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1947-08-07 第1回国会 衆議院 治安及び地方制度委員会 第8号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
二十二年八月七日(木曜日) 午前十時五十九分
開議
出席委員
委員長
坂東幸太郎
君
理事
門司
亮君
理事
高岡 忠弘君
理事
川橋豊治郎
君
理事
松野 頼三君
理事
酒井 俊雄君
大石ヨシエ
君 笠原 貞造君 菊池
重作
君
久保田鶴松
君 松澤 兼人君
松谷天光光
君
大澤嘉平治
君 千賀 康治君 坂口 主税君 大内 一郎君 小枝 一雄君
外崎千代吉
君 ————————————— 本日の
會議
に付した事件
五大都市特別市制
に關する
法案
の起草に關する 小
委員會
の
報告聽取
—————————————
坂東幸太郎
1
○
坂東委員長
これより治安及び
地方制度特別委員會
を開會いたします。
特別市制小委員
川橋豊治郎
君より發言の申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
坂東幸太郎
2
○
坂東委員長
川橋
君。
川橋豊治郎
3
○
川橋委員
中島小
委員長
がまだおいでになりませんので、私が代
つて小委員會
の
經過及び
結果を申し上げたいと存じます。お許しを願います。 本小
委員會
の五
大都市特別市制實施
のため、去る七月五日門司君外六名の小
委員
を選定し、引續き三囘にわた
つて小委員會
を開き、法案を作成の上、
愼重審議
を重ねました結果、八月一日の小
委員會
において、これを可決すべき旨議決いたしましたので、本小
委員會
における審議の概要及び結果につきまして努めて簡明に報告いたしたいと存じます。 第一に
特別市制
の
必要性
であります。そもそも
大都市
は、
人口態樣
の上においても、また
社會的
、
經濟的
、
行政
的、あらゆる方面において、他の
一般中小都市
に比し、特殊な性格を有し、これらの特質に基いて、その
住民生活
において、種々特有の諸問題を生じ、これが必然的に
大都市獨特
の
行政事務
と施策を要請するものでありまして、教育、土木、保健、衛生、經濟、
社會竝びに都市
計畫等、各種の
行政施設
は、實に廣汎にわたるとともに、電車、
乘合自動車
、
水道等
、各種の大規模な
公企業
の經營を必要ならしめ、また
保健施設
にしても、
大都市
においては、近代的大規模の
施設
を要し、
傳染病院
、
隔離病舎
、
療養所
、保健所、
育兒相談所等實
に複雜な組織をもたねばならないのであります。
從つて
、
大都市
における
行政事務竝びに施設
は、その種類及び
範圍
において廣汎であるのみならず、その質と内容とにおいても、きわめて
高度化
せられたものでなければならず、また
各種行政機能
を効果的に遂行するためには、その
行政
において、他の
中小都市
に見られない
強力性
と、
積極性
と、
自治性
とが備わらなければならないのであります。
政府
はこの情勢に應じ、すでに六
大都市監督特例
に關する
法律
を制定して、
自治團體
としての
府縣市
に對して有する
監督
を大幅に撤廢し、また六
大都市
については、
國政事務
たる
道路管理
の職務を
府縣知事
より離して六
大都市
に
移讓
する等の
措置
を講じましたが、なお教育、衞生、保健、
社會
、救護、
都市
計畫等に對する
大都市
の役割がいよいよ大きくなり、
從つて
、その
組織機構
は
府縣
の
組織機構
を凌駕するに至りました。かかる場合に、その上位に
府縣
が介在することは有害無益であります。この無用にしてかつしばしば
官僚的情實
を加える
中間的存在
を排除し、
大都市
をして
政府機關
に直結せしめんとするのが、
特別市制
の眼目であるのであります。 反
對論者
は、
府縣
より
大都市
を除外せんとする有機的一體たる一
自治體
の首と胴とを二分するもののごとく論ずる者がありますが、元來現在の
府縣
は、
明治
の當初、
廢藩置縣
の時定められたままの
官治行政
の
行政區劃
に過ぎず、決して、
有機的自治體
を組織するものでないことは、その
設定
までの
沿革竝びに
新
憲法實施
までは、知事以下が官選の官吏により統治せられ、
府縣議會
は知事の有する
原案執行權
により脅かされ、
諮問機關摘性格
を有するに過ぎなかつたことによりあきらかであります。すなわち現在の
府縣
は、
行政區劃的性格
であり、かつ
市町村連合體的
の
性質
であるがゆえに、これを二分することは、
完全自治體
たる一
市町村
を
兩斷せん
とするものとは、全然
性質
を異にするものであります。また
五大都市
をも
つて
、その所屬
府縣
の首都となすことは當
つて
おりません。
五大都市
は單にその
人口
が五十萬あるというのみでなく、
大都市
として經濟、文化、
社會
の各方面にわたり、その實力が各
地方
の
中心勢力
であるのみならず、全國的の影響を有する世界的の一
大都市
を形成しておるのであります。
從つて
、
明治當初
の
都市
の勃興以前に定められたままの
府縣機構
の内にこれを從屬せしめんとするところに、根本的な不合理が存在するのであります。 思うに、現在のわが國は、戰後の難局に直面しつつ、
平和國家再建
のため、幾多の重要な課題を擔
つて
おります。この
難局處理
の途上にあたり、
五大都市
の負うべき役割の
重要性
を思うとき、その
行政機能
の能率を極度に發揮すべきことは改めて言うまでもありません。また
民主主義的國家體制確立
の基礎として、
民主的地方行政
の運營こそ焦眉の急務であります。新
