○荒川
説明員
中央氣象臺は運輸省に属しておりますが、
中央氣象臺の事業のあらまし及び豫算その他を御
説明するために、お手もとに差上げましたようなプリントをつく
つてまいりました。この順序で簡單に御
説明いたしたいと思います。
第一番目の事業
運營の方針というのは、ずつとお話しいたしましてから、最後にまとめてお話しいたしたいと思います。
二番目の氣象業務の
運營に關する問題でありますが、終戰になりましてから、氣象臺は
連合軍から、特別支障のない限りは今まで通り事業を續けていけという指令を受けました。
その次に、三番目に氣象官署の組織につきましてここに官制の一覧表をつく
つてまいりました。大體どれくらいの大きさをも
つておるかと言いますと、一級の技官、もとの勅任官級の者が六人ございます。大體本官の者、もとの判任官以上の者が二千名近くございます。技術員、雇員までを入れますと、大體
日本全國で六千名からの技術者がおるわけであります。從
つてそれだけの大世蔕を抱えておりますから、今お話がありましたような職員
組合も、全官公の職員
組合の一
部分として全國氣象職員
組合というようなものができております。プリントの中にどんなふうな系統にな
つてこの氣象官署ができておるかという一覧表がつけてございますが、全國の氣象事業を統覽いたしまするところは
中央氣象臺でございます。その氣象臺の直轄の東京の部門に總務、豫報、觀測、調査及び氣象研究所という五つの部門がございます。そのほかに氣象技術者を
養成する特別の
學校として
中央氣象臺附属氣象技術官
養成所というのが柏にございます。これだけが
中央の部門でありますが、その下に各管區の氣象臺という中間的
存在がございます。これは大阪を初めとしまして全國九つの部門に管區氣象臺というものがありまして、たとえば大阪でありますと、近畿
地方における測候所を大阪の管區氣象臺が
監督、統轄しているわけでございます。そのほかに全國に四つの海洋氣象臺がございます。また特別なものとしましては高層氣象臺あるいは地磁氣觀測所というようなものがございます。その次の第四番目に各測候所のある位置が全部一覽をして書いてあります。北海道の札幌管區にはこれだけのものがある、仙臺の東北管區にはこれだけのものがあるということが書いてございます。
それから第五番目の項目に要員職員というのを書いてあります。これは先ほど御
説明いたしましたように、六千七百名の氣象技術員が全國にございまして、この内譯をここに書いてあるわけであります。そのための
給與の實體はどのくらいであるかというと、本官の者は平均の俸給が大體六百五十八圓、そのほかにもちろん家族手當やいろいろな増給があります。それから嘱託以下の平均俸給は三百八十三圓、これだけでありますが、これは全官廳の平均に比べましていくらか
待遇はよろしいのであります。
その次に最近一年間くらいの間に職員がどういうふうに動いたか、やめる人がどのくらいで、新規採用はどのくらいあるかということが書いてございます。
その次に
幹部の職員の官職、氏名、學歴及び學位の調べが一覽表としてここに載
つてございます。それぞれ
中央氣象及び各管區氣象臺においては、技術官廳でございますから、相當な技術的あるいは學問的な
教養をもち、あるいは研究を續けている人がたくさんいるわけでございます。
その次に氣象技術者の
養成をするために特別の氣象の
學校をつく
つております。それを
中央氣象臺附屬氣象技術官
養成所と言
つておりますが、そこでは氣象技術者となるためのいろいろな學門的
教養を三年間だけ授業を行
つております。今そこに在籍しております定員は六百五十名でございます。この六百五十名というのは人數は非常に多いように思われますが、二年及び三年は、戰時中氣象技術者が非常に
要望されたものですから、大擴張をしたときのなごりでございまして、本年以降は常態に復しまして、二、三十名ないし五十名くらいの定員にすることにな
つております。
次に第六の項目の豫算でございます。豫算がどのようにな
つておるかということを、ここに實態が書いてございますが、豫算の内容は一億三千七百万圓ほどでございまして、かなりな額でございます。それでも私たちといたしますと、いろいろな、こうしていただきたいというようなことがございますが、それはまた追
つてあとでお話したいと思います。
それから第七項目でいろいろな業務をや
つておる内容をここに書いてございますが、これはこの通りや
つていては非常にめんどうでありますから、ざつと御
