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1947-09-20 第1回国会 衆議院 司法委員会 第35号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十二年九月二十日(土曜日)     午後二時二分開議    出席委員    委員長 松永 義雄君    理事 荊木 一久君 理事 鍛冶 良作君       石井 繁丸君    榊原 千代君       安田 幹太君    中村 又一君       八並 達雄君    山下 春江君       吉田  安君    岡井藤志郎君       北浦圭太郎君    花村 四郎君       大島 多藏君  出席國務大臣         内閣總理大臣  片山  哲君         司 法 大 臣 鈴木 義雄君  出席政府委員         總理廟事務官  國鹽耕一郎君         司 法 次 官 佐藤 藤佐君         司法事務官   國宗  栄君  委員外出席者         専門調査員   村  教三君     ————————————— 本日の會議に付した事件  刑法の一部を改正する法立案内閣提出)(第  六号)     —————————————
  2. 松永義雄

    松永委員長 會議を開きます。  刑法の一部を改正する法律案を議題として審議を進めます。北浦圭太郎君。
  3. 北浦圭太郎

    北浦委員 刑法の一部を改正する法律案につきまして、内閣總理大臣天皇皇后太皇太后皇太后または皇嗣なるときは、その名譽毀損について告訴を代わつて行う、かような規定が設けられております。これは總理大臣たる片山さんの差向き任務でありますので、私は主としてこういう條文について總理大臣職務事項關係事項についてのみ質問したいと思います。  そこでただいまの條文でありますが、これは内閣總理大臣として、この方々告訴を代わつて行使するということは間違いだ、こういうことは憲法が許さないことだということについて御意見を伺います。第一に、總理大臣であられる片山さんの職務は、ここで私が申すまでもなく、憲法で定まつております。憲法で定められた以外のことは、内閣總理大臣といえどもやつてはいけない。主として憲法六十八條、七十二條規定されたる行為以外には總理大臣はやり得ない、やつては悪い。司法、立法、行政、おのおの嚴重に區別されているのでありますから、そういうことはやり得ない。しかるにここに天皇皇后太皇太后皇太后、皇嗣が名譽を毀損されたる場合においては、内閣總理大臣が代つて告訴を行う、かくのごとき法律がかりに成立いたしましても、これは憲法精神に反するのだから、憲法規定によつて無効である、私はかのように考える。まずこの點について總理大臣のご意見を伺います。
  4. 片山哲

    片山國務大臣 北浦君の御質問は、この二百三十一條の、告訴を内閣總理大臣が代わつて行うということは、憲法違反である、こういう御趣旨のように解釋いたしまするが、私の解釈では、憲法違反ではないと考えるのであります。天皇舊憲法とによりまして、いろいろの面においてその地位、その權限の相違を来しておりまする今日、かような規定をおきまして總理大臣が代わつてこれを行うという取扱いをいたしますることは、民主憲法としてはあり得ることであろうと思うのでありまして、これは違反ではないと考えておるのであります。
  5. 北浦圭太郎

    北浦委員 民主憲法としてあり得ることだという説明だけでは説明が足らない。何がゆえに憲法違反ではないか、その理由を私は伺つておるので、どうもただいまの片山さんの御答辯では、おそらくこれはだれが聴いてもわからないと思う。憲法が非常に變つた、そうして、民主憲法ではあり得ることだ、それではどうも法論理として通らない。内閣總理大臣職務權限は、憲法に制限的に規定されておるということは、これは片山さんも承知されると思う。無限に擴めていくものではない。それをこういう法律をつくつてりつぱな行政機關中最高峰たる總理大臣が、天皇個人告訴權を行使する。これはどうも民主主義憲法精神からして間違つておる。なぜ憲法違反ではないか。内閣總理大臣たるものが、天皇個人告訴を代つて行う。どこにその憲法上もしくは法理上の理由理由づけるか。今少しく理論的に説明を願いたい。いかがですか。
  6. 片山哲

    片山國務大臣 ちようど質問が總括的でありましたがら總括的にお答えをした程度でありまして、詳しくその意見を聞きたいということでありまするならば、大體の私の考えをつまんで申し上げてみたいと思います。  御承知のように、君主政治のもとにおきましては、君主最高統轄者であり、政治の中心でありまするから、崇高なる地位に立つておることは言うまでもないのであります。特別的規定をおきましてその地位を擁護し、その權限を十分に行使せしめる方法をとつておると思うのであります。しかし北浦君などが關與せられましたこの新しい憲法、特に新時代に適応するするための民主憲法としてつくられましたる新憲法は、天皇地位在来舊憲法による地位と非常にかえまして、國民象徴であるということと、天皇の行うところの仕事憲法規定し、政治は主として實際面において國民代表として議會が行い、あるいは政府がこれを擔富する、こういうようなこととなり、内閣首班の任免も國會で氏名せられ、あとの認證が天皇によつて行われるというようなことに變更いたしましたることは、今さら言うまでもないのであります。そういうようなわけで、天皇地位國民象徴として尊敬せらるる地位に立ち、また國民からわが國の歴史的な深い感情によりまして特別なる扱いを受けるのでありまするけれども、しかしそれは法律的は、あるいは行政的な部面において現れるのではなくして、主として精神的、尊敬的な象徴として現れておるというような憲法精神は、今さらここで申し上げるまでもないことと思うのであります。そういう政治的な變更行政的な變更、制度的な變更がありましたる今日におきましては、いわゆる人間天皇として、また日本國民の中に包括せられておりまする立場におきまして、國民全體の刑の規律やら、あるいは各般法律規定とにらみ合わして均衡を保つ建前をとつていかなければならないと思うのであります。従つて特別に考えておりましたる不敬罪を廢止するのでありまするが、廃止したからといつて天皇に對する尊敬國民としての良心的心持というものは、ちつとも變りはないと思うのであります。政治國民生活あるいは國民感情ということとはわけて考えていくことになつておるのであります。特に人間天皇として、國民の非常に親しまれておる、國民尊敬をさらに深めておるというようなことを考えてみますると、そこに新しきわが國の天皇制のあり方が示されておるのであります。政治上においては民主主義の徹底をはかり、國家としても平和國家として新生命を開いていかなければならない。幾多の任務國民立場において新しき政治を開いていく、こういうふうに進んでいきつつあるのでありまするから、これらに鑑みまして、刑法規定においても、在来のような不敬罪取扱つたやり方をかえまして、國民心掛を同じゆうするが、しかし精神的な尊敬を十分に現していくべき方法考えていこう、こういうところで二百三十一條は、ここに書かれてありまする方々がみずからその手續をおとりにならない場合におきましても、その御意志を十分に尊重したりお心持を察して、國家治安の上から申しまして、あるいは國民道義の觀念から申しまして、最も適當なる方法を講じて、内閣総理大臣が代つてこれを行うということが、今日においては最も必要なことであつて總理大臣として職責を盡さなければならないゆえんも、またここにあり、また總理大臣に與えられたる廣汎任務一つであろうと思います總理大臣はそういうような意味において、國民感情國民道義心と、國民の歴史的な心持とを忖度いたしまして、最も適當考えられる處置をとることが認められるべきであると思うのであります。こういう意味において、この條項をきめることが適當であり、決してそれは憲法違反ではない。むしろ憲法精神に副うておるものであるというふうに考えておるのであります。
  7. 北浦圭太郎

