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1947-09-27 第1回国会 衆議院 司法委員会 第40号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十二年九月二十七日(土曜日)     午後一時四十七分開議  出席委員    委員長 松永 義雄君    理事 石川金次郎君 理事 鍛冶 良作君       池谷 信一君    安田 幹太君       打出 信行君    中村 俊夫君       八並 達雄君    山下 春江君       吉田  安君    岡井藤志郎君       北浦圭太郎君    佐瀬 昌三君       花村 四郎君    明禮輝三郎君       山口 好一君    大島 多藏君       酒井 俊雄君  出席國務大臣         内閣總理大臣  片山  哲君         司 法 大 臣 鈴木 義男君         國 務 大 臣 和田 博雄君  出席政府委員         經済安定本部副         長官      田中己代治君  委員外出席者         專門調査員   村  教三君     ————————————— 本日の會議に付した事件  刑法の一部を改正する法律案内閣提出)(第  六號)  經済査察官臨檢檢査等に關する法律案内閣  提出)(第四二號)     —————————————
  2. 松永義雄

    松永委員長 會議を開きます。  刑法の一部を改正する法律案及び經済査察官臨檢檢査等に關する法律案一括議題とし、審議を進めます。北浦圭太郎君。
  3. 北浦圭太郎

    北浦委員 私は司法大臣にお伺いするのでありまするが、總理大臣にもその質疑、答辯を聞いてもらい、よく覺えておいてもらつて、そうしてただちに、もつともだとくことは明らかになりますから、實施していただきたい。こういう希望で、これから司法大臣にお伺いいたします。  今日の朝日新聞ごらんになつただろうと思いまするが、司法部の實に容易ならぬことが出ております。簡単にその要所だけを讀んでみますと、「給料だけではとても食えぬと判事檢事もどんどん退職しつつある。大部分は辯護士に轉業するらしい。司法省の調べによると、判事でやめたものは、昨年十月から今年七月までに七十三名、八月十五名、九月は二十日までに九名ある。檢事退職者は昨年十月から今年六月までに三十名、その後毎月六、七名ずつやめている。裁判所始まつて以来のことである。」俸給の點は省略いたしまして、「退官者も三十二から四十五歳までの脂の乗りきつた中堅が多く、現在缺員判事五百名、檢事五百五十名(副檢事三百五十名を含む)に達している状態だ。最高裁判所から簡易裁判所まで、新しい革袋整つたが、中味の酒が漏り續けて、空袋とあつては裁判の民主化も心細い」ものといわざるを得ぬ。」こういうことが出ておるのであるますが、實際はこれよりもつとひどい。私がしばらく司法政務次官をしておつた當時に調べましたところによりますと、東京控訴院と、當時大審院判事檢事で、榮資失調病氣で休んでおつた者が二十四、五名である。こういう状態では、せつかく憲法民主主義に變り、裁判所も天皇の名において裁判するのではなくして、むしろ國民の名において裁判するようになつた今日、こういう状態では健全なる日本は決して發達しない。その理由を私は前から考えておるのであります。この新聞には、俸給が足りないからだと、こう書いてありますが、こういう理由がある。辯護士をやつておる方が金は儲かるわ、かつ地位の昇進が早い。こういう缺點がある。このごろ辯護士會勢力がアメリカの影響を帶びて非常に伸びてまいりました。それでほんとうに何らの副收入もない判事檢事を十年やつておるのと、辯護士を十年やつておるのと、辯護士の方がどうやらこのごろは地位が上になつた。そこで中堅層はやめてしまう。これは司法省から出た種だろうと思いますが、司法大臣は一體何と考えておらるるか。よい方法を考えるとか、漸次これから改めていくとか、そういう手ぬるいことではだめなのである。両方で千名からの缺員、これでは司法事務というものはやつていけるものではない。こういうことについて、司法大臣は今日どういう仕事をしておられるか。これを救濟すべく、どういうようなことをやつておるか。この點をまずお伺いいたします。
  4. 鈴木義男

    鈴木國務大臣 御指摘の問題は、まことに悲痛な問題でありまして、決して今日に始まつたことではなく、近年イフンレの増進に伴いまして、非常に官吏一般生活難に襲われておるのであります。殊に司法官檢察官は、收入は月給のほかに何もないのであります。しこうしてその收入が御承知通りでありますから、非常な苦境にあることは、榮養失調者をたくさん出しておるという事實に徴して明らかであります。これを何とかしなければならないということは、私も就任早々考えたところであります。實は閣議の席におきまして、その實情を申し上げまして、できるだけ早き機會司法官優遇檢察官優遇を講じていただくように、閣僚の御了解を得ておるのでありますが、しかし俸給を上げただけでは、ただいまかりに非常に上げるというのなら別でありますが、わずか二割、三割、五割程度上げたところで、解決する問題ではないのでありますから、どうしても、これはできるだけ消費組合のようなものを奨勵いたしまして、さいわい司法部では厚生部というものがありまして、できるだけ物資を手に入れて、これを公定價格配給をするということをやつておりますが、この機能を十分に活して、できるだけ俸給の足りない點を物で補うということも奨勵いたしておるのであります。  なお裁判官檢察官というものには、副收入その他何らの職務外の御利益というようなもののない地位でありますので、十分にこれは優遇をしていただかなければ、その職に安んじて仕事をすることはできないゆえに、他の官吏と比較して同様であるというのでは足りないのであつて、ずつと一段も二段も優遇をしていただかなければ食つていけないことは、御承知通りであります。そこでできるならすべての判事、すべての檢察官一級官をもつて當てる。判檢事になつた一級官に當然なれるのだ、そして十分に他の官吏に比して優遇され、品位を保持してやつていくという地位の上、收入の上の保證を與えたいというようなことも考えておりまして、ぜひこれは司法委員會等の御協力を得まして、来年度から實施することができるように法律も改正し、豫算も増加していただきたいこういうふうに考えておる次第であります。
  5. 北浦圭太郎

    北浦委員 私はかつて確か東條内閣當時であつたと思いますが、司法官だけはいわゆる聲なき聲を聽けというわけで、特に昇級運動を開始しましたところ、議會のほとんど全員はこれに贊成してくれて、下級司法事務官、たとえば書記とか廷丁とかいうようなものに増俸をすぐされたことがありまするが、もちろん今日におきましても、こういう事情は子供でも知つておるのでありまして、特に司法關係官吏に對して優遇するということに反對するものは一人もない。そこで私は心ひそかに考えておるのでありますが、司法官がどんどん辭めていく、何年經つても食えないから辯護士がよかろうといつて榮利地位につくという氣分が多分に現れておるのでありますから、特に判事檢事という人に限つて年功加俸考えていただきたい、大體において二十五、六歳ごろから判檢事になる。それから日が進むにつれて細君を迎える、子供ができる、年が經てば經つほど家庭の入用の増加するということは當然でありますから、五年勤めれば加俸いくら、さらに五年勤めれば加俸いくらと大幅に支給する。この説に對する避難は、そういうことをすれば他の行政官、それから自治體役人一切がこれを要求するに違いない、こう言うのでありますけれども、そこは民主政治の今日、司法官年功加俸制度を設けたからといつて、その他のものまで及ぶかどうかは、これは世論、民論に聽いてやればよい。私はこういう信念をもつておる。ただいまの司法大臣の御答辯の程度では、これはどうしても救われない。十年以上やつて四千圓前後というのでは、どうしても司法部というものは完全にいかぬ。われわれ多年——二十年、三十年間の司法部に關係いたしておりますものの一種のプライドといたしましても、多少缺陷は過去においてあつたかもしれませんが、まず日本の官界において健全にやつてきたのは司法畑である。これはたれが何と言つても否定はできない。それに酬ゆるのが一番薄いのだというのでは、これはうまくいかぬ。殊に司法官というものは、こういうことを主張するところのチヤンスをもつていない。長い歴史の間にただ一囘、檢事が團結して諍つたということを覺えておりますが、それ以外にない。こういうことを考えてみまして、これは司法官が氣の毒だという問題ではない。民主國家の健全な發達を期待するという理由から、急いで司法大臣は前後處置を講ずると言うが、私は新たに司法官限つて恩給則度を主張する。この點について、司法大臣も今にわかにどうするということも困難であろうと思いますから、お考えを願う。そうして片山總理大臣はお聽きの通りでありますから——私は司法政務次官に任命されて、その日に大審院に行つてみた。そうすると缺席者が相當多い。どういうわけかというと、榮養失調で寝ておるのだという。實に惨憺たるものである。これが當時東京控訴院大審院實情である。この人たちの言うことは、内輪ではそういうことを申しておりますけれども、世間に訴えることができない。身分身分であり、地位地位である。これは何とかしなければいけないとわれわれの方で考えたときに政變というものが起つたのでありますから、鈴木さんは何をおいてもこれを来年というような手ぬるいことを言つておらないで、さいわいにここに總理大臣がきておられますから、よく御相談をして、一刻も早く——私が申します恩給制度ということは、これは應急措置ではないが、これが出てごらんなさい。行き先は辯護士裁判官になるようになつて、交流してくる。辯護士でもここに書いてある脂ののりきつた辯護士は、すなわち繁榮いたしておる辯護士は、裁判官になる人は少ない。まずまず年のいつた人とか、あるいはまた初めての辯護士であつて、あまりさような繁榮は困難だというような人がなる傾向にある。これは必ずそうなる。どこから考えても、これは目下の重大問題であるますから、もつと司法大臣應急處置考えなければならぬ。内閣總理大臣は、この點について一生懸命に大蔵大臣と相談してもらいたい。これだけを希望いたしまして、速やかに司法部の健全なる發達を祈つております。わたしの司法大臣に對しまする質問はほかに刑法問題においてありますけれども、この點はこれで終わりまして、あとは同僚に讓ります。
  6. 岡井藤志郎

    岡井委員 總理大臣に御質問したいと思います。いやしくも一國の總理大臣に對するのでございまするから、私は個々の法律論はいたしません。直ちに政治根本に突入したいと思います。  この間司法大臣靜岡刑務所事件で、囚人ども民主、自由を履き違えて刑務所長に要求するところがあつたというようなことを申されましたが、民主、自由の履き違えもございますけれども、今犯罪を犯す人々は少しも恥じる色がないのであります。これは戦争政治家眠つておりましたために、やめるべき戦争もやめさせるようにしなかつた國家が山の頂から顛落し行く姿が見えなかつた。あるいはみえても勇氣を出されなかつた。不明であるが、不誠意であるか、どちらかでございまして、その人々が今自由主義者と稱して樞要の地位についておられるのでございまして、結局國會中に人物なくして、今日の状態に立ち至つた、かように思うのであります。そこで司法部でいくら區々たる罪人を罰しましたところで、しようがないのでありまして、ひとつ總理大臣におかれまして、國家最高機關として、戦争被害者たる一般國民に向つて戦争中の無能なる政治家を代表いたしまして——無能なる政治家とは議會人新聞人、さような人々を含むのでありまして、眠つてつた政治家を代表いたしまして、國會において一般國民に向つて詫びるとか大いに陳謝する。あるいはこのごろできかかつております國家賠償法の精神に基きまして、何らかの賠償の途を講ずる。かような大儀名分を明らかにすることをいたしませんならば、私は一般國民承知するものでは思います。一般國民議會に向つて復讐する。こういうような觀念が大なり小なりあるのでございます。しかるにその根本が少しも正されておらないようでありまして、これらのことにつきまして、總理大臣はいかがお考えでございましようか、お伺いいたしたいのでございます。
  7. 片山哲

