○
網島政府委員 それでは私から私の所管しております
事項につきまして、御
説明申し上げたいと思います。お手もしにごく概略でございますが
參考資料をお配りしておきましたので、これを
ごらんにな
つていただきまして、この
順序によりまして御
説明申し上げたいと思思います。
まず
逓信省の
電波局において所管しております
事項でご
ざまいすが、これは第一ページにございますように、
官制によりまして次の
五つのことがきめられてございます。
第一は
電波統制に關することと申しますのは、
電波というものが空間を傳わりまして、一國のみならず他の國に非常に大きな影響をもちます
關係上、
國際條約によりまして、
電波の
使い方につきまして各國が相
當大きな制約を受けております。そうしてその條約によりまして、各
國政府がこの
電波の
使い方に關しまして、相當強力な
統制を加えなければならないことにな
つております。從いましてこの條約を基準といたしまして、
日本におきましても、
日本の國内において使われます
電波というものにつきまして、いろいろ
監督しているわけでございます。これが第一項でございます。
第二の
電波技術に關すること。これは多少字句は漠然としておりますが、第一項の
電波行政をやる上におきまして、
電波の
傳わり方の問題であるとか、あるいはまたきめられた
波長が狂わないようにするためにはどういうふうにしたらいいか、どういう措置をとらなければならないかというふうに、この
電波行政をするために、いろいろ
技術的にむずかしい問題がございます。從いましてそういう
技術的な問題を解明いたしまして、それを基礎にしてこの
行政をや
つていくということになりますので、その
行政に必要ないろいろな
技術上の
調査、研究をするということがこの第二項の趣旨でございます。
第三の
標準電波竝びに標準電波施設の
建設及び
保存に關することといいますのは、この
電波統制の上におきまして最も重大な
一つの問題は、きちんときめられた
波長、
一つの
無線局がつくられますと、それには
波長というものが各
國政府によ
つて割當てられます。その
波長というものが
國際條約できめられた
範圍内において、きちんと合致しておるかどうか、狂
つておりわしないかどうかということを常に監視し、また
實際の
電波を運用する者はそれを遵守する義務がございます。ところがその
電波の
波長をきちんと定める上におきまして、どうしても物さしが必要でございます。御
承知の
通り電波というものは目に見えませんから、
波長何メートルの
電波と申しましても、
實際の物さしをも
つてい
つてそれをはかるわけにはいかないのでございます。やはり
電波の物さしというものが必要にな
つてきます。その
電波の物さしがこの
標準電波でございまして、これはある特別な
設備から發生された非常に正確な
電波でございます。この正確な
電波を出すことがこの第三項でございます。これは
監督官廳であります
逓信省が利用するばかりじやなしに、
一般の
無線施設を利用する面におきましても、この物さしを利用して、
自分の
電波をきちんと常にはか
つておくということになるわけでございます。
第四項の
公衆通信に關するもの以外の
無線電氣通信及びこれに附帶する
業務に關すること。これを
説明いたしますが、御
承知のように
公衆通信に關する
業務は、現在
逓信省の
電務局と、
技術の面は
工務局と、この二つの局において擔當されております。しかしながら、
日本におきましても、この
公衆通信以外におきまして、
無線を
使つてや
つておるところの
通信が多々ございます。たとえて、後ほど御
説明申し上げますが、
逓信省におきまするところの
海岸局——これは船と
通信する
無線でございますが、船との間にいわゆる
公衆の
通信も行いまするが、それ以外に、いろいろ船の
遭難通信でありますとか、あるいは船の運航に關する
通信とか、そういうような
公衆通信以外の
通信もや
つております。さらにまた
放送事業でございますが、このような
放送業務は現在いわゆる
公衆通信という範疇にはい