説明いたしたいと思います。氣象事業——すなわち天氣豫報その他のことをやりますには、第一番目にその基礎となる事實を、材料を集めなければなりません。全國に測候所を置きまして、そこで觀測をやります。その觀測は地上においていろいろの觀測をいたしますと同時に、空高い所、空高く一萬メートル、一萬五千メートルくらいまでの雲のようす、温度のようす、濕度のようす、いろいろな資料を觀測して求めます。それからまたそういう資料の
一つとしまして、氣象臺におきましては相當の大きな地震に關する業務がありますが、この地震觀測もこれは二六時中、一年中、夜間も休みなく續けておるわけであります。この氣象觀測は二十四時間觀測といいまして、午前零時、午前一時、午前二時、午前三時というように、きま
つた時刻に二十四囘、二六時中觀測を徹夜で續けます。これはなかなか骨の折れる仕事でございます。しかし若い氣象技術者は全部學問のため、あるいは技術のため、あるいはこの事業のため、國のためと思
つて努めておる次第でございます。
地震の話が出ましたが、最近地震の豫知ができないかということが大きな問題にな
つております。おそらく今度の來るべき
議會におきまして、地震豫知のために約四、五百萬圓の追加豫算が計上されてくると仄聞しておりまするが、要すれば民生安定のために地震豫知の何かの手がかりができまいかというので、今盛んに學問的な探求を續けておるところでございます。それにつきましても一氣象臺だけの獨善的な立場に終
つてもいけないと思いまして、その方の研究者、地震研究所、あるいは地理調査所、水路部、あるいは全國の大學、そういうものと協同いたしまして、連絡
委員會をつくりまして、全國の衆知を結集いたしまして、地震の豫知ということをぜひとも
解決してみたいという心組でおります。せんだ
つて、實は
アメリカのカリフオルニアから地震の學者が參りまして——グーデンベルグ氏、これはもとドイツにおりました學者でありますが、その學者が參りましたときに、地震の豫知ということは、今の學問からはまだ遠い、非常にむずかしい問題である。しかし地震學においては
日本は
世界一流の、あるいは
世界の第一線に立
つており、そしてほかの文明國では地震のための被害というものはあまりないのですが、
日本は非常に被害が大きいのでありますから、切實な問題として取上げるならば、
日本で
解決できるじやないかというようなこと、あるいはもつと強力に研究するのには、やはり衆知を集めるのもよかろうというようなアドバイスをして行
つた次第であります。もちろんこれは各國に特徴がございまして、地震學はどこが進んでおるかと言われても困るのですが、破壞的な地震に對すること、あるいは地震のなまの材料を扱うというような面におきましては、
日本は材料に非常に富んでおるのでありまして、
世界の第一線にあると思いますから、
アメリカあたりからそれほど指示を仰がなくてもや
つていけると思
つておる次第であります。
それから山岳氣象觀測はどんなふうにや
つておるか、これはたとえば富士山の山の上、あるいは阿寒、羊蹄、佐幌等、全國約二十三箇所に山岳の氣象觀測所がございます。たとえば富士山の山の上で夏の間だけ觀測するならば何でもないのですが、富士山の山の上でも眞冬も欠測なく、ずつと觀測を續けていくのでありますから、その點非常に難儀がございます。富士山では冬の間には最低の温度は零下約四十度に達する、最大風速度、秒速七十メートルに及ぶ、飛行機の早さみたようになります。そのくらいのことになるのでありますから、非常に難儀でございます。そこに行きます觀測者は崇高な犠牲的精神、學門に對する情熱をも
つておる次第でございます。ときどき遭難のために犠牲者も若干出るような始末でございます。
それからそのほかに觀測といたしまして、海の觀測がございます。これは海岸での觀測のほかに、實際に船に乗
つてその中で觀測をするわけでありまして、今まで氣象臺では千百八十何トンという凌風丸を初めとして、夕帆丸、朝潮丸というような觀測船を持
つております。そういう觀測船をも
つて海洋氣象の觀測をして、それをたとえば東北の凶冷とか、あるいは
海上氣象の速報とか、いろいろなものに使
つておる次第でございます。それからこういうような觀測をいたしますと、その觀測した事實を集めまして、時を移さず、たとえば
中央氣象臺なり、あるいは大阪の氣象臺なり、そういふ所に速報いたします。これは思いのほか早いのでありまして、その速度の早さが嚴重に
規定されています。たとえば午前六時に觀測して得たものを六時十五分までには東京の
中央氣象臺に、
日本全國の百五十箇所の氣象臺から知らせる。五十分以内にはいらなか