    片山國務大臣 なかなか大きな問題を提供されておりますので、私はごく包括的にお答えいたしたいと思います。この戦争はまことに遺憾でありまして、その原因は一にわが國の軍國主義封建主義獨裁政治、非民主的というような問題に原因しておると考えております。つきましては、この軍國主義封建思想を一掃いたしまして、民主主義徹底をはかり、そうして平和國を建設するという積極政策に出ることが、最も必要なる處置であろうと思つておるのであります。ただ過去の責任を追及するということにのみとらわれて、将来に對する施策をおろそかにするということでは祖國再建の十分なる方途は得られないということを考えておるのでありまして、兩建てにして進んでいきたいと思います。そういう意味から政治に今まで携わつて戦争原因を大小となくつくつた人々は、とにかく公職追放というような處置によりまして、過去の誤れる思想の一掃に努力いたしまするし、進んでは憲法の改正より附屬法規一切の制度を通じて民主主義徹底をはかり、平和國文化國を建設いたしまして、國民人權を擁護し、自由及び平等、平和、この思想によりまして、将来の政治の大綱をたてていかなければならない。かように考えて、目下懸命の努力を拂つて進みつつあるような次第であります。國民全體が十分にこれを理解して、これに協力される場合においては、必ず目的が達成せられまして、再び戦争の過ちをするようなことがないということを信じているような次第であります。
  8. 岡井藤志郎

    岡井委員 私は當時議會政治家が、當局から秘密に説明を聽いたでございましようし、當局大臣の顔色も見ておつたでございましよう。彼ら軍部當局戦意なきこと、眞の意味戦意なきことを承知しておつたはずでございます。しかるに眠つてつたために、國家今日の悲境に落としこんだのでございます。その責任至つては、實に重大である。しかるに彼らは恥も知らないこと夥しい、痛罵したいのでございます。ところがこれはもう濟んだ問題でございまするので、このくらいにいたしておきまして、ただいま總理大臣は、現在も大いに努力せられておるようなお話でございましたら、その點について、一點お伺いいたしいと思います。  現内閣は組閣以来四箇月に相なりまして、その間に私どもから見ますれば、石炭國管問題でもつて四箇月の時間を空費し、全部の勢力をこれに傾倒しておる。こういうぐあいに見受けられるのであります。その間に東北竝びに關東の大水害が起きたのでございます。これは必ず年々に起きることにきまつている水害が起きたのでございます。私は直接行政の衡に當らない意志表示機關である議會政治家に對してすら、今日憤懣の情にたえないのでございまするから、直接行政權を承つておられる内閣總理大臣に要望するところも、はなはだ重大なのでございます。静かなる、妨害する人もない閣議の席上において、民主黨閣僚を屈服せしめることができない。それだけの理論しかもつておられぬ。理論があれば、ほんとうに屈服させることができるはずであります。だれも議論のじやまをする人はないのでございますから……。それから言論界は、ほとんどあげて反對をしておる。かような國管案のために貴重なる、危急存亡のこの四箇月を空費いたしまして、そしてほかに大事件を惹起したということは、私はこれは政治を解せざることははなはだしいものであると思うのであります。それからただいま同僚委員から、司法部内のお話もございましたけれども、いろいろ種々雜多の議論をいたします前に、その根本をなすところの、たとえば三合配給をいかにするか。私はこの三合配給をなし得なかつたという點について、自由黨内閣は何をしておつたかということを、選挙中から絶叫してきたのであります。私は自由黨でありますが、自由黨は自由なる姿を失つておる。何をしておるのか。政治家としてはこの三合配給を唱え、まだ實行するだけの見識と膽力がなかつたならば、政治家を廢業すべし、私はかのようにおもうのであります。これが凡百の諸惡の根元をなしております。總理大臣りつぱなる宗教家であられますから、よくおわかりと思いますが、日本國民の半数は食糧が少し足りないために怠けるという大罪惡を犯しておるのであります。怠けるという大罪惡は、人類歴史始まつてからの犯罪でありまして、これは主義主張のいかんにかかわらず、私は罪惡と思うのです。この大罪惡を犯しておるのです。この大罪惡を即時やめさせなければならぬという覺悟が、ほんとうにできましたならば、三合配給も實行できるのです。そうしたならば、われわれこの司法委員會でこういう議論をする必要もなくなつてくるかと思うのであります。判事待遇改善問題も、すべて解決するのです。かような根本の問題につきまして、そのためにこそ私は總理大臣があるのだと思います。新憲法によりますと、總理大臣國務大臣を任命する、また罷免することができると麗々しく書いてございます。それから政治はこの天地一體の姿のごとくに渾然一體をなしておるものでございまして、各省大臣が單獨でなし得る天地は、毫末もないのでございます。すべて總合的見地に立つて總理大臣の方寸によらなければ、何事もなし得ないのであります。かるがゆえに、國務大臣にものをお聽きするということも無意味なのでございます。新憲法におきましては、國務大臣は次官以下の地位に轉落しておる。またそうあるべきはずであると私は思います。そこで私に總理大臣が、憲法規定内閣代表者として行政を行う最高機關として、本然の姿に目覺めていただけませんでしたら、これは憲法違反であると思います。新聞を見ましても、またつらつら觀察いたしましても、現在の政治總理大臣の息が少しも通つていないのであります。部下に任せて、部下がいいようにするというのは空位空權を擁する君主のやることでありまして、總理大臣がかようなことをなされましたならば、これはりつぱな憲法違反です。安本の捜査臨檢憲法三十五條違反であるというぐらいの騒ぎじやないのであります。そこで私は總理大臣は私行上におきましては、私ども接してみましても、人格のにおいが馥郁と迫つてくるのでございますが、國家を興すか倒すか、そういう重大問題に徹しませんでございましたならば、これは善良なる一市民ということは言えるかもしれませんけれども憲法の規定しておりまする總理大臣ということは、斷じて言えないのでございます。内閣國會に對して連帶責任を負うとございますけれども、國が滅亡いたしましたる後に責任とりようはないのでございます。斷じて責任とりようはない。この意味において、連帶責任という條文は、國が滅亡に瀕しまするときには、空文に終つておるのでございます。さような重大事を考えましても、憲法に規定しておる通り總理大臣本然の姿に歸つていただきたいのでございますが、總理大臣ははたして、總理大臣たる職責を盡しておられるのでございましようか、その點を大臣にお伺いしたいのでございます。
  9. 片山哲

    片山國務大臣 はなはだ多岐にわたりましたる御質問結論といたしましては、總理大臣憲法上定められたる職責を全うしておるかどうか、こういう結論に歸著せられるように了承いたしましたので、その點についてお答えいたしたいと思います。  第一の石炭問題について四箇月を空費した、こういうようなお話でありますが、決してそんなことはありません。石炭問題は御承知通り、非常に重要な問題でありまして、閣議においても議論を盡して、十分練つて議會提出する結論を見出す、そういうようになりましたので、決してむだに過ごしたのではありません。また四箇月の間は、石炭問題ばかりに頭をつつこんだというわけでもなく、その間に國家全般に關する問題を次々と處理していつておるのでありまして、目下議會で諸君の手元において御審議を願つておるようなことによつてもわかると思うのであります。私はなはだ微力でありますけれども、全力を盡して委託せられた任務遂行にあたらんと考えておるのであります。殊に現在の情勢は、御承知通り經濟的危機でありまして、この危機を乗り切らないことには、わが國の再建はできないということを考えておるものでありますから、危機突破に中心をおき、やがてそれの見當がつきましたる上においては、さらに建設的な復興政策に進まんと、こういう目標を立てまして、漸次實行に著手いたしておるような次第でありまして、決して職を空しうするとか、あるいは、空位を擁しておるとか、徒食しておるとか、ふところ手して動きをただ見ておるとか、そういうことは斷じてありません。今後の施策においても、十分にごらんを願いまするならば、大いに努力しておるということが事實の上において御了承願えると思う次第であります。
  10. 岡井藤志郎

    岡井委員 私はいろいろ觀察いたしておりまするのに、今は國管案を論ずべき場所ではございませんが、國管案についきましても、社會黨の面目をもつて國管案を重しとしておる、こういう懸念を多分にいだくのであります。かつて軍部が陷つたような誤りを、現内閣が犯しておられつつあるのではないかと杞憂するのでございます。また意地になつて、かりに三千萬トン以上の増産ができるといたしましても、ほかの方面が犠牲に相なりましたならば、結局日本という一個のからだは生命を失うのでございます。たとえば今後大水害がおきるということに相なりますると、その點から日本國家生命を失うのでございます。私は總理大臣萬般の問題につきまして、大所高所から、このことをお考えにならなければならぬということを、強く強く御希望申し上げる次第でございます。  それから經濟査察の問題につきまして、私はこれは同僚議員と反しまして、毫末憲法違反ではない、こういう持論をいだいておるのでございます。憲法第三十五條は、「侵入、捜索及び押收」とございますが、これは犯罪檢覺の場合でございまして、重點はこの押收、つまり私權の侵害という點にあるように思われるのでございまして、國家行政の必要上監査ができない、かような不自由なことでは、國家行政目的を達することができぬのでございます。その迷惑は、いたずらに人權蹂躙を唱えている國民自身の頭上にふりかぶさつてくるのでございまして、國民自身の首を締める、自繩自縛ということに相なつてくるのでございまして、行政の作用は、さような貧弱なものではない。かるが故に、監査は十分におやりになつてよろしい。私はかように思うのであります。ただすでに各省におきまして、監査の權があるにかかわらず、經濟安本部にこの權を付與する。これにつきまして、大いに考えていただきたいのでございます。經濟安本部實情は、遺憾ながら屋上屋を架している。屋上に天を架しておるのならばよいのですけれども、似たりよつたりの屋上屋を架しておるのです。天を架しておるのではない。大所高所をもうけておるのにあらずして、屋上屋を架している。あるいは屋の側に屋を竝べておる。いたずらに行政煩瑣にして役人を養うのみだある。苦しむのは生産事業を破壊される國民のみである。かような状態を呈しておるのでございます。これは新聞雜誌の論調一致したる議論でございまして、まず國民の輿論と言つてよろしいかと思います。そこで私は總理大臣ほんとう經濟安本部總裁たるの實を發揮されず、ちまたでは和田内閣とか何とか申しておりまするが、そういうことではなく、總理大臣ほんとう安定本部總裁たる實を發揮される。ものことを大所高所からごらんいなつて實を發揮されるか、あるいは經濟安本部を今ただちに御廢止になつて、そうして各省大臣を次官格において、次官格ととしてみずから政治を行つていかれるか、このどちらかにしなければ、經濟安本部を設けたる趣旨に副わないのではないかと思います。違憲とか何とかいう議論を排してまで監査の權を安定本部役人に與えるという必要はない。さようなことは有害無益になつてくる。かように考えるのでございまするが、その點はいかがでございますか。
  11. 片山哲

