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1947-10-16 第1回国会 衆議院 鉱工業委員会公聴会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十二年十月十六日(木曜日)     午前十時二十分開議  出席委員    委員長 伊藤卯四郎君    理事 大矢 省三君 理事 岡田 春夫君   理事 生悦住貞太郎君 理事 今村長太郎君    理事 澁谷雄太郎君 理事 早川  崇君       衞藤  速君    金野 定吉君       松本 七郎君    萬田 五郎君       生越 三郎君    庄  忠人君       西田 隆男君    長谷川俊一君       三好 竹勇君    有田 二郎君       神田  博君    平島 良一君       深津玉一郎君    淵上房太郎君       山口六郎次君    前田 正男君       高倉 定助君  出席公述人       田中久兵衞君    村本 周三君       平井寛一郎君    植松 延秀君       松井 俊次君    高山慶太郎君       川添 隆行君    黒板 駿策君       中野  實君    久保山雄三君       平岡 達明君    竹内 喜助君       奥田 良三君    長崎銀次郎君       渡邊 一良君    武藤 一二君  出席政府委員         商工事務官   平井富三郎君  委員外出席者         專門調査員   谷崎  明君         專門調査員   保科 治朗君     ————————————— 本日の公聽会意見を聽いた案件  臨時石炭鉱業管理について 本日の会議に付した事件  経済力集中排除法案に関する連合審査会開会の  件     —————————————
  2. 伊藤卯四郎

    伊藤委員長 これより鉱工業委員会公聽会を開きます。  昨日に引続きまして、公述人の陳述を願います。まず金融関係帝國銀行調査部長田中さんから御発言を願います。
  3. 田中久兵衞

    田中公述人 帝國銀行調査部長田中久兵衛であります。金融関係の者といたしまして、簡單考えを申し上げてみたいと存じます。きよう初めてこちらへ出席しましたので、あるいは先日來の公述人方々と重復する箇所もあろうかと思いますが、その点御了承を願います。  今囘の石炭國管案閣議決定に際しまして、総理大臣が発表されました談話によりますと、政府は、この國家管理制度石炭増産緊急対策として立案したものであると申されておるのであります。すなわちイデオロギーによるものではなく、あくまで増産目的とするものであると言明されております以上、問題は、國家管理によりまして増産がはたして可能であるかどうか、という一点に帰着するものであると考えるのであります。これにつきまして石炭鉱業関係者公述新聞紙上で拜見いたしますと、國管案に反対の方々は、官僚独善統制と、企業組織の急変によりまして減炭は必至であると申されております。また一方賛成方々は、國管実施すれば、労働者責任を自覚して生産意欲を増大し、從つて増産が必至であると申されているようであります。私たちはその道の專門家ではありませんから、第三者といたしまして見ました場合、國管実施によりまして増産になるとか、また減産になるとか、はつきり言い切る用意は十分ないのであります。しかし國管制度を採用するにいたしましても、また現在の企業形態のままで進むにいたしましても、とにかく石炭増産されなければならないのでありますから、私たちの今求めておりますところは、何よりも具体的な、実際問題として増産のための緊急対策であります。もちろんこの中には國家管理制度一つの案であるわけであります。從いまして單に言葉の上で増産に確信があるとか、ないとかいう程度の考え方ではなく、國管実施しないで資金資材労務の面に適切な対策を講じました場合の生産可能量と、國管実施することによりまして得られます生産可能量の問題を、十分科学的に檢討されました結果、今日の企業形態そのままを残しておいて、これに対しまして強力な増産対策の手を打つよりも、一挙に國家管理制度を採用することによりまして、より一層石炭増産が可能であるという結論に達しますならば、原則的には今囘の臨時緊急対策としての國管案賛成いたすものであります。しかしこの國家管理法案を見ましても、たとえば増産具体的手段として、施設の関係産業復興公團の機能を活用し、資材関係は、政府が直接斡旋すると申しておりますように、主として物的方面にのみ重点をおいておりまして、私たちが最も重大と考えておりまする炭鉱経理のには、全然触れていないのであります。これはまことに意外でありまして、今後どうして炭鉱経理合理化を実現しようとされるのでありますか。元來國営事業コストの高いことにつきましては、いまさら申し上げるまでもありません。國家資金を使うことによりまして、採算関係を第二義的に考えることにしますれば、金融は放漫に流れ経理面に対しましては格別の努力をいたさず、生産コストは著しく高騰することは必至であると存じます。殊に今囘の國管案臨時緊急対策でありますがゆえに、この点につきましては特に檢討しておく必要があると思われるのであります。從いまして政府増産に対してのみならず、コストに対しても、十分な責任をとつていただきたいと思うのであります。  將來の問題を考えますならば、炭鉱業特殊性でありますところの長期計画とにらみ合わせて増産することが必要でありますから、何でも石炭を出しさえすればいいという施策を実行されますと、私たちが数年間にわたりまして目の前に見てまいりました、戰爭中の軍需生産の急速なる増強を目標としまして、各種産業に対しましてとられました増産のための強行政策と同一の結果をもたらすという憂いが十分あると思うのであります。  次に今日金融面、すなわち資金難石炭増産に対しましてきわめて大きなブレーキになつておると言われておるのであります。政府は今後石炭金融に対する融資につきまして、どういう措置をとられようとされるのでありますか、これまた公表されていないのであります。これに関しまして、ただ商工大臣新聞社座談会で話されたところを見ますと、今後の融資國家が直接行う、かつその方法は本社を経由せず、直接山へ流すと申されておるのであります。炭鉱の場合は復興金融金庫融資と心得ますが、私はここで國家融資の可否について申し上げようとするのでありません。今後の炭鉱融資はきわめて巨額を要しますがゆえに、特に資金効率的使用ということについて考えてみたいのであります。元來國家融資は杓子定規的に、また画一的になりやすいのでありまして、資金効率的使用というものについては、ほとんど考えていないのであります。もちろん形式的には考えましようが、実質的には考えたことになつていない結果が現われておりますことは、すでに定評のあるところであります。簡單に申し上げますと、金を借りるときは手間がかかるが、借りてしまえばあとが樂だと言われるようなことがあります。健全な資本主義経済におきましては、資金は自動的に、オートマテイツクに、効率的に使用されるものであります。統制経済におきましては、効率的に使用されることに最大の努力を拂わなければならないのであります。今囘の國管案は強力な統制実施されようとするのでありますから、現在最も重要な資金取扱力に関しまして、十分研究していただく必要があると思うのであります。今での國家融資と同様な考え方をもちましてこれに当られますならば、資金はきわめて巨額でありますだけに、わが国インフレーシヨンの現状から見ましても、また將來石炭鉱業あり方から見ましても、重大な結果をもたらす懸念があるのであります。  最後にわが國におきましては、官僚組織民主化という点につきましては、まだ手がつけられていないという状態であります。こういう際に國管を実行しようとするのでありますから、いかに法案の上で民主化をうたい、民主化機関を設けましても、実際に民主化されるかどうかは、結局國家官吏制度の実際の運営上の問題になると思うのであります。もしこの制度生産部門官僚化をもたらすというようなことになりますれば、生産合理化を阻み、せつかく國管制度もまつたく骨拔きになつてしまうと思うのであります。運営問題は結局人の問題であり、人の問題になりますと、今日までの幾多の実例を見ましてもわかりますように、首腦者の問題というよりも、むしろ頭数の問題に帰さなければならないと思うのであります。少々の民間人を採用しましたところで、どうにもならないということはわかりきつたことでありますから、從つて今度の石炭局にいたしましても、その大部分民間のエキスパートを採用する、大部分民間人をもつて充てるということにしていただきたいと思うのであります。私の公述はこれで終ります。
  4. 伊藤卯四郎

  5. 村本周三

    村本公述人 名薄の名前は間違いでございます。村本でございます。  私は金融機関に働いている者の立場から、炭鉱國家管理をどういうふうにながめておるかということにつて結論的に申上げまして、その運営について日本経済民主的再建という見地から、私はどのような希望をもつておるかを併せて申し上げたいと思うのであります。  私は今囘の炭鉱國家管理法案賛成するものであります。現在御承知のように炭鉱業は莫大なる固定資本を要しまして、その金融資金は個々の営利的な私的金融機関が担当し得る融資の限度を越えておるのであります。このような実情と、日本資本主義発展の今までの歴史的の方向、現在の日本経済の窮乏という点から、ある程度の日本経済社会化は必然であると考えますから、私は炭鉱國営國家管理というものを一つ社会的要請であるとして、これに賛成をするものであります。しかしながら申し上げたように、私たち考えております社会発展、そういつた現在の日本のあるべき社会発展、そういう理想的の姿から見て、今囘の炭鉱國家管理法案にはいろいろの不満をもち、また從つていろいろの危惧を感じておるものであります。しかしながら、少くとも現在よりも好ましい姿であるとして私は支持したいと思うのであります。もちろん私の申すものは、この裏にこれによつて石炭増産が達成せられるということを期待しておるということを同時に意味するものであります。しかしながらそれでは國家管理について無條件賛成であるかといえば、そういうふうには私は考えないのであります。少くとも本法がもつております官僚統制化危險この点だけについては特にわれわれの希望を申し上げて、本法運営上國会が適当な監視をせられ、また一般炭鉱組織労働者諸君、並びに一般國民の適当な監視によつて、その運営が十分になされんことを希望いたしたいのであります。私たち金融機関に働く者といたしまして、われわれに関係のある炭鉱金融の問題を一例として取上げてみたいと思うのであります。  この法案自体につきましては私の勉強が不十分のせいか、どういうふうに金融が行われるかという点がはつきりしておらないと思うのであります。しかしながら新聞紙上における座談会において水谷商工大臣政府が直接金融をして、しかも山に直接に流す。こういうふうに言つておられるのでありますこのことは、おそらく公團に対する金融方式というものに倣つて復興金融金庫金融を行うという意図であると思われるのであります。御承知のように現在の炭鉱金融は、設備資金は完全に復金金融となつております。また配炭公團ができまして以來というものは、運轉資金も大体において復金金融であります。その間市中銀行は單に炭代見返り資金金融、あるいはつなぎ資金金融を行つておる状態であります。從つて國家管理実施をせられました場合には、おそらく金融市中銀行がこれまでタツチしておりました点を除きまして、最後には全的に復金金融になるであろうと、こういうふうに私には思われるのであります。その点については、いわゆる復金による國家資金といつた面から、金融方式二つの問題があると思うのであります。第一は石炭資金計画從つてまたこれは産業資金計画に連なり、國家資金計画に連なるのでありますがこの設定を民主化していただきたいというのであります。資金計画はこういうふうに國管になりますれば、ますます鉄のカーテンのかなたにおいて官僚の手によつて決定せられていく、こういう危險性があると私どもは思うのであります。國家経済計画化ということが進むに從つて、ますますその大きな計画は一部の官僚に握られてしまうそして國民がこれに対してほんとう意見を反映していくということがますます困難になつていくのではないかと思われるのであります。もちろん官僚國家の公僕といたしまして、眞に國家的な見地から立案をされるのではありますけれども、これに対して國民意見というものが民主的に取入れられるという配慮がなされないならば、ますますそれはデスク・プランに堕していくだろうと思うのであります。そういつた場合には、働く者がこれに協力しようという氣持はますます冷却されていくのではないかというふうに私に危惧するものであります。  第二は炭鉱金融能率の問題であります。現在炭鉱融資は非常にスロモーであると言われております。そのスロモーであるという点が、その間に市中銀行が介在をしてつなぎ資金を出さざるを得ないという点であります。なぜそういうふうになるのかと申しますと、國家資金計画の策定がとかく遅延をしがちであるということのほか、政府でまず炭鉱業全体に関する融資、あるいは産業資金全体に対する融資わくを一應きめる。そのわくをもらつてから、また復興金融金庫の中で、復金自体としてはどういつたふうに融資をしようかという考えがあるし、また産業企業の面からは何とか自分の方にとりたい、こういつた二段構えのわくをとるという点が一つ、もう一つ尨大國家業務尨大國家資金の貸出しというものが復金一つに集中せられておる。その復金が非常に入手が不足である。こういつた点によつて炭鉱融資が非常にスロモーになつておるのであります。この点もまた國家管理によつて改善されるであろうか、どうかという点について非常な疑問をもつものであります。  ただいま申しました二つの点はわれわれの関係をいたしております炭鉱金融という面において、國家管理実施せられた場合に現われてくる二つ危險な点であると思います。われわれは炭鉱内部の事情はよくわからないのではありますが、その二つの点、すなわち計画が非常に官僚化していくという点、あるいは能率が非常に問題になつていくという点、この二つの点、並びにこれに類似した、あるいはこれから類推せられるような同じような点は炭鉱業内部において多々あるのではないかと思うのであります。しかしながらこうした危險性、こうした弱点というものは、われわれは理想的な國家管理を行うために、非常に心しなければならない点ではありますけれどもそれがために國家管理自体を否定すべきものとは私は考えないのであります。私はほんとうに理想的な、ほんとうに民主的な國家管理を行うという意図政府にあり、これに対する協力、これに対する監視國会がなされ、また組織労働大衆もこれを監視するということがほんとうに行われるならば、こうした弱点は避け得られるのではないかと思うのであります。否、こうした弱点をあえて克服をして、ほんとうに民主的な國家管理を行つていくということが現在の任務ではないかと思うのであります。從つて私はこれらの点につきまして強い希望を表明しながら、本國家管理法案賛成をいたすものであります。
  6. 伊藤卯四郎

