○
村上政府委員 郵便貯金法案の御
説明をいたしたいと存じます。
説明いたしまする前に、
政府側の希望を一言申し述べさしていただきたいと存ずるのでございます。と申しますのは、
逓信省の
郵便貯金は、このインフレの防遏に非常に重い責任を負擔しておるのであります。特にこの年末の
浮動資金をねら
つて、できるだけ多くの遊資を吸收する方針を立てて、今年度の初頭から計畫してまい
つておるのでありますが、それを實行するためには、どうしてもこの
貯金法を通過をしていただかなければ、
スタートが切れないという
實情にありますので、私どもといたしましては、できるだけ十二月一日から
スタートを切らしていただいて、ただいま申し上げた
目的の實現に向
つて邁進いたしたいと考えておる次第であります。
臨時議會終期に近づいて、非常に押し迫
つて急いで御審議を願うことははなはだ恐縮と存じますが、實はいろいろな事情に制約されまして今日に延びてしまつた。かような事情ですから、どうぞよろしく御審議を願いたいと存じます。つきましてはこの
説明の
内容にはいりたいと存じます。
この
貯金法案は從來の
貯金法に對して
全文改正をいたしております。但しその
内容は、あまり從前のものと
變つてはおらないのであります。從いまして
説明の便宜上、
現行法令とその
内容が同一のものは
説明を省略いたしたいと存じます。また
郵便法が先般提案されて、
説明を
終つたのでありますが、これと共通な部分は、同じく
説明を省略いたしたいと存じます。この
郵便貯金法案は五章七十條の法案でございます。これについて逐條的に御
説明を申し上げます。
第一章總則でございます。これは
郵便法と同じ形體をと
つております、第一條はこの
法律の
目的を定めたのでございます。最近の
立法例にならいまして、この法案においても
法律の
目的を冒頭に掲げることにいたしました。「
郵便貯金を簡易で確實な貯蓄の手段としてあまねく公平に利用させることによ
つて、國民の
經濟生活の安定を圍り、その福祉を増進することを
目的とする。」この
目的は現在の
政府の
郵便貯金の
目的と變ることはございません。
第二條、
郵便貯金の
國營及び逓信大臣の職責、これは
郵便で御
説明申し上げましたことと、趣旨は同一でございます。それで
郵便法と多少違います點は、第二項第二號「
法律に觸れない範圍において、
郵便貯金の取扱をする
郵便局を指定」する、これは
具體的に申し上げますと、
既設局あるいは
船舶内郵便局といつたようなものを指定するわけであります。その次の三號「
法律に觸れない範圍において、
貯金原簿所管廳及び證券原簿所管廳を設置し、又は廢止すること。」これも
郵便法にない條項でありますが、これは現行と變りありません。四號、これは
郵便法の場合と同じであります。
郵便という文字が
郵便貯金という文字に
變つておるだわであります。五號、これも
郵便法の場合と同じであります。
郵便という字の代りに
郵便貯金いとう字句を
使つたにすぎません。六號、これも同様であります。七號、これも前同様であります。
第三條、
逓信大臣の職權の委任、これも
郵便法とまつたく同様の字句であります。
第四條、
郵便貯金の業務に從事する官吏、これも
郵便法とその趣旨は同一でありますが、ただ
特定局長に關しては
郵便法によるという
建前で
特定局長のことが書いてないだけであります。その他
郵便法と變りはございません。
第五條、訴訟について國を代表する者、これは
現行法令と變りございません。
第六條、
印紙税の免除、これも
現行法令と變りございません。
現行法の第十七條にございます。以上が第一章の總則でございます。
その次に第二章業務に關する通則、第七條、
郵便貯金の種類は
現行法令と變りございません。ただ第二號のすえ
置郵便貯金以下を總括して、
特別郵便貯金という名簿を新たに附したというだけのことでございます。
第八條、
團體取扱、これも
現行法令とその趣旨において變ることはございません。但し字句において多少
變つた點は、第二項の「
郵便貯金の
團體取扱においては、
官公署、
學校、會社、工場その他の
事業場」、工場その他の
事業場という字句は、
現行法令では工場その他の
團體ということにな
つております。
團體というのを
事業場に改めた程度であります。その
代り新法では、
學校という字を特にあげてございます。
第九條、これも
現行法令と變りございません。
第十條、
貯金總額つ
制限、これは
現行法と多少
變つております。「
貯金總額は、一の
預金者につき三
萬圓を超えてはならない。但し、左に掲げる
法人又は
