○岡井
委員 わかりました。私はさ
ような
立法理由ならば、か
ような
法律はまつたく必要がない、か
ような
法律を設けるまでもなく、最高
裁判所の人事係の方において、當然
適當に處斷されるものであ
つて、國民の憂いとするところは亳未もないのでございまして、いやしくも國會が
彈劾する以上は、そんな事務官に任せておいてよろしい
ようなことに容喙する精神ではないと思うのでございます。そこで私は第一號、第二號を全部書き直しまして——あるいは第二號くらいは置いてもよいかもしれませんが、第一號をもう少し國會が國家國民のために
彈劾するのにふさわしき
ように書きかえるのです。
憲法第七十六條第三項に「すべて
裁判官は、その良心に從ひ獨立してその職權を行ひ、この
憲法及び
法律にのみ拘束される。」こういう
條項がございます。
裁判官の
もつとも憂いとしまするところは、良心に從わざる
裁判が非常に多いことであります。國會においても、國民においても、最も心配しておる點は、これだけでありまして、ほかには何もないのです。女をこしらえ、白晝公然ふしだらな
行爲をしましたり、
裁判所に來ても、ぽかんとして
裁判をしなかつたり、賄賂をもらつたり、これはやめるのはわかりきつたことでありまして、こんなことのために、われわれが貴重な時間を割いて
立法しておるのでは、ばかばかしくて話にならぬのであります。やめる
ようになるのはわかりき
つておる、天下國家に何も
關係ないのであります。かくのごとき
裁判官は自然にやめる
ようにな
つておるのです。何も國會の手を煩わす必要はないのでございます。われわれはか
ような瑣末なことのために、
彈劾法というものをつくろうとしつつあるのではないのであります。その
理由を、
簡單に十分間ぐらい時間を賜わりまして申し上げたいと思います。これはおそらくどなたもお聽きにならぬと思いまするから、よくお聽取りを願いたいのです。すべて本條に
關係のあることでございますから、そのおつもりでお聽取りを願います。
私の
修正案は、
裁判官が良心に從わざる
裁判をなしたるとき。これが第一號。第二號は、
裁判官において判斷能力なきとき、それからもしどうしても置きたければ、第三號においてただいまの第二號の
條文をおおきになるのですが、これはどうでもいいと思います。實益はないと思います。實益のあるのは、良心に從わざる
裁判をなしたるとき、判斷能力なきとき、この二つだけと思うのであります。
その
理由をわかりやすくするために、まず人のやることを批判するのが職分の
ようにな
つておりまする國会議員、これは
裁判官に擬せられるところがありまするので、國
會議員について申し上げます。
〔
委員長退席、松永
委員長代理著席〕
戰爭中、國
會議員は、當局の演説を聽いたわけです、當局の顏色にも接したはずでございます、また祕密會という
ようなものもあつたはずでございます。そこで私は、當局が眞の戰意を喪失しておる、あるいはもう戰爭に勝つ見込みがないということをみずから認めておるということは、國
會議員に讀みとれたと思うのでございます。もしこれが讀みとれなければ、少しく、あるいははなだしく能力を缺いておるのではないかと思うのでございます。私は一昨年八月十五日の終戰の御勅語の後で、日本はすでに昭和十八年暮のカイロ決議のときに戰爭を投げて、爾後和平の機會をねら
つておつたということを、ラジオでさ
ような奇々怪々なる放送をしたのを聽いております。これは重大なる祕密を政府がもらしたのだと思われます。というのは、翌日どの新聞にも出なかつたから、そう申すのでございます。もし國
會議員にして、ほんとうに良心に從つたる行動をなしておつたならば、私は戰爭中、しかるベき時期において、當局に迫
つて戰爭をやめさせる
ように仕向け得たと思うのです。すなわち一方において、
アメリカに向
つては外交の手を打つ、たとへば、日本はあなた方のごらんになる