つたら處罰——處罰というほどではありませんが相當きついのであります。そのためにおよそおもな測候所あるいは觀測所に對しましては、
中央氣象臺から直通の電報線が引いてあるわけであります。それでこれが非常に通數が多いのでございまして、一日四囘の天氣圖あるいは天氣豫報を出そうと思うには、とにかく測候所から四囘だけは必ずその電報をよこさなければならぬ。そのほかいろいろな觀測資料を集めるために、實は専用機の往復が非常に輻輳している次第であります。こういう觀測が十分あるいは十五分以内に氣象臺に集まりますると、すぐにそれを天氣圖というものに書きこみます。そのために全國の天氣の状態が手にとるようにわかることになる。現在の状態がわかる。あるいは今までそういうふうに資料を集めてきているのですから、過去から現在までの天氣の状態がわかる。現在の天氣の状態が手にとるごとくわか
つており、それから以前からの天氣の推移がずつとわか
つておるのでありますが、その過去から現在にわたる天氣の推移を見まして、要すればこれから先どんなふうに天氣が變るかということを天氣豫報として出す次第であります。その天氣豫報も、ただきようは晴、きようは雨というばかりでなく、最近では長期豫報、ここ一週間ぐらいの天氣豫報をする、大體の天氣の推移がこう、あるいはここ一箇月、あるいはこの夏の天氣はどうというような長期の豫想をいたしまして、
産業のために、あるいはそのほかの民生のために參考としておる次第であります。ただこの長期豫報となりまして、これから先三箇月間の
見込みというような長いことになりますと、どうしても豫報に對する信頼度が薄くなり、それほど信頼できなくなりますので、この點は何とかしてもつと信頼のできの天氣豫報を出したいものというために、いろいろ研究を重ねておる次第でございます。この長期豫報という問題は、現在においても——戰時中は特にそうでございましたが、今
世界各文明國における重大な問題にな
つております。平和時でございますれれば、農業に對する協力、その他いろいろなことに對して長期豫報ということは非常に望まれております。そのために各國では爭
つてこの長期豫報の研究をしている次第でありますが、未だこうすれば確かによろしいという確信のある理論はできておりません。しかしその信頼度はだんだんと高ま
つている次第でございます。
そのほかに火災豫報を出しております。濕度が乾いていて風が強いというようなときには、火災の危險があるというので火災の警報を出す。實はこの火災警報というものは
日本全國でや
つているのでありますが、われわれの手落ちもありましたが、豫算は一文も國からはもら
つていない次第であります。それから漁業氣象をや
つております。
海上の保安のために漁業氣象通報をや
つておりますが、これは漁夫のためには非常に參考にな
つております。そのほか水産氣象報というものも最近ラジオで發表するようになりました。それから電力氣象通報と申しまして、夏、雷が多くなりますと、雷のために高壓線がやられますので、その高壓線を守る目的のために、電力會社に對するサービスとしてこの電力氣象通報をや
つております。それから雷雨豫報というようなものもや
つております。これは電力氣象通報と離れられないものでありますが、そういうものもございます。それから鐵道氣象通報をや
つております。これは大雨があるというようなときに線路沿いの山崩れがあるというようなことの警報を出すのであります。これで天氣豫報の部門を終ります。
第三に測器でございます。氣象を觀測いたしますのにはいろいろの測器が要るわけでございます。そのために昔からいろいろの器械がありますが、最近におきましてはなるべく高度の器械を使
つて、氣象觀測をや
つてゆこうという方向にむいております。
それから第四に調査研究でございますが、先ほど申しましたように、氣象臺は二六時中夜も寝ずに觀測をするということ、あるいは夜も寝ずに天氣豫報を出しているということにおきましては、一種の現業官廳でございます。しかしながらまだまだ天氣豫報の精度を増す。あるいはその精度を推し進めることにつきましては、非常に學問的の面が多いのでございます。しかも前に申しましたように長期豫報がまだうまいぐあいに行
つていない。地震の豫知もまだうまくできていない。そういう長期豫報を可能にするようなこと、あるいは地震の豫知を可能にするためには、どうしても研究をもつと進める必要がある。そういう意味でわれわれは非常に重い部門としてこの研究をも
つている次第であります。それで最近におきましては、
