○
吉本説明員 調査課長が伺うはずでございましたが、よんどころない用事で参れませんので、私が代りまして
説明いたします。
ヨーロッパ各國の
戰後の
財政がどういうふうに變つたかということ、またどういうふうになるかということを
考えてみますと、全體として
國家財政の
國民經濟に占める地位が非常に大きくな
つておるということが
一般的に申されるかと思うのであります。これは
戰前から見られました
傾向でございまして、いわゆる
赤字財政政策というものが
不況時分からとられまして、むしろ意識的に
財政の大きさというものを大きくして、
民間の
經濟で立直りのできないところを
政府の力で
不況を克服していこうという政策がとられたのであります。それから
戰爭に突入いたしまして、もちろん
軍事費のために
財政は膨脹いたしましたが、
戰爭が濟みましても、今度はいわゆる
完全雇用ということが叫ばれるようになりまして、
戰前の
赤字財政政策のあとを
繼ぎまして、
國家がどんどん
消費をして、そして
民間の
消費の足りないところを
補つて、このような
不況を大いに締出そうという
考えが擡頭して、これが今日の
財政のいわば新しい原理とされておる。ついこの間まで
アメリカの
豫算局の長官をしておりましたハロルド・スミスは一九四五年に、
アメリカの
財政の今後の進むべき道ということについて著書を著わしております。その中にも申しておりますが、百五十年前ならば最も統治するところの少ない
政府が最良といわれた。しかし今日では最も多く奉仕する
政府が最良の
政府である。こういうふうに變
つてきておる。そうして
グラワドストンの
言葉を引用いたしまして、
グラワドストンが、
豫算は單なる算術の問題ではない、無數のしかたで
個人の繁榮の根源、
階級の
關係及び國家の強弱に關係するものであるということを申したが、その
言葉が今日の財改について最もよくあてはま
つておる、ということを申しております。
完全雇用財政論と申しますのは、
イギリスのビヴアリツヂ、
アメリカのウオーレスという人が
戰爭の直前ごろから盛んに唱え出しまして、要するに
經濟界が
不況に
なつた場合には、
政府の
投資あるいは
政府の
消費を擴大して
民間の
消費や
投資の足りないところを補う。そのために使う
財源は
赤字公債を出していく。もちろんこれを
租税でや
つてもやれないことはない。要するに
縣民經濟全體の
バランスを豫想して、
消費、
投資の足りないところを補う。そのためには從來のように
政府が
收支だけを
豫算として議會の承認を求めるだけでなしに、それに
伴つて國全體の、つまり
政府の
收支以外の
國民全體の
經濟の
バランスを
考えて、
政府の
豫算をその上に組んでいこう、こういう
考え方でやるべきだという
考え方であります。これはもちろん皆さま御
承知の
通りでありますが、ただしかしこの
完全雇用財政論を現在にあてはめて
考えてみると、どこの國も
戰爭中に
厖大な
赤字公債を出しまして、
購買力が非常に過剰にな
つておる。一方
生産は
戰爭中の減耗によ
つて停滯しておる。こういう
状態であ
つて、今日ではむしろ
購買力を食止めなければならない。
インフレを押えなければならない。こういう
状態であるのは各國いずれもそうであります。
從つて今日ではむしろ
完全雇用財政の逆と行かなければならない。これは
イギリスでもその他の國でもみな同じであります。
アメリカでさえ
完全雇用財政ということは現下の問題ではない。また一方から見ると、この
完全雇用財政とか、
赤字財政とかいうことは
先進工業國の問題であ
つて、
後進國、
農業國あるいは半
工業國とい
つたような、まだ
生産設備が十分に整
つていない國においては、まず
投資を強化しなければならない。それでなければ
完全雇用と申しましても、
生産能力の方が人を養うだけのものをも
つておらないのでありまして、
完全雇用財政と申しますけれども、
將來において人口を全部
完全雇用するに足るだけの
投資生産設備が整わなくては、いたずらに掛聲だけに終
つてしまう。こういうことが
考えられるのであ
つて、
アメリカのハンセンという人が書いておる本にも、
後進國は今日ではむしろ一歩退いて、
貯蓄を押さえて
投資を強化しなければならぬということを申しております。この點は戰敗國として多數の
生産設備を賠償で撤去され、あるいは
戰爭で破壊されたという
状態にあるわが國の場合においては、最も注意して
考えられなければならぬことだと思います。それでなくても
イギリス、
アメリカにおいても、今日の問題としては
完全雇用財政、
購買力復舊ということとはむしろ逆の
方向をとらなければならぬということがいわれておりまして、それにはまずこれから起る
赤字を排除しなければならぬ。そして現在生じておる過剰の
購買力をできるだけ吸收しなければならぬというわけでありまして、
消費を一段と下げて、
生産投資の方に向けなければならない。そのためには、
完全雇用財政というものも、
財源を
赤字公債でなくて、
増税だけで
完全雇用財政をやることも
考えられる。というのは、同じ
所得金額であ
つても、低い
所得の
