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栗栖國務大臣 滯納の状況その他について申し上げます前に、いま一度ちよつと
國民所得と今度の
課税の推定について、一應先に申し上げておきたいと思います。先ほ
ども御説の通り
國民所得を十分に算出しまして、それに對して
課税の見定めをするわけでございます。それもいたしますと同時に、實はこれは今朝もこの席で申したのでございますが、税を課する場合には、各
税務署で大體見込みをつけさせまして、それを
財務局から
大藏省へと全國を一本にまとめまして、それと裏表にして實は算定をいたしておるような次第でございます。しかしこの
方法がもつと科學的にできないかということは、戰爭中の混亂、終戰後の混亂ということによ
つて、よほど
基礎が動いたのであります。
先ほ
ども申しますように、この
調査を取りまとめてまいりまして、確實な、科學的な
基礎の上に立
つてするようにいたしたいと
考えております。御了承願います。
それから滯納の問題であります。いま日歩が低い、それに對して市中のいわゆる
やみの金融の金利が高い、そのさやがあるという
お話があ
つたのでありますが、そういう
事實もまさにあろうと思うのであります。しかし金利の點、その他については、いずれ正規の金融機關については、金利調整に關する
法律をお願いしようと思
つております。それから不正規の金融業者に對しては、金融
行政の取締りを強化しまして、これを取締
つていく
方針であります。それを速やかに實行いたしたいと思
つております。そうして滯納の日歩四錢ということは、昔から終始一貫や
つておることではありますが、あまり重くするということも、正常なる
納税者から見るとさらに負擔を課するという點もありますので、むしろこの點は
やみの金融業者を取締るという方面と、金利調整をするという方面と、兩方から深めていつた方がいいのではないか、かように
考えておる次第でございます。
それから滯納の原因でありますが、これは種々あるのであります。一般に
國民が終戰以來
國民の精神等も相當動搖いたしまして、この
納税思想、殊にこういう危機においては
納税思想というものがきわめて大事なのでありますが、それが相當缺けておるということも、まさに
事實であります。道義の廢頽ということから、それが現われておると思うのであります。さらに
税制その他が豫算申告制ということに變
つたのであります。まだ日が淺いし、從來と違いまして十分制度が
國民の間に徹底しない。そこでこれをいいことにして内輪に申告をしておる。そうすればさらに
税務署としては査定をしかえて、更正決定をする、こういうようなことが起きて、よけいな手數をかけ、そのために税の滯納が増しておるという
事實もあるのであります。さらに物納その他の關係において十分手が届けなくて、話合いがつかぬという關係で、實は提供を申し出てお
つてまだ受入れ等ができないというものがある。それが滯納の形式に現われておるのであります。さらに申しますれば、
國民がこういうように
生活に追われておるのでありまして、その資金その他が知らず知らずのうちに、その日の資金に追われて、税としての資金が他に流用されるという點があるのであります。これは
會社その他の
法人におきまして、あるいは入場税その他が滯納の形を相當と
つておるのであります。これはむしろ資金の逼迫その他によ
つて流用されて、それがために滯納の形に
なつたものが相當あるのであります。それから
税務官吏の方から言いまして、何分にも人員を増加しようというのでありますが、なかなか思うように増加できない所もありまして、そういう場合に嚴重な督促をするということが思わしくいかない、これはしかし最近非常にそういうことをさせるようにいたしましたけれ
ども、本人まで至らず、それが滯納の形で現われておるというのがあります。第三國人その他で滯納の形が現われておることもあるのであります。こういうものに對しては連合國の好意ある協力を求めて、税の
價格の決定の際、さらに
徴税までも突き進めていくという形をとることにいたしたのであります。大體滯納の形は今申しましたような種々な方面にわた
つておるのであります。
政府といたしましては、この税を完全に取立てるかどうかが、すなわち
財政が實質的にも健全になるかどうかというわかれ目でございます。單に
財政のみならず、
國民經濟がこのインフレーションの結果破局するかどうかというのも、この點にかかる點が非常に多いのであります。そこで滯納その他に對する督促というようなことは、
税務署の強化ということだけでなしに、
税務行政の運營を刷新しまして、それと同時に
國民運動として
國民の間に十分その趣意その他を徹底させまして、兩々相ま
つてぜひ
徴税の實をあげ、滯納者をなくしよう、こういう
方針でおるわけであります。しかも日數が非常に差迫
つておりますので、
大藏省としては大きな責任を負うておるわけであります。この責任を完遂するために、この四月の間はほとんどそういう方面に、あらゆる税務に關する人々を動員して實をあげたい、かように
考えておる次第であります。