    北浦委員 長々と御説明になりましたが、私は別に不敬罪のことは聽いていない。そしてしからば條文を示してお伺いしまするが、片山さん、あなたは總理大臣として憲法第六十八條と七十二條よりほかにやることはない。それ以上やつては悪い。六十八條であなたは國務大臣を任命する。これを罷免する。七十二條内閣代表として議案を國會に提出するとか、一般國務及び外交關係について國會に報告するとか、竝びに行政各部を指揮監督する。これがあなたのやるべきことである。告訴代理などはこの憲法一つも豫想していない。こんなことは私が言うまでもなく、あなたの御承知通り。そこで一體こういう告訴代理ということは、あなたの職務の、この憲法規定されたおるうちの、どの條文にあたるか、その點をひとつお伺いします。
  8. 片山哲

    片山國務大臣 今憲法條文をもつておりませんので、詳しい研究をされておる北浦君のあげられたる條文が、おもなる總理大臣任務であるというお示しは、ごもつともかと思います。但し内閣總理大臣という地位は、國全體の政治について、議會から委託せられた仕事をしていかなければならない。また國家治安を十分に守つていかなければならない。國民道義心を高揚していかなけらばならない。この歴史的な美點をも十分尊重していかなければならない。こういう仕事があることは、言うまでもないのであります。こういう全般的な、國民から委託せられた政治を行う上において、今申しましたような國民道義心を尊重し、治安を維持する上において必要なる仕事の中に包括せられておる事項であると思つております。
  9. 北浦圭太郎

    北浦委員 内閣總理大臣が、天皇その他の皇室方々に代つて告訴するということは、國民感情が滿足するのだという趣旨にお述べになる。それに私もその通り同意いたします。けれども憲法規定していないことを、法律でどしどし規定していくということは、これはよほど悪い。この條文にあてはまるということを法律家にして總理大臣たる片山氏が御答辯なさらないのでありまするから、さらに方面をかえて、この條文についてお伺いいたします。天皇内閣アドヴァイスー助言と承認とによつて國事に關する行為だけを行う。そうしてこれらのことは、いかにも法律の定めるところによりまして内閣に委任することは規定がございます。國事に關することだけは委任できる。國の事項政治に關することは、これは言うまでもなく内閣に委任することができるという條文がある。ところがこの告訴權というものは國務でも何でもない。内閣總理大臣に代つてやらすという、さようなことは天皇としてできない。天皇は内閣總理大臣を任命する。最高裁判所の長を任命する。あるいは總理大臣片山さんが國務大臣を任命なさる、これを認證する。外國との條約を内閣がやり、天皇はこれを認證なさる。あるいは大使公使を接受する。こういうふうに皆國の事務に關することだけであつて、しかもまた天皇はそれ以外にやつてはならない。天皇地位から申しまして、國の行政權最高峰たる内閣總理大臣を、自分個人告訴權代理とすることはできない。これは憲法が許さない。天皇權限憲法できちんと規定してある。それゆえに總理大臣にやらすということはできない。片山さんは内閣總理大臣として、この告訴代理がどの條文でできるかということを御指摘相ならぬ。そこでまず方面をかえまして、天皇という地位から質問いたすのでありまするが、一體天皇自分が名譽を毀損されたからといつて憲法では、法律をやたらにつくつてはいかぬ、憲法違反法律はいくらつくつたつて無效だと書いてある。天皇はどういう條文で、どういう權限で、國家行政機關最高峰たる内閣總理大臣代理として、代つて告訴させることができるか。この點お伺いいたします。
  10. 片山哲

    片山國務大臣 北浦君のように憲法規定するということになるまするというと、憲法各般事項をこまかく書きまして、非常な多くの條文になるのではないかと思うのです。そういう煩を避けるために、憲法はごく統治大綱を示す、國家統治權の所在とか、司法權の獨立であるとか、國會地位であるとかいうような、大綱を示すに止めておるということは、御承知通りと思うのであります。そういう意味から申しまして、そういうこまかいことは、大體憲法大綱の中でわかつてくることであるし、また法律家たる北浦君も御承知通り法律常識によつても、當然推定されることである、こう思うのであります。特に憲法の冒頭におきましては、天皇象徴であるということを明らかにいたしておるのでありまして、象徴としての地位は、どこまで護つていかなければならないのであります。それを御みずから護られるということもありましようし、また内閣總理大臣は國の政治を擔當しておりまする上から申しまして、先ほど申しましたような趣旨からこれを護る、そういうことが現れてくると思うのであります。よつて侵害されたるところの法益を擁護するために、告訴權を御行使なさることもありましよう。それを内閣總理大臣が代つて行う、こういうようなることは、條文になくとも構わないと思います。なくとも當然の帰結として、常識として當然認められる事柄である。これはまた治安を維持し、秩序を守つていく上から申しまして必要なことであるし、新憲法心持を活かす上から申しましても、考えられることであると思つておるのであります。
  11. 北浦圭太郎

    北浦委員 法律は綱であつて、その大綱規定するものであるということは、片山さんのお言葉通り、さようなことは、われわれもよく承知いたしております。私の言うのは、天皇權限というものは制限されておるのだ、新憲法においては擴めてはならないのだ、これはもう議論の餘地はない。そこで天皇國家象徴であり、日本國民統合象徴であるから、これを尊敬するのあまり内閣總理大臣がやる。こういうご趣旨であるが、その點も私は同意である。天皇象徴である。日本國民全體の尊嚴代表するのであるから、これを大いに尊敬しなければいけない。これは私もその通りと思います。けれどもこんな條文は要らない。一般國民とそれほど異なつたところあるならば、なぜ不敬罪をつくらないか。皇室に對する不敬罪をなぜ削除するか。あなたさが先ほどから述べられるところは、天皇は一般國民と違うという一言に盡きるのでありまあす。殊にこの刑法においては、一般國民總理大臣もまさか代表せられるのではない。天皇代表され告訴權代理する。あなたのおつしやる通りこれは常識が許す。なぜ常識が許すか。一般國民とは特殊の地位にある、私はかように解釋しております。内閣總理大臣を任命され、國會すら解散され、召集される一種の命令だ。最高裁判所の長を任命される。これほど法律で高いところにまつり上げてある天皇に對して、なぜ不敬罪を削除するか。あなたがそれほど天皇國家象徴にして尊敬すべだ、これが常識上許されるべきものであるとおつしやるならば、何がゆえに不敬罪を削除するか、不敬罪をつくつておきますと、今度あなたがわざわざその辯護人代理みたいなことをしなくてもいい。總理大臣が別に天皇や、皇太子、皇太孫が侮辱されたからといつて告訴代理になられる必要はない。論理が通らない。それほどならば、なぜ不敬罪を設けないのか。不敬罪だけではありません。皇室に對する犯罪、これは世界各國未だかつて帝王の存するところ、不敬罪のない國は一つもない。皇室に對する犯罪規定しない國は一つもないのである。あの米國すら元首として特別待遇しておる。米國大統領に對して書面で脅迫的言嚴を弄した場合においては、特別に刑を重くしておる。フランス大統領に對してすら、尊嚴を侵すような場合においては、特別に扱こうておる。いわんや他の帝王國家においては、なおさらである。なぜこういう倫理が通らないものにするか。そうしてあなたのおつしやる、言葉から考えても、自然に天皇日本國民全體を現すところの尊嚴を、あなたはそこで御答辯になつている。それならばなぜ不敬罪をやめるか。政府委員はこれは憲法において天皇國民であるから、國民同一待遇するのだという理由一つ。いま一つ國際情勢から考えている。国際情勢とおつしやいますけれども、國際情勢を組織するところの各國家は、全部不敬罪あるいは元首に對して特殊の規定を設けておる。今日國際連合國は全部これを認めておる。何がゆえに天皇に對する犯罪を現内閣は削除しようとするのか、この點をお伺いいたしておきたい。
  12. 片山哲

