○原(彪)
委員 私は
松戸、
土浦間電化促進の
請願に關する
紹介議員としてその
趣旨を御
説明申し上げ、御贊同を賜わりたいと存じます。御
承知のように今日の國鐵の現状がまさに危機線上にあることは、先般發表されました國鐵實相報告書におきましてもすでに御
承知の
通りであります。いかにして今日の國鐵の危機を打開するかということにつきましては、先ごろの
委員會におきましても、一日も早く國鐵
再建の根幹ともなるべき方針を
委員會において御發表あらんことをお願い申し上げたのでありますが、いろいろ
豫算の
關係、あるいは人の
關係等がありまして、未だ確たる御發表がないのであります。これは私の卑見から申しますならば、國鐵の
再建ということは、現在のこの百二十三億の厖大なる赤字を克服することがまず先決問題でありまして、これをやるためには、いわゆる年度計畫によ
つて、この赤字を埋め合わせるということがまず根本の問題であろうと思うのであります。一方におきましては國鐵のあらゆる經費の節減をはかり、また經營の面におきましては、各
方面における經營の合理化ということがなされなければならぬと思うのであります。かかる意味におきましてまず取上げられる問題は、國鐵の最大消費物であるところの石炭の節約ということが、最も大事ではないかと思うのであります。この石炭の節約をするためにまず考えられる問題は電化の問題でございます。昨日の新聞紙上を見ますると、運輸大臣は
豫算委員會におきまして、國鐵
再建のためには九州、
北海道を除く全國の電化が必要であるというようなことを御答辯に相
なつたように拜見いたしておるのでありますが、まことに結構な御方針であると思うものでございます。何とぞ英斷をも
つて國鐵
再建の切替をなされるために、電化というものを大きくお取上げあらんことをお願いし、またこの
委員會におきましても、
委員諸君に電化問題につきましては十分なる御贊同を賜わりたいと存ずるのでございます。電化になりますればあらゆる
方面におきまして
——私から贅言を申し上げるまでもなく、石炭の節約、輸送力の増強、サービスの改善、勞働
條件の改善、能率の増進、あるいは失業の救濟等、國鐵
再建上幾多の利點をも
つておるものでございます。しかるに現状をも
つて見るならば、かかる利點があるにかかわらず、今なされつつある電化というものは、總走行キロ數におきまして約一割にしか當
つておりません。かかる現状におきまして電化が必至であるにかかわらず、
當局が現在のところ、何らこれに對して手を打
つてないことは、まことに遺憾であると思うものでございます。今囘
請願書にありまする
松戸・土浦間の電化計畫は、これを歴史的に申しますならば、十數年からたびたび陳情をも
つて運動を起してお
つたのでございます。私もまだ議席を占めない一
地方民としてありまするとき、
田中武雄運輸大臣、さらに平塚運輸大臣にもお目にかかりまして再三再四陳情をいたしてまいりましたし、この前の
議會におきましても、その前の
議會におきましても、貴衆兩院で
請願の採擇に
なつたにかかわらず、
請願採擇のみであ
つて、何ら手を打
つていただけなかつたというような現状でございます。この歴史を申しまするならば、
昭和八年に土浦までの電化の計畫がされまして、その次に内田信也が鐵相當時これが
豫算化され、當時の
豫算の
書類を私は探してみたのでありますが、不幸にして戰災にかか
つてその
豫算の具體的數字を知ることができないのは殘念でございまするけれ
ども、上野から我孫子までこれを著工するということにな
つたのであります。しかしてあらゆる
資材を整え、我孫子には變電所までつくり、準備萬端整え、ようやく
松戸までの電化が完成したときに、戰爭の勃發と相なりまして、あらゆる
資材が戰爭に集中しなければならぬときでありましたので、この電化もまた中止のやむなきに
至つたのございます。しかるに今や戰爭は終結を告げるに至りまして、平和と文化と
産業日本を
再建せねばならないときにあたりまして、實に本線の交通難というものは言語に絶しております。まさに全國一でありまして、關東におきまして、否全國におきまして、常盤線の交通地獄というものは一つの名前とな
つております。そればかりではなく、地元民には、むしろ
當局の善處が何らされないことに對して、怨嗟の聲が滿ちておる次第であります。わが國の主要都市がほとんど戰災によ
つて燒失し、特に東京の戰災は最も大きく、家を失つた都民は非戰災地へその居を求め、現在この沿線に東京から移住しておる者は數萬を超えるのでございます。しかして毎日混雜列車にゆられて通勤するのやむなきに
至つておる状況でございまして、それが官廳ばかりでなく、會社、あるいはまた學校にまで、通勤列車の混雜にゆられて通
つておるのでございます。またそればかりではなく、全國の各
