○
大池事務總長 私から
簡單に御説明申し上げます。先日
證人の
宣誓問題につきましては、一番最初に全面的に
民事訴訟法を準用する一案と、第二案として現
國會法の大體の體裁の整うよう
なつもりで
具體的に書いたものを差上げたわけでありますが、そのときの御
議論では、全面的に
民事訴訟法を準用するということになれば、
準用規定の
範圍がきわめて不明確になるから第二案を
中心に
審議をしようということで、第二案を
中心に御
審議願つたわけであります。ところがそれに對しまして第二案の
宣誓を
前提として、特に
議院が正當な
理由と認めたときにはさせないということになりますと、正當の
理由というものがどういうことになるのか、先ほど申し上げました
民事訴訟法の
準用そのものになるのか、あるいは
議院の方に正當な
理由なりや否やの
認定權があるのか不明確になるので、そこを
適當にしたらばよかろうという
お話に基きまして、第二案を
中心に先日差上げました案ができ上
つたわけであります。その案といたしましては、これを
獨立の
法律案として出すような
意味合の形で書いてあるわけでありまして、これを
獨立の
法案にするか、あるいは
國會法の一部改正にするかという技術的な
手續は別といたしまして、その
内容について幾案も出ておるのであるから、ひ
とつ事務局の方で整理して案を提出するということになりました結果、ただいま差上げましたように一
應事務局の考えた案におちついたわけであります。そこでこれにおちつきました
經過竝びにその法案の
趣旨を申し上げたいと思います。
まず第
一條は「各
議院は、議案その他の
審査又は
國政に關する
調査のため、出頭した
證人に
證言を求めるときは、その前に
宣誓をさせなければならない。」という原則を定めました。これはいやしくも
證人としてまいりました者ならば、その
證人が
證言をする前に必ず
宣誓をするのだというのが、第
一條の
前提であります。ところが
民事訴訟法を適用すると、つまり正當の
理由という
範圍が不明確になります。
民事訴訟法では十六歳未滿の者及び
宣誓の
趣旨を理解することができない者に對しては、
宣誓をさせることができないとな
つております。
從つて衆議院あるいは參
議院に
參つた證人の中で、こういう程度の者を
證人に喚ぶことは
ちよつと想像できません。少くとも「及び」以下の
宣誓の
趣旨を理解することができない者はあり得ないとは思いますが、しかし十六歳未滿の者で實際その
事實を目撃して知
つているとか、あるいは使い走りをしたということは想像することができましようし、また
當然宣誓の
趣旨を理解することができましても、
民事訴訟法で
宣誓の
趣旨を理解することができない者とある人が
議院のみでは
宣誓をしなければならぬ、また
宣誓の義務を負わなければならぬと區別するのはいかがと思いまして、但書で「十六歳未滿の者及び
宣誓の
趣旨を理解することができない者には、
宣誓をさせてはならない」というように、この
二つだけが
宣誓のできない者としたわけであります。
第二條では、「
宣誓は、
證人が
宣誓書を朗讀し、且つ、これに署名捺印するものとする。
宣誓書には、良心に
從つて、
眞實を述べ、
何事もかくさず、又、
何事もつけ加えないことを誓う旨が記載されていなければならない」こういうことにいたしたわけであります。
第三條の方は、この
法律により
宣誓した
證人が
虚僞の
陳述をしたときは、この前は三箇月以上十年以下の
懲役に處するとな
つておりましたが、その三箇月というのを除きまして、
最大限度の
懲役だけにいたしたわけであります。
從つて三箇月以下の
懲役ということも考えられるのでありまして、その點はむしろ
從來の
一般の
刑法よりも少し輕くなり得る途があるわけであります。なぜそういうように
刑法と區別したかという點については、あとで總括的に申し上げたいと思います。「前項の罪を犯した者がその
議院において
證言をした
事件の
審査又は
調査の終了前に自白したときは、その刑を
減輕又は免除することができる」この
規定は、
刑法にもありまして、同じように
規定したわけであります。そこで先日、この罪は、一體だれが
請求をして
訴訟になるかという點が
議論されましたので、「
本條の罪は、
議院の
請求を待
つて、これを論ずる」ということにいたしたのであります。
第四條は「
證人が正當の
理由がないのに出頭せず、又は
證言若しくは
宣誓を拒んだときは、三千圓以下の
過料に處する」ということにしておるわけであります。そこで
全般を通じまして、この前の案と著しく違
つております點は、
從來の
民事訴訟法を適用する場合におきましては、
當該官廳の
承諾がなければ、
公務員が職務上の秘密に關するものは
證言を拒むことができる、あるいは
證人またはその
證人に特別な
關係のあります四親等内の血族もしくはは三親等内の姻族もしくは
云々というようなものも
刑罰になる得るおそれのある場合には
證言を拒否することができてお
つたのでありますが、この
證言拒否の場合を全部むし
つた點であります。なぜこういう點をむし
つたかという點につきましては、
議院における
宣誓は、他の
民事訴訟法にいう
宣誓、あるいは
特許法等にいう
宣誓とは全然
性質を異にしたものであ
つて、結論的に申し上げますれば、
裁判所における
宣誓というのは
裁判權の
擁護という點に
中心があり、また
特許審判の場合には
特許權の
擁護ということにあるわけでありまして、
議院における
宣誓はどこまでも
國會の
審議權の
擁護という點にあるわけであります。
從つて、
刑事裁判において
證人を喚ぶときには、すでに
被疑者なり相手方が現にそこにありまして、それに第三者の
證人が主として喚ばれてくるわけであります。ところが
議會におきましては、
當事者そのものが
證人とな
つてくる場合がほとんど全部を占めるのではなかろうかとまで思われるのであります。從いまして
當事者が
證言を忌避することができることになれば、
宣誓自體を設けましても、
宣誓をしない場合ができることになりますし、また
公務員等が、官の祕密だから、
當該官廳の
承諾がなければ
證言ができないということで
證言を拒みますれば、これまたその
當該官廳に
證言を許すか許さぬかという權限を與えることになりまして、
議會の
證言としては
意義がないことではないか、こう考えるのであります、
從つて證言忌避というものを
議院において認めることはどうしても成り立たないのじやないか、こう考えたわけであります。各國の例を調べてみましても
議會において
證人を喚んだ場合に、
證言を忌避することを認めた法文は
一つも見當りません。從いまして、ただいまお
手もとに差上げました案は、すべて
證人に出頭したときにはたれにでも彼にでも
宣誓をさせなければならぬ、但しこういう
二つの
條件だけがあるということでや
つたわけであります。
從つて、
刑事裁判所において
證言をしないでよろしい者も、ここにおいてはしなければならぬ場合がありますので、そこで三箇月以上というのをむしり、十年以下という
最大限度だけは押えておきまして、その
範圍は三箇月以下にもなり得るということにしてあるわけであります。
大體御説明申し上げました。御
質問がありましたらお答えします。