階級の
所得は、それだけ、今日の
流行語で申せば、
消費速度が高い。低い
階級の者は得ただけの
所得を
公部使つてしまう
傾向があり、
割合に高額の
所得の方が
貯蓄に向う
部分が多いのでありまして、今日の
インフレを抑止する
見地からすれば、むしろ低い
所得の
階級から
税金を取立てて、これを
國家の收入に收めるという
方向をと
つていかなければならぬ。またその
とつた
購買力も、これを國の
支出として出す場合には、
生産投資的な
方向に向けなければならない。
民間の
消費を取上げて、また一方で
政府が
消費するということであれば、プラス・マイナス・ゼロでありまして、
政府としては取上げた
購買力は
生産投資の方に向けなければならぬ。そうして
消費の
水準を低めて、
將來の
生産向上に役立てる。こういう
方向をとらなければならぬということが
考えられるのであります。ところがこれは
理窟の上から申せばまさにその
通りでございますが、しかし
戰後の
要請として、一方には
戰爭で飢え疲れた
國民に對してある
程度の
減税あるいは
社會施設を行わなければならない。
つまり消費をある
程度ゆるめてやらなければならないという
要請がございます。また
軍事費もそう急には減らせないという
要請もございます。これらの
要請と
理窟からの
要請とを織り交ぜていく
方向に向けていくというのが、今日の
一般の
傾向と
考えられるのであります。大
體イギリス、
アメリカなどをと
つてみましても、
戰後現在の
財政は
國民所得の
割合に比して非常に殖えておる。
アメリカを例にと
つてみますと、
戰爭中は
縣民所得の六二%まで
政府の
財政が占めておる。四六年には三九%に減じておる。四七年、現在では二三%に減じておる。これに對して
戰前はわずかに一二%、
戰爭が濟んで
財政が收縮しておりますものの、やはり
戰爭前に比べてよほど大きなものにな
つておる。
イギリスについてみましても、
戰時中は
國民所得の七四%までが
政府の
豫算である。それが四六年には四八%になり、今度の
豫算は四〇%に減
つておる。しかし
戰前では二〇%であつたのであります。やはり倍ぐらいの
割合に殖えておるのであります。
次にそれではこの大きくな
つた豫算は、
歳出はどういうふうに使われておるかということを見てまいりますと、一番大きなものとしてまず
軍事費、それから
敗戰國では
占領費負擔、これを
軍事費と同じものと見てその
割合を見てまいりますと、
イギリスでは
戰爭中は、
歳出豫算の八六%までは
軍事費でございます。それが一九四六年には四二%に減
つておる。今
年度では二八%まで下
つております。これは
戰前が二九%でございましたから、大體
戰前の
水準まで下
つておる。
アメリカは
戰爭中は
歳出のうちの九二%であつたが、四十六年には七四%、現在では三五%にまで下
つております。これに比べて
戰前はわずかに一四%でございます。
ソ連では御
承知のように
資本主義國と異
つておりまして、
歳出に對するパーセンテージを求めると
戰爭中は千二百八十億であつたが、四十六年には七百二十億に下がり、四十七
年度には六百七十億にまで下つた。なおこのほかに
ロシヤでは
科學研究費として原子力その他の
研究の
費用を昨
年度までは五十億ルーブル、本
年度は六十五億ルーブルを計上しております。
國防費は
戰前はわずかに二百七十億、現在では四百七十億でございます。その間に
物價は大體二倍近く六、七割の
騰貴をしているようでありますが、それと比較しても相當増加していることがわかります。
なおついでに
國防費と似たものでわが國でも
當面問題にな
つている
占領費一般の問題について各國の例を御
説明申し上げます。オーストリーでは
歳出豫算の三五%
程度が
占領費の負擔とな
つており、このために
國民經濟を非常に壓迫するというので、
アメリカではこれを二五%ないし二〇%にまで下げようということで
ソ連と交渉いたしました。
アメリカの言分としては、三五%の
占領費負擔の大
部分が
ソ連に充てられているということで交渉いたしまして、ややこれが下げられた様子であります。
また
イタリアは一九四五年から四六年にかけて四千億リラ
程度の負擔をいたしました。しかしこれは主として
アメリカ關係でありますが、
イタリアに對する援助を千億リラ以上のものをいたしておるので、そういう點から見るとほぼその負擔も棒引にされているような次第でございます。
ハンガリーは御
承知のように大きな
インフレを引起したところでありますが、現在ここでは
國民所得の一二%
程度が
占領費の負擔にな
つております。
日本の
占領費の負擔は
終戰處理費としては
國民所得の大體三〇%
程度で、
占領費の負擔は
國民所得に對して一〇%
程度ではないかと思われます。
それから
軍事費以外の
軍事費のいわば
あと始末としての
國債費の問題でありますが、
戰爭中の
國債發行は
アメリカは
イギリスよりも多かつた。
イギリスの方は
割合に
租税で
支辨した分が多かつたのですが、
アメリカは
國民所得の五五%
程度まで
國債を發行した。
イギリスは四一%
