○松澤(一)
委員 なかなかごもつともらしい
お話でございまして、結構であります。しからば御質問いたしますが、農民側の世論としてこういう
法律を出してくれというのでありますが、その資料があつたらひ
とつおだしを願いたいと思います。もし農民側からそういう要求があつたとしたら、政務次官ははき違えておる。それは自作農の創設をしても、その自作農家が維持できるかどうかどういうことで、ひ
とつ何とかしてくれという世論だと思う。そういう世論はあるかもしれぬが、何かこういう
法律を出さぬと、われわれ
農業經營者が立ちいかぬということは、ちつとも
考えておりません。きつとはき違いだと思
つています。もう
一つは、今日本が八千萬の人間を擁して、そうして食糧の
生産を増強せねばならぬ。こうおつしや
つたのだが、これには二つの理窟があります。きつと政務次官は、だれか一人にたくさんつくらせれば、供出をさせるには一番都合がいいから、なるたけ
細分化を防ぐということになるかもしれませんが、私から言わせれば、
一つの理窟としては、東京人であろうと、町の人であらろうと、一段でも二段でもみんな
細分化して、そして
自分で
自分の食糧がとれるようになれば、供出もなければ配給もない。こういう理窟になりますし、また
農業生産の上から言えば、一人がたくさん
土地をつくるよりも、多くの人で少く
土地をつく
つて、多角的な
農業經營をする方が
生産が上ります。こういう理窟のあることをひ
とつ御承知おき願いたい。
從つてただいままでの農村においては、專業の農民というものはなかなか
細分化されておりません。世の中にいろいろの職業がある限り、必ずしも農民のみが一段や五畝ずつにわかれてしまうような状況になるとは私は
考えておりません。ただ私が聴きたいことは、こういう
法律を出すために、かえ
つてこの
法律から地主と小作を出しはせぬかと思うのですが、この點をひ
とつ御質問申し上げます。どういうことかと言うと、この法文中にも、遺言によると
遺産、
土地をだれにでもくれることができる。そういう場合を假定いたしまして、その人たちが實際に
農業經營をするならいいが、親の遺言でその
土地はわけてもらつた。だが實際としては
自分がつく
つていないから、それを弟に貸すとか、兄に貸しておくとか、こういう場合が出たときに、自然とそこに地主と小作を生ずることを私は憂うるのであります。今までもそうですが、敗戰後國柄が
違つてき、民主主義的な思想に變
つてき、人間の氣持が
違つてきたかもしれませんが、御承知の通り何千年の變遷を見てきても、農村は十人おろうが二十人おろうが、とにかくその
子供の
範囲でつくり得る程度で、常に
農業遺産として相續されておる。そして今日にきている日本の
農業の歴史を忘れてはなりません。こういう
法律でしばることによ
つて、おれにも遺言があるから多少の
土地がもらえるのだということになる。どんな憲法が出ても、どんな
法律が出てきても、要するにその運營がよろしくなかつたら、その精神は發輝できないと同じように、かえ
つてこの
法律を出すことによ
つて分散させる憂いがあると思
つております。もちろん見解の相違と言えばそれまでであります。もう
一つは、將來の集團
農業經營その他いろいろの
意味においても、この
法律が私は支障を來してくると思う。たとえて言えば、北海道、東北、關東、中國等では、
土地の保有量に
農地調整法で多少の變化がある通りに、將來の
農業經營は
自分の手で自作し得る程度で、最も高度の
農業經營の發達を來さなければならぬ。こういうことを思うときに、今日の
農地調整法あるいは自作農特別措置法からいくと、御承知の通り二
町歩ないし三
町歩の保有
面積、あるいは
耕作面積が今保有されておるのでありますが、これだけを夫婦の力、家族の力だけで
生産していくことになると、かえ
つて私は日本の
農業經營を萎微沈滞させるのではないかと思
つております。むしろ私はそういう大きい
面積を保有するのよりは、一家一
町歩くらいまで限定してい
つて、そうして高度の増産をしていくということの方に導かねばならぬではないか、もう
一つは、この
法律によ
つて現状をしばるとかりにいたします。これによ
つて土地の分散、
細分化は防げると假定し、今日の自作農特別措置法における一應の分配によ
つてこれはぴたつと抑えるとすると、今後の農村工業あるいはその他の點で、
土地が多少細分されたり移動されたりすることがこれによ
つてなされて、それが
農業の増産になるのをかえ
つて妨げていくという立法になりはしないか。常識的にはこの
法律はよさそうに見えるけれ
ども、あまりこまかくわた
つて、
細分化を防ぐということに中心をおくがために將來必ずこういう
法律がじやまにな
つて、かえ
つて農業遺産を對象として争が起きたり、農村に分配上のけんかができたりしはしないかと思うのであります。こういう點から、私はこの立法は常識的に
考えてそれほど悪いものとは思わぬけれ
ども、とてもいいものとも思
つておりません。この點どうも日本の官僚の人たちの
考え方は、やはりほんとうの農村の實情を知らぬじやないかと思うのですが、今私が申し上げたことに對して、政務次官と農政課長さんから、御
説明を願いたいと思います。