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佐藤(藤)
政府委員 現行刑法の名
譽毀損罪のうちには、二百三十條に、公然
事實を摘示して人の名譽を毀損した場合を
處罰しております。そのほかに二百三十一條に、事実を摘示しないで公然人を侮辱した場合を
處罰する
規定と相成
つておるのであります。公然
事實を摘示しないで、つまり
事實を摘示しないで公然人を侮辱するというような事例はごく少いのであります。そうして
實際の事案もごく
輕微であるので、この際
一般の二百三十條の刑を高めると同時に、特定の場合にはその
犯罪の成立も阻却するような
規定を設けたのでありますから、この際
事實を摘示しないで人を侮辱する單純なる侮辱罪の
規定の第二百三十一條はこれを削除するのが相當であろうというところから、これを削除いたしたのでありまするが、しかしながら、この點はすでに存する
規定を削除するのでありまして、將來に對する影響も
心配せられまするので、前の姦通罪の
規定を削除するのと同様に、これは最高の立法機關たる國會において二百三十一條を削除するのが相當であるか、あるいはこれを依然存置するか、あるいは場合によ
つては刑を高めるのが相當であるかというようなことについて、よく御檢討くださいまして、この
改正案に對する御審議をお願いいたしたいと存ずるのであります。殊に
外國の
君主、
大統領、外交使節がわが國に滞在しておる間に、それらの者に對して
事實を摘示しないで公然侮辱を行
つた場合の
規定も、一様に削除いたしておりますが、この二百三十一條の
規定を削除いたしますると、その外交使節等に對して公然侮辱行為が行われた場合に、その人
たちの名譽を保護する
規定が存しなくなりますので、そういう點から
考えましても、二百三十一條の存廢については、
委員各位におかれましても、愼重に御檢討くださいまして、贊否を決せられたいと存ずるのであります。