○
福原説明員 第一
部長の
福原であります。
法制部長に代
つて簡單に御
説明申し上げます。
さきに第二案を一應御採擇願いましたので、それについての一部
表現の不十分と思われる點、すなわち正當な
理由があると認めるとき
證人に
宣誓させないことができるという、その箇條をもう少し
はつきりと
表現したらどうか、この點が後に僞證の罪の
構成要件に非常に影響いたしますので
刑罰法令の
内容となるという點に御
注意の
趣旨があるように
考えたのであります。それでその後の案といたしまして、その點に關し
民事訴訟の大部分の
條項を入れました案を出したのでありますが、これまたあまりに
法律的な
表現が多過ぎるので、いかがかという御
注意があり、それもごもつともなので、それについてさらに
法制部でいろいろと
考えまして、ただいまお
手もとにお配りしたものをつくり上げたわけであります。それ
ゆえこれは今申し方
げたように、
さきの第二案と、それから第二案に補充的な
規定を設けたものとを折衷と申しましようか、つく
つた案であります。
表現の明確というか
簡明化をはか
つたために、あるいは私
たち草案をつく
つた者としては氣がつかない點で缺點があるかと思われますが、その點十分御
注意願いたいと思います。
第一條はこの
宣誓竝びに證言の
規定を單獨法としての
形式をとるために、今までとは少し趣きをかえて、
頭書を書いた次第であります。その
頭書すなわち「各
議院における議案その他の
審査又は
國政に關する
調査のため、その院の
要求により
證人が
出頭したときは」というのは、大體
證人の旅費及び
日當に關する
法律の
頭書をまねたものであります。そうして
證人が
議院に
出頭したときには
議長または
委員長が
證言を求めることができるといたしました。この點は問題があると思うのであります。それはこの
法律では
議長と
委員長に
證人に對しての
證言を求める權限を與えておることになるわけです。
從來私たちの不十分な研究でありますが、
議院に
證人が
出頭した場合の
取扱いにつきましては、必ずしも明確な
規定がないように思われます。しかし
衆議院規則などをしさいに見ますと、少くとも喚問された
證人を
議長、あるいは
委員長が議事の整理をする
關係上、その
證言を求める衝に當
つておるように見えるのであります。それ
ゆえその點を
はつきりとこの
法律で
規定してみたわけであります。そして
證言を求める際に、その前に
宣誓をさせなければならないということを、ここに明確にうた
つたわけです。
宣誓をさせる點は、これは
一つの
事實行爲でありますので、
議長、または
委員長がなさなければならないことは、事の當然だと思います。ただ
證言の方は現實の場合には、
委員がそれぞれの
證人に直接質問しておるようでありますから、その點かような制限をしたように讀めるところが問題がある、こう申し上げる次第です。
第二條は
證言を
議長、または
委員長が求める場合に、
宣誓をさせるのでありますが、ここに
證人について一定の正當な
理由があると認められますときには、
證言を求めること、あるいは
宣誓をさせることをやめた方がよいということを特に
うたつたのです。これは
證人の特別な
身分關係、あるいは
職業關係について
證言を求める場合が人情上酷であるとか、あるいは
職務の執行上無理があるとかいうような場合には、
證言を求めたり
宣誓をさせないということが、一般
證人の喚問についての
民事訴訟なり、刑事訴訟なり、その他の
特許法等の
證人の場合にもそれぞれ
規定があ
つて、
證言を拒否し、あるいは
宣誓をさせないということが
規定されてありますので、それと同じことをやはりこの
議院における
證人についても、同樣に認めるのが相當だと
考えたわけです。しかしここで正當な
理由があると認めるときには、
議長、あるいは
委員長の
專權で認めるわけでありますが、そうなると先に申し上げましたような第二案の當時の正當な
理由の
内容が不十分だということになりますので、その點正當な
理由というものについての
わくはめをしたのが第二項なのでございます。「前項の正當の
理由については、
證言又は
宣誓を拒むことができる場合に關し
民事訴訟法の定めるところの例により、これを認定するものとする。」すなわち
議長、または
委員長が正當な
理由があると認めるときには、
證言なり
宣誓をさせないことができるのですが、その
理由というものは一
應第一項で
專權のようにな
つておりますが、第二項でその基準は
民事訴訟法に定めたように、その例に從
つて認定しなければならないというふうの
趣旨に
表現したつもりです。ここで
證言拒否の場合、それから
宣誓拒否の場合、あるいは
證言をさせない、
宣誓を積極的にさせないというような
民事訴訟の
規定は、この前に詳しく書きました案とほとんど違いがありませんから、御參照願いたいと思います。
第三條は、これは
宣誓の
形式を書いたものでありまして、これも前の第二案とま
つたく同じでございます。
表現については多少わかりやすくしたつもりであります。
第四條は、これもまた第二案とほぼ同じでありまして、
形法の百六十九條、百七十條にあたり、
僞證罪の罰を
議院における
證人についても
つてきたわけです。ここでは第二項の「
議院の
審査又は
調査の
終了前に
自白したとき」という點について、この
自白というものがどういう
形式のものかという點について、あるいは御疑念があるかと思いますが、これはやはり
當該官憲と申しますか、この場合やはりその
委員または
委員會に對して
自白しなければならないのであ
つて、たとえば、この
事件が檢擧され、そして
裁判所にまわ
つた場合、
裁判官の前で
自白したというのは、この
自白にははいらないわけです。さらにまた同項については、
議院の
審査または
調査の
終了前という點が、
法律上明確を缺くぢやないかということが
考えられるのでありますが、この點はやはりあくまで
事實問題として
審査が
終了し、あるいは
調査が
終了したという
事實をくむことに
考えればいい。こう
考えております。
第
五條は、これは不
出頭に對し、あるいは
證言、
宣誓が
理由がないのになされた場合の
過料規定を設けたのです。この
證人について
一般裁判所のように勾引することができるようなことは
考えておりませんので、
證人に對しては、
出頭しなか
つた場合、
過料をとられるということによ
つての
間接強制を第
五條で認めた次第であります。