    片山國務大臣 經濟安本部を廢止したらどうかということ、國務大臣を次官級とおつしやつたのですが、次官的に扱つていたならばよかるじやないか、こういう御質問のようにおもいまするが、經濟安本部は、現下我が國の情勢におきましては必要でありまして、これは屋上屋というわけではなく、まことに大雨が降るものであるますから、屋根をしつかりとしなければなりませんので、二重の屋根を必要とする場合もあると思うのであります。人が弱いからというわけじやなしに、それほど準備を整えて、設備を十分にいたしまして對策を講じていかなければならないほど、周圍が荒れておる、こういう場合でありまするから、經濟安本部の任務は、現在においては必要であり、また十分に發揮し得ると思つております。これについては官僚的にならないようにしなければならないのでありまして、いやしくも私が總裁として安定の指揮をいたしておる限りにおきましては、官僚的なやり方を十分に拂拭いたしまして、民主的にやりたいと思つております。のみならず國家の機構というものもだんだん變つてまいりまして、權力服從の關係、あるいはサーベルを下げて威嚇した時代はすでに去つてほんとう國民の福利増進をはかるという建前で進んでいかなければならないのでありますし、かつまた國家官吏國民の公僕という觀念に徹していかなくてはならないのでありますから、その方針で進んでおるのでありますし、また進むべく努力したしております。決して官僚化せしめないつもりであります。  また國務大臣國務大臣として重要な任務をもつておりまして、閣議において重要は發言をし、重要な施策をたてまして、そうして閣議決定を見るに至るのでありまして、内閣總理大臣を助けて、國政全般に對する事務を處理する國務大臣としての重要なる地位をもつておるものでありますから、この地位を變更する必要はないと考えております。
  12. 岡井藤志郎

    岡井委員 私は國務大臣を廢するというような暴論を吐くのではございません。ただ總理大臣國務大臣の任命罷免の權をもつておられるということから考えまして、また現代の政治は一省の大臣の實力をもつてしては何事もできないのである。もしそれをしようとしますれば、藪醫者と同じようになる。また刑務所が完備いたしまして、刑務所がいたずら壮觀を呈するのみであつて、世の笑いぐさになる。かような滑稽な悲惨な状態を呈するのでございまして、ひつきよう國務大臣のみをもつてしては、何事もでき得られるものではないのでありまして、これはぜひとも總理大臣の生々溌剌たる、活氣凛々たるお働きにまたなければ相ならぬという意味で、國務大臣總理大臣の一使用人である、總理大臣の一次官にすぎないということを私は絶叫するものでございまして、私はそのことの實質を論ずるのでございます。憲法もさように讀むべきである。これは私は憲法條文に麗々しく書いてあるように思うのでございます。ところが、ただいまの石炭國管問題にいたしましても、私は安本總裁たる總理大臣の息が通うておるのか通うていないのか、まつたくわからないのであります。息があるのかないのか、一般國民もおそらく感じないほど微弱であると思うのであります。これが憲法違反であつて、安定本部官吏監査權を與えるのが、憲法違反とか何とかいうような騒ぎではないのでございます。その總理大臣の本領を發揮せられないために、關東の大水害だけでも、少なくとも五百億以上の大損害を國家に與えておる。これをもし政治家がそろばんを知つておりましたならば、わずかにその十分の一、百分の一の費用を投じて、五百億以上の大損害を防ぎ得たのでございまして、現内閣及び歴代政府、ほとんどそういう氣のきいたことを考え、大なるところにおいて算數をしらない政治家のみがそろつてつた。かようなことも現總理大臣が、ほんとう總理大臣たる實を、憲法條文通りに發揮せられておりましたならば、私は幾分防ぎ得たのではないかと痛嘆して、農民の人々がお氣の毒でたまらないのです。またこの食糧危機の叫ばれておる今日、なんたることかと考えます。首相は道徳と政治の一致と井子とを頻りに言つておられましたが、實際に行うのでなければ、空念拂であつて、東條首相の二の舞をされることになるのでありますが、かような點について、道徳と政治、經濟、法理、すべてが一致しておるのであつてほんとう政治家たる呼吸がわかつておいでになるかならぬのか、私ははなはだ怪訝にたえないのでございまして、この點をお聽きいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。總理大臣眠つておるのではないということばでありましたが、四箇月の政治の實際に徴してみますと、私も一般國民も、總理大臣だけは眠つておられるような感じを受けるのでございます。事務はとつておられるように思いますが、政治はやつておられぬような感じをうけるのでございまして、これは大なる憲法違反ではございませんかということを、重ねてお伺い申し上げたいのであります。
  13. 片山哲

    片山國務大臣 職責の重大なることを考えまして、日夜心を痛め、かつ胸に鞭をあてつつ進んでおるのでありまして、決して安易なる道を選んで、安閑としておるわけではないのであります。水害の問題につきましても、その被害を最小限度に止め、氣の毒なる方々を救い、復舊を急がなければならないということにつきましては、全力を傾倒して、目下努力しつつあるような次第であります。しかし雨が降りすぎたというような天の災害までも政府のせいだということになつてまいりますと、政治上の責任があまりにも大きくなりまして、われわれはとてもそこまでは防ぎきれませんが、人力でやり得る範圍内においてはできるだけのことをやつて、そしてお氣の毒な方々の被害を最小限度に止め、救濟の實をあげたい。この經験を生かして将来の施策にあてたい、かように考えておるのであります。御質問の趣旨によりまして、最大の努力を拂い、最善を盡したいと考えておるのでありますから、その點は十分御了承を仰ぎたいと存じます。
  14. 岡井藤志郎

    岡井委員 もう一點だけ申し上げたいと思います。天の災害を政治の罪にするものではございませんが、新聞なんかを見ましても、決して天の災害とは一般に見ていないようであります。この點につきましては、私は現内閣を咎めるよりも、これまでの内閣を咎めたいのです。現内閣を咎めるようけちな考えは私は毛頭ないのです。ついこの間までの自由黨内閣に至るまでの責任の方が遙かにはるかに重大である。ところが現總理大臣におかれましても、もしもほんとうに組閣以来活氣凛々たる政治をなさつておられましたならば、私はこの災害の何割かは防ぎ得たと思います。木村内閣のごときは、これは怠慢であつたという非難は隱れたる方面におきまして非常にかまびすしいようであります、私は木村内相の人物評も承りましたが、決して現内閣において責任なしとはいえないと思うのであります。私は宗教家たる現首相は、天の災害も政治責任でないかと、そこまで顧みる謙虚な態度、精神と物質との關係はおわかりと思いますが、さような理論政治の方面に御利用あそばされないから、私は總理大臣政治がおわかりかどうか、さつき怪訝にたえぬと申し上げたのであります。ほんとう政治をおやりになりますなら、私一人でも現社會黨内閣を助けたいと思うのであります。私は、區々たる鬪爭をやつているのではありませんので、この點につきまして、首相はさらにお考えおきを願いたいと思うのであります。宗教家たり、政治家たる本分に徹していただきたいのでございます。これで私の質問を終わります。
  15. 松永義雄

    松永委員長 花村君
  16. 花村四郎

    ○花村委員 私はこの經濟査察官の臨檢、檢査等に關する法案に質してみたいと思うのであります。  近来出てまいりまする法律案を見ますと、ほとんどすべてが、その末項に罰則の規定が設けられておる。おそらく現在政府で出された法律案のうちで、その末項に罰則の規定の載つていない法律案は、まことに乏しいものであると申し上げてよかろうと思います。本案もこれまた罰則の規定が載つておるのでございまするが、しかし再建日本の跡始末をやつていかなければならないもろもろの施策に對して、こういう一面に何と申しますか、威かし文句で國民にそれぞれの事柄をなさしむるような考え方は、決して私は妥當ではないとおもうのでありまするが、殊に首相は最高度の民主主義を主張しておられる。また社會黨におきましては、この供出に關しましても、強權の發動はいかぬということで、強權の發動に反對いたしておるのでありまするが、とにもかくにも、こういう重大なる時局を擔當して、そうしてもろもろの再建に關しまする事柄をやつていく上においては、どうしてもやはり國民の自主的な、國民の喜んで進んで参加するところの協力を求むるという方途を講ずることこそ必要であろう、こう思うのであります。しかるに何もかにも違反をした場合はひつくくるというような、こういう法制の建前は、あまり私は感心をしたものではないのみならず、首相の常にもつておられる持論に反すると思われまするが、いかがでありましよう。
  17. 片山哲

    片山國務大臣 原則的な建前といたしましては、ただいまの花村君の御意見通りであります。私もそういう心持ちでありまして、罰則を振りかざして眞先に臨む、これをもつて威嚇するとくようななり方は望ましいことでもなく、それは避くべきことと思います。しかしこの條文は、全文四箇條でありまして、その第四條——一番おしまいの條項にこれを規定しておるのでありまして、この法律の精神を活かそうと思うときにおいては、萬やむを得ず、その罰則を規定いたしまして、これを引締めなければならないと言う、最後のやむを得ざる處置に出ておるものであります。御指摘のように眞向から振りかざして、冒頭にこれを書いておるという精神では決してないのであります。やみの撲滅等につきましても、できるならば國民運動として、國民の動議に訴え、國民の經濟的認識を深めることによつて、やみの撲滅に進みたいと考えまして、いろいろ手を盡しておるのであります。たとえば經濟白書を發表いたしまして、わが國の經濟事情を診斷し、この通り悪いからこれを立て直してもらうようにしなければならない、こういう風に實相を國民に知らしめ、國民の協力を求めて、やみの撲滅に進んでいきたいと考えまするし、さらに政府は組閣後ただちに、國民運動に對して十分力を入れなくてはならないと考えまして、國民の自發的な、自主的運動のあがることを大いに熱望いたして、それぞれの團體に呼びかけておるようなことなども承知のことと思います。これらは一に罰則によらないで、國民の道義心、國民の良心に訴え、そうして心からなる共鳴、協力を得て、不正を撲滅して、正しき生活の遂につくことを要望いたしたような次第であります。罰則で威かすということは、萬やむを得ない場合、また法律の體裁として、それのけじめをつけなければならないという場合においては、やむを得ずそういう規定が出てくるということは、法律の體裁といたしましても、法律を効果あらしめる點からいたしましても、必要なことであろうと思うのであります。この點は花村君も十分に御承知のことと存じておるのであります。
  18. 花村四郎

    ○花村委員 私は法文に現れたことよりも、立法上流るる思想について、ただいま申し上げたのであります。おそらく今日出ておりまする法律案で、罰則の規定を設けておらないものはまずないと申し上げてよいと思う。こういう威嚇主義の觀念に基く立法というものは、それは根本的にやはり改めるということが必要じやないかと、こう思うのでありますが、どうも首相の答辯が少し長過ぎるように思いますが、もう少し簡單に私の質問に副うようにぴんとくるように、ひとつひとつやつてもらいたいということと、そうして前囘同僚質問を聽いておりますと、なかなか不得要領で、急所へいけば逃げるような答辯をやられておるように考えるのでありますが、それはどうか、長いということによつて、やはりそういうところへもつていく機會が出てくるように思いますから、もう少しひとつ率直に、そうして良心的に、悪いものは悪い、よいものはよいと、はつきり答辯を願いたいということを、まず注文いたしておきます。  そこでこの問題は首相に言うのは無理かもしらぬとおもいまするから、首相がおわかりにならなければ、政府委員でもよいのでありますが、安本の今日の職員の總數——本部竝びに地方における總員數と、そうしてそれに伴う人件費がどの程度かかつておるかということを、まず第一にお尋ねしておきたいと思います。
  19. 片山哲