憲法
とともに公布
實施
せられました新
地方自治法
中における
特別市
に關する條項は、かかる
大都市行政
の特質に鑑み、
地方自治
の根底に培うための
措置
であるわけであります。しからば、これを單に
飾物的存在
たらしめることなく、現實に具體化せしめることこそ、わが
自治法
の
根本精神
たる
地方自治
の分權化、
民主化
の
基本的要請
の一でなければならないと信ずるのであります。 第二に
特別市制
の沿革であります。
特別市
の問題は、遠く
明治
二十年代に、ま
づ帝都
(
東京
市)の問題として取上げられ、官治による都制、
民選市長
による
特別市制
の形でしばしば
議會
の議に
上つたの
あります。その後
大都市
の發達と、これに附随する
都市
問題の發生とは、
大都市行政
の發達と
高度化
とを齎し、わが
國都市
の共通の問題としての特別の
大都市制度
の必要と要求とを生み出したのでありまして、首都以外の
大都市
にも、
特別市制
を布くべしとの議が
上つたの
は
明治
四十三年でありまして、
東京
市及大阪市に關する
法律案
として上程せられたのであります。 續いて、第一次大戰を經て、わが
國經濟
の大發展と、これに伴う
大都市
の著しい發展とを見るに
至つて
、大正六年
東京
、
京都
、大阪、横浜、
名古屋
、神戸のいわゆる六
大都市
の
特別市制
が問題として取上げられ、大正十一年の
法律
、續いてこれに基く大正十五年の勅令により
市制上府縣知事
の六
大都市
に對する
監督權
はほとんど省略せられ、
地方制度
上の二重
監督
も問題は、一應解決したかにみえましたが、
大都市制度
の問題は、
自治團體
たる
府縣
と市との間における
監督
の問題のみで解決し得られるものではなく、
府縣知事
が
國政事務執行
上
市町村
に對して行う
監督
の問題であ
つて
、
大都市
が
國政的事務
たる教育、土木、衞生、
社會
について行う事務が巨大となるにつれ、いよいよ
中間機關
たる
府縣
を排除し、
大都市
と
政府
とが直結せんとの要望が強められたのであります。この間
政府
も
市制度
、
大都市制度
につき
調査會
を設けたことがしばしばでありますが、その結果は
實現
をみずに
終つたの
であります。
昭和時代
に入り、いよいよ運動は熱度を加え、
政黨政治
に伴う
自治權擴充
の方向と
併わし
て強く主張せられ、
昭和
四年第五十六囘、
昭和
六年第五十九囘、
昭和
八年第六十四囘、
昭和
九年第六十五
囘各議會
に、
特別市
實施
に關する
法律案
として提出せられたのでありますが、いづれも
衆議院
は通過せるも、
貴族院
の阻止にあ
つて實現
をみず、
昭和
十二年には當時の
廣田内閣
は、五
相會議
を開いて
五大都市特別市制
問題を協議し、同年第一次近
衞内閣
は、
地方制度調査會
を設置し問題の解決に乘出し、
東京特別市制案
を
政府提出
としましたが不成立に終りました。 今次
支那事變
より大戰への間におきましては、
官僚統制
の強化に伴う
自治
の後退を目的とする
昭和
十八年の
地方制
は
改正
が行われ、その際率然として
官治東京
都制のもとに、
東京
府に
東京
市を吸収し
東京
市を解體することによ
つて
、思ひもかけぬ形で
大都市制度
が
實現
せられたのであります。その後
東京
を除く
五大都市
の
特別市制
問題も、戰爭の
深刻化
とともに振わなかつたのでありますが、
ポツダム宣言受諾
による終戰とともに、わが國を根本的に
民主化
することを目的として
敗戰後
の新しい政治が始められ、
特別市制
の問題も
都市復興
の問題とからんで、
市制
の
民主化
と
民主的市制
の
伸張發展
の問題として大きく浮び上
つて
きたのであります。
政府
もわが
國民主化
の第一著手として
地方自治制
の
民主化
を策し、
昭和
二十一年五月成立の
終戰後
の新
議會
に
地方制度全般
の
改正案
を提案し、同年十月その成立をみましたが、未だ
特別市制
は
實現
をみなかつたのであります。
議會
は
政府
に對し、
地方制度
のさらに第二次的な
全面的改正
を要望し、特にその
制度
の中に
特別市制
の
實現
を力説し、かつそのために
地方制度調査會
を設け、
次期議會
に提案すべきことを決議しました。これに基いて二十一年十月
地方制度調査會
が設けられ、
警察制度
と相竝んで
地方行政
の
根本的刷新
が議せられることになり、
特別市制
もその一部門として朝野の知能を集めて審議調査せられました。その結果、去る
昭和
二十二年三月の
議會
において、
地方制度全般
にわたる
改正
が行われ、
地方自治法
が制定せられるに至り、
特別地方公共團體
として
特別市
の
制度
が認められたのでありまして、
議會
は
五大都市
を
特別市
に
指定
する
法律
を
次期國會
に提出すべき旨の
附帶決議
を付しておるのであります。 第三に
憲法
第九十五條の解釋であります。
特別市
指定
の
法律案
を審議するに當りまして、まづ問題となりますことは、
憲法
第九十五條の解釋、すなわち
一般投票
の
範圍
の問題であります。
特別市
を
指定
する
法律
に、
地方公共團體
の
住民
の贊否、すなわち
投票
が必要なことは言うまでもありません。ただ問題は、この
地方公共團體
とは、
指定
の對象たる
當該市
と解釋するか、あるいはまた
當該府縣
と解釋するかという點であります。
政府
はこの問題について、七月二十六日の
閣議決定事項
として、
府縣民
の
一般投票
によるべき旨を聲明いたしましたが、以下述べますところの理由により、
政府
が先に
地方自治法制定當時
と
つた見解
にして、本院がその審議に當り、その見解に同意を與えたところの「
