○
大野(勝)
政府委員 最近におきまする
各地からの
引揚状況を、とりまとめて御
報告申し上げます。
南の方から始めたいと思いますが、
南方地區におきましては、本年九月
末日現在におきまして、
概數一萬六千人ほどの
殘留員がお
つたのでございまするが、
英軍管轄地區につきましては、まずビルマから、九月十一日に宇品に著きましたドゼツトシヤーという
英船によりまして、
引揚げを完了いたしました。また
シンガポール方面に關しましては、未だ復員せざる方約八千名と計算されておりますが、そのうちの五千名は朝
嵐丸という船に乘りまして目下故國に向
つて航行中であります。なお殘餘の三千名につきましては、本月下旬、
シンガポールを出發する
豫定にな
つている
輝山丸という船によりまして、
日本に歸
つてくる
豫定にな
つております。このほかに
戰犯關係といたしまして、所在の
地區に
殘留せしめられておる者が、約四千五百あると計算されておるのでございます。しかしそのうち
南部佛印に關しましては、釋放された者が相當ございまして、その他の者と
合計いたしまして約百名ほどが
日本丸によ
つて近く
本邦に
歸還する
豫定に相な
つておる次第でございます。
南方に關しては概略以上の
通りであります。
中
國本土に關しましては九月
末日現在において、中
國本土に殘當しております
本邦人は、大體七千三百名と概算されております。そのうち最近の動きを申しますと、九月二日に上海から、
華中方面の
引揚者百七十七名
佐世保に上陸いたしました。また九月二十六日に
青島から、
青島、
濟南方面の
引揚者五十五名が神戸に上陸しております。本年にはいりまして、十月十三日塘沽から
華北方面の
引揚者が約千七百名
佐世保に上陸する
豫定に相な
つております、よ
つて九月末現在七千三百人の
殘留者と見込まれました者から大體千九百名ほどが減ずる
豫定に相な
つておりますので、ただいまのところ五千四百名ほどが中
國本土に
殘留しておる
日本人の數でございます。この中には
戰犯關係で止められておる者も相當ありますが、これらにつきましては目下詳細なる數を
調査中でございまして、別の
機會に御
報告申し上げ得ることと存じます。
滿洲からの
引揚げでございますが、大體九月末までにおきまして十三萬五千人ほどが
殘留していると思われるのでありますが、その中、
中共地區におります者がほとんど十二萬に達するのではなかろうかと考えられます。
從つて滿洲における國府
地區におります
人々は大
體一萬五千見當に減
つておる次第でございます。しかるに最近に至りまして、
滿洲からの
殘留者の
引揚げがさらに進捗を見ている次第でございます。すなわち目下本年にはいりまして第二囘目の
留用者の
解除が行われまして、その
引揚げが行われておるのであります。すなわち本月にはいりまして、四日
竝びに六日
合計六千八十五名が
留用を
解除されまして、
本邦に上陸いたしております。これらの
方々は
滿洲地區におきまして、その經濟の維持あるいは技術的な
方面に
留用者として從事してお
つた方々であります。なお今明日ぐらいと
思つておりますが、さらに千百八十八名が入港する
豫定と相な
つております。
從つて合計七千二百七十三名が
歸還すること
確實であります。このほかに
船舶三隻が目下のところ
葫蘆島に待機いたしておるのでございますが、
滿洲方面におきまするる國府軍と
中共軍との戰鬪の
熾烈化に關連いたしまして、はたして待機いたしておりまするこの三隻が
引續き
引揚げを實行し得るかどうかに關しましては、ただいまのところまだ見透しが
はつきりつかないというような
状況に相な
つておるのであります。以上をもちまして本年度の
滿洲からの
引揚げが終了するという
豫定にな
つておるような
状況でございます。數を申しましたのを要約して申しますと、
滿洲に關しましては關東州を除きまして、先ほど申しました十三萬五千が
留用者として
殘つてお
つたのでございますが、その中、
中共地區におるとおぼしき十二
萬名を除きまして、一萬五千が九月末における
殘留者、今次
留用者解除によ
つて歸朝してまいります者大
體一萬名と豫想されるのでございまして、先ほどの七千二百七十三名に、