    片山國務大臣 その點は花村君のおつしやる通り、私にはよくわかつておりませんから、政府委員から答辯いたすことにいたします。
  20. 田中己代治

    ○田中(己)政府委員 私からお答え申し上げます。中央地方の人員の點でありますが、安定本部監査局における現在の人員といたしましては、一級官が三名……。
  21. 花村四郎

    ○花村委員 いやそういうことは要りませんから、全部の總數でよいのです。質問を聽いておらぬから困る。全國の中央、地方を通じて全部の數を言つてもらえばよいのです。
  22. 田中己代治

    ○田中(己)政府委員 全國には三百三十三名であります。人件費は一人二千圓ほどの割合になつております。
  23. 花村四郎

    ○花村委員 私の伺つているのは一人いくらじやない。總豫算を聽いておるのです。そうしてもう一つお尋ねしますが、新聞で見ますと、査察官だけでも、これは七千九百名になつておるのではないですか。これは新聞が間違いですか。監査局の査審官だけでも七千九百人という數字になつておるのに、本部竝びに地方を通じ、出店まで入れて三百三十三人というのはおかしいように思うのですが、それでよいのですか。
  24. 田中己代治

    ○田中(己)政府委員 七千九百人と申しますのは、全國の地方廰に附屬しております經濟監視官が七千人おりまして、これは安定本部の中にはいつておらぬ人員であります。安定本部の豫定の定員といたしましては、八百人ということになつておるのでありますが、これはまだ充員はしておりませんし、現在に實員といたしましては三百三十三人ということになつておるわけであります。
  25. 花村四郎

    ○花村委員 そうすると、それはどこに屬しておるのですか。ここに安本から臨檢檢査に關する法律案が出ておるのですが、これはやはり安本に屬しておらないのですか。それから人件費の總額はいくらになりますか。わからなければわからないでよいです。
  26. 田中己代治

    ○田中(己)政府委員 人件費の點につきましては、今正確なことはちよつと申し上げかねるのでございますが、いずれ調査いたしまして御報告申し上げます。  それから經濟査察官と申しますのは、安定本部に屬しておりまする官吏でございます。これに臨檢檢査權というものを御付與願いたい、かように考えるのでございます。あとの七千人と申しますのは、地方の経済監視員と申します地方職員に相なつております。これは手傳いをさせる官吏ということになつております。
  27. 花村四郎

    ○花村委員 地方に屬しておるというのはどういうのですか。地方の自治團體に屬しておるのですか。そこのところをはつきりしてもらいたいと思います。
  28. 田中己代治

    ○田中(己)政府委員 これは内務省の官吏でございまして、各府縣の警察部の職員ということになつております。
  29. 花村四郎

    ○花村委員 そうすると、この案は經濟査察官と内務省に屬しておる警察査察官、つまりこれは權限に關する法案でしよう。そういうことであるとするならば、これは内務省から出すべきものじやないですか。安本とは全然關係ないのですか。内務省所管ですか。しかしこれはこの前私が安本長官に司法警察官に關する質問を併せていたしましたときに、この査察官というのは、一面において司法警察官であります。權限をもつておる。これはここの場合の理由の中にもあります。司法警察官の職務を行うのである云々と、であるから、司法警察官の資格を與えるということであれば、むしろこれは内務大臣の所管に入るべきじやないか、しかるにこれをしも安本長官が指揮監督していくということは、警察行政の建前から言うてよろしくないじやないかという説明をいたしましたときに、それは内務省の所管に屬するということは一言も言わなかつた、これは安本長官の前の答辯が間違つていると言われるのですか。
  30. 田中己代治

    ○田中(己)政府委員 經濟査察官は三百三十三人でございまして、これは安定本部に屬しているのでありまして、安定本部の管理なのであります。ただいま申し上げました經濟監視員と申しますのは、これは内務省の役人でございまして、經濟違反の取締まりその他にあたる警察に屬しているのでございます。
  31. 花村四郎

    ○花村委員 そうすると、經濟査警官も監視官も、同様に司法警察官の職務を行つているというわけですか。
  32. 田中己代治

    ○田中(己)政府委員 その通りでございます。
  33. 花村四郎

    ○花村委員 そうすると、新聞にあるのが間違いであるのでありますか。また諸所の警察署長に廳いてみますると、要するに經濟方面を擔當いたしておりまする司法警察官というものは、安本から派遣さてれいるということをどこの警察へまいりましても言うておるのでありまするが、この七千人の、そうした日本全國の各警察へ按配してあるまする監視官というのは、經濟安本部から行つているものであると警察署長が申し、われわれもそう考え、一般もそう見ているのであるまするが、今の説明によれば何だか誤りのようでありまするから、これはまた私の方でさらに調査をいたして見ることにいたします。そこで首相にお尋ねいたしたいのは、ときもかくにもこの安本の機構權限というものが非常に擴大強化されてきた。殊に現内閣至つて、ますますその度合を増してきたということは衆目の見るところであり、しかも今日やつておりまする政府は、むしろ三派の連立内閣政治にあらずして、安本の政治なりともいわれているのでありまするが、これに對しまして、首相がこの一週間あまり前の新聞で見ますれば、この安本の行き過ぎに對して警告を發しておられる旨の記事を見たのでありまするが、この案のごときも、やはり安本の行き過ぎている事實を證明するりつぱな一つの證據になると、こう申し上げてよかろうと思うのでありますが、これは首相といたしましてそうあるべきことであると、われわれも心からなる贊成を表しておつたような次第でありまするが、どうも昨今安本の權限というものが、とかく行き過ぎになるというようなことは、これは世間で言うておりまするばかりでなく、事實であると申し上げてよかろうと思うのでありますが、こういう機構も時局の現段階から考えまして必要であるましよう。設くることにあえて異存はないのでありまするけれども、たんだん行き過ぎの職務權限を強化擴大していくということは、これはまことに私どもは愼しまなければならないじやないかと思う。これはやはり前の同僚からも質問があつたようでありますが、健全財政を保持することと、行政制理とをにらみ合わせて、なるべく各官廳の擴大強化に對してては、思いきつた規制を加えることこそ望ましいことである。しかし首相はこの前の答辯においては、内務省はすでに解體の運命にあるということで、これが行政整理の一つの手柄のごとく取上げられて言われたようでありますが、本日の新聞を見れば、また本日上程される議案を見ますと、この内務省の廢止がどうやら變つてくるような空氣に相なつてきておるのでありますが、かりに然らずとして、以前のごとく廢止の運命に陷るものと假定いたしましても、これは行政整理に何らの寄與をしないものである。看板をとりはずすだけで、内務省の多くの機構、あるいは職員というものを、各省の皆それぞれわけられることになつてつた。私は内務省の人からそういう説明を聽いたのであります。看板はとりはずしたのであるけれども、依然として内部の機構、あるいは人員に對しては、何らの影響もない。ほとんど首を切られる人もないということである。はたなてしからば、現内閣において、この健全財政を堅持する意味において、行政整理をなされる面が一體どこにあるのか。それは社會黨としても、あるいは總理大臣としても、また社會黨の諸君も、議會において、その黨の掲げる政策において、まず行政整理を斷行しなければならぬということは、はつきり聲明されている。しかるに今日行政整理にほとんど手がつけられていない。それどころか、むしろ行政は擴大強化される方向に向つておる。あるいはこの前の答辯で配置轉換を盛んに言われたのでありますが、配置轉換もある嚴格な意味から言えば、行政整理の一つになりましよう。なりましようが、こんなものは消極的のもので、ほんとう行政整理というものではない。行政整理は機構、過剩人員と經費の思いきつた節減ということです。これ以外における配置轉換では、一方の場所から一方の場所へ移すというだけで、何ら行政整理ではない。少なくとも徹底した行政整理ではない。ところが、どうでありましようか。今日の各省の機構というものは、ほとんどその機構において、人員において、戰時中のそのままが、依然として残つている。ところが、戰時中は、要するに官僚と軍部が結託をいたしまして、軍備の方面と官僚機構の方面に對しては、いやが上にも擴大強化している。從いまして、今日役人の數がわが國において二百五十萬ないし、三百萬と呼ばれている。六世帶の一人の官吏がある。これはこのまま推移いたしますならば、官吏亡國の結果をみねばならぬとまで絶叫せられておる。戰前の昭和十一年の役人の數と今日の數を比ぶれば、二倍強に相なつております。殊に鐵道あるいは逓信のごときにおいて——鐵道に關します一例だけをつまんであげてみますならば、國鐵において戰前の昭和十一年に二十二萬八千人の職員であつたのでありますが、それが二十一年には五十七萬八千人に相なつておる、二倍半です。そして本年なおかつこれに十萬あまりの職員を増加しようとして、増加しつつある。そこで昨今までの鐵道の役人の平均給料が一箇月に千百圓でありましたが、これがこのころ新物價體系で發表された千八百圓の俸給に直しますと、そこの五十億圓の俸給が増額されなければならないということになる。かような次第でありまして、戰時中と機構はほとんど變らない。縮小しておらぬどころじやない、大きくなつておる。そこで、それはそれだけの仕事があるかということを考えてみなければいかぬ。ただ大きくなつたということばかり考えちやいかぬ。それに正比例して仕事が殖えてまいつてきておるならば、これは何をかいわんやであります。ところが、各省仕事を檢討してみますれば、戰時中よりいずれも減つておる。統制經濟で認可許可に忙しかつた役所、あるいは切符制で忙しかつた役所も、あるいは企業、なかんずく軍需工業等でいろいろと仕事の多かつた役所も、敗戰後は仕事がずつと減つておる。減つて、多くの役所へ行つてみますと、あくびをしたり、腕組みをしておる役人が相當おる。もちろん忙しい役所もありますが、遊んでいる役所も相當あることは現在われわれも見ておる。總理大臣も見ておりましよう。野におる當時は、社会黨の諸君はそういうことを盛んに言われた。役人が遊んでおるじやないか。しかるに、これに對して、今日とにかく日本の敗戰後における政治工作としては、第一段階を突破して、大體平常時の城につつこんできておる。日本再建の土臺は大體築き上げられてきておる。その土臺の上に、どうわが國を押し立てていくかというところへ進んでおる。この場合において、しかも困難な國家財政の上からみて、石橋藏相は千百四十五億圓の豫算を組んで、これが健全財政なりと主張し、そして追加豫算は出さぬとまで言明した。しかるに現内閣に至りまして、千五百億圓の追加豫算案が出るのではないかということを新聞で書き立てたのでありますが、けさころの新聞でみれば、どうやら九百億圓か、あるいは一千億圓に落ち着きそうであるということに相なつておるのでありますが、こういう莫大なる追加豫算を出したのでは、とうてい健全財政の維持はできぬことは明瞭であります。私は斷言する。殊に特別會計の方面を見るときにおいておやであります。でありますから、國家財政の健全性を失うということは、まことに遺憾ででありまするが、これらの點から勘案して現内閣の在野當時における主義主張として、また首相の強く叫ばれた主張として、この行政整理こそ、まず第一に手をつけなければならない問題である、こう私は斷言してはばからない。しかるにただいま申しまするように、行政整理をするどころか、ますます擴張するがごとき方向に向かつておりますることは、まことに遺憾であります。これは在野當時主張しておられましたる首相竝びに社會黨の政策を捨てるとおつしやるのであるか、あるいは配置轉換以外に何らかの行政整理をやつておると言われるならば、具體的に例をあげて、美辭麗句はやめて、簡単に御答辯を願いたいと思うのであります。
  34. 片山哲