    片山國務大臣 北浦君は論陣を張つて、ただいまの御議論に落すために、その前驅として國際問題を論ぜられた、なかなか巧妙なる進め方には感服いたしまするが、しかし私の申しました天皇象徴であつて國民尊敬を集めなければならないということは、どこまでも民主憲法の中において、そのわく内において限界を定めていかなければならないのであります。今までのような一種特別なる取扱いをしない、超然的な取扱をしないで、どこまでも日本人であり、日本國民であり、國民の總合體の中に一しよにおはいりになつて國民とともに日本人としての生活をなさつておる、こういうことでありますから、生活態様もまたいろいろの御行動につきましても、在來のような御行動とは、大分變つてまいるのであります。たとえて申しますならば、御旅行なさる場合におきましても、在來は非常な特別なる扱いをいたしまして、國民との間に非常な隔離政策と申しまするか、遊離したよう感があつたのでありまするが、今日における各地方を御巡幸になる御様子を伺いますれば、ほんとう國民の中におはいりになつて國民とともに苦樂を共にされるというような状態であつて、この點は國民のひとしく喜び、かつ感激しておるような状態であります。そういうふうでありますから、生活態様も變つてまいりまして、人間として、日本人として、これからの生活ということは、國民の中に渾然と融和されてこなければならないのであります。別格なる特殊性を加味せしめる特殊性を加味せしめ、特殊性を持續せしめるというようなことは、新憲法精神ではないと思うのであります。そういう意味から申しまして、特別な扱い生活様態の中から除いて、ほんとう國民に親しまれる、こういうような形態に進んで行きつつ、しかも國民尊敬の的になる。ここがわが國の特色であろうと思うのであります。おそらくこれからの政治においても、また国民感情の上から申しましても、國民の中にあつて、しかも國民から尊敬される象徴として進んでいかれると思うのであります。そういう意味から申しまして、在來の封建的と申しまするか、特殊的な取扱をいたしましたやり方を、一切法規の上から取除いて、すなわち不敬罪というような特別な規定を取除きまして、今御審議を願つておるような取扱にいたすことが必要である。こういう觀點から來ておるのでありまして、天皇に對する尊敬の念については、北浦君と同様でありまするが、政治法規的及び社會生活の面から申しまして、在來の規定變更いたしまして、國民の中に渾然融和されておる状態法律で現していかなければならない、こういうふうに考えておるのであります。
  13. 北浦圭太郎

    北浦委員 どうも總理大臣の御説明は、政治的と申しましようか、常識的と申しましようか、はなはだ巧妙に御答辯なさいまするが、どうしてもその間に矛盾がある。日本人であり、國民であられる、國民とともに、日本人とともに生活あそばされる、渾然として融和する、こういう政治的法律的願望、念願から不敬罪というものをなくすのだというならば、なぜそれなら告訴權だけは特別優遇をするか。これはどうしてもいかぬ。片山さん、あなたも法律については詳しいのだが、もう一度お考えを願う。すくなくとも皇室典範によりますと、皇族會議、こういうものは天皇財産關係といい、あるいは一身上のことといい、こういう機關が特に設けられているのであります。この行政最高峰である總理大臣が、こういう代理をするということは、法律からいつても、憲法からいつても、また政治からいいましても、穩やかなことではないことは言うまでもないことである。もし強いてさせたければ、他の機關はあるのだ。われわれはこの條文規定の前後に、大きな矛盾があると思う。一方のにおいて天皇尊敬する、その尊嚴を尊んで職務外總理大臣が出て來て告訴をする、そうして他面において天皇はまた國民同一取扱うべきが民主主義憲法精神だと言つて不敬罪をとつてしまう。英國民主主義であるが、やはり不敬罪がおかれておる。皇室に對する罪はおかれておる。フランス、ベルギー、オランダ、これもファッショであるとか、軍國主義者とかいうものではない、民主主義である。しかもちやんと規定されておる。日本の特質といたしまして、天皇がわれわれの家族の父であり、われわれがその子である。渾然融和、一體をなして進んでいく。これはよろしい。よろしいが、別に國民尊嚴個人の尊厳を尊重するということが、この憲法の最も急所である。その個人の全體を包括したるところの大いなる尊嚴個人同一に扱うということは、どうしてもあなたのおつしやる政治的にみましても、民族感情からいいましても、つりあいがとれない、承服ができない。まだほかに同僚もおられることでありますから、その條文はそれはそれでおきまして、片山さんの職務中には、國會に對して外交關係は、これを報告する職責をもつておられる。これは憲法規定で明らかであります。そこで私は關連してお伺いするのでありますが、日本に滯在せられるところの外國君主竝びに大使公使、こういう方々に對しての特別刑法を現内閣は削除しておる。御承知通り、條約は國と國との公法的契約でありましようが、いはゆる慣習法であるとか、國際條規というようなものは、各國においてもう揃つて一つ條文化できますと、これは國際條規言つてよい。日本憲法にも書いてありますように、憲法は國の最高法、それと竝べて條約、國際條規は、これを尊重しなければいかぬということを命じておる。これは御承知通り米國憲法にも、條約は最高法律であるという規定がある。憲法最高法規であると同時に、法律最高法規であるということを、米國憲法規定しております。それで私はまねしてつくつたとは思いませんけれども、まずまず類似でつくつた。この外國使節外國君主を鄭重に扱うことは、これは實に世界共通であります。英國であろうが、米國であろうが、ドイツ、フランスオランダであろうが、南米諸國、オーストラリヤ、大抵の國は外國使節を特別に刑法取扱うという條文ができておる。國際條規に今日はなつてきておる。それをわざわざ現内閣は削除した。片山さんは外交關係については議會報告しなければならぬ。この國際條規にまで化しておる條文を、なぜこの刑法から削除するか。政府委員天皇と權衡がとれないからとこう言う。實にどうも兒戯に類した説である。理由をあげて申しますと、日本天皇米國へいらつしやる。英國へいらつしやる。刑法上特別の待遇を受ける。しかるに日本に滞在する外國君主である場合においては、われわれ國民一般同一待遇、これでよろしゆうございますか。なぜこの條文を削除されたか、その點をお伺いいたします。
  14. 片山哲

    片山國務大臣 外交問題については報告する責任はありまするが、御承知のようなわが國の現状でありまして、外交全般に關しては、講和条約以前においては、非常に窮屈な状態になつておりまするから、その點はあらかじめ御了承願いたいと存じます。さて御指摘の外國使臣なり代表者なり等に關する刑の規定を削除いたしましたことは、いわゆるお話のうちにもありました通り、つりあいからも來ておりまするし、十分これを保護して、外國使臣に對する禮を失せざる程度において守り得ると思つておるのであります。それはたびたび政府委員から説明があつたことと思いまするが、侮辱するとか、暴行を加えるというような場合においては、嚴罰に處して、その刑を加重しておるというような點から、その趣旨は達せられておると思うのであります。そういう意味から申しまして、少しも意味から申しまして、少しもこれを削除いたしましたからといつて弊害はないと、かように考えております。
  15. 北浦圭太郎

