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1947-08-16 第1回国会 衆議院 司法委員会 第22号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
二十二年八月十六日(土曜日) 午前十時四十五分
開議
出席委員
委員長
松永
義雄君 井伊 誠一君 榊原 千代君 安田 幹太君
山中日露史
君 打出 信行君 中村 俊夫君 八並 達雄君
岡井藤志郎
君 佐瀬 昌三君 花村 四郎君
明禮輝三郎
君 大島 多藏君
出席政府委員
司法事務官
奧野
健一君
委員外
の
出席者
議 員
武藤運十郎
君 議 員
角田
幸吉
君 ――
―――――――――――
八月十四日
裁判
官及びその他の
裁判所職員
の分限に關する
法律案
(
内閣送付
)(豫第一〇號)
裁判所豫備金
に關する
法律案
(
内閣送付
)(豫 第一一號)の
豫備審査
を本
委員會
に付託された。 ――
―――――――――――
本日の
會議
に付した事件
民法
の一部を
改正
する
法律案
(内閣送)(第一 四號)
罹災都市借地借家臨時處理法
の一部を
改正
する
法律案
(
武藤運十郎
君
提出
)(第一號)
民法
の一部を
改正
する
法律案
の
公聽會
における
公述人
の選定に關する件 ――
―――――――――――
松永義雄
1
○
松永委員長
會議
を開きます。 これより八月四月付託された
武藤運十郎
君
提出
の
罹災都市借地借家臨時處理法
の一部を
改正
する
法律案
を議題とし、
提案者
の
説明
を求めます。
武藤運十郎
君。
武藤運十郎
2
○
武藤運十郎
君 それでは
罹災都市借地借家臨時處理法
の一部を
改正
する
法律案
の
提案理由
を御
説明
申し上げます。
委員
の皆樣は
法律
の
專門家
でありまして、私
ども
の先輩でございますから、釋迦に説法のような感がありますけれ
ども
、順序といたしまして、まず
改正
さるべき
現行法
の概略を申し上げたいと存じます。なおこの
現行法
につきましては、ただいま
司法省
の方に印刷したものがございますので、取寄せて皆樣のお
手もと
に差上げることにな
つて
おります。 まず
戰災地
の
借地借家關係
を調整いたします法令といたしましては、
昭和
二十年七月十二日
勅令
第四百十一號の
戰時罹災土地物件令
というのがありました。これは
戰時緊
急
措置法
第
一條
に基きましてできた
勅令
であります。この大體の内容を申し上げますと、この
戰時罹災土地物件令
の適用されるのは、
罹災地
の
土地
と
物件
に限るのであります。
疎開地
を含んでおりません。これは第
ニ條
に
規定
してあります。 第二にこの
勅令
によりまして、
從來
ありました
借地權
は、その進行を停止されることにな
つたの
であります。いわゆる
借地權
の
冬眠状態
といわれるものでありまして、これは第三條に
規定
がありました。 第三には、この
勅令
によ
つて
、
居住者
、
借家人
は、その
燒跡
にバラツクを
建築
して住まう
權利
が與えられました。四條の第一項でございます。
地主
または
地主
が建てない場合には、
地主
から
第三者
がこの
土地
を借りまして、
バラック
を建てるということも許されております。四條の四項にそのことが
規定
されてあります。ところが御
承知
の
通り
、
終戰
になりまして
戰時緊
急
措置法
が廢止せられましたので、
從つて
その基礎を失いました
戰時罹災土地物件令
という
勅令
もこれを廢止しなければならない運命に立ち至
つたの
であります。そこで
罹災土地
、
疎開土地
の
借地借家關係
を調整するために、新しく
法律
を設ける必要が起りまして、去る九十
議會
に
司法省
から
提案
をせられましたものが、ただいま
改正
をされようとしておりますところの
罹災都市借地借家法
であります。これは御
承知
の
通り
、さきの
戰時罹災土地物件令
と違いまして、
戰災地
だけでなく、
疎開地
の
借地借家關係
をも含んでおるのであります。そのことは第
一條
に
規定
がしてあります。それから第二に、
舊令
――
條文
にも
舊令
という
言葉
を使
つて
ありますので、廢止に
なつ
た
戰時罹災土地物件令
を
舊令
という
言葉
で呼んでおります。
舊令
第四條によりまして、
居住者
、
借家人
の建てた
バラック
及び
地主
より
借地
して
第三者
の建てました
バラック
は、なお向う一年問使用し得る。また菜園その他の
土地
は六箇月使用し得るということが
規定
をせられました。これは第二十九條であります。第三にただいま申し上げました
舊令
に基く
土地
の
使用者
、現に使用しておるものだけでなく、そのほかのものでありましても、
罹災土地
の
當時
の借主は、
土地所有者
に對しましてその
土地
に
借地權
が存在しない場合には、他のものに
優先
をして
建物所有
の
目的
で、この
法律施行
の日から一年間に
限つて借地
の
申出
をすることができる。言いかえますならば、
借地權
の設定を求めることができるということが
規定
せられております。これは第
二條
であります。またその
土地
に
借地權
があります場合には、その
借地權者
に對して、他のものに
優先
して
借地權
の
讓渡
を求めることができるということが
規定
をしてあります。やはりこの
法律施行
の日から一年間、すなわち來る九月の十五日までに
申出
をしなければならないということにな
つて
おるのであります。これは第三條に
規定
があります。第四には、
優先借地權者
、また
優先
してただいま申し上げましたように
借地權
を讓り受けたものが、六箇月内に正當な事由がなくして
建築
に着手しなければ、契約を解除されて、その
