○庄
委員 山口、九州は、衆議院といたしまして
長尾達生君、生越三郎君、大矢省三君、
衞藤速君、庄忠人の五名であります。それから參議院の橋上保君、大屋晋三君、大畠農夫雄君、深川榮左エ門君、濱田寅藏君、この五名の方が一緒に參られたのであります。なお參議院の
委員部の淺原君と、
石炭増産協力會の福中、鈴木のこの兩君、それが一行に加わつたのであります。七月十二日東京を出發いたしまして、七月二十一日豫定を終り、二十二日朝博多を立ちまして二十三日歸京、前後十二日間であります。この間
炭鑛を視察いたしましたのが十一箇所、うち
坑内にはいりましたのが五囘であります。この間經營者竝びに勞働組合側との懇談會を行いましたのが二十囘であります。參りました
炭鑛を申し上げます。山口縣では沖宇部
炭鑛、沖ノ山
炭鑛の二つであります。九州にはいりまして高松
炭鑛、赤池
炭鑛、三井田川
炭鑛、東寶
炭鑛、嘉穗
炭鑛、志免
炭鑛、勝田
炭鑛、寶珠山
炭鑛、三池
炭鑛、以上の十一鑛であります。大體十項目にわたりましてわれわれ調べてきましたことを要約して申し上げたいと思います。
第一項
生産状況、これは
各地區の
鑛業會の
調査によつたのでありますが、山口地區におきましては、第一
四半期の目標が五十四萬トンであつたのに對しまして、實績が五十萬九百九十一トン、比率が九二・五%であります。なお七月以降の第二
四半期の見込みでありますが、これは目標が五十六萬八千九百十八トンに對しまして、出炭見込みが五十三萬トンであります。この比率は九三・二%であります。以上合わせまして上期の合計が目標百十萬八千九百十八トンに對しまして、實績が百三萬九百九十一トン、すなわちこの比率が九三%となるわけであります。九州地區におきましては、第一
四半期の目標は三百五十九萬八千トンに對しまして、實績が三百四十五萬二千六百八十四トン、この比率は九六・三%であります。七月以降の第二
四半期に對しまして、目標が三百四十萬二千トンに對しまして、出炭見込みが三百五十五萬七千トン、すなわち一〇四・三%であります。これを合計いたしまして、上期の前半といたしまして、目標が七百萬トン、實績が七百萬九千六百八十四トン、その比率が一〇一・四%となるわけであります。
第二項、
資金關係、これは設備
資金と運轉
資金と赤字
資金の三つにわけております。設備
資金につきましては、
資金調整法の許可が遲れるのであります。昭和二十一年下期の分はようやくその期末に認可に
なつたのであります。本
年度上期分は未だに認可のないようなところが相當多いのであります。
從つて資金の入手も遲れ、あるいは適時でないため、
一般設備、
坑内復興、
炭住、炭車計畫などの實施見込みが立たず、これに加うるに諸物價の値上りのため、工事完成にはなはだしい支障を來しておる
状況であります。
次は運轉
資金につきましては、炭代の入手に時日を要することと、赤字
補給金未入手が多いので、
大手筋、中小
炭鑛とも運轉
資金の枯渇はなはだしく、未拂金は漸次増大し、發注製品の引取り、生活物資の購入にも事缺くは勿論、最近は賃金、給料だけを辛うじて支拂い得るような
炭鑛もあ
つて、このため設備
資金を流用し、あるいは
炭鑛施設を抵當に
地方銀行からの借入金をも
つて辛うじてその場を切り抜けているというところもあるのであります。
次は赤字
資金でありますが、
補給金の未入手は各
炭鑛とも相當額に達しておるのであります。その一例とにたしまして、高松
炭鑛は一億五千五百萬圓、田川
炭鑛が一億一千五百萬圓、赤池
炭鑛三千二百萬圓等であるのであります。こういうのがいわゆる運轉
資金の枯渇のおもな
原因をなしておるのであります。
第三、
資材關係、
一般状況といたしまして、昭和二十二
年度の第一・
四半期におけるところの
資材の入手
状況は、山口、九州兩地區を通じて、正常ルートによるものは
割當の四〇ないし四五%程度であるのであります。現在
資材問題は、同時に
資金問題とな
つておりまして、各種
資材は相當程度引取りが不能とな
つておるのであります。なお當局の指定生産
資材の
