○
野田(卯)
政府委員 タバコの
專賣益金の
増加の
方法につきまして、それを中心といたしまして御
説明申し上げたいと思います。まず最初に二十二年度の本
豫算におきましてどういうふうに
タバコの
專賣益金が取扱われたかということを大ざつぱに申し上げます。もう御
承知のことだと思いますが、これを繰返しますと、本
豫算におきましては
タバコの方から
益金を二百二十六億
程度あげることに
なつております。この二百二十六億圓の
益金をあげますために、どういうような
製品をどの
程度つくるかという問題につきましては、
總數におきまして
昭和二十二年度中に五百十億本を
製造いたしまして、その賣
上高が二百四十九億九千七百
萬圓、約二百五十億圓くらいの賣上であります。それからいろいろな
製造に要する經費、あるいは
葉タバコの買入れ
代金とを引くわけであります。ところがこの
豫算成立によりまして、さらに
專賣局においてこの
豫算がこのまま執行できるかどうかということを
檢討いたしましたところ、必ずしもこの通りにいかないということが明瞭になりました。その
理由の
一つはこの
葉タバコの
收納、すなわち民間の
葉タバコをつく
つておる者から
政府が買上げます
葉タバコの
數量が、
豫定よりも減少したというようなことがおもな
原因であります。それともう
一つはこれはむしろ副次的な
原因でありますが、
電力の
制限が窮屈になりまして、それがために
工場の
作業に
影響を及ぼすと、こういう
理由によりまして年間五百十億本の
製造の
實現が困難であるという結論に達したのでありますが、いろいろ
研究した結果、實行
可能數量といたしまして約五百億本ぐらいはできるということになりまして、普通でいきますと
製造の本數が減るのでありますから、從
つて賣
上高も減少するということになるはずであります。ところが、それでは今日の
國家財政上困るからというわけで、いろいろ工夫をいたしました結果、
數量は約十億本減りましても、
代金は減らさない。むしろ多少殖やすということにな
つたのであります。これは
品種の
轉換——安いものを少くして高いものを多くするという
品種の
轉換をはかりまして、
豫算の
收入としてはむしろ殖えるという計畫を立てました。實行計畫を申しますと、本數が四百九十七億七千三百
萬本、約五百億本であります。それからあがります賣
上高は二百六十八億二千四百
萬圓でありまして、
豫算に
豫定しておりますより、
數量におきまして、正確に申しますと、十二億
圓程度減りますが、この賣
上高におきましては、かえ
つて十八億圓ぐらい
増加する、こういうようなことに
なつておるのであります。この實行計
畫製造高五百億本ということにつきまして、
上半期と
下半期はどうか、
上半期の
實績はどう
なつておるかという問題であります。これは
推定がはいりますが、九月までの
實績は
製造本數が二百五十五億本でありまして、賣
上高が百三十三億圓ぐらいになる
豫定であります。從いまして
下半期におきましては
製造本數が二百四十二億本という
程度でありまして賣
上高が百三十四億
圓程度になる見込であります。こう比較してみますと
上半期よりも
下半期の方が
製造の
數量が減
つてまいるのでこれはおかしいじやないかという疑問を抱かれるだらうと思いますが、この主たる
原因は、
下半期は休日が多い。それから最近だんだん
電力が窮屈に
なつてまいりまして
休電日が相當ございます。この
電力の
制限によりまして、やむなく
作業を休まなければならないといふことが多くなる。こういうような
影響のために、
上半期よりも
下半期の方が
製造が減る、こういうように見積
つております。これが現在の
實情でございます。それに對しまして
増收の計畫でありますが、先般
來追加豫算か相當巨額になり、その
財源を求めなければならないというわけで、
タバコ專賣におきましても、何とかもう少し
益金を殖やせないかといふことを
檢討してまい
つたのであります。
政府部内におきましては、先般七月十一日に一
應追加豫算の
日本側の案というものを閣
議決定したのであります。その案によりますと、
タバコの方から約百四億という