    伊藤委員長 次は関連産業関係より日本発送電資材部長平井さんに御発言を願います。
  7. 平井寛一郎

    平井公述人 私はただいま御紹介にあずかりました日本発送電株式会社理事平井寛一郎でございます。石炭の大口の需要者一つである立場から、本法案に対する見解を述べさしていただきたいと思います。  わが國の直面しておりまする危局の打開は、何をおいても石炭のはなはだしい供給不足を解決するにあるということは今日の常職なのであります。石炭鉱業の今後のあり方につきましては早急檢討立案を要する問題でありますが、焦眉の緊急事は目前の供給増加であります。石炭供給は量の問題であると同時に、質の問題でありまして、海外よりの供給が期待できない以上は一刻も早く一トン、一カロリーでも多く石炭生産することをはからなければならないと思うのであります。過去二箇年間、石炭増産に対してはそれぞれの方策が講ぜられたのでありますが残念ながら十分所期の成果をあげておりません。増産達成のためには、客観條件、すなわち生産要素充足と同時に、生産意欲振起をはかる必要があるのであります。また増産を阻害するような條件除去ないしはこれが発生防止するにあると思います。今ここに石炭増産対策を強力に推進するために、臨時石炭鉱業管理法案議会提出を見ましたことは、客観條件すなわち生産要素の強力なる充足につきましては数段の進歩であると考へるのであります。しかしながら他方運用の面におきましては、生産意欲振起増産を阻害するような諸條件除去、ないしはこれが発生防止という点に関しまして、なお愼重考慮を要する点が多いように見受けられるのであります。もう少し具体的に申しますと法案を通読しまして強く感じますことの一つ増産客観的條件、すなわち物的生産要素の中で資材並びに設備につきましては、協力命令規定等が設けられておりまして、かなり万全を期せられておるように見受けられるのでありますがかんじんの資金の面に関しましては、何ら具体的に觸れられているところを見受けないのであります。先ほど銀行方面の方の御発言を得まして、ある程度心強さを感じるのでありますけれども、なおその点について私ども多分の不安を残しておる次第であります。また事業民主的経営のために管理委員会を設けて、管理に伴いやすい弊害の防止をはかるというようにはなつておるのでありますが、いわゆる生産計画とこれが実施との間の円滑なる調整はどういうふうにしてはかるか。ここに大きな問題が残つておるように感じるのであります。また從業員生産意欲振起向上をはかるためには、指定炭鉱の場合には生産協議会を通じて強力に事業に参加する機会を與えるとともに、労働保全委員会等を別途に設けたりして、労働に関して後顧の憂いなからしむるような努力を拂うようになつておるようであります。この面についても実際の運用いかんということが大きな問題でありまするけれでも、特に経営者側に対しましては、被管理立場における義務と、経営責任は全面的に負わされておるような形でありまするが、生産意欲振起向上し得るような考慮が拂われておらないように見受けられるのでありまして、この点が緊急増産措置として欠けるところではないかと感じるのであります。生産意欲振起向上をはかるために、何らかはつきりと保証の途を講ずることが必要ではないか。あるいは一歩進めて國家において経営責任をとるという態度をとるべきではないかと思うのであります。また指定炭鉱指定はもちろん管理委員会の議を経ることになつているのでありますが、いかなる標準順位によるのであるか、本法案事業あり方を規定するのではなくして、増産のための非常措置であるのでありますから、せつかく好調にすべり出しかかつておるこの炭鉱をして、管理移行による機構変革のために成績を低下せしめるようなことのないだけの考慮を拂う必要があると思うのであります。指定標準というものは、当然これは出炭成績重点を置きまして、その順位は、指定により最も早く立直り得ると考えられるようなもの、ないしは新坑の開発というようなものから重点的に順位が決定せられるのではないかと思うのであります。また管理にあたりまして、管理業務はぜひ簡明であるべきでありまして、管理の場合に陷りやすいところの煩雜なる業務負担をなるべく來さないように、考慮せられる必要があると思うのであります。業務負担煩雜ということは減産の原因となるおそれが多分にあるのであります。  それから石炭局機構でありまするが、これをもつと開放的のものとする必要はないであろうかと考えるのであります。いわゆる野に石炭に関する遺賢なからしめるだけの思い切つた措置が必要ではないかと思うのであります。  以上述べましたように資金の問題、生産計画実施との間の調整経営者生産意欲振起向上に関する問題、指定炭鉱指定標準順位管理業務運営簡素化石炭局機構問題等、われわれは疑義不満の点が幾多あるのでありまするけれども、しかしこれらの諸点は多くは運用の面において解決し得ると考えるのであります。また解決されなければ目的は達成されないのであります。要するに私ども需要者としましては、石炭に関しては所要の量及び所要の質の石炭の配当を熱望する。そういう見地からこの法案の成行きに重大な関心をもつている次第でありまして、こういう見地から本法案実施に対しましては、運用の面において愼重考慮が拂われ、措置せられることを條件として賛成する次第でございます。
  8. 伊藤卯四郎

    伊藤委員長 次は日本電氣産業労働組合より植松さんに御発言を願います。
  9. 植松延秀

    植松公述人 私は日本電氣産業労働組合委員長植松でございます。この法案の大体の方向につきまして、われわれの見解を申し述べてみたいと思います。私は石炭産業はどういう企業形態でなければならないか。そうしてどういう企業形態が最も増産目的を達し得るか。この問題を解決するためには次のような動かしがたい要件をはつきりとまず確認してかからなければならないと思います。  それは第一に、石炭産業は他の産業基盤となる基礎産業であり、從つて公共的性格多分にもつておるということであります。從いまして、個人の利害関係とか、あるいは関係資本家だけの利害関係だけを考うべきでないということはこれは当然なことであります。第二に、敗戰後縮小されました乏しい日本経済の中で、何とかして自立していかなければならない。從つて思い切つた画期的対策をもつてこの危機を乘り切つていかなければ、日本経済は破綻し、大きな混乱に見舞われるであろうということ。それから第三に、ポツダム宣言後、労働者大衆には基本的人権の自由によりまして、強力な労働組合がすでに存在しているということ、從いまして昔のような奴隷的な、民主的な考えも何ももつておらない労働者ではないこと。これらの前提條件はつきりと確認してかからなければ、問題は正しく解決しないし、大きな誤りを冒すであろうと考えるのであります。石炭鉱業あり方というものはすでにここから性格づけられてこなければならぬのではないかと思います。  第一の公共的性格を全うし、全産業基盤的役割を果し、國家が他の産業を犠牲にしてまでこれをまず守り立てていくためには、当然國民大衆が納得するところの企業形態でなければなりません。そうでなければ目的を達することはできないと思うのであります。全石炭産業を一丸といたしまして、資金資材労務食糧、輸送、電力等関連を最も合理的に、かつ重点的に供給するというためにも、さらにはまた各社のもつセクト主義を排しまして、工場技術経営技術を最も能率的にし、むだを排除して、全國の鉱山をして全産業のため、全大衆のためのものにするところの社会的経営、これが絶対に必要であると思うのであります。この点はこの法案におきましては、まつたく骨拔きになつているという点、これが大きな欠点であると思うのであります。  さらに敗戰後経済危機はますます深まりつつあります。今はアメリカの占領下であつて、やつと食糧その他の物資を惠まれて、とにかくもちこたえておる状態であります。増産のためならイデオロギー云々というようなものでなく、民族が食つていくために、思い切つた増産対策眞劍に勇敢に実行すべきである。いたずらに不合理極まる小企業の分立や、大企業セクト主義形態のままにしておいたならば、関連する他産業がそのために皆共倒れになつてしまう。公共のために、全産業のために、全國の民主的なる総合経営を断行すべきときである。この点につきこの法案にはさらに大きな欠点があると思います。  次にポツダム宣言以前と以後との区別をはつきりしておかなければならない。ポツダム宣言以前の奴隷的労働態勢と、現在の基本人権に目ざめたところの、労働組合なる大きな組織がある現在の態勢とを、資本家側もはつきり認識されなければならないと思います。以前のように労働者の動物的勤労意欲を刺激する。そのために能率給とか、あるいは競爭させるとか、そういうことだけでもつて増産ができると考える、その考えはすでに昔の考えであります。現在におきましては、増産を全うするために唯一の途はどういうものであるか。労働者階級、むろんこれには職員も技術者も本質的に含まれておるわけでありますが、この労働者階級の創意を活かし、眞に労働者労働組合をして生産復興、生産開発のために起ち上るように振り向けなければならない。この生ける人間をしてほんとう増産がわれわれ労働者に必要なものだ。生きるためには増産をしなければならないと考えるような形態にしなければならない。増産することが炭鉱労働者のためであり、全労働者のためであり、全民族のためであると知つたときにおいて初めて増産は可能となるのであります。増産するかぎは、この生ける魂をもつた労働者が握つておるのです。ほんとう労働者増産に目ざめそしてあらゆる創意くふうをもつて起ち上つたならば、三千万トン、三千五百万トンでもたちどころにできると思うのであります。  それでは、どうしたならばこうした状態になる得るか。それは労働者が納得する機構をつくらなければならない。國民大衆が了解する機構をつくることであります。労働者が働いても働いてもその利益はどこへ行つてしまうかわからない。あるいは資本家の一方的のふところにはいつてしまうというようなものであつたならば、むろんだめであります。また労働者があらゆる創意くふうをして増産しようとしてもそれを有力に実現するような機会がなければならない。労働者労働に應じて、自己の経済的文化的條件を向上しようとしても、それを有数に実現する組織がなければならない。これらを満足させるためにはどうしたらよいか。それには資本と経営の分離、それから利潤追求の制限、社会大衆による経営の指導監督の導入、從業員経営参加これらを内容とする民主的、あるいは社会的な組織でなければならない。この法案におきましては、基本産業として最も完成された形態にして、労働者生産意欲を最高度に盛り上る形はまつたく無視されております。  さらに本法においては作文統制、あるいは官僚管理を公然と実現させようとしておる。素人の、非民主的机上計画のみにて、実行について何ら責任をもたない官僚管理にして成功したためしがない。のめのめと官僚をして経営管理の指導をさせようとするところにこの法案の大きな欠点があるわけであります。何ゆえに官僚の無責任管理を拘束し、労働者、あるいは第三者の公正妥当な指導方式を導入することを考えなかつたか。政府当局の考え法案であるならば、これは一考を煩わさなければならないと思います。  次に関連産業として、電力の立場から、もつとつつこんだ社会化、一元化がいかに必要であるかの点について、二、三申し上げてみたいと思います。御承知のように、電力は戰前より電力國家管理の一連の統制法令によつて管理されてまいりました。そして昭和十八年には今までの電力生産の最高であるところの三百四十八億キロワット・アワーが生産されました。それが終戰後には約三〇%に低下しました。現在は昭和十八年よりもさらに七%も上まわつておるわけでありまして、今までの最高の電力を生産しておるわけであります。それにもかかわらず、九州を発端として西から東に上つてきた電力危機は、すでに東京辺まで來ており、連日の停電を余儀なくされておることは皆さんよく御承知の通りであります。この原因は一体どこにあるか。これは敗戰直後、官僚が電燈需用の將來を見誤つた結果、電力の濫費、漫費が非常に行われておるということ、それから経営者が電源の開発と荒廃した設備の復旧に熱意が欠けておるということ、それから総合的燃料対策が誤つておるということ、それから政府石炭対策の怠慢に大きな原因があるわけであります。たとえば九州におきましては、火力発電が大部分でありますが、ある炭鉱におきましては、電力不足のために増産用電力に支障を來しておる実例もあります。九州における炭鉱等におきましては、自家用発電設備を非常に多くもつておるわけでありますがそれらを動かして自分のところの電氣を使つたならば、採算上非常に損であります。それゆえにそれらの発電設備は止めておいて、安い日発あるいは配電の電力を受けてやつておるのであります。こういうような自家用発電設備は大きな容量になるわけでありますがこれを遊ばしておきまして、そうして一方では電力飢饉のため工場は連日休み、鉱山は増産用電力に支障を來すということも起きておる。これは一つの大きな現実であります。また石炭一トンあたりの生産に要する電力は、昭和十八年には三十六キロ・ワツト・アワーでありますが、昨年度におきましてそれが約倍以上の七十五キロ・ワツト・アワーになつております。これは戰前の約三倍になつておるわけであります。もちろん炭坑の坑道の深く長くなつたことによる保安電力の増加、設備の老朽化による採炭能率の低下等に基くところの消費電力の増加、これは当然考えられるのでありますが、これらの原因だけで二倍、三倍という尨大な電力の消費を必要とするということは考えられないのであります。必ずや統計面に現われていない石炭のあることが想像せられるのであります。横流れの石炭考えられるわけでありまして、この点につきましては、過日のマッカーサー元帥の書簡にも現われておるところであります。これは炭鉱國家管理の重要性を物語る一例にすぎません。電力においては今申し上げましたように、國家管理をやつてき、今までの発電力の最高の生産をやつておる、にもかかわらずこういうような状態になつておるという原因につきましては、先ほど申し上げました通りで、これをいかにして打開するか。これはすでにはつきりとわれわれ十二万の労働者考えておりますし、これに対する電氣産業の資本家側ともほとんど意見は一致しております。この官僚統制國家管理機構をさらに一歩進めて、これを社会化し、民主化したところの機構をつくつて社会大衆のため、全産業のための電力機構をつくらなければならぬという点に、これはもうはつきりと意見も一致し、具体化もできております。これに対しましては、昨年の秋から、政府もこの原則をはつきりと了解しておるところであります。同じく基礎産業であり、しかも電力のみならず全産業に密接な関連をもつ石炭鉱業におきましては、國家管理をもつと社会化したところの方法によりまして、一日も早くこういう方向に発足することが焦眉の急務であると確信することであります。提案せられましたこの法案は幾多の点につき基本的な欠陷もたくさんもつております。われわれ電氣産業労働者といたしましては今後これらの欠陷につきましては、第一歩を踏み出し、さらに第二歩としてこれを矯正していくということによりまして、この政府案から一歩も後退しないという條件のもとに、不十分ではありますが、ただちに國家管理にすべきであると確信するところであります。  昨日からこの公聽会を傍聽いたしましたが、公述者の中には、これが官僚統制でありますために、これに対して反対するという方が非常に多いように思います。私もその一人でありますがしかしながら私はこの法案がなまぬるいがために反対するのでありまして、これを第一歩として進めるという点においては、一致するところが多々あると思います。これらの点を十分におくみとりの上、國家の大計に誤りなきを期せられんことをお願いする次第であります。
  10. 伊藤卯四郎

