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三浦説明員 彈劾法に新しく目次をつけることにいたしておりますので、その點御了承願います。
前の
連合審査會で一應の御
意見がありました點、その後
運營委員會においてさらに御
檢討をいただきまして、それから
關係方面等においてなお御
意見のありました點につきまして、全
體的に申し上げたいと存じます。
まず第
二條につきまして、第
二條の
罷免の
事由といたしまして、良心に從わない
裁判をしたとき、あるいは
判斷能力がないときというようなことを入れたらどうかというような御
意見もあ
つたのであります。この點に關しましては、ご
もつともな御
意見であると
考えられるのでありまするが、外部的に見まして、それを判斷いたします場合におきまして、あまりに
廣汎な表現でありますので、
實際問題といたしまして何人にも
訴追できるというような
建前からいたしまして、それではいささか明瞭を缺くようなきらいもありはしないかというようなこともありますので、第
二條は從來の
規定の
案文通りにいたしたいと
考えておるのであります。結局先ほど申しましたような御
意見の點は、第
二條の
原案の中に吸收されまして、それがもう少し
具體的に闡明されたものが第
二條の
原案だと解せられますので、さような
取扱いにいたしたらと
考えておる次第であります。
次に第十條でありまするが、第十條の第二項の
但書のところに、「但し、
罷免の
訴追をするには、
出席訴追委員の三分の二以上の多數でこれを決する。」という
規定があります。この「
罷免の
訴追」の下に「又は
罷免の
訴追の猶豫をするには、」と、
罷免の
訴追の猶豫ということを入れまして、
罷免の
訴追の場合三分の二、
罷免の
訴追の猶豫の場合も三分の二の多數でこれを決する、こういうことにいたしたいと思います。
罷免の
訴追の猶豫の
規定はもとの第十
二條でありますが、新しい
條文整理によりまして、第十三條に當るのであります。これは
原案起草の場合におきましては、
罷免の
訴追をする場合に三分の二でありますので
當然猶豫する場合は、
法律解釋の
文字解釋の
原則によりまして、
當然なことと解してお
つたのでありまするが、この點を明瞭にした方がよかろうという御
意見もありましたので、その
字句を挿入することにいたしたのであります。實質的には變りはございません。
それから次に第十
二條でありまするが、第十
二條の
訴追の
期間の點に對しまして、「三年を經過したときは、これをすることができない。」という
規定があるのでありまして、この點に關しまして、いろいろ
調査その他で手間をと
つて三年を經過した場合には、もはやすることができないようにな
つて、それは困る場合が起りはしないか。いわゆる時效的な
規定であるので、この點多少の考慮を要しはしないかという御
意見であ
つたのでありますが、この點に關しましては、これは
控訴上申等を認めておりませんので、
實際の
調査にはいりますれば、そう長くかかるものでもないと
考えまして、大體三年ということがありますれば、その間に
罷免の
訴追の問題は
具體的な事例について確定いたすと
考えておる次第であります。
次に第十三條でありますが、第十三條には
最初は「
訴追委員會は、情状により
訴追の必要がないと認めるときは、
罷免の
訴追をしないことができる。」と、かようにな
つてお
つたのでありますが、そこを「
罷免の
訴追を猶豫することができる。」と、かようにいたしたのであります。それで第十三條の
規定は、
二條の
規定と關連いたしまして、これは要らないという御
意見と、存置したらいいという御
意見と兩論あ
つたのであります。これにつきましてはいろいろの御
意見もあると思いますが、結論といたしまして、十三條は
二條の
訴追事由に
當つた場合において、なおかつ
本人に
改悛の
情等があ
つた場合において、それを猶豫してやるという場合も起るのではないか。なおまた
罷免の
事由があ
つた後、三年間という
訴追期間があるので、ずつと前にそういう
罷免に當る
事由があ
つた場合に、それがあるいは二年なり、あるいは三年近くまで經過した場合において、もう
本人に
改悛の情が相當著しいというような場合もあり得るので、そういう場合には、猶豫の
規定を認めた方がよかろうというような御
意見等もあ
つたのでありまして、それらの點を參酌いたしまして、十三條の
規定は存置するということにして、ただいま申し上げました「
罷免の
訴追を猶豫することができる。」という
字句にいたしまして、その
意味のことを明瞭にすることにいたしたのであります。從いまして、第十三條は一應
罷免の