權利
を失うという
規定
があります。これは第
七條
であります。次に
疎開地
と
罹災地
の場合でありますけれ
ども
、
疎開地
の
借地權者
は――
借地權
を失
つて
いるものは、先ほど申し上げましたように、
借家人
と同じ立場で
優先
して
借地
の
申出
を
地主
に對してすることができる。大撃こういう
規定
にな
つて
おるのであります。なお枝葉の點でありますけれ
ども
、第十
二條
によりますと、
土地所有者
はこの
法律施行
の日から一箇年以内に、
借地權者
に對して一箇月以上の
期間
を定めて、その
期間
内に
借地權
を存續させる意思があるかないかを申し出るように催告することができるということにな
つて
おります。なお
借地
借家問題についての紛爭につきましては、その
土地
を
管轄
する
區裁判所
の
管轄
に屬す。またただいま申し上げました催告の相手が不明の場合における
公示送達
の
管轄
は、やはりその
土地
を
管轄
する
區裁判所
の
管轄
になるというふうに
規定
がしてございます。
鑑定委員
の
選任任
については、
地方裁判所長
がこれを行うということにな
つて
おるのであります。大
體現行法
はこういうふうな組立にな
つて
おります。なお詳細な
條文
につきましては、後ほどお
手もと
に差上げます
條文
について、十分に御檢討を願いたいと存じます。 さてこれを
改正
する要點でございますが、第一に第
一條
中「
災害
」の下に「又は
火災
、
震災
、
風水害
その他の
災害
」を加えるというのが
改正案
であります。御衆知の
通り
、最近非常に
火災
や
風水答
、
震災等
が多いのでありまして、
内務省警保局
の
消防課
に調べてもらいますと、昨年五月から今年の五月までの一箇年間に、四百戸以上燒けたところが八箇所もあるわけであります。こういうふうに、一朝にして四百戸、千戸というような
建物
が
火災
で燒けたり、
風水害
で倒壞、流失いたします場合には、その
土地
の
借地借家關係
というものは、非常な
混亂
をいたすのでありまして、そのことは、
戰災
の場合と異ならないような
實情
であります。そこでさような
災害
のありました
各地
から、
罹災土地借地借家臨時處理法
と同じ
趣旨
の取扱いをしてもらえないかということが、私
ども
のところへもずいぶん參
つて
おる次第でありまして、なるほど
實情
を聽きますと、これはこの
法律
の
趣旨
を適用して
整理
をいたしました方が都合がいいと考えますので、單行法をつくりますれば一番いいのでありましようけれ
ども
、さいわいに、ここにこういうふうな
法律
がありますから、この第
一條
中の
本法
の適用される
災害
の
範圍
の中に、
戰災
、
疎開
だけでなくして、
火災
、
震災
、
風水害
その他の
災害
を加えることによ
つて
、
簡單
にこの問題を解決し得るのではないかというふうに考えまして、第
一條
の
改正
を考えた次第でございます。 その次に第
二條
中「一箇年」を「ニ箇年」に改める。第
二條
は先ほど申し上げました
通り
、
居住者
、
借家人
が
土地
の
所有者
に對して
借地權
の存在しない場合に、
優先
的に
借地
の
申出
をすることができるという
條文
でありますが、一年間はこの九月十五日でおしまいになりますので、これを
延長
をしなければならない。その
理由
はまず第一に、この
法待
は
司法省方面
、あるいは
辯護土會方面
におきまして、その
普及徹底
に
十分努力
を傾けておられるのでありますけれ
ども
、それにもかかわらず、
本法
による
優先借地權
のあるということを、まだ十分に理解をしておらないものもありまして、
從つて
その
優先借地
の
申出
をする
權利
を行使しておらないものが非常に多いのでございます。第二に、最近におけるインフレーションの異常な
高進
、
資金
、
資料
、
勞務
の
不足
及び
建築許可
の困難というような
事情
は、ますますはなはだしくな
つて
まいりました。また地方に
疎開
しておるものにつきましては、轉入難、
交通難
、食糧難、
旅館難等
のために、
疎開地
または
避難地
から
燒跡
に尿
つて
くることは、
本法制定當時
りも一層困誹とな
つて
まいりました。特に
東京
、大坂、名古屋その他の大都市になりますれば、なりますほど、
建築
が復舊しておりません。特別の小地域を除きましては、ほとんど大
部分
が
燒跡
のまま殘されておるというような
實情
でございます。かような次第でありまして、
居住者
、
借家人
の中には、來る九月十五日までに
優先借地
の
申出
をすることの非常に困難なものが多いのでございます。そこでこの
權利
を十分に
保護
してやるために、
本法制定
の
趣旨
を
實現
させるために、この
申出
をする
期間
をさらに三年ないし五年延ばしてもらいたいというような
要望
が非常に多いのでございます。しかし三年、五年ということは、非常に長いことでありまして、
復興
の
状況等
も考慮いたしまして、とりあえず一年問だけ
延長
して樣子を見たらどうか、その上でなお
延長
する必要がありますれば、さらに
延長
をすることにして、とりあえず一年問だけ
延長
をしたい。こういうふうに考えましたことが、第
二條改正
の
理由
でございます。 その次には第
七條
であります。ただいま申しました
通り
、インフレの
高進
、
資金
、資材、
勞務
の
不足
及び
建築許可
の
制限等
によりまして、
建築
はますます困難であります。
せつかく優先借地權
によりまして
借地權
を得ましても、それから六箇月以内に
建築
に着手をいたしませんと、その
權利
を失うということにな
つて
おりまして、これは非常に苛酷だと考えます。そこでその
期間
を一箇年に
延長
しよう、こういうのが第