つておらないのでございます。
從つて電務局、
工務局の
所管外でございます。
從つてこういうものにつきましても第四項におきまして
電波局が所管しておる次第であります。
次に第五項の
航空保安に關すること。これを御
説明申し上げます。御
承知のように、
戰爭中あるいは
戰前におきまして、
航空關係の
行政事務は
逓信省、あるいは
戰爭中には
運輸通信省において
取扱われたのでございますが、
敗戰後日本の
航空事業というものは
連合軍總司令官の指令によりまして、全部やれなくな
つてしま
つたわけであります。
〔
速記中止〕
以上の
五つが現在私
どものや
つておる
仕事の大綱でございまして、そのおのおのにつきましてさらにもう少し詳しくお話し申し上げたいと思います。それにはいります前に、四ページを
ごらんにな
つていただきまして、これらの
仕事をするために
地方においてはどういうふうに行われておるかということを
順序として御
説明申し上げます。四ページに
逓信局分課規程拔萃というのがございますが、現在
逓信局には
總務部、
業務部、
工務部、
貯蓄部、
いろいろ部がございます。ところでこの
電波行政の
關係は、現在
逓信局の
業務部と
工務部、それから
電波觀測所と、この
三つのところがこれを擔當しておるのでございます。
業務部はこの
逓信局におきまして、
電信電話の
事業、
竝びに今お話をしておるところの
電波の
監督、こういう
仕事の
事務面を擔當しております。それから
工務部と言いますのは、
逓信省自體の
電信電話の
仕事及びこの
電波の
監督の
技術部面を擔當しておるところでございます。それから
電波觀測所と申しますのは、
地方におきまして、その
地方の
所管地域におきますところの各種の
無線施設の
電波が、
國際條約に正しく合致しておるかどうかということを常に觀測しておるところでございます。こういうふうに現在
三つの部門で行われておりまして、しかもこの
業務部、
工務部というのはいわゆる
逓信省自體の
事業と、こういうような
監督の面とを、兩方
一つのところでおのおの分擔してや
つておるという
關係であります。次のページに參考として、今の
關係を圖表にしてございまするが、こういうような
關係にな
つておりまして、この點は最近において、この
電波行政という、いわゆる
日本全體を對象とするような
行政が
三つの
場所にわかれておりまして、しかもこれが局長というところに
行つて初めて一本になるということは、非常に外部の人に對して不親切なやり方ではないかということ、
竝びにこういうような督監行政が
自分自身の
事業と同じところで擔當しておるということは、
監督行政を公平にやるという建前から
言つて適當ではないだろうということを指摘されておるのであります。從いましてこれはまた決定はしておりませんが、できるだけ早い
機會にこれらの中から
監督部面だけを取りまとめまして、
一つの部局をつくるようになるだろうというような考えをも
つておる次第でございます。
次に、
官制の
最初の方にありますところの
電波統制に關する
仕事につきまして、少しく詳細に御
説明申し上げたいと思います。
〔
速記中止〕
この附録につけました二十八ページを御覽にな
つていただきたいと思うのでございますが、この「
無線施設の現況」というところに、今年の八月一日現在の表を載せてございまするが、こういうふうに、現在わが國におきましては
國際通信、それから
國内通信、それから船との
海岸通信、それから
警察の用に使うところの
警察無線、それから
鐵道關係の
鐵道無線、それから
氣象關係の
氣象通信、それから燈臺、
漁業、それから
放送、それから
船舶の港に入港、出港するときに使う
港務無線、そのほか船の
無線、こういうものを全部加えますると、現在四百六十三という
波長を
日本が
使つていることになるのでございます。この四百六十三という
波長の數は、これは
實際のところ、
日本といたしましては
戰爭前、あるいは
戰爭中、
日本が
一般の官民の
無線局に使わせたところの
波長よりは多いのでございます。
