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伊能政府委員 以上のようないろいろの
制約がございますために、私
どもとしては五箇年ではなかなか困難だということを申し上げたのであります。
次に全體の總費額がいくらになるかと申しますと、電氣
機關車、
車輛を含めて、本年五月の物價水準で百五十四億七千萬圓であります。
從つて新物價體系によれば倍
程度を豫想しなければならないと
考えております。
最後にお
質問の
旅客輸送緩和の問題でございますが、これは端的に私をして申し上げることをお許しいただきまするならば、現在の
石炭配當量は、今月のごときは五十五
萬トン弱でありますが、
石炭配給量をわれわれの
希望するように三割殖やしていただけますならば、客車は昔のように一日當り平均二百キロ走る
程度までは運行ができる。ただいまは百二十キロくらいしか走
つておりません。なぜと言いますと、昔はローカル・ラインの枝線であ
つても六、七往復よりも少い
區間はなかつた。それが現在一番少い所も多い所も枝線は大體三往復という状態にな
つておりますから、
一つの車が、六囘行
つても八囘行
つても同じであるのに、それを三囘しかやらないということで、車がいたずらに寝ている、効率が悪くな
つているということでございます。
車輛も客車は二千二、三百輛燒失し、また特殊の
輸送車千輛近くが特別管理にな
つておりまして、現在八千輛足らずの車を運用しておりますが、これでも
石炭が十分に與えられれば昔の五〇%
サービス——五〇%
サービスと申しますと、全列車平均いたしまして朝のラツシユのときから終列車の一番ひまなときまで平均して五〇%の乗車効率でございます。この五〇%乗車効率までは参りませんが、八〇%
程度には引下げられるのではないかと
考えております。現在は全列車を平均して遺憾ながら定員をはるかに上まわ
つております。と申しますことは、昭和十一年十一月の
旅客輸送の最盛期でありましたときは一日當り四十三萬五千キロメートルの
旅客列車を運轉しておりました。今日は明後十一日から殖やしますローカル列車も加えてわずかに二十一
萬キロメートル、五割に達しておりません。しかもお客は昭和十八
年度の最盛期を、最近ではやや上まわ
つております。一日當り九百五十萬人くらいの乗車人員がございます。列車は五割以下になり、車は約二割六、七分減
つておる。かような状態でございますから
混雑は四倍近くな
つておる。
從つてもし
石炭がわれわれに自由に與えられるといたしますれば、私
どもは八〇%
サービス程度までは緩和し得る。かように
考えております。
石炭につきましては私
どもが昭和一五、六年ごろ、大東亜戰争
當時までいただいておりました炭は、六千四百ないし六千五百カロリーの炭でございましたが、現在は五千二百
程度、これだけカロリーが落ちますと、御
承知のようにあの狭い火床の中では、
蒸氣機關車の特質上、非常に熱効率が落ちるわけでございます。それでアツシユの
關係上、どうしてもまだ燃えているやつでも落さなければならぬ、このロスが非常に多い。それともう一點戰時中、戰前におきましては塊炭が六〇%で粉炭が四〇%でございました。現在は粉炭が七〇%で塊炭が三〇%、これで粉炭のうちの二割
程度は蒸氣に入れますときに眞黒な煙とな
つて飛んでしまうのではないかということで、私
どもは目下粉炭の固形化、れん炭化を急いでおりますが、ピツチがない
關係上、なかなかこれができない。ピツチさえありますれば完全燃燒ができますが、ピツチがないためにできない。やむを得ずピツチレスれん炭でいこうと思いまして、ドイツへ人が行
つて戰時中から研究したのでありますが、
日本の炭はドイツの炭と違
つて、熱と壓力を加えてピツチなしで固める際において、あまり熱を加えますと、
石炭自體が燃えますから、燃えないところで壓力をうまく合致させなければならぬ。ドイツがドイツだけで成功しておりますのは、
世界中でドイツの炭が非常に適しておるからということであります。私
ども目下固形化を逐次や
つておりますが、この問題が
鐵道の
石炭節約の根本的な問題と
考える次第であります。