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栗栖國務大臣 そういう大きな
支障に今ぶつか
つておらぬのでございますが、私は
いろいろ機會をとらえて、今度の
追加豫算が
財政金融の面にどういう
影響を與えるか、あるいは
財政金融の面からこの
追加豫算をどういうように
考えたらいいか、その他の點についても、とくと皆樣の御
意見を承りたいと思いまして、實はその
機會を
小坂次官にもお願いしているような次第であります。今ここに
機會を得ましたので、今度の
追加豫算その他についての、
財政金融に及ぼす
關係などを少し述べさせていただきたいと存じております。
實は今度の
追加豫算は、
各省の
要求などを合しますと、千億圓をはるかに超えるような大きな
數字でありますが、この
インフレーシヨンを
財政金融の面において切り拔けるということの上におきましては、私はまず
中央の
財政の
健全化をはかる、そしてさらに
地方財政の
健全化をはかるということと同時に、この
金融の面においても、
金融の
健全化をはかる、こういう
三つの面が非常に必要だと
考えているのであります。それを促進する裏におきましては、あるいは
裏づけにおきましては、
貯蓄の
増強ということが非常に必要だと
考えております。さらに
貯蓄の
増強につきましては、
循環的論法になりますけれども、
通貨の
信用をできるだけ維持し、
通貨の安定の線に向
つてできるだけの施策を
考えていきたい、かように
考えたのであります。そうして最初に逢著した問題が今度の
追加豫算の問題であります。
追加豫算は、先ほど申しましたように千億を超える
各省の
要求があ
つたのでありますが、まず
追加豫算といたしてはこの
要求を
收入の
範圍に大體限定をいたしまして、
赤字公債の發行とか、
赤字財政を避けるという面に非常に努力をいたしておるのであります。そうして
收入もしかし漫然たる
收入でなしに、いわゆる
税務機構の強化、いわゆる質とか量とかいうものを強化いたしまして、極力
税務機構の力を發揮いたしまして、しかも平常の
財政においては
考えられないような税の
徴收というようなこと、あるいは
税種というようなことも
考えたいと思
つておるのであります。それで、あるいは
所得税、
増加所得税というものにつきましても、
追求をいたしておるような次第であります。それから
増加所得税につきましては、個人のみならず、いわゆる法人、
會社であ
つて、
インフレ利得を相當いたしておるものに對しても、
随時追求をいたして
調査をし、この
増加所得その他をあげたいと思
つておるのであります。それと同時に、臨時の
所得に對する特別の
課税をいたすか、あるいは
所得税の税率引上によ
つてそれを行うか、あるいはそうでなしに特別の
利得税ということによ
つてその目的を達するかということも、ただいま
研究中でございます。いずれにしましても、そういう
インフレ利得者に對する
課税は手をゆるめないつもりでおるのであります。さらに非
戰災者の家屋、あるいは非
戰災者に對する
課税をも考慮いたしたいと、いま
研究中であります。かようにいたしまして、でき得る限り税の
收入という上に力を注いでおりますと同時に、
專賣のことにつきましても、
專賣益金をあげるために、酒とかタバコ、さらにまた新しい
甘味料に對する
專賣というようなことも考慮いたしておりまして、ただいまいろいろ
研究いたしておる次第でございます。大體ただいまのところ七百億を足るか足らぬかのところで、今囘の
追加豫算はできあがるのじやないか、こういうように
考えております。
それと同時に
特別會計の方の問題であります。これも本
内閣の
緊急對策にありますように、これを黒字化していく、こういうことであります。
特別會計として大きい問題は、
鐵道の
會計、遞信の
會計、それから林野に關する
會計があるのであります。こういうおもな
三つのものについても、極力
經營の
合理化——こういうものは一種の
官業でありますから、
經營の
合理化という點に力を注ぎまして、冗費を省き、
官業でありますから、ただちにこの際
赤字を除くというまでには至らぬと思
つておりますけれども、しかし
一定の年次をおいて、
一定の計畫の下に黒字化してい
つてこれを健全というところに取りもどしたい、こういうように私ども
考えておる次第であります。そして今度の
追加豫算を出します際には、そういうような
特別會計のものも
一緒に合わせて出しまして、皆さまの御
意見を十分に聽き、十分たたいていただいて、協賛を得たいと
考えておるような次第であります。
さらに
金融の面でありますが、まず
國家の
財政から申しましても、今日まで
國家の
財政がただ形式上
つじつまを合わすという點に急であ
つたために、いろいろそれが
金融の面において、やはり隱れて
通貨膨脹の原因をなしておるものが多々あるのであります。たとえてみますと、
政府として
支拂ができない。それがために
金融の面において、
財政資金で賄うべきものが、
産業資金で賄われておる、こういうものもあるのであります。たとえてみますと、
政府の
支拂をするはずだけれども、
豫算に計上が遅れておるとか、あるいは
豫算の
關係上便宜借入金で賄われておる、こういうことは今日までいろいろ調べて見ますと、非常に大きな金額にな
つておるのであります。
復興金融金庫というものがありますけれども、
復興金融金庫の賄いも、全部が全部必ずしも
ほんとうの
産業資金で、普通の
銀行業務としてできないものを賄
つていくというのでなしに、
財政資金の尻を
復興金融金庫が拭
