○
鈴木國務大臣 ただいま非常に重大な御
質問がありまして、その一部は提案の際お答えをいたしておいたつもりでありますが、問題が大切でありますから、重ねて申し上げることにいたしたいと思います。おそらく諸種の
法律改正のうちで、
民法の
改正が最も重要な
意味をも
つておると申しても過言ではないと信ずるのであります。從いまして、
民法改正の
仕事は、非常に重大な關心を
もちまして、できるだけ廣くあらゆる
方面の
輿論をとり、殊に人口の半分を占めております
婦人の意向、
輿論、
希望、
要求等を取入れまして、
改正することが正しい態度であることは、
加藤議員の仰せられる
通りであります。
政府といたしましても、十分にそういう氣持を持
つておるのであります。御
承知の
通り、その
仕事は根本的にやりますのには、あらゆる
方面の御協力を得、かつ相當の時間を拜借して、
愼重に
審議しなければならないのでありまして、わずか二、三箇月の間にや
つてしまう
仕事というにはあまりにも大きいのであります。そこでこれは
社會黨の一員としては、かねてから根本的な
民法の
改正意見というものをわれわれはも
つておるのでありまして、今も決してそれを捨てないのであります。ただ現在の
政府といたしましては、御
承知のように昨年一年間だけ、今年の十二月三十一日まで暫定的に通用する
民法の
暫定的改正措置というものを
議會の
協贊を經ましていたしておるのであります。そこでどうしてもこの
暫定法が十二月三十一日に效力を失いまするので、これに代るべき
法律を出しておかなければならぬ。それを出しておいて、そうして
民法全體の根本的な
改正はひとつ一、二年の時間をかして十分にやろうじやないか、こういうことに相な
つたのが、今囘提案いたしました
民法の草案でありまして、
ごらんのごとく第
一條から第四編の前までは、ほんの數箇條削る加えるというような、今までの
修正と同じ
體裁でや
つてまいつたわけであります。そこでこの第四編
親族相續につきましても、同じ
體裁で削る加えるでや
つていくはずであ
つたのであります。そういう案ができたのであります。しかるに、どうも加える引くという
改正を出しても、
國民諸君は最も
生活に直接しておる大切な
親族相續の
關係において、
婦人子供までも讀まなければならぬものが、第何條の次に括弧して何を入れる、何を引く、削除するというようなきめ方をしたものを出すだけでは、あまりにも不深切ではないか。そこでそのごく應急的な
改正點だけでありまするが、せめてそれを文章に直して
口語體に改めて、そうして全體を讀めば一應今度の
暫定措置法がどういうふうなものにな
つておるかということが、どなたにでもわかるようにして出すことが、せめてもの深切ではないか。こういうところから、
ごらんのようなものができ
上つたのであります。
そこでただいま御
質問のありまするような七百二十
五條の
親族の
範圍をいかにすべきかということは、あまりにも根本的な大問題でありまするから、今囘の
修正ではふれておらない。ふれておるのは、この
改正要綱に差示されました、また前に
暫定措置として
國會の承認を得ました部分をこの中に入れこんだ。でありますから一方でげたをはいて、他方でぞうりをはいておるという形をとつたことは、率直に
政府として認めざるを得ないのであります。その點は幾多の
根本的修正をこれから加えなければならぬと存じておるのでありまして、實はせめてもこの
議會でなく、
臨時議會がありまするならば、
臨時議會に出すように、いま少しく手を加えたいという
希望を
もちましたが、萬一
臨時議會がない場合は施行すべき
民法がなき
状態に陷るおそれがある。ともかく不完全ではあるが、
暫定的措置でいこう。それでこの
議會にぜひひとつ御
審議を
願つて、一
應暫定措置を完了しておいて、そうして根本的な
改正に移ることにしよう、こういう趣旨でありまするから、どうかこれが決して私
どもがまことによい
法律である、こう主張をいたして出しておるのではないのであります。さようお含みを願いたいと思います。それで新
憲法施行に
伴つてこれだけは少くとも文字の上だけでも改めておかなければ、
憲法の
精神に合わないという
最小限度を改めたにすぎないのであります。こう御
承知願いたいのであります。