七條改正
の
理由
でございます。 その次には第九條でありますが、先ほど申し上げましたように、
現行法
におきましては、
戰災地
と
疎開地
とを區別いたしております。隣り合
つて
おりましても、
戰災地
の
借地人
は
冬眠状態
から
覺め
ると同時に、
當然借地權
を
自分
のものとして行使することができるのでありますけれ
ども
、
疎開地
は
借地權
が一應消滅したいというふうに考えているところが非常に多いのでありまして、そのために
隣同士
であ
つて
も、
疎開者
の方は、
疎開地
の
借地權者
はそこへ當然尿
つて
きて家を建てることができない。それを
地主
がいいことにして、ほかへ高い
權利
で賣りつける、あるいは元の
借地人
に貸しつける場合でも
權利金
を高くとるというようなことでありまして、非常に不公平であります。申すまでもなく
強制疎開
は、
戰災
とその意義をまつたく同じうするのであります。すなはち
丙者
とも誤れる戰爭の犧牲者であり、
自己
の意に反し、あるいは不可抗力によりまして、
借地
上の
建物
を失つたものでございます。ゆえに
強制疎開地
の
借地權者
が
戰災地
の
借地權者
と同樣に
保護
されなければならないことは申すまでもございません。しかるに
本法
はただいま申し上げましたように、
戰災地
の
借地權
についてはこれを
借地權
として
保護
するにかかわらず、
強制疎開地
の
借地權
につきましてはこれを消滅したものとして、ほとんど
保護
を與えていないという
實情
でございます。これはまことに公平を失した不合理の處置と申さなければなりません。第九條は、
強制疎開地
の
借地權者
に對して、
疎開
で
失つた借地權
の
目的土地
につき
借地權設定
の
請求權
は與えてはおりますけれ
ども
、これははなはだ不十分でございます。のみならず
目的土地
の上にすでに
建物
が建てられている場合には、その
權利
を行使することができないというわけであります。
強制疎開地
の
借地權
と
戰災地
の
借地權
とを區別する
理由
といたしまして、前者は
疎開
の際
借地權
の
補償
を
國庫
から得ているが、後者はこれを得ていないというように申す沓がございます。なるほどその
通り
でありますけれ
ども
、これは單なる概念的な
法律論
でありまして、
實情
に適しないと考えます。もしそういうふうに申しますならば
戰災
者は
建物
に對する相當多額の
戰爭保險金
、これは
保險會社
を通じてなされた
國家補償
でございますけれ
ども
、これを受取ることによ
つて
ある程度
借地權
の
補償
を受けたということができるのであります。しかも
疎開
による
借地權
の
補償
は一方的であり、きわめて少額のあてがい扶持でありまして、
借地權沓
はこれを一種の
戰災
を觀念し、戰爭後は
當然借地權
が
自分
に戻
つて
くるものと考えない限り、決して
默つて收
まるはずはなか
つたの
であります、ゆえに
借地權者
の大
部分
は、
疎開
の
間借地權
が
補償
され消滅させられたことを知らないで、
強制疎開
によ
つて建物
は除却されたけれ
ども
、
戰災
と同じく
借地權
はいわゆる
冬眠状態
にあるけれ
ども
、存續するものと考えている者が非常に多か
つたの
であります。しかるに當局は
昭和
二十年四月ごろに至りまして、御
承知
の
通り
、突如として
疎開
を解除し、
借地權者保護
のために、何ら
法制的措置
を講ずることなく
土地
を無
條件
で
地主
に返してしまいました。非常に喜んだのは
地主
でありまして、
地主
はただちにこの
土地
を高い
權利金
をと
つて
第三者
に貸してしまいました。借りた
第三者
の中には
自己
のための
建物所有
を
目的
とする者もありましたけれ
ども
、中にはこれを奇貸として
土地
の買占めをしました
惡質ブローカー
も非常に多いのであります。これがために
地主
と
ブローカー
が不當な利益を得まして、
借地權者
は意外にも
借地權
を
失つて路頭
に迷うという
實情
も、非常に多いのであります。また
強制疎開地
の
借地權
もただいま申し上げましたように復活をいたしますと、すでに
建物
が建
つて
いる場合には、
現状
を變更することによ
つて混亂
を生ずるというようなことを申している者があります。しかしその點は
戰災地
についてもまつたく同樣でありまして、もしその點を
理由
として反對しますならば、
戰災地
の
借地權
もこれを否認しなければならない。これは
借地借家人
を
保護
することを
目的
とする
本法そのもの
を否認することになるのであろうと考えます。
本法改正
はこの
條文改正
と同じ
趣旨
の御
意見
は去る九十
議會
におきまして
本法審議
の際にも強く主張せられました。
東京辯護士會
からも、本院に對しましてその旨の
陳情
があ
つたの
であります。私
ども委員
としてこの
陳情
を受けたのでございますけれ
ども
、
法案
がすでに何ゆえか
貴族院
で先議をされまして可決をされておりました。そうしてまた
司法省
の方はその
成立
を非常に急ぐというような
客觀的
な
事情
もあつたためにその
實現
をみることができなか
つたの
であります。われわれは非常にこれを遺憾としましたけれ
ども
、しばらく
法運用
の經過を注視することにいたしまして、
原案
のまま修正をしないで
通過
したのでありますけれ
ども
、不幸にしてその後の
状況
は
裁判所
、
裁判外
におきまして
疎開地
に關する
借地
借家問題が續出して、かつその解決が困難をきわめるという
實情
でございまして、いかにこれを
改正
する必要があるかということがおわかりになると思うのでございます。また
戰災建物
の
借家人
及び
居住者
が
舊令
によ
つて
その
居住權
を
保護
されますごとく、
疎開建物
の
