○
安田委員 本
民法改正案は、
現行民法典中において、新
憲法の
規定竝びにその精神に反する部分を、とりあえず
最小限度において修正せんとするものであ
つて、
民法典全體の
根本的改正は他日に期せられておることは、これを
承知いたしておるのでありますけれ
ども、
民法典の
根本的改正ということは、なかなか容易ではございませんので、この
民法の
改正案は、少くとも今後
相當の長い間われらの
私法的法律關係を規律するきわめて重大な
法典をなすものと申さねばならぬと思うのであります。かかる重大な
法典の
改正を、きわめて
短時日の間に完了すべきことが要請せられ、その
審議の
方式としましても、三讀會の
方式によらず、ただちに
一括質問によ
つて、急速に
審議せられることを餘儀なくせられておるということは、私のまことに遺憾とするところでございます。しかしながら、すでに
審議の
方式も決定したことでありますから、私はこれに從いまして、若干の
質問を、できるだけ要約して申し上げたいと思います。ただきわめて重大な
法案でありますから、必要な
質問點を略するわけにはまいりませんので、長くなりまして恐縮でありますが、御
辛抱願つて御
答辯願いたいと思います。
私が
政府委員にお答えを願いたいのは、
立案者として
研究された事項、その
研究に基いてかくのごとき案を
立案せられるに
至つた事情を承ること、これが
一つ。いま
一つは、この
民法を
實際に行う場合において、
行政部としてその
實施の結果についてどういう結果が起るかという見透しを承ることにあるのでありまして、それ以上の
判斷は私
ども立法者としてこれを行うべきことであると
考えるのであります。從
つて深遠な理論を承
つたり、あるいはこれについて
議論を闘わすというようなのとは興味のあることではありますが、いたずらに時間をとるのは
質問の目的でない、かように私は
考えるのでありますから、私の
質問の場合におきましては、
議論にわたる點はなるたけ避けたいと思います。
政府委員におかれましても、なるたけかような點はお避けくださ
つて、不親切で、ぶつきらぼうと言える
程度で結構でありますから、
簡單明瞭に要領だけを御
説明願つて、時間を儉約していただいて、なるたけ全部の點について
質問できるようにしていただきたいと思います。
それから次に
改正案の作成には
相當の
審議機關を設けられまして、非常に愼重な
研究を重ねられたと承
つておりますが、それもなおかつ本
法案のごとき重大な
法典の大
改正には、不十分な點があると
考えるのであります。殊にいろいろな
事情から幾たびも草案を改められて、ここに提出せられておるところの
法案は、きわめて
短時日の間にまとめ上げられたものであるということを承
つており、またこれは書類の上からもはつきり看取できるのであります。その結果
法規の
實質におきましても、また
法規の
形式におきましても、幾多
立案者が氣のつかれない不備な點が殘されておるように拜見いたすのであります。これらの點はどうか本法が私
どもの新しい
立法の
出發點をなすまことに大切な大
法典の
改正でありまして、この
法典がこれから多數の法令の制定の規準をなすものである。かように
考えますので、私
どもは協力一致して
實質的にもまた
形式的にも、最も正しいよい
法典をつくり上げるということに心がけねばならぬと
考えますので、これまでの例で見たように、
立案者としてくだらない面子や行きがかりにこだはることなく、
虚心坦懷にほんとうの腹をお話くださ
つて、氣がつかなか
つた點は、氣がつかなか
つた、足りない點は足りなか
つたと率直にお認めくださ
つて、十分な
意見の交換を行い、もし修正した方がいいというようなものがございましたらば、
政府委員におかれましても、十分御
考慮にな
つていただいて、
立案者の出したものを特に私
どもが修正するというようなことはなるたけ避けたいのであります。できますならば
立案者におかれまして
考慮の上、改めて修正の案をおつくりになるというようなこともお
考えを願
つたらいかがか、さような
態度に出ていただきたいと私は
考える次第であります。特に本
法案は
短時日の間に
口語體で書き直されたのでありまして、
用語の點におきましても、不統一と
考えられる點が多々あるのであります。この
言葉の小さな點を一々
指摘して申し上げるということは、本
委員會としてはあまりに小さなことのようで、いかがかと私も
考えるのでありますが、よく
考えてみますと、この
民法典の
用語が、これからの
立法の
用語例をなすものであります。同時にこの
立法の際には大したことではないと
考えられる不用意な
言葉の使い方が、御
承知のごとくしばしば
將來解釋上の大きな
疑義を殘すことともなるのであります。私は氣のついた點は
用語のきわめて小さい點につきましてもお尋ねをいたしたいと思うのであります。どうかこれらの點も率直にお聽き取りくださ
つて、改むべきものは改めるという
態度をと
つて進んでいただきたい。かように冒頭に
希望を申し上げる次第であります。かような建前で以下順を追うてお尋ね申したいと思います。
第一點は
民法の七百二十
八條に關連をいたします。七百二十
八條の第二項に
夫婦の一方が死亡した場合において、
生存配偶者が
姻族關係を終了させる
意思を表示したときもまた同樣である。すなわち
姻族關係が終るという
規定がございます。この
民法七百二十
八條の
姻族關係を終了させる
意思表示というのは、
姻族關係を消滅させるという重大な
法律關係を生ぜしめる
意思表示でありますが、この
意思表示は、
相手方のある
意思表示であるかどうかという點を承りたい。もし
相手方のある
意思表示であるとすれば何人に對してなさるべきものであるか、それからこれは
第三者に對しても大きな
利害關係を及ぼす重大な
法律關係の變動を生ぜしめる
意思表示でありますから、何らかの
形式を必要とするのではないか、同時に
公示方法を要求せられねば不都合ではないかということが
考えられるのであります。この點につきまして御
答辯を願いたい。