つておる。すなわち
財政資金を
産業資金で拭
つておる。
從つて産業資金が足らざるところのものがある。こういうような點も多多あるのであります。これも私はぜひ改めたい。ぜひこれも健全な所に、常道に取もどすことに努力いたしたい。こういうように
考えておる次第であります。昨今非常に
産業資金が足りないという話があるのであります。これは
事實であります。これも
産業資金貯蓄の
増強という面において、
もつと
もつと
國民にお願いしないとできない點があると同時に、
政府の
財政資金で賄うべきところを
産業資金で賄うために、
産業資金が不足しているという點が相當あるのであります。これも、すでに私がいろいろ申しておりますように、
政府の
支拂の遅れておる點も合理的に
調査をいたしまして、そうして拂うべきものはこれを
拂つて、
財政資金の尻を
産業資金で拭うというようなところを是正してまいりたいと、ただいまいろいろの
手續をいたしておるような次第であります。こういうような、
中央の
財政の尻が
産業資金で拭われ、さらにそれがこの
産業資金を壓するというようなことにもな
つておりますので、これを是正すると同時に、また
地方の
財政が非常に紊亂をいたしまして、そうしてその負擔が大きくて、そうしてその尻をこれは各
金融機關がまた拭
つておるという點も相當あるのであります。各
地方銀行、各
銀行、
日本銀行においてあるのであります。これも同時にその
地方の
財政をも
健全化していきまして、そうしてそういうような
財政資金と
産業資金との
食違いを是正いたしたいと
考えておる次第であります。それと同時に、
地方の現状を見ますとはなはだ寒心すべき點がございますので、そこで何とかこれを是正しなければならぬというように
考えております。そうして、まあ六・三制の問題にしましても、かりに
地方財政に一部を負擔させましても、それは單に漫然と負擔しておくというのでなしに、やはり、
地方財政で税その他の
收入によ
つて賄えるものは賄わしめる、さらにできないものは
起債によるというような場合には、
裏づけのある金、すなわち
預金部その他の
資金をも
つてこれを
裏づけを約束しまして、そうして相當長い
起債をさせて、その結果ただちに
地方民に急激な、そして重い負擔をかけさせないようなことも考慮したいと思うのであります。
それと同時に
金融全體といたしましては、各種の
企業というものも、
國家の
財政と同じように
再建整備の線に沿うて、
經營を
合理化していかなければならぬと思うのであります。これがやはり進まない點が多々あるのであります。この際は
商工當局、その他
産業關係省當局とも連絡をとりまして、
企業再建整備の線に沿うて極力
合理化していく、それと同時に
資金の面においても必要なものは、そういうものの線が進むに應じて出していきたいと
考えるのであります。
赤字金融は極力抑止いたしたいと思いますけれども、
再建整備の點において必要やむを得ない
資金は、これはやはり
考えていきたい、こういうように思う次第であります。
赤字金融を抑止して
健全金融を確立するという點は、大本としてもちろん極力や
つていきたいと思いますけれども、
物價の改訂とか、あるいは
再建整備の途上ぜひ必要な
事業であ
つて、しかも
資金がどうしても要る。その
資金は普通の
金融業としては出せないというような場合も豫想されるのであります。これは大きな面から見まして、例外的にその
金融は取上げて
疏通をはかりたい、こういうように
考えるのであります。もう一度申しますと、私は
赤字金融のごとき不健全なるものは極力避けたいと思います。
企業再建整備とかあるいは
産業のためにぜひ必要なものは、これは例外的に
疏通をはか
つて遺憾なからしめるようにいたしたい、こういうように
考えておる次第であります。かようにしていろいろ
考えてみますと、
健全財政、
地方の
財政の
健全化、
金融の
健全化という點を名
實ともに進めてい
つて、そうして他方において
企業再建整備を進め、
生産の
増強あるいは
傾斜生産に向
つて重點的に力を入れまして、そうして
生産の面と同時に
金融、
財政の面においても
整備をいたしまして、この
インフレーシヨンの波からそれを抑え、さらに進んではこれを救い上げ、新しい
日本の
經濟を再建する方向に向いたいと
考えておる次第であります。
なお平
價切下げその他についてのいろいろ流説も出ておるのであります。現在
通貨の
事實上の
價値が下
つておるということは、これは間違いない
事實であります。しかし
事實上の
價値は、
通貨量と物の量との關におきまして上下するのはこれは常であります。しかし切下げというがごとき
法律上の
手續を經てする
——事實上の
價値が下
つておりますから、今直ちに平價をそれに沿うて切り下げるというようなことはもうとう
考えておりません。
通貨改策としても
通貨の安定、
通貨の
信用を維持するという線に向
つては、
財政、
地方財政、
金融その他の
健全化、
生産の
増強、こういうような點と相ま
つて進んでいきたい、こう思
つておる次第であります。なお
國内的情勢のみならず、
國際的情勢をも取込んで
通貨の安定というようなことも
考えてみたいと思
つておる次第であります。
大體そういうような線に沿うて、またそういうような
基礎の上に立
つて追加豫算を今立
つておるのでありまして、それが非常に重大な
支障にぶつつか
つておるというようなことはございません。ただいろいろな方面との折衝も要しますので、時間がいま少しかかる、こういう状態でございます。簡單でございますが、お答えいたします。