當該市
の
住民
の
一般投票
」によ
つて本法
を運營せられんことを期待するものであります。 元來この問題は、
地方自治法
上の問題であります。しかしその根抵は
憲法
第九十五條にありますが、同條は「一の
地方公共團體
のみに適用される
特別法
は、
法律
の定めるところにより、その
地方公共團體
の
住民
の
投票
において、その
過半數
の同意を得なければ、
國會
は、これを制定することができない」とな
つて
おるのであります。これからも了解せられるのでありますが、一の
地方公共團體
のみに適用される法、すなわち
特別市
指定
の
法律
は、
當該市
のみに適用される
法律
でありまして、これが
當該府縣
に適用される
法律
でないことは明らかなことであります。
從つて
この條文を字義上より解釋すれば、「その
地方公共團體
」とは「
特別市
の
指定
を受ける市」と讀みかえるのが當然でありまして、その
投票
も
市民
だけでよいと考えられるのであります。 そもそも現在の
府縣
は、前にも申述べましたように、
明治
初年に行われた
廢藩置縣
をそのまま踏襲しておるものでありまして、
行政區域的性質
を存し、從來の
府縣知事竝びにその官僚組織
が
官吏組織
でありましたのが、新
憲法
により、初めて公吏に切りかえられたものでありまして、これが一個の完全な
自治體
とみるべきものでなく、
行政區畫的
の
性質
を有する、一個の
市町村連合體
と考えられるのであります。かかる場合に、完全に
自治體
たる
大都市住民
の熱烈なる希望にして
國會
の承認するもので、たまたま從來從屬しておつた
府縣
の
郡部住民
の意思により否定せられることは封建的であり、かつ
民主主義
の
精神
に合致しないもので、新
憲法
を貫く個人や
國體
の自由を尊重する
精神
に反するものであります。
特別市
の
指定
自體の
關係者
は、
當該市
に限定せらるべきでありますが、
特別市
の
指定
に伴い、
府縣
の
境界變更
を招致するゆえに、この意味において、
當該府縣
が
利害關係者
と解することは、一應理由はないでもありません。しかしながら、その
境界變更
は飽くまで結果でありまして、目的ではないのであります。このことはたとえば、
府縣
に跨る
市町村
の
境界變更
のあつた場合には、別に
法律
の制定や、
一般投票
を用いずして、
内務大臣
の
行政處分
のみによ
つて
變更
し得るのでありまして、他の
法律
に認められた事由により招致された結果が、他の
住民
に影響があ
つて
も、これを問わないとすることが
地方自治法
の
精神
であるのであります。特別の
指定
に重點をおき、その結果として
府縣
の
境界變更
を招致しても、これを問わないとの
精神
であります。このことによ
つて
初めて
地方自治法
第二百五十五條第四項「第二項の規定により
特別市
の
指定
があつたときまたは
前項但書
の規定により
境界
の
變更
があつたときは、都道
府縣
の
境界
は自ら
變更
せられる」の
立法理由
が理解できるのであります。反
對論者
の説をとるならば、かかる立法は必要なく、原則に立かえり、
特別市
の
指定
とともに、
府縣
の
境界變更
の
法律
を制定することといたすべきでありましよう。なお本問題は、
地方自治法制定
の際、本院において最も論議せられたのでありますが、
政府
においても關係筋の了解を得て、
當該市
の
住民
による旨の見解を明かにし、本院またその見解に同意して協贊したのであることを強調いたしたいのであります。 第四に
特別市
實施上
の諸問題であります。
特別市
實施上問題
となり得べき諸點については、いろいろ考究し、これを
附帶決議
として掲げたのであります。第一は、
府縣特別
市の
財産
及び
施設等
で、兩
團體
に分割し得るものは、それぞれ協議してその所屬を決定し、分割しがたいものは
府縣特別
市の組合を設けて、これを共同處理することにいたしました。
特別市
の
實施
は、
府縣
を
特別市
となるべき
地域
をも
つて
二分して、その
地域
内の
府縣
の
行政的機能
の一切を從來の市に併合せしめるものであります。
公共團體
は
普通營利法人
と異なり、その
施設
は公共的であ
つて
、その經營には
税収入等
の
一般歳入
を充て、
施設利用者
より徴収する
使用料等
は、その
管理費
の一部を
辨ずる
に過ぎないのが常態であります。通常市において經營する電車、上水道のごときは、
企業經濟的機能
をもつので、
使用料
をも
つて
賄うべきでありますが、
府縣
の
經營施設
は
警察
、土木、
教育等
の
國家的職能
を
實施
するものでありますから、その經營費は
國庫下渡近
、
授業料
のほかは、
一般税収入等
の財源をも
つて
充てるものであります。
公共團體
の一部合併の場合におけると同一の條理でも
つて
、これら
施設
に關する
起債
の未
償還額
の負債の
移讓
を存すとともに、これら
施設
の
財産
は
當然無償
で
特別市
に移管せらるべきであります。何となれば、これら
施設
に關する
經費
は、
從來特別市
の
市民
が
府縣民
として負擔した
府縣税
により支辨せられたものと考うべきのみならず、その
施設
自體の
維持管理
が、相
當部分税収入等
により、賄うべき非
營利的財産
であるからであります。
特別市
となるべき
市民
が
從來府縣民
として累年莫大な負擔をなして、その
府縣
の
施設
の
新設改良
に努めたことは、三部
制時代
における
財政事情
よりみるもきわめて明瞭でありますから、今その
府縣
が二分しての
特別市
が
設定
せられるものであり、かつ
府縣市等
はともに
地域團體
にして、その