    北浦委員 それがいけない。法律規定してありまする以上は、憲法のいわゆる國民は法の前に平等である、その取扱をしなければいけない。外國君主である、大統領であるからと、法律規定もなくして、特別の待遇をする。それがいけない。適用し得られるところの法律國會の承認のもとにつくつておかなければならない。一體司法官にせよ、いわゆる司法部は國會の承認を經ずして、何らの法律をつくらずして、いわゆる自由心證でありますけれでも、事實の裁判は判事の自由裁量に任せてありますけれども、憲法規定を破つて外國君主であるから、だれだからといつて、特別に待遇して、刑罰を重くするというその根性がいけない。そうぢやない。國會の承認を經たる法律ができてありますると、それは國會の承認のもとにすらすらやれる。そういう根性がいわゆる司法遍重の思想である。今日の民主主義憲法と非常に違う。片山さんのおつしやることは、過日來からの政府委員説明通りであつて國會に提案をせずして、法律をつくらずして、憲法に禁じてあることをあえてやろう。國民の前に平等なりという規定を侵してやろう。それがために法律をつくる。なぜこんなものを削除する必要があるかわからない。この理由天皇と權衡を保たすためだというほかに理由はない。憲法天皇地位から申しまして、片山さんの地位から申しまして、この告訴というようなものはどこから見ても成立たない。それをつくらなければならぬというのは、不敬罪を削除するからだ。それを削除するために、國際法規化しているところの、諸外國のいずれもいつせいに規定しておる外國元首に對する規定まで削除しなければならぬ。あまりに國際關係というて恐れて、しかも眞理に遠ざかつては、それこそ國際關係の物笑いになる。説明は依然として政府委員説明の範圍外に出てませんことを遺憾といたしますが、あとに同僚がまたやりますから、私は刑法については、この程度に止めておきます。  今度は片山さんにお伺いたいしまするのは、農林大臣に對してお伺いするのではない。いわゆる憲法上あなたの責任の外交關係、外務關係、外國の信用ということについて、昨日の續賣新聞、今日の毎日新聞に出ておることについて、あなたの職務權限内のことだけをお伺いいたします。農林大臣のそういうくわしい説明を聽こうとは思いません。外國に對して信用はどうであろうか、この點だけをお伺いいたします。内閣代表して外交關係について國會に報告する職務をもつてあられますから……。總司令部の天然資源局農業課ローン・ティー・ソンレイ、この人たちの談話について、片山首相にお伺いいたすますが、そのうちで犯罪だと思うことは鈴木司法大臣にお伺いいたします。この中にこう書いてある。今夏の麥及びじやが芋の提出割當は、推定収穫高に對する割合からいつて今までにない最低基準によつて決定されたのではないか。この決定は、多分片山内閣によつて決定されたと思います。あるいは吉田内閣時代に決定されたものを片山内閣が踏襲されておるかわからぬ。そんなことはどうあつてもかまわぬ。吉田内閣であろうが、片山内閣であろうが、そんなことはかまわない。今までにない最低基準で決定されたのではないか。こういうことをソンレイ氏が言つておられる。米とさつま芋についても同じことが繰返されるのではなかろうか。日本人の食糧自給努力について、世界はいろいろ日本に尋ねたい疑問をもつておるが、米、さつま芋に對する供出割當数量は、これらの多くの疑問に對する囘答になる。こういうことが出ております。そこで國際信用上片山總理大臣にお伺いするのでありますが、今度の麥やじやが芋の供出割當は、縱來にない最低基準で決定した事實があるのかないのか、ローン・ティー・ソンレイ氏の疑問は間違つているのか、願わくは間違つてありたい。これが一つ。ソンレイ氏の指摘されたる事實がほんとうであれば、その理由はどういうわけか。もう一度念を押しておきますが、これが自由黨内閣のもとに行われておつて、あなたがこれを踏襲されておつても、それは毛頭構わない。もし自由黨内閣の決定したことで、あなたが踏襲しておられるとするならば、なぜそれを改めないのか。これは世界の疑問でありますから、日本の國際信用のために御答辯を願いたいと思います。但し首相にさような割當のこまかいことはわからぬということでありますならば、この點は他の同僚と御相談あつて、國際信用を害していないという御答辯を頂戴したい。米とさつま芋の割當数量が、また縱來にない最低基準で決定しておるならば、世界質問に答えることができない。それはいかに決定しようと考えておられるかどうか、このローン・ティー・ソンレイ氏の一つの疑問に對しまして、國際信用の上からお答え願いたい。
  16. 片山哲

    片山國務大臣 食料の供出割當につきましては、農林當局におきまして、きわめて愼重なる態度をとりて、常に連合軍當局と折衡を重ね、十分なる理解のもとに、割當決定をいたしておるような状態であります。この内閣となりまして、割當決定をいたしました際におきましても、そういう方法をとりまして、當局はかなり愼重なる態度をとつて、その了解を得ておると思うのであります。先般發表いたしましたる麥、馬鈴薯に關する割當も、また目下各縣の知事に参集を願つて協議いたしておりまする割當問題につきましても、全部連合當局の了解と支持を得ておるようなわけであります。昨日も東半分の知事諸君が集まりまして、割當の會議を開きましたが、その際においても、連合司令部より出張せられまして、一場の訓示をされておるのであります。その際における數字等も、全て農林當局の發表の數字と合致しておる。こういう状態になつております。決して了解を得ずして割當を發表したり、あるいは一人ぎめできめるというようなやり方はいたしていないのであります。細かい點は、北浦君も言われました通りに、一つ農林大臣にお聽き願いたいと思いますが、私の關知しておる點においては、また最も重要と考えておりまするこれらの問題については、さような方法をとつて、決して間違いのないようにしたいということに對しては、最新の注意を拂い、かつお話の外國の信用を十分に得られるように、日本國民はみずからの力をもつて、食糧問題の解決に進んでおるのである。全力を盡して食料供出に邁進しておるのであるという事實を率直に現して、そうして信用を得なければならないという方針を堅持いたしております。その點は十分御了解願いたいと思います。
  17. 北浦圭太郎

