○
鍛冶委員 まだ刷
つていないので、便宜私の案を讀上げます。
最高法務廳設置法案中次のように修正する。
一、「最高
法務廳設置法」を「
法務廳設置法」と改める。
二、
本法中「最高
法務廳」を「
法務廳」と、「最高法務總廳」を「
法務總裁」と改める。
三、第一條第二項を次のように改める。「
法務總裁は、
法律問題に關し、
内閣並びに對し、
意見を述べ、勧告を為し、又はその諮問に答える。」
四、第三條及び第五條中「法務
調査意見長官」を「法務
調査長官」と改める。
五、第十條第二項第一號中「収集」の項に「竝びに
檢察局の活動を促す事に關する事項」を加える。以上であります。
それでは本
修正案の
理由を
説明いたします。本案の名題は、
最高法務廳設置法案と出ておりますが、およそ最高という
言葉のつくのは下級のものがあ
つて、それがだんだん上へ上
つてきて、これが最後だというときに、最高という
言葉を使うものでありまして、下級のものがないのに、最高という
言葉を使うものは、わが日本の國ではありません。おそらくいろいろの
事情もありましようが、
説明の足りないところ、もしくは日本語のよく了解できぬところから、こういうものが出たのだと思いますから、われわれは
國會の名誉にかけて、また最高の立法府といたしましいて、かような
法案をつくることは最も不名誉なことと思いますから、最善を盡してこの案の修正をしなければならぬものと
考えます。
なお次に、本條へはいりまして、同じく「最高
法務廳」または「最高
法務總裁」とありますが、最高
法務廳と言う「最高」が要いなければ、最高
法務總裁という「最高」も同様の
理由で要らないものと斷ぜざるを得ませんから、この「最高
法務廳」及び「最高
法務總裁」は、いずれも「
法務廳」及び「
法務總裁」と改むべき物と
考えるのであります、
次に、第一條第二項の原案を見ますと、「最高
法務總裁は、
法律問題に關する
政府の最高顧問として、
内閣竝びに
内閣總理
大臣および各省
大臣に對し、
意見を述べ、又は勧告する。」とあります。この「最高顧問」でありますが、「最高」ということは、先ほどの
説明でわかりますが、この「顧問」という
言葉は、わが日本では
法律上におそらく使われておるところはありません。枢密顧問官などという顧問があつたことを覚えています。これからはわが日本語の用語からいたしまして顧問というのは相の手方から問題を受けて、そ相談に應じて答える。換言すれば、消極的の任務をやるものをも
つて顧問としておるのであります。そして積極的に
仕事をする者は顧問とは使
つておりません。しかるに
本法を見ますと、積極的に
意見を延べ、又は勧告することと、この顧問という
意味に各省及び
内閣から相談を受けたときに、その相談に應じていわゆる諮問に答えるという消極的の任務もはい
つておる、兩方はい
つておるということが、昨日來の質問應答によ
つて明白にな
つたのであります。從いまして、消極のみという観念をもたせるこの「顧問」という字は、かえ
つて將來において
本法解釋の上に疑義をもたせ惑わせるものでありますから、この最高顧問というのを除きまして、そして「
法律問題に關して
内閣總理
大臣及び各省
大臣に對し、
意見を述べ、勧告をし、又はその諮問に答える。」こうすれば最も明白に出るものと
考えるので、ぜひともかように改むべきものだと
考えます。
その次は第三條及び第五條にあります法務
調査意見長官という
言葉であります。まことにわれわれ未だか
つて聽いたことのない名前だありまして、これもおそらく日本語のよく徹底せないところから現われてきた文字であろうと
考えますので、日本語の
内容をよく
説明し、しこうして、この任務の
内容を
説明するならば、かようなわれわれの常識に反したる
言葉を使う必要はないものと
考えるのであります。なお
調査官とすれば、積極的の
意見を述べる權限がないように
考えるのじやないかという疑問はあるか知れませんが、およそ
調査をするという以上は、
調査をした結果、自分でその結果を握
つておるというものはないのでありまして、
調査の結果は必ずその
報告をし、またその
意見を述べることは當然であります。舊來においても各省に
調査局というものがあり、または
調査部というものはあるが、ただ
調査をし放しで、そこに握
つておるというものはありません。その
調査の結果を
報告し、それによ
つて意見を述べることが當然の任務でありますから、
意見という
言葉を使う必要は一つもないのでありますから、この點十分關係者に
説明して、かような日本語に合わせない文字を削除することが最も
適當であろうと
考えるのであります。
次いで第五の修正點でありますが、第十條第二項
人權擁護局における
事務として、第一號には「
人權侵犯
事件の
調査及び情報の収集に關する事項」とな
つております。これはまことにわれわれとしては、殊に私が
辯護士といたしましては、双手をあげて歓迎すべき條文でありまして、今まではかような機關がなかつたがために、民間における
人權擁護機關として
日本辯護士協會なるものが設立せられ、ここに六十年の歴史をも
つて、この任務に活躍してきたのでありますが、いかんせん、この
人權蹂躙ということは、この蹂躙
事件をみずから
調査し起訴するところのその任務に當る者が犯す問題であります。從いまして、みずからの犯したことをみずからがやらなければならぬものだから、これは容易に活動できない。
日本辯護士協會が六十年に餘る歴史をも
つておりましたが、その間私が覚えておりますのは二つあるだけであります。そのほかかような
事實を摘出し、
調査し、いわゆるここに
調査をし情報の収集をいたして、進んで
檢察當局に活動を促したことは、枚擧にいとまないほど多いのでありあますが、取上げておりません。たつた二つのわれわれは見ております。かような事から
考えまして、せつかくかくのごときよいものが
法律に現われましたる以上過去における弊害を根こそぎなくして、多年のわれわれの希望を達成するように、ぜひともここで實現せなければならぬと
考えるのであります。しかるに第一號によりますと、
人權侵犯
事件の
調査及び情報の収集に關する事項——
調査をし情報を収集するというだけでありまして、この
調査によ
つて人權蹂躙ありと確認したる以上、これによ
つて活動する機關に活動を促すということが缺けておるのであります。あるいはこれだけのものがあるということになれば、同じ
官廳である最高
法務廳においてやられたことであるから、當然その
調査に基いて、この任に當るべく
檢察局で活動するであろうというような
議論もありました。一應その點は受取られるようでありまするが、先ほど申し上げたように、活動しようとする
檢察當局もしくはその手下であつた、
具體的に言えば
指揮監督をしておる
司法警察官のやつた
人權蹂躙を取上げるのでありますから、単に
調査をし収集しておるだけでは、その實績のあがらないことは、過去における
經験において、われわれは明々白々だと思います。ここにおいて、あるいはなくてもよいかはしれぬが、これだけのことをやつた以上は、さらにこれだけの
事實があるとすれば、
檢察當局に活動を促すといういことも、ここでやらなければならぬということを、明記しておかなければ、せつかくこの條文を入れた効果がでれこないのであります。司法委員であられる皆さんは、ほとんど
辯護士でありまして、過去の
經験において、ずいぶんいやになるほど知
つておられることだと思う。私一人が
日本辯護士協會に關係してかようなことをや
つてお
つたのじやありませんから、この點は十分おくみとりくださいまして、あるいは蛇足の感あるかはしれませんが、過去の實績及び
檢察局の實情に鑑みまして、この點を明白にすることを、ぜひとも入れていただきたい。かように
考えるものであります。
以上簡単でありますが、
修正案に對する
理由を申し述べます。