○佐竹(新)
委員 ただいま成瀬
委員から
農林大臣に
質問されて、多少重複する點があるかしれませんが、私の見解と異にしておりますので、もう一度重ねて
質問申し上げたいと思います。第一番目にお尋ねしたい點は、この
組合法の實施にあたりまして、舊
農業會は解散されることになるのでありますが、この解散される
精神はどういうことで解散されるのであるか、何ゆえに解散されるのであるか。私の見解によりますなれば、少くとも過去において
農村の専制支配の手先として、軍閥官僚の手足とな
つて働いたのは
農業會である。その
一つの現われといたしましては、昨年實施されました農地改革によりましても、今日農地
委員が選ばれてはおりますけれども、
實際にあらゆる手段を畫してこの農地改革の妨害をしておりますのは、主として
農業會の役員のものであります。これははつきりしております。おそらく長い間
農民運動の指導者として實踐的に働かれた
大臣は、この點について——
大臣になられてからはどうかしりませんが、少くとも
農民運動をせられた當時においては、この感を深く認識されているに違いないと私は
考えるのであります。
從つてこの
農業協同組合法が實施されますなれば、
農業會は解散される。解散されるその
精神というものから
考えてみますと、どうしても
農業會の役員であ
つた者が再びこの
農業協同組合の役員になれるということは、さつきも成瀬
委員の
質問に對しまして、おそらく
農民はそうしないであらう、こういうような御
答辯のように
考えておりますが、
農村の封建的な、いわゆる泣く子と地頭には勝たれぬ、長いものには捲かれよという、理論を超越しまして、
實際問題としてはこの點が一番重大な點ではないかと思います。われわれが長い間
農民運動をやりまして、
農村の實踐指導をいたしまして、
農民運動の組織の擴大に對して一番妨害をしている者は、
農業會の幹部、これはもう
農民運動を
實際に村にはい
つて指導している者は、たれでもわか
つている點であろうと思います。
從つて全國
農民組合の諸君にいたしましても、またわれわれ
日本農民組合の者にいたしましても、
農業會の幹部が再びこの
農業協同組合の中にはい
つてくることは、これはもう相當に反對をしていると思うのであります。過日私の縣におきましても、擴大執行
委員會を開きまして、集まる執行
委員三百有餘名の者が決議をいたしました。ここにその決議文があります。簡單でありますから朗讀してみます。
決議文
再建平和
日本の
農業發展のため
農村民主化をはかるとともに獨占資本、官僚、
商工業者、配給
業者等の非
農民的支配を排除してここに働く
農民の創意に基く自主的
農業協同組合が組織されなければならないとき今議會に上程せられるべき
農業協同組合法案の内容を檢討するにまことに働く
農民として双手をあげ贊同しておるものであるが未だ戰争指導者封建勢力の強い今日現在の
法案において民主
日本建設に働く
農民としての
精神を蹂躙さるる恐れが
多分にあるので左記條文を
法案中に必ず押入されたい
右決議す
左記
一、日支事變當初より大東惡戰爭終了の間
町村農業會(縣
農業會)竝びに各種配給
統制團體の役員竝びに
町村長の職にあ
つた者は
農業協同組合(
農業協同組合連合會)の
理事監事になることはできない
以上
こういう決議をしたのであります。御
承知のように農地改正法によりまして、
町村長は
實際上は追放者でありまして、この農地改正法によりますなれば、農地
委員というものになることはできないことにな
つておりますか、今日
實際の農地
委員會におきまして、農地
委員會を牛耳
つておる者は追放された舊
町村長の諸君であります。また配給關係にいたしてもそうであります。これらの者がほとんど牛耳
つておる。村におきますところの供出の調整
委員にいたしましても、先般本議場におきまして
大島委員が
質問されましたように、まことに末端においては
政府の方針がゆがめられておる。この
法案の全體としましては、おそらくそういうことはあるまい。この性格、
精神から言いますと、そういうことはあるまいということを
大臣はるる申されましたが、これは村の末端にはい
つてみると、おそらく村を今日まで支配し、また今後においても支配し續けようとして、すでに
農業協同組合法が實施されるというので、今まではか
つて農民組合に對して何ら協力的な申込をしなか
つた。何のことにいたしましても、
農民組合を壊滅するために一生懸命に協力したこれら
農業會の役員というものが、今日におきましては、
農業協同組合が實施されるならば、
農民組合はこの中に強い勢力をもつであろうことを察知いたしまして、
農業協同組合推進協議會というものをも
つて働きかけてみたり、あらゆることをも
つて働きかけておるということは何を
意味するかというと、これらがあくまでも
農民の支配勢力として、
農村民主化の妨害をする。一口に言えば、
農村民主化に、自分たちがあくまでもこの
農村の指導的地位を捨てない。こういうことに
考えがあるわけであります。
從つてこの點から
考えてみまするときに、われわれはどうしても少くとも支那事變から大東惡戰爭終了までの
農業會の舊役員は、この新しき
農業協同組合の役員となることはできないという條文を、はつきりとこの中に織りこんでこそ、
農村の末端の
農業會の役員がその氣持をなげてしまうのであります。これはおもしろい問題であります。私
農村におりまして
實際の
農村の
實情をよく知
つておるのでありますが、もはや
法律できま
つたということになるなれば、もうあの人たちはさじを投げて觀念してしまうのであります。ところが、
法文のうちへ織りこんでおりませんで、
法律の中では明文化されていないということになりますと、法を
運用にて、どこまでもそれらの勢力を盛りこもうとするこの力には、
農民組織はまだまだ——多年鬪
つたところの
農民組織の強いところではそれに鬪う力がありましようが、まだ弱い、終戰後においてできたところの
農民組合は、まだそれだけの鬪爭の經驗、あるいはいろいろな經驗をも
つておりません。どうしてもそういう人々が
中心になれば巻きこまれるをそれが
多分にある。そういう點からこの新しい
農業協同組合に對しては、舊
農業會の役員はこれの役員たることができないということを、この
法文の中に明確に入れるべきではないかと思いますが、
大臣はどうお
考えになるか。この點をお尋ね申し上げたい。
それから第二の點は、この
農業會が解散されて、
協同組合ができ上りますその間における供出の問題は、いずれが取扱うのであるか。こういう點をお尋ねしてみたい。それから
協同組合が組織された場合に、供出配給あるいは金融關係はいずれによ
つて取扱うのであるか。こういう點も合わせて
質問してみたいと思います。一番重點は今の最初に申し上げた點でありますが、
大臣の自信のある御
答辯をお願いしたい。