訴追の猶豫をいたしますけれども、なおまた三年間の間に
本人の
事情等を斟酌いたしまして、
本人の
事情等によりまして、あるいはさらに
訴追の必要が起るというようなことがあれば、なお
訴追もできるのでありまして、その
意味において「
訴追を猶豫する」というようなことに
規定を改めた次第であります。次に二十六條であります。二十六條には
但書が
原案にはありまして、
公序良俗に反する場合におきましては、公開しないで行うこともできるというような
規定があ
つたのでありますが、この點に關しましては、前々から
憲法の七十
八條の公の
彈劾というような點からも見まして、
憲法違反ではないかというような
意見があ
つたのであります。この點に關しましては、法律的な私どもの
解釋といたしましては、
憲法七十
八條の公の
彈劾という
意味には、公開するというところまでは含んでいないのではないかと、かように解してお
つたのであります。なおまた
憲法八十
二條の
司法權の
公開原則に對する
例外といたしまして、
公序良俗に反するような場合は、公開しないでいいという
規定があるのでありますが、この點もこれは
司法權の
公開原則に對する
例外であ
つて、
彈劾裁判は別途に
憲法上認められておるので、
當然その
規定にそのままよる必要もないのではないかというようなことも
考えてお
つた次第であります。しかしながらいろいろ
檢討いたしました結果、この點に關しましては
憲法の
解釋というようなことを離れまして、この
彈劾法起草の獨自の立場から見まして、これは
一般に公開して、そうしていわゆる
國民彈劾という
趣旨を、
一般公開の面前においてやるというような
趣旨を採用することにいたした次第であります。この點につきましてはいろいろの御議論もおありのことと思いますが、さようなことに改めた次第であります。
次に二十九條でありますが、第二十九條におきましては、
地方裁判所にその
取調べを囑託することができることにな
つております。これも
適當な
裁判所という御
意見が
連合審査會にあ
つたのであります。これもご
もつともと思いますが、大
體地方裁判所が一手に第一審の
裁判をやるのでありまして、
簡易裁判所もありますけれども、大體において
地方裁判所が全國的に網を
張つて、第一審的な
裁判をいたすのであります。またここは相當
機構も充實いたしておりますので、ここへ
取調べの囑託の必要な場合にお願いするということが
適當であろうと
考えて、そのままにいたしたのであります。それから第二十九條に關連いたしまして、強制的な
處置をすることができるように
裁判所の
規定に入れたらどうかという御
意見もあ
つたのでありますが、これは
彈劾裁判所の
構成等から
考えまして、またはその手足の
機關等からも
考えまして、十分にそれらを活用するだけの
機構をも
つていないので、從いましてそれらの點は、從來なれておりますところの
裁判所に依頼いたしまして、その
機構を利用いたしまして、必要があれば
強制處分をしたりなどするというようなことの方が、
實際問題として妥當であろうというような
考えをもちまして、やはり
原案通りにいたしたのであります。從いましてさような必要がある場合におきましては、
裁判所に依頼いたしましてこれらのことをや
つてもらうということになる次第であります。
次に第三十條でありますが、三十條に關しましては、ここに包括的に「
刑事訴訟に關する
法令の
規定を準用する。」ということにいたしてあるのでありますが、これは
實際刑事訴訟法を準用する場合に、個々的な問題についていろいろ問題もあるであろうから、これらをもう少し詳しく書くか、あるいは
最後にひつくるめて、これらの點を
規定したらどうかというような御
意見もあ
つたのであります。ご
もつともでありますけれども、
條文が相當長くなります
關係もありますし、
實際問題といたしまして、個々的な場合におきましては、御
意見の
通りいろいろ
檢討を要する
事項も多々あると思うのでありますが、一應第三十條といたしましては、
刑事訴訟に關する
法令の
規定を包括的に準用することにいたしまして、必要があれば、さらに四十一、四十
二條の
規定の
規則制定權によりまして、さらに細部の
規定をつくるということによ
つて補つていきたい、かように
考えておる次第であります。
次に第三十
一條でありまするが、第三十
一條に關しましては、第二項の「
裁判は、
審理に關與した
裁判員の
過半數の
意見による。但し、
罷免の
裁判をするには、
審理に關與した
裁判員の三分の二以上の多數の
意見による。」ということにな
つております。この場合において、
會議が同數でわかれた場合にどうなるかというような御
意見があ