    伊藤委員長 次は経済関係の東洋レーヨン取締役森さんの代理人の松井さんに御発言を願います。
  11. 松井俊次

    ○松井公述人 ただいま御紹介の東洋レーヨンの取締役の松井であります。実はこの與えられたる炭鉱國営案に対するわれわれの意見というものにつきましては、單に私もしくは私の会社だけでありませんで、念のためにわれわれと同業の人絹の製造にかかわるカゼイン工業全業者の意見を聽いて、まとめまして得たその結論について簡單に申し上げたいと思います。あらかじめ御了承願いたいと思います。  実はわれわれカゼイン業者としては御承知の通り、いわゆる消費部門としての見方でありまして、消費部門から見れば、端的に申せば、その品質が所期のものであり、適当なときに適当な量が配給され、そうして過去においてわれわれが非常に石炭を使い、また石炭増産もでき、大きな量を供給された時代のごとく、スムースに万事いくような機構であれば、たとえそれが民主民営であり、國有國営であり、あるいは民主國管であろうと、いずれの制度といえどもよろしいということを消費者として申し上げておきたいのであります。しかしその場合において、われわれがこの國管案に対してそういう観点から調査したときに、はたしてどういう影響があり、またわれわれの見透しとしてどうであるかということについて意見を申し上げたいと思います。  実はわれわれは今現に行われておる配給面における公團式の組織についての機構変革、その点については直接部門であるだけに相当大きな影響があるわけでありますけれども生産者そのものとは昔直結しておつた時代と違つて、自然疎くなつておる現在はその動きにおいて、配給公團そのものが介在しておる関係上、接触面においていささか薄くなつておる、こういう関係から、妥当でない点があるかもしれない。また不明な点があるかもしれないので、むしろわれわれの意見は、あるいは皆様方からさらに御教示を仰がなければならぬという点が多々あるかもしれませんので、一言ちよつと前もつて御了承を得ておきたいと思う次第であります。  つきましては、われわれは時間の都合もありますので、結論を先に申し上げたいと思うのでありますが、各社の意見をまとめ、またわれわれがそれを咀嚼した上においてみるところをもつてすれば、大体この法律案に対する考えは、次に申し上げるような諸点においてまだよく咀嚼され、研究されていないのではないだろうか。もうちよつとこれを具体化し、われわれから見れば実際化する、いたずらに議論倒れしない、また漠然たる機構のもとに行われないで、その後に來るべきものが——たとえば本案に対する施行細則その他ができた場合においては骨拔きになる。しかしてわれわれが最初思つたことよりは、はなはだ徑庭のあるようなものになると考えるから、そういうことのないように、もう少し研究の上、盡すべきことを盡して、しかる後に完全なものとして実施するならばする。またそういうものを実施するならば、ただちに世上にうわさされておるがごとく、大鉱山そのものに直接に実行するよりは、むしろ新坑の関発その他いろいろな資金資材労務等において非常に増産もしくは生産を維持していく上において困難であるというような鉱山において、とらわれずに実施していくということも一つのやり方ではないか。そういう点から見て、結論的には時期尚早であるから、もう少し研究の上でさらに審議して実施すべきものであるので、ただちに本案に対しては賛意を表しかねるところがあるのは残念であるという結論であります。  つきましてはわれわれがかくのごとき結論に到達してゆえんのものは、從來炭鉱に対する時の政府資金資材労務等の援助が、現在においてもずいぶん盡されておるということでありますけれども、聞くところによればまだ十分でない。それはたとい十分でなくとも昨日かどなたかお話があつたごとく、やはり戰時中における炭鉱の濫掘、もしくはその他のいろいろな急速なる戰時立法というような趣旨のもとに行われたところの、いわゆる技術的、機構的というような面において非常に乱暴であつた。その余波がまだ立直りしない。それからわれわれ敗戰後まだ日数も経たない。單に炭鉱労務者の方々のみならず、われわれ社会一般がいわゆる敗戰意識と言いますか、右往左往していてまだ正当な意識に立ちもどつてないというために起るところの欠陷から、いわばまだほんとう日本経済界が立ち直つていないのだ。そういうこともあるがためにまだ十分に盡されたる援助が行われていないのじやないか。現に最近に至つてやや立ち直つてきた曙光が見えて、たとえば資材の現物化において大分軌道に乘る。それから資金もマル公の改訂その他によつて非常に金融面も遅まきながらややよくなつてきたというようなこと、その他労務者の数も一人当りの採炭量はたとい同一な比率を保つにしろ、数量的には相当量殖えたというようなことから非常によくなつて、聞きくところによれば、この九月の実際の出炭量は、終戰後初めての最高レコードで九七%ぐらいに到達しておる。漸次そういつたふうで、今まで注ぎこまれたものが、不十分といいながら、ある程度の効果を現わして、たといこれが國管であろうと、國営であろうと、いずれにせよ、官僚性がなくても、民主的に行われてややよくなつて軌道に乘つてくるということがある以上は、もう少し援助すべき点は援助して、もしくはかすに時日をもつてすれば、現在の機構にいささかの研究をして、労資の自主的もしくは民主的の労資協調のもとに、おのおのその責任と義務を負つてつていつたならばいいのではないか、こういう点においてもう少し研究すべきことのあることも全般的に考えられます。ですから、こういうことから言えば、われわれは今ただちに國管法に示されるごとく、いわゆる新しい機構に行くことはいささか時期尚早でないかと思われる。  第二番目には、先ほど申し上げたように、お互い國民全般がまだノーマルな氣持になつていない。從つて炭鉱経営者、あるいは從業員方々においても、まだ的確にして公平なる、そうして科学的にどうしたらよいかというような点についての知識と精神との陶冶が不十分ではないだろうか。それは労資の罪ではなく——それにも罪があるかもしれないが、そういう点があるから、もう少し技術的にも精神的にも研究をする時間を與えてやるべきではないか。もしこれを不十分な精神、もしくは技術的に不十分なままで行つたならば今本案に示されたがごとく、生産協議会において労資相半数をもつてやられて、その議決というものが相当偉大なる力を有する場合において、たまたまこの不十分なる機能と精神をもつていつた場合においては、横道にそれ、もしくは感情に激した施策も出てきやせぬかと思う点があるので、その点においては、われわれはわれわれ自身の考えにおいて危惧をいだく次第であります。ですから、われわれはその点は、もう英國のごとく多年の経驗、多年の陶冶をもつていても、なおかつうまく運営せられるかどうかと疑つておる今日でありますから、もう少し時日をかして、陶冶を行つた上でやつても遅くないのではないかと思うわけであります。なお三番目として、これは関連することでありますけれども、いわゆる生産協議会のみならず、その他國管法においては責任のあり場所が——昨日のお話を承りますれば、どこに帰属するか、地方委員会もあり、また中央委員会がある。そうしてそこに各地方特殊特有の炭鉱の特色がある。それに対して画一的にやつてはたして目的を達成し得るかどうかということも一つ考えであろうと思う。のみならず先ほどお話があつたごとく、これに対して民間すなわち大消費者の面から見て、はたして眞実な声が聽けるかどうかというようなことは、單に量的のみならず、品質的において、——また輸送路の完備、もしくはその大消費者から各炭鉱に與えるべき援助がない。たとえば戰時中にをいてわれわれは炭鉱に人手が不足だというので、労務員を自発的に炭鑛にやつたというような方法、そういう面においてたとい國営國管になると言つても、そういつた点についてもう少し援助もしくは力をかすという方法を加味することが必要ではないかいわゆる生産協議会というか、委員会というか、そういうものについていささかまだ不備な点があるのではないかこういう点も本案に対していささか危惧の念を懷いておる次第であります。  それから次は、國管及び國営的の思想は、いわゆる尨大なる新しき機構の新設によつて、官吏を置かなくてはならぬということを前提とするならば、從來の経驗だけから申すわけでありますけれども、そこにいわゆる冗員、冗費を伴うてくる。英國においては非常に民主的になつても、むだな人を殖やすということはない。ただ單なる機構のために人を殖やすということはあまりやらないのであります。なお経費の節減という点についても、かつこの戰後のインフレのもとにおいては、できるだけ現状でやつていこうということになる。また施設においてもそうである。非常に悪く言われることは、いわゆる私利を追うと言うけれども、今や大きな事業をやつておられる方においては私利もなし、いわゆる経営者という名前はあるけれども、資本家というものがなくなつた今日においては、いたずらに利益を追う理由はないと思いますが、おのずから合理的の、いわゆる立ちゆくためのある程度の黒字もなくちやいかぬということを目標としておるがゆえに、その施設、またその経費も非常に経済的になることに專念する。しかるにこれが國管もしくは國営的のものにおいては、どうしても放漫となるというおそれがないであろうか。それがやがて原價の騰貴を來してその赤字埋めを政府において負うとするならば、それは財政の負担となり、また一般國民の負担となる。もしくはそれをやらないで、いわゆる受益者負担ということにしてコストをカバーするために値上げをするとするならば、消費者においてはそれがために値段を上げられるというようなことになつて非常に苦痛である。この点はわれわれは、將來この國営國管になる時代が來るかもしれませんが、そういう時代において、はたしてそうなるかどうかは断言できないところでありますけれども、從來の経驗からすれば、國鉄のごとき新聞紙の報ずるところによれば、非常な値上げをした。しかるになお百五十億の赤字をもつている。それで一人当りのマイル数が日本では四十人である。アメリカでは四人であるということになつております。これは國営事業のいささか欠陷じやなかろうか。また卑近な例で言えば、タバコの場合において、赤字が出ればタバコがただちに三十円から四十円になるというようなことになりはせぬだろうか。ここでその点はわれわれ消費者としては、危惧の念にたえない次第であります。  第五番目といたしましては、本案に対する面から見れば、炭鑛経営者の自己の業務に対する興味がはなはだ薄くなつてくる。いわば生産面における生産協議会において自分の思うところができず、また上へ業務計画を出す場合にそれに対する政府の非常なる変更その他があることを想像されて戰々競々として出したというような場合においては、はたしてその経営主はいかなる興味をもち、いかなる樂みをもつてその事業に專念し得るだろうか。この点においても、われわれ事業をやつておる者としては、非常に両端から相せばまれてそれが苦痛となつて興味がないところ、すなわち本來の発展はできないのであります。こういう考えでおるので、この点本案がかりに將來において実施されるとしても、また國営となるにしてもこういう点において責任を明らかにすると同時に、また興味があるような機構を盛り上げるべきではなかろうか。その点においても本案はいささか欠くるところなきやという懸念をもつている次第であります。なお私ら実際家として、今ここで本案が実施され、もしくは將來に対するときであつても同様かもしれませんが、いわゆる過渡期における増産が——本案の第一條に示さるがごとき第一の目的とせられるところの増産が達成せられるかどうかということであります。それはつまり本案によるときは、指定鑛山になつたものは資材設備等の移讓はただちに上の命ずるがままにやる。また生産協議会で承認を得ればただちにそれはやつてもいい。また交渉してやるということになりますけれども、もしそういうことが、將來において本案の実施に伴つて予測されるとすれば、今や余剩なものをもつてつても、どうせとられるのじやないかというようなことで、むだ使いがありはせぬだろうか。それからまた今ただちにこの点にこういうふうに金をかけて、苦しいながらもやれば、將來三年、五年の後において非常に鉱山の安定度を増し、増産も品質もよくなるという施設をやりたいが、どうせ國管となり國営となるならば、そういう点は延ばそうじやないかという氣も出てきて、ここにおいて実際問題として過渡期において非常な波瀾が生じてくる。しかもその波瀾の過渡期が短時日に終るとすればいいけれども、先ほど申し上げました大きな機構、たとえば昨日ちよつと承りましたが、千以上にある鉱山の半数がかりに指定鉱山となつた場合を想像すると、一鉱山につき五人とみても三千人ないし三千五百、もしくは十人とみれば五、六千か七千人の多数の新機構の官吏が出てくると思われる。それをどういうふうに動かすか。第一人を集めることができるだろうか。あるいはその役所をどうするか。その機構をどうするかという問題も出てきましよう。そういう場合においてそれがために半箇年つぶすとすれば、ネット二年か二年半くらいしかないものに対してはたしてそれを樂しんで、熱中して人が集まつてくるだろうかどうか。また人を配置するにしても、大阪のような所にもつてくるとしても、第一住む場所があれば轉任辞令を出そうという情勢になつているときに、はたして六千七千の人を新しい機構の下に動かすということができるだろうか。その間に相当長い時間がかるのではないか。そうなる場合における過渡期の増産ははたして可能なりや否やというようなことも、先ほど申し上げたような事情のもとにわれわれは危惧しております。その間われわれ石炭の消費者部門としては、また生産のがた落ちになる。われわれの人絹のごとき、目下一番頭に悩むのは、われわれは今人絹、スフの増産を奬励されて、現在より明年度においては倍、すなわち人絹月三百万ポンド、スフ二百万ポンド、計五百万ポンドの生産を月やつていけ、こういつたような命令を受けて、それをやるためには今の倍以上の石炭がなくてはとうていできないというようなときにあたつて、はたしてこういうことが実施し得るかどうか。われわれの増産目的は、先ほどのお話のように、目下國民の最大関心は食糧にある。しからば食糧の援助を海外から仰ぐためにはどうしても見返りとして何か出さなくちやならぬ……。
  12. 伊藤卯四郎

