○世耕弘成君 自由民主党の世耕弘成です。
私は、自由民主党・
国民の声を代表して、
岸田総理大臣の
所信表明演説について質問いたします。
まず冒頭、
新型コロナウイルス感染症でお亡くなりになられた
方々、そして御
家族の
皆様に心よりお悔やみを申し上げるとともに、現在も闘病中の
皆様には心からのお見舞いを申し上げます。
医療、保健、
介護の現場を支えてくださっている
皆様、そしてエッセンシャルワーカーの
皆様の御尽力で
コロナ禍においても我々の日常
生活は維持されています。心から感謝を申し上げます。
八番、セカンド、
岸田君。
岸田総理は、高校時代、野球に明け暮れる少年だったと元同級生でチームメートだったある経営者の方から伺いました。八番、セカンド。三番でも四番でも、ピッチャーでもサードでもなく、目立たないけれども誰かが担わなくてはならないチームワークの要。
岸田少年は黙々と練習を重ね、チームに貢献していたといいます。
そして、この話には続きがあります。練習後、
岸田少年は最後まで残って、真っ暗になるまでトンボという道具でグラウンド整備に汗を流していたそうです。目立たないポジションや仕事を引き受け、みんなが頑張ることができる環境を下支えする。
所信表明演説で述べられた、仲間とならもっと遠くへ、はるか遠くへという
岸田総理の精神は、高校時代から育まれていたのだと感じています。
自民党の
総裁選では、人材の宝庫たる
自民党らしく、
多様性に富んだ
候補者が、内政から
外交まで白熱した
議論を展開いたしました。
国民の
皆さんに自らの信じる
政策をお示しし、支持を訴えていく。
総裁選の中の切磋琢磨を通じて
候補者自身もリーダーとして更に
成長していく。
自民党の
政治家と
政策はこうやって磨かれていくということを
国民の
皆様に堂々とお見せすることができました。開かれた民主的な政党であることを世の中に強く示すことができました。
さて、本日は、
総裁選や
所信表明で明らかになった
岸田総理の
政治姿勢や
政策について、踏み込んで具体的に伺っていきたいと思います。
総裁選の中で
岸田総理は、聞く力を御自身の長所として挙げてこられました。
所信表明演説も真摯に耳を傾ける姿勢に満ちています。
今から二年前、参議院
自民党では不安に寄り添う
政治のあり方勉強会を立ち上げ、計三十五回、有識者や現場の
方々から医師不足等人々が感じている不安の声を聞いてまいりました。この勉強会は単なる
政策勉強ではなく、我々の
政治姿勢を、一方的に
政策を訴える姿勢から、まずは困っている人の声を聞かせていただく姿勢に変革する
政治運動でもあります。まさに、聞く力を強調される
岸田総理の
政治姿勢と軌を一にするものであります。
しかし、
総理大臣として広範にわたる
国民の声をしっかりと聞くことはなかなか困難です。
総理がノートを
付けたり、全閣僚がどれだけ車座
集会を行っても、あるいはアンケートやメールでの意見収集にも限界があります。
一方で、現在はSNS上で膨大な量の
国民の生の声がやり取りされています。そこで提案ですが、SNS上の
国民の声をビッグデータとして収集、解析し、
総理に届く仕組みをつくってはどうでしょうか。そのためには一定の予算と人材の投入が不可欠ですが、聞く力を強調される
岸田内閣だからこそ実行すべきと
考えますが、いかがでしょうか。
さて、言わずもがなではありますが、新型
コロナ対応が、
政府に対して
国民が期待する最優先事項であります。
十月一日から緊急
事態宣言とまん延防止等重点措置が全面解除されたことは、まさに菅前
総理が陣頭指揮を執られた
ワクチン接種推進のたまものと言えます。一日当たり接種回数が百五十万件を超える日もあり、全
国民の二回目接種率は六割をはるかに超えました。もはや
世界でトップクラスの接種率であります。
その効果もあって新規感染者数が下火になる中ではありますが、またいつ次の波が来ても不思議ではありません。
ワクチン接種による効果や発症後の有効な
治療法が登場し始めている
現状を
考えると、次の波の際には、感染者を早期に入院させ、適切な
治療を行い、重症化させないことが
国民の安心という観点から最も重要ではないでしょうか。
和歌山県では、無症状者も含む全ての感染者を入院させるという他に例のない
対応を取ってきた結果、大都市大阪の隣県という位置にありながら、感染者数を比較的低く抑え、今日まで宣言や重点措置の
対象とはなっていません。
感染者への
治療を効率的に行うためには、訪問診療では限界があります。医療従事者の数に限りのある中、中等症以下の患者を大
規模なスペースに集約し、効率的に
治療することが重要です。大阪府では、大
規模イベント会場を活用して中等症以下の患者用の
病床の
確保を進めています。このような
対応を
全国的に行うべきではないでしょうか。
総理は
所信表明で、医療資源
確保のための法
改正に
言及をされていますが、次の波は法
改正を待ってくれるとは限りません。法