借家人
及び
居住者
も同樣にその
舊令
によ
つて
、その
居住權
を
保護
されなければならないことは、
借地權
の場合と異らないのであります。以上が第九條を
改正
したいという大體の
理由
でございます。 その次に第十
二條
第一項のお
手數
ですが、印刷してあります
原案
に印刷の間違いがございますから、のちに御
訂正おき
を願いたいと思います。「第十
二條
中「一箇年」を「ニ箇年」に改める。」こう書いてありますが、「十
二條
第一項中第一項」という字が拔けております。また一箇年をニ箇年に改めるのにニ箇年の箇が筒いう字が書いてありますけれ
ども
、
一つ棒
を引いていただきたいと存じます。これは誤植でございます。「十
二條
中「一箇年」を「ニ箇年」に改める。」これは第
二條
、第
七條
の
改正
と大體
理由
を同じくするものでございまして、これによ
つて借地權
を
保護
すると同時に、
地主
をも
保護
しようとするものであります。 第十
二條
の四項中「
區裁判所
」を「
地方裁判所
」に改める。第十八條中「
區裁判所
」を「
地方裁判所
」に改める。第十九條第
ニ項
中「
地方裁判所長
」を「
地方裁判所
」に改める。これはいづれも御
承知
の
通り區裁判所法等
の
制定
に伴いまして、この
法律
中
區裁判所
の
管轄
にな
つて
おるところを
地方裁判所
の
管轄
とし、
地方裁判所長
とな
つて
おるところを
地方裁判所
とすることになるのでありまして、ただ
條文
の
整理
というような
意味合
のものでございます。第二十九條第一項中「一箇年」を「ニ箇年」に改める。この
趣旨
はこれまた第
二條
、第
七條
、第十
二條等
の
改正理由
と同じでございまして、
復興状況
その他とにらみ合わせまして
期限
を
延長
するという
趣旨
でございます。なお附則といたしまして、その
法律施行
前に、先ほど申し上げました
舊第九條
に基いて
裁判
、調停または
裁判
上もしくは
裁判外
の和解により、すでに確定したものは、その
效カ
を妨げられないというふうにいたしまして、たとえ九條を
改正
して
疎開地
と
罹災地
とを同じように扱うといたしましても、すでに解決濟みのものはそのままとして遡及いたしません。これらの問題について、この九條を
改正
して
戰災地
と同じように
疎開地
をも
保護
しようというのが
趣旨
でございます。大體ただいま御
説明
申し上げましたことが、この
改正案
の
提案理由
でございます。 これは私の
提案
にはな
つて
おりますけれ
ども
、申すまでもなく、
各地
からかような
改正
の
要望
がございますので、便宜私がこれを集約
整理
いたしまして、
改正案
を
提出
した次第でありまして、決して私個人の
意見
というわけではないのでございます。特に先ほど來申し上げます
通り
、この
法律
は九月十五日で
優先借地
の
申出
をする
期限
が切れるのでありまして、これをこの
國會
で
改正案
が
通過
しませんと、先ほど申し上げましたように、
せつかく
の
優先借地權
の
申出
をする
權利
を失わせてしまい、この
法律
の意圖した
借地借家人保護
の
目的
の大半が失われてしまうというような
實情
でありますので、ぜひともこの
國會
におきまして
改正案
を
通過
させたいと考えておる次第でございます。 この
改正案
を出すにあたりまして、
鈴木司法大臣
と私は
面會
をしてこの
趣旨
を申し上げまして、全幅的な御
贊成
を得たのであります。
司法省
からも
期間
の
延長等
につきましては、成案をも
つて
おるのでありますから、もしいるようならば、全部
資料
を提供してもいいというような非常に好意のある御
意見
がありましたので、私もカを得て
改正案
の形をつくつたわけでございます。その後
司法省
の
事務關係
の御
意見
を承
つて
みると、大體
趣旨
としては御
贊成
のようでありますけれ
ども
、技術的な
方面
において多少の御
意見
があるようにも承
つて
おります。私が先ほど來申し上げました
通り
、この
法律
の
改正
によりまして
罹災都市借地借家人
の
保護
を意圖した
居住者保護
、
借家人保護
という
趣旨
が完全に
實現
されますならば、それで
目的
を達するのでありまして、技術的な
方面
や字句の
訂正
というようなことにつきましては、私は決して固執するものではございません。特に
當委員會
はその道の
專門家
の諸君が非常に多いのでありますから、むしろ私の
提案
というよりも皆さんの御
協力
によりまして、この
趣旨
を
實現
いたしますように御
盡カ
をいただきたいと存ずる次第であります。殊にこの
法案
は
議員提出
の
改正案
としては第一號でありまして、第一番目のものであります。
憲法
が
改正
になりまして
議會
が自主的な
立法府
としての權能を回復した次第でありまして、
從來
は御
承知
の
通り法律案
の
提出
は
政府案
が壓倒的に多く、またその
通過率
も
政府提出案
が非常に多くて、
議員提出案
というものは數も少いし、
通過率
も少いというのが
從來
の例でございましたけれ
ども
、
舊憲法下
におきましてはとにかく、新しい
憲法下
におきましては、ぜひ
議員提出案
というのが今後續々と出まして、それが
國會自身
の
立法府
の權威によ
つて成立
をいたしますようにいたしたいと考えている次第でございます。 まことに不完全な
法律案
であるかも知れませんけれ
ども
、どうかさような
意味
におきまして、皆樣の御
協力
と御
審議
によ
つて
、この
改正案
が
通過
をいたしますようにお願いいたしたいと存ずる次第でございます。まことに
簡單
でございましたけれ
ども
、
提案理由
の
説明
に代える次第でございます。
松永義雄
3
○
松永委員長
暫時
休憩