程度までを發行した。それからだんだん率が低下しておりますが、とにかく
厖大な
金額の
國債を發行したことは申すまでもないのであります。
從つて國債の
利拂費というものが
イギリスでは現在でもまだ
歳出の一三%を占めております。
アメリカでも
歳出の一二%を占めている。
戰爭中は
豫算そのものが膨脹いたしましたので、占めた
割合は低下いたしましたが、
絶對額、もちろん殖えている。
ロシヤの例を見ましても、
戰前の二、三十億ルーブルのものが現在では六十一億ルーブルで、ほとんど倍近い
國債費を使
つております。
次にもう少し積極的な
方面といたしまして、
社會施設費がどの
程度に出ておるかということを見ますと、
イギリスでは、御
承知のように、
食糧、必需的な
衣料その他に對しまして
生計費の
價格補助ということをや
つておるのであります。これが本
年度の
豫算では四億二千
萬ポンド、全體の
豫算が三十億ポンドでありますから大體一割二、三分がこの
生計費で占めておることになります。その他
イギリスは
戰後において
厖大な
社會保險の案を續々と實行に移しておりまして、
家族手當なども
國民全體に對して
政府から出す
家族手當をきめたり、あるいはその他いろいろな
社會保險制度を整備いたしております。そのほかに
義務教育の年齢を
引上げております。そうい
つたような關係で
社會施設費、
教育費に對する
歳出は相
當大きな
部分を占めております。
アメリカにおきましても、
社會保障あるいは
退役軍人、
出征兵士、
歸還軍人の
手當、その他が
厖大な額に
上つてお
つて豫算の相
當大きな
部分を占めております。
ロシヤにおいては
豫算が大
體軍事費と、
社會文化費と
國民經濟費の三つの大きな
項目にわけて
歳出を分類いたしております。この
社會文化費を見ますと、
戰時中は六百二十九億ルーブル、それが四十六年には八百四億ルーブル、四十七年には千七百一億ルーブルとだんだんと殖えておりまして、
戰前の四百三十億ルーブルに比較いたしますと、二倍
半程度の増額をいたしておるわけであります。
物價の
騰貴を
考えに入れましても、相當
戰後において
歳出が殖えておるのであります。
それから
國民經濟費、いわゆる
生産的な
方面に使われるところの
費用であります。
ソ連におきましては、この
費用を非常に
戰後増加しておる。これは申すまでもなく戰災を復舊し、
生産を高めるという
ソ連の
戰後復興の根本のねらいが
國民經濟の増加にあるのでありますから、申すまでもないことであり、
ソ連が一九四六年、
戰後第一
囘目の
平時豫算を組むにあた
つて、
根本方針とするところを五つばかりの
項目にわけて申しておるのであります。その第一は、重
工業、
運輸、
農業、
消費財の
生産工業、こういう
方面に對する
支出を大いに擴大する。第二に、
文化施設を大いに擴充する。第三に、
科學研究を大いに獎勵する。第四に、勞働の
生産性の向上のための施策を講ずるというようなことを掲げておるのでありまして、
從つて國民經濟費というものは相當増額されておるのであります。四十六
年度を例にと
つてみますと、
工業では二億ルーブル殖やし、
農業では三十億ルーブル、
運輸では九億ルーブル、商業では十億ルーブル、
公益事業では十五億ルーブルを増額しております。四十七
年度も同様で
工業、
農業といつた
方面に對する
支出は大いに殖やしておるのであります。そういたしまして、
戰後第一
囘目の五箇年計畫においては、
國民全體の
投資總額を、一九五〇年には
國民所得全體の二七%まで高め、一九三七年には二四・五%でありましたが、これを二七%にまで高める。そして
消費を抑えて
生活水準をある
程度抑制して
投資に向けるということを強硬に行
つておるわけであります。
これに對しまして、
イギリスはどうかということをみますと、
イギリスの
豫算は、御
承知のように、多少の
國營等を行いましたが、まだ現
年度では二、三の部面だけでありまして、從いまして
豫算の中には
生産的な
投資というものはそう多くない、それを拾
つてみますと
石炭廳に對する
投資が五千
萬ポンド、それから
住宅、これは
イギリスは
戰後の
住宅建設は國と
地方團體で全部やる、
國營、
公營でやるということにな
つておりますが、これに對する金が二億九千
萬ポンド、これは相
當大きいのであります。そのほかに道路の建設などを加えましてもせいぜい四億ポンド
程度であります。從いましてロシアと比較して
イギリスが
投資にどれだけの力を注いでおるかということを見ますには、
國民經濟全體の、いわゆる
國家豫算的な
考えをもちまして、
政府の
豫算だけではなしに、
國民經濟全體の
豫算の
收支を總合いたして見なければならぬのであります。
イギリスではまだこういう
國家豫算というものは正式には行われておりませんが、大體の見積りを見ますと、
國民所得全體に對しまして四十六
年度では
投資に充てられるものは一三%、これは過去の資本の
維持補修、いわゆる
減價償却にあたります
部分は六億ポンドでありますから、
差引新規の
投資というものは七億ポンドにすぎない。これが一九四六年の實績であります。先ほど申しました
