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高橋(英)
委員 實は私が先ほど
起訴事實を明確にしてほしいということを申し上げたのに對して
委員長から少しく
事實を明らかにされました。しかしわれわれ籍を法曹界においておりまする者から見まするとあの
起訴事實の
陳述は、まことに大ざつぱであり、杜撰である。これは先ほど森君からか、辯護士だから云々ということを言われましたけれ
ども、私はそういう見解をと
つていない。(「あなたが言
つたのだ」と呼ぶ者あり)あなたは辯護士というものは云々と言われたが、私は辯護士だから言うのです。辯護士だから言うのでありますけれ
ども、要するにここは法律をつくる立法府であります。立法府であ
つて、刑事訴訟法は、この
國會の議決によ
つて初めて生れるのであります。この刑事訴訟法に基いて、いわゆる民主的な裁判が行われるという建前にな
つておる。この
國會が議決しました法律に基いて、われわれ日本
國民は最も公正な裁判を受けておるのであります。しかもその手續のごときも、とにかく法律で定めた一定の形式があ
つて、その影式によらなければ、裁判の眞相を得られないとは言い得ないでありまし
ようけれ
ども、しかしそういう方法をとること、そういう形式をとることが、すなわち法治國であり、
事實の眞相を捕捉するのに、間違いがないという可能性、そういうふうな可能性がたくさんありまするがために、ここに一定の形式を履むところの刑事訴訟法なるものが、われわれ
國會議員によ
つて議決されて法律とな
つておるのであります。だから、私
どもは裁判と同樣に、
國會内の裁判において、その刑事訴訟法の精神に則り——刑事訴訟法のごとき嚴格なる詳しい規定はありませんけれ
ども、これをわれわれがつく
つて、これによ
つてのみ初めて眞實が發見できるのだ。これによ
つてのみ
國民を處罰することができるのだ、國法を守ることができるのだというふうにな
つております。その原則というものを、われわれ
懲罰委員會、この
國會内の法廷にとるにあらずして、何でこの法律の權威を保つことができ得まし
ようか。なるほど二十日であろうが、二十一日であろうが同じであると言うけれ
ども、これは御承知の
ように刑事訴訟法だ
つたら二十日にこういうことがあ
つたという
事實の起訴に對して、それが二十一日であ
つたならば、無罪の判決でなければならないのであります。これは私が申し上げるまでもなく、非常に形式的なことであるけれ
ども、そういうことをすることが、すなわち一つの弊害はあ
つても、多くの間違いを起さないというところの、法治主義という原則を確立しておるのであります。だから、この
懲罰委員會においても、最も
國民の垂範になる
ような、最も模範的な
國會内の法廷をここに開いて、その運營をするということが、われわれ
懲罰委員としての責務ではないかと私は思います。
事實が確定していない。いろいろわれわれ專門家から見て刑事訴訟法の立場、すなわち人を裁くのに、最もこういう方法をとるのがいいという
大原則が確立されておりまする法律を運營する面から見ますと、まことに杜撰きわまるものであ
つて、これでどうしてああいう法律をこしらえることができたのであろうか。なぜああいう法律をこしらえた者が、こういう杜撰なやり方をやるのであるかということになるのでありまして、いやしくも
國會が
國民の注視の的となり、
國民の代表者が集ま
つておるところであり、しかも、その最も
嚴正な法律の製作者である、すなわち立法府であるという點から
考えまして、私はどうしても、その刑事訴訟法に則
つたところの正式な
懲罰事犯の
審理を進めていただきたいと思うのであります。なるほど舊憲法の時代、すなわち議會政治が最も堕落したと稱せられてお
つた、黨利黨略に終始してお
つた時代の
懲罰事犯というものは、白を黒とし、黒を白とする、すなわち最も不純なる、最も
嚴正にあらざるところの法廷であるという印象を一般
國民に與えてお
つた。こういう弊害を私は一掃したい。どこまでも嚴肅に、
嚴正にこの
審理を進めていきたい、か
ように思うのであります。
委員長は、
嚴正なる裁判長の立場において、一黨一派に偏せられることもありますまいけれ
ども、從來の
ような、
懲罰委員會というものが一つの目的を達成するために、あらかじめ豫定せられた、いわゆる見方によ
つては黨利黨略と言いますか、そういうものに影響せられるところの
進行をしてお
つたという從來の惡印象を、
國民から拂拭したいと思うのであります。そういう意味において、ぜひこの刑事訴訟法の原則に則
つた、われわれ
國會議員がつく
つた、
國民を裁くのに最も
適當であるというところの法律に則
つた御
審議ぶりをお願いしたいと思います。そういう意味において私は
山口君の……。