地方から來る學生で東京の大學に通
つておる者が、東京に下宿先がないために、常磐線の沿線に下宿を求めて間借をして、そこから通
つておる者が數萬おるということが實際の
状態でございます。戰前においてすら郊外通勤のために、東京都を中心にして二十キロの電車化というものが計畫されて實施されたのでありますが、今日においては都會の人口が近郊に分散して殖えてまいりまして、この二十キロの通勤のわくがさらに擴大されなければならない
状態に相な
つておるのでございます。この列車の毎日の混雜さは文字
通り殺人的でありまして、これを死傷事故數において見まするのに、昨年の七月から本年の六月まで一箇年間に統計をと
つてみますと、常磐線は六十四件の死傷者、
東北本線は六十三件、高崎線は六十二件でございます。この列車の混雜というものは特に朝晩がひどいのでございますが、通路は言うに及ばず、便所、洗面所まで立錘の餘地なきありさまでありまして、はなはだしきに
至つては窓からぶら下
つて、まことに危險千萬でございます。かかる混雜列車に身を委ねまして、朝は未明に起き、夕は八時、九時ごろに歸宅しまして晩飯にありつくような始末でありまして、肉體的にも、精神的にも、非常に非能率的であります。これを實際の面において見まするならば、ほかの線と比較いたしてみましても、全國でかような混雜をしておるところは
——私自身東海道線にも、あるいは高崎線にも乘
つてみましたが、かような混雜の列車というものはございません。むしろほかの線に乘
つて、非常にすいておるのを見て驚くようなわけであります。東海道線などは、熱海からの通勤列車にも試乘いたしてみましたけれ
ども、もう出發間ぎわに行きましても席がとれるような始末であります。從來
當局のやり方というものは南進政策であ
つて、東京から南というと
——もつとも五大都市というのがあるせいかもしれませんが、南というと何でもよき待遇を與え、東京から北というと
——もつとも氣候が寒いせいもあ
つて文化的に發展しない
關係があるかもしれませんが、非常に冷遇しておるのでございます。それは上野から北をごらんになればおわかりだと思いますが、今や敗戰になりまして南進政策というものがないのでございますから、しかも豐饒の土地東北竝びに
北海道を控えておりまして、ぜひともこれは、そんな從來の南方政策をこの際改めていただかなければならぬと痛切に感ずるものであります。
東京を中心とする現在の電化の線の
距離を計算いたしますると、東海道
方面は
沼津まで百二十三・五キロ、
中央線は甲府まで百三十キロ、總武線は千葉まで三十九キロ、大宮まで二十七キロ
——これらの平均をとりますると、平均七十七キロになります。しかるに常磐線は
松戸まで二十一キロしか電化されていない。その虐待ぶりが數字上でおわかりであると思うのであります。
常磐絲の輸送の現状をさらに詳しく申し上げますると、まずほかの線との比較になりまするが、これを通過人員で比較いたしてみますと、本年七月十八日の調べでございますが、
松戸、我孫子間は通過人員六萬三千百五十九人、乘る率は二二〇%でありまして、それが全國第一位にな
つております。その次は大宮、熊谷間であります。通過人員五萬六千五人、乘る率が二一六%で、全國第二位であります。第三位は横濱、大船間でございます。數字上から見ましても、實際上からいたしましても、全國一の混雜地區であるということはおわかりに相なると思うのであります。さらにまたこれを土浦の一日平均を見ますと、
通勤者だけでも
——パスをも
つて東京に通勤する者は土浦驛一つだけでも、正確な數字でありますが、一日に九千九十人であります。普通の乘客を入れれば上りが一萬二千九百人、下りが一萬二千五百人、一驛だけでかようでございます。この沿線から通
つておる者は
通勤者だけでも一日五萬は下るまいという數字が出てまいるわけであります。現在、先ほ
ども申しましたような安孫子の變電所の建物もできておりまするし、殘るは
松戸から土浦までの電化でございまして、ぜひともこれを御取上げ願
つて委員諸君の方々の御贊同を特に賜わりたいと思うものでございます。本年も參議院の
請願は無事採擇をされました。どうかこの
委員會におきましても採擇されるばかりじやなく、ぜひ實行していただきたい。私も東京に居はあるのであります、この
議會に通うにつきましては、毎日
通勤者の身をみずから體驗して、二時間ゆられて通勤しておるような次第でございます。これは私の代議士生活における一つの
地方的問題ばかりでなく、公平に見ましても、かかる虐待ぶりというものは、文化
國家として立ち上ろうとする日本において、まことにはなはだえこひいきな、非文化的なことだと思いますので、ぜひ皆様の御贊同を願いまして、御採擇賜わらんことを切にお願い申し上げまして、私の
趣旨辯明を終る次第であります。