ソ連の二七%というのに比べますと、昨
年度はわずかに一三%、
ソ連の二七%というのは今後の
目標でありますが、
イギリスはどの
程度を
目標にしておるかと申しますと、四十七
年度、今
年度ではこれを
國民所得に對して二〇%まで高める、これで
戰前の大體五%
増程度であります。ただしかしこれがこの間の八月の
緊急對策においてさらにこの
投資を減らさなければならぬ。
輸入を切詰め、人力を節約するためにはどうしてもこの
投資を八億ポンド
程度減らさなければならぬ、この八億ポンドという中には
住宅とかいうようなものもはい
つておりますから、必ずしも一三%というものの中で、
金額にいたしますと十三億
程度出ておるようでありますが、その中で八億ポンド減るのではないのであります。やはりこれによ
つて相當投資は阻碍されるわけであります。
歳出の方は大體この
程度でありますが、次は歳入はどうかと申しますと、先ほど申しましたように、
インフレ對策といたしましては小
所得者から取立てて、大
所得者あるいは法人に對する課税はできるだけ
減税して、と
つてもこれを一方において
支出する場合には
投資支出に向けなければならぬ、それと同時に奢侈的な
消費は統制していくということが
要請でありますが、現實としては先ほど申しましたように、
戰後減税しなければならない、あるいは
社會施設を増大しなければならない、
政府の
消費というものを殖やさなければならない、また大
所得者を
減税するということは
一般の
社會感情からまいりましても施行しにくいというような點からいたしまして、これが實際においては妥協に終
つておるのであります。
イギリス、
アメリカ、
ソ連、いずれを見ましても戰時における小
所得に對する課税を
戰後においてある
程度減税いたしております。また
イギリスにおいても、
アメリカにおいても、
高額所得者に對する
戰時中の重税は
戰後もこれを繼續しております。
アメリカでは、御
承知のように、
共和黨が
減税をねらいましたけれども、大統領の言によりましてそのまま繼續されておるというわけであります。
イギリスにおいても
所得税の
税率は
戰時中からまつたく減
つておらない、そのままの重税が課せられておるのであります。また一歩進んだ
高額所得に對して
戰時中よりももつと高い
税率を課そうという試みも
スエーデンの方ではとられておるのでありまして、これは國内の政情に鑑みまして、いわゆる
高額所得に對する
社會感情というものを受け入れたものと
考えられるのであります。一方において
間接税の方は、これは
インフレの抑制の
見地からいたしますればまことに結構な話であります。それが
一般の
社會感情と合いさえするならば、これは
經濟的に申しましても
インフレ抑止という點から申しますと申し分ないものなのであります。
イギリスでは御
承知のように
タバコの
税金を
引上げ、また奢侈的な
消費に對する
物品税は相
當引上げております。また最近の
追加豫算では
賭博税というものを設けまして、ドツグ・レースというのですか、それに對する一〇%の税を新設することにな
つておるのであります。そうして
購買力の吸收に努めておるのであります。
イギリスにおきましては
少額所得者に對しましては前に申しました
戰後の
減税の
要請にこたえまして、
勤勞所得の
控除の限度を
引上げる。あるいは
扶養家族の
控除の限度を
引上げる。
控除の額も
引上げるとい
つたようなことを行
つておるのでありますが、大
所得者に對する
所得税率は、大體そのままで、現在の率は、
普通税と申しますと、一律に
所得の大小にかかわらずかかる
税金でありますが、これが一ポンドについて十シリングの
戰時中の率に對して、一ポンドについて九シリングというほとんど半分近くのものをおしなべてあらゆる
所得からと
つております。そのほかに
附加税というものがありましてこれは累進的にな
つておりますが、
日本の
所得税の累進的な
部分だけが別の
税金にな
つております。これが
最高が
附加税と合わせると一ポンド、すなわち二十シリングのうち十九シリング四ペンスという、ほとんど九〇%というものが
税金にとられております。これは
最高の率であります。これが
戰時中から行われておりまして、現在もそのまま行われております。また
會社に對する
税金も今年の四月に
増税いたしまして、さらに今年の十一月、先ほどの
追加豫算でこれを
増税しておるのであります。これについては
民間の
投資を阻害するとい
つて、反對黨では相當非難をしておるのでありますが、それは
間接税と申しますか、
間接税は先ほど申しましたように、
タバコ税の
増税、
アルコール税の
増税、
物品税の
引上げとい
つたようなことを行
つております。今度の
緊急對策ではおそらく
財産税を課するのじやなかろうかということがいわれてお
つたようでありますが、これはまだ議題に
上つておりません。先ほど申しました
スエーデンの非常に急進的な大
所得者への重課ということの内容を見ておりますと、
高額所得に對する
財産税も
引上げる。
會社に對する
税金も増額する。そのほかに新しく