    片山國務大臣 在野當時において考えておりました私竝びに社會黨の主張は捨ててはいないのです。漸次これを實際の政治の上に現わしていきたいと考えておるのであります。行政整理をやるということで、例として内務省の解體を出したが、その解體は例にならない、こういうようなご意見でありましたが、その解體という言葉によつて表現されることは非常に廣い意味がありまして、すなわち地方自治制度尊重であるとか、警察制度の關しましても民主化をはかつていくとか、あるいは土木事業につきましても、新しい構想をもつて國家のいろいろの施設の完成をはかつていくことが、こういうような點において努力をしますために機構を改革して、眞に國民の福利を中心とした建前にしていこう。こういう意味の内務省の解體であり、同時にそれは行政機構の改革になつてくるのである。かのように考えておるのであります。なおこういう次第でありまして、萬端の事務が非常に複雜になり、また繁雜をきわめるときでありますから、國家の事務も非常に多くなつてくるのはやむを得ないことと思うのであります。そこで國家の事務ということが、すぐ官僚的事務である、こういうふうに以前は考えられたかもしれませんが、私の考え國家がやる仕事は必ずしも官僚的であるべきはずはない。官僚的にやらせないように、國家仕事をこれからやらしていこうとしるのである、民間の仕事國家が引きうけてやる場合におきましては、一部に偏しておつたやり方を、今後は國民全體の便益のために國家が引きうけてやるというような場合におきましては、その目標といたしますところは官僚的ではやれないことになるのです。そういう意味から申しまして、國家國民のために國民に代つて仕事を行つていく、こういうような事柄は、これからたくさん出てくるのであろうと思つております。前にも申し上げたと思いまするが、私の構想といたしましたは、國家なるものが國民の福利を増進する主體となつてくるのである。權力服從の關係で臨むというというよりも、ほんとう國民のために盡すものでなければならない。こういう意味から、いろいろ社會的の仕事やら、經濟的の仕事やら、産業發展の仕事國民生活に關する仕事を、だんだん國家がやつていく、こういうことになるのであります。この意味において、安本も機構は相當大きくならざるを得ない情勢になつてくるのであります。一にこれはわが國の經濟を順調ならしめ、それを正式のルートに載せまして、國家再建に向かうための用意にほかならないのであります。いろいろ長く申し上げたいのでありまするが、あまり長くなりまするとよろしくないと思いまするから、簡潔に申しまするが、そういう意味國家仕事が非常に民主的となり、國民本位となつてくる、こういうことにこれからしまするから、勢い國家のために働く官吏も數が殖えてまいりましよう。しかしそれは決して官僚の走狗なり、あるいは官僚機構の擴充なりというわけにはいかない、かように考えておる次第であります。
  35. 花村四郎

    ○花村委員 どうも首相の答辯が私の質問とはずれている。もう少し質問にぴつたりいくようにやつてもらいたいのです。まさか故意であるとは私は申し上げませんけれど。せれでは簡單に率直に伺います。そうすると戰時中から今日まで諸官廳の機構、人員がそのまま残つているということにお認めにならぬかどうか、これが一つ。それから戰時中より仕事が殖えてきているかどうか、これが一つ。またあなたの言われる行政整理というのは、一體どういうことであるか。これも長いこと言わずに、こういうものだということを簡單に言うてもらいたいと思います。この三つについて伺います。
  36. 片山哲

    片山國務大臣 第一の、戰時中の必要な機構は、目的民主的にかえまして、そのまま残し、これを民主化せしめつつあります。第二の仕事はおそらく殖えていると思います。國家再建のために、危機突破のために、經濟機構の順調なる進み方をするために、仕事は増えていると思います。行政機構の改革は、配置轉換ということで、この前申しました通り、必要なる熟練方面の仕事には非常に人を要求いたしておりますが、簡單なる仕事の方面には人はあまつていると思いますので、これを配置轉換してまわしていかなければならないと思つております。そうしてまず今日の行政機構の改革は、合理的に企業の整備をやつていく。勞傭力の圓滿なる活用をはかつていくために配置轉換をやつていく。やむを得ず失業者を出す場合があるでありましようが、それは萬やむを得ない處置にすぎないのである。政府といたしましては、合理的にこれを進行いたしたい、かように考えております。
  37. 花村四郎

    ○花村委員 今の御答辯で私も少し驚きました。日本の國内事情、窮状、そうして役所の姿というものについて、もつと認識が深く、またそれに適應した處置をとり得能力をもつた首相であると私は考えておつた。ところが今の答辯を聽いて私は意外に考える。戰時中の仕事民主化された、これは包括的にそう言われたのでありまするが、それではどの役所の何が民主化されたということを言いたくなるが、しかしこの言葉であとは聽く必要がない。戰時中の多くの仕事はなくなつたけれども、しかし役所の仕事の事柄が民主化されて仕事が多くなつた、あなたはそんな見ようをしているのであるからいい政治ができないのですよ。これは私は眞劍で言う。それは總理大臣は良心的にそういう言葉を使われたのであるか。あるいは一時を糊塗する意味で使われたのであるか。それを私は知りませんし、とがめもしませんが、しかし少なくともそういう考えであつては、このわが國の非常時をほんとうに眞劔に押切つていくということはいきぬと私は斷言する。そうしてまた仕事も殖え、これから殖えなければいけない。それじや行政整理ということはちよつとも意味をなさんじやありませんか。そんな小學校の生徒に言うような答辯をここでして濟むと思いますか。私は憤慨せざるを得ない。あまり人をばかにしておる。もう少し眞劔にやつてもらいたいです。何ですか。だんだんに役人も殖え、仕事も殖えていき、だんだん役人も使わなければならぬようになるだろう。それじやあなた行政整理ということは少しも考えられないじやありませんか。しかも行政整理は配置轉換だけのことを言われておる。なるほど配置轉換も行政整理の一つでしよう。要らぬところから要るところへもつてくる。そんなことがほんとう行政整理ですか。あなたは良心的に言われておりますか。私は眞劔ですよ。じようだんじやありあせんよ。行政整理は配置転換だけでいいなんという理論がどこにありますか。政治家にあらずとも、そんなことは言いません。少なくとも機構の上において、人員の上において、あるいは經濟の上において縮小していくということ。そうじやありませんか。この二、三日前の新聞で、あなたは何と言うておりますか。民間企業の健全化をはからなければならぬという意味で、民間企業の健全化をはかるには、過剩人員を整理して、そうしていろいろの點を合理化して整理をしなければならぬ。そうして企業の健全化をはかるべきであると言うて、民間企業のことをあなたが力強く言われ、しかも民間の整理に對して、官業も率先して模範的に整理することを示さなければならぬと言われて、その記事が新聞にでておるのではありませんか。そうあなたは言うたことはありませんか。言うておるんじやないですか。配置轉換だけが政府の整理だなんて、そんながかげたことで、この質問を糊塗しようというようなことは、大なる間違いである。もう少し眞劍にやつてもらいたい。私は何もあなたを攻撃するという意思は毛頭もつておらない。むしろ敬意を表しておる。尊敬の念をもつておる。しかるに今の答辯は何ですか。もしそういう答辯よりできぬということであるならば、私は總理大臣をすぐにおやめなさい、こう言いたい。その點はどうですか、さらにお尋ねします。
  38. 片山哲

    片山國務大臣 非常に花村君激昂されたようでありますが、この問題は、先ほどからわたしが御答辯いたしておりますことと關連して、連絡のあることを御了承願いたいのであります。すなわち内務省の解體は行政制度の改革であつて、これは行政整理の一つである。そうして自治を尊重したり、警察制度の改革をたつたりしまして、行政制度根本に觸れようといたしておるのであります。また戰時中の機構も、むだなもの、要らないもの、いけないものは、全部廢止にいたしまして、そうして民主的な方向にこれを轉換さしたり、民主的なものと機構がえをしましたり、そうして民主化徹底をはかるべく努力いたしておるような次第であります。また國家そのものが、これも先ほど少し長く言い過ぎたわけでありますが、國民のために動かさなければならない國家であるから、國家官吏というものは、國民の公僕である。公僕として福利増進のために仕事をするのである。そういう意味で、おのずから國家仕事も殖えてきて、國家が民間の仕事を引受けてやるというような事項も多くなつてくるのである。こういうふうな意味において、行政機構のの改革が、漸次國民福利増進ということと民主化ということを中心として動きつつあるのである。こういう意味に申し上げたのであります。子供のようなことを申し上げたのでは決してないのでありまして、最も重大なわが國の民主化問題、わが國の行政機構の改革の目標をいずこのおくか。官僚制度を打破して獨斷政治を打破つて、直に民主的機構にこれを動かす。こういう重大な問題に對する政府の考えを申し上げておるのであつて、その點は十分に御了解を願いたいと存ずるのであります。そういう意味から申しまして、官吏の數が殖えるということは、民主國としての建前からやむを得ない現象になつてきているのである。そうして人員を合理的に動かしたり、また事業の合理的な處理をやつていかなければならない。そうして勞働力の配置やら機構の改革やらと相まつて行政機構の刷新は、だんだんと行われてくるのである。なお官吏につきましては、國家公務員法をすでに提出いたてまして、諸君の御審議を得つつあるのでありますが、これも官吏の獨善を排し、眞に人材登用、能力主義、資格萬能を排し、ほんとうに野に遺賢なきを期する。こういういみからやつているのでありまして、これも大きな行政機構に對する改革であろうと考えております。なおまた行政改革に關する案を練つているのでありまして、あるいは諸君の審議を願い得る時期も近くくるであろう。さように考えているような次第であります。
  39. 花村四郎