    北浦委員 もつともその邊のことは私も多少存じております。もちろん事ごとに關係方面と交渉なされて了解を得ておられるということは、よく知つておりまするが、この記事を續んでみますと了解を得ることについてトリックがないか、そこにある暗い影が潜んでいないか、こういうことがうかがわれるのであります。私のあなたに質問いたしますのは、了解によつて滿足してもらつておるかいないかということでなくして、了解を得るについて、何かそこに總司令部の當局の方が指摘されておるような事が數々潜んでいないかということをお伺いするのであります。これははじめから申しまするように、あなたが農事のことを全部知つておられるとは私は思つておりませんが、ただもう一つ極端な例は、本年度の主食作付面積は戰時中の最高収穫時の作付面積の九十%以下だつたと言われておるのはどういうわけか。また地方事務所や縣廳は農民の報告しておる作付面積よりも少く報告しているのではないか、まだ詳しいことはたくさんありまするが、これくらいでやめますが、これは私はあることを信じます。私の奈良縣は、昨年は供出について日本一に早かつた。知事は一生懸命やつた。そこで知事選擧にどうなつたかともうしますと、野村萬作という男でありまするが、反對派の悪口言いは、あれは米取り知事だ、野村萬作でなくして野村半作だ、こういう宣傳をいたしまして、俄然得票は少なかつた。第一等の人が追放になつたからして、辛うじて當選したのでありますけれども、飛抜けて第一等でなければならぬものが、日本一米取立てが強かつたというためにそういう結果を見た。そこで関係方面の當局も指摘されておるように、選擧の再選をはかるか。今正直なる農民の報告よりももつとしたに下げて縣廳あたりが政府に申告しておる、そういうことはないか。さいわい鈴木さんがおいでになりましたが、これは私は犯罪だと思う。農民が作付反別、あるいは出來高申告する。知事その他の役人は、農民に媚びるため、この文書を變更して虚偽の偽の文書をさくせいしてこれを政府に出す。積極的に供出妨害をするのも犯罪ならば、こういうふうに消極的に、殊に選擧の再選擧をはかるために、と書いてありまする。もしこうくことがあるならば、私は二罪併發だと思う。こういうことを總理大臣外國關係の信用上よく調査され、司法大臣は犯罪方面からそれを調査して、そうしてこの連合國の質問に答えなければならぬ、私はかように思う。その點につきましてまず片山さんにもう一度了解を得ておる、それはわかつておる。了解するについてこういう内容を含んでおるかおらぬかということを御存知か。御存知なければ、これから調査なさるか。この議會の御答辯世界に對する御答辯である。世界は非常に疑うておると書いてある。この點を片山總理大臣にお伺いして、そうしてこういうトリックは、司法大臣としてどういうふうにお取扱いになるか、司法大臣にもお伺いいたします。
  18. 片山哲

    片山國務大臣 本当に國民全體が公正に正しくすべて率直に、あらゆる方面において當面してもらわなければならぬのであります。特に供出問題につきましては、農民の立場から申しますると、いろいろと苦しい場面もあり、また今までの制度につきまして改むべき場合もあつたと思うのであります。これらの意見をよく聽いて、ほんとうに心から國民全體の食糧を賄うという自主的な、かつまた積極的な、しかしてまた同情溢るるような思いをもつて消費者大衆の食糧を賄う、ぴつたりと心を合わしてやつてもらう、こういうふうにわれわれは望んでおるのであります。できるだけそこにもつていかなくてはならない。そしてこの農民の勞を消費者大衆は感謝しつつ、食糧問題の圓滿なる進行を確立いたしたい、こうわれわれは考えまして、非常な努力をしておるのであります。從つて目下検討しておりまするところの供出制度につきましても、在來の遺憾な點をことごとく改正いたしまして、十分理解ある供出制度にしたい、かように考えておるのであります。これらは一に、今北浦君の御指摘になつたようなことの事實の有無は別といたしまして、遺憾な點をことごとく拂拭して、積極的方法を願いたい、こういう心持ちから來ておるのであります。そうして日本國民は正直にやつておる、そうして隱したりしない、ないものはない、あるものはことごとく指定通り出しておる。足りないところは外國の輸入に仰いでおる、こういうふうにさらけ出していかなくてはならない、こういう方針でやつておるのであります。悪い今までの弊害を是正することには、少しもわれされは躊躇しておりません。そうして正しい方法で、すべてをやつていきたいと考えておるのであります。その點につきまして、國民全體の心からなる理解を、われわれは望んでやまないの次第であります。
  19. 鈴木義男

    ○鈴木國務大臣 大體私からのお考え總理大臣のただいま答えられたことに一致するものであります。なお北浦委員のお言葉のうちに、いかにも供出を留保しておるかのごとき印象を與えるものがあつたならば、十分調査して、正當に供出しておることを世界に向かつて宣言するべきであるというお言葉がありましたが、まことに御趣旨においては、私どもも大贊成でありまするが、ただいまの状況におきましては、農業統計、農業調査というものは、はなはだ不完全なものであります。十分現實に合致した調査をなし得るということは、容易に申し上げかねる次第であります。そこにこういうようなデリケートな問題も起こるのではないかと思うのでありまして、その點は御了承を得なければならぬと思うのでありますが、ただいま總理が答えられましたように、われわれも誠實にあるものはある、ないものはない。これだけが出し得るものであるという立場に立つてつていきたいと存じておる次第であります。
  20. 北浦圭太郎

    北浦委員 お二人とも私の質問が徹底しなかつたように思うのでありますが、このソンレイ氏の指摘されておるところは農民は正直に報告しておる。農民は作付段別、これは正直に報告しておる。縣廳の役人どもがそれを少く削つて中央へもつてくる。こう書いてある。ゆえに片山さんは、農民と消費者としつくりいつておればそんな問題は起こらないとおつしやるが、農民は正直に出しておる。鈴木さんの御答辯の、農民が正直に出しておるにかかわらず、役人がそれをゆがめて割當するということは犯罪だと私はこう申し上げる。この點間違いないようにお願いいたしまする。私がくどくど質問するまでもなく、今日の朝日新聞も、昨日の續賣新聞も、とくとごらんになつたことであろうと思いますが、これは議會に對して答辯するのではない。世界に對して現内閣答辯しなければいかぬ。片山首班内閣がさようなトリックを行うておるかいないか。事が眞實であるか否か。世界答辯なさらなければいかぬ。よくお續みになつて、そして當局大臣と御相談になつて、一日も早く、あればこういうふうに改める。なければ當局のお方がソンレイ氏の言葉は間違いだということを發表なさらんことを、日本の國際信用のために祈つておきます。
  21. 松永義雄

    松永委員長 ちよつと北浦君にお尋ねしますが、經濟査察官の臨檢檢査等に關する法律案質問はないのですか。
  22. 北浦圭太郎

    北浦委員 その點は私はしません。他の同僚からします。
  23. 松永義雄

    松永委員長 花村君。
  24. 花村四郎

    ○花村委員 片山總理大臣に對して若干質問をいたしたいと思います。そこで先ほどの刑法の一部改正に關する問題についてでもありますが、首相の職務權限についてのご意見がきわめて不明確であつたように考えられますが、要するに内閣總理大臣職務權限は、その大綱憲法によつて規定せられており、その憲法規定せられた大綱に基いて國家行政事務を運行していくということに相なろうかと思いますが、いかがでしようか。
  25. 片山哲

    片山國務大臣 その通りと思います。
  26. 花村四郎

    ○花村委員 そうしますると、この刑法の一部を改正する法律案の二百三十二條の問題にはいるのでありまするが、これは天皇その他の皇族方の名譽を毀損した場合においては、内閣總理大臣が代わつてその告訴權を行うのである。こういうことでありまするが、殊にその告訴をする權限代理權にあらずして、内閣總理大臣自身の権限であると、こう政府委員答辯されております。そこでこの親告罪の告訴に關しまするところの權限は、これはよく煎じつめて考えれば、個人の權利なんである。すなわち名譽を侵害せられた人が、その侵害に對して保護の請求をいたしまする意味において控訴權の發動を求むるところの請求權、これはもう刑事訴訟法上明確に相なつておるのでありまするが、名譽を毀損された個人に與えられたる請求權である。でありまするから、縱つてこれはこの改正刑法においても、天皇という個人の名譽を毀損したというな場合いに、その個人の請求權を内閣總理大臣が行う、こういうことに相なりますることは、これはもう疑いないと思うのであります。そういうことに相なりますると、先ほどの内閣總理大臣は、内閣總理大臣職務權限は、その大綱憲法によつて決せられると、こういうことを認められた。そうするとこの私の保護を求めるところの請求權の行使を内閣總理大臣からおやりになるということは、もちろんこれは憲法權限の中にはいりますまい。これはお認めになるでしようか、どうでしよう。
  27. 片山哲