財産税というものを新設する。
會社に對する
資本税というものを課する。
個人の
財産税というものは、一時限りのものでありませんで、毎年取立てる經常的の
財産税で、その率を見ますと、最低のものは七%でありますが、
最高のものは五〇%ということにな
つております。相當重い
税金が課せられる。これと同時に低い
所得に對しましては輕減をいたします。また賣上税を廢止する。
社公施設を増大するとい
つたような策をと
つておるのであります。
こういうような
状態で
國民の
消費というものは一體どうな
つておるかということを見てまいりますと、
イギリスを例にと
つてみますと、
國民所得は
戰前よりも殖えております。これは
イギリスの
物價騰貴を六、七割
程度とみましてそれだけ勘定に入れましても、つまり
戰前の價格で比較いたしましても、昨年の
國民所得は殖えておる。また
國防費が減少いたしましただけ
國民の
消費というものも若干殖えておる。
イギリスが困
つておるといわれておりますけれども、數字の上では
國民の
消費は
戰前よりもむしろ多少高くな
つておるということが現われております。しかし、その
消費の
總額は殖えておるのでありますが、その内容を見てまいりますと、殖えておるものは、書籍、雜誌、あるいは
旅行費であるとか、娯樂費であるとか、
通信費であるとか、
タバコ、
アルコールに使う
消費であるとか、こんなところが相當に殖えておるのでありまして、
食糧とか、あるいは
衣料とかあるいはいろいろな
家庭用具、そういうものは減
つておるのであります。
つまり統制のために、使いたい
方面に使えなくて、ほかの
方面において
消費しておるというわけでありまして、
イギリスとしては、
物價騰貴を考慮に入れましても、
戰前に比べて高い
消費水準を見せておるわけでありまして、御
承知のように、
タバコなども三、四割
方消費が
戰前よりも殖えております。しかしながら、今年の八月の
危機對策によりまして、
タバコの
輸入も止まる、
アメリカ映畫の
輸入も止まる、ガソリンの
輸入も削減され、その他
食糧にいたしましても相當
輸入が制限されまして、ぜいたく的な
輸入はほとんど禁止されたというわけでありまして、今後
イギリスの
國民生活、
國民の
消費水準というものは、やはり質的に申しますならば、
戰前のはるか下に落ちていくであろうということが見られるのであります。
緊急對策の結果、
イギリスの
國民の攝取カロリーは、これまでは二千八百七十カロリーでありましたが、二千七百カロリー
程度に止めるというわけで、
アメリカから
食糧を買うことを差控えました結果、それだけ攝取カロリー
水準が下ることになるわけであります。また
所得税の内容を見てまいりましても、
勤勞所得の
割合が相當殖えております。
税金が高給
所得に對しては高いのでありますが、納税前の税込みで見ますとどちらも殖えておりますが、
税金を差引いたあとの高で見ますと、
勤勞所得は、
戰前は全體の
所得の三九%まで來ておりましたが、これが現在は四四%まで來ております。財産
所得の方は
戰前は全體の三七%でありましたが、現在は三三%に落ちております。その他高給
所得の方は大體
戰前と率において變りはない。
勤勞所得は相當殖えておる。こういうことは民生安定からは好ましくないのでありますが、こういう事實にな
つておるということであります。
大體歳入の
税金の方はこの
程度にいたしまして、今度は歳入の
國債の方であります。
アメリカや
イギリスは
豫算が黒字にな
つておりますから、大體
財政は安定しておるのでありますが、その他の國では大體ヨーロツパ諸國は
赤字が續けられておる。この
赤字の代表といたしましてフランス、イタリーとい
つたようなところの状況はどうであるかということを申し上げたいと思います。フランスも議會に出す
豫算は大體このごろは三箇月分ずつを出して、緊急
豫算ということでや
つておるのでありますが、議會に出しておる
豫算は大體均衡した
豫算が出されております。しかしながら實際は
物價の
騰貴が追
つてまいりまして、あとからあとから
追加豫算を出すということでありまして、まだ十分均衡というところまでい
つておらない。またイタリーは初めから
赤字でありまして、現在の
赤字は、一九四六年から七年にかけての
赤字が四萬五千億リラくらいの
赤字にな
つております。フランスでは、昨年の暮れに
財政状況について白書のようなものを出しましたが、これについて、その内容を見てまいりますと、
歳出でも、人件費が全體の一七%
程度であつたのが、現在では二五%
程度までな
つております。
軍事費が
戰前は三八%
程度であつたが、現在は四六%
程度にな
つております。その他、
社會施設費等が相當増額しているというわけで、
歳出の方も殖えておりますが、これに對して歳入の方が非常に思わしくない。どうも負擔の均衡がとれていない。
勤勞所得に對しては
税金が相當
上つておるが、商
工業、
農業というような方の負擔は非常に輕くな
つておる。
戰前勤勞所得税の收入は全
所得税の收入の一〇%
程度でありましたが、現在では七三%
程度にな
つておる。農、工、商業とい
つたような