團體については、この限りでない。」
現行法におきましては
貯金の
最高額は一
萬圓でございます。これを
新法によ
つて三
萬圓に
引上げようということにしたいのでございます。實は現在の
經濟事情におきましては、これをもつと増嵩してもよろしいではないかということも言えるのではありますが、現在の
政府のと
つておりまする
所得税の免除の
限界點というものが、この性質の
貯金の
利子に對しては、三
萬圓以下をも
つて所得税の
免除點とするという方針をと
つておるのであります。それで
大藏當局としてこの
税収入の關係等からいたしまして、これを上げることは非常に困難なのであります。それで
貯蓄組合法におきましても、三
萬圓までは
所得税を免除するという
建前をと
つております。それで
郵便貯金は税金をこわが
つておるわけではありませんが、三
萬圓以上にしまして、
免税點を三
萬圓で線を引かれますと、二種類の
貯金ができまして、この
利子の支拂、その
計算取扱いに非常に困難が生ずるのであります。今
貯金の口座は約一億五千萬ございますが、これらのおのおのについて二種類の
利子を計算することは非常に不可能に近いので、やむを得ず三
萬圓にいたしております。それから三
萬圓以上無
制限に
預入できる、しかも
利子に對して
所得税が免除されるという
法人團體は、次のように
列擧主義をと
つたのであります。これは
現行法におきましては、
法律第四條の一號に「
公共團體、社寺、
學校又
ハ營利ヲ
目的トセザル法人若
ハ團體ノ
預入金」とあります。この營利を
目的とせざる
法人もしくは
團體というこの範圍が非常に廣くありますので、これの認定を
逓信大臣の權限に任せるということは民主的ではない、これをもつと明確に法定するという
建前をとりまして、營利を
目的とせざる
法人團體というこの表現をやめまして、
列擧主義にいたしました。それで比較的
公共性の高度のものをとりまして列記いたしたのであります。その一は
地方公共團體、二は
水利組合、
水利組合連合、三は
學校及び
宗教法人、四は勞働組合、五孤兒院及びこれに準ずる
慈善團體竝びに健康保險組合、共
濟組合等もはいりますが、これに準ずる
相互扶助團體で營利を
目的としないもの。しかもこの五項に掲げる
法人または
團體は省令でこれを明定するという
建前をと
つたのであります。かようにしまして、官廳が
自由裁量によ
つて三萬以上の無
制限なる特典を與え得る
團體というものを押えて、ここにより多く明確に
具體的にしたのでございます。
次は第十一條、
貯金の減額、これは
現行法令と變りがございません。
第十二條、
利子及び
割増金この
利子は
現行利率と變りございません。但し外地の
利子は内地より高か
つたのでありますが、今回は外地で預けた
貯金通帳で内地で拂渡しのできる、その生きておる外地の
貯金に對しても、その
利子は内地の
貯金の
利子と同一にするというので、一本にいたしました。それで
利子を
法律できめるということについては、從來これは省令に委ねられていたのでありますが、これを法定することにいたしたのであります。
利子のごときは一面において
金融界の情勢と相伴いまして、
銀行利率が上れば、これもそれに順應してすぐに上げるということにして、議會の閉會中でも適宜に措置がとれるようにする方法がよい場合もあるのでおりますが、この
利子の決定を
政府の專斷にするということは民主的ではないという
建前で、これを
法律の中にあげたのであります。但し
利率の決定につきましては、近く
金利統制等に關する
法律というものができる見込でございます。これによりますとすベての
金融機關その他の
利子はこの
法律の定めるところによ
つて—まだ決定いたしませんが、
金利統制委員會にかけましてそこで
利率をきめる、その
委員會にはもちろん
政府側の
委員もはいることに相なります。ここ制きめた
利率が
一般銀行にも適用され、同時にわれわれの企圖しておるところでは、
郵便貯金の
利率にも適用されるというようにいたしたいと考えております。そうしますと、この第十二條は
金利統制等に關する
法律でこの十二條を修正して、一々この
法律を直さないですむように相なるかとも存じます。次にはこの十二條の二項に「
定額郵便貯金については、
割増金をくじびきにより附つける取扱をすることができる。
割増金を附ける取扱をする
定額郵便貯金(以下
割増金附定額郵便貯金という。)には、そのすえ
置期間中
利子を附けない。」とあります。これが實は
新法の特色として、冒頭に私が審議を急いでおることを御