割當發券の敏速化が要望されております。機械類につきましては、電車、炭車、ポンプ、選炭機、捲揚機、
空氣壓縮機、電動機、變壓器等の機械類は、その發注額に對する各月入荷量は一〇%程度の不良さであるのであります。これはメーカー側におけるところの電力制限、
資材難、賃金、
食糧等の諸
事情と支拂に關するところの
炭鑛への不信に基くものと認められるのであります。なお機械類は
一般に故障増加の
傾向にあるのでありますが、材料手持薄のため、十分に修理がなされていない
状態であります。
次は鋼材、銑鐵でありますが、昭和二十一
年度分の現在までの入手量は鋼材、銑鐵を通じて
平均五〇ないし六〇%と認められるのであります。なおカーバイト、酸素の入手難は、鋼材の活用を阻み、コークスの不足は鑄物、鍛造品の製作を不可能ならしめておるのであります。
次は緊急所要
資材でありますが、炭車、鋼管、鑄鐵管、鐵板類、釘、ワイヤロープ、レール、坑枠レール、ケーブル類、それから
住宅資材、トラツク、これは部分品を含むのであります。及び燃料、セメント、ベルト類、ゴムホース、潤濶油、電氣機器材料、カーバイト、電氣安全燈などであります。
次は坑木の
状態でありますが、手持は
平均二十日ないし三十日分と思われるのであります。そのうち不適木が五ないし一五%であります。値上り氣配と時期的
關係で、入荷がやや低下の
傾向にあるのであります。特殊事項といたしまして、三池
炭鑛の長物坑木の價格を早急に
決定する必要があるのであります。
第四項
勞務關係、まず賃金
關係といたしましては、物價と賃金の不均衡は、勞働者をして生活不安を感ぜしめ、大きな生産阻害の
原因とな
つています。このためスライド制の促進、あるいはその
決定までの暫定
措置が要望されております。また
勤勞所得税の撤廢、あるいは累進
課税の改正も
勤勞意欲増強に直接かかわる問題として
一般に強く叫ばれております。さらに賃金形態の再檢討が行われ、各所の
實情に應ずるよう、殊に基本給と能率給の調整が研究されております。職員給料の
勞務者との不均衡は、また生産意欲低下の一因であるのでありまして、特に
坑内職員の場合にこれは適用するのでありまするが、急速に
解決されねばならぬ問題であります。せめて勞働者竝みの加給を要望しておるのであります。
次に
職場規律の問題でありまするが、終戰後の混亂より漸次好轉している
模様でありますが、まだ不十分とは認めがたいのであります。組合側の自律と經營者側の十分な理解、赤裸々な態度のものに、名實ともに健全なる經營
協議會の運營を望むわけであります。
炭鑛によ
つては戰前の封建的賞罰規定を一掃し、經營者側、従業者側共同で職員をもともに賞罰の對象とした民主的規定を研究または實施しているところもあるのであります。また一部不良者またはボス的な存在が現場作業の阻害をしているようで、いわゆる
炭鑛暴力團事件も看過できぬ生産阻害除去の課題であるのであります。
第五項
食糧關係、(イ)
主食、
主食の混合比率は大體三〇%對七〇%、ないし四〇%對六〇%であります。手持ちはおおむね一箇月程度であ
つて、山口地區は最近凍結米放出許可によ
つて、十月までの見透しがついたのでありますが、福岡地區は九月以降の見透しがついておりません。他縣よりの廻米に努力中であります。
主食の操作についても、中央の指令が
地方に徹底しないというのが
現地の聲であります。加配米、これは辨當米と稱しておりますが、加配米が
一般に遲配しておるのでありまして、三、四日から十五日程度の所もあります。また雜穀の加工不完全なものが
配給されることがあるので、
炭鑛側でも共同の加工設備を要望しておる所があります。
次は
主食外の物資でありまするが、三日閣議
決定の
炭鑛勞務者所要物資供給
確保對策要綱も、その現物化遲々として進まず、現在までにわずかにみそ、醤油、鮮魚が、多少その軌道に乗つた程度で、政府に對する不信不滿の聲が高いのであります。
主食は一應
確保されても、特に
坑内勞働に必要な
カロリーの問題を十分に眞劍に取上げなければならないと思います。報奬物資の入手がはなはだ遲れるので、その效果も著しく減じておる