方面は現在では三二%にな
つております。これはフランスの税制が悪いのであ
つて、申告課税の分は全體の八割
程度でありますが、この檢査ができていない。また、見込課税、
政府の決定します分につきましても、その評價が現在の
インフレと調和を合わしていない。こうい
つたような關係で、やみ利得のものがとれていない。これを何とか改めなければならぬ。また一方において行政制度の改革ということも必要である。いろいろ補助金を整理する。あるいは特別會計、營團、地方
財政とい
つたようなものの
赤字をなくする方法も講じなければならぬ。そうしてこれを清算して、大體一九四七年の暮までには税制。
財政の改革の基礎案を出すということを言
つております。ただ現在までに行いました税制改革の一端といたしましては、昨年の暮に一九四六年の商
工業、
農業方面の
所得の査定はもう一度やり直して、そうして實額を捕捉するようにやり直す。それが去年の決定の二倍、三倍にな
つても構わない。
農業所得などについては三倍まで決定が殖えても、三倍以内ならば異議の申立ては認めない。また一方において商
工業、
農業及び重要輸出業に對する
所得税の納税は、その納税者に對して氏名を公表するというようなことを改革を行いまして、鋭意税源の捕捉に努めておるようであります。
この九月二十三日に出ましたマーシヤルプランに基くパリー
會議の報告を見ますと、フランスは、マーシヤル案に基く
アメリカの援助が得られるならば、
歳出豫算は、
生産投資、あるいは
軍事費、そういつたものを一切含めまして全部
税金で賄う均衡
豫算を確立するということを、本年末までに實行すると明言しておりますから、だんだんとそうい
つたような
方面の整理が整
つて、
アメリカからの借款に伴
つてフランスの
豫算が均衡するのも間もなく實現することであろうと思われるのであります。フランスといたしましては、
戰後の輸出に備えますためには、
民間の産業の設備というものを相當近代化して、大いに
生産投資を行わなければならぬ。また、昨
年度からいわれましたいわゆるモネプラン、復興四箇年計畫におきましては、四年間に三兆フランの
投資を行うということにな
つておりますこれは
國民所得の大體二三%から二五%まで占めるものであります。これがはたしてフランスにやれるかどうか、
ロシヤのようなきつい統制を行わずに、自發的にこの
程度の
投資が行われるかどうかということは事實において疑問をも
つて見られておるのであります。
次はイタリーでありますが、イタリーは四十六年から四十七年にかけての
豫算が先ほど申し上げましたように四千億リラ、あるいは五、六千億リラという
赤字になるのではないかと見られております。ずつと終戰以來、一九四三年以來
赤字を續けてきておるのであります。
國債の發行高を見ますると、一昨年末で四千億リラでありまして、
戰爭が濟んでから九千億リラのうちで五千億リラというのが
戰爭後の發行であります。最近の
歳出は歳入の三倍にな
つております。毎月五百億リラずつの
赤字が出でおる。
歳出はどういうふうに使われておるかというと、
占領費の負擔、復興費の
支出が相當多い、こういう
状態でありまして、今年の四月に
財産税をあげました。それから復興公債を二千億リラというようなことをや
つておりまするが、なかなか
赤字が埋まらない、この間九月二十三日でありました、同じくマーシヤル・プランによりますところの
委員會の報告を見ますとイタリーは一九四八
年度には大體
豫算は均衡がとれるとこういうことを申しております。國の内外における借金で賄うところの
經濟安定のための特別
支出だけは、そういう内外の公債が發行できる限り公債でや
つていく、それ以外は大體平常收入で
支出をカバーしていくつもりだ、こういうことを言
つておりますから、フランスよりはやはりある
程度遲れておるわけであります。
その他先ほどスウエーデンのことを申し上げましたが、これはスウエーデンとかノルウエー、あるいはスイスとい
つたような國は大體
財政は安定しているようでありますが、ベルギー、これは一番
程度がヨーロツパではよろしいのでありますが、これも現在ではまだ
赤字で、近くこれも安定すると思
つております。その他オランダ、これなどもインドネシヤ紛争のために相當
豫算が
赤字を續けて、まだ安定の見込みに達しないようであります。
それから
インフレの激しいハンガリー、これは皆さん大體御
承知のことだと思いますが、一九四五年ごろから
インフレが始まりまして、十一月にはその年の七月の
物價の十八倍、十二月にはその三百五十倍、このころから
インフレが激しくなりまして、ついに昨年の六、七月には未曾有の危機を招來して崩壞してしまつたのであります。これに對しまして昨年の八月安定計畫が立てられました。どういうわけで
インフレが起つたかということは大體賠償とか、
占領費の負擔というものでどんどん新規
生産物が取立てられる。これは
アメリカの方ではその半分以上は
ロシヤに行
つておるとい
つております。
ロシヤの方ではいや
インフレの原因は賠償だとか負擔ではなくて、