説明申し上げました理由でありまして、この
制度を早く實現したいという點でございます。
從來國家事業は、國民の
射倖心をねら
つて貯蓄の増強をはかるという
建前を、少くとも
國家事業としてはと
つていなか
つたのであります。しかし現在においてはその思想に從
つて拘束さるることはないと考えられますので、時代に適應するようなそういう方法をとることにいたしたいと思います。これは民間においてはすでに
福徳定期預金という
制度がございますが、あれと大體同じような
制度をつく
つて、
定額郵便貯金に
割増金もしくは
割増金に代るものを提供したいという計畫であります。それでこの十二月から實行にはいりたいと考えております
割増金附の大要を一
應申上げたいと存じますがこれはこの年末に總額十五億、本年度内に二十五億ないし三十億圓くらいを吸収したいと考えております。
預入金額は一口五百圓、本年度の
發行豫定口數は五百萬口ないし六百萬口、一箇年間、無
利子としてすえ置く、
利子は年三分、これは
定額郵便貯金第一年目の
利率でございます。この年三分の
利率に相當する約七千五百
萬圓ないし九千
萬圓、これを
割増金に充當いたします。
割増金についてはからくじなし、一等は
高級ラジオ、自轉車の物資をつける。以下現金及び
種々物資をつけろことが考慮されております。またすえ
置期間中の拂戻しは認めないが、その
期間經過後は
定額郵便貯金として
利子をつけるという方法を考えております。これが現在
逓信省が企圖いたしておりまする新しい
制度の
割増金つきの
定額郵便貯金でございます。その最後の項、
郵便貯金切手には
割増金を
くじ引によりつける。これは
現行規定と變りございません。
その次に第十三條、
利子の計算でございます。これは大
體現行制度と同じであります。但し二、三點違
つておる點は、一つは
定額貯金には三箇月ごとに
利子をつけたものを、
一般原則に從いまして、毎月
利子をつけるということに改めたのであります。その次には現
行方令には不當なる
利子がついておる。たとえばその月の三十日に
預入して翌月の一日に拂い出すという場合には、一箇月の
利子がとれるのであります。こういう規則で
現行法は成り立
つておりまするが、この條文は削除いたしました。これは實際に從來の統計から見まして、削除しても實害がないということの結論に達したからでございます。
第十四條、
郵便貯金通帳及び
郵便貯金證書の交付、これは
現行法令と變りございません。
第十
五條證券保管證の交付、これも
現行法令と變りございません。
第十六條、
通帳の冊數の
制限、これも
現行法令と變りございません。
第十七條、これも
同様變りございません。
第十八條、
通帳、
貯金證書及び證券保管證の再交付、これも
内容は大體變りございません。但し料金五十錢のものを一圓にいたした點が
變つておるだけでございます。十八條の三項の末文の「
證券保管證一枚につき一圓を納付しなければならない。」五十錢が一圓になつただけでございます。
第十九條、
貯金原簿及び
證券保管原簿、これも
内容は
現行法令に變りございません。
第二十條、
利子記入、これも
内容は
現行法令と變りございません。
第二十一條、確認、これも大體において變りございません。但し
從來檢閲もしくは現在
高證明という
制度をも
つていたのでありますが、これを確認という言葉にかえただけであります。その處理方、
効力等については變るところはございません。
第二十二條、
通帳等の提出、これも
内容は
現行法令に變りございません。ただ
現行法では「
檢閲スルコトヲ得」とありますが、
新法におきましては「提出を求めることができる」ということにかえただけでございます。
第二十三條、印章、これも
現行法令と變りございません。
第二十四條、
讓渡制限、これは多少
變つております。
讓渡制限をし得る範圍を狹めたのであります。
現行法令によりますと、規則の三十五條で、
讓渡することができるものは、その一つは「
公共團體、社寺、
學校又
ハ營利ヲ
目的トセザル法人若
ハ團體ニ讓り渡ス場合」その次は「
親族ニ讓渡ス場合」「遺言ニ依
リ讓渡ス場合」この三つの場合を
現行法では認めておるのでありますが方法はおきましては、この第一の
公共團體云々を削除いたしたのであります。もともとこの
讓渡を
制限いたしました立法の趣旨は、
郵便貯金通帳のごときを頻々として
讓渡されますと、一つは
權利關係が複雜になる。
簡易化を旨とする
貯金についてははなはだ好ましくない。もう一つは
通帳の賣買による
不正行為を取締る。賣買とか質入れとか、擔保とかいうことによ