中央氣象臺の中に氣象研究所という一部門を設けまして、これは豫算で二百三十萬圓ほどいただいております。これは今年にな
つてやつと二百三十萬圓いただいたのでありまして、今までは三十萬圓の經費しかございません。今年二百三十萬圓もら
つたのも、實は二百萬圓はおもに、營繕費でございます。あとの研究費は三十萬圓という實に寥々たるものでございます。この點われわれの努力が足りなか
つたこととは申せ、非常に殘念と思
つている次第であります。その研究にはどういうものをや
つているかということをここにざつと書いてありますが、そのほかに六千人からの人が思い思いに、自分の趣味の上から、役所の時間外に研究をしているものが少くない
状況でございます。それから
終戰後できました
一つの部門としまして、
産業氣象の研究がございます。いわば北海道の美瑛というような寒い所において、何か農業を
改善するための研究をや
つている。北海道のような寒い所で農業はどういうふうに進めたらいいかという
産業氣象の研究、あるいは長野縣の霧ケ峰というふうな高冷地において、農業はどういうふうにやればいいかというような、各地の特性に應じました、
一般の人が手をつけないようなところの
産業氣象の研究を進めております。
それから、その次に氣象臺でいろいろな研究をしました結果を發表する報告類の一覽をそこに掲げておきました。あるいは、その次に氣象臺のなしたおもな研究の、いろいろな題目の一覽表を掲げております。この一覽表をごらんにな
つてもわかりますように、單に
中央氣象臺の中だけでございましても、帝國學士院賞をもら
つている人が今五人ほどございます。博士の稱號をも
つている人が三十人くらいいるでしよう。そういうわけでございます。そのほか、特殊の
施設といたしましては、高層氣象臺とか、あるいは海洋氣象臺とか、地磁氣の觀測所とか、あるいは
世界各地の無線を受けるための大和田の出張所、いろいろなものがございます。
ここで海洋氣象でございますが、二十五、六年前から神戸に海洋氣象臺というものができております。その後、海洋氣象の研究が非常に重要であるというので、政府にその方の研究をもつと進めたいとい
つて申出ておりましたけれども、最近になりまして凾館と長崎と舞鶴に海洋氣象臺ができることになりまして、全國で都合四箇所の海洋氣象臺ができることになりました。長崎及び舞鶴の海洋氣象臺は約百萬圓の經費をいただきまして、本年
設立するようになりました。百萬圓と申しましてもこれは非常に少い額でありまして、長崎あたりでは雨漏りの修繕ができないというような悲惨な状態にある次第でございます。そうして海洋氣象臺という名も
つておりますがかんじんの手足になる觀測船がない状態であります。やはり豫算の少いと申すことのつででございますが、
産業氣象研究所は全國で約九箇所でございますが、それに
議會の協賛を經ていただいたお金が約五十萬圓なのであります。それで非常に
運營に困難しておる次第でございます。
その次に離島觀測の
施設、先ほど申した通り、
中央氣象臺におきましては離島に觀測所をも
つております。たとえば南西諸島の屋久島、奄美大島の名瀬、南大東島、宮古島、石垣島等に
日本の測候所があるわけであります。そういう所の觀測はほかの國にはあまり大したこととありませんが、
日本としては死活問題でございます。これから夏、秋にな
つて日本に押し寄せてくる臺風、あらしは、琉球列島あるいは南洋諸島
方面から參るのでありまして、向うに
日本の測候所をも
つておるということは非常に強みでございますので、
一般大衆にと
つても死活の問題でございます。そのほか豆南諸島におきまして、大島あるいは新島、三宅島、八丈島というような測候所をも
つておる現在
日本の南の突端はどこかと申しますと、無人島の島島ですが、そこに測候所を經營したい、現在そこに行
つて觀測しておりますが、この冬この島島で十人足らずの人間で越年しようかどうかということが今われわれ
幹部の間で問題にな
つておる次第であります。お醫者さんもいないので困難しております。
それからこの一番おしまいの繪のあるところを開いていただきまして、圖表の第一番目をちよいとごらん願います。これは
中央氣象臺に向
つて、たとえば十分以内、遲くとも十五分以内には
日本全國の百五十箇所の觀測所から資料を送りこむ、その送りこむ仕組が書いてあるわけであります。逆に
中央氣象臺でそういう資料を集めましたらば、それを時を移さず今度は反對に未端に知らせてやる仕組も書いてございます。このほか知らせてやる
方面にはラジオもあり、あるいは氣象無線もあり、いろいろなことをして全國の
一般民衆に向
