○
武田委員 今まで
權利を主張することができない
子供が、新しい
憲法によ
つて與えられましたために、殊に
心身ともに健やかに生まれてそうしてその
福祉は
國家が、
社會が保障するということを初めてここに法に表わして、
子供の
代りにその
權利を護る
法律として現われましたこの
兒童福祉法案を、私は心から
文化國家の
日本のあり方として重要なる
出發であると喜んでおります。今
田中委員もおつしやいましたように、
子供はいろいろな願いをも
つておりますけれ
ども自分ではそれを言うことはできないし、それをどういうふうに處理していいかわからないのでございますが、これを
ほんとうに、幸福な
環境に育て、
りつぱに育成を遂げしむるということは、
おとなの
責任であり、まさにこれは國の
將來の運命にかかわると思いますと、りつぱに政治的に取扱わなければいけない問題でございます。その
意味から申しますと、この
兒童福祉法が
おとなの頭で割出された
兒童の
福祉というところにも
つていかれはしないかということを今おそれておるのでございまして、究極はその
取扱い方になるのでございますが、どこまでも
子供自身の
福祉、
子供自身の要求するものを與え、
子供自身を伸ばすための
福祉というところにも
つていかなければいけないと存じております。そのためにはまずこの
法案には現われておりませんけれ
ども、
子供が健やかに生れることから考えますと、まず結婚から考えなければいけないのです。そうして喜んで愛護されなければならないという
立場を、境遇を
子供がもつためには、その出生、誕生を喜んで祝えるような
環境におかなければならないことを考えますと、まだまだこの
兒童福祉というものの面に現われますより前に、その深い所に優生學的にも考え、そしてまた生れるべき
子供の以前からのことも考えなければいけないと思
つております。しかし何にいたせ、この
子供のことにつきましては、生れました
子供に對してはもうこれは
絶對のものとして、この
福祉を護るために、殊に
母親としてその
福祉を鬪いとるために命を捧げるものでございまして、一たびこういう
法律が生れ、そしてこれがどのようにこれから先
運營されるかということは、これはもちろん今までのすべての
法律が、よく
親心と申されましたけれ
ども、如實にこの
親心というものを織りこんだ
法律であり、その
運營でなくてはいけないと信じて、私
どもは
將來これを十分に生かし、行き屆いたものにする
覺悟をいたしております。いろいろの小さいことにつきましてはもう
審議し盡されておりますけれ
ども、ただ
一つここに申し添えたいことは、
兒童の問題は、ある時期までの
子供はほとんど
母親というものと一心同體でございまして、
母親が
絶對の
援護者、
擁護者であると言われます。
子供にと
つて全能の神とも言うべきものが
母親の
立場ではないか。いかなる場合にも、とかにく
母親があり、
母親の胸が安全な護りであり、そして
母親がこの
指導者としては大きな力をもつのでございまして、この
立場は
ほんとうに、ときには
神佛と同じで、
子供のお母さんというものは、成長した人がいろいろな場合に神を呼ぶと同じであろうと存じます。その唯一の
子供のすがり場所である
母親のために、殊に現在の状態において——今日十月一日の
國勢調査の結果を見ますと、東京、埼玉を除きまして全國で大體女性の數が二百萬以上から多いのでございます。この婦人の多いということの裏には、數多い未
復員者や戰死者の遺族、未亡人があ
つて、しかもそれが大概の場合ふところに
子供を抱いておるということが想像できるのでございます。そういう
人たちが必ずその
子供を護るために健全なる状況に置かれておらず、少くとも
兩親がそろ
つていない
母親であるという場合には、
子供の
福祉というものは半減されるのでございます。それを何とかして完全なものにする。
兩親の
代りとして
子供を護
つていこうといたしますには、單に
生活上の問題だけではなしに、精神的にも
社會的にも非常に困難が伴うものでございますから、その
意味から申しまして、
兒童の
福祉というものの根源に、この
母親を大きく護り、
母親の
立場を確保する。
母親の力を十分に
兒童に伸ばすだけの
立場を與えるということ、その點についてはまだまだ考慮されてよいように私は信じております。その
意味から申しまして、この
母子寮がはいりましたことは、非常に結構なことでございますが、この
母子寮もむしろ
兒童の
福祉の諸
施設が
母子寮というものを
中心にしてある
部分は行われてもよいのじやないかと考えております。これはさらに
實施にあた
つていろいろと考慮すべきであると存じております。私は
子供のためにこういう
りつぱな法律が生れるということにつきましては心から
贊成をいたしますと同時に、
ほんとうにこの
運營にあたりましては、まだこれが
出發でございますので、今までのほかの諸
法律の中で陷
つておりますような、形式に流れたる、あるいは單に法をつくるときの氣持はただ法文のみであ
つて、末端に參りますときには
取扱い方が非常にそれと離れておりましたりすることのないよう、末は結局法よりは愛をも
つて大きく生きていきますように、この
法案がこれから伸びてまいりますことを希望いたしております。この間
兒童相談所に參りましたときにも、
兒童相談所の形も、
出發したというだけで、ほとんどその
内容が盛られておりませんでした。またこれを
出發點として研究すべきたくさんのものが殘されておると思いますので、私
どもは
ほんとうに
將來の
文化國家のために、二十
世紀は
ほんとうに
子供の
世紀だと言われましたが、その二十
世紀を
日本はこれから初めて
子供の
世紀としてもち得る。二十
世紀が半ば過ぎました今日に至りまして、わが國にこの
兒童福祉法が生れましたことを喜ぶと同時に、十分にこれを
將來生かしてまいりますうに、
政府の方にも要望いたしますと同時に、大きな力をも
つて、民間の人々に、この正しい認識を徹底さすために努力せられるように希望いたしておきます。