戰爭中あるいは
戰爭前におきましても、
日本の
無線通信というものは、陸軍及び海軍の
無線通信に非常に壓迫されまして、
實際國民が使いたいと考えてお
つたところの
無線通信もなかなか許可されませんでした。
從つて數も非常に少か
つたのでございます。現在も相當な制限は受けておりまするが、むしろ
戰爭中あるいは
戰爭前よりも殖えておるという
状況でございます。ところでこれらの
無線通信の
使い方は一體どういうものかと申しますると、三十ページに
圖面を書いて御
説明申し上げるようにしておりますが、まず一番大きな用途は
警察通信網でございます。御
承知のように、この戰爭によりまして
日本の
警察通信網というものは非常に多くの破壞を受けたのでございます。
戰爭前におきましては、大體
日本の各
縣及び各縣のうちの
縣廳と
警察署と、それから
警察署からまたその分署あるいは派出所というものは、ほとんど
警察專用の
有線通信網によ
つて連絡されておりました。
從つて内務省あるいは
警視廳から全國のどこに對しましても、ただちに
電話あるいは
電信による
連絡がとれたのでございますが、
戰爭中におきましては、これらの
有線通信網の保守が非常に不如意であ
つたということ、
竝びに空襲によりまして、相當打撃を受けまして、現在
有線による
警察の
電話あるいは
警察電信の
連絡というものはめちやくちやで、ほとんどできないのであります。しかしながら
保安という立場から見まして、各縣の
警察關係が
連絡がとれないということは非常に不安のもとになりますので、これを
無線連絡でやろうということになりまして、
終戰後いち早くこの計畫を立てまして、現在はこの三十ページにございまするように、
東京の
内務省あるいは
警視廳から各
縣廳それから各
縣廳から各縣内の主要の
警察署は全部
無線によ
つて連絡できるようにな
つております。なおそればかりではなしに、日々この
無線連絡で用を足しておるという
状況でございます。このほかになお縣内非常に多數の箇所に、常時は使いませんが、
無線施設をも
つておりまして、風水害によりまして
有線施設が壞れましたとか、あるいはまた特別な事情があるような場合には、ただちにそれを動かして、ほとんど各
警察署全部が、
無線によ
つて連絡できるという
状況にな
つておるのでございます。これが
警察無線の
現状でございます。
それから三十三ページに
國内無線通信網というのを揚げてございまするが、これは今の
警察專用の
無線通信と別箇に、
逓信省が
施設して、
逓信省が運用しておるところの
無線施設でございます。御
承知のように
日本は非常に天災の多い國でありまして、いつ何時この
有線施設が破壞されるかもしれないのであります。そういうときにおきまして、
有線施設の
復舊までに全然
通信ができないということは、
國民に對しまして非常に不安とまた焦慮を與える原因となると思うのでございまして、最小限度緊急な
通信は、そういう場合に
無線によ
つて連絡しなければならないということから、
逓信省におきまして、全國の各
主要都市を
無線によ
つて連絡する計畫を立て、これを實施しております。現在このように
東京、札幌、福岡、
大阪というところには
無線の
高速度通信によりまして、日々非常に多量の
無線通信を實施さしております以外に、各支線におきましても、それぞれ
無線局を設置いたしまして、
日常有線の補助として電報を
取扱つております。
有線が破壞された場合にはこれが
主要通信になるわけであります。なお
日本の
周邊の小さな島は、現在のこの
經濟關係ではなかなか
海底ケーブルを
施設するということは思うようにいきませんので、暫定的に
無線連絡によりまして、
一般公衆に不便を與えないようにや
つておるのであります。
次に三十四ページに
海岸局の位置を
圖面に書いてございます。
海岸局と言いますのは、船と
通信する
無線局でございまするが、これには大
體三種類ございます。
一つは
一般の商船と
通信をする
海岸局でありまして、これは現在全部
逓信省がこれを
施設し、これを運用してや