    伊藤委員長 時間が大分経過いたしますから、お急ぎを願います。
  13. 松井俊次

    ○松井公述人 そういうことになつてきますから、ぜひそういうふうに過渡期をやつていただきたい。  大体私の申し上げたい点はそういうようなことでございまして、今消費者筋では制度のいかんは問わないと言うけれども、本案に対しては、もうちよつとわれわれの希望する点を加味され修正されるならば、賛成すべきところはあるかと思います。現在においてはいささか時期尚早ということに考えております。こういうことを申し上げて終りたいと思うのであります。
  14. 伊藤卯四郎

    伊藤委員長 全日本産業労働組合役員高山さんに御発言を願います。
  15. 高山慶太郎

    ○高山公述人 産別会議の高山であります。私は炭鉱の出身でありまして、常磐高萩炭鉱の一坑夫であります。本日は産別の立場といたしまして、特に私が炭鉱労働者であるところから、具体的な問題にも一應触れてみたいと思います。  最初にはつきりと政府案に対する意思表示を申し上げます。現在の政府案たるところの臨時石炭鉱業管理法案に対しては反対いたします、その理由は、今囘の政府案につきまして、まずわれわれ労働階級として取上ぐべき問題として、石炭増産していくことに対しまして、現在のような機械化されない炭鉱の状況におきましては、労働力が一番の基本をなすものであります。從つて労働者が働けるような状態に置くことがまず第一番の問題であります。しかるに今囘の石炭管理法案を見ますときに、労働者労働條件及び生活改善の問題に対して何ら触れていない。それから労働者のわれわれの生活権を守るところの罷業権、いわゆる爭議権の問題などに対しましては、これをまつたく骨拔きにして、制限抑圧しておる事実、それから生産協議会、あるいは全國地方管理委員会が、ただ單なる諮問機関であるか、決議機関であるかわからない。きわめてあいまいな「議を経る」というような言葉でごまかしている。あるいはわれわれの要望しているところの社会化方向が何ら明示されていない点。それから最も大きな問題は、われわれは單なる臨時的の便法としての國家管理には反対であります。私ども考えておりますることは決して一部に唱えられているところの國管反対論ではない。私どはも國有國営を前提とするところの國家管理を強力に行つてもらいたいと考えておるのであります。ですからいわゆる反対論者とは根本的には違いますが、しかし現在の政府の案に対しては反対であります。  それからもう一つの問題は管理の対象がきわめてあいまいであることであります。現在北海道のはてから九州のはてまで、数多くの炭鉱が——おそらく炭鉱自体の実情を御存んじない方はおわかりにならないと思いますが、実に多種多様ないろいろな條件下におれております。特に一應整備された、機械化されたところの山は例外でありますが、中小、特に五十人、三十人、あるいは百人、二百人程度の從業員を使つている山は、あなた方がほとんど想像できないような生活をいたしております。坑内の状況も住宅の問題も、坑夫の生活一つ一つ見ていくときに、おそらく監獄部屋と何ら変りのないような状態の所が非常に多い。たとえば延べ人員千人からの家族を入れる男女混浴の三尺四方の風呂場があつて、そのどぶどろのような風呂にはいつている。また、先日九州の炭鉱に行つてみたときに、屋根が雨漏りするのではなく、家の中に雨が降りこんでおるために、家の大事なたたみをあげて、雨が降ると家がたたみのかさをさしているといつたような状態の所もあつた。あるいは炭鉱にいろいろな配給物があると言いますが、実はある地方では魚も一箇月に一囘しか食えない。野菜なども非常に不足な所もあります。こじきの生活と同じ状態である。今度の政府案の管理の対象を見ていきますと、おおむね有力な炭鉱を対象といたしまして、中小炭鉱を何ら顧みていない。これらのことは実際に経営者自体もどうすることもできない。それから労働者自体はなおさら悲惨な思いをしている。炭鉱こそ、強力な國家の力をもつてこれらの労働者を救い、同時にこれらの経営國家の手に移すことによつて、初めて國家管理の意義が成り立つものだと思います。  それから官僚統制の強化の問題でありますが、これは反対論の方々からいろいろ申し述べられたのであえて省きます。それから協力命令の問題でありますが、あれは非常に非民主的なものであると思います。関連産業に対して天降り的な命令は、われわれは排除しなければならないと思います。現在炭鑛労働者は何を考えておりますか。日本産業復興の一番基礎をなすところの石炭を、どうしても出さなければならないというために、非常にまじめにこの國家管理の問題を考えております。われわれはどうしても國家管理をやらなければならない。國家管理をやらなければ、非常に原始的な採炭方法あるいはある程度進歩した採炭方法、あるいはこの炭鉱の坑内の條件に限らず、住宅の問題から生活の問題が非常にまちまちである。この状況ではどうすることもできない。そうして経営者の力でどうにもできないような状況に追いこめられている現在、どうしても國家の大きな力で國家管理をやつて、將來國有國営にしなければならないという点は、全部の炭鉱労働者及びわれわれ産別会議といたしましても考えておる点であります。しかし今政府の要望していることは、單なるここわずかの間の臨時的な増産措置であります。それで今の臨時増産措置には——それではこの國家管理をやつたらいいか惡いかという問題になりますと、私ははつきりと申し上げますが、現在のこの案を実行していつても、これでは決して増産はでき得ない。なぜかと申しますと、労働者に働く意欲を失わしめるような、この法案の中に先ほど申し述べたようないろいろな條件をもつている。これらの問題が解決できない以上は、決して増産できるのではなく、逆に減産の形になる。それからもしや強いてこの國家管理法を通して増産をしようとすれば、これは労働者に大きな責任を負わせ、労働過重のほか何ものでもない。結論的に申し上げますと、この案は戰時中の産報案と何ら変りのないものであるということを申し上げます。  次に、私どもは單なる反対論者でありません関係上、一言触れておきたいと思いますが、現在反対なされておる方に対しても、私どもは非常に不満な感じをもつております。と申しますのは、國家管理のような強力な手段によつて、そうして將來國有國営を前提とした炭鉱社会化ということを考えないならば、決して日本石炭増産というものは望めません。現在の炭鉱のあの原始的な採炭方法、あのみじめな労働者の生活、ああいうものを考えまして、現在施設のままでは決してこの石炭増産ということは望めない。一年や二年の石炭増産の問題ではありません。われわれは恒久的なものを考えなければならないそのためにはどうしても現在のようなこういう骨拔きのものでなしにたとえば炭鉱労働組合全國協議会が提案したようなああいうものを労働者の政党である社会党が首班である限りは、積極的に取入れて、そうして社会党本來の、選挙に公約した政党を、今こういう骨拔案を撤囘すると同時に、ただちに出すような運動を起していただきたい。そうしてわれわれの要望しているところの國有國営を前提とするところの國家管理が実行されたときに、初めて石炭の恒久的な増産が望まれる。それから現在のままで、現有施設の非常に不備なままで、どうしてこの三千万トンを達成するかという点に対しては、やはり労資双方の協力と同時に、國家からその隘路を一々解決してもらわなければ、現在の労資だけではでき得ない非常に大きな点があることを考慮していただかなければならぬ。そうして一面には新構想のもとにわれわれの要望しているところの國家管理を一日も早く実現できるように、あえて片山内閣にわれわれは要望する次第であります。
  16. 伊藤卯四郎

