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前田(克)
政府委員 職階制度につきましては、配付いたしました
資料に「
職階制度の
説明」というのがございます。それからそれと別にお配りしたかもしれませんが「
職群及び
職團一覧表」という表がございます。今
一つは「
等級の
定義」という
書類があります。大體これをもとにいたしまして申し上げたいと思います。
まず
職階制度というのは
英語のクラシフイケーシヨン・システムの譯であります。
從つてこれを
職階と譯すことが
適當かどうか多少疑問があるのでありまして、
從來の
制度を
研究しておりました人がこういう
言葉を使
つておりましたので、
職階と譯しております。正確には
職務分類制度とでも譯す方が
適當かもしれません。
職階という
言葉は戰時中に別の
意味に使われ、悪い印象がありますので、もしよい
言葉があればこれにかえたいと思
つております。申すまでもなくこれは
アメリカにおいて最も發達した
制度でありまして、
アメリカにおきましては
官公廳だけでなく、
民間の
會社等においてもこれを使
つております。今こちらに來ておりまする進駐軍の
司令部等においても
職階法を適用にな
つて、みなある
分類のうちの
一つの
地位を占めるというふうにな
つております。ごく簡單に申し上げますると、この
職階制度の
説明の二頁のところに書いてありまするが、結局
官廳内部における
職員の
地位を、その
職務の
種類によ
つて、これを
系統別にわけていくのであります。このわけ方にもいろいろありまして、
大分類をいたしまして、それから中
分類、小
分類といういき方もありまするし、その大中小の
分類にも三通りあるいは二通りでやるというようなやり方もありまするが、お配りいたしました「
職群及び
職團一覧表」と申しますのは、これは
行政調査部におきまして、本年に二月、三月の候においてわが國に
職階制度が適用できるかどうかということを試すために、内務、大藏、農林、運輸及び逓信の各省にわたりまして、約三千四百名の人について
調査をいたしましたときつくりましたものであります。この
分類によりますると、
最初に
グループ、これを
職群と一應言
つておりまするが、これに大別いたしまして、その各
グループをさらに
セリーズ、これを
職團と言
つておりますが、これに細分をいたしておるのであります。その表に明らかなように、たとえば
最初の
經濟及び政治學の
グループというものをわけますると、その中がさらに
經營經濟、
農業經濟、
森林經濟云々というふうにして、こまかくその
專門に應じてわかれていくわけであります。必要があればさらにこの
セリーズをまたこまかくわけるという場合も考えられるのであります。要するに觀念的にはこういうふうに縱に
地位を
職務の
種類によ
つてわけていくわけであります。その次に各
地位を、今度はその各
地位にある
職務の
困難性あるいは
責任の度合、これを
英語でデユーテイ・アンドレスポンシピリテイと言
つていますが、これによりまして最下位から最上級にわけていくのであります。これをやはりただいまの
試驗調査で行いましたのが、
等級の
定義という
書類でありまして、
一級が一番下になりまして、數が殖えるたびにだんだんその級が上
つていくのであります。
一級と申しますのは、ほとんど何らの
經驗も必要としないところの
單純な繰越し
業務、あるいは
補助業務のようなものを言うのであります。それから順次級の上るにつれまして、幾分困難な
仕事、
責任の重い
仕事、あるいは獨立の
判斷でやる
仕事から、だんだん上になりますると人を指揮していくところの
仕事、さらに上になりますると
一つの課あるいは局の長とな
つて、その
仕事の全體を束ねるところの
仕事、そういうふうにな
つていくのであります。
これもこの
試驗調査におきましては
一級から十四級までにわけましたが、このわけ方はもちろんいろいろでありますし、この
職群及び
職團一
覽表に現われておりますその
種類によりましては、必ずしも
一級から十四級まで常にあるというわけではありませんので、あるいは五階級くらいに止まるものもあると思うのであります。たとえば
職群あるいは
職團一
覽表のあとの方のタイプライター及ば速記、
技工勞務及び守衞とかいう比較的
單純な
仕事では、この階級は四つか五つに止まるのではないかと思われます。
結局こういうふうにまず縱に割り、横に割ります全體の
官職というものが
一つの
基盤の目のような
わくの中にすべてはま
つていくのであります。これがいわゆる
職群分類でありましてクラシフイケーシヨンといわれるものであります。
わくの切り方は人為的でありますから、大きく切つた場合には、
一つの
わくの中に數箇り
地位があることもありますし、ものによりましては
一つの
わくの中に
一つしか
地位がないということもあるのであります。
そういうふうにいたしまして、
官職の各
地位の全體において占めるところの
わくというものがさらにきまるのであります。そうするとそのそれぞれの
わくは初めわけられますときに、
責任及び
困難性等によ
つてわけておりますから逆に申しますと、そういう
わくがきまりますと、
地位の屬するところの
分類によりまして、その
地位に要求せられるところの
資格要件というのがおのづから
はつきりきま
つてくるわけであります。
從つて人を採用いたしますような場合におきましては、それぞれの
職務分類に必要な知識、
經驗その他の
資格を備えた人を採用するということで、これが非常に
はつきりいたしてまいります。現在わが國の
官廳におきましては、もとよりこういうこまかい
分類はいたしておりませんから、あるいは
事務、あるいは技術ということでおおまかにと
つておるのであります。
從つて事務の方におきましては、あるいは甲の
地位から乙の
地位へと、
從來と
關係のない
地位に轉々していくということも起るのであります。
職階制によりまして、それぞれの
地位の
資格要件が
はつきりいたしますと、大體その
資格要件を備えた人でないとそにには就任できませんので、就任の
條件が非常に綿密にな