つております。
その次は
港務部の
無線と稱しまして、これはごく少數でございますが、
横濱とか、あるいは名古屋というような國際的な、船が多數出入するところには、いろいろ檢疫の
關係とか、あるいはブイの
關係、そういうような特別な
通信が船との間に必要なんでございまして、このためにごく小規模な
無線を
港務部に許可しております。これが
港務部の
無線でございます。
なおこのほかに
漁業用の
無線局というのがございまして、これが
漁船との間に
無線連絡を行いまして、現在のわが國のこの食糧の非常な
重要部分をなすところの
水産事業に對して、非常に貢獻しているところのいわゆる
漁業用無線局でございます。この
漁業用無線局は
逓信省自體がこれを
取扱つているものもございますが、その大
部分は、縣とかあるいは
漁業組合というところにその
施設を許可いたしまして、そういうようないわゆる公益法人的な形をもちましてこの
仕事が續けられております。この
漁業用無線の數につきましては、第二十九ページに四、
船舶無線施設空中線電力別隻數調というのがございますが、このように現在
漁船のも
つている
無線施設は千六十ございます。毎月現在月に八十ないし九十ぐらいの割合をも
つてこの
漁船の
無線施設というものが増加しつつあります。これはまぐろとか、かつおというような
漁船は相當沖合に出まして漁獲をするのでありますが、その場合にこの
漁群のいる
場所を
お互いに通知し合う、それから漁をやりまして歸
つてくる場合に、どこの港にそれをまわすべきかというような
通信が非常に多いのでございまして、今後ともこの
漁船の
無線というものは非常な勢をも
つて増加する趨勢にあるのでございます。しかも大體この
漁船といいますのは、十
數トンのものから百トン近くのものまでございますが、その大
部分は數十トンという非常に小さな船でありまして、相
當大きな
電力の
無線機をすえつけることは不可能であります。從いまして
漁船の方にはなるべく小さな
電力のもので負擔をかけないようにして、その
代り陸上にはできるだけたくさん
海岸局をつくりまして、そうして
漁業用の
通信をうまく果してやろうというのが現在私
どもの考えている方針でございまして、このために最近
相當大幅にこの
漁業用の
海岸局が増置される機運にな
つているのであります。
次に三十五ページにあげました
對外無線通信の
現状を御
説明申し上げます。
戰前あるいは
戰爭中日本の
對外無線通信というものは、
世界有數な
設備とその
通信量を誇
つてお
つたのでありますが、
戰爭中に
無線連絡のほとんど大
部分は休止のやむなきに至りましで、わずかにドイツ、あるいはソ連の
モスコー、スイスの
ジユネーヴ、
ストツクホルムなどの
中立國という所に限定されてお
つたのでございます。
敗戰後連合軍が参りましてから、
外國との
無線連絡の要望が非常に増大いたしまして、現在この
圓面にございますように、まず
無線電信におきましては
アメリカのサンフランシスコ、サンフラシスコは
現立マツケイとプレス・ワイヤレス、R・C・Aこの
三つのところを相手としまして三
囘線や
つておるのでありまするが、そのほかにマニラあるいは
ジユネーヴ、
モスコー、
ストツクホルム、從前のものに加えまして、さらに
アメリカに對しまして中繼
放送の
囘線もも
つております、また
電信のほかに
電話の
囘線も現在二
囘線や
つております。そのほか
新聞用といたしましてユナイテツド・プレス、アソシエーシヨン・プレス、こういう
方面の新聞
關係の
通信というものも現在非常に殖えております。さらに
大阪におきましてはパリ及びコロンボという
方面を現在
無線連絡をや
つておるのであります。今後貿易の再開に伴いまして、これらの
無線連絡はさらにその他の各國と増大する豫定にな
つておるのでありまして、わが國の
對外無線連絡は今後非常に發達の
状況にあると申して差支えないと思うのであります。このほかに
圖面はございませんが、
氣象關係の
通信は現在その大
部分がやはり
無線によ
つて行われております、現在