    伊藤委員長 次は報道関係でありますが、この名簿にありまする肩書と少し変つておりますので、御報告を申しておきたいと思います。日本新聞通信放送労働組合中央執行委員長の川添さんに御意見の発表を願います。
  17. 川添隆行

    ○川添公述人 私は元來商賣は報道関係の者でありまして、新聞通信放送関係從業員で組織しております労働組合の代表として、みんなの意見をまとめてまいつたのであります。われわれの商賣それ自体といたしましては、反対も賛成もないわけであります。反対論も大いに報道するし、賛成論も大いに報道するのであります。その点はまず御了解を願いたいのであります。仕事はそれでありますが、しかしやはり月給をただ一つの自分の生活の支えとして生きていく労働者であります。また廣い意味の勤労者であります。從いましてやはり何とかしてこの現在のやみを僕滅し、インフレを止めて、日本生産を復興しなければならぬということは常に考えておりまして、生産復興ということについては非常に熱心な関心をもち、かつ努力しておるのであります。早い話が新聞の用紙にいたしましても、われわれといたしましては、もつと大きな新聞を出して、この議会の模様ももつと詳細に國民諸君に知つていただきたい、こう思うのでありますけれども、何しろ用紙の増産がなかなかはかどりません。そのやはり一つの大きな原因が石炭にある。そういう観点からも、石炭増産についても、從つて今日問題になつておりまするところの石炭國家管理法案につきましても、重大な関心をもつておつたのであります。きようこちらに來て意見を述べるということでありますので、忌憚なく意見を述べて皆さんの御参考に供して、われわれの主張を少しでも取入れていただきたい。こういうふうに考えるわけであります。  そこでこれは皆さんだれもその通りと思いますが、現在の状態ではだめだということであります。現在のような状態では、おそらく各職場が労働不安に襲われ、あるいは資材難その他から各職場が、山が崩壊する危險があります。すでに他の産業においては続々とそういう職場があるのであります。ただ石炭につきましては、今日現在そういう情報、大規模な職場崩壊ということは聞いておりませんが、そういう危機は刻々迫つておるということを皆さん政治家として大胆にひとつ認めていただきたい。何とかここで手を打たない限り、日本のインフレも止まらないし、よほど深刻な経済危機が來るということは、非常に大きな社会不安が來、政治的不安が訪れるということであります。どうしてもここで徹底的な拔本塞源的な手をひとつ打たなければならぬと思うのであります。きのう來聽いておりますと相当統制は必要であるけれども、時期尚早だというような御意見もあつたようでありますが、日本社会が、政治が、あるいは経済が大混乱になつてから、これは何かやろうというのでは遅いのであります。聰明な政治家たる者は、やはり大混乱が起る前にそれを予想して、それを抑えるだけの手を打つてもらわなければならぬ。それが今囘の法案に対してわれわれが重大なる関心をもち、切にこれを推進したいという氣をもつている第一点の理由であります。それで現状ではだめだというこになりますれば、どうしてもわれわれは決定的な計画経済が必要であるということを考えるのであります。きのうも技術関係の石渡先生、あるいは青山先生その他からもお話がありました。技術はどんどん発展していきます。どんどん方式も変つておる。これをどんどん遂行していきまするには、もうちつぽけな個人的な所有関係のやり方ではだめなのだ。やはり全國民、あるいは全人民が総がかりになつて優秀な、そうして大きな資本を投じて企業の機械化をやつていかなければいけない。こう思うのであります。また資材にいたしましても、無統制資材の配給ではやはりいけない。きのう木材関係のお方の話を聽いておりますると今のような統制のために手続きがやつかいだから、木材が石炭山に流れない。こういう御意見がありました。これは私も確かにそう思う。ああいう煩瑣な、非能率的な手続きをやつておりましたならば、スムースに木材が流れないでありましよう。しかしながら逆に統制をやらなかつたらどういうことになるかと申しますと、その木材は必ずしも石炭山に行くとは限らない。むしろ当座のもうけの盛んなダンス・ホールとか、映画館、喫茶店、待合というようなところに、木材は流れていくのであります。從いまして資材という点から申しましても、やはり計画経済が必要だ。それからまた金融の面においてもそうであります。現在のような銀行の組織におきましては、どうしてももうかる所に金を貸すにきまつておる。決して増産が第一ではなくして、あの会社に貸せば何でもうかるかは知らんけれども、とにかくもうけて必ず返してくれるというような所にしか貸さないのであります。金融の面からいたしましても、計画経済は必要だ。それからまたこれは終戰以來時に顯著に皆さんも痛感されることと思いますが労働者の生活の安定、これをはかることが絶対に必要だ。これは何も終戰後でなくても、終戰以前もそうであつたのでありますが、民主主義的な政治を遂行するようになりまして、労働者発言力というものが非常に強大になつてまいりました。これは実際の事実である。この労働者の生活不安を除去することなしには、増産も期待できないのでありまするが、労働者の生活不安を除去するために、いろいろ賃金を十分にやるとか、食糧をよくやる、住宅もあるいは安全施設もよくしてやるというようなことになりますと、どうしてもちつぽけな個人的な経営ではやつていけない。大きな國家の力をもつて大規模な厚生施設を施さなければならぬ。こういうふうに考えます。從いまして炭鉱そのものをもつともつと強化し一、二の者の所有物にすることなく、全國民のためにという方向にもつていかなければ、計画経済はできない。こう考えるのであります。  それで結局問題は、その計画経済のやり方にあるのだと思うのであります。きのう以來資本家的な計画経済というものに対する批評はあまりなかつたようであります。その問題は三つある。三つの方法しかないのであります。それは資本家の手による計画経済をやつてもらう。あるいは官僚の手による計画経済をやる。あるいはまた第三には何と申しますか、全人民というか全國民というか。働く人々が全部総がかりでこの管理をやる。この三つしかないのでありまして、そのうち資本的な計画経済、これもやろうと思えばほんとうは論理の上ではできないことはありません。しかしこれはおそらくまつたく不可能に近い。と申しますのは、資本家的な計画経済をやりますのには、どうしても大資本を獨占的に集中しなければできません。資本家がたくさんおりましたのでは計画経済はできない。そういたしますと、自由競争を猛烈にやりまして、そして中小工業中小的な弱小企業を自由競争によつてたたきつぶしまして、二、三の、あるいはたつた一つの大資本が全炭鉱を獨占いたしますならば、資本家的な計画経済もできるのであります。しかしそれをやるというのには、これはものすごい自由競争のるつぼがここに起る。やみとインフレがもつともつと激しくなりましようし、労働不安、社会不安というものははかり知ることができないこれは私はまつたく今では夢物語りであると思うのであります。また最近の國際的な情勢を考えましても、集中排除法等の精神に盛られた点を考えましても、資本家が眞に日本産業を獨占して、資本家の手で計画経済をやるということは当然できない。こう考えます。次にはそれでは官僚の手に任せておいたらどうだということである。一應官僚といいますと、公平のようにも見えますが、これはきのう以來痛烈に官僚統制がだめだということは、皆さんから御批評がありましたので、繰返しません。元來官僚統制というものはないのであります。この官僚というものは足場はないのであります。だれかのしり馬に乘つておるにほかならない。從いまして官僚統制というものにわれわれは期待することは絶対にできないと思うのであります。從いまして結局國家管理のやり方というのは、一口に申しますれば民主的にやるということになるのです。働く人々がみんな國家管理に参加いたしまして、全責任をもつてやらなければならぬ。働く人々が全責任をもつためには、働く人々が一人残らずこの石炭管理発言権をもたなければならぬ。こういうふうに考えるのであります。そうしてその中でも最も重心になるのは、やはり自分の手で石炭を掘るところの労働者、これと密接に結びついておる技術者。技術者もやはり労働者であります。そうした人々がほんとうに指導権を握りまして現場の開発計画を進め、そして増産実施しなければいけない。こういうふうに考えるのであります。そういう見地からこの法案を見ますと、非常に官僚統制のきらいが多いのであります。これは現内閣の性質からそうなつておるのかもしれませんがどつちにもよいようなことばかりであります。資本家からもあまり攻撃されぬように、労働者にもちよつと相談に乘るような乘らぬようなことが書いてある。どつちにもいいということはどつちにも悪いことだ。これはだれも支持しないということだ。これではおそらく私はだれも支持しないだろうと思う。だれも支持しない法律というものは、有力な運営の力をもたないということを十分考えていただきたい。現在の実情を申しましても、石炭労働者約四十三、四万、このうち労働組合に組織されておらない者は約一、二万、しかないのであります。この四十二、三万の全部の炭鉱労働者がこの國家管理を絶対的に支持しておるのであります。それからまた関連産業労働者におきましても、日本に今四百五十万という労働者労働組合等に組織されておりまするが、この労働組合も、團体によつて差はありまするけれども、全部少くとも最低限において國家管理断行を主張しておるのであります。こういう実情をひとつはつきりと認めていただきたい。この実情を無視いたしまたならば何事もできないでありましよう。これを無視してやるとするならば、また再び軍閥政治を布いて、労働者は文句を言うな黙つてついてこいという獨裁政治をやるほかには切り拔ける途はありません。しかしそれは不可能であります。またやるべきでありませんから、この四百五十万の、特に石炭に從事する四十三万の労働者が、声をからして國家管理を断行せよというこの声を率直に認めるべきであると考えるのであります。從いまして私は現行法案につきましては、この労働者の修正意見——こういうなまぬるいものではだめだという意見を十分に取入れていただきたい。それには何よりも労働者が安んじて働き得るところの、あの豚箱のような生活を排除するところの、生活の安定のための目標をはつきりと掲げていただきたいということであります。それからきのうのお話で氣づいたのでありまするが、たしかにもつと技術という点を尊重していただきたい。技術を尊重するということは、結局炭鉱を機械化するということであるし、これを公共化するということになりまするので、科学的な精神を十分取入れていただきたい。  その次には管理の対象を全面的にしなければだめだということであります。私は國有國管こそがほんとう労働者生産意欲を百パーセントに発揮するものだと思うのであるまするが、この法案に関する限りは、少くとも全面的に國営をはつきり出してもらいたいということ。それからその次には生産協議会といいまするか、職場のあの諮問機関ではだめだ。責任をもつて石炭を掘つてもらうには、やはりその発言というものは單に聽くだけでなくして、諮問するだけではなくして、その意見に聽かなければだめだ。從いまして生産協議会というようなものは諮問機関ではなくて、やはり決議機関として、そこで決議したことは実行するという仕組にしてもらいたい。それからその上部機構においてもそうであります。これにもどんどん労働者の代表その他働く人々の代表をここに入れまして、虚心担懐に働く人々の意向がどこにあるかということを聽いて、その意見をその通りにやる。これが大事であると思うのであります。すなわち全機構労働者の手に大胆にひとつ任してもらいたい。そうすれば必ず労働者は百パーセントに生産意欲を発揮して石炭を一生懸命掘るでありましよう。その際において私はお願いしたいのは労働者の熱情と力というものを十分に信頼してもらいたいということであります。これは労働者諸君も自分の力というものをもつともつと信頼して、自信をもつていただきたい。労働者でやれます。すでに小さな企業におきましては、労働者自身でぐうたらな重役を追い出して、自分たちの手で仕事を復興した実例もたくさんあるのであります。この力を全炭鉱に発揮してもらいたいということであります。  それからこの法案は臨時になつておりまするが、臨時ではだめだ。きのうも畢生の仕事とするような仕組にしなければ、人はほんとうに働けないという意見が出ましたが、私もこれは賛成でありまして、臨時法律ではなくして長い將來にわたる恒久法としていただきたい。それから関連産業もこれと歩調を合わせて國有國営の方向へもつていくべきである。でなければびつこになりまして、決して十分なる運営はできない。こう考える次第であります。この法案の最大欠点は顔が二つあるということであります。いわゆる右往左往派である。こういうことではほんとうの政治的な力のある仕事はできないのであつて立場はつきりしていただきたい。およそこれだけの大きな仕事をいたしますのには、多少の反対派というものが当然あります。それに恐れてはだめだ。敢然として自分の信念を貫くだけの政治的見識をもつてつていただきたい。結局今の段階においては、この四百五十万の組織勞働者が安んじて支持するような案をつくつていただきたい。ゆえにわれわれもこの原案には軽々しく賛成はできないのであります。もちろん現状維持には絶対に反対であります。しかしこういうなまくらないい加減な原案ではどうも將來見込みがないというので、これには簡単に賛成しかねる。むしろ反対であるという点を申しておきます。  最後に、最初に申しましたことと同じでありまするが、どうか皆さんは日本の將來を担うところの大政治家として、日本の政治的動向を十分考えていただきたい。そうでないと必ず日本には大きな社会的不安が参ります。もしも炭鉱國管がお流れになつたということになりまするならば、少くとも炭鉱勞働者がどういう状況になるでありましよう。おそらくひどい紛爭が起るのじやないかと思うのであります。一部においてはこれをもつて資本家が意氣銷沈してサボるのではないかということを恐れる人もありまするが、その反対にこれが成立しない場合に——これがと申しますのはこの修正されたわれわれの意見をくんだ法律が流産になりました場合に、失望落胆するところの勞働者、それによる職場崩壊の危險性考えますると、実に問題は重大なのであります。どうか大胆な政治的判断をもつてわれわれの修正意見、原案のままではだめだという修正意見を取入れてやつていただきたい。これはわれわれの希望であります。
  18. 伊藤卯四郎