管轄外
に
公共的機能
をなすことは
例外的體
のものでありまして、
通常企業的事業
の
延長的施設
または
特殊施設
に限られることをまず念頭におくことを要します。この見地からみるときは、
特別市
となるべき市の
施設
については、
殘存府縣
への
移讓
の問題も、
府縣市
の
協同組合
への
移讓
の問題も、通常生じないものと考えられるのであります。問題となるのは、
特別市
地域
内における
殘存府縣營
の
公共施設
でありまして、
中等學校
、
警察
、
消防等
の
施設
は
當然無償
をも
つて
、但しこれら
施設
に關する
起債
未
償還額
あるときは、その未
償還額
の負債とともに、移管せらるべきものであります。問題となるべきは、
盲唖學校
、
精神病院等
府縣
において經營するものにして、唯一の
施設
のごときは、
府縣市組合
の
共同經營
とすることは一案でありますが、また
双方協議
の上、双方のいずれか一方が經營し、他が分擔金を負擔するのも責任を明瞭にする趣旨から
妥當
の場合があるでありましよう。 港灣については、横浜及び神戸は國營であり、大阪は市營でありまして、問題を生じませんが、
名古屋
の場合は縣營で問題であります。
名古屋
港の經營が、三部
經濟時代
において、
市部經濟
で經營せられ、明瞭に
市民
が
府縣民
として負擔したことによ
つて築港
が行われたことを考慮し、また
將來巨額
の
修築費
を要することを豫想せられる場合に、これは
殘存府縣民
に分擔せしめることの當否を考慮するときは、
特別市
に移すことが
妥當
のように考えられますが、
當事者双方
の愼重な協議が望ましいのであります。
特別市
の
設定
にかかわらず、
府縣廳舎
及び
府縣職員
の公舎は、引續き使用することを要しますので、
當分現状
のままとすべきでありませう。 以上は用途の
性質
上處分し得ない
公用的施設
に關するものでありますが、そのほかに、
府縣
には處分し得る動産、
不動産等雜種財
産があります。
特別市
の
設定
は
府縣
よりの一種の
分家的作用
であり、かつ
府縣
の
財産
は多年にわたり
特別市
市民
の
府縣住民
として納税の蓄積であることより考えるときは、あるいはこれら
財産
は總合して
人口比等
に按分するのを
妥當
のように考えられますが、少くとも
特別市
地域
内における
雜種財
産たる
土地家屋
は、
特別市
に
移讓
するのを
妥當
のように考えるのであります。 第二は、
府縣市
の負債中
特別市内
にある
施設
に關するものは、組合に
移讓
するものを除き
特別市
にこれを移すことにいたしました。前述のごとく、
府縣
の
公共施設
が無償をも
つて
移讓
せらるべき
性質
であるが、それと同時に分割せらるべき
地域
内に屬する事項に關する
起債
の未
償還額
は、すべて
特別市
に承繼せらるべく、このことは、
防空起債
のごとく、現實には何ら
施設
が殘らない場合においても同樣であります。
府縣
の
起債
は、
對象施設
の不明瞭なものはありませんから、敍上の原則により處理せらるべきであります。ただ
赤字起債
が問題になるのでありますが、從來認められた
赤字起債
は、
國庫
が元利を補給しておりますから、問題はありません。 第三は、
特別市
の施行にあたり、
殘存府縣
の
住民
の負擔が急激に増加する場合は、
特別市側
よりの
殘存府縣
への
繰入金
、
寄附金等
の
措置
により、善處することにいたしました。
府縣
の費用は、
國民學校
の
教員俸給竝びに警察費
の、それぞれの半額を負擔することが最も大きな
支出項目
でありまして、營業税、地租、
家屋税
の三つの
還付税
及びこれらの
府縣附加税
、
竝びに
府
縣獨立税
が
主要税収入
でありますが、近時インフレの高進とともに、
國庫
よりの
配付税
が漸次重きを占め來りつつありまして、
府縣
の
収入
中、最も重要なものとな
つて
まいりました。
配付税
の財源は、
國税
たる
所得税
、
法人税
、
入場税
の
一定割合
でありまして、本年度は昨年度の二十三億圓に比し、一躍百六十七億圓に達する豫定であります。
地方公共團體
の
収入
が漸次
配付税
に依存する程度が高まり、かつ
配付税
の
配付方法
は
法律
の定めるところにより、その五〇%は
府縣住民
一人當りの
課税力
に、全
國平均課税力
との差に反比例して配付せられ、次の四五%は
人口比
でありますが、
大都市人口
は三倍に計算し、中
都市人口
は二倍に計算し、かつ各
府縣
に
人口
百五十萬を加算する方法により、一
府縣
を構成することにより
當然必要
とする
經費
と、
大都市
を構成することによ
つて
要する
經費
とを併せ考慮せられております。
特別市
の
設定
とともに、
當然特別市内
の小學校の教員の
俸給竝びに警察消防
の
經費
を負擔することとなり、しかしてこれら
經費
は
都市分
は
郡部分
に比し割高なるべく、これら
經費
は、
特別市
地域
内の
府縣税
、
竝びに獨立
の
府縣
としての
資格
における
配付税
の
収入
により、賄うべきであります。 敍上のごとく、
府縣財政
は合理的な
配付税
への
依存度
が高いので、
殘存郡部
が
特別市
の
設定
により、その
住民
の負擔激増は考えられませんが、
京都
の場合のごときが豫想できますから、かかる場合には、府市の協定により、適當な金額を
一定期間繰入金
、
寄附金等
何らかの形式により處理することが望ましいのであります。ここに
府縣民税
の
郡市部
の負擔割合は、
京都
府においてのみ著しく差がありますが、他の四
都市
はその差額は僅少であるのであります。 第四は、
國會議員選擧
は、次の
制度改正
