○
北浦委員 ただいまの
首相の御
意見の前半は、私の
考えと同一なんです。六十
八條の第二項の「内
閣總理大臣は、
任意に
國務大臣を
罷免することができる。」これは
獨自の
權限である。
閣議は要らない。しかしながら、
天皇の
認證ということについては、
閣議が必要だ。ところで
片山さんのただいまの
答辯は
片山さん、まさかうそはおつしやるまいでしようが、持ちまわり
閣議であるとか、さような
簡單なものではないし、それから持ちまわり
閣議をや
つておられないということは、
新聞紙によ
つて十分證明できる。一體
平野君が當日あなたから
罷免を申し渡されて、そうして
首相官邸を出ておるのは翌日の午前一時ごろなのである。その翌日の九時に
鈴木司法大臣が
宮中に參内したのである。その間にどうして持ちまわ
リ閣議ができますか。これは先例になることであリますから、私は決してこれであなた方を抗議するのでも何でもない。こうすれば救濟できるということを相談かたがた申し上げるのである。そういうことをおつしやるものではない。どうして
國務大臣を
罷免するという
重大事件を
要式行為ではない
——一體文書の
作成には形式ということは必要でありますが、
閣議なんかに
要式であるとか無式であるとかいうことは、私は
一つも尋ねてない。但し
閣議を開いて、在京の
國務大臣は全部寄
つてきて、そうして先ほど私が申し上げまする
通りに、
平野君にも
辯明の
機會を與えて、そうして議論を闘わして、
決議して、その
決議をも
つて鈴木司法大臣が
宮中に參内しなければいかぬ。あなたの身代りだ。それは
間違いだ。これは確かに
間違いである。
内閣の
決議に基いて、
内閣の
代表でなければいかぬ。そうして
鈴木さんは
天皇陛下にお目にかか
つて、
アドヴアイス——助言と
承認の大役を果さなければいかぬ。あなたにそんなことをする
權限は
一つもない。あなたが
天皇に
助言を與え、あなたが
承認を與えたりする
權限は、
憲法に
一つもない。
内閣にある。
内閣という
会議體にある。それを
代表するあなたならばともかくとして、どうもそのときはそうではない。殊に持ちまわり
閣議でや
つてもいいのだ。さようなことは、この重大なることについて言うべきことではない。それはきようから後に相談をなさ
つて、あのときは持ちまわり
閣議としておこうとなるかもわからない。しかしそれは
將來のためにいかぬ。初めから申し上げる
通りに、あなただからいい。多年の間、私はあなたの
人格というものを知
つておるから、この人ならばまずます誤解してこういうことをしたのであろう。横暴のためにしたのではない。平清盛のような心持でしたのではない。
東條のような
考えでしたのではないということは、私にはよくわかる。
將來を慮
つて、私は言うのである。それだから、さような亂暴な、
簡單な、いや持ちまわり
閣議でもいいのだ、私の
代理で、私の
使いでもいいのだ。そうじやない。
使いじやいかぬ。
代表でなければいかぬ。
重大事項を果す
助言、そうして
承認という
國家行為を果す。この點は、あなた方のや
つたことは
間違いであるという
結論に達する。次に結局われわれのただいま受けた印象といたしましては、正式な
閣議を開いていない。また開いていないということを私は知
つておる。通知するひまもない。あなた方は
平野君と九時、十時、十一時ごろまでやり
合つて、そうして
新聞記者とあなたはお會いにな
つておる。
平野君はまた、何派か知りませんが、
平野派でありましよう。そういう代議士と會うて話をしておる。それから
閣議を開こう。持ちまわり
閣議を開こう。できることじやない。この點あなた方は
間違つたことをや
つておる。すなわち
結論といたしましては、六十
八條の第二項、あなたは
平野君に對して、ある
理由によ
つて君を
罷免する。これは正しい。ここは正しい。それから向うの
天皇に
認證を受けるということは、
憲法上無效だ。これはできていない。そこで
天皇の
認證が完全に行われていなければ、
憲法のいわゆる
最高法規の
條文に照らしまして、今囘やられた
平野農相罷免の
行為の一部だけ無效であるという
結論に到達いたします。そこで私はあなたに進言したい。
鈴木司法大臣の得たる
認證は、
越權行為である。
閣議の
決議のもとにや
つていないから
越權行為である。
越權行為である。無效である。
平野君でなくても、
最高裁判所に訴えれば必ず負けである。私
はさように思う。そこで
天皇の
認證を受けた部分だけは無效である。
片山さんが
憲法第六十
八條第二項によ
つて平野君に
罷免の
申渡しをされた。これは
適法である。しかし
認證を求めるということについて、
閣議の決定に基かなか
つた點は無效であるから、どうすればいいか。これはあなた方やろうとやるまいと勝手でありますが、あなたがやりもしない
持まわり閣議をや
つたと
言つてつつ
ぱねて通そうということは、
將來のために非常に惡いことであるが、それでもあなた方やろうと思えばやりなさい。しかし
憲法六十
八條の第二項は立派に有效であるから、
内閣の
認證という
憲法の
事項を
適法にやれば、速やかに
圓滿に解決がつくと私は思う。速やかに
内閣法第四條の正式の
閣議を開いて、その
決議でも
つて再
認證を得ればいい。
天皇には
拒否權がない。私はそう思う。けれどもあなたは今日まで
閣議を開いていない、開く必要がないのだと
新聞に言うておられる。きようにな
つて持ちまわり
閣議は開いてもいい。私はあなたの人柄として深く追究しようとは思わぬが、
將來を慮らなければいかぬ。今後を思わなければいけない。はたしてあなたは、こんなできない時間で翌日の午前九時までに持ちまわり
閣議をやられたのであるか。持ちまわり
閣議をしてもいいのだということと、持ちまわり
閣議を完了して、
鈴木司法大臣は
行つたのだ、あなたが、私の代りでもいいのだ、私の
使いでいいのだと言うのは、言い過ぎだ。それは
間違いだ。その點を伺
つておきたいと思います。