    伊藤委員長 次は関連産業関係産業機械工業会会長の黒板さんが御出席になりましたから、黒板さんより御発言を願います。
  19. 黒板駿策

    ○黒板公述人 私ただいま御紹介をいただきました産業機械工業会長黒板であります。本日炭鉱國管問題について意見を述べるようにという抑せでございますが、國管問題については二つ考え方があると私は思つております。つまり重要産業國家管理にすること自身がよいか惡いかという問題、それから今囘提出されたような増産の手段として國家管理をすることが増産の方法として妥当であるかどうかという問題。こういうふうに問題はわかれてくるのじやないかと思います。國家管理そのものについて考えますと、將來わが國の民主化が十分達成された曉において、かつ國内の経済事情がそういうことを必要とする段階においては、私は重要産業國家管理にすべきものであるということを考えるのでありますしかしこれは今日の問題でないと私は思います。今日の問題としては、われわれは商工大臣が言われたようにイデオロギーにとらわれず、今日われわれの必要とする石炭を一トンでも多く掘り出す、それにはどうしたらいいか、こういう問題としてこれを考えていかなければならないと思うのであります。そこでそういう見地から今囘國会に提出されましたところの法案についての私の見解簡單に申し述べたいと思うのでございます。  結論から申しますと、私もまた先ほど來各位が抑せられたごとく、今囘の法案にはまだ幾多の欠点があることを認めるのであります。そうしてその結論といたしまして、私は今日の状況においては、まだこの法案はもう少し檢討していただく必要があるのではないか。このまますぐ実施されるということは、いたずらに動搖を來すのみであつて、決して増産目的を達成するに適当でない、私はかく断言するものであります。その理由を私はこれから簡單に申し上げます。  第一の理由は、総合的な計画性が欠如しておることであります。このことは炭鉱に限らず、從來肥料の増産その他の点においても現われておると私は思うのでございます。と申します意味は、われわれが機械業者の立場から、自分の身にしみて感じておることでありますから、これは理窟として申し上げるのじやない。私ら機械業者の偽らざる声として聽いていただきたいと思うのであります。從來重要産業重点産業と言われるものはわれわれの立場から申しますと、これはあるいは資本家根性である、経営者の利己的な考えであると言われるかも知れませんが端的に言つて、引合わない仕事だ、もうからない仕事だ、こういうふうに言われておるのであります。これはどういうことかと申しますと、もちろん今日の段階において、われわれが國家のために犠牲を拂わなければならないということはもちろん覚悟しておるのでありますけれども、このわれわれに要求されるところの犠牲の程度が少しひど過ぎるのじやないか、われわれをその犠牲に甘んじさせておいて、このまま機械業者が亡びていつたならば、はたして日本の再興ができるかどうか。將來の日本の再興ということが機械工業の振興にあるということが間違つていないならば、もう少しその点も考えていただかなければならないのではないかというふうに考えておるのであります。たとえば先ほどの炭鉱関係の勞働者の方もおつしやつたのでありますが、今日石炭を一トンでも多く掘り出すにはどうしたらいいかというと、まず第一に設備を改善することにある。いかに勞働者の生産意欲が高まつても、設備が改善されないならば決して所期の効果は上らないと私は思うのであります。この点は先ほど高萩炭鉱の勞働者の方が言われた言葉に、私は百パーセント共鳴をいたした次第であります。その点をどうも從來関係方々がお忘れになつておる——ということは少し過言かも知れませんが、いささか軽く見られておるのではないか。言いかえれば、戰爭するのに第一線に兵力を注ぎこむことばかり考えて後方の兵站線ということをお考えになつておらないのではないか。すなわち肥料を増産するといえば、肥料会社にどんどん報奬金を出す、報奬物資を出すというようにあらゆる便宜を拂う。しかしその肥料会社の設備をする機械業者に対しては一体何を與えられておるかということを考えてみればわかると思うのであります。炭鉱についても同様であります。たとえば今日炭鉱労働者が炭車を押すのに何人もかかつて押しておる。炭車が損耗しておる場合には、二人で押せるものも四人、五人でかかつて押さなければならぬというように考えるのです。決して労働者生産意欲だけでは増産はできるものではないと私は思うのであります。この点から考えまして、もう少し石炭増産の問題については組合的な御計画を願いたい。その総合的の御計画ができた上において、國家管理なら國家管理ということをおやり願いたい。かように考えるのであります。しかも今日の現状から申しますと、その設備の改善というものは、皆様がすでに御指摘になつておるように不十分であります。その結果はどうなつておるかというと、いたずらに炭鉱における人件費は増大する一方であります。從つていわゆる設備資金不足になつて、人件費が設備資金を食つてしまつて、ますます設備ができなくなるまたわれわれ関連産業から申しますと、支拂を受ける場合において、非常に炭鉱は金拂いが惡いということになりますと、やはりこれは人情と申しましようか、炭鉱の仕事をほんとうに積極的にやるという氣力が拔けてしまうのであります。これでは決して炭鉱設備改善もできなければ増産もできないのではないかと思うのであります。こういう点を御解決にならないでおいて、今囘のような法案を実行なさるということはわれわれにとつては絶対に賛成できないのであります。われわれの考えとしては、それではどうしたらよいかと申しますと、もちろんこのままで放つておいてはいけないということはわかつております。ですからわれわれとしては問題がそれるかもしれませんが、炭鉱業者がもし資金不足等によつて、みずから設備のできない場合は、國家みずからの手によつて設備をおつくりになつて、そうしてその設備炭鉱業者にお貸しになつて、そして炭鉱増産能率に應じて賃貸料を増減するとか、あるいはある時期においてその炭鉱自身の所有になるような方法をおとりになることはできないものであろうか。そういうような方法をとつていただいた方が、むしろこういうややこしい炭鉱國管法などというものを論じて、これを実行して、さらにそれについていろいろごたごたやるよりも、はるかに私は増産に対して効果があり、しかも今日の場合は非常に緊急な差迫つた事態でありますから、あまりめんどうくさい複雜したことをやらずに、簡單な、そしてはつきりしたことをおやりになつた方がよいのではないか。これは多少問題はそれるかと思いますけれども、この機会を通じましてわれわれ業者としての希望を申し上げます。  次に今度の國管法案を見ますと、結局われわれの受ける感じから申しますと、炭鉱経営というものが官僚経営者労働者、こういう三つの頭、三頭政治と申しますか、そういう寄合世帶のような形において行われるように感ぜられるのであります。このことはいわば三人で——二人三脚というのがありますが、三人二脚とでもいつたようなかつこうで競走するようなものである。今日ちよつとでも早く石炭を出さなければならぬ、こういう時代においてお互いが牽制し合つたり、お互いが責任のなすり合いをしたり、そういうようなことの起り得るような体制をとられるということは、どうしてもわれわれとしては理解できないのであります。むしろこういう際はこういう形式的の民主主義を排して、むしろ思い切つてほんとうに有能な責任のある向きに一切の責任を負わせる。これは私は必ずしも経営者責任を負わせるという意味で申し上げているのではないのですが、お互いだれが見てもこの人に任せるのが一番いいという向きを発見して、その人に一切の全権を與えて任せる。こういうやり方にいたしていただいた方がわれわれ関連産業としてはありがたいじやないかと考えます。そうしないと、結局三頭政治によつてお互いに内部で、もし円滑に行けばいいけれども爭われるようなことが起つたならば、やはりわれわれ関連産業の方もその影響を受けなければならない。これをわれわれとしては、非常に恐れているのであります。必ずこれがうまく行く皆仲良くやつて、今までより非常にうまく行くということが保証できるならば私は賛成します。しかしこれが問題なのです。おそらくわれわれの想像としては、いろいろの問題が起るじやないか、かように思いますので、この点についても非常に疑念をもつている次第であります。  その次に先ほど來問題になつております炭鉱施設の怠られているのは、結局資本家のサボの結果であるというようなことを言う人があるのでありまして國管になればそういうことはなくなる。從つてどんどん炭鉱施設が改善されてよくなるのだ。從つて関連産業も潤つてくるのだというような説をなす人もあるのでありますが、しかしこの炭鉱設備が今日怠られているということは、要するに経営者側が、炭鉱國管になる、その次は國営になる、國有になるということに怯えて、施設をされないのじやないか。そういうことに対して躊躇されるのじやないかとわれわれは感ずるのであります。むしろこういう方向によらず、今日の場合においてはもつと適当な方法で、経営者側生産意欲をも高めるような方法をとつていただけないものであろうか。たとえば私が先ほど申し上げたように、國家設備をして、それを業者に貸與するような方法、そうしてそれが業者の努力次第においては、自分のものになるというような方法をとつていただきますならば、おそらく経営者側も大いに生産意欲を高めて、積極的に施設をやつていこう、改善していこうという氣持になられるのではないかと考えている次第であります。  次に金融面が、國家管理になれば非常によくなるだろう。現在非常に炭鉱関係の支拂が惡いのでありますが、この点その設備資金の方が浸蝕されることに対しては、われわれとしても、いわゆるその方面に対する金融についてひもをつけていただくというようなこともお願いしておるのでありますけれども、しかしこれまたなかなか思うように参らないのであります。從つて現在の状況から推してみますと、先ほど金融関係公述人の方もお話がございましたように、必ず金融面が現在より改善されるということは、断言し切れないのであります。むしろ現在われわれ業者一般の考え方から申しますと、非常にその点について不安をもつております。というのは、先ほど來お話がありましたように、たとえば運輸省あたりの拂いが非常に惡い。どうも國営とか國家の方の支拂になると拂いが惡いというようなことを、ほとんど確信的に業者は考えておるものでありますから、実際これはやつてみなければわからぬことでありますけれども、非常な不安をもつております。ですから國管法が施行されて、実際に金融の方が動き出すその間においては非常に不安の状態を続けなければならぬと私は思うのであります。從つてどうしても業者の方としての積極性を求めることができないのじやないかと思うのであります。  最後國管によりますと、從來炭鉱といろいろの関係のあつた機械業者との関係が一應なくなる。そうすると、そこに新しいメーカーに進出の機会を與えることになつて、結局眞に実力のある新しいメーカーたちがチャンスを得ることになるから、それによつて炭鉱施設が今よりずつとよくなるだろうそういう点において國管法の一つの利点があるのじやないかという説があるのでありますが、これも実際上の問題を申しますと、なかなか理窟通りにまいりません。なぜかと申しますと、これはもう炭鉱関係の方がお考えになればすぐわかると思うのでありますが、実際に從來使い慣れている設備というものは、なかなか捨てられないものであります。かりにここにコンプレツサーがある。そのコンプレツサーよりもいいものが現われたとしましても、なかなかその新しいコンプレツサーに移つていかないものであります。われわれ機械業者から申しますと、新しいものができて…。
  20. 伊藤卯四郎