のときまで現在通りとすることにいたしました。
五大都市
に
特別市制
を施行することは、法制上五つの
府縣
を増すことであります。しかして
衆議院議員
の
選擧法
は、
中選擧區制
によるものでありまして、
京都
以外はその郡市だけで獨立の
選擧區
をなしておりますが、
京都
府におきましては、京
都市
の一部が郡部と併せて一
選擧區
を形成しておりますので、これを
市部
のみ獨立させることは、結局別表の
全面的改正
を誘致することになりますので、これは
別表改正
の時期までこれに觸れないことにいたします。その結果
京都
の場合には、
京都
の郡部の
選擧管理委員會
が、
特別市
たる京
都市
の一部には
選擧
を管理することを必要とするに至るべく、この
措置
に關する
特別立法
を必要とするでありましよう。次に參議院の場合にありましては、
地方區
の
選擧
について、
特別市
と
殘存郡部
とについて定員の割振りに關して規定する必要があるようでありますが、これも次の三年議員の
總選擧
までに定めれば十分でありまして、
補缺選擧
についてはすべて
現状維持
とし、
從つて
これに關する
選擧管理委員會
は、
殘存郡部
の
選擧管理委員會
が
特別市
全般にわたり權限を存する旨の特別の立法を必要とするものと考えられるのであります。 第五は、
特別市
の施行に伴い
府縣市
の
議會
の議員の地位の存續については、
地方自治法
の
精神
に則り、適當の
措置
を講ずることにいたしました。 なおこの際
府縣知事
及び市長のことについても言及しておきたいと存じます。
府縣知事
は、その
選擧母體
たる
府縣民
の
範圍
が急激に狭小に
なつたこ
と、市長と
市會議員
とは、
選擧民
には
變更
はありませんが、從來掌理しなかつた
府縣事務
を掌理するに
至つた關係上
、嚴格に申せば、權限、
資格乘
の點より、あるいは
特別市
の施行により改選を要するように一應考えられますが、
殘存府縣
は
地域人口
に著しい變動を生じたが、
法律
上は從來の
府縣
の繼續でありまして、その
同一性
を認めらるべく、また市長及び
市會議員
にあ
つて
は、權限において畫期的の増大はあ
つて
も、市も
特別市
もいずれも
地方自治法
上の
團體
でありまして、法制上その
同一性
を認められるべきものであります。
殘存郡部
の
府縣會議員
についても、同樣であります。問題となるのは
市部選出
の
府縣會議員
であります。
選擧區
は單に
選擧
の場合における
選擧方法
にすぎませぬから、同一
府縣内
にあ
つて
は、他の
選擧區
に住所を移動してもその
資格
に關係はありませぬが、
特別市
の
設定
は、その
市部
を
府縣
の區域外といたしますがゆえに、
市部
に住所を有する大部分の
府縣會議員
は、
府縣内
に住所を有しないこととなり、その理由をも
つて
失格するに至るのであります。
地方自治法
は、急激に
人口
の減少する場合にあ
つて
も、定員の減少を豫定しないこと、
竝びに選擧區
にかかわらず、すでに
選擧
せられた後にあ
つて
は、他の郡部と
同一資格
の
府縣會議員
を要するものと考えるときは、
選擧區喪失
のゆえをも
つて
、必ずしも議院の
資格
を喪失せしめることを要しません。よ
つて
特に法制を設け、この場合に限り、住所の喪失にかかわらず、
府縣會議員
の
資格
を喪失せしめない旨の規定を設けるのを
妥當
といたします。ただしこの場合には
死亡等
の場合にも、
補缺選擧
を行わない旨を定めるのが穏當でありましよう。しかしてかかる
措置
は、
殘存郡部
の
府縣會議員
の定數の
改正
を不要ならしめる結果をもつことになりませう。 第六には、從來の
府縣
の職員にして、
特別市
の施行に伴い、
特別市
の職員になる者の取扱いについては、
恩給退職金等不利益
を來さないよう
措置
することといたしました。これがためには、たとえば
恩給法
の
改正
も必要にな
つて
くるのであります。 第七には、國の機關は現在通りとすることにいたしました。これは
政府
直轄
地方
機關の管轄區域に關する問題がその主たるものであります。すなわち裁判、通信、財務等の
地方
機關は、大きいものは數
府縣
にわたり、小さいものは市の區によりその所轄を定めるがゆえに、
特別市
の
設定
そのものではその管轄を
變更
するを要しません。問題になるのは、
府縣
單位ごとに設置せられておりますところの農林省の木炭事務所、資材調査事務所、作物報告事務所、食糧事務所、
竝びに
農林省以外の商工局出張所、鐵道局自動車事務所、勞働基準局、戰災復興院出張所等があります。これらの事務所が各
府縣
ごとに設置せられますことは、事務分量や交通の關係、
竝びに
各
府縣
當局との連絡の便宜より考えられたものと考えられます。その中で、裁判所のごとく明瞭に行
政府
と分離すべきものは、現在通りとすることにいたしますが、中央官廳の出先機關たるの色彩が濃く、かつ
府縣市
の
行政
區と重複するがごときものにあ
つて
は、調査研究の上、これを整理すべきでありましよう。 第八には、
府縣知事
の權限に屬する國の事務の中で、やむを得ないもの、及び
府縣
を區域とする
公共團體
の取扱いについても、現在通りにすることにいたしました。ここに最も問題となるべきは、
警察
であります。現在
警察
權は、公吏たる
府縣知事
及び
警察
部長以下、
警察
官吏を使用して、
警察
部長の助言により、かつ
警察
部長を通じて、
警察
權を行使するのであります。
特別市
の
設定
は、從來の
府縣知事
の管轄區域より、
特別市
の區域を除外せしめるものでありまして、從前の知事は、その
特別市
の
住民
に對しては、第三者的地位に立つようになるのであります。