戰時中にドイツのナチスがハンガリーからどんどん運び出したのが原因だということがいわれております。八月には安定計畫を立てまして、その後今年の七月までの
豫算を申しますると、まず
豫算は歳入の方から申しますと、歳入は
國民所得の二三%、これだけを歳入に押えております。
國民所得は安定した通貨、つまり
戰前の通貨で半分
程度、百十五億リラにな
つておる。その二三%つまり二十六億リラだけを歳入としてと
つておる。これによ
つて歳出を組む、
歳出は二十九リラ、そうして
占領費の負擔及び賠償費の
支出、これを
豫算總額の四二%をとりまして十二億リラをと
つております。そうしますと二十九億リラから十二億リラ引きまして十七億リラ、これがほんとうの
豫算であります。これは
戰前の
豫算が二十五億リラであつたところから見ますと、御
承知のように、ハンガリーの安定計畫は
物價を
戰前の三倍にし、賃金を
戰前の二分の一にしております。その間六倍の差を開いて、これでも
つて生産を再開していこうというねらいであつたのであります。
物價が三倍に
なつたから、
戰前の二十五億リラは現在の七十五億リラに相當するわけでありますが、それをこの十七億リラに押えた、從いましてのき並みに非常な削減を行いまして、教育文化費
程度だけが大體
戰前と多少似かよつた
金額で、あとはのき並みに削減したのであります。復興の
支出は一割
程度に止められておる。復興を第二義として、まず通貨の安定を第一義とする、こういうことでありまして、今後の復興のための
支出は、毎年
國民所得をだんだんに殖やしてい
つて、一九五〇年には二百億リラ、つまり
戰前と同じところまでも
つていく、その
國民所得がだんだん殖えていくだけの一割だけを毎年復興のための
投資に使う、こういうふうに復興を抑制して安定をまず第一にはかろうという
考えでや
つております。その後の様子を見ますと、今年の四月ごろでありましたが情報がありまして、大體うまくい
つておる。
物價もそう大して上らず、賃金がいくらか上げられた
程度でありまして、大體うまくい
つておるということであります。
そのほかの國といたしましてはドイツでありますが、ドイツはよくわかりません。
アメリカの占領地域だけの様子が今年九月ごろ
アメリカの無電ではいりましたわずかばかりの情報でありますが、それにいたしましても通貨の流通高が現在どれだけあるかというようなことも全然わからないのであります。終戰當時の
状態は大體
戰前の通貨の流通高の十倍
程度であつたということは言えます。それでは
物價はどういうふうにな
つておるかと申しますと、
物價は嚴重な統制で
戰前、
戰時中と變りないことにな
つております。賃金もほとんど變りないことにな
つております。從いまして
生活水準は配給さえあればほとんど變りないと言えるのでありますが、ただ
税金が非常に高く
なつた。ドイツは御
承知のようにまだ中央
政府がございませんが、各州の
政府で
占領費の負擔をしておる、ほとんど全部黒字に近い負擔をしておる、從いまして
税金も
上つております。
税金の上つただけは
生計費も非常に苦しいわであります。それと統制のために物も入手が困難で、従いましていわるゆバーター取引、物交とか、やみ取引というものが相當横行してお
つて、農産物はほとんど二割近くまでも占領地に流れておるというような状況であります。その他詳しいことはほとんどわかりません。前の第一次大
戰後のドイツが典型的な
インフレーシヨンの國として今日よく知られておるところでありますが、その後の状況を見ますと、ドイツの
財政は
戰後ずつと
赤字財政を續けておりまして、ほとんど
増税とか均衡
豫算ということについては留意が拂われておらない。一九一九年から一九二三年の安定するに至りますまでの
赤字の額は、舊マルクにいたしまして百八十七億マルクという
赤字にな
つておりまして、ほとんど流動公債で、大藏省證券でや
つておる。
税金は二、三年
増税が行われましたけれども、どんどん發展いたします
インフレに押し流されまして、ほとんど歳入というものはゼロに近い
状態にな
つてしまつたのであります。最もはなはだしい一九二三年、爆發いたしました十月の
状態におきましては、國の歳入のわずか〇・八%だけが
税金で賄われる。殘りの三九・二%までは
赤字、こういう
状態にあります。それではこの
赤字財政は一體何から起つたかということを見ますと、賠償
支出は一體どのくらいかというと、これは
戰後一九二〇年から始まつたのでありますが、二〇年から二三年暮に至りまするまでの賠償というものは、六十五億マルク
赤字全體が百八十七億マルク、これがこの四年間の
赤字、大體
赤字の三分の一がやはり賠償に充てられたというわけであります。御
承知のシドニーという人の、ドイツの
インフレーションに關しての著書がありますが、シドニーはイタリーの
政府を代表いたしまして、ドイツの賠償問題に關して行つた人でありますが、これはやはりこの立場からドイツの
インフレは賠償がその原因だということを非難しております。わずか
赤字三分の一
程度のものしか實際に負擔しておらない。ドイツの
インフレの原因は賠償ではない。もしドイツが賠償を全然負擔しなかつたとしてもこういうような