改正はいずれ行うとして、まずは、
総理がリーダーシップを取って知事、医療関係者等と連携して、今直ちに
全国で中等症以下の
治療施設を拡充すべきと
考えますが、いかがでしょうか。
こういった
対策で、
国民の命を守り、安心感を与えた上で、経済活動の再開も進めていかなければなりません。
世界的に感染者数が減少に転じる中、各国では経済活動の再開が急ピッチで進んでいます。ヨーロッパや米国では国際空港の出発便数が六割にまで回復しています。グローバル経済は確実に再起動を始めています。
そういう動きに
日本が乗り遅れるわけにはいきません。
ワクチンパスポートは、厳しさを増すグローバル化した経済競争を勝ち抜くために、戦略的に導入すべき手段であります。
ワクチン接種済みの
日本の企業人が米国に出張した場合に、米国では隔離期間がないのに、帰国した際には十日の隔離が求められる、これでは
ワクチンの接種効果を十分に経済活動に生かしていないことになります。
参議院
自民党は、プロジェクトチームを立ち上げ、接種済証だけではなくマイナンバーカードを活用したスマホアプリによる
ワクチンパスポートの発行や、入国後の隔離期間の大胆な短縮等の申入れを
政府に行っています。
ワクチン接種が進んでいるにもかかわらずゼロ
コロナの
状態になるまで経済の動きを再開しないというのであれば、経済が死んでしまいます。他国に遅れることなく経済
社会活動を回復させるために、
岸田総理は、
ワクチンパスポートの一日も早い実装と入国後の隔離期間の免除について、どのようなロードマップを持って進めていく
おつもりでしょうか。
痛手を負った飲食や
観光業といった対面型サービス産業の営業正常化も積極的に進めていかなければなりません。接種証明又は検査での陰性証明を活用して営業制限をできるだけ緩和していく。現在実証実験が行われつつありますが、実験結果を悠長に待ってはおれません。次の波が来たときには接種証明等をフル活用してできる限り通常の営業を行っていただけるように準備を進めることが重要です。接種証明等を活用した営業制限緩和について、具体的にどのようなスケジュールで進めていかれるのか、お
考えを伺います。
また、営業制限等で大きな
影響を受ける
事業者に対する
支援も重要です。
総理は、
影響を受ける
事業者に対して、
地域、
業種を限定せず、
事業規模に応じた
給付金の
支給を明言されました。これまでの
給付は、スピードを重視すると一律
給付となって不公平感が出ました。一方で、
影響額等を正確に把握しようとすると手続が煩雑になり、
給付にまで時間を要します。
総理は、
影響を受ける
事業者の
規模や
影響度合いをどのように把握して、公平で迅速な
給付を
実現しようとされているのでしょうか。
総理は
所信表明演説の中で、新自由主義的な
政策の
弊害を指摘され、
分配なくして次の
成長なしの
考えにより、新しい
資本主義の
実現を目指すことを表明されました。そして、
成長と
分配の好
循環がコンセプトだとされ、
成長戦略と
分配戦略にそれぞれ四つの柱を立てられました。
成長と
分配の好
循環というのは、決して新しい概念ではありません。この言葉が最初に使われたのは、記録で確認できる限りでは、平成二十七年十一月二十六日に開催された一億総活躍
国民会議において当時の
安倍総理が、
アベノミクス第二ステージとして
成長と
分配の好
循環を構築していく、
成長か
分配か、どちらを重視するのかという
議論に終止符を打つという趣旨の発言です。その後、
政権の中で、
分配の観点から賃上げの重要性や厚生年金の適用
拡大、低
所得者対策等について
議論が進んでいきました。
成長と
分配の好
循環をコンセプトとする
岸田総理の新しい
資本主義と
アベノミクスの関係をどう位置
付けるのか、
アベノミクスの発展的承継なのか、修正なのか、全く新しい概念なのか、
総理のお
考えを率直にお聞かせください。
確かに、
安倍政権のときと比べて
格差や、それをもたらす
分断が深刻化しているのも事実です。特に、
コロナ禍で
分断が更に加速している
状況であります。そういった中で
岸田総理が
分配戦略を打ち出して、
分配にやや軸足を置いていこうという姿勢を取っておられることを支持いたします。
しかし、
分配は単なるばらまきであってはなりません。
分配が
社会経済の活力の糧となり、
成長につながる投資とならなくてはなりません。
総理が
所信表明で述べられた
分配戦略四つの柱が、もう一方の
成長戦略四つの柱にどう関わっていくのか、ひもといていきたいと思います。
分配戦略第一の柱の中で、
総理は、下請取引を是正し、大企業と中小・小
規模事業者の共存共栄を目指すことを宣言されました。中小・小
規模事業者は
日本の
雇用全体の七割を占めています。この中小・小
規模事業者の経営基盤を強化せずして、働く人への
分配機能の強化、
令和の
所得倍増が
実現することはありません。
最低賃金の