つてまいりますから、今までのようにあちらこちらに移り變るということもなくなるのであります、從つ大體
職員というものは
一つの
グループ、あるいはこまかい場合には
セリーズの中でだんだん上
つていく傾向になるものと思います。すなわち
職階制を施行いたしますと、非常に分業的にな
つて、それだけ熟練した人がそれぞれの
地位につくことになりますから、
能率が上るといわれるゆえんであります。限局こういうふうに
職務を
分類して、これに應じた
任用制度をとりますと、
官廳における
能率の發揮ということはおのずから期してまつべきものがあると考えるのであります。必ず
資格要件を備えた人でなければその
地位につけなくなるのであります。
さらに
等級の十二から十三へあるいは十三から十四へ上
つていくのがこの
法律で言
つているところの
昇任でありますが、その
昇任の際にもそれぞれの
地位に對してどういう
能力があるかということを、この
法律の中にあります
能率評定によりまして、綿密に調べます。これによ
つて昇進が行われることになりますから
能力主義というものが
はつきり確立せられると思うのであります。
それから
給與の點から見ますると、
職階制度のもちます
一つの大きな長所は、
同一の
仕事に對する
同一の
給與という點に重きをおかれているのであります。
英語でイコール・ペイ・フオア・イコール・ウアークということを言
つておるのであります。
同一の
仕事に對する
同一の
給與が與えられる。この原則が
はつきりされるのであります。言うて見れば
能力給とでも言うことができるのであります。その人の
採用年數及び資格においてその人の
給與が定められるというみとが排除せられることになるのであります。なおこの
給與制度につきましては、先ほど申し上げました
基盤の
わくの中に
數段の
給與が定められるのが通例にな
つております。
從つてある
一つの
わくの中で
仕事が熟練いたしまして、
能率評定におきまして相當高く評價せられますれば、漸次
昇格をするということがあるわけであります。
それから
一つの
段階から次の
段階に移りますときには、いわゆる
昇格試驗もしくは
能率評定によ
つて上るので、これが上りますれば、また上の
わくに定められた
數段の
給與の方に移
つてまいりますから、またさらに上に上る。しかしその
地位が上らない限り
給與というものが
わくに定められた
最高の
給與に止まる。單に
年數を
食つたから
給與が上
つていくということはなくなるわけであります。これによりまして
官廳全體の
豫算會計の
運營ということも、よほど科學的合理的にな
つていくと思うのであります。
それから話が少し重複しますが、そういうふうに
一つの
地位に屬する
わくがきめられまして、
わくの
資格要件が
はつきりいたしますと、同時にある
一つの職種のある
段階に屬する
地位というのは、どういう
仕事をするかということがこれまた
はつきりしてくるのであります。大
體初めに
職階制度をつくりますときに、そういうことを調べて
職階制度をつくりますから、でき上りました上は、それぞれの
地位の
仕事というものが
はつきりいたしてくるのであります。これによりまして
責任の確定あるいは
事務に對する
訓練というようなこともきわめて容易になるわけであります。
從つて現在のように上の人の判をとらないといかなる
仕事も進まないというようなことも、これを變えることができまして、それぞれの
地位に屬する人に分業的に
責任が
はつきりいたしますから、
仕事はそこだけで處理し得る。そういう
制度の確立も容易となると思うのであります。
それからこういう
制度に附帶いたしのして、
官職というものが、
職務によ
つて分類せられることになりまして、それ以外には
官職の上下の區別なくなるのであります。
從つて從來のような
一級官、二級官、あるいは雇員というような
職務を離れまして
身分によ
つて區別するということは自然に消滅いたしますから、現在やかましく言われておりますところの、職場に
民主化ということにもこたえ得る、かように考える次第であります。
職階制度はこういうものでありますので、たとえば
現業官廳とかあるいは
民間の
水業會社等において、こういう
分類をつくることは比較的容易であります。ところが
一般の
行政官廳等におきましては、この
分類をすることが實はなかなか困難であります。殊に現在に
日本のごとく、課の下に係がありまして、その係り内におきましては五、六人あるいは十數人の人がおりまして、
敵當に
仕事をわけ
合つてや
つておるというような現状で、それぞれ
地位の
仕事をきちんときめてこれを格づけをすることはなかなか困難なことだと思うのであります。
從つてこの
制度を
法律によ
つて規定いたしましても、これを全國にわたります各
官廳において、百數十萬の人の
占むる地位を、ただいまのように
職務分折をいたしまして、こういう
分類をつくるということはかなり時日がかかると思うのであります。
本案におきましても、これはあるいは一年以上二年くらいかかるのではないかということが豫想をされております。
それで今
アメリカにおきましては、多年この
制度をや
つておりますので、その間いろいろの
批判がございます。たとえば
官職をそういうふうに細かく
分類をいたしまして、必然的に
分業制度となる結果、全體の
綜合性を缺くというような
批判があります。このために、最近
アメリカにおきましては、その
職群及び
職團一
覽表の一番終りにありますような、
一般行政職というような
分類が設けられております。こういう
分類を設ける方がいいかわるいかということは、少しこまかい
研究問題になりますが、本來の
職階制度の
精神からいいますと、なるべくこういう
分類は設けない方がいいので、それぞれ
專門の
種類に區分けをいたしまして、
官吏はすべてそれぞれ
專門の
地位において、その
訓練、
經驗を積むということが望ましいのだと思います。それらの點はなお今後の
研究問題に屬するのでありますが、
アメリカにおいては、あまりに分業的になりました
職階制に對する
一つの
批判として、最近そういう問題も起
つております。大
體職階制度を一通り御
説明いたしますと以上の通りであります。