實情であります。
第六項
厚生關係、醫療
關係といたしまして、
大手筋には大體病院の設備があるのでありますが、醫藥品、衛生材料の逼迫によりまして、施設の活用を妨げておるのでありまして、直接間接
勤勞意欲に
影響しておるのであります。これが優先的
配給に特別の
措置を要望しておる
状態であります。さらに中小
炭鑛の場合は、醫療施設として見るべきものがないのでありまして、病氣傷害等の場合に、ただちに
實質賃金に大きく
影響をするので、地域的に共同利用の公の施設が設置されるよう、國家的な
措置を要望しておるのであります。
次は災害扶助の
状況でありますが、現在
厚生年金法によ
つて扶助されておるのでありますが、その給付額は、現在の物價面からみてはなはだしく低額で、遺族または廢疾者の
最低生活も保障不可能の
状態であります。七月より一齊に
増産運動にはいつたが、
坑内の惡
條件は必然的に災害の増加が豫想されるので、勞働者災害補償保險法、勞働基準法が早急に實施せられるように、
一般に強く要望されておるのであります。なお
一般的に退職金問題も制度として早急に實現されるよう要望されております。
次は
住宅であります。
炭住計畫も、これは新築、補修ともにでありますが、
資金、
資材兩面から進捗度はよくないのであります。特に戰災者、引揚者などを多く收容しているところの
炭鑛は、家族を呼ぶ寄せることが困難であり、また三池
炭鑛のごときは、戰災で五千戸餘の社宅を喪失して、從業員は電車で通勤するものが多いのでありまして、大きな能率低下の
原因とな
つております。既設の
住宅も、いわゆる往年の納屋式のものが相當多く、便所も
水道も極端な共同利用であり、壘、電球の不足は一層生活を暗いものにしいおります。
炭鑛文化はまず
住宅よりの聲もまだ至當であると言わねばならぬのであります。
次に作業物資であります。作業衣、地下足袋、ゲートル、タオル、石けん等の不足がはなはだしく、今後の
確保に不安があり、なお品質低下が憂慮されております。
第七項
輸送關保、三千萬トン出炭が
絶對的要請である以上、これが
輸送もまた
絶對的であらねばらなぬというのが
現地の主張であります。しかるに
現地におきまする配車は常に波状を呈して、かつ總車數におきまして不足の日が多いのであります。また一箇月半前に中央で策定されたところの
輸送計畫は、
炭鑛の
特殊事情から、その後の現實と相當相違するところが多いのでありますから、
現地鐵道局が、この中央計畫を相當彈力性をも
つて調整し得るような
措置がとられるよう要望せられておるのであります。
次は小運搬でありますが、特に山口地區は
石炭運搬をトラツクに依存する部面が非常に大きいのでありますが、その車の數竝びに附属品及び燃料の不足は、日々の生産を阻んでおるのであります。さらに生産
資材食糧運搬のためのトラツクの手當も同様の比率をも
つて考慮されなければならないのであります。車體の老朽、部分品竝びに燃料不足のために、その效率は四〇%を下まわる箇所もあるような
状況であります。
第八項、電力
關係であります。
保安電力といたしまして、電力低下、停電のために捲揚機、ポンプなどに相當の支障を來しております。次は電壓低下防止問題であります。特に九州地區の場合は電力及び周波數が定格値をはるかに下
つております。水力發電は目下のところ降雨のために相當出力は増加しております。火力、すなわち日發
關係の發電量をまず良心的に増強することで、發電不足の理由はその都度信頼のできるものでないのでありまして、官廳の監督を強化してもらいたいという聲が大きいのであります。
第九項技術
關係。概して
資金、
資材難のため、戰時中の荒廢が復舊していない箇所が多いのであります。切羽運搬は
資材難のために一部または相當部分機械運搬を中止している箇所もあります。片磐運搬はベルトコンベア入手難のため鋼索運搬等に變更し、その能力を著しく低下している箇所もあります。次は截炭機、鑿岩機、電氣ドリル、
空氣ドリル、