つて、時を移さずまとめた結果は知らせておる次第でございます。この第二番目の圖表をごらんにな
つていただきたいと思います。この第二番目の圖表におきまして點のあります所は、今現に
中央氣象臺で受信しておる無線局でございます。氣象というものは非常に國際的なものでございまして、
日本の國の材料だけを集めたのでは、天氣豫報ができないのです。
日本の國の材料だけではせいぜい半日か一日先くらいの天氣豫報しかできません。それで
世界全國、少くとも北半球全體くらいの氣象の現在の
状況を知りたい。そのためにたとえばロシヤの分ならばモスコー、あるいは
アメリカの分ならばワシントンというような、各地におけるその氣象の放送を受信する地點を示してあるのです。
日本では先ほど申しましたように、百五十箇所以上の觀測をしたものを
中央氣象臺で集めて、その集めたものをラジオで
日本全國に知らせると同時に、
中央氣象臺からは
一般の無線通報として
世界各國に放送しておるのです。國際的な事業であります。すなわち
日本の材料を、
アメリカでも、ロシヤでも、ドイツでも、イギリスでも使えるように、
中央氣象臺から無線通報を毎日三囘ないし四囘出しておる。そういうように
日本で出しておりますが、支那でも、ロシヤでもや
つておる。濠州でもや
つておる。
アメリカでもや
つておる。そういう放送をや
つておるのを
日本で聽くわけです。そうしてワシントンの放送したものを聽けば
アメリカのもの全體がわかる。あるいはモスコーの分をとるとシベリア、ロシヤの
方面の全體がわかるというわけで、少くとも一日一囘は北半球全體にわたる天氣
状況を一目にわかるような圖をつく
つておる次第でございます。新聞なんかでは
世界の情報が字にな
つて現われてきますけれども、おそらくそれと劣らぬ早さで
世界の天氣
状況は毎日々々この
中央氣象臺でわか
つておるわけであります。それをまたもとにいたしまして、あす、あさ
つてやなあさ
つてというような天氣を
判斷しておる次第でございます。その次にたくさんの圖は、
中央氣象臺と
地方の測候所とがどういうふうに有線電報のつながりをも
つているか、專用線がどういうふうにひつぱ
つてあるかということを圖示したものでございます。
これで大體のお話をしたわけでございますが、どこの官廳でもそうでありましようが、現在は測候所の經營は非常に困難な状態にな
つておるのです。私らは運輸省
所管でありまして、
議會の協賛を經ました一億三千萬圓の豫算で、これだけの全國二百箇所の測候所を賄
つていくわけでありますが、
議會の協賛を經ました豫算の配當を各測候所の全國の末端まで公に示しまして、これだけしか豫算がないということをみんなに示し、そうして耐乏の生活を送
つておるわけでありますけれども、測候所の維持というものは相當に困難にな
つております。たとえば電報を出すのにも電報料がないというような始末にな
つておりまして、かなり困難なことにな
つております。
それから
組合でございます。先ほどから
組合の話がたくさん出ましたが、われわれのところは六千何百人かの氣象職員をも
つております。この氣象職員がやはり
組合をつくりまして、官廳の民主化ということをスローガンに取上げて問題にしておるわけであります。私二、三日前に電車の中で
組合の
幹部職員と會
つて話をしましたが、その
組合の
委員長が言うことには、この氣象職員の
組合は六千人おるのでありますから、鐵道や逓信と比ぶれば問題にならないほど少いのでありますが、全官公廳の中では六千人というのは非常に多いそうで、二番目とか言
つております。非常に職員數は多い。しかしながらその純粹さにおいてはどこの職員
組合に對しても後れはとらないのであろうということを言
つておられます。その點また考えの置きどころによ
つて異なるところでありましようが、とにかく職員
組合の多くの
組合員が純粹さにおいてはひけをとらないということは、どこから出てきているかというと、やはり氣象
關係の職員に
なつた者は、およそ好きではい
つて來た者が多いからではないかと思います。氣象をや
つてみたいというよう
なつもりではい
つてきた者が多い。あるいはそうでなくてはい
つてきた人でも、まわりの雰囲気に壓されてそういう氣持にな
つてしまうという點で、
一つの雪圍氣をつく
つておるのでないかと思
つておる次第でございます。
それでは最後に、本年はどういうつもりでや
つておるかということを初めの一枚に書いてありますが、本年度氣象事業
運營の方針をここに書いてあります。これは氣象
關係のおもな者が全部集まりまして決めた方針でございます。