    ○花村委員 行政改革が行政整理の一つのように言われたのですが、これは嚴格な意味における行政整理ではないでしようが、廣義における行政整理の中へは含まれるでありましよう。しかし眞の意味における行政整理というものは、行政で必要なものはすべてきちんと残し、不必要なものはそれを取去つてしまう。簡單に言えば机の整理と同じことです。ちやんと要る書類は整頓をして残しておく。いらないものは紙くずかごに捨ててしまう。そうして整理をする。そうして中をきちんとする。國家行政整理も同じことです。そうして經費は節減して、ちやんときちんとすることです。そうしてこの内務省の解體が、何かそれは地方自治の權限を擴大強化したり、そこにいろいろの關係は出てまいりましよう。改革によりいろいろの姿が現れてくるのでありましようけれども、この内務省の解體によつて、眞にわれわれは、先ほど申し上げましたような本然意味における整理というものが行われておらぬと考えておりますが、もし行われているとするならば、過剩人員何名をどうしたというようなことでも、おわかりになつているれるのでらるか。それがわかつたら具體的におつしやつてもらいたいし、そういう細かいことは首相としてわからぬというのならば、それてもいい。いいけれども、想像でここで答辯されると困る。事實に基いて大體の報告を受けて、内務省はこうなつているからこうだということを知つた上で言われているのはいいが、大體こうだろうというような揣摩憶測で答辯をされることは、大いに迷惑だと思うのでありますが、内務省の解體は、すべて必要で残しておいてただ整頓したというのであるか。その中に不必要なものもあつたから切り捨てて紙屑の中に捨てたと言うのであるのか。そういうことであるならば、その人員は何人くらいであるかということをお示し願いたい。簡單に御答辯願います。
  40. 片山哲

    片山國務大臣 行政整理ということが人を減らすということだけに限つてはいないと私が考えているので、いささかその點において、食い違いがあつたのではなかろうかと思うのであります。私の考えは、今までの封建的な官僚的な機構の根本改革をやり、制度の改革を斷行する。制度の改革に伴いまして、人員の配置轉換はおのずから行われてくるのである。内務省を解體することは、官僚機構の大きな改革であつて、それが行政整理の基本觀念になつてきているのである。從つて、人員の問題は、有能なる人はどこまでも使つて、その制度がなくなりましても、他の制度において働いてもらう、こういうようなことになるわけであります。自治制度の確立と、警察制度の改正、あるいは裁判制度に關しましても、いろいろ變つてくる。こういうことによりまして、配置轉換が必要に應じておのずから行われてくるわけであります。内務省の解體により、どれだけの人が反古籠の中に入れられるような状態になつたかという點については心得ておりません。まだそこまでは承知しておりませんから、今日お答えするわけにはいきません。
  41. 花村四郎

    ○花村委員 行政整理の觀念が私とは違うので、この點はいくら爭つてもおなじことですから、この程度にしておきます。そうすると、首相の言われるところによると、局課の機構の整備、人員の整備によつて、そうして費用を節約していくという整理のことを私は聞いているのでありますが、これにはちつとも觸れぬし、觸れようともしない。觸れてもらいたいと註文しても配置轉換のことばかり言つております。それ以上聽いてもわかつているかわかつておらないか、それはわかりませんが、わかつてつてもそこに逃げていくよううな答辯をなさるのであるか。それはここで批判をする限りではありませんが、とにかくあなたの今まで言われたような、行政の改革は行政の改革なんだ、行政の改革は行政の改革なんだ、行政の改革と行政の整理を一緒にして考えておられる。そういう考え方は私はあまり聞かない。もちろん整理を廣義に解釋すれば、あるいは改革も入るでありましよう。けれども、それはふつうの少なくとも常識的な解釋であるとはいえないが、これは首相がそういう解釋であるといえないが、これは首相がそういう解釋をしておられるのですから、これ以上追求してもいたし方ありませんが、誤つた觀念であることだけは、強く主張いたしておきます。  そして次に移りますが、こんどは本案に直接觸れてくるのでありますが、この前の答辯を聽いておつても、鰻をつかむように、何だかずるずる拔けていつて、つかめたかつかめないのかわからないような答辯をされている。今までの答辯もあまり私は感心しないと思う。少なくとも質問者の質問に對してピンときたものが一つもない。この安本の經濟査察官の臨檢檢査等に關する法律案、本案に關しては、一つピンとくるようにやつてもらいたいと思う、それをまず註文しておきます。  そこでこの前に、これは鍛冶君が質問いたしましたときに、あなたはこの經濟安本部令というものをお讀みになられた。ところが最後の條項については述べられなかつたのであります。すなわち、「各廳事務の總合調整及び推進竝びに施策の實施に關する監査」これまでは言われた。その後に續いて、「これに關連する經濟統制の勵行に關する事務を掌る」こうある。この文章を見ますると、「及びこれに關連する」というのは、この「各廳事務の」というのに結びついておる文句でありますことは明瞭であると思う。この「及び」から切り離されて、そうして獨立した意味をもつた文章でないことは明瞭である。「及び」としてある。前の文章を受けておる、でありまするから、これは言葉をかえて言えば、各廳事務に關連する經濟統制の勵行に關する事務を掌る、こう私は解釋すべきものであることを信じ、また他の人もそういう解釋をしておるようでありまするが、總理大臣はこれをどうお考えになりますか、これをまずお尋ねします。
  42. 片山哲

    片山國務大臣 「各廳事務の總合調整及び推進竝びに施策の實施に關する監査及びこれに關連する」というこれは、各廳の事務だとおつしやるのでしようか。
  43. 花村四郎

    ○花村委員 各廳事務に關連しておるというのに對して……。
  44. 片山哲

    片山國務大臣 私どもさように思います。
  45. 花村四郎

    ○花村委員 そうしますと、こういうことを次にお尋ねしたいのですが、この經濟安本部というものの職務權限の對象は各官廳であるということは、これは明瞭であろうと思う。その前の文句までは、大體わかつておりますが、そうすると、要するに安定本部の職務權限の對象は各官廳である。あるから民間人民を直接の對象としたものじやない。こう言い得ると思うがそれはどうでしよう。
  46. 片山哲

    片山國務大臣 そうとは限らないと思うのであります。各廳に限らないというのは、第一條をずつと初めからごらんになればわかりますが、「物資の生産、配給及び消費、貿易、勞務、物價、財政、金融、輸送、建設等に關する經濟安定の緊急施策について企畫立案の基本に關するもの、」これが一つの仕事でありますね。その次が「各廳事務の總合調整及び推進」ということと、それがうその推進の本となつておる「施策の實施に關する監査、」この監査は、この監査は各廳の仕事監査ということになるのでありましよう。「及びこれに關連する經濟統制の勵行」の事務こういう段階になりまするから、今花村君の言われました官廳だけではなしに、企畫立案の基本に關するもの、こういうことが第一にあげられております仕事になると思います。
  47. 花村四郎

    ○花村委員 もちろんそれは官廳に關する、官廳を對象とした仕事ばかりであるというわけじやない。これは全文はもちろん「經濟安定に關するもの」というのでありますから、これは一般人民と何らの關係のない職務權限である。であるから、これから前は問題はないのですが、その後です。「各廳事務の」云々とある。これは經濟安本部令にもありまするし、そうして各地方經濟安定局の組織及び事務分擔のなかにもある。この監査部長竝びに監査課長の權限に屬するところで「地方經濟安定局、商工局、地方財務局、鐵道局、營林局および地方廳其の他の地方特別行政官廳の行政監査に關する事項」とあります。これは對象が官廳になつております。そうしてその次には「公團等の監査に關する事項」とある。公團まではいつておる。それから「右に關連する統制違反の取締に關する事項」と、こうある。右に關連するというのは、この役所や、あるいは公團に關係をもつたところのやみ取引統制違反に關する取締りの監査と、こういう意味に解釋していいと思うのであり摩するが、またこの經濟安本部監査委員會規定でも、大體そういうことになつておる。「一、經濟違反及取締の基本方針。二、取締當局監査局との各種の情報交換。三、經濟緊急施策の企畫、立案及び實施當局に對する取締當局側の要望事項。四、その他監査及び經濟統制の勵行に關する重要事項、」ということで、大體その對象は官廳というものであると認められるのですが、その點はどうでしようか。もし違うと言うならば、具體的にそこをひとつ指摘してもらいたい。それですから、私は今言うたことを要約して申します。經濟安本部の職務權限は、各廳に對する關係——もちろん企畫、立案はこれはもう自分の廳だけですから、これは對象はありませんよ。これもあるいはいろいろの材料を集めたり、官廳が對象になる場合もありましようが、とにもかくにも各官廳が職務權限の對象で、一般人民はこの經濟安本部の職務權限の對象になつてはおらぬということだけは、今申し上げた文言から明瞭であろうと思いますが、どうでしようか。もし違うなら違うところを、きわめて簡單に、ここが違うのだと、こう急所を押して言うてもらいたい。この文字のどこが違うと言うなら違うところを……。
  48. 片山哲

    片山國務大臣 私の考えでは、それよりも少し廣い。それよりも廣汎である。官廳だけ相手じやなしに、つまり立案の基本に關するもの、こういうことになつておりますから、立案したものがどう勵行されておるかということに對しても、十分なる考えを及ぼさしめるようにしていかないことには、單なる机上の立案、空論に終わるということでは、今後の立案にも役立たない、こういうことになると思います。よつて監査ということは、官廳のやつておることを監査するということになりまするが、その監査を有効にし、かつまた眞に國民經濟に役立たしめるようにするためには、ただ事務的にそれを行うのみならず、前の立案を活かして、そうしてその立案が有効適切に動いているかということとのにらみ合わせをしていかなければならない、こういう意味から、官廳の監督機關だけじやなしに、國民の経済的活動についても對象として考えていかなければならぬ。
  49. 花村四郎

    ○花村委員 さて、そういうことになるというと、あなたがさつき認められた點と違つてくるのだが、經濟安本部の職務權限というものは、昭和二十二年五月一日公布された勅令によつて權限が與えられたということは、これはあなたはお認めになるでしよう。なつて、しかもその職務權限を包括して規定してありまするのがこの第一條なんです。第一條で、今言われるような、私が申しましたよりももつと廣い權限をもつておると言うが、一體そういう條項がどこにあります。もし書類がなければ、これをお上げしますが、そこにありはしませんか。經濟安本部令です。
  50. 片山哲

    片山國務大臣 あります。
  51. 花村四郎

    ○花村委員 どこにあなたが言われる一般人民まで相手にするという事項が書かれておりますか。これに書かれておらなんでも、そういう權限をもつと言われるのか。そうすると、勅令で權限が與えられておるのに、勅令以外の權限も、勅令になくてももてると、こういう結論になるのですか。それをはつきり言つてください。
  52. 片山哲

    片山國務大臣 そういう解釋を、機械的に言うと語弊があるかもしれませんけれども、狭義に固く解釋しないで、經濟が動いて、隠匿物資が國民經濟のため、國民生活のために活用せられることを國民は望んでおるのです。その望むためにおいては、經濟統制の勵行に關する事務ということが相當廣く解釋せられてよかろうと思うのであります。私の解釋では、經濟統制の勵行に關する事務ということは、非常に廣く考えておるわけであります。
  53. 花村四郎