いたします。 午前十一時二十二分
休憩
――――◇――――― 午前十一時三十一分
開議
松永義雄
4
○
松永委員長
休憩
前に引續き
會議
を開きます、
民法
の一部を
改正
する
法律案
に對する質疑を進めます。この際
委員外
の方の
發言申出
がございます。これを許します。
角田幸吉
君。
角田幸吉
5
○
角田幸吉
君
政府委員
にお尋ねを申したいのであります。
憲法
二十四條によりまして
平等相續
、
分割相續
が行われることになりまして、それに基きましての
政府
からの
民法
の一部
改正法建案
が
提出
されておるのでありますが、
分割相續制度
、
平等相續制度
というものを徹底的に行いますと、とかく小
企業
に至るまで
企業
が
細分化
されまして、ときに
企業
が窒息するというようなこともあり得るのであります。そこで大
體外國等
におきます
分割相續制度
、
平等相續制度
というものを一貫しております
文明國
の
法制
によりますと、ある國におきましては、遺留分の
減殺請求權
を認めない制度によ
つて
、
財産
の
分割化
、
企業
の
分割化
ということを防止しておる國もあるようであります。また
農村
だけにつきまして、
農村
の
農業財産
について、
農業家産法
を
制定
して、實施しておる國もあるようであります。また
農村
の
財産
に限りまして、
一子相續制度
をと
つて
おる國もあるようであります。わが國におきましては、
從來家督相續制度
、すなわち
獨占相續制度
が相續法の中心にな
つて
まい
つたの
でありましたが、これは
憲法
二十四條の
至上命令
として
改正L
なければならなくな
つたの
であります。そこで
政府
におかれましては、
農業
といわず、商業といわず、工業といわず、相續のた
ぴごとに相續
によ
つて
分割
され、ときに
企業
が窒息するようなことがあり得ると考えるのでありますが、この點につきまして、
提出
されました
民法
の一部
改正法律案
に現われたところを見ますると、何らの考慮を拂
つて
いない感がするのでありますが、
政府
におかれまして、この點についてどういうお考えでありますか、お尋ね申し上げたいのであります。
奧野健一
6
○
奧野政府委員
その點につきましては、
農業資産
はわが國の
現状
から鑑みまして、あまりに農地の
細分化
ということになりますと、すべての
農業者
がとも倒れにな
つて
、日本の
農業
というものが成り立
つて
いかないおそれがあるということで、
農業資置
については
特別法
を出すことにいたしておりますが、しからば他の
企業等
についても同じではないかということであります。この點につきましては、現在までのところは、
農業
のように痛切に入れるには當らないのではないか。また將來この
法律
の
施行
の結果を見て、そのときにいろいろさらに研究をしても遲くはなかろうということで、特別な
手當
をいたしませんのであります。ただ遺産の
分割
と申しましても、九百六條、九
宙七條
にありますように、場合によりましては
家事審判所
は分劑を禁止することもできます。また遺言で
分割
を禁止することもできます。それのみならず、
分割
をする場合でも、必ずしも現物を
分割
する必要なく、
適當
な承繼者に
企業
を承繼せしめて、他の相
續人
に對しては、借金のような形で、他の
共同相續人
に公平にいわゆる
金錢
その他の
財産
によ
つて
、分配するということもできるのでありまして、これらのやり方によ
つて
、
企業
の
細分化
を防ぎ得ると考えますので、
農業
以外の點につきましては、一應それらの
手當
をいたせなかつたわけであります。この點はしかし將來賓施の曉において、そういう必要を認めるようになりますれば、その點については、さらに研究いたしたいと考えております。
角田幸吉
7
○
角田幸吉
君
農業資産
について特別の措置をとられる
法律案
を
提出
する御豫定であるということを承
つたの
でありますが、
農業
の資産について、どういう性格のものをお出しになる御豫定でございましようか。たとえば家産法的な性格をも
つて
おるものでありましようか。それともしからざるものでありましようか。なお相續法に關連いたしまして、相續法の不合理を合理化しめるには、相續法にこれを
規定
するのが相當であろうと思いますが、この點に對して御
説明
願いたいのであります。
奧野健一
8
○
奧野政府委員
相續法は一般すべての人に關する
規定
で、
農業資産
だけについては、
特別法
でこの特例を設けるというやり方をいたしたわけであります。しかして
農業資産
の相續の特例に關する
法律案
は、すでに皆さんのお
手もと
に行
つて
おるかと考えますが、要するに
農業資産
は
分割
しないことにして、必ず一人に承繼せしむることにいたしたのであります。しかして
農業資産
は一人に承繼することになりますが、相續法の關係におきまして、その
農業資産
を承け繼ぐ人の分が、その農家の全部の
財産
の半分と、それから殘りの半分を他の
共同相續人
に
分割
するものといたしまして、半分のほかの半分について、相
續人
が數人おれば、その數に應じて相續がわかれるわけであります。でありますから、結局
農業資産
を承繼する者が半分と、その殘りの半分のうちの
自分
の持ち分とを合わせた額より以上に、かりに
農業資産
の價額があるものということになれば、その超過の
部分
だけは他の
共同相續人
に金踐の形によ
つて
分配する。結局半分だけは遺留分があるわけでありますから、結果において必ず
法律
で遺言をしたと同じような建前になるわけであります。半分をその
農業資産
を承繼する者にや
つて
、その殘りを法定的に分配する。すなわち
農業資産
を受ける者は半分と、それから殘りの分については百分の持分と、そういうふうにすることは、この
民法