つたのでありまするが、これは
最初から
訴追法員會竝びに彈劾裁判所に關しましては、これが
裁判的な
機關であるという
性質に鑑みまして、
評議制によ
つていくんだという
建前を堅持したいと
考えておるのであります。殊に相當法律技術的な問題があるので、たとえば、
訴追委員會の
委員長なり
裁判長の選任の問題もありますし、なお三十
一條に關連いたしましたやうな問題もあるのでありまするが、これらにつきましてはできるだけ
裁判の
評議制の
性質といたしまして
評議制の
建前を活かしまして、できるだけ
評議によ
つて最後の決定をしていくことが、
裁判所を置かれた
趣旨に鑑みて
適當であろうと
考えておりますので、
原案の
通りにいたしたいと
考えておる次第であります。
なお次には第三十七條でありますが、これは
裁判官の
罷免の
效果の問題であります。この點に關しましては、恩給の問題、それから他の
官職等に就職の
問題等もあ
つたのでありますが、これはすでにそれぞれの
規定の改正にまつ、あるいは
制定にまつということにいたしたのであります。さらにこの點に鑑みまして
裁判官が、たとえば、
彈劾にかか
つたから辭職を願い出てきた場合、あるいは死亡した場合、あるいは轉勤に
なつた場合、
任期滿了に
なつた場合等をどう取扱うかというような御
意見もあ
つたのであります。この點に關しましては、第四十
一條に
規定を置きましたので、その點で御
説明を申し上げることといたしたいと思
つております。なおまたこの
條文に關連いたしまして、
懲戒裁判所との問題について御
意見があ
つたのでありまするが、
懲戒裁判所に關しましては、新しく
懲戒裁判所に關する
規定が、
裁判官についてできるはずでありまするが、これは
彈劾裁判所がそこまではいりこみまして、
懲戒裁判に關しまして
彈劾裁判でいろいろ調べてお
つた結果、
懲戒にふれるような
事實があ
つた場合に、それについて
懲戒裁判の方にいろいろ通知したり、あるいは、そういう
懲戒にしろというような
取扱いをするような
規定を置くというようなことは、いかがかと
考えられますので、その點は
規定の上に現わさないことにいたしました。もし必要がありまして、こちらでいろいろ調べてお
つて、
懲戒に當るようなことがあ
つた場合、または
懲戒裁判の方でいろいろ調べてお
つて、あるいは
彈劾法による
罷免に當るような場合がありましたときは、行政上の
處置によりまして、相互にそういう
事情を報告し合うというような、別途の
取扱いにしたらどうかと
考えておる次第であります。
次に第三十
八條でありますが、第三十
八條に關しましては、
連合審査會におきまして第一項の第一號に關しまして「
罷免の
裁判の宣告の日から五年を經過したとき。」とあ
つたのでありますが、そこに相當の
事由ということを加味した方がよいという御
意見もありましたので、その點は一號に「相當する
事由があるとき、」ということを附加することにいたしまして、御
意見のように改めることにいたした次第であります。
次に四十
一條でありまするが、これは先ほど申し上げました
罷免の
效果に關連いたしまして、
本人が
免官を願い出た場合の
處置に關する
規定でありまするが、
實際彈劾裁判にかかりまして後に、いろいろ
本人が
辭表を出して早速それを取扱うことになると、せつかく
彈劾裁判法ができましても、その
目的を達せられないことになりますので、特にこの
規定を置きまして、
免官留保といたしまして、「
罷免の
訴追を受けた
裁判官は、
本人が
免官を願い出た場合でも、
彈劾裁判所の
終局裁判があるまでは、その
免官を行う
權限を有するものにおいてこれを免ずることができない。」という
規定を置いた次第であります。從いまして、
罷免の
訴追以後、
彈劾裁判所の
終局裁判がありますまでは、
本人が
辭表を提出いたしましても、その
本人の
免官の
取扱いの
權限を有しておりますものにつきまして、これの
免官を一時留保するということにいたした次第であります。なお
免官の願出以外の死亡とか、あるいは停年とか
任期滿了というような場合は、特殊な場合でありますので、そこまで追及いたしまして
彈劾にかけるというようなことは、少し強過ぎはしないかというようなことで、それらの點は對象の自然消減によりまして、其れらの人につきましては
裁判をしない。そういう
事態が起れば、もうすでにその
裁判はそこで自然的に中止されるというようような
建前にいたしまして、特に臨時の願出の場合だけの
規定を置きました次第であります。
大體先だ
つての
連合審査會におきまして御
意見のありました點等を参酌いたしまして、
最後條文の
整理をいたしました結果につきまして申し上げた次第であります。