第一番目には申すまでもないことでありますが、民生に對する寄與を第一番目にしよう。すなわち食糧増産への協力
産業の開發というようなことを第一番目にしよう、そのためには天氣豫報をもつと信頼度の高いものに、あるいは精度の高いものにし、長期豫報をもつと進め、それから農業氣象あるいは漁業氣象などを、なるべく多くの人に利用してもらうように普及したいという考えでおります。それから第二に北海道のような寒い所、あるいは長野縣のような高冷地、あるいは北陸のような積雪
地方、あるいは乾燥地蔕、そういう所で何か農業と氣象との
關係を研究をして、その成果に基いて農事指導ができないものであろうかというような研究をやりたい。それから第三番目に海洋氣象臺の整備擴充をはか
つて、そうしていろいろな海象、氣象、海況及びいろいろな生物の總合的は研究をや
つて、漁獲を増産し、漁撈能率を向上し、あるいは未利用水産物のいろいろな利用をしてみたい。あるいは製鹽法の改良——鹽は天日に乾かしてつくるものもあるので、相當氣象的な影響もあります。そういうようなものにも何とか協力したいものであるというように考えております。
第二番目には交通の保安をやりたい。あるいは内外
船舶に對する氣象放送によ
つて交通の保全をする。
漁船に對してラジオ、電信その他の方法で氣象通報をやる。鐵道に對する氣象通報を擴充する。
第三番目に災害の防止をする。災害の防止をもつと強力にする。その
一つとして農作物に對する冷害
對策北海道あるは東北
地方の冷害が恐ろしいのですが、その
對策、これは氣象災害でございます。それから天氣豫報の精度を向上して、あらしとか大雪とか、崩雪とか落雷とか凍上とかそういうようなものに被害の輕減あるいは防止をしたい。あるいは本年から急に始ま
つたのでありますが、火災警報を出して火災の被害の輕減を期したい。これは先ほど申したように豫算にはないのでありますが、全國で實施しております。
四番目に地震豫知の研究を強力に進める。それは全國の知識者を動員してその
解決に當りたい。かなりな
程度に地震を豫知できそうであるというような端緒が今いくつかまとま
つておるのです。架空のものではございません。地面の中にはごく微弱ながら電流が通
つておる。これをはかる。あるいは磁力の變化をはかる。あるいは土地の中の地震の波の傳播する速度の變化をはかる。いろいろいたしますとある
程度できるのではないかというようなきつかけがある。それを何とかして近い將來で
解決したいものだ。この豫算が四百五十萬圓ほど今度の
議會に上程されると聞いております。第五番目に津浪豫報を早く傳達をして、被害を輕減したいものであると考えております。
以上述べましたのは事業面のことでありますけれども、そのほかに地球物理學的な研究をする。そうして研究の結果を今言
つたように事業の
方面に應用して民生に寄與したいというので、研究を強力に進めよう。そのためには今まで申し上げましたように、研究費としましては
中央氣象臺及び全國の氣象
關係の三十萬圓の豫算があるのでありますが、その三十萬圓ではとうていできないのでありますから、各所から捻出いたしまして研究費にまわしておる次第であります。そうしてその研究費をも
つて氣象研究所の整備擴充をはかる。氣象研究をより強力にしてもらう、と同時に現場の職員に、現場に六千人からの技術者があるのでありますが、その一人々々に、業務の餘暇に研究をしてもら
つて相當な研究成果をあげてもらうように話してございます。この現場におる現業員の研究というものもかなりばかにならないものでありまして、相當な成績をあげておる現に研究所というようなものができましたのはここ一、二年のことでございまして、その前までは全部われわれが氣象の觀測をやり、あるいは天氣豫報をやりながら、その片手間で研究しておるという次第でありまして、研究の好きな人間が、現場にいながら現場の材料を使
つて研究をする、それがまたばかにならない大きな成果をあげるということもお話をしておきたいと思うのであります。
最後に、
中央氣象臺長がここへ參るはずでございましたが、
中央氣象臺長はただいま九州
地方に、先ほど申しました長崎の海洋氣象臺というようなものができまして、そこの開所式に參列かたがた九州
地方に査察にまわ
つておりますので、留守ですから、私が參
つて御
説明したような次第でございます。それから繰り返し申しますが、研究は今はなはだ微弱な組織でございますけれども、研究という
方面も十分にできるように、われわれ氣象臺の職員といたしまして皆様に御後援をいただきたいと思
つております。