○栗栖國務
大臣 外貨債、殊に
電力外貨債について
お尋ねがございましたので、この機會に今までの
事情を申し上げたいと思います。私はつい最近まで
興業銀行におりまして、そうしてその間の折衝をほとんどいたしておりましたので、併せて
説明の中には、その間の折衝の材料をも織りこむことをお許し願いたいと思うのでございます。この外貨債
處理につきましては、終戰以來私
どもが非常に心配をいたしまして、その當時の受託
會社でありますところの
興業銀行、
帝國銀行、
三井信託、この三社がいつも集まりまして、いろいろ協議をいたしてお
つたのであります。そうしまして、ある一
會社に對していろいろな要求が出た場合には、三社がいつも協議をして、そのきまつた
方針について
處理していくということを申合わせておりました。なおかつこの三社がいろいろ申合わせをいたします際にあたりましては、大藏省と密接なる連絡をとり、指圖を得ていたすということにしてまい
つたのであります。大體この外貨債
處理は、外貨債
處理法によ
つて處理されたのであります。
電力債もそれによ
つて處理されたのであります。内地において社債をも
つておつたものにつきましては内債とかへてしま
つたのであります。たとえば大同
電力の
外債を内地でも
つているものがございますれば、すなわち大同
電力の承繼でありますところの
日本發送電というものに内債を渡したのであります。しかしながら外地にあります社債につきましては、これは
政府で社債の債務を承繼いたしたのであります。そうしてその承繼に際しましては、
日本の内地側の
處理といたしまして、物上
擔保はすべてなくしてしま
つたのであります、消滅させてしま
つたのであります。
從つて物上
擔保がなくなりましたので、受託
會社の任務も終了いたした形に
なつております。大體そういうような
處理で進んだのでありますけれ
ども、私
ども當時の三軒の受託
會社としては、對内的にはその
處理はできましたけれ
ども、對外的にはたしてどういう問題があるかわからぬということを懸念いたしまして、當時大藏省に願出をいたしまして、引續き三受託
會社としていろいろ問題等が起つた場合には、大藏省の方と連絡していろいろの指圖を頂戴し、
國家的に同一の歩調で動くというような申入れをいたしてお
つたのであります。その申入れをいたしまして、物上
擔保が對内的にはなくなり、受託
會社の任務は終了いたしましても、なお引續き連絡をと
つておつたような次第であります。そういたしまして、終戰になりまして連合國人のも
つておりました財産は復活することに相
なつたわけでありまして、その結果物上
擔保というものも當然復活する、そのまま存續するという結果を見ることにな
つたのであります。しかしながら司令部の方といろいろ連絡をいたしましたけれ
ども、長い間受託
會社、あるいは發行
會社と
外國側の、フイシカルエージエントと申しますが、元利
支拂をする代理度との間に正式の
交渉ができなか
つたのであります。そこで正式の問題としては何ら進展を見なか
つたのであります。いろいろと直接間接に外貨に關する
質問とか、その他のニユース等を得る場合には、大藏省にそれを提供し、さらに大藏省からも三受託
會社に連絡をして連絡を密にするというので、一年ばかり經
つてしま
つたのであります。ところが最近この正式な書面が參りましたが、これは一つは宇治川
電氣と當時申しました大阪にある
會社が、
外債を出しまして、受託
會社は
興業銀行であ
つたのであります。そういうところからもこの
照會が參
つたのであります。それはニユーヨークのナシヨナルシテイーからたしか
照會が參つたと思います。それからそのほかにも發送電
關係におきまして、いろいろ
照會が參りまして、物上
擔保というものはそのままであるか、そしてその
擔保についてはよく保持されておるかどうかというような
照會が來たのであります。それで終戰以來、戰時中の
擔保の移動につきましては、
外債を發行し、それを負擔しております
會社、すなわち
日本發送電、關東配電、中部配電、關西配電等が同一歩調でその報告をいたしておるような次第であります。
今日までの經過はそういうような經過でありますけれ
ども、大藏省といたしましては、過去における
電力外債が
日本の
電源の
開發に非常に效果があつたということ、及び
日本發送電が
昭和十四年につくりました際も、信託證書の條項によ
つてこれをつく
つたのでありまして、それをつくるにあたりましては、ニユーヨークの方からも滿足の
意味を表されておるという
事實もありますので、終戰以來今日まで受託
會社としましては、大藏省は十分連絡をとり、遣漏しないように、そしてやはり國際信義を重んずるという
意味において動いておるような次第であります。
今後の問題でありますが、今後の問題としましては、むしろこの
擔保というようなものは十分考慮いたし、そして先方のいろいろな要求については、こちらは國際信託證書の條項によ
つて滿足がいくように
處理したいと
考えておるのであります。なお今後
日本の
外債につきましては、戰前でございますが戰前までは一囘の不拂もしないで、國際の
信用を高めてまい
つてお
つたのであります。またこの
電力社債につきましても、やはり終戰に伴う
處理としては、國際信義を高く保つように
處理したいと思
つております。なおそういう
信用を保つことは、やがて
將來講和條約もできた後に
電氣の
方面にやはり
外債を導入する一つの大きな礎にもいたしたい、こういうようにも
考えてまして、十分大藏省としては入念にこの取扱いをいたし、三軒の受託
會社、發行
會社にも密接なる速絡を求めるようにいたしておる次第であります。
なお大藏省としましては、そういうような國際
金融關係におきましては、次官を中心とする
委員會を先ほど設くることを決定いたしまして、
將來への資本の導入及び從來の外貨債の
處理の萬金を期させるようにいたしておる次第であります。簡單でございますが
答辯をいたします。