葫蘆島におりまする三隻にうまくいきますれば三千人ぐらいは乘れるものと計算いたしておりますので、これで一
萬人ばかりが歸
つてこられると言われるので、
滿洲において
留用者として
殘つております者五千という數と相なる次第でございます。
ソ連地區からの
引揚状況を申し上げますと、九月末現在におきまして六十九萬四千八百名が
殘留してお
つた計算に相な
つておるのでございますが、そのうち、
シベリヤ地區におりました者が大約五十六
萬名、九月末までに
引揚げを了しました者約十四萬七百、それから千島に關しましては、七千八百名がただいまのところまだ
殘留いたしております。
引揚げを完了いたしました者が一萬三百七十六名、樺太に關しましては、
殘留いたしておりまする者十一萬六千名、
引揚げを完了いたしました者二十五萬二百七十という計數が出てまい
つてきております。今月にはいりましてからの
状況を申し上げますと、六日までにナホトカから
舞鶴へ六千二十二名、
眞岡から凾館へ、大體十月の十日ごろに船がはい
つてきておるはずでありますが、一千五百名ということに相な
つております。從いまして、これらの數を引きましたものが今日まだ
ソ連地區、
北方方面に
殘つている
邦人の數でございますが、その數は五十五萬二千五百名ぐらいではないか、かように考えられる次第でございます。
以上が
ソ連地區におけるごく最近までの
引揚の
状況でございますが、
ソ連地區に關連いたしまして、もう
一つ御
報告申し上げたいと存じますのは、過去九箇月間における
引揚の
實數でございます。すなわち本年一月
引揚實數七萬九千四百五十九、二月六萬二千五百八十四、三月九萬六千四百十九、以上が主として
大連方面からの
引揚げであります。四月にはいりまして五萬九千八百八十、五月にはいりまして五萬七千四百十二、六月にはいりまして四萬九千九百四十二、七月に四萬六千五百二十九、八月に三萬四百二十四というふうに、俄然數字が落ちております。九月に至りまして三萬六千百七十四名、四月ないし九月までは主として
北方からの
引揚げに該當するのでございます。以上
合計いたしますと、本年一月ないし九月の間におきまして、五十一萬八千八百二十三名という數に相な
つておりまして、一箇月の平均は五萬七千六百四十七名ということに相な
つております。御
承知のように、
ソ連地區からの
引揚げに關しましては
米ソ間に
一つの
協定がございまして、一箇月五
萬名を目途とした
引揚げを行う、
事情やむを得ない場合は別であるけれども、
状況が普通である場合は五
萬名ということに相な
つておるのでございますが、ただいま御
報告の申し上げましたことによりまして御
承知相なられますように、大體一月から五月までの間におきましては、五
萬名を相當上まわ
つておるのであります。殊に今年の三月のごときは、九萬六千という數に上
つておるのでございますが、六月から漸次遞減いたしまして、八月の三萬四百二十四とうので底を一應ついておるのでございます。この點に關しましては、
政府といたしまして多大の懸念をもちまし出、
ソ連方面からの
引揚數減少の
原因その他に關しまして目下鋭意
實情を
調査中でございます。本月にはいりましても、
連合軍總令部に對しまして、その
理由につきまして
照會を發しておりまするし、さらにこの
協定の數だけないしはそれを上まわる數を
引揚げさしていただきたい、それについて
總司令部の好意的なる御配慮を得たいということを懇請いたしておる次第でございます。
引揚數の實質的な
減少に關しましては、いろいろ
理由が考えられるのでございますが、
確實なことをまだここで申し上げ得ないのでありますが、
引揚者その他の
人々からの話を總合いたしますと、
現地におきまする
引揚港までの
交通機關その他が多少
圓滑に動いていないというようなこと等があげられております。
從つてこちらから
船舶を出しましても、それを十分滿たすだけの
引揚者の集結が、必ずしも的確に行われないというような
理由が主たるものであるように考えられるのであります。この點に關しましては、ただいま申しましたように、もつと權威のある直接の情報を得たいと思いまして、
政府といたしましてはせつかく
善處中であります。
以上をもちまして、
各地からの
引揚状況の御
報告を終りたいと存じます。