    片山國務大臣 先ほど花村君のご質問にお答えいたしました事柄でありまするが、もう一度申して見ますれば、天皇日本國の象徴である、こういう條章が憲法の冒頭にあるのであります。國民象徴として尊敬も受け、また歴史的な傳統も十分その中に加味せられた特殊なる地位をもたれておる。舊憲法のように國の元首ではない。統治權の總攬者ではないが、なお象徴たる地位をもたれておる。これが憲法に明らかになつておるのであります。その象徴たる地位が毀損せられたり侵害せられたるというような場合におきましては、やはり内閣總理大臣たる立場において、國家の益を維持し、治安を守り、國民道義心を尊重し、國民感情を維持する上から申しまして、侵害されたる法益を擁護するというような方法を講ずるということは、職務上必要になつてくるだろうと思つております。
  28. 花村四郎

    ○花村委員 そうしますると、内閣總理大臣は、ここに天皇に關する名誉毀損の規定を設けた、その名誉というのは、要するに國家象徴たる地位を毀損されるということが名譽毀損罪である、こうおつしやられるのですか。今のお言葉で言えばそう解釋できる、國家象徴たる地位を傷くるというようなことであるから、内閣總理大臣代理するのだ、こう今おつしやられたのだが、そうすると天皇の名譽というのは、國家象徴そのもののことを意味する、こう承知してもいいのですか。
  29. 片山哲

    片山國務大臣 そのもののみとは先ほども申します通り限定はいたいしておりません。いろいろ廣い意味において解釋されてよかろうかと思います。
  30. 花村四郎

    ○花村委員 そうすると天皇以外の皇后も、皇太后も、太皇太后も、皇子もあるのだが、天皇以外のこういう方々は、國家象徴とは何の關係もないというのは言い過ぎかも知れませんが、嚴格な意味に言えば、國家象徴じやない、象徴とは嚴格に關係がないと言うていいと思う。そうすると、こういう方々に對して、あなたはどうご説明なさるのですか。
  31. 片山哲

    片山國務大臣 それはどうも花村君も少し言い澁つておりましたが、そう機械的には解釋されまいと思う。やはり天皇の尊屬である皇太后、あるいはきわめて緊密な関係をおもちになつておられる一家族の方々に對しましては、天皇象徴たりと考えるということから演繹いたしまして、國民尊敬を受けなければならない、得の皇族としての一連の關係において保護されておるのであるます。これは國民心持ちとして、また道義の上から申しまして、禮儀を尊重するところを重要に考えておる日本國民感情であろうと思うのであります。そういう意味から申しまして、天皇をお守りするという意味において、十分考慮していかなければならない事柄であろうと思います。
  32. 花村四郎

    ○花村委員 そうするとこれはどういうことになりますか。廣い意味にも解釈できるというのですが、結局これは天皇その他の個人としての名譽を毀損するというのが法益でありましよう。あるいはそうでなくて、國家象徴たる天皇とでもいれなければ天皇はわからないが、要するにこの條文天皇という御身分の高い方に對しまする個人の名譽を毀損した場合、あるいはその他の皇族の方の個人の名誉を毀損した場合これがすなわち法益ではないでしようか。
  33. 片山哲

    片山國務大臣 それらを包括して象徴たる天皇及びその御家族、個人たる立場においてに名誉毀損をするというような一連の關係において、國民としてあるまじいような事項がある場合においては、先ほど申しましたような國民道義心と治安というな點から、内閣總理大臣告訴權を行使する、こういうふうに御理解願いたいと思います。特にここへそういう注釋をつけたり、枕詞をつける必要はない、そういう意味において常識的に考えられる事柄であろうと思います。今までの法文の書き方、表現のしからたから申しましても、そういうことを付け足しをしなくても、大抵表れていると思つております。
  34. 花村四郎

    ○花村委員 そうしますと、ここの名誉毀損に關する規定は、これは御承知のように個人の名譽毀損罪を脳桁規定の中に、この條文が入つている。もし首相の言うがごとく、國家象徴たる地位を重く見てやられるということなら、これは特別罪としてほかの方へ設くべきではありませんか、それはあなた矛盾しはしませんか。國家象徴であるその象徴に重きをおいて、そしてここへ名誉毀損の罪を設けて、しかもそれは内閣總理大臣が代行するのだということになれば、これは特別罪として特別の規定を設くべきものじやないえすか。個人の名誉毀損の章へ入れてあるが、そこへ何もかもぶちこむということは、これは少くとも理論上も不穩當であるのみならず、立法技術から言つてもこれはよくない。そういうことをあなたお氣付きにならないで、それでいいとおつしやるのですか。
  35. 片山哲

    片山國務大臣 個人であるがそういう地位をもたれている方であるが、特別に扱うほどでもない、新憲法精神から申しまして、その人間性と國民性を十分に考えていかなければならない、國民渾然一體となつて國民の中に生きられて、國民とともに苦勞をされているその特殊性考えていくというところに味があるのです。その味を十分に活かしていくためには、特別規定として切離して規定することは、きわめてその本旨に反することである。特に内閣總理大臣は、その特殊性考え告訴權を行使するということを表すことで十分である、かように考えております。
  36. 花村四郎

    ○花村委員 どうもあまりはつきりいたしませんが、そうすると、そういう特殊性をもつた方の名誉毀損であるから、内閣總理大臣はそれに代わつて告訴權を行使する、そうするとその告訴權の性質はどうでしようか。普通一般の個人のもつている告訴する權利と同じですか違いますか、それはどうでしよう。個人の名誉毀損に對するいわゆる親告罪のここの個人がもつている告訴する權限告訴請求權と、ここにいう内閣總理大臣公使せんとする告訴請求權と、その請求權の内容が違いますか。
  37. 片山哲

    片山國務大臣 そういうむずかしい法理論になつてまいりますと、政府委員が専門的な立場からお答えするのが適當かと思いますが、包括的に申して見ますならば、個人の場合においては個人のみの法益侵害、傷をつけられたとか、面罵されたとかいうような、その限定されたる範囲内においてそれを囘復するための告訴權を行使するということになるでしようが、この場合にはもう少し廣く考えられる告訴權の内容じやないかと思います。すなわち天皇の特別なる立場を十分に守るということと、個人的な侵害されたる法益を擁護するという立場と一體になつたと告訴權ということになりますが、法理的解釋その性質等については、別個に御答辯いたしたらよかろうと考えます。
  38. 花村四郎

    ○花村委員 こういう重大問題に對して、これはこまかい質問ではありまするけれども、内閣總理大臣よりもむしろ政府委員の方が適當だなんということを内閣總理大臣から言われるのは、まことに私は心外だと思う。むしろ政府委員よりも自分みずからが進んで答辯するというくらいの熱意をもたなければならぬのじやないかと思う。殊にここには内閣總理大臣が代わつて行うと規定してある。この重要なる問題をあなた輕く扱うとは何ごとですか。そういう觀念が、要するにこの現行刑法における特別罪をむげに削つたというような思想が、そういうところから流れてくるのである。これは國家の重大な問題だ。全國民の頭にかかるこれは重大な問題だ。少くとも天皇に關する問題ではありますけれども、これはすなわち全國民に關する問題なのである。こういう重大なる問題に對して、政府委員答辯を求めるのが適當だというようなことで、まず第一に内閣總理大臣條文の改正に對して何らの理解ももたず、熱意ももつていない。でありまするから、われわれとは考えが違うのだ。こういう重大なる問題を審議するにあたつては、あんたもお忙しいところではあるけれども、ここへ煩わさなければいかぬということになつた。あなたは簡單に考えておるが、これは間單じやありませんよ。重大な問題である。内閣總理大臣のただいまの説明によると、親告罪の告訴の請求權というものは、今日までは要するに一つであるということは、法理の上から何ら疑う餘地はなかつたのでありますが、今日内閣總理大臣説明によつて、もう一つこの告訴請求權というものに形の變つたものが出てきたわけですが、そうするとそういう請求權がどの法條に認められておるか。それを指示してご説明願いたい。
  39. 片山哲