東京の
中央氣象臺をはじめといたしまして、全
國各地に非常に多数の
氣象臺が散在しておりますが、これらはほとんど全部
無線によ
つて連絡し、また
無線によ
つて一日十
數囘氣象状況を
放送いたしまして、船でありますとか、飛行機でありますとか、その他
各地にこれを傳えておる
状況でございます。
なおこの
機會に
無線が今後どういう
方面に利用されるだろうかということにつままして、
簡單に御
説明申し上げたいと思います。今までは大體
電波の利用は主として
通信方面、あるいは
放送關係に限定されておるのでございますが、現在
アメリカ及びわが國その他の各國で非常な勢をも
つて發達しつつあるものは、
電波を
使つていろいろな
工業製品を出そうというのでございます。その二、三の例を申し上げますと、第一は
ベニヤ板の
製造でございます。
ベニヤ板は御
承知の
通り薄い板を何枚も糊でつけまして、これを乾かして非常に固い板にするのでございますが、この
ベニヤ板をくつつける際に
電波を
使つて中を温めてやりますと、今まで數時間要したものが、數分にして
ベニヤ板が非常に早くしかも強固にくつつくのでございます。なお最近繭を
電波によ
つて處理するということもすでに
實驗の域を脱しまして、
實際に利用される
方向に向
つております。すなわち從來繭を
處理いたしますのは、
蒸氣をも
つて處理いたしまして、中のさなぎを殺してお
つたのでありますが、この
蒸氣をも
つてさなぎを
處理するためには、どうしても温度が高くなる
關係上、絹の
品質が弱化するのでございます。從いまして今まではどうしても四眠と申しまして、四
囘眼つた繭を使わなければなかなかうまくいかなか
つた、ところが
電波を使いましてこのさなぎの
處理をいたしますると、絹に害を與えずに
濟む關係上、三眠の繭をも
つてりつぱに絹絲をつくり出すことができるのだそうでございます。三眠の繭ということになりますと、その絹が四眠の、今まで
日本で行われてお
つた絹の太さよりさらに細い糸ができるのだそうでありまして、それらをより合せてやりますと、今までの繭の
處理からつく
つた絹糸よりさらに非常に優秀な糸ができるのだそうでございます。從來の繭から製品したものは
アメリカあたりの
ナイロンに比べて非常に
品質が悪いということで、あまり賣れないという
状況でございまするが、この
電波で
處理した繭はその
品質が、
實驗の結果によりますと、
ナイロンよりさらに優秀なものができるのだそうでございまして、これらの
處理をやることによりまして、
日本の絹の將來というものは畫期的な發展をするだろうということが言われておるのでございます。さらに最近
ペニシリンの
製造にこの
電波が使われ出されつつございます。
ペニシリンは現在
アメリカあたりで非常に大量につくられ、また使われているのでございますが、この
ペニシリンを液状にして
保存することは非常にむずかしいのでありまして、大體その有效期間は一年とか一年半とか非常にわずかな期間に限定されております。しかもその
保存方法が非常にむずかしいのでありまして、冷たくてしかも暗いところに
保存しなければならぬということにな
つておりますが、この
ペニシリンを
乾燥いたしまして、それを黒い紙に包んでしま
つておくことによ
つて、非常に長い期間安全にその
ペニシリンを
保存することができるのだそうでございます。ところがこの
ペニシリンを
乾燥するときにその藥效を失わせないで
乾燥させるという、
技術が非常にむずかしいのだそうでございまして、現在これに成功しているのは
アメリカ以外にはないそうです。最近この
電波を
使つてこの
ペニシリンの
乾燥を
實驗したところが、その
乾燥が非常に早くいくということと、
ペニシリンの
性質を失わずに
乾燥させることができるというので、この
方面に
電波を利用すると非常に良質の
ペニシリンがとれるという結論にな
つておりまして、現在この
ペニシリンの
製造に
電波を使うという會社ができつつございます。その
ペニシリンに
電波を利用することは、現在
アメリカと