    伊藤委員長 黒板さん、時間が超過しておりますから、お急ぎ願います。
  21. 黒板駿策

    ○黒板公述人 能率のいいものができればそれをとつてもらいたい、かように思うのでありますけれども、しかし実際はなかなか使い慣れたものをお捨てにならぬ。こういうことでありますから、なかなかその点においても新しいメーカーの進出の機会は得られないのじやないか、理窟通りまいらぬのじやないかと思つております。こういつたようないろいろの点から考えまして私は今囘の法案は、まだそれを実行するのは時期尚早である。すなわち現段階においては反対であると申し上げる次第であります。  このことについて、なお一言附言いたしたいことは、國管によつて炭鉱関係労働者生産意欲がどんどん向上することは非常に結構であります。しかしその反面において、関連産業があまりにも打撃を受けまして、そのために関連産業経営者も、労働者も、相ともに苦しむようなことになつては困ると思います。この点の保証をやつていただきたい。そういうことによつて関連産業労働不安が起つた場合に、政府責任をもつてその労働不安を除くことができるかどうか、そのお約束がおできになるならば、私は賛成します。そのお約束が得られない限りは、私は反対する次第であります。
  22. 伊藤卯四郎

    伊藤委員長 次は一般関係より早稻田大学採鉱冶金学科教授中野さんに御発言を願います。
  23. 中野實

    ○中野公述人 ただいま御紹介に相なりました早稻田大学採鉱冶金学科の中野でございます。  私は職業の関係で、研究室の立場から、ちよつとこの法案につきまして、簡單意見を述べさしていただきたいと思います。法律のことはよくわからないのでありますが、この法案を見まして、つくづく感じましたことは、この法案一本で増産ができれば非常にいいわけなんでありますが、とてもそういうことはできないというふうな結論を得ております。從いまして、このままの形では、この法案には私は研究室の立場から見ましても、賛成はできないのでありますが、次にあげますいろいろな條件がありますが、その條件の二、三をもし満足さしてくれるような政策があるとするならば、あえてこの法案に反対をするものではありません。むしろ賛成して差支えないものと考えるのであります。その條件一つは、簡單に申しますと、坑内事情であります。大体において炭鉱坑内の労働環境を、現在よりさらによくするために、科学技術的の観点から根本的に努力し、かつその成果をあげるような事項をこの法案に盛りこむことができるかどうか、こういうことであります。御承知のように資金資材労務、そういうような面で非常に窮屈であるということはよく聞いておりますが、いろいろ方法をとりましても、その三者が今後非常によくなるとは考えられません。しからば石炭生産するに、もつとそのほかに考えることはどういうことかと申しますと、結局坑内に働く者の條件を非常によくすること、これを科学技術的な立場から非常に改善に努力する、こういうことが残された一つの方法であると研究者の立場から考えるわけであります。これをしますにはなかなかいろいろな方法があるわけでありますが、現在の状態を見ますと、たとえば石炭鉱爆発試驗所とかいろいろなものがありまして、政府の方もいろいろやつておられますが、その実績を見ますと、はたしてその研究所の業績が、業者と申しますか、経営者側、あるいは労働者側から感謝されたようなことがあるかどうか、それらを考えますと非常に不安になりますので、こういう政府がこの法案に盛りこむか、あるいは別に十分な施策を考えられるか、こういうことができましたならばよいと考えるのであります。  條件の二番目は、これも技術に関係したことでありますが、夢のようなことかもしれませんが、一つ申し上げます。提案者はこの法案と併行して炭鉱の科学技術の結集進展のために、炭鉱の科学技術を中心とした一大機関を育て上げる用意があるか、つまり今まで論議されましたお話をいろいろと伺つてみますと、技術的の精神と申しますか單に技術者というわけではありませんけれども、技術科学、そういうような精神を盛りこんだ論議、あるいはそれを應用することのみがたつた一つではありませんが、生産の大きな問題である。こういうふうに考えておられる方が、あまりなかつたように私には見受けられるのであります。法案を見てみますと、第三十八條でありますか、生産協議会関係のことが出ております。それから第五十四條以下に管理委員会のことが出ております。ところがこの協議会、こういうような相談を非常に建設的なものにするためには、どうしても科学技術的な観点をもつた公正な考えの人が多く集まりまして相談をすることが、一番よいことであると考えるのであります。その点につきましてこの法案には、その精神がほとんど盛りこまれていないので、非常に残念に思つておる次第であります。  條件の三番目でございますが、これはその法案と直接の関係がないかもしれませんが申し上げます。提案者は石炭行政機構の中に、能率技術家を入れて、あるいはその協力によつて、行政事務の迅速化をはかる決意があるかどうか、こういう点であります。伺つておるところによりますと、戰爭中あるいは戰後を通じましても、炭鉱を混乱に陷れたという大きな原因の一つは、官廳の行政事務の非能率にあつたのではないかと考えます。ところでこれをよくすればいいわけでありますが、單に官廳の機構は非能率であるという投げやりな言葉だけでは、責任がもてないのではないかと思いますので、石炭生産関係にあります官廳の行政事務と申しますか、そういうものにつきましては、思い切つて能率技術家いわゆる能率技師というようなものの助けを借りて、どこが悪い、どこがいい、どこがまずいというようなことをはつきりきめて、石炭生産関係の行政に限つて、ほかのものとは違つて、非常に能率百パーセントであるというふうにして、しかも炭鉱能率化の点を重視するような人を求めてこれを改善していく。これが三の條件であります。この條件が満足させられるような態勢になりましたならば、私はあえて今の法案には不賛成ではなく、むしろ賛成しても差支えないわけでありますが、これができない限りにおきましては、よほどお考えになりませんと、まずい結果になりはしないかというふうに考える次第であります。
  24. 伊藤卯四郎

    伊藤委員長 次は石炭研究所長久保山さんに御発言を願います。
  25. 久保山雄三

    ○久保山公述人 石炭研究所の久保山であります。本日はこの重要な法案國会が審議されるにあたりまして、私に意見をべさせていただきます機会をお與えくださいました伊藤委員長を初め、委員各位に深甚の謝意を申し上げます。  この法案を第一條に「政府経営者及び從業員がその全力をあげて石炭増産を達成する云々」とあります。この一條に対しては全幅の賛意を表するものでありますけれども、以下の各條項に対しては、はなはだ遺憾ながら全面的な反対を申し上げなければならぬと思うのであります。すでに公聽会も四日目となりまして、各界の代表からそれぞれ本案については深甚の檢討がなされましたので、その重複を避ける意味におきまして、私は慨活的にこの法律を見ました立場から所見を申し上げてみたいと思います。  労働組合の代表各位は、異口同音に炭鉱業者が石炭の横流しをする。あるいはもうけている。あるいは政府から與えられた資金を流用している者がある。はなはだしきに至つて生産サボをやつている者がおると申されました。もちろんこの生産サボという問題については、いろいろ解釈の仕方によることでこれは早計に言うことは考えなければならぬと思いますけれども、いわゆる石炭の横流し、もうけている。資金の流用、この三点に対しては、はなはだ遺憾ではありますけれども労働者諸君の言われることを、全面的に否定する用意は私はもつておりません。しかしながらかように否定する用意はもつていないと申しますけれども、半面から考えてみまして、たとえばさような事実があつたとしても、それはきわめて少数のものであろうと私は想像いたしております。もしここに石炭の横流しの数量を端的に考えてみますならばそれはおそらく石炭の全生産数量の一%にも満たない、きわめて微々たるものであろうと考えますところが本法案の立案の根本目的が、ただいま申し上げました日本石炭鉱業界全般から見たならば、きわめて微々たるものでありますところの石炭の横流し、あるいはもうけている者、こういうぐあいになつて、きわめて一部分の人にすぎない問題を取上げて、全石炭産業部門に適用すべく、この峻烈な罰則を盛つております法案を立案されたことに対して、私ははなはだ遺憾に思うものであります。では炭鉱業者に若干の横流しがある。たとえ微々たりといえども、少数といえども、もうけておる者がある。こう非難されますならば、労働者諸君にサボる者がはたしてないでありましようか。私は長年の体驗から、現在でも坑内に下つてみますと、たとえば切羽の作業においても、一番よく働く工員と、一番よく働かない工員の能率実績を記録において調べてみますと一番働く者の五に対して、働かない者は一程度の仕事しかしていないのであります。もし甲の者が五の仕事ができるのに対して、乙が一しかできないというならば、これを私はまじめに、眞劍に働いておる者だとは考えたくありません。また言葉をかえて申すならばさような者はあるいはサボつておるのではなかろうかと申し上げてもよいと思います。またはなはだしいのに至りましては、職場を離れて、人目につかないところで寝ておる者もあるようであります。もしかような者を考えてみますと、極端な見解ではありますけれども、働くという條件のもとに、一定の賃金をもらつていながら、職場を離れて晝寝をするような事実があつたとしたならば、それは明らかな詐偽だ、こう申さなければならぬと思います。かように考えてみますと、本法案については、炭鉱経営者のサボ、あるいはその他の問題については嚴重に條項を設け、三年以下の懲役というような嚴重な処罰は設けられておりますけれども、反面労働階級においてサボその他に対しての處罰の規定が設けてないということは、明らかな片手落だと申さなければならぬと思います。この法案の中に炭鉱管理者あるいは経営者が、生産協議会その他の議を経てもし案を提出しても、それが主管大臣ないしは長官、局長の意に反する場合には、変更を命ずることができる、こう規定されておりますけれども少くとも炭鉱企業計画と申すものは、一朝一夕にしてできるものではありません。すでに三井、三菱その他の大炭鉱においては、もう現在より來年度の事業計画に着手しておるのであります。かように日月を要し、人手を要する企業を、單に一長官、局長の意思によつて、これが撤囘させられ、變更させられるとするならば、この変更を実際に行うとするのに、時間的に余裕があるかどうかが肝腎な問題でありますけれども、私はさような問題はおくといたしまして、少くとも事業管理事業経営者が立案をするからには、相当の信念と確信をもつて立案いたしておるのであります。これに対してこれに從わざる者は三年の懲役に処するという強権の発動によつてこれを変更させたといたしまして、この炭鉱管理者が眞劍にその仕事に熱がはいるかどうかが疑問であろうと思います。もしこれを議会にたとえますならば、戰爭中の軍閥の強力な意見は議会をも支配したように私たちは承つておりましたけれども、当時の議会人が眞劍に議会において議案を論議したでありましようか。おそらく当時の代議士諸君のお話を聞くところによれば、仕方ないから賛成したのだ、うわのそらで賛成したのだというような、まことに熱のない審議の仕方であつたと、こう聞いておりますけれども、まさにこの炭鉱事業計画も、一局長、一長官によつて変更を命じられたならば、おそらくその仕事は熱のない、魂の失われた事業遂行にしかならないと、こう考えられるのであります。かような意味合において、私は本法案のもつ性格は、石炭増産をするものでなく、減産に導く憂えこそ存するものだと、こう考えておる一人であります。私は本法案を論議するにあたりまして、また皆さん方委員各位が審議されるにあたりましても、もし本法案を否決しようとするならば、他に本法案にかわる増産の途があるかどうかということを見出さなければならないと思います。少くとも私も本法案に反対し、否決を皆さん方に希望する以上、そのほかに増産の途ありという言明をしなければ無責任もはなはだしいと考える次第であります。從つて現在の日本の現状において、はたして増産の途があるかどうかということを檢討しなければならぬと思います。もちろん本法案が通過しようとしまいと、日本政府石炭産業に対して資金あるいは資材の面において、全面的な協力をされるであろうことは私疑いませんけれども、その資材が十分に與えられるとは考えられません。しからば十分に資材が與えられないのならばわれわれとしては資材なくして増産の途は那辺にありやということを、眞劍に檢討する必要があると思います。  そこで私は、今日の炭鉱能率の上らない最大の原因を、職場における生産能率の基準の渾沌としておることだと思います。たとえば最近交通地獄を唱えられますと、朝寝坊をした官吏でも、出勤してきて、電車が故障であつたからという言い拔けをこしらえます。また現在の炭鉱の諸君に、生産の上らなかつた、実績の上らなかつた点を追究すれば、資材が足りなかつたというような口実を設けられますように炭鉱で働く一鉱員といえでも、いろいろな口実を設けて、あるいは食糧の配給がないじやないか、買出しに行かなければならぬじやないかといつたような口実を設けて、能率の上らないことを糊塗されるような事実があるようであります。でありますからこの点においては明らかに、人間一人当りの生産量はどれだけなんだ切羽においてはどれだけなんだ、掘進においてはどれだけなんだとすべての作業部面全体にわたつて、作業標準の設定をすることこそ、日本炭鉱能率向上の最大な原因だと考える次第であります。私の今日まで実驗いたしました結果をここに申し上げますならば昨日でしたが、一昨日でしたか貝島炭鉱大之浦の労組の代表の方が見えておられましたが、あの大之浦の炭鉱で実驗いたしました記録によつて申しますと、ある一定の坑内状況のもとで、二トン四分の石炭を、スコップで運般機に投げこむ作業の実驗につきまして、貝島炭鉱の大之浦の桑原という青年は、体重が五十七キロであつたと思いますが、この五十七キロの小さな体格の青年が、十七分四十五秒でそれを全部投げこんでおりますそれに対して三井田川を代表した阿部君というのは、ちようどその倍の三十五分五十四秒かかつております。しかもこの阿部君は七十キロという実に巨漢でありました。炭鉱坑内のまことに狹い地域におきまして、地域的に制約を加えられ、あるいは坑木を立てられた柱によつて制約を加えられたり、かようないろいろん條件によつて制約を加えられた坑内作業において、いかに練達の経驗が有効であるかということを、この点明らかに証明しておると思います。早い話が二トン四分の石炭を五十七キロの体躯の男が十七分で投げこみ、七十キロの体格をもつた者が三十五分かかつた。しかもこれは未驗者ではなく、少くとも数年間を三井田川で働いており、しかも三井田川を代表すべき人間だと目されておる者においてさえも、かような開きがあるのであります。ここでかようなものを実驗の基礎といたしまして、すべての炭鉱作業部門に十分な研究を重ね、十分な檢討の結果、権威ある作業標準をこしらえておいたならば、おそらく監督者の目の行き届かない所ででも、営々として與えられた責任を勞働大衆は果すであろう。  私はこう信ずるものであります。私がこう申せば、労働大衆諸君は、それは労働の強化だと言われるかもしれません。しかしながらそれはまつたくあたらない言葉であつて、私はこのことこそ労働合理化だと申し上げてよろしいと思います。何となれば今日の炭鉱労働賃金の決定方法は、能率給によらなければならぬとは言われておりますけれども、一定賃金が原則となつておるようでありますから、今日の賃金のきめ方は、先刻申し上げましたような、一番働く者、一番働かない者とは五対一の開きがあるにもかかわらず賃金はまさに同一の賃金を與えられておるということは、不まじめな働かない者の反面、まじめな者が犠牲を拂つておる。こう申し上げなければならぬと思います。要するに私がただいま申し上げようとすることは、まさに日本炭鉱労働者諸君の利益を均等に與えるために、かような施策が施されなければ、まじめに働く者がばかを見るという結果になると考えるがゆえであります。
  26. 伊藤卯四郎