計算になります。こういうような一應の案をつくりまして出したのでありますが、その内容につきましては、すでに前
長官時代にここで御
説明してほぼおわかりであり、また
新聞紙上にも
いろいろ漏れ傳わ
つておるのでありますが、大體におきましてその骨子を申し上げますと、
自由販賣のピース、コロナというものは値上しない。それから普通の
配給の品も値上しない。値上ということを一切やらない。その代りに
家庭配給量を減らしまして、その減らした
部分を
自由販賣にまわす、こういうことを考えたのであります。こういうようなことでありまして、大體百億以上の
收入をあげるという
程度であります。もつともこの計畫は本年の九月から實行するというふうにいたしまして
計算をしたのでありますが、その後實行が遅れております。實行が遅れますと月十五億
圓程度ずつ減る。九月から實行いたしまして、かりに百四億圓ということになりますと、十月から實行するとそこから十五億
圓減つて九十億
圓足らずになるとい
つたようなことでありまして、月々遅れることによりまして一箇月につき十五億圓ずつ減る、こうい
つたようなことに
なつておるのであります。この
増收案に對しましてなおその後いろいろと
檢討を重ねておりますが、四圍の
情勢上、さらにもつと
タバコから
益金が出ないかという問題が起
つてきておるのであります。これに對しまして私
たちが當面しておりますいろいろな點につきまして、簡單に御
説明申しますと、これ以上の
増收をはかろうとすれば、第一考えられることは
數量のことであります。賣
渡し數量の
増加であります。
數量の
増加につきまして、これが
方法といたしましては私は二つあると思います。
一つは
製造數量そのものを殖やすという
いき方と、もう
一つは繰越し高と言いますか、翌期に繰越していく
手持がある。その
手持の繰越し高を圧縮する、少くする。そうしてしぼり出していく。こういう二つの
方法があると思います。この
製造數量を
増加するという點につきましては、
先ほども申しましたように、初め五百十億本というものを
豫定してお
つたところが、實行上どうしてもそれができなくて、五百億本を切るというような
實情に
なつておりますので、今日におきましてこれを急に殖やすことは至難であろうと考えます。一番大きな
原因は、
原料關係にありますが、その他にも
電力の
關係とか、あるいはその他の
關係におきまして故障がありまして、なかなか
製造數量そのものを
増加するには、かなりの困難があるという
實情であります。しからば繰越しの
數量は圧縮し得るかという問題でございますが、これは幾分は望み得ると思います。私の記憶では最近におきまして相當たくさん繰越してお
つたのでありますが、その
數字が確かに五十數億本、六十億くらい繰越してお
つた手持があるという見方をしてもいいのでありますが、そのくらいの
數字であると私は覺えておるのであります。それが最近はどう
なつておるかといいますと、九月末の
推定におきまして、約四十七億本くらい繰越す
手持があるだろうということであります。ところがこれをさらにどのくらい圧縮できるかというわけで技術的に
調査檢討を遂げておりますが、うんと無理をすれば、これが四十億本くらいに圧縮できるのではないか。たとえばここに四十七億本を四十億本ということにいたしますと、その間に七億本の圧縮ができる。それだけ賣
渡し數量を殖やし得るというようなことが見積られる。こうい
つたような
實情に
なつております。この實行につきましてはかなり廣い
範圍で
タバコを賣
つておりますので、よほどうまくやらないと
配給の
圓滑を缺くというようなことも起るのでありますが、一應の
研究した結果を、御
參考に申し上げる次第でございます。
その次に
數量増加のほかに考えられる
方法としては、
自由販賣品を殖やすということであります。
自由販賣品を殖やすということは、必然的に殖やすもとをどこかから求めなければならないということになりますから、
當然に
家庭配給品を減らすということに相
なつてまいります。
自由販賣を殖やしまして
家庭配給を減らすということであります。この
家庭配給の問題につきましてはいろいろな
意見があるのでありまして、