の建前でもできるわけでありますが、
農業資産
については、
法律
で遺言をやつたと同じような結果になるわけであります。それだけの取り分を認めて、
農業資産
はそのままに一人に承繼せしめる。
農業資産
がそれだけの取り分より以上であつた場合は、それだけの超過の
部分
を他の
共同相續人
に分配せしむる。それは金で分配する。
農業資産
がそういうふうに超過してお
つて
も、全部これを
分割
はしないで、一人に承繼せしむるというふうな考えでできております。
角田幸吉
9
○
角田幸吉
君
農業資産
ということで、これに對する措置は大體承
つたの
でありますが、たとえば
農業
とは何ぞやという問題が、本案については重大な問題であると思うのであります。御
承知
のように
土地
の
細分化
と
土地
制度と相續制度につきまして、非常に惱み拔きましたのは、中部ヨーロッパ諸國であつたと思うのであります。中部ヨーロッパのオーストリア、ハンガリーにおきまして、
土地
を對象とした特殊の相續法を
制定
いたしますると、牛五頭を持
つて
おつた者にはこれが對象にならぬ。こういうことであの地方において大分
混亂
したようであります。日本におきましても、さて
農業
とは何ぞやと申しますと、わからなくなると思うのであります。たとえば妻が百姓をしてお
つて
、夫が村役場の書記でおつたというような場合で、雙方の牧收入で生活を立てておつた場合には、これは
農業
と見るかどうか。あるいは主たる生計の根據が
農業
によるということになりますると、
從來
は
農業
で生活ができてお
つたの
であるが、最近四、五年間は田舍の商賣の方が主で、その方で生活ができておるというようなことになりますると、これがまたいつの間にか
農業
が商業に變
つて
いく。こういう次第でありまして、いやしくも相續法のごとき重要な
法案
に至りますと、私の今日までいろいろ考えてまいりましたことによりますと、農葉とほかの職業との區別というものは、ちようど頭と顏の境がどこであるというあの問答と同じように複雜化してまいるのでありますが、
農業
とは何ぞやというその
法律案
につきまして、
政府
においていかなる定義を與えて爭いをなからしむるように
規定
しておりますか、承りたいのであります。
奧野健一
10
○
奧野政府委員
この點はいずれ
農業資産
相續特例法の
審議
の際に農林省等から
説明
があると思いますが、特例
法案
では、
農業
とは、耕作、養畜または養蠶の業務、これに附隨する業務を含んだものを
農業
ということにして、全體の
規定
ができているのであります。
角田幸吉
11
○
角田幸吉
君 そうするとそれだけでは、一つの判例であるとか、常識であるとかいうものがまとまらぬうちは、
農業
と
農業
外のことは明瞭にな
つて
こないと考えられます。たとえば一段歩畑をつく
つて
おりまして、炭燒をしておつたという場合には、これは
農業
になりましようか、なりませんかというようなことが問題にならうと考えます。また繰返しますが、夫がからだが弱いために村役場の書記をしている。妻は畑をしているという場合には、
農業
になりましようか、なりませんでしようか。そういう場合の御
説明
をこの際願いたいと思います。
奧野健一
12
○
奧野政府委員
これはいずれ
農業資産
相續特例
法案
が正式にここで
審議
される際に、農林當局その他とよく打合わせをしてお答え申し上げたいと思います。
角田幸吉
13
○
角田幸吉
君 わが國の
農業
の
企業
だけが
細分化
されることを憂えるだけでは足らないのでありまして、工業において、商業において、漁業においても
企業
が
分割
されて、
企業
が窒息していくというようなことは、現在において同樣であろうと思うのであります。そういうふうに考えますと、
農業
だけにこの際こういう特殊の
法律
をつくりまして、そのほかはしばらく研究の課題にするというようなことをなさらないで、
政府
はこの際におきまして、相續法全部についてこれらについての對策を考えられることが公平でもあり、法典の體裁もよろしい。またこれが
民法
の中に
規定
されますと、
民法
法典としての體をなすと思うのでありますが、この點につきまして、もう一度
政府委員
の御
説明
を願いたいと思います。
奧野健一
14
○
奧野政府委員
商工業等についても、いろいろ考えたのでありますが、商工業者は概して農民よりは
法律
的な思想に富んでいる。そこでおそらく遺言の制度を農民よりは商工業者の方が多く利用するのではなかろうか。しかして全般的に考えて、今後共同相續になりますので、遺言の制度がいろいろ利用されることになると思いますが、遺言を利用することによ
つて
、
細分化
の防止ということは、ある程度できるのではないか。ただいま申しましたように、
農業資産
につきましても、結局は
民法
の
規定
によ
つて
遺言をすれば、この
農業資産
特例と同樣なことをなし得る建前にな
つて
おりますが、農民が遺言するということは、概して少かろうということで結局法定的造言のような
法律
をつく
つて
いるわけでありますが、商工業者の方においては、遺言制度の活用によ
つて
目的
を大體達し得るのではなかろうかということと、先ほど申しましたように、
分割
にもいろいろのやり方があ
つて
、場合によ
つて
は
分割
を禁止することができるし、あるいはまた一人のみに承繼せしめて、他の者については金で分配するという方法もありますから、それらを活用して、大體農地以外の場合においては
適當
に
目的
を達することができるのではないかという
意味
で、農地以外の點については、今ただちに特別の
手當
をいたさなかつた次第であります。
角田幸吉
15
○
角田幸吉
君 ただいまの御
説明
によりましても、たとえ商工業、漁業者が遺言をいたしましても、
改正案