日本以外はまだ成功しておらぬという話を聞いているのでございます。
このように
電波は今後ただ單に
通信のみならず、今お話したようなこと、及びさらに
醫療方面に非常に利用される
可能性が漸次増大してきております。從いましてこれらを助長發達するため、しかも
お互いに混信を起さずにうまくそれらの
仕事がや
つていけるためには、今後これらの
電波行政を預か
つておりますわれわれとして、非常に責任が重大であるというふうに考えている次第でございます。
次に
官制の第二項の
電波技術に關すること、これにつきましてごく
簡單にお話申し上げます。この
無線局をつくりますときに、まず
波長の
割當が必要でありますが、
波長というものは
國際條約によりまして各國がその使うべき
範圍をきめられてあります。たとえば
放送には大體どの
範圍の
波長を使うとか、あるいは
漁業無線にはどういう
波長を使うとか、そういうふうに條約によ
つてきめられておるのでありまして、各國が自由勝手にどこでも使えるというわけのものではないのでありまして、きめられた
範圍の
電波を最も有效に利用するためには、この
目的、
業務の
性質に應じまして、いい
波長を
割當てなければならないのであります。そのためには
電波がどういう
傳わり方をするかということをよく調べなければなりません。
電波は
波長にいたしますと、何萬メートルという長い波から、現在は一センチメートルというように非常に短いものまで利用される
方向にあるのでありますが、何萬メートルという波、あるいは何十メートルという中くらいの波、あるいは何センチメートルという短
かい波、それらの波の種類によりまして
傳わり方がおのおの違うのであります。
從つてその
目的によりまして最も
適當な波の
割當をするためには、どうしても波の
傳わり方をよく調べなければならないのでありまして、そのために今私
どものところにおきましては、各所に
電波の
傳わる調査をする研究所をもちまして、そこで
日常各
電波を常に測定いたしまして、どういう時期どういう時間には、どのくくらいの距離にはどういう
電波が最も
適當しているかというようなことを調べております。なお今お話しして
ペニシリンとか、あるいは繭であるとか、
ベニヤ板というような
電波を伴う場合において、
電波ができるだけ外へ出ないようにするためには、どういうようにしたらいいかというようなことを私
ども現在研究しておるわけであります。これが第二の
電波技術に關することであります。
それから次に
標準電波竝びに標準電波施設の
建設、これについて簡単に申し上げますが、現在先ほど申しました
電波の物さしといたしまして、
逓信省が出しておるところの物さしのその
正確度は大
體百萬分の一、あるいは千
萬分の一という
正確度をも
つてものであります。現在
國際條約におきまして各國が守らなければならないところの
電波の正しさ、個々の
無線局には何メートルの
波長を使えときめられたときに、その
波長のずれてもよい
範圍というのは大
體十萬分の一であります。十
萬分の一と申しますと、
普通放送なんかでは五百メートルくらいの
波長の波を
使つておりますが、五百メートルにいたしますと、約五センチの狂いがあ
つてはいけない。これは
國際條約にきめられたおる範囲であります。
從つて非常に高度の
正確度というものを要求されております。
從つてその物さしというものはさらにそれより正確でなければならないのでありまして、現在百
萬分の一、千
萬分の一の正しさをも
つて電波を出してお
つたのであります。このためには常に天文臺は毎日星を觀測して正しい時間を測定いたしておりますが、その時間から割出して常に正しい
電波を出しております。なおこれに關連して
電波觀測所というものを設置しております。この
電波觀測所の
仕事は、次の十四頁にあるように、監聽とい
つて、一日二十四時間、常に
日本國内の各
電波を全部聽いておりまして、はたしてこれが
日本政府が許可した正しい
電波であるかどうかということを監視するのであります。次に周波數というのがありますが、これは先ほど申し上げた