    ○花村委員 どうも勝手な解釋をされて困りますが、少なくとも經濟安本部の職務權限というものは、この第一條項以外にでないことは、これは法律家として、首相も當然おわかりのことだろうと思う。この文句をどういう意味に解釈するか、あるいは狹く解釋するかという、文字解釋の問題は出てきましよう。きましようけれども、大體においてこの文句を讀んで、この文句をはずれた權限をもつておるとは言えない。またそういう解釋をするということになれば、これは重大です。法律をつくつておいて、そうしてまた勅令で規則をつくつて、その規則がつくられた文句によつて大體解釋をなされぬで、勝手な解釋をせられるということになれば、これは重大です。法律根本から覆すことになる。どうもこういう點において首相の今のような答辯じや、われわれは納得できない。それであるから、どの條文がそういう解釋ができるか、それを具體的に、簡單に言うてください。ここからここまでだ、この文字解釋を廣義にするのだということを簡單に言うてくれませんか。いろいろ附け加えて言わないで、私はそれだけでよいのです。
  54. 片山哲

    片山國務大臣 經濟統制の本質から、この法律を五月一日公布の經濟安本部令の精神に鑑みて、先ほど申しましたように、物資活用の面から、國民經濟をよくする面から申しまして、經濟統制の勵行ということは、官廳の事務のみを對象とするのではなくして、對象を廣く考えないことには、勵行の實は上つてこないのである。その意味から申しまして、これを廣く解釋し、國民をも對象とすることが本令の精神に合致するものであると考えるのであります。
  55. 花村四郎

    ○花村委員 そうすると、あなたはさつき認められたことを取消されるのですか。各廳事務に關連する経済統制の勵行に關する事務を掌る、こういう意味で各廳に結びつけるということをお認めになつた。この文句からいくと、統制事務に關することは、各廳を對象としておるということになります。今あなたに質問したら、その通りだと認められた。そうするとそれを取消されるのですか。それともそれを認めて、なおかつ今のような議論をなさるのですか。今これに對しては憲法三十四、五條に反するという議論まである。この大それた權限を安本廳が掌るということは、言語同斷であると申さんければならない。それは精神解釋でいくのであるか、その點はつきりと、ごまかさないで御答辯願いたい。
  56. 片山哲

    片山國務大臣 これに關連するということは、官廳だけに局限してしまつてほんとうに經濟統制の實があがるときは私は考えない。その意味で經濟統制の勵行に関する事務ということの解釋は、私の先ほど申すような解釋が、文句から見て適當である。第一條の本旨から見て適當である、こう言うのです。
  57. 花村四郎

    ○花村委員 そうすると、私がただいまお尋ねして讀まれた各官廳に、統制経済の勵行に關する事務を掌るということが結びついておるのだということをお認めになつたことは取消しをするのですか。それはどれですか。取消するか取消さないか一言でおつしやればよい。
  58. 片山哲

    片山國務大臣 結びついておつても差支えないと考えるのであります。官廳の事務というものは帳面をつけるだけでなくて、相手を見て、そして總合的に考えていくところに初めてその勵行の實があがつていくのであると思つておるのであります。
  59. 花村四郎

    ○花村委員 それでよくわかりました。そうすると、この職務權限に對する文字を類推解釋をして、押し廣めていつて、そこえもつていこうというのですが、それはとんでもないことだ。それについては憲法違反議論が出ておる。しかも犯罪があつて捜査にいくとか、あるいはその他臨檢するということであれば差支えないが、犯罪でないのに出ていつて臨檢檢査をする。住所の安寧を紊るというおそれが十分にあることを、本案でもこの理由の中に認めておる。この説明の中に認めておる。人權蹂躙を起こすおそれがある、危險があるから、自宅などは除いて、そうして主として事業場であるとか、あるいは工場であるとか、倉庫であるとかいうところに局限したのだ、こういう説明をしておる。これななかなか重大な問題であることを認め、その説明でも認めておる。しかるにこういう重大なる憲法違反の問題まで論ぜられております事柄に對して、ただ文理解釋を擴張して、そうすることがよいのだという法律解釋をすることは、これは大いなる誤りである。しかし首相がそれでよいと言われればそれまでのことでありますが、ほかのことなら別ですから、あえて強く言われないのでありますが、少なくともこういう問題に對して、そういう解釋で進めていくということは、まことに危險きわまるものなのである。しかも司法警察官を使う。そういうようなことまでする強力なる權限をもつた下級官吏の權力の發動を、そういう氣持でやらせるということは、人權蹂躙を奬勵する大きな導因になると、私は斷定してはばからない。そういうことで、はたしてよいでありましようか、それをさらにお尋ねいたします。
  60. 片山哲

    片山國務大臣 この前にもお答えいたしました通り憲法の規定は犯罪の捜査ということに限定されておるのであります。その場合においては、令状なくしてはやることができない。しかしこの場合は行政あるいは經濟に關する問題である。行政の行動であり。その場合においては、礼状がなくとも、經濟統制に關する勵行、その他の國民全般から考えまして、やることを適當と考えた場合においては、經濟行動としてやるのである。しかし、一度犯罪問題が捜査という面において出てまいりました場合においては、令状を必要とすることは言うまでもないのであります。嚴格にその關係を明らかにいたしまして、いやしくも人權蹂躙事實なきを期したいと考えております。
  61. 花村四郎

    ○花村委員 よくわかりました。わかつたということは、首相の説明が間違いであるということがよくわかりました。そこで私は結論だけ申しておきます。誤つた考えをいつまでも聽いても誤つてくるのであるから、この程度にしておきますが、しかしこの職務權限、少なくとも勅令により與えられた權限からいえば、各官廳が對象であつて、一般人民に及ばさんとするところの本件は、これは行き過ぎであります。私が前に行き過ぎであつたというゆえんもまたここにあつた。こういう各人民にまで職務權限を伸ばすところの權限は安本廳においてはなしと斷ぜざるを得ないのであります。この意味において、本法案はとにかく採用すべきものでないことは明瞭になつてまいりましたが、なおさらに進んでその不當なる點をお尋ねしなければならぬと思うのであります。  ただいままでの首相の言で間違いであることがはつきりして來たのでありますが、そこで今度は今までのような、のらくらした御答辯をしないで、今度はほんとうに眞劍にやつてもらいたい。いかぬことはいかぬ。いいことはいい。今の答辯で率直にお認めになつたことはいい。私も感謝する。そういう謙虚な氣持で、良心的に今度は答辯してもらいたい。これが一番急所になるわけです。そこでお尋ねいたしますが、ここに出ております法案の第一條、第二條、第四條、これは前に法律勅令で出ております臨時物資需給調整法と食糧管理法と、隠匿物資當緊急措置令、この三つの法令に設けられてあります文句と趣旨において大體同一なものである。但し本案の第三條の罰則だけは除いておきますが、一條、二條、三條に書いてあります事柄は、大體今私が申し上げました臨時物資需給調整法、食糧管理法、隠匿物資等緊急措置令にこの種の規定があるが、それと同一で、少しも變りがないということをお認めになりますかどうですか。それはここにあるのだから認めるよりしようがないでしよう。
  62. 片山哲

    片山國務大臣 法文の解釋については、あまり詳しく心得ておりませんが、大體において御意見の通りと思います。
  63. 花村四郎

    ○花村委員 そうすると、安本廳の政府委員がおられるようですが、どうですか。それは認められるでしよう。
  64. 田中己代治

    ○田中(己)政府委員 大體同じだと考えております。
  65. 花村四郎

    ○花村委員 そうでしよう。われわれが見てもほとんで文句が同じです。ところが罰則の規定だけは違います。これはこういうように思うのですが——同じことをやつても、安本廳でだしたこの法律違反すると一萬圓の罰金である。ところが同じことをやつても、臨時物資需給調整法によると、一年以下の懲役または一萬圓以下の罰金というので、これは體刑までくる。それから食糧管理法に違反する場合の罰則規定でありますが、これは五百圓以下の罰金になつておる。これはまた同じことをやつても、農林省の査察官に捕まると五百圓で濟むのだが、それを安本廳の役人に捕まれば一萬圓の罰金を食うことになります。また隠匿物資等緊急措置令、これはやはり同じことをやつても安本廳よりも安い。五百圓以下の罰金ということになつている。この罰則だけは大體どれも違うのでありますが、その他は全部同じです。これは條文を見ればわかるから、私はここで多く言わない方がいいと思う。それだけのことをはつきりしておいてお尋ねしたい。そこで本案を比較して見ると、根本的に違うのはどこであるかといえば、要するに本案は安本廳の役人がもつということ、同じ官吏であるが、これは安本という役所の官吏がもつ。そうしてほかのものはそれぞれ農林省あるいは商工省の主務大臣の監督下にある役人がもつということ、それでもつ人は違うのでありますが、その與えられた權限は皆同じである。そうするとこれはまさに二重監督になる。今まで農林省もまた商工省もやつておることだから、それと一分も違わない同じこと、事物管轄においても、土地管轄においても、農林省、商工省においても全國できる。また物についても同一なんだ。事物管轄もこれと同じなんだ。でありますから、今までやつておる事柄を、さらに安本廳の役人がやろう。この案のただ違うところは、役人は一方は安本廳であり、一方はその他の官廳であるという主管の立場が違うということだけは、總理大臣はお認めになるでしよう。それを一言でおつしやつていただきたい。
  66. 片山哲

    片山國務大臣 ただいままで私がお答えいたしましたことは、責任をもつてお答えいたしたのでありますが、罰則の各法規の相違については、いろいろ前のことを心得ておりませんので、司法大臣に答弁を願うことにしたいと思います。
  67. 花村四郎

    ○花村委員 罰則のことはあとで聽きますが、要するに經濟査察官の臨檢檢査等に關する法律案の與えられたる權限をもつ人が安本部の人である。それからこれと少しも變らない、同じ法律であります臨時物資需給調整法、食糧管理法、隠匿物資等緊急措置令、ただいま申し上げましたこの三つの法令を扱う者は、それぞれの主務大臣が所管しております。たとえば商工大臣、農林大臣、その下におります官吏が扱うのであるということで、同じ事柄ではあるが、扱う人の立場が、本案と後に申した三つの法令とはちがうということだけはお認めになるでしようね。はつきりしておるのだから、これは聽かぬでもわかることだが、念のために聽いておきます。
  68. 片山哲