    伊藤委員長 久保山さん時間が超過いたしましたから御注意願いたいと思います。
  27. 久保山雄三

    ○久保山公述人 では時間もまいりましたので、かような見地において本案には賛成できかねるものであります。要するに本案を否決されるといたしましても、炭鉱労働者諸君の手に技術があるわけでありますから、炭鉱勞働者諸君の——ちよつと申し忘れましたが、このスコップその他についての精巧な研究がされてありましたが、それは芦別炭鉱の一鉱員が、日本人の手にとつてはスコップの柄が大きすぎる。だからこれを小さくせねばならぬ。そういうぐあいにいろいろ研究されておられたのは、決して帝國大学の教室でなく、まさに四十万炭鉱労働者諸君の手によつて研究された事実もあるのでありますから、これを作業部面全般にわたつて、四十万從業員諸君の中に求めるならば、その指導者もすでに研究されておる成果もあると思います。  そこで私がここで結論としてお願い申したいことは、本法案に代るに合理的作業標準の設定を速やかに完成し、それによつて能率が最高度に発揮されたならば、またこれが経営者の不当なる利益の搾取となることを避けるために、いつ何時でも経営者事業内容を監査する程度の法案を、皆さん方によつて新たに設けられるならば、それで十分だと存じます。私時間の関係でこれ以上申し上ぐる機会がありませんがここで足りないところは、参議院において補いたいと思いますから、さいわいに参議院の記録と御参照願つてもし皆さん方の御参考にしていただくことができますならば光栄この上もありません。御清聽をいただきまして謹んで御礼を申し上げます。
  28. 伊藤卯四郎

    伊藤委員長 次は最後に出版業者平岡さんに御発言を願います。
  29. 平岡達明

    ○平岡公述人 私は出版業平岡達明であります。本日は各方面の公述人方々が各面にわたつて論ぜられましたけれども國民の最大部分を占める消費者層としての家庭、小口消費者の立場から論ぜられた方はないのでございまして、出版業のみならず小口消費、家庭消費の面から、一國民としての所感を述べさせていただきたいと思うのであります。  現在出版業は、文化國家を要請せられて、世界に新しき日本としていかなければならぬその建前にあるにもかかわらず、わずかに供給量は需要量に対する二八%しか與えられておらない。しかも商工省所管では繊維関係の一部分としてのパーセンテージでございまして、インクその他のものにいたしまして、化学工業の一分派としてわずかに三二%、これらの立場において出版業界は石炭を與えられておる。かような状況におきましては文化國家の再建ということも、とうてい不可能な実情にあるのであります。この面から申しますならば、これは誤まれるところの官僚統制が、紙量の統制その他に対して、きわめて拙劣なるところの方策しか立たなかつたということの証左でしかないと私は思うのでございます。しかながら一般家庭消費層、國民小口石炭消費者の立場からいたしますならば決して國管案そのものを全面的に否定すべきものではない。わずかに官僚措置、あるいは経済官僚措置いかんによつて、かかる國家見地に立つて大所高所より論じなければならぬところの國管案に対して、全面的な反対をすることは早計であろうと私は考えるものでございます。最近商工省の調査によりますれば、全國のいわゆる鉱工会社二千数百ありまする中におきまして、わずかに五千万円の公称資本金をもつております会社は、三百億円の公称資本金総計の中に、五%しか含まれていないという実情でございます。一千万円ないし五千万の範囲内において一三%という少量のパーセンテージしかもつておらない。しかるに國家石炭増炭要請というものは、最大限度にもたれなければならぬ。わずか三千万トンあるいは四千万トンであつてはならないのであります。この見地から申しましても、從來の炭鉱資本家の熟練したところの頭脳と、手腕と、体驗とに期待するところは多いのでございますけれども國家の要請は三千万トンであつてはならないのであります。しかも今後濫掘あるいはその他の乱雜なる官僚統制の紊乱によりまして、われわれが石炭を欲くしても石炭が得られないというようなことは、大いに考えなければならぬことではないかと思うのでございます。今囘の炭鉱國家管理法案というものは臨時的である。その点においてはなはだしく遺憾の点が多いのでございますから、賛成ではございますけれども、全面的に大修正を加えていただかなければいけないものであるということを申し述べたいのでございます。この管理法案なるものは性格が矛盾分裂しており、これを批判する意見としてもはなはだしくございます。その意味において英國クリツプス商相の案である運営方式によつて、資本家も、一般労働者も、政府も、官僚も加わつて協議会方式によつて管理法案を全面的にやり直していただくということが必要なことではないかと考えるのでございます。この意味におきまして党利党略、あるいは四党協定、あるいは党の面子ということでなく、社会党も全面的に國家管理法案産業國有化の世界の歩みに対する一つの流れであるということを強く認識していただいて、世界経済の一環としての敗戰國家の再建ということの上に、力を用いていただきたいと思うのでございます。この意味におきまして五三%賛成、四七%反対の意見を結論といたしたいのでございます。
  30. 有田二郎

    ○有田委員 この際國会の権威のために、先般自由党から動議を出しまして各党から御賛成を願つた件、すなわち炭鉱業者が一千万円の運動費を出して政党の離合集散のために使つておる云云ということに対する調査委員会について、今日に至るも委員長理事会を開催されておらないようであります。この点について委員長はサボをやつておるのではないか。かように私は考えますが、いかがでございましようか。
  31. 伊藤卯四郎

    伊藤委員長 先般委員長理事各位とこの問題について相談するようにという意見がありましたので、委員長もそれを了承いたしておりますが、公聽会等で多忙でまだその域に達しておりませんが、その時期は適宜取計らいます。  これにて出席された公述人の御意見を全部拜聴いたしました。本日御出席のない方は病氣その他やむを得ない理由で出席ができないとのことであります。これにて公聽会の議事は全部終了いたしました。委員各位より公述人各位に、何か特に御質疑の点があれば御意見の発表を願いたいと思います。
  32. 平島良一

    ○平島委員 村本さんにお尋ねいたしたい。本案は増産すると断定されたのであるが、その増産に関する具体案がなかつたように思いますので、ごく簡單に本法案がいかなる点において増産するかを具体的にお聽きしたい。
  33. 村本周三

    村本公述人 私は本法案によりまして増産を期待しておるとこういうふうに申し上げたのであります。私は第三者的な立場でございますから、その点炭鉱方々がどういうふうにお考えになつておるかということを最も熱心に伺いたいのでありますが、私が申し上げましたのは、國家管理が民主的に行われ、すべての計画ほんとうに民主的に、労働者意見も、他の國民意見も、全部が取入れられるようになりましたならば、必ずや労働者生産意慾が向上して増産が達成せられるであろう、こういつた民主的な國家管理という前提の上に、増産を期待しておるのであります。
  34. 有田二郎

    ○有田委員 それでは本法案増産できるかできないかわからないのですか。
  35. 村本周三

    村本公述人 それは私は期待しておると申し上げたのであります。
  36. 伊藤卯四郎

    伊藤委員長 それでは質疑の点はこの程度に留めることにいたします。  この際委員長といたしまして公述人各位に一言御挨拶を申し上げます。本委員会の臨時石炭鉱業管理法案の審査にあたり、特に公聽会を開きまして臨時石炭鉱業管理について、それぞれの部門の立場の方の御意見を拜聽いたすことにいたしましたところ、公述人各位は、御多忙中にもかかわらず二日間にわたり御出席をいただき、それぞれの立場に立つて、あらゆる角度から活発熱心に、豊富かつ貴重な御意見を発表していただきまして、本委員会の本法案の審査の上において、多大の参考となつたことを厚く御礼を申し上げます。  この際委員諸君にお諮りいたすことがあります。内閣提出の経済力集中排除法案は、財政及び金融委員会に付託せられております。この法案は本委員会所管に関係する部門が相当多く、また商業委員会にも関係いたしておりますので、財政及び金融委員会、商業委員会、及び本委員会の三委員会で連合審査会を開いてはいかがかという打合せをいたしておりますが、右連合審査会を明後十八日午前十時より、この第十三委員室において開催することに御異議ございませんか。
  37. 伊藤卯四郎

    伊藤委員長 御異議なしと認めます。それでは明後十八日午前十時より本委員室において連合審査会を開くことに決定いたしました。  本日はこれにて散会いたします。     午後零時五十九分散会