通り戰爭は負けである、しかしながら一億玉碎の國であるから、ただは負けない。あなたのごとき大國は、ちつぽけな島々を占領するために戰
つているわけではないから、今戰爭をやめてくれれば、日本の方でも手を引く。もしあなたの方で臺灣、樺太などをとりたいために、何百萬の犠牲を忍ぶこともあえてするならば、あなたこそ世界平和の敵になる、か
ような論法をも
つていたしますならば、私は
アメリカは必ずその當時和平に應じて、日本はまた臺灣、樺太ぐらいは保ち得たであらうし、しかも世界平和のために感謝され廣島に原子爆彈を落されるという
ような、日本政治家のなすべきことをしないための大犠牲を受けることは、起らずに濟んだと思うのです。か
ようなことを
考えますと、當時の國
會議員が良心に從いたる行動をとらなかつたということを、私は痛罵したいのです。われわれが現在のごとき悲境にあるということは——私は申します、國
會議員の責任は實に重大である。ほんとうの良心の叫びに從いましたならば、われわれの見る國土は、今見るごとき國土ではないのです。さ
ような認識が亳末もわか
つてないのです、そしてただ何囘當選をしたということを譽れのごとく思
つておる。
〔松永
委員長代理退席、
委員長著席〕
私は國を滅ぼしたる犯罪人である、か
ように思うのです。これは國
會議員が良心に從いたる行動をとらなかつたためなんです、そうしてただ表向きだけは、愼重審議をするとか、いかにも國
會議員らしく振舞う、これをも
つて政治家の本領なりと心得ておりましたためにわれわれがか
ような悲しむべき状態にあるのでございます。ともかく、私は國
會議員中、ただ一人良心のある人がいなかつたと思う。良心があ
つても、良心がはなはだ稀薄にして、良心に從いたる行動をとるものは一人も半人もなかつたということを、私は痛感するのです。この點は新聞人にも政治家にも認識が足らざる
ようありますが、私はさ
ように斷言してはばからないのでございます。
そこで國
會議員は内閣に對するものでございますが、
裁判官もやはり批評家の立場にあるのでございます。實に日本の
裁判官ほど、くだらないものはなか
つたのです、ただ表向きだけ官吏服務紀律に順從なるがごとくにして、
實際はそうでなか
つたのでございます。それですから、
立法者が何も御心配遊ばされなくても、白晝藝者とふざけたり、
裁判所へ出てもぽかつとしておる
ような、そんなばかな司法者は一人もないです。そういうことは國家國民の憂えではないのです。そんなことを心配するというのはよけいな心配なんです。われわれは少しもそんなことを心配する貴重な時間はも
つていないはずです。私は山梨大將
事件の控訴審の
裁判官から聽きました。か
ような明白な
事件を、なぜ無罪にしたのであるか。いわく、あれは間違いはないのであるけれども、大將なんかに對して起訴するのが間違いである。か
ようなことを申しました。
事實としては、
收賄の
事實が確かにあるということを、列席したる判事は實に私に自白したのでございます。私は、その判事が平素大言壮語をしておりますので、君にも似合わんじやないかということをも
つてとがめたところが、左樣な言質を得たのでございます。これをもし眞實に
從つて有罪としたならば、どういうことになるでございまし
よう。また帝人
事件についても、私は大なる疑問をも
つておるのでございます。無罪になりましたけれども、非常に疑問をも
つておるのでございます。それから田中大將の機密費
事件、あるいは三百萬圓横領
事件、これは
裁判所の弱腰を見越したかどうか、とうとう檢事の起訴がなか
つたのでございますが、もしこの山梨大將
事件、田中大將
事件、帝人
事件という
ようなものが、本當に眞實に從
つて裁判されて罰せられておつたとしますればどういうことになるのでございまし
ようか。軍部少壮武官の蹶起もなくして濟んだかもしれません、軍閥の跋扈もなく、
從つて國家今日の滅亡もなかつかもしらぬのです。つまり、か
ような大
事件を見逃しましたために政黨の