つて不正行為がなされることがあるのであります。その一つは
貯蓄奨勵の
目的から、
貯金を簡單に他人に
讓渡させることを抑えておるのであります。かような理由から
讓渡を
制限いたしておるのであります。それで實際問題としては、
讓渡しなくとも、お互いに實在しておる自然人ならば、一遍引出して現金を與えればそれで
目的は達するのでありまして、特に
讓渡の必要のあるといつたような場合を殘して、この
必要性に乏しいものは削るという
建前から、
現行規則の一號を削除いたしました。
その次に第二十五條、證明であります。
内容は
現行法令と變りございません。
第二十六條、正當の拂渡。これも
内容は
現行法令と變りございません。
第二十七條、免責。これが新しく設けられた條項でございます。
現行法におきましては
現行法の第十四條、「
郵便官署ハ郵便貯金ニ關スル取扱ノ遅延ニ因り生
シタル損害ニ付賠償ノ
責ニ任セス」というふうに定めてございます。これは新しくできました憲法第十七條に照らして、この條項をそのまま殘存させておくことは
不適當と認められるのであります。それで
原則といたしました
國家は損害を賠償するという
建前をと
つております。公務員の
不法行為による損害に對しては
國家は
原則として賠償する。それでこの
郵便貯金は、その性質は民法の
長期貸借に類似しておる契約でございますので、この
損害賠償に關しては、主として民法の規定によることにいたしております。しからば
原則として賠償するが、賠償しない場合はどういう場合か
とい例外の場合をここに掲げてございます。第一號「拂い渡すべき
郵便局において現金に餘裕のないとき。」これは民法の
原則からいけば、
金錢債務の履行遅滯、金がないから待
つてくれということは、民法においては
金錢債務の履行遅滯に相なるのでありますが、田舎の
郵便局等におきましては、往々にして高額になりますと、現金を親元の局から、もしくは銀行から取寄せるまでには、一日かそこらの時日をかしてもらわなければならない關係で、これを
例外規定として設けたのでございます。
第二號といたしまして「
預金者の提出すべき書類が不完全なとき。」これは
預金者側の責に
歸すべき事由によ
つて履行遅滯の生じた場合を示しております。たとえば
通帳に押捺してある印鑑と
受領證の印鑑とが違うといつたような場合がこれでございます。
第三號「
不可抗力に因り拂い渡すことができないとき。」
不可抗力の場合は
債務者の責に
歸すべからざる事由でありますから、これは民法におきましては
金錢債務の履行遅滯は、
不可抗力をもつと對抗することはできないということにな
つておりますので、民法の
原則に從いますれば、
不可抗力でも
損害賠償の責に
任ずるのであります。
貯金法におきましては、
不可抗力の場合は例外として免責にしてもらいたいというので、ここに民法に對する例外を掲げたのであります。その他の場合には
國家は
損害賠償の責に
任ずるということにいたしております。
第二十
八條料金の還付、これは
現行法令とあまり變りがございません。ただこの二十八條の末文にあります「その料金を納付した時から一年を經過したときは、これをすることができない。」
現行法令におきましては九十日とな
つておりまするが、
一般私法の期間と同調いたしまして一年ということにいたしました。
第二十九條、
貯金及び
保管證券に關する權利の消滅、これも
現行法令と
内容は變りございません。
第三十條、利用の
制限及び業務の停止、これも
現行法令と
内容は變りございませんが、この第三十條について一言申し上げておきますと、三十條は「
逓信大臣は、天災その他やむを得ない事由がある場合において、重要な業務の遂を確保するため必要があるときは、
貯金原簿所管廳、
證券原簿所管廳又は
郵便局を指定し、且つ、期間を定めて、
郵便貯金の利用を
制限し、又は業務の一部を停止することができる。」という規定であります。これは現在これと同一の
現行法によ
つて、戰災を受けて復舊しない
事務に對して停止、
制限をいたしておりまするが、この現在の戰災のために生じた利用の
制限はこれに基いてやられておるのであります。
新法が成立しました後は、
新法に基いて省令を出しまして、これの細目をきめるのでありまするが、當分はこの
戰災復舊のために、どうしても
取扱いを停止もしくは
制限を繼續させていただかなければならない
事務がまだ多少ございます。この
貯金法にはいろいろ
制度としてあげてございます。たとえば
利子記入とか、
證券保管證の交付、證券の賣却、購入、保管、その他いろいろこの
法律に