警察
行政
の本體は、
都市
にあると申しても過言ではありません。しかるに
大都市行政
と無關係となつた郡部の知事をして、引續き
特別市
の上に
警察
權を執行せしめることは、はなはだ條理に反し、かつ能率が上らないのであります。
特別市
は
府縣
と對等の地位にある以上、
府縣知事
の現在も
つて
おる程度の
警察
權を市長がもつことに何ら不都合はないでありましよう。 次は消防の問題でありますが、消防は本質的に
都市
に必要なものであります。現在
都市
に設置せられております消防は
府縣
警察
部に屬し、消防官吏によ
つて
運營せられておるのでありますが、
警察
の場合と同樣、
府縣知事
が消防權を握
つて
おるならば、これと同格の市長がこれを掌握することに何ら支障はないでありましよう。 次は公共職業安定所に關する業務でありますが、現在は、
府縣知事
が、官吏であるところの公共職業安定所の職員をして、これを行わしめております。しかし失業救濟、職業紹介の業務は、
都市
行政
の重要な業務でありまして、これが指揮
監督
は、一般
都市
行政
を管掌する者にして初めてなし得るものであります。
從つて
本業務は、
特別市
の
地域
内のものは
特別市
に移管せらるべく、郡部と
市部
にまたがつたものは、通常の
府縣内
の場合と同樣に遂行せらるべきでありましよう。また
社會
保險及び少年救護院に關する事務に從事する者は官吏でありますが、その事務の本質上、
特別市
の
設定
とともに、これを
特別市
に移管すべきでありましよう。 これを要するに、
大都市行政
に密接不可分な業務は、國の事務といえども
府縣知事
の管掌するものは、ことごとくこれを
特別市
の市長に移すべきことは理の當然であります。このことなくしては、
大都市行政
をかえ
つて
不圓滑ならしめ、現状より惡化せしめ、
特別市
設定
の意義を没却するに至るでありましよう。 これに反し、
大都市
の
地域
内にあ
つて
も、農業、林業、水産業、蠶絲業等の生産部門は、これらの事務のため新たに職員を設けることが不經濟な場合には、これを
府縣
の所管といたすべきでありましよう。農業保險、家畜保險、船舶保險等については、
特別市
だけでは、加入者が少く、經營の困難な場合には、必ずしもこれを
特別市
の所管に移すほどのこともなく、
府縣
所管のままとしてよろしいでしよう。 小作調停法、自作農創設特別
措置
法等についても、從來の
府縣
の機構をそのまま認め、
特別市
の上にもその職務を執行さすことを認めて差支えありません。 これに反して、消費方面に關する事項は、當然
特別市
に移さるべきものであります。たとえば、食糧管理法第二十七條の規定に基く
地方
食糧營團は、食糧配給公團の設置までは、組織はそのままとするも、
理事
の任命權その他
監督權
の行使は、
特別市
の市長と郡部の知事との共同行使に改めらるべきでありましよう。 次に
府縣
を區域とする
公共團體
、たとえば、農業會、水産業會等は、獨占禁止法との關係もあり、これが
改正
につき目下
政府
において考究中でありますから、それまでは現在通りにいたしておきます。獣醫師會、裝蹄師會等もまた
特別市内
にわざわざ新しくつくる必要はありません。また
府縣
單位の馬匹組合連合會が
地方
競馬の施行主體とな
つて
おりますが、これも獨占禁止法との關係があり、
政府
において
改正案
を考慮中でありますから、これは從前通りといたしておきます。 第九として、最後に
特別市
の施行時期でありますが、
特別市
實施上
の諸問題は相當複雜多岐にわたり、多くの法制につき所要の
改正
を加える必要があり、一方また
一般投票
のための公示、その他の事務につき相當の日數を要しますので、この
法律
施行の時期は、政令をも
つて
これを定めることといたし、およその目途は
昭和
二十三年の四月一日、すなわち來年の新年度早々といたした次第であります。以上のような趣旨をも
つて
、別紙の通り
特別市制
指定
法律案
を起草いたした次第であります。なにとぞ
愼重審議
の上、適當なる御決議あらんことを希望いたします。 今囘の
衆議院
規則第九十條により「小
委員會
において、その審査又は調査を終つたときは、報告書を作り、これを
委員長
に提出し、その報告書は印刷して
委員
に配布する」ことにな
つて
おりますが、報告書の配布は次會に致しますから、右御了承願います。
坂東幸太郎
4
○
坂東委員長
廣
範圍
にわた
つて
の小
委員會
の御調査
竝びに
起案の仕事に對しまして、
委員長
は感謝の意を表します。しかるにこの最後の決定は渉外關係
方面
との打合わせがありますから、今日はこれを保留いたしまして、十一日に開會した席上できめることにいたします。さて散會前に申し上げますが、どうか
理事
諸君は殘
つて
いただきまして、次の
委員會
の
運營
に關しまして相談いたしたいと思います。
酒井俊雄
5
○酒井
委員
特別市制
の問題につきましては、御承知の
通り
各關係市、關係
府縣
からいろいろな陳情もまい
つて
おるのであります。もちろん
國會
といたしましては、國家的立場からこの
特別市制
の問題を大いに
審議
すべきでありまするが、よほど
愼重審議
いたしませんと、各關係
府縣
、市の
住民
に非常に重大な
影響
を與える問題だと思います。聞くところによれば、これは單なる風評だと思いまするけれども、小
委員會
あたりで、どうもあまり陳情がうるさい、なるたけ早く通してしまおうというような座談も出たとかいうことを言うておりますが、もちろんこれはとるに足らぬことだと思います。しかしそういう氣持で萬一この問題を取扱うことになると、たいへんな問題だと思います。私どもむしろこの
委員會
といたしましては、より