腐敗堕落を招き、政黨政治は一度落第の經驗をなめました。そのために軍閥の跋扈を來し、ひいて國家今日の悲境を來したのでございまして、
裁判官は、なすところはりつぱに國家に
關係しておるのでございます。國家に
關係しておればこそ、國
會議員なり、
裁判官なり、内閣なりは、
憲法に麗々しく掲げる必要があるのでございまして、國家に
關係がなければ、
裁判官のごときは、何も
憲法に掲げる必要がないのでございます、國會において
彈劾する必要がないのでございます。國家に
關係があればこそでございますが、
裁判官みずから、われわれの仕事は國家に
關係があるということを知らないのです。そうしてただ型のごとく
形式的の執務
方法をも
つてして滿點なりと心得ておるのでございます。わが
裁判所部内におきましては、昔から非常な
審理に對する誤解があるのでありまして、たとえば、司法官試補の修習にあたりましても、どちらに認定してもよろしい筋が通
つておればどちらを勝たしても負けさしてもよろしいということを、指導官みずから仰せになるのでございます。それから大審院判決におきましてもかくかくの
事實をも
つてして認定せられざるにあらず、認定せられないことはないという
ようなことを書いております。およそ過去は儼然たるものであ
つて、過去の
事實は神樣といえども一分一厘、といえども變更することはできないのでございます。このくらい嚴格無比なるものはないのでございます。そこで過去の判斷にあた
つては、すべからくか
ように認定するのほか能わず、認定せざらんと欲するも能わず、これよりほかに認定のし
ようがあるならや
つてごろうじろというところまでいかなければ、
裁判というものではないのです。認定せられざるにあらずということは、將來について言う言葉なのです。きのうも大阪へ行つた。その筋道は、きのう行つたならば、この宇宙間においてただ一筋、幅もないただ一筋に限られておりますが、明日大阪へ行く
方法に至
つては、天上天下、四圍東西南北、その道は世界をつなぐその筋の數よりもなお多いのでございます。そこでいかなる
方法をと
つても、大阪へ行けざるにあらずということは明白でございますが、過去はちよつと違うのです。過去はただ一點なのでございます。そこで認定せられざるにあらずという
ようなことは、大審院みずから法則を知らざるものである。このために人民がいかばかり泣いておるか、また國家の風教を害し、ひいては今申し上げました
通りに、國家の滅亡にも
關係しておるということがわかるのでございます。
そこで、私は
最後の結論にはいりまするが、
裁判官が良心に從わない
裁判をするということが、最もこわいのでりあまして、そうしてこれは
裁判官に向
つてとがめ
ようがないのです。自分はそういうぐあいに認定したと言えば、それまででございまするから、それに對してとがめ
ようがないのでございます。しかもこのくらい恐ろしいことはないのでございます。それからまた判斷する能力なき
裁判官、これは子供に刄物を持たしたごときものでございまして、良心に從わない
裁判よりも、
もつと弊害を流すかもしれないのでございます。そこで、私はいやしくも國會が
裁判官を
彈劾する以上は、良心に從わざる
裁判をなしたる
裁判官を
罷免し、また判斷能力なき
裁判官を
罷免するというのでなければ、
意味をなさない。そのほかのただいま第一
部長御
説明のごとき事例は、ひとりでに解決される問題でございまして、何も國會の
彈劾をまちません。國會はさ
ような刀筆の吏にひとしきことのために、わざわざ二十人の
裁判官彈劾委員を選んだりする
ようなひまはないと思います。何ら必要なきことである。ただ良心に從わざる
裁判官判斷能力なき
裁判官、これは天下國家の憂いでございまして、どうしても除かなければならない。國民の要望するところも、ここにあるのだと私は確信するのでございます。國會の權威のために、私はぜひさ
ように御
修正願いたいのでございます。