赤字を續けておれば
インフレが起る。もし
赤字を續けないでいくとすれば、
戰爭中に發行した
國債利拂というものは非常な大きな額に上つたに違いない。そのためにドイツは借金をしていかなければならなかつた、もしそれを
税金で取立てるということをや
つてお
つて、健全
財政を
戰後と
つておつたならばこんな
インフレは起こらずに濟んだ、それは賠償を負擔しても結局同じことだ、こういうような論調をもちまして賠償が
インフレの原因ではないということを盛んに申しております。ともかくこの一九二三年に、御
承知のように、これが安定いたしまして、その後賠償の負擔というものは非常に減
つておりまして、翌一九二四年は賠償負擔が全然ゼロ、その次が二億九千萬金マルク、五億五千萬金マルク、八億九千萬金マルクというので、安定までの二十八億とか十八億とかい
つたような大きな負擔は經減された。
從つて一九二四年は黒字の
財政をと
つておる。黒字の實績を示しております。その後多少の
赤字がありますが、微々たるもので、
財政は均衡を得ておる。安定直前まではずつと
赤字を續けておつたのでありますが、安定と同時にこれが黒字に急轉しております。
こういうふうな點から見てまいりまして、先ほどのハンガリーの例も、ドイツの第一次大
戰後財政の安定、黒字を實現するためにはどうしても外部の援助というものがやはり大きな役割をしておるように思われるのであります。
財政の
赤字というものがはたして
完全雇用の點から申しまして、肯定できるかどうかということは別問題といたしまして、またどの
程度までの
赤字がいいかというような議論は別といたしまして、今日ではどうしても
インフレを阻止するためには黒字の
豫算を組まなければならぬ、均衡
豫算を組まなければならぬわけであります。殊に
後進國、戰敗國といたしましては、黒字の
豫算を組まなければならぬのでありまして、一方におきまして
生活水準を切り下げて——
將來のより高い
生活水準のために現在の
生活水準を、
消費水準を、
將來に備えて抑制するという方法をと
つてまいらなければならぬのであります。このための前提であるところの
豫算の均衡ということにつきましては、外部からの資金なり外貨なりの援助というものが相
當大きなものを占めておるということが見られるのであります。この間行われました九月二十三日のパリー
會議におけるマーシヤル案におきましても、
アメリカから足らないところを援助してもらう、黒字
豫算ということはもちろんでありますが、そのほかに各國の安定を助ける手段として、全體として三十億という
程度のものを借款として
アメリカから貸してもらいたい、そうすれば安定は非常に促進するであろう、その後においてブレトン・ウツズに
從つて各國の通貨のドル建を再開させていくということができるであろうということを申しておりますが、この點大いに
考えるべき問題であろうと思うのであります。
先ほど申しましたように、今日
財政は
國民經濟に非常に大きな地位を占めております。今後もこれが續くと思うのでありますが、それがどういうふうな
状態で
インフレに作用し、デフレに作用するかということを見ていきますためには、ただ單に
赤字があるとかないとか、その額が大きいとか小さいとかいうことではなしに、その
歳出がどういうふうに使われておるか、
生産に使われるか、
投資に使われるか、また
消費に使われるか、
消費に使われるにしてもどういうふうな
消費に使われるかということを、
國民經濟全體の關連において分析していくことは、今後大いに考慮しなければならぬ點でありまして、
アメリカなどでも大いにや
つておられるのでありますが、
日本といたしましても今後大いにや
つていかなければならぬと思います。現在におきましては理論的な
財政と
國民經濟とのつながりということにつきましては、いろいろな外部的な條件が多いのであります。外部的な未決定な
部分——賠償の決定がどうなるか、あるいは國内の統制がまだほとんど存續しておる、為替レートもきま
つておらないということがありまして、未決定な
部分が非常に多い。また對外的に見ましても、いわるゆ貿易憲章というものをかりにおきまして、世界的にどういうふうなところまで
生産、貿易の均衡をも
つていこうとするか、そのわくが固まり切れないでおるという點もございます。しかし貿易につきましてはヨーロツパの場合もそうでありますが、
イギリスの輸出が非常に軟貨地域に偏してお
つて、貿易が偏
つておるということが言われておりますが、仔細にその内容を見てみますと、貿易というものはやはり自然條件に支配されておることが非常に強いのでありまして、その偏差と申しますか、その偏りはきわめてわずかなパーセンテージにすぎないのであります。わが國の貿易もただいまのところは講和
會議も開かれないし、また東亜諸國の對日感情的なものから見まして、やはり自然的條件というものが相當物をいう。すべての外的條件がおちついたところで、初めて
豫算と
財政と
經濟とのつながりというものの分析が、十分に行われると思うのでありますが、何とかそういうようなものにしたいと思
つております。はなはだ簡單でございますが、これで御
説明を終ります。