○田口委員 安定本部令第一條によりますと「經濟安定本部は、内閣總理大臣の管理に屬し、云々」という
規定があり、また第七條には「總裁は、内閣總理大臣を以て、これに充てる。總裁は部務について、その責に任ずる。」という
規定がされております。また第八條には「總務
長官は、國務大臣を以て、これに充てる。總務
長官は、部務を掌理し、部内の三級官の進退を專行する。という
規定にな
つております。この條文から見まするならば、安定本部を代表し、その
責任をとるものは安定本部總裁である内閣總理大臣であることは明らかであります。しかるに本法案においては、總務
長官が安定本部を代表し、その
責任をとるように
規定されておりますが、これは誤
つておるのではないかと思
つております。この法案はよろしく安定本部總裁とすべきではないかと思うのでありますが、
政府の見解を伺いたいと思います。
それから安定本部の性格は、先ほ
ども長官が言明されました
通り、あるいは安定本部令第一條に明定されておりますように、經濟安定に關する緊急施策に對する企畫立案をする、あるいは監督する企畫
官廳であると思います。しかるに本案においては政策の策定、企畫以外の行政事務についても、相當大幅な權限をも
つております。しかもその權限は
主務大臣たる
農林大臣よりはるかに多くの權限をも
つておる
規定が非常に多いのであります。すなわち
農林大臣はこの法文上から見ると十一の權限をもち、
安定本部長官は十六の權限をも
つております。しかも
安定本部長官のも
つておる權限は、安定本部令に
規定されておる計畫その他監督というようなもの以外の、いわゆる純然たる一般行政事務にわたるものが相當多數あると思います。たとえば第四條二項では、
公團が定款をつく
つた場合において、その認可や變更する場合においては
安定本部長官がやるようにな
つておる。あるいは解散命令を
公團にやる場合において、
農林大臣がやらずに
安定本部長官がやる。あるいは
公團の職員の
給與や服務の規律をなす場合においても、これは
農林大臣がやらずに
安定本部長官がやる。それから業務執行の指示を十五條でやる場合においても、
農林大臣でなくして
安定本部長官がやる。それから販賣業者の指定は
農林大臣であるが、その指定の條件を決定するのは
安定本部長官であるということも、十五條二項によ
つて明らかであります。あるいはまた業務の
方法を定めてこれを認可する場合も、
農林大臣でなくして
安定本部長官である。それから財産目録や貸借對照表等の認可も
農林大臣でなくして
安定本部長官である。それから十九條の五項で、剩餘金の納付命令を出すのも、
農林大臣でなくして
安定本部長官である。それから監督權を行使する場合においても、
農林大臣は自主的にはできないで、
安定本部長官が
農林大臣を通じてやるというふうにな
つてお
つて、
安定本部長官がこれをも
つておる。それから報告聽取、臨檢、これは
安定本部長官と
農林大臣が兩方できるようにな
つておる。それから
役員の報酬
規定をつく
つたり、あるいは變更したりすることも
安定本部長官である。それから二十二條の二項で
公團の
役員の不當な行為、任務に適せない行為をや
つたとか、職務を適切に遂行しない、いわゆる行政學上で言う不當の行為に對する
役員の解任權をも
つている。ところが
農林大臣は不法行為に對する解任權をも
つておる。法令に違反したとか、定款に違反した、いわゆる法規に違反したときは
農林大臣。ところが不當行為に對する場合にはこれは
安定本部長官、これは本末顛倒しておるのではないかと思われるような
規定がされておる。それから使用料を決定するのも、要するに
公團が他の施設を使う場合における使用料の決定をするのも
農林大臣ではなくて
安定本部長官である。それから施設の借上げ承認をやるのも、
農林大臣ではなく
安定本部長官。こういうふうに
安定本部長官が、本來の經濟安定に關する企畫その他のいわゆる企畫
官廳としての
仕事以外の、純然たる行政事務に對する大幅なる權限を
農林大臣以上にも
つておるということは、これは安定本部の性格上私は間違
つておるのではないかと思うのでありますが、これは
政府としてどう
考えておるか。安定本部の性格から逸脱していないように先ほ
ども御
答辯にな
つたと思いますが、これだけの
具體的事實がありますので、これだけ辯駁するためには、
具體的事實について、各條について説明してもらいたいと思います。そうでない限りにおいては二重行政になりまして、行政の
混亂を生ぜしめ、あるいは
責任の所在を不明確ならしむると思います。もつとも
責任については、最終
責任者は
安定本部長官であるというような
規定が隨所にありますが、それでも
規定のない場合もそれ以上に多いのでありますから、
責任の所在も不明になると思いますので、この點を伺いたいと思います。
もう一點は、これは
安定本部長官が今ちよつと答えられたのですが、私は納得できませんからもう一遍お伺いするのでありますが、新憲法においては、總理大臣と國務大臣との間においては上下の關係あることは認めておりますが、各國務大臣間における權限は同格であ
つて、上下の關係は認めていないと思います。しかるに本法案においては、世上に安定本部内閣だというように言われておりますが、たしかにこの條文から見ると、
主務大臣以上に安定本部が上に君臨してお
つて、これをや
つておるという條文が、これまた多々あるのであります。一例をあげてみますと、第十四條第三項
給與、服務を定める場合においては、
主務大臣は
安定本部長官の承認を受けてやらなければいけないという
規定がある。二十三條三項において、施設の借上げに對する補償を決定するには、
農林大臣は
安定本部長官の承認を受けなければならない。これは承認という
言葉はどういうことかと言えば、
從來の
言葉で言えば、認可とかいうのとあまりかわらない
方法であります。
從つて主務大臣が
安定本部長官の承認を受けたりしてやるということは、
主務大臣が
安定本部長官の下級
官吏であるという觀念は明瞭であると私は思います。また二十條二項で、
安定本部長官は
農林大臣を通じて監督命令を發することができるようにな
つております。
農林大臣を通じて
安定本部長官がやるということは、もし
農林大臣がこれを拒否した場合にどうなるかということになれば、この
規定からいけば、
安定本部長官はその上に君臨して、
農林大臣が從わなければならないような
規定であるように解釋できるのであります。また十六條、十七條、十九條、二十條によりますと、最終
責任者は
安定本部長官である旨が
規定されております。
責任に甲乙丙という段階をつけることが可能であるとの
前提のもとに、しかも最終の
責任者は
主務大臣ではなくして
安定本部長官であるということになれば、結局
最後の
責任者が
安定本部長官であるということは、その權限においてもまた上であるという
前提でなければ、こういう
規定はでき得ないと思います。これらの三つの點からみても、安定本部は國務大臣の上に君臨しており、世上にいう安定本部内閣というような
感じがこの法案の中にまざまざと出ておると私は思うのでありますが、
政府の見解はどう思われておるかを
具體的に説明願いたいと思います。
それから前からの委員もいろいろ質問しておりましたが、結局本法案は
流通秩序確立のただ一部分の
組織法に關するものだけであ
つて、
流通秩序全般に關する法制ではないと思います。そこで結局
組織法に關するものであ
つて、行為法に關するものは全然ここに上程にな
つておらないのでありますが、
流通秩序全體がどうあるべきかということを見るためには、行為に關するものもなければ、いろいろ質問に誤解が生じたり、またわからなくな
つたりするのでありますから、參考資料として行為法に屬するような
規定、たとえば需給調整規則案というようなものがお手もとにできておるというならば、この際提示していただければ、われわれは
流通秩序確立に關する全般的ながめ方もできるし、誤解もなくなると思いますから、この資料を至急に提示していただきたいと思います。