまして、この場合に、その
地主が大きい人でありますれば、
政府が
農地を買収する、そして元の
耕作者に賣渡すことによ
つて耕作權の囘復ができるわけでありますが、しかしその
地主が非常に小さい人でありますと、
農地改革の
對象としてこの
買收は行われないわけであります。すなわち
土地取上げがそのまま繼續しておる。これでは
耕作者の地位の安定、
權利の保護について公正でないわけでありますので、
昭和二十年十一月二十三日からこの
改正法律が施行されるまでの期間において不當な
土地取上げがありました場合においては、その
市町村農地委員會の手によ
つて耕作權が囘復できる、こういう
規定を設けたのであります。その
手續といたしましては、
市町村農地委員會の承認を受けまして、その協議をする。協議が調わなければ
市町村農地委員會が裁定をするというのでありまして、その裁定に不服であれば、それを
都道府縣
農地委員會に訴願をする。こういう構えにな
つております。しかしながら何でもかでもそれではその
耕作權の囘復をなさしめるかと申せば、次の場合は例外である。すなわち「左の各號の一に該當する場合には、
市町村農地委員會は、前項の承認をすることができない。」前項の承認とはすなわち
耕作權囘復の協議であります。それはその一の「
賃貸借の解除、解約又は更新の拒絶に係る
農地が
昭和二十年十一月二十三日現在における當該
農地の
所有者又はその承繼人以外の者の
耕作の業務の目的に供されている場合、」すなわち
土地取上げをした
地主そのものがつく
つている場合には
耕作權囘復ができる。しからざる場合におきましては問題が非常にむずかしいのでありまして、いわば
小作人同士の争いということに相なりまするので、これは新しい時期における秩序を尊重するという
意味におきまして、
耕作權の囘復に及ばない。
第二號はその
土地の取上げ
返還が適法かつ正當であ
つた場合、第三號は
耕作權を囘復したいということが信義誠實の
原則に反する、こういう場合、すなわち作離れ料をもら
つて返したが、たまたま
手續が缺けておるような場合には囘復の
請求はできない。それから四號は大
面積を
經營しておる。すなわち
平均三
町歩以上の
經營をしておるというものはそういう
申立てができない。第五號は
地主の
状況がはなはだ貧困でありまして、かえ
つてその方に
耕作維持のために同情しなければならぬ、こういうような場合であります。以上概略を申し上げます。