空氣壓縮機などの採炭機械については、新品の入手が不能である、あるいは質の低下または老朽などのために、著しい能率低下を來しております。次に選炭機補修改善も
資金と
資材に阻まれ、
一般的に早急實現困難の箇所が多いので、品位向上のため當局に一段の
考慮が要望されております。
第十項といたしまして、
炭鑛國管に對する
現地の意向であります。國管案に對する理解の廣狹深淺ないし政府案なるものがまだはつきりしておりません點から、
現地の意向も複雑多岐にわたりますが、大體その意向を要約して言いますと次の
通りであります。經營者側の
意見、これは經營擔冨者をも含むのでありますが、第一、三千萬トン出炭に對して、すでに復興
會議で勞資協調の上
増産に邁進する申合せをいたしまして、おおむねその實をあげつつある際、機構變革はかえ
つて減産を招くであろう。次は官僚統制への逆行を危惧する。次は國管を強行するとすれば、これを全
炭鑛に實施すべきである。この三つの項が經營者側の
意見を要約したものであります。次は
勞務者側の
意見でありますが、第一に、國有國營を前提とする徹底的國管を希望するという聲が多いのであります。次に三千萬トン達成が可能であれば、どんな方法でもよろしいという
意見も多いのであります。次は生活安定と
社會的地位の向上が得られるのであるならば、國管非國管いずれでもよろしい、この三つの
意見に大體要約せられると思うのであります。なお兩者共通の
意見といたしましては、國管を政爭の具に供することなく、よろしく國家的見地に立脚して慎重に取扱われたい。また國管實施によ
つて資金、
資材、生活物資等がただちに好轉し得るや否やについては、多大の疑問がある、この二つが兩者の
意見であります。
以上十項目に分けて申し上げたのでありますが、
炭鑛の現場における生産意欲でありまして、大いに力強く感じた次第であります。しかし概して
炭鑛に働く人の生活水準というものは低いのでありまして、これを向上させるとともに、
炭鑛全般の地位を高めるということにつきまして、國家國民として大いに協力すべきであると思うのであります。三千萬トン達成に對しましては、以上申し上げました諸點に對して有効適切な手段を急速に實行するということによ
つて達せられるであろうと思うのであります。
以上が大體の
報告でありますが、最後に
一つ附加えておきますが、よく問題とな
つております志免
炭鑛と勝田
炭鑛の兩鑛の比較でありますが、これはわれわれ一行といたしましても兩鑛に参つたのでありますが、これに對して表面に現われました數字によ
つて判断いたしますと、あるいは誤解を招くおそれがあるのでありますから、御参考までに申し上げておきます。表面上現われた兩鑛の比較の數字を見ますと、一人當り出炭が志免の方は三トン餘、勝田の方は五トン餘とな
つておりまして、志免の方が能率が非常に悪いのでありますが、志免
炭鑛の
特殊事情といたしましては、終戰後
坑内が水没した箇所があります。なお
坑内火災を起しまして採炭不能の箇所があるのでありまして、そのために採炭箇所が非常に減
つている。なお現在下層群である方の稼行計畫に取掛る準備をしておりまして、その方に相當の人を要している、なお坑外人員、すなはち病院その他の
厚生關係に多數の人員を要しているような點があるのでありまして、一人當りの出炭率が非常に低いのであります。實際切羽における一人々々の採炭能率ということについてみますと、これは志免
炭鑛も勝田
炭鑛も大差はないのであります。その邊をひとつ誤解のないように御了解願
つておきたいと思うのであります。なお兩鑛の從業員の氣分の問題でありますが、これをわれわれがちよつと参
つて比較することは、あるいは皮相な感覺かも知れませんが、感じましたことは、志免の方より勝田の方が活氣があるように思われたのであります。また志免は國營でありまして、官聽式の
手續の煩瑣ということによ
つて非常に困
つている、いわゆるこれが生産を阻害しているというような點は事實であります。
以上はなはだ
簡單でありますが、九州、山口方面をまわりました要約の
報告であります。