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鍛冶委員 長男に長男にとおつしやる。私は長男にやれというのではありません。どうあ
つても長男にや
つて、昔の
通りの
家督相續をやらねばならぬというのではない。それは長男であろうが次男であろうが、三男であろうが、それこそ法の上では平等でありますから、たれでもよろしい。但しそのうち最も
適當なる者がこれを繼ぐ。
適當なる者はたれであるかということは、
事實上及び
法律上でも考うべきだと思います。原則はあ
つてもどうかと思う。私は強いて長男でなければならぬと
考えておりません。そこでいいことがあればとおつしやるから、ひとつ
考えていただきたいのは、わが
日本には舊來ちやんとや
つていけるものがあります。しにせにおいては相
續人がその店の
家業を繼ぐ代りに、その仕事を繼がぬで、勉強でもして外に出るというのもたくさんありますが、もし親の
もとにおいて
兄弟仲よく
家業をや
つて、その家を繁榮させたとすれば、先ほどから言う
ように均分というわけ方ではありませんが、支店をもたせるとか、店をもつだけの資産をもたしてみなうまくや
つております。また町工場、いわゆる職人の家へ行きますれば、これも家にある道具を半分わけてやり、機械を半分わけてやるということで、ちやんとそこに手職を覺えさせて、うまくいく
ようにやらせておる。このりつぱな
慣習を打壞して、何でも現在あるものをわけなければいかぬという
考え方に、私は無理があるのではなかろうかと思う。農業資産相續特例法案の
ようなものをつくることも、私は間違いであると思
つておる。それなら商業資産法、工業資産法、漁業資産法もつくらなければならぬ。漁業だ
つたら船から網から釣道具もあります。わけろと言われれば一人ずつわけられないことはありませんが、わけたらめちやくちやにな
つてしまう。長男なりが家にはい
つて、その資産が殖えたならば、次男が獨立できる
ようなものをもら
つてちやんと獨立の商賣をや
つていくということは、りつぱに行われておる。これは私は良習だと思うのですが、しかしそういうことはいかぬという人もありますから、あなた方の方でそれを否認されるならばいかぬということを私は聽かしていただきたい。またいかぬということでないならば、この
慣習を活かしてもらいたい、こう思います。