愼重審議
いたしまして、
委員
の者が各關係
府縣
、關係市へ實際調査に參りまして、詳しくその機構、將來の勘案、こういうことに對して慎重な調査の上、本案について
審議
をしたいと思います。 なお、ただいまの非常な御努力に基く御報告は、私も感謝をいたします。しかしその内容等につきまして種々なる疑問をも
つて
おりますし、
法律
上の
解釋
におきましても、私どもたいへん納得のいかぬ點もあるので、こういう立場から、印刷物は一日も早く御調製を願いまして、各
委員
のもとへおまわしを願いたいと思います。これについて十分研究いたしまして、そうして
審議
をしたいと思います。ただいまの内容につきまして、ここでいろいろ意見を申し上げることは、場合でもありませんし、ひまをとりますからいたしませんが、とにかく議事進行といたしまして、ただいま申し上げたように各
地方
へ參りまして、實際の状況を
委員
はよく調査いたしまして、眞に實情に適した理解のもとに本
法案
の
審議
をしたいと思います。以上であります。
大石ヨシエ
6
○大石(ヨ)
委員
ただいま
川橋
さんから、非常に懇切丁寧なる御説を聞きまして、まことに感謝にたえない次第でございます。つきましては、私は理想といたしましては
特別市制
に贊成でございます。しかし今これは、そんなに急を要すべき問題でないと私は思います。ただいま酒井さんがおつしやいました
通り
、私はまず現地に行
つて
、われわれ、すなわち
議員
が深切丁寧に土地の人の輿論を聞き、そうして實地調査をしてからでも遅くないと思います。その意味において、ぜひとも實地調査をして、すなわち
特別市制
に對する
市民
の聲、府民の聲、縣民の聲を聞いてからでも私は遅くないと思います。私は
委員長
に、切に御考慮をお願いいたしたいのであります。
坂東幸太郎
7
○
坂東委員長
繰返して申し上げますが、渉外關係
方面
との打合わせがありまするから、本日は決定いたしませんで、來る十一日午前十時から
委員會
を開きまして、その席上において正式に決定したいと思います。
久保田鶴松
8
○久保田
委員
十一日に決定とかいうただいまの
委員長
のお言葉でございましたが、
特別市制
の問題につきましては、ずいぶん言い盡されておるのであります。
委員長
におかれましても、北海道出身であられまして、非常に
特別市制
の問題についてかけ離れた、また公平な立場から、この問題を決定していただける
委員長
と私は考えております。その意味において、各
五大都市
におきましても、同じ黨の
市會議員
と府會
議員
との間におきまして、促進と時期早しとの陳情がございます。こういうことによりまして、私たち
社會
黨の關係の
委員
といたしましても困るわけであります。その意味から、わが黨といたしましては、この問題に對しまして特別
委員會
をつく
つて
おるわけであります。この特別
委員會
において決定いたしましたものをして、われわれ黨關係の
委員
は態度を決したい。そのように考えておるわけであります。ところがその日にちが、十日は日曜でございまして、十一日の
委員會
には間に合いにくいかと考えるのであります。十一日に決定するという
委員長
のお言葉でございましたので、この十一日に決定されまする日にちを、もう少し延ばしてもらいたい、かように考えるわけであります。
坂東幸太郎
9
○
坂東委員長
ちよつとお答えいたします。十一日は、つまり
審議
するのでありますから、多少延ばすという説が多ければ延ばしても差支えないのでありますが、とにかく十一日は定例日でありますから開きまして、この案を
審議
いたします。なおまた、ただいま小
委員長
代理の
川橋
君の御報告は、つまり案の起草の準備であります。
從來
七名の小
委員
諸君は、全會一致をも
つて
この起草に著手をしておるわけであります。なおまた御參考に申し上げますと、大體この五大特別
都市
をつくるということは、
自治法
第二百六十
五條
の
規定
によりまして
國會
がこれを
指定
する。すなわち
指定
された後の
府縣
との關係は、
政府
が當然やる責任が生じますので、
政府
の考えによりまして縣と市が
協議
してきめて處理する。こういうことにな
つて
おります。また黨との關係は、元來常任
委員會
というものは、いわば超黨派的の關係であります。
從つて
常任
委員會
の個人、あるいは全部もしくは一部をも
つて
、
法律案
を出した場合におきましては、さらにまわ
つて
きます。それが正式に議長
竝びに
議院
運營
委員會
の
協議
によ
つて
さらに付託されます。その付託された時分に、初めて黨の方で黨議決定をしてよろしいのであります。それができないうちに黨議の方で決しますと、大切なる
議員
の發案權を壓迫する、あるいは牽制するということになりますから、議案ができますまでの黨議の決定はみな遠慮したはずであります。ゆえにたとえ提案されましても、この
委員會
は黨において反對、贊成は自由、また賢明なる
委員
諸君がその黨議に從う、從わぬは、これまた諸君のお考えによ
つて
決定するものであります。すなわち常任
委員會
は、
原則
として半ば超黨派的のものであるということを御參考に申し上げておきます。
從つて
今久保田君の仰せの十一日のことは、これは十一日に
審議
しました結果、二、三日延ばしていいということであれば延ばしても結構ですが、
原則
的に十一日は、定例日でありますので、開いて
審議
したい。こういうのであります。
大石ヨシエ
10
○大石(ヨ)
委員
この
特別市制
のことについては、實に重大でございまして、私たち
議員
も、この
特別市制
はいかなるものであるかということをまだ研究しておりません。だから十一日にこれを決定するということにも
つて