波長の測定で、一々
波長をはか
つて、正しくきめられた
波長に合致しておるか、
國際條約に違反しておらないかどうかということを測定しております。次の相互
連絡通信というのは、これらの
仕事が、常に各觀測所
お互いによく
連絡いたしまして、行う必要がある
關係上、その
連絡通信をもつようにということであります。次の電界強度測定というのは、
日本政府の
割當てた
電波が常に
適當の強さで
通信されておるかどうか、その
電波が
適當に傳播しておるかどうかはかりまして、これが不
適當である場合にはただちに
波長の變更その他をしなければならんということであります。次の
方向探知でありますが、これは許可されておらない
電波があ
つた場合、あるいは
波長の間違
つた電波があ
つた場合、ただちにその
電波の
方向をはか
つて、これはどの
方面から出ておるということをとらえろということであります。これは
日本政府自體の責任で當然やらなければならんことでありますから、われわれこれに對して現在十分に努力してやつであるつもりであります。特に最近監聽の問題があります。これらについては、それぞれ豫算なり人員が必要でありますので、これらについては豫算その他で十分御
説明申し上げたいと存じます。何分御援助をお願いいたします。
なおこの際十八ページに載
つております
逓信省の臨時
電波規正部というものにつきまして、ごくあらましを申し上げたいと思います。このように
逓信省といたしましては、
日本國内の
電波につきましては、できるだけ自主的に
電波の觀測をやりまして、ほかの國に迷惑をかけないようにということで努力しているのでございますが、何分にも
戰爭中日本の
無線局の保守が非常に悪か
つたために、機械が相當老衰しておりまして、なかなか正確な
電波が出ないのであります。
[
速記中止]
そこで臨時に
逓信省に
電波規正部というもので設けまして、これに
逓信省に從來かか
つてお
つた專門家及び部外からの專門家にはい
つていただきまして、ここでいろいろな
技術的な問題を解明すると同時に、ただちに
處理をしていく。しかもこの中には、ただ
監督面だけでやるのは効果があがらないという觀點から、
實際電波を利用する面の方々にもはい
つていただきまして、
お互いの協力と、
お互いの連帶責任という形でこの
仕事を進めてい
つたのであります。この結果非常に効果があが
つております。
次にこの四の問題の
一つといたしまして、
放送關係を、あまり時間もございませんからごく
簡單にお話申し上げたいと思います。
日本の
放送は
戰爭中は
技術面は
逓信省で所管しておりましたが、プログラムの面は情報局がこれを擔當しておりました。今から考えますと相當強力な、行過ぎな點があ
つたようにも考えられるのでございますが、
終戰後連合軍司令部から
日本政府にあてられた言論の自由
竝びに新聞雑誌の検閲を廢止せよという覺書によりまして、現在
放送局のプログラムの面に關しましては、
日本政府は
監督を全然
行つておりません。プログラムの面は政府の所管からはずされるようにな
つております。現在は
放送委員會というものがつくられまして、その
放送委員會の推薦によりまして現在の會長が選ばれ、その會長の推薦によりまして現在の
放送協會の
理事者が選ばれたわけでございます。現在
放送事業は獨占企業にな
つておりますが、
無線電信法の精神から言いまして、今の形においていわゆる政府の
行政措置としてこれを獨占しておくということは、獨占禁止法の精神から申しましても、
適當でないと私
どもは考えております。從いまして、
日本の
放送事業に關しましては、新しい法律がつくられてしかるべきものであるという考えのもとに、現在いろいて資料を募集しております。
逓信省におきましても、
一つの参考案をつくりつつございますが、それにつきましては、また
機會がございましたら、詳しく御
説明申し上げたいと存ずる次第であります。時間がございませんので、はなはだはしよりまして聽き取りにくい點があ
つたと思いますが、私の所管しております
事項の御
説明を一應これで終りたいと思います。