によります千二十八條以下のことは妨げることはできないのであります。すなわち最後の
減殺請求權
を侵すことはできないのであります。その點は
農業
も一向變りがない。
農業
においても遺言すればよいというような結論に到達するように考えられるのであります。殊に商工業者につきますしては、相當法的知識があるといたしましても、漁業という
方面
に至りますと、私の雜駁な考えをも
つて
申しましても、この方は農民以下の
法律
知識しかないのであります。なぜそれならば漁業家について御考慮を拂
つて
おらなかつたか。この點について承りたいのであります。
奧野健一
16
○
奧野政府委員
農地の
細分化
ということが非常に叫ばれて、農地の
細分化
を何とか防止する
手當
をいたすことにな
つたの
でありますが、水産業ということになると農地の
細分化
とは、少しく趣を異にするように思われるのであります。これはおそらくむしろ他の一般の
企業
と同じようなもので、農地の場合はこれを細分すれば事實
細分化
できる。そう細分されることによ
つて
は、いろいろ
農業
がや
つて
いけないということが考えられるのでありますが、
企業
の場合においては、これを
細分化
することはほとんど技術上できないのではないか。あるいは一人が承繼して、他の者に對してはいろいろな出資の形でやるとか、あるいは
金錢
の形で他の者に對して債務を負擔するというようなものに自然ならざるを得ないと思ぅ。そういう
企業
を細分することは事實上ちよつとできない。これに反して、農地はいくらでもこれは細分し得るものでありますから、これについて特に細分を防止する制度をつく
つたの
でありまして、他の水産その他は一つの
企業
を細分することがむつかしいのではないか。結局結果において
企業
が細分されることはないのではないかというような
意味
もありまして、農地だけについて細分を防止する特別の
手當
をと
つたの
であります。
角田幸吉
17
○
角田幸吉
君 もう少しそこを承りたい。
企業
と申しましても、水産
企業
の遠洋漁業であるとか、あるいは養殖であるとかいうことにな
つて
まいるのでありますが、
農業
企業
、水産
企業
、商工
企業
の内容には、
自分
の住宅な
ども
含まれた
意味
において行われておるのであります。そのために
企業
の資産はその間
分割
できない覿念で、
企業
というものが、今日運用されておるように思うのであります。そういう
意味
におきまして、
農業資産
につきましても、畑だけではいけないので、やはりそこにおいて家が必要なのであります。漁師が海藻をとる場合、やはりそこの海邊に家がなければいけないのであります。そういうものも私
ども
は
農業財産
というほかに、今日の實際から申しまして、
企業
の一部をなすものだ、こういうふうに考えなければ
企業
が成り立たないと思うのであります。そういう點からいろいろ考えますと、どうしてもこれは
農業
だけにこういう
法律
をおく。殊に商業といいましても、運送業もあるのであります。
農業
と商業との區別、そのわかれ目がどこだかわからない程度のものもあり得るのでありますから、そういうものは、
農業
の
細分化
だけでは困るのではないかというようなことになるのでありますが、やはり日本の今日の急務は、あらゆる
企業
を、大
企業
ではありません――相續法の對象として見て、われわれは商工農の
細分化
も併せて防せぐということを考えましての
企業
の
細分化
の防止というねらいをとらなければならないと思うのであります。この點につきまして、
政府
におかれまして、もう一應全般的な御研究をくださることをこの際お願いいたします。 もう一つ、これはおそらく
政府
におかれましても、そこまでお運びになるまでには、關係筋との交渉もありましようし、いろいろ審査中の御苦心もあつたでしようが、私は現在の日本の相續法の大きな缺點と申しますのは、きわめて不公平な構成にな
つて
おることだと思う。たとえば養子ですが、養子の相續分と申しますると、養家の相續分も相續いたしまするし、實家の相好分も相續するという不合理があるのであります。また妻は夫の
財産
、すなわち婚家の
財産
の相績をいたしますと同時に、實家の相續分も相續する、こういう相續法上の不合理なものが一つ殘
つて
おるのであります。御
承知
のごとく、明治
民法
施行
前におきまする慣習によりますと、遺産相續權は同居家族以外の者にはなか
つたの
であります。
當時
の考えによりますと、相續というものは扶養と表裏をなすものである。戸主は同居の家族に對して扶養しておるのであるから、その對償として相續をするのである。こういう考えでまいつたようであります。明治
民法
施行
前におきましては、他家にある者は遺産相續權がなか
つたの
であります。明治
民法
におきまして、遺産相續に限
つて
、家にあるとないとにかかわらす認めてあ
つたの
でありますが、こういうことについても反省をしなければならない時期に到達したと私は思うのであります。もう一つお考えを願いたいことは、そういうふうにしてまいりますと、今度
民法
が
改正
いたされまして、そして實際上は戸籍法におきまして、婚姻をいたしまするとばらばらになるそうでありますけれ
ども
、日本の家族生活の實相は、ただちにそうはまいらないで、やはり同じ家で父あるいは母とともに働いていくところの者があると思うのであります。そういうことから考えますと、どうも相續につきまして、むしろ遺留分の
減殺請求權
を認めない。父がある相
續人
の一人に對しまして
財産
を贈與または遺贈をした場含において、他の相
續人
から不服の申立ができない。これをいわゆる英國流に改めて、ただそれをどこまでも貫徹いたしますと不合理がありますから、ちようど今度
政府
におかれまして立案されました離婚の場合における
財産
分與の
請求權