    片山國務大臣 花村君は少し誤解されておると思うのですが、私はその法理的解釋を政府委員に譲ると言つたのであります。法律論を闘わし、法理論を相ともに論ずるというようなことは、政府委員の方からご説明してよろしいかろうという意味であります。私の告訴權に對する考えとしては、法益侵害は個人的な立場と、象徴としての立場と、二つの包括せられたるものを廣く考えてよろしい。しかしそれは告訴權はないのであります。告訴權一つであるがその内容においてはこういう場合もあり、こういう場合もある。すなわち二つの法益がそこに出てくる。告訴權はその内容を一つにすべきであるというふうに限定する必要は少しもないと思います。天皇の名譽侵害を十分守るためには、そういう二つの面から考えてよろしいと思います。それがまた國の政治を行う上にいえても必要であり、妥當である、かように考えておるのでおります。それを内閣總理大臣たる地位において行うということは必要なことである。その意味における條文であると解釋してよろしいと思うのであります。
  40. 花村四郎

    ○花村委員 いや私が誤解しているのじやない。それは内閣總理大臣が誤解しておる。私は何もここで議論や討論をやつておるわけじやない。内閣から出されたこの法案に對して、眞劍味をもつて劍討をしておる。政府説明を聽いておる。どうしてこういう條文を設ける必要があるか。どうしてここへこういう條文を設けたのか。この法律をつくる上において必要なる審議をやつておる。それを何かここで法律上の議論や討論でもやつておるように考えられておる首相の考え方自體が、私は間違いであると思う。ただいま首相の言われるごとく、この親告罪の請求權に大體において變りがないということであれば、こういうやはり告訴をするがとき請求權を内閣總理大臣が行う。そういう權限を——先ほど大體内閣總理大臣職務權限憲法の條章によつてきめられておるのであると言われたのでありまするが、憲法の條章のどこを見ても出てこない。内閣總理大臣は、なるほど行政事務に對しましては、一般的にこれを統轄はいたしていくのでありまするが、少くとも司法權や立法權に對して千與のできぬことは明瞭であるそういう方面に對する権限をもつておらぬということは、憲法の上でも明瞭に相なつておるのであります。でありまするから、おのずから行政に關する國の仕事をやつていくという面に、その職務權限が限定せられるべきでありますることは、これは當然であります。しかるにもかかわらず、こういう告訴をするというような個人のもつておる請求權までも内閣總理大臣が行使ができるというようなことは、これはきわめて越權行為である。こんなことまで内閣總理大臣がやらなければならぬということになれば、何から何まで皆手を出さなければならぬことになる。今日のように内閣總理大臣職務權限ですらも、すでに荷が重過ぎるというので、相當に政治の面においても手ぬかりがある今の片山閣總理大臣がそうだというわけでもありませんが、とにかく内閣總理大臣職務權限からいうて、なかなか仕事も多い。しかるにこういう個人的の告訴をするがごとき請求權までももたせるというようなことは、必ずしも内閣總理大臣職務權限の上からみて適當ではないのでるまするけれども、その適當であるかないかは別といたして、とにもかくにも憲法において内閣總理大臣の與えられたる職務權限立場からみますると、こういう權限はないと私は斷定してはばからぬと思うのであります。でありますから、もしももちろんそれはこの憲法で與えられた權限を中心として、いろいろこまかい仕事はできるでありましようが、要するにそれは憲法における職務權限から流れてきたところの枝葉であるということであるのであるますけれでも、全然憲法において與えられざる權限を行使ができるというものではない。でありまするから、こういう點から考えれば、まさにこれは違憲に値する規定であると、こう斷定してはばかりませんが、總理大臣はどうお考えになりますか。
  41. 片山哲

    片山國務大臣 結論的に申しますれば、私の考えでは違憲ではないと思います。先ほども申しました通り憲法は国家統治大綱を書くに過ぎないのである。一々こまかいことまで權限を羅列主義でことごとく書いて、憲法の条文に中にないからその權限はないというぐあいに表示していないのであります。大綱を書いておる。内閣總理大臣は、國會によつて與えられたる權限職務なりと考えて、行使いたしておるのであります。これには國家治安を守つていかなければならない。國民道義心を十分に尊重して、正義がすたらないように、時に日本國民感情に即した政治をやつてかなければならない。こういう意味の委託國民から受け、特に國會において指名せられておる。こういう立場から鑑みまして、憲法のもつ精神は、そこまでもあらゆる場合において、漏れなくこれを行使するに、細心の注意を拂つていかなければならない立場におかれておると思うのであります。御指摘のように、まことに責任が重く。その責任の重大なるに日夜苦慮しておるというような有様でありまして、各般にわたりまする仕事を注意してやつていかなければならないのであります。特に今まではわが國の統治權の總攬者であり、一國の元首であつた天皇が、なお國の象徴として、憲法において國民尊敬を十分に受け得る立場になつておる。この規定國民としても、また政治の要を引受けておりますところのものにとりましても、十分に考えていかなければならぬ點であると思います。よつて天皇象徴たる地位が毀損せられる場合、また天皇個人として人間としての名譽を毀損せられた場合において、一國の政治の上に、治安の上に、道義の上に、あらゆる面から鑑みまして、これは十分に守つていかなければならないという結論を得たる場合においては、その政治全體の立場から申しまして、告訴權を行使するということは、政治を行う上において必要なる事項である。かように考えておるのでありまして、憲法違反ではないということを信じております。
  42. 花村四郎

    ○花村委員 大體この問題に對しては、この程度にいたしていきますが、どうも首相のただいまの答辯では承服できませんが、これはひとつ殘しておきます。  そこで先ほど北浦君も質問されたのですが、天皇に關しまする特別罪であります。天皇に關しまする、皇室に關する罪を削除いたした點でありますが、この點についてお尋ねする前に、首相に一言お聽きしておきたいとは、今まであつた皇室に關する罪の規定、また今までありしこの規定の存在は、當然過ぎるほど當然と國民考えておる。否むしろ進んではあるべきことを希望しておつたこう申し上げてよかろうと思う。ところがこれを今囘の改正刑法では削るのでありまするが、この國民の傳統的なる感情に對して、この皇室に關する罪を削るということそれ自體が異常な衝撃を與えるということはお考えになりませんか。あるいは與えるとお考えになりますか、いかがでしようか。
  43. 片山哲