    片山國務大臣 本法によつてやる場合と、今お示しになつたような場合にやる場合と、關係者が違うということですね。
  69. 花村四郎

    ○花村委員 その主體權限を行う人です。
  70. 片山哲

    片山國務大臣 商工省の場合は商工省の人がやる。安本の場合は安本でやる。その場合はそうだと思います。
  71. 花村四郎

    ○花村委員 それでわかりました。そうすると、本案と今まで行つておりましたこの種法令、これと同じ法令との違いますところは、要するに取扱う人が違うのだということに限局されてきましたから、これに對しての御返答を願えればよいと思う。これは申し上げるまでもなく、二重監督です。今までやつてきたことと同じことを安本廳でやらせよういうのだが、こういうことが安本廳の行き過ぎの原因になるということは、私も初めに言つたことですが、それにいよいよ結びついて來た。そこで總理大臣にお尋ねしたい。ここが一番の中心でむずかしい。これが一番大事だ。案を認めるか認めないかという重大なところなんです。私はむしろ公聽會を開いて一般民衆に聽くのがよいと思う。そこで本案の第一條の第二項にある「食糧管理法第二條に規定する主要食糧」というのはこの食糧管理法の第二條に規定してある。「本法ニ於テ主要食糧トハ米穀、大米、はだか麥、小麥、其の他勅令ヲ以テ定ムル食糧ヲ謂フ」とあります。ですから農林省の役人取締まりをやる場合のものの對象は、今述べた法文に限定される。安本廳で今度與えられるところの査察官のやることも今申し上げた對象のものについてであるということも同じことである。そこで米麥に關する知識、素養をもつている人は一體役人ではたれか。はだか麥、小麥の見分けのでき、その質、數量もどのくらいあるか、これがよいか惡いかということも、大體判斷ができるのは農林省の役人です。米のことを言えばすぐぴんと來る。その專門家の農林省の役人がやつていたと同じ仕事を安本廳の役人にやらせようという。どちらのやり方が効果的であるか。これは幼稚園の子供に聽いても、農林省の役人の方がよいというのは明瞭だろうと思う。しかも安本の査察官というのは玄人ばかりではない。皆寄せ集めです、中には官吏の古手もある。官吏の古手の中にも警察と關係をもつた人もあるようですし、あるいは全然無關係のところからはいつておる。米や麥のことになるとほとんど知識、經驗をもつておらぬ人が行つておるというわけではない。いずれも素人です。要するに問題は農林省の專門家の役人がやるのがよいか、素人の安本廳の役人がやる方がよいかという問題に歸著すのであります。どちらがよいかということが評價されなければならぬ。しかして最もよろしきをとらなければならぬ。もう餘計なことは言わないでもよい。どつちがよいか惡いかということだけでいいのです。それだけひとつ御答辯を願いにい。幼稚園の生徒までよいと認めていることを、首相は惡いと言われるか。それをはつきり言つてください。
  72. 片山哲

    片山國務大臣 安本が現下の經濟情勢に應じて發足いたしておりますゆえんは、總會的にこれを考えていかなければならないという大局的立場から見ているのでありますから、米の知識も、繊維の知識も、その他物資全般に關する知識を總合的に考え、かつまた民間の商賣をされる方、あるいは資本の立場からも、勞働の立場からも、批判的の立場からも、いろいろな方面から衆知を集め安本機構の充實をはかつているのであります。その意味から申しまして今日の情勢においてわは安本がやるということが適當と考えているのであります。結論はそこなのであります。
  73. 花村四郎

    ○花村委員 安本がやるからやらぬかということを尋ねているのじやない。安本のやることはこのこの案を出しているのだから、この案が通ればやることはよくわかつている。私はそんなことを聽いているのじやない。農林省の知識經驗をもつた役人がやる方がいいか、あるいは案本廳の素人のやる方がよいか。あなたの今の言葉で言えば、安本廳に集まつた者は素人でないといわれたのかどうか。そこははつきりしないのでありますが、素人でないとおつしやるならば、あなたが安本廳でよくその點をお聽きになつて言われるのか。これを想像で言われるのは困る。私は少なくともどういう專門家がはいつておるかということを調べている。もう少し言えと言うならば一々その履歴を申し上げてもよい。履歴までわかつている。それをしも首相が否認していくというならば、一日でも二日でもかかつてやるけれども、それをやるのは言い過ぎだから私は申さぬけれども、今のあなたの説明ははつきりしません。安本がその筋の專門家だと言われたのじやないかと思うが、そういう意味かどうか、それをはつきり言つてください。
  74. 片山哲

    片山國務大臣 出先になつていく人人の質よりも、安本の中樞機構として樞要なる安本の事務をとつている者は、各方面の專門知識をもつている者を集めている。そして現下の情勢に適應する處置をとつているのである。こういう意味なのです。その意味において、一部に偏する者よりも、總合的知識と經驗なり各方面に通曉しておる者にやらすことが適當である。こういう意味です。
  75. 花村四郎

    ○花村委員 そうすると、今まで農林省あるいは商工省その他で今日までやつてつたその取扱いのすべてがいけなかつた。いけないから安本廳の役人にやらせるのだという意味ですね。
  76. 片山哲

    片山國務大臣 つまり複雜になつてきたので、その各廳との關係を圓滿にし、統合して、さらに擴大強化して對處する。こういう意味です。いかぬようになつたというよりも、情勢が複雜になつてさらに活動しなければならない状態になつてきたので、これを擴大強化するのである。こういう意味です。
  77. 花村四郎

    ○花村委員 その言葉があいまいですが、もう少し率直に申してもらいたい。總合性をもつてやることがよいか惡いのかは、これは第二段の問題になるので、そのことは申しませんけれども、とにかくにも同じことをやる、違うことではありません。事物管轄においても、土地管轄においても同じことです。同じことをやるのに、今までやつているところへもつてきて、二重にやらせようというのです。こういうことはよくない。こういうことはあなたの先ほど言うた行政整理という觀念がはつきりしておらないから、こういう問題が出てくる。やつているのに、それが惡いから、ほかの人に代つてやらせるというのならこれは別です、現在專門家がそうやつておるのに、そこへもつてきて同じことをほかの人にやらせる。二重にも監督をやらせる。やる方はよいのでしようが、やられる方は迷惑です。それでは、こういう例をあげてみたらどうですか。同じ事柄について、米の問題に對して、安本廳でもやつてきた。農林省の役人もやつてきた。同じ事柄について兩方からいじめられる。こういう取締りの競合という問題が起きてくる。こういうことはいじめる方はよいでしよう。おれは安本の査察官だというて、大いに權限を揮いまくるのもよいでしようし、農林省の役人がやるのもよいでしようが、國民が迷惑です。そしてまた双方で一緒にやつた場合において、一體違う罰則のどれを適用するか。これがまた問題になつてくるでしよう。安本廳でいけば一年の體刑だ。一方の方でいけば五百圓の罰金だ。同じ事柄について、そこへ取締りが競合していつた場合において、どつちの罰則を適用するか。また甲と乙とが同じことについて同じことをやつた場合において、甲が安本廳に取締まられれば千圓の罰金で濟むけれども、農林省の役人に捕まれば、一年の懲役まで受けなければならぬ。こういう不合理も出てくる。これはあとでよくお尋ねするから、後囘しにいたしますが、ともかくにも、同じ事柄について双方でいく場合があるということは、まことにこれは國民として迷惑だ。そういうことをなぜやらなければならぬのか。それは、今までやつてつた事柄が手がまわらない、あるいは不正があつた、あるいはその運用よろしきを得ないということで、あとの人が代わつていくというのならわかつています。それは安本廳で總合的にやることがまことに適當であるから、やらせるのだいうのなら、前のことはやめさせたらよいでしよう。あんたは安本廳のこの案が通ればやめさせますか。それがやはり行政整理の一つになりはしないか。こういう小役人を同じ事柄について、同じ場所に對して、しかも權限を強くもたせた役人を二重につくつて、二重に取締るというような、そんな餘裕がわが國家財政にありますか。そういうことをやつておることがいかぬというので、あんた方も、社會黨も今日まで攻撃してきたのではないか。そうゆうことがむだである。たれが考えつてむだなんだ。安本廳でやるのがどこまでもいいというのなら、それはやめればいい。やめるということなら、わかつた話だ。やめずにそれをやらして、また安本廳の方でもやらせる。そんなばかげたことはない。またそういうことでは財政整理どころじやない。財政の擴張で、その擴張たるや、ますます無益な方向へ進んでいくという結論になろうと思いますが、その點首相はどうお考えになつておりますか。
  78. 片山哲

    片山國務大臣 今の點にお答えいたします。あなたの御意見は、各官廳はいつも對立しておるというような見方から出發しておるじやないかと思います。われわれはできるだけ過去の弊害を除去いたしまして、官廳間における仕事の對立なり、なわ張りというようなことはなくしたい。その根絶を期しておるような次第です。そういう意味から申しまして、安本の中にも農林省の專門的經驗をもつております役人が來ておりますし、各官廳間の關係はきわめて緊密なる連絡をとることを要求いたしております。その意味において、決してお互いに爭つて、二重にやつたり、あるいはまた爭うて先に行つて、他を排するとかいうような事柄はないと考えております。これがために、安本は總合的に、農林省、商工省その他の各般の問題についてこれを總合いたしまして、そしてお互いの食い合いのないようにやつていこうというところにねらいがあるのであります。またそうすることが、非常に複雜となつてきました今日の經濟情勢に處する必要な處置である、かように考えておるのであります。
  79. 花村四郎

    ○花村委員 總合といわれるのですが、これは安本廳の規定にもありますが、計畫、企畫等については總合的にやるのがいいでしよう。これは經濟安本部令に明確に規定されておりますから、企畫、立案等の基本に關するものということに關連をして、企畫、立案などは總合的にやらせる方がいいでしようけれども、取締りなどを總合的にやるというのは、これはどういう意味になるのですか。總合的にやるならば、各官廳を總合していつたらいいじやないか。内務省でやつておること、あるいは商工省でやつておる事柄、あるいは隠匿物資のついてやつておる新官廳、それを總合したらどうです。そして安本廳が指圖したらどうですか。同じことをやる必要はないじやないですか。同じ内閣總理大臣の權限の中にあるでしよう。安本廳が今までできておるその機構を總合して運用したらどうですか。その方がむしろ總合になるじやないですか。同じような事柄を同じような場所においてやらすのです。それは今までやつておる各官廳を總合したらいいじやないですか。それが、安本廳の職務權限から言うてふさわしい權限だと私は申したい。その第一線まで出ていつてやらないでもいいじやないか。私は何もなわ張爭いに對して云々言うわけじやない。
  80. 片山哲

    片山國務大臣 今の問題についてお答えいたします。それは農林省の方において食糧問題を中心としてやるべき場合もありましよう。それが必要なる場合、また効果ある場合もありましようし、また安本でやる方が適當である場合もありましようし、いろいろ事情のの相違によりまして、それぞれ効果的な方法を講ずるということが必要と思うのであります。その意味において兩建てが適當と私は考えております。
  81. 北浦圭太郎

    北浦委員 この經濟安本部の第一條の擴張解釋ということは、片山さん、これはよほど考えなければ行かぬ。これは政令なのです。あなた方が昭和二十二年七月十二日に改正された政令なんです。そこで私はこういう問題を提供しておく、政令を廣く解釋して、國民の權利義務に介入していくことは許されるか。さような解釋はよいか。これが一つ。これはどこまでも花村君の言うのがいい。  第二は、今囘提案されました査察官の臨檢檢査等に關する法律案というのは、これは鈴木さんもよく聽いておいてもらいたいが、これは政令を執行するために出しておる。逆なのです。あなた方がおつくりになつたのでないから御存じありますまいけれども、安本であまり法律憲法も知らない人のやつたことだろうと思いますが、政令を執行するための法律をつくることはよいのか。憲法執行のため、法律執行のための政令ならよろしいが、政令を擴張解釋して、人民の權利義務にはいつていたり、それから政令で法律をつくる、さようなことが許されるか、これ二つ。これだけ憲法學者であり、法律家である鈴木さんと、法律家の片山君、この二人よく考えてもらいたい。あとは安本の長官なり政府委員に聽きます。私の言うのはこれだけです。
  82. 松永義雄

    松永委員長 本日はこれにて散會します。     午後四時四十三分散會