いかれることを、私はもう少し延ばしてほしいと思います。もつと研究したいと思います。
坂東幸太郎
11
○
坂東委員長
それは十一日の
審議
によ
つて
きめたい。
外崎千代吉
12
○外崎
委員
いずれの御意見にも理論のあることでありまして結構でありますが、少くともこの問題はすでに二十何年間論議盡されてまい
つて
おりまして、殊に第九十二
議會
において、
内務大臣
までこれを認めておる。これをまた遷延することは、市あるいは
郡部
の摩擦をいたずらに増すのみであ
つて
、むしろかえ
つて
有害ではないかと思います。よ
つて
できるならば小
委員會
の決定
通り
特別市制
を
施行
することがよいと思います。
酒井俊雄
13
○酒井
委員
委員會
の
審議
の問題は將來の問題でありまして、今その
通り
決定せよという意見は獨斷だと思います。その小
委員會
の原案につきまして、私どもが
愼重審議
して、これを決すべきや、修正すべきや、種々なる結果が生れると思います。だからその準備のために、一日も早く印刷物を御配付願いたいと思います。なお十一日に決定というのは、
委員長
が獨斷でその
通り
きめてしまうという意味ではないと思います。十一日には
審議
をするということを決定するということだと思います。
審議
をするのには、ただいまの原案を一日も早く御配付願いたい。どうか國民輿論と申しまするか、そういう
方面
の感情からいたしましても、この點には
愼重審議
を願いたいと思います。どうもいろいろな異論が起きて、じやまがはいりそうだというようなことから急ぐというようなことは、も
つて
のほかだと思います。
坂東幸太郎
14
○
坂東委員長
小
委員長
の報告は、單に
委員長
に對するところの文書の提出でありまして、これが正式の議案となりましたならば、
議員
に配付いたしまするが、小
委員長
は
委員長
だけに對する報告ですから、正式案が出ますならば、そのときには全部配付するということにな
つて
おります。酒井君が申された
通り
、十一日には日程にあげまして
審議
します。それから多數決できめる、こういうことにな
つて
おります。
松澤兼人
15
○松澤(兼)
委員
私も
委員長
のおつしやることに贊成であります。いろいろ研究する必要もあると思いますけれども、すでにこの問題は相當古いのでありまして、またこれが通過いたしましたときにも、おそらく次期の
國會
においてこれを提出するというような
附帶決議
があ
つた
かと聞いております。
從つて
十分に調査するということは必要でありますけれども、このままでいつまでもいつまでも放任しておきますれば、ますます
市部
と
殘存郡部
との對立がはげしくな
つて
まいりますから、
國會
は
國會
獨自の決定をなるべく速かにすべしという感じをも
つて
いるのであります。
從つて
十一日に常任
委員會
を開くということは私贊成であります。なお
實施
調査の必要があるかどうかということは、
委員長
あるいは小
委員長
、
理事
の方々で十分御
審議
下さいまして、十一日にまた御報告を願えたら結構だと思います。
外崎千代吉
16
○外崎
委員
ただいま私の言葉が足らないところから、じやまがはいるのを防ぐというように聞かれたようでありますが、そうではありません。ただいたずらに長く論議しているうちに、
郡市
のうちでさまざまなる摩擦が起るのをおそれている。二十何年間もこの問題を論議してまいりまして、いやしくも代議士諸公として、このくらいのことははなはだ失禮な言分ですが、今までに討論していないということは非常に遺憾だと思います。ただし小
委員長
の今讀上げた書類に對しての
審議
は別といたしまして、とにかく一日も早くこれを
實施
することが私どもは至當だと思います。
菊池重作
17
○菊池(重)
委員
この問題とは別ですが、月曜日の
委員會
の開催は午後一時からにお願いできないでしようか。なるべく大勢出席の上
協議
したいと思います。
外崎千代吉
18
○外崎
委員
他の
委員會
の都合もありますから、できるならば朝早くから……。
千賀康治
19
○千賀
委員
これは會期の問題でありますが、大體豫定があ
つて
、
議員
全體が承認をしておるはずであります。各派交渉會の根本からすつかりやり直して、決議をし直すならば
變更
はできると思いますけれども、ここの決定としますれば、ほかの
委員會
の進行にも大きな支障が起
つて
くるだろうと思います。かような意味で、私はここだけで今決定することは不可能でもあり、またよ
つて
起る
影響
が大きいと思いますので、豫定
通り
に進行せられることを希望いたします。
松澤兼人
20
○松澤(兼)
委員
たびたびお話の
通り
、この問題は永年すでに論議し盡されておるのでありまして、これは今申し上げましたように、國家的見地から
國會
がこれを
指定
する、
地方
の
自治團體
の意思は、その後自由であるというような點におきまして、私は速かに
國會
の
指定
を促進されることを希望いたします。まだ
議員
は論議の餘地があり、あるいは十分の論議が足らないと言われますけれども、
地方制度
委員會
が第一囘の
國會
において開催された最初に、本
特別市
の問題が起
つて
おるのでありまして、すでに時日も相當經
つて
おります。御研究になられれば相當の時日があ
つた
はずであります。特に私は、
指定
をするという意味は、
自治團體
の意思を無視するのではなく、その意思はこの後に自由なる發言ができるのでありますから、
國會
の
權限
において特に
指定
をされんことを特にお願いいたします。
坂東幸太郎
21
○
坂東委員長
それでは次會は十一日午前十時に開會いたします。本日はこれをも
つて
散會いたします。 午後零時七分散會