    片山國務大臣 今まで長く我が刑法の中に規定されておりましたる不敬罪を削除するということは、問題であります。國民といたしましても、その變化に氣づくであろうと思います。今のような衝撃という表現が適當しておるかどうか知りませんけれども、大きな問題であるということで、愼重に扱つております。各方面意見を参照いたしまして、新憲法精神に基づいて、主權は國民にありという建前から、國民政治を行つていくという新しき出發をいたしました民主憲法の建前から申しまして、また天皇御自身が國民の中に深くはいられて、先ほどから繰返し申しまするように、國民の中の要素である。渾然一體をなす、こういうような建前から申しまして、特別の扱いをするよりも、一緒にこれを扱つて、しかもここに二百三十一條に書いておるような配慮をすることによつて、十分補い得る。こういう建前から申しまして、刑法の一部改正におきましては、これを削除するということに決定いたしたというような次第であります。問題であつたという點、非常な配慮をして點などについては、花村君の言われる通りでありまするが、現下に情勢と新憲法精神に基づいて、かような取扱をするようになりました點は、十分御了承願いたいと思います。
  44. 花村四郎

    ○花村委員 今日は民主政治が行われることに相なつたのであるまして、殊に民主政治に對しては、内閣總理大臣は非常な熱意をもつておられる、これはまことに結構であります。そこで民主政治はもちろん、これは國民の輿論に基づいて政治をやりますることは、異論のないところであります。國民の意思に聞いて政治をやつていく。これは當然なことで、おそらく内閣總理大臣も異論はありますまいと思う。從まして、こういう重大なる問題を、刑法の改正の一部として取扱う場合においては、やはり輿論の動向ともいうものを察知することが最も必要である。否むしろ民主主義政治から言えば、當然なずべきことである。そうして國民考えがどこにあるか、國民がこの改正に同意するか、あるいは贊成であるかという、その動向を見究めてやるという政治でなければならない。そこで内閣總理大臣に私が今お尋ねをいたしたいのは、そいういう意味である。國民の氣持ちをどうくみ取られたのであるか。國民の傳統的なる氣持ち、感情というものををどう見られたのか。これなくして政治ができましようか。できないことは明瞭である。これを究めて、初めてこういう重大なる問題にとりかかるべきでありますることは當然である。そこで私は尋ねた。ところがあるものの意見を聽いたと言われるが、どういう人の意見で、どの範囲の人でしようか。あるいはそういう意見は聽いたことがないとおつしやるのであるか、その點はどうですか。
  45. 片山哲

    片山國務大臣 十分に世論を尊重いたしまして、世論を察知し、かつまた各方面意見を聽きまして、そうして結論としてこの改正條項というようなことに、政府としては到達いたしたのでありまするが、一々だれとだれに聽いたかというようなことは、ひとつ御容赦願いたいと思います。花村君も十分にお察し願えると思います。洞察力の強い花村君のことでありまするから、大抵おわかりのことと思います。できるだけ世論に即してやつていきたいという點は、まつたく同感であります。
  46. 花村四郎

    ○花村委員 よくわかりました。世論に即しておやりになるお氣持ちのありますることはわかつていますが、世論に即しておらないように、われわれが考えられる點が、もことに遺憾であります。そこで一つ問題になりまするのは、今までの説明これはどうも長くなつてまことにお氣の毒ですが、しかしこれは重大な問題ですし、國民のすべてが深く關心をもつておる問題でありまするから、ひとつその點は御了承願いたいと思います。先ほどからの説明を聽きますると、天皇國民方面からのみ見ておられる。しかし内閣總理大臣告訴權代理の點については、國家象徴を何度も繰返して主張される。しかしこの天皇皇室に關する罪を削つた理由をお聽きすれば、これは國民のうちに天皇もあられるので、國民と同様に扱うということが、この新憲法趣旨に副のであると、こういう御説明である。そこがどうも理論が一貫しないと同時に、また矛盾もあり、われわれも承服できぬ。こういうことになるわけですが、この國民方面から見たあなたの御意見はよくわかつております。でありまするから、その點の説明はお聽きしないでもいいのでありまするが、しかし天皇が一面において國家象徴であり、國家國民の統合の象徴であるとせられており、されにまたわが國の國體觀念からいたしまして、新憲法のもとにおいて、政體は依然として變らぬということは、ほとんど異論のないところでありますが、國體の觀念から見ましても、この長い間、國民の心の奥底に潜んでおりまするところのあこがれの中心として崇めてきたこの天皇、小汚点の卯を中心として今日まで優柔の生命を保つてまいりましたところの、また保つていくところの日本國家、この國家の國體觀念から言うて、これはやはり特殊適地位をどうしても認めぬわけにはいかぬので、特異性はどうしても見逃そうとしても見逃すことはできまいと思う。おそらく内閣總理大臣もそうでありませう。先ほどのこの告訴權の問題になると、いやになるほど國家象徴問題を持出してこられる。それほどまでに内閣總理大臣とこの天皇象徴との結びつきの理論を述べられるその考え方、こういう點から見て、また今日までの刑法においても特殊的な扱いをしておつた。また外國の立法例においても、君主竝びに大統領に對しては、特別なる扱いをしておるという立法例も數多いのである。こういう方面はあなたはちつとも見られない。どうしてあなたはこういう方面を閑却されるのですか。むしろこういう方面から解釋をしていくことこそ、最も必要ではないですか。この特異性、この特徴、この特質というものに重きをおかないで、ただあなたは個人の方ばかり見ておる。個人的な立場ばかりを論ぜられておる、個人的な立場を論ぜられるのもよいが、それはよくわかつております。しかしそういう特質をどうしてお考えになりませんか。これをまたどう解釋なさるか。こういう地位、資格に對して特別なる考え方を與える必はないのであるか、それを私はお尋ねいたします。
  47. 片山哲

    片山國務大臣 個人立場のみに偏して言つておるのではないのです。それも考えまた特殊的立場尊嚴立場からも考えて、結論として先ほどから繰返して申したようなことをお答えしたのであります。決して一方に偏してはないつもりであります。そういう意味で、内閣總理大臣としての立場から告訴權をもつのであるという結論を申しますのに、二つの場合がある。兩方ある。個人的な立場象徴立場とある。象徴立場は特殊的な沿革から來ておる結論である。その結論が憲法一條となつて現れるのである。その特殊性考えないと、第一條も出てこなかつたと思うのでありますが、これが出てきておる。それを私がくどういと言われるほどお答えしたゆえんというものは、特殊性考えたからである。こういうふうに二つの方面からご説明したことを、御了承願いたいと思います。
  48. 花村四郎

    ○花村委員 これ以上はもう水掛け論になるから申しませんが、要するに内閣總理大臣個人國民立場を重く考えられ、この重大な國家象徴であり、また國體の上から言つて國民のあこがれの中心であるという、この重大なる特殊性を、むしろ輕く見たという意味において、まことに私は遺憾の意を表する次第であります。そかしこれはどこまでまいりましても水掛け論でありますから、私はこれ以上申しませんけれども、あなたが考えられるように、こういう皇室に關する特別なる罪を削られることをもつて國民は果たして滿足すると考えますか。私はおそらく滿足しないということを、ここで斷言してはばからない。でありますから、この點は削除するのがよいという首相のお考えでありますならば、それ以上私が申しましてもしかたがありませんから申しませんけれども、しかしこれを削ることは、おそらく國民の多くの人が不滿であり、またまことに感情上おもしらからざるものがあると、ここで申し上げてよかろうと思います。この問題はこれで打切りますが、まだ繼續してやつていいですか。
  49. 松永義雄

    松永委員長 ちよつと速記をやめて……。
  50. 松永義雄

    松永委員長 それでは速記を始めてください。  本日はこれにて散會いたします。次會は明後二十二日午前十時より開會いたします。     午後四時三分散會