と同じような形態において、何らかの途を開く、こういうふうにいたしまして、初めて日本の相續法の公平がいたされるのではないか、家族間における
財産
管理というものは、
現行法
で
規定
いたしましたように、あまり白紙に黒い線を引いたようなはつきりした關係ではなく、こういうふうにした方が公平だと考えることに相續の誤りがあろうと思うのでありますが、この際
政府
は
減殺請求權
を認めないで、他に便法を認めることについて、ひ
とつ
お考えを願いたいと思うのでありますが、これについて御
意見
をお聽かせくださることができましたならば承りたいと思うのであります。
奧野健一
18
○
奧野政府委員
相續制度全般にわた
つて
、大體現行の遺産相續の制度を一應そのまま承繼いたしました結果、養子が實家及び養家の兩方の相續をいたす。あるいは配偶者が兩方の相續をするというようなことは不公平ではないかという議論、これは一應現在の遺産相續の
規定
をそのまま承繼いたした結果、そういうことにな
つて
まい
つたの
でありますが、この點はさらに研究檢討を重ねていかなければならないと考えております。 なお遺留分の制度をやめ、遺留分の減殺という制度もやめて、自由に一人にでも遺贈ができる、そのかわり他の相
續人
はその分配を請求することができるということにしてはどうかという御
意見
を拜聽いたしたのでありますが、もしそういうふうにいたしまして、長男が全部遺産をもらつたと假定しますと、他の相
續人
は、その長男に對して分配の請求を
家事審判所
等にいたしまして、非常にそういう紛爭が起る可能性がある。その點が心配になりますので、やはり、ある一定の相續分なり遺留分というものを一應きめて、その間の關係を明確にしておいた方が、爭いが起らないでいいのではないか、なるほど
適當
に話し合
つて
分配をしてもらうということも、あるいは
實情
に適した結果が出る場合もありましようと思いますけれ
ども
、そうするとことごとに分配請求の紛爭が起きるのではないか、その點を心配いたしまして、御
意見
にはただちに御
贊成
はいたしかねるというふうに考えております。
角田幸吉
19
○
角田幸吉
君 それでは私の質問はこの程度でやめておきます。
松永義雄
20
○
松永委員長
午後一時まで
休憩
いたします。 午後零時五分
休憩
――――◇――――― 午後二時十八分
開議
松永義雄
21
○
松永委員長
會議
を開きます。 これより
民法
の一部を
改正
する
法律案
の
公聽會
の口述人の選定について御協議いたしたいと思います。參考としてお手許に
申出
委員
の一覽表を差上げてございますから、ごらんを願います。 〔速記中止〕
佐瀬昌三
22
○佐瀬
委員
この際問題の出し方について一言申し上げておきたいと思うのであります。ただいま配付を受けた各希望者の氏名表の中にも記載されてある家督相續廃止に對する贊否という問題の出し方では妥當でなく、しかも不十分のように考えられるのであります。この點について
委員長
が
公聽會
を司會される際に、
適當
な善處を望みたいと思います。
松永義雄
23
○
松永委員長
ただいまの佐瀬昌三君の御
意見
ごもつともと存じますので、善處いたしたいと思います。
明禮輝三郎
24
○明禮
委員
こういう一つの
公聽會
というものは、ある問題の中心をとらえることが必要なんでありますから、家督相續廃止とい
つて
も、今の
憲法
から直覺的に何も觸れるものはないのでありますから、かえ
つて
討論する人の考え方すべてが、やはりこういつたようなはつきりした題案が、私はかえ
つて
よろしいと思うのであります。あるいはここへ家督相續制度という
言葉
を入れれば入れるくらいのものでありまして、そういつたことはいいですけれ
ども
、これが全然
意味
のわからないものにもしなるとするならば、非常に演説する人もやりにくくなるしするから、何も表面に押えられている問題でありませんから、でき得る限りこういう家督相續制度廢止の可否というようなことでや
つて
いただきたいと私は思います。そうでないと、またわき道へそれたりして
意味
をなさないと思います。
佐瀬昌三
25
○佐瀬
委員
ぜひこの點
委員長
の御發言の
通り
、
適當
な形に御善處願うことを希望しておきます。次にこの候補者の中から公述者として何人を選び出すかということについては、性別とか、職業とか、あるいは地域とか、年齡とか、諸般の
事情
を斟酌し、かつ最近行われた參議院の成績にも鑑みまして、衆議院としても選擇上相當注意を要する點が多々あると思うのであります。
從つて
それらをお含みの上で、具體的な人選については、
委員長
の方において、
適當
に按配されんことを希望いたしておきます。
松永義雄
26
○
松永委員長
ただいま佐瀬昌三君の御親切な御注意に對しまして、できるだけ考慮して選定にはいりたいと存ずるのであります。ちよつと速記を止めて……。 〔速記中止〕
松永義雄
27
○
松永委員長
ただいま御協議の結果によりまして、性別、年齡別、職業別、地域別及び文書による
意見
の内容等を考慮いたしまして、
委員長
の私案を申上げます。ちよつと速記を止めて……。 〔速記中止〕
松永義雄
28
○
松永委員長
服部 美登 梶原房子 久布白落實 酒井進太郎 八木 孝平 木下 薫 渡邊 美惠 立石 芳枝 小宮濃清子 米山 精一 以上十名は
贊成
者側です。 小田島禎次郎 松波 治郎 石橋善太郎 清水 猛 杉山 俊夫 禰津 義範 江川 芳光 佐藤 忠夫 小林 喜録 眞本 一雄 以上反對者側の十人、以上贊否各十名づつ計二十名の諸氏を
公述人
として選定するに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
松永義雄
29
○
松永委員長
それでは以上の諸氏に決定いたします。本日はこれにて散會いたします。次會は明後十八日午前十時より開會いたします。 午後二時三十七分散會