家庭配給を全廢したらどうか。こういうふうに
タバコが切迫してきており、現在の
配給も女が一日一本、男が四本というような
配給では、これはもら
つても四本では一日がまんできない。こうい
つたようなノルマルに近い
配給は全廢したらいいではないかという御
議論も相當にございます。それからまた今度一
應政府が七月十七日に閣
議決定した案によりますと、男が月九十本女が十本ということになります。女が十本ということになりますと、女は三日に一本ということになるのであります。そんな
程度の
配給では
意味をなさぬじやないか、こういう
意味でむしろ女の方をやめてしま
つたらよいじやないかというような
議論もございます。それからまた他には
男女平等論というのがありまして、これは
憲法第十四條に
根據をも
つている
議論でございまして、相
當有力でございます。
憲法では
男女別によ
つて經濟的または
社會的關係において差別をしてはならぬということに
なつております。
タバコの
配給は
社會的か
經濟的かわかりませんが、この
關係におきまして男女平等にすべしという
議論が相
當有力でございます。で男女平等にする場合にはどうするか現在女が三十本、男が百二十本ということに
なつているのを女の分を減らして男にやる、女の分を殖やして平均をとるか、あるいは男の方をずつと減らして
しまつて男も女も月三十本に減らしてしまう、あるいはもつと減らす、いろいろな
方法があるのでありますが、
男女平等論が出てまいりますと、なかなかやつかいであると思うのであります。
しかしながら
憲法第十四條の精神から申しまして、なかなか相當
理窟もあるように思われるのでありまして、私
たちの方の
事務當局では、こういうような
理窟を考えているのでありまして、
配給制度が喫煙の慣習のある者のみを對象とするのではなくて、便宜上その上が實際
タバコをのむかどうかというようなことをあまり究めないで、頭割に割つけているという場合に、男、女というものの一般的な
習慣を
根據として割當てるということは、
憲法違反でないだろう。ところがこれに對して
タバコを吸う
習慣のある者だけを取上げまして、
配給する場合に、女に對しては少くする。男に對して多くやるというようなことになれば、これは
憲法違反になるかもしれないというような
理窟を、われわれ
事務當局としては考えているのでありますが、これはいろいろ
學界などでも各
方面に
意見があるのでありまして、
將來の發展ということはにわかに豫測を許さないというような
實情でございます。
配給につきましては、こういうかなりわれわれが今まで豫想しなか
つためんどうな問題も、
關連をも
つているということを申し上げた次第であります。
次に三番目の
方法といたしまして、
價格の
引上げでございます。
價格を
引上げる場合に、
自由販賣品だけを
引上げるという
いき方と、
自由販賣品と同樣に
配給品をも
引上げるというような
いき方もございます。いずれにいたしましても
タバコというものが、今日におきましては
國民の
消費生活における非常に大きな
地位を占めている
商品でございます。
先ほども申し上げましたように、本年度の本
豫算の計畫におきましても、年の賣
上高が二百五十億圓になる。今度
増收をはかりますとそれに百億増すか、二百億増すかいろいろ
考え方もあると思いますけれども、それによりますと四百億、五百億というような勘定になる
一つの
商品でありまして、賣
上高が四百億、五百億になるというものはほとんどないのであります。米がそれに近づくかもしれませんが、
單一商品におきまして四百億にも、五百億にもなるというものはほとんどありません。それだけに
タバコの
價格というものが、どの
程度にきめられるかということは、
物價に及ぼす
影響がきわめて甚大であろうと思います。
從つて價格の引上について
物價廳その他におきまして非常に
愼重な
態度をも
つて臨んでいる。もちろん
大藏省も同樣でありますが、これは
當然なことでございます。で
自由品のみ上げましても、あるいは
配給品にまでそれを及ぼしましても、いずれにしても
物價に及ぼす
影響はきわめて深刻なものがあります。特に
配給品を
引上げますと、ただちに