制度を定めてございますが、この
法律が通過したと同時に、全面的にこれが動くということができない部分があるのを御了承願いたいと存ずるのであります。それはこの三十條に基いてやはり省令、
告示等を出してしばらくお待ちを願わなければならぬような
實情にあるのでございます。
次に三十一條、
非常取扱、これも
内容は
現行法令と變るところはございません。以上が第二章の通則を申し上げました。
第三章、
通常郵便貯金でございます。第三十二條、
預入金額の
最低制限は一度の
預入額は一圓以上といたしておりまするが、
新法におきましては現在の
經濟事情に照らし合わせまして五圓以上ということにいたしました。
第三十三條、
預入の證明、これも
現行法令と變るところはございません。
第三十四條、有
價證券の
預入、これも
現行法令と變るところはございません。但し
現行法令から一つ削除したのがございます。それは
現行法の第七條の「
郵便切手、
郵便貯金切手、
及支拂期ノ
開始セル證券ハ命令ノ定ムル所ニ依
リ郵便貯金ニ預入スルコトヲ得」というのがございます。この
郵便切手で
貯金に
預入するという
制度をやめたのでございます。直接
郵便切手で
貯金に
預入するというこの
郵便切手を削除いたしました。但し
郵便貯金切手で納入することは認めております。この點は特別すえ置
貯金で別に定めてございます。
三十四條、この末項に掲げたことは
現行法の
制度として實行いたしておるのでありまするが、明文がないのでここに掲げたのであります。それは「第一項の規定による
預入に係る
通常郵便貯金については、
當該有價證券が決濟された後でなければ、
貯金の現在高がその有
價證券による
預入金額を下るような拂もどしをすることができない。」これは銀行の
持參人拂の
小切手は、ただちに
郵便貯金に
預入することができることにしております。
現行法令もこうな
つております。
小切手ですと
不渡小切手がときどきあるのであります。この
不渡小切手をただちに有效と認めて、その翌日から現金で支拂うということは危險でございますから、これはこの
小切手を
手形交換にかけて、不渡りでないということを確かめた後に拂うという趣旨であります。但し千圓預けてすぐに千圓をそれからとるというふうに考えなくてもよろしいので、結局その
貯金から最後に千圓殘るまでは、翌日からでも拂
つてあげる。要するに有
價證券によ
つて預入金額を下るような拂もどしをすることはできないというように表現いたしたのであります。
その次、第三十五條、これは
内容は
現行法と變りございません。
第三十六條、これは同じで、變りございません。
第三十七條は多少
變つております、現有の
貯金法の
建前といたしましては、
貯金の拂もどしは
通常拂を
原則として、
即時拂は
原則にな
つていないのであります。
通常拂は御承知の通り拂もどし請求を
郵便局に出して
郵便局から
原簿所管廳、すなわち
貯金支局であります。そこで證書を發行して
預入者にそれを渡して、それをも
つて局へ來て現金をとるというのが
通常拂であります。これは非常に時間がかかるので、
貯金をおろす人のほとんど大多數は、
即時拂で
郵便局へ
行つてすぐに窓口で拂
つてもらう、この途を利用しておるのであります。
新法におきましてはこの
實情に鑑み、郎時拂主義と申しますか、郎時拂をも
つて拂もどしの根幹とするような
建前をと
つたのであります。
第三十七條は「
通常郵便貯金の拂もどし金の拂渡は、
通帳の提示を受けて(省令の定める場合には
貯金原簿所管應の發行する拂もどし證書と引き換えに)これをする」というようにいたしたのであります。
第三十八條、これも大體において
現行法と變りございません。ただ第二項に「
逓信大臣は、必要と認めるときは、離島その他交通不便の地域につき、前項の有
效期間を延長することができる。」これは
現行規則によりますと、百二十日という數字で切
つてありますが、これは沖縄とか
南洋群島とかいうものが客體にな
つてお
つたのであります。
新法におきましては、
逓信大臣が
實情に合わして有
效期間を延長することができるという
建前にしております。
第三十九條、これは
内容は
現行法令に變りございません。但しその條文の末文に「證書一枚につき一圓を納付しなければならない。」として、
現行制度では五十錢でありますが、それを一圓にしたにすぎないのであります。
第四十條は拂もどし金に關する権利の消滅、これは拂もどし證書の有
效期間の
經過後三年間拂もどし證書の再交付の請求がないときは、一定の手續を經て國庫の所有に歸せられてしまうということでございます。