○平野國務
大臣 第一點にお述べになりました
水害地の人が離村をする、この問題は私も
現地を見まして非常に
考えてまい
つたのであります。私の
考えをも
つていたしますならば、もとより今仰せられるように五尺も六尺も耕地に土砂がかぶつた所はもはや開墾の餘地がないかと思いますが、まず一尺くらいな
程度の場所でありますならば、何とかしてその土地をもとに
復舊する方法はあろう、かように
考えますので、ただむやみに離村をして、一村ほとんど村を捨てるというような空氣が現在あるようでありますが、これらの點についてはしばらく落著いてよく檢討を加えて、基本を現在の非常に改修工事の不徹底なる河川は
根本的に改修してみて、それからその沿道にある耕地をどの
程度利用できるかということを靜かに檢討を加えるの要がある、かように私は
考えております。
それから山林問題について三つの點を御指摘になりましたが、なるほど財産税に困
つて山を賣つた、これを伐つた、こういう問題についてどうもこれは一應いたし方のないことと思います。第二の開墾によ
つて、相當に森林を伐つた、これが
水害の原因であるという點は、これはあなたのおつしやるほどとは思わぬ、開墾豫定地になりますところは、おのずから限度がありまして、これは水源地の山林というようなところまでむやみに開墾をいたしておらぬので、この點は多少あなたのおつしやるようなところもありましようが、
程度の問題についてはさように大きくはないと思
つております。しかし最後にお述べになりました今度の農地改革法の結果、地主が山林の所有面積を制限せられるであろうということから、山林をむやみに濫伐をした傾向がある。これは私はしばしば耳にいたしましてまことに遺憾なことと
考えまして、特に農林
大臣になりましてから、第一囘の聲明は、林野局の
關係者を招致いたしましたときにいたしておりまするし、また
委員會におきましても、衆議院において二囘ほど、參議院において三囘ほど私は述べておるのでありますが、この際土地問題と山林問題について御理解を得たいと思うことは、土地の問題というのは小作人、農民を解放するという人間の問題から出發しておる。いわゆるマツカーサー司令部から出ておる日本民主化のデイレクチブなのである。言いかえるならば農地改革は人を解放する。こういう點でありますので、地主というものから、土地制度のもとに桎梏を受けておる封建性を打破したい、こういう
意味でありますから、この面においては相當地主さんが困られても妥協なくこれを推進する。これは日本民主化の方途として當然の
措置である。しかしこういうものを單に人間と同じようにどうこうしようというのではないのでありまして、山の所有權の制限と小作制度の廢止ということは、全然これは
關係がないのであります。言いかえますならば、山林がいかにしたら國策的に擁護できるかという觀點から
考える。土地解放は人間解放である。これを率直に言うならば
地方におられますところの山元の人たちが、單に社會の風潮といいますか、ものの理解なしといいますか、もとよりこれはわれわれも責任はありましようけれ
ども、ただ農地改革をやつたら山林の所有權も制限するであろうとむやみに恐怖せられておることも私はまことに遺憾に思う。この際再度私ははつきり申し上げたいことは何も土地改革は人の財産を單に分配して按分するという思想ではないのであ
つて、人間を解放するためにはどうしても土地小作制度の桎梏のもとに奴隷化しておるこの制度を廢止して自作農化する。これから出ておるのである。ただ物を分配して共産主義をやろうというのじやない。この點をはつきり土地改革と山林行政の面において少くとも私の
考え方とは明確に違
つておるのです。決して山林の所有權と土地改革を同一にしておるものじやないということをこの際私は特にあなたにお答えいたします。