生計費に響いてまいります。
生計費に響けば千八百
圓水準に
影響してくる。こうい
つたような
關係をも
つているものでありまして、この點は非常に
愼重に考えなければならぬ。
專賣制度自體から申しましても、だんだん
價格を
引上げることになりますと、
やみ取引と申しますか、
やみの
關係が非常にはびこ
つてまいるおそれがあります。すなわち
タバコの葉を
やみでと申しますか、ひそかにと申しますか、
密栽培をする、あるいは
タバコを
密製造をする。あるいは
やみ取引というような
關係におきましては、現在でも相
當やみの
タバコというものはあるのであります。これは御
承知だと思いますけれども、それがさらにその度を強めまして、これを
取締る側におきましても、最善は盡しますが、非常に
價格上におきまして無理が起りますと、この
やみを
取締ることはさらに困難である、こういう傾向をも
つております。
專賣制自體から申しましてこの點は十分なる
考慮を要する問題だと考える次第でございます。
それから
財政收入を殖やす
方法といたしましては、つけたりですが、
外國の
タバコを入れるという
方法があります。
しかしながこの問題につきましては、最近ちらちら
新聞にも出ていたようでありますが、
外國から
製品タバコを入れるか、
葉タバコを入れるかということになりますが、
葉タバコを入れる場合には、これを内地で
製造して販賣すれば、相當大きな利益が出てくるということは
當然考えられます。また
製造タバコに對しても相當な
益金を見積り得るのでありますが、問題は今そういうものをただちに入れることが、
日本の
國策上から許されるかどうか、あるいは
外貨資金の
觀點からさらに認められるか。また他の幾多の
觀點からもむずかしい問題がありまして、
當分問題としては取上げにくいのではなかろうかと考えております。
以上大
體私たちのところで考えられますところの、
タバコの
益金の
増收方策を項目的に申し上げた次第であります。どういうふうに上げたら一番よいかということは、今
計算したものをも
つておりませんが、
考え方の筋道だけを申し上げて御
參考に供したいと思います。
政府として今後どういう
方法をも
つて進んでいくかということになりますと、この
方法について
政府としてはまだ
態度を決定しておりませんが、いろいろ
研究はしております。しかし結論的にこういくのだということについては、
追加豫算自體の大きさというもの、またその
財源の配分、
財源をどこに求めるかという割振りの問題に
關連してまいりますので、まだ
態度は決定していない
實情であります。
最後に
タバコの
價格の
變更については、
國會と
關係のある問題でありますが、例の
財政法第三條においては「
專賣價格若しくは
事業料金についてはすべて
法律又は
國會の
議決に基いて定めなければならない」ということに
なつております。この
財政法第三條は政令で
施行期日を定めることに
なつており、まだ施行されておらないのでありますが、これはなるべく早く施行すべきものだと考えます。こういう
關係から申しまして
タバコの
價格を上げたり、新しくまた相當高い
タバコをつくるような場合には、
國會の
議決を經べきかどうかという問題でありますが、
日本の現在の
情勢から見て、
價格の
變更というものは非常にデリケートな、いろいろの
關連をもつ問題ですから、この
財政法第三條においてそういうことはむずかしい問題ではなかろうかという議がございまして、
政府部内においても
研究をしている次第であります。いずれにしても一旦
タバコの
値上げにおいて
増收をはかる場合においては、實行が遲れると非常に弊害を生じますと同時に、歳入上においても非常な缺陷を生ずることになりますので、このことも今後の
財政處理の立場から、
愼重に
考慮を要する問題であると思います。たとえ第三條の規定によらない場合においても、もちろん
政府側としては
議會に十分おはかりしてよく納得を得てやるべきものだと考えております。そういう
關連の問題がございますので、合わせてお話し申し上げた次第でございます。あとのいろいろこまかい點については、御質問によ
つてお答えしたいと思います。