引上げを強制すれば、中小・小
規模事業者の経営改善が進み、生産性が上がるという乱暴な
考え方をする有識者がいますが、中小・小
規模事業者の労働
分配率は現に七割を超えており、経営者は我が身を削って従業員の給料を支払っている
状況であります。
まずは、多くの
中小企業が依存する大企業との下請取引の条件を改善し、中小・小
規模事業者の収益力を上げることが先決であります。私は経産
大臣時代にコストカットの一方的押し
付けの禁止や金型保管コスト負担の適正化などに取り組みましたが、まだ道半ばであります。
中小・小
規模事業者の多くは地方に立地しています。中小・小
規模事業者の活性化は
成長戦略第二の柱である地方の活性化に直結します。また、物づくりを担う中小・小
規模事業者には、
日本の戦略上重要な
技術者や素材を抱える企業が少なくありません。物づくり
中小企業への
支援は、
成長戦略第三の柱である経済
安全保障にも直結する重要な問題であります。
岸田総理におかれては、経済団体代表や業界団体、大企業の経営者と膝詰めで談判するなど、下請取引条件の改善に先頭に立って取り組んでいただきたいと
考えますが、御覚悟はいかがですか。
総理は、
分配戦略第二の柱の中で、教育費
支援、
子育て世帯への
支援に
言及されました。私は、教育における
格差是正とそのための
分配が
日本の将来の
成長のために何よりも重要だと
考えています。
最近、とても嫌な言葉を耳にすることがあります。親ガチャ。自分の親は選べない。自販機から出てくるカプセル式おもちゃのように、自分の境遇は努力よりもどの親の下に生まれるかの運任せで決まるということを示す言葉であります。
この言葉の裏には、
世帯年収や親の学歴が一生を決めてしまうという諦めの気持ちが込められています。複数の学習塾やスポーツ教室に通い、私立名門一貫校に入学し、幼少期から海外での
生活を経験できるような
子供と
生活困窮
世帯の
子供との間には、努力ではカバーできない大きな機会の
格差が人生のスタートラインに立った時点から発生します。
しかし、
子供や若者が最初から努力を諦めてしまうような
社会に
成長の活力は期待できません。どんな環境に育っても努力が報われる
社会であってこそ、真に優秀な人材が育ち、
総理が
成長戦略第一の柱に挙げておられる科学技術立国の担い手も生まれてくるというものです。
教育機会の
格差を是正する手段は幾つか
考えられます。学習塾等に使用できるクーポン券の配布や学習
支援に取り組むNPO等への
支援、どこにいても一流講師の授業が受けられるオンラインシステムやアプリの活用といった
対策が
考えられます。
岸田総理は、文部科学副
大臣当時、
子供たちが自ら何かをしようという意欲や興味を大切にしていくと発言しておられました。是非とも教育の機会均等に向けた
分配に重点を置いていただき、親ガチャという言葉が聞かれなくなるような
社会をつくっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
分配の第三の柱として、
総理は、看護、
介護、保育などの現場で働く人の収入を増やすと宣言されました。看護、
介護、保育といったサービスは、少子高齢化が進む中で、多くの
国民が幸せな日常
生活維持のためにお世話になる重要で崇高な職種であります。スキルや体力も要求される仕事です。
しかし、そこで働く人々に支払われている賃金
水準はその価値に見合っているとは思えません。しかも、サービスの対価としての価格は
政府が決定する公定価格であるため、賃金決定に当たって
市場メカニズムは働きません。現に、
介護職の有効求人倍率は直近三倍を超えていますが、賃金が大幅に上がっているわけではありません。だからこそ、
政治が主導して看護、
介護、保育従事者の賃上げを行うことは非常に意義あることだと
考えます。
これまで
政府は再三にわたって民間企業に賃上げを要請してきましたが、いまだ本格的な賃上げは
実現していません。看護、
介護、保育等の分野で働く人は五百万人を超えており、その賃上げには大きなインパクトがあります。これら分野の賃上げを民間企業の賃上げにつなげ、長年続いている賃金デフレから脱却する
令和の
所得倍増の起爆剤としてはいかがでしょう。
また、重要な公的サービスという観点から、教員や、科学技術立国の担い手でありながら薄給で働く若手
研究者等も
対象にすべきではないでしょうか。
ただ、これら公的サービスは公費や保険
制度で運営されているわけですが、財源や
国民負担との関係はどう整理されるのでしょうか。
分配戦略第四の柱である財政の単年度主義の
弊害是正については、
成長戦略の第一の柱である科学技術立国等、長い目で安定的に取り組まなければならない
政策にとって極めて有効な手段になると期待しています。一方で、国庫債務負担
行為や基金など、複数年度にわたる予算措置が既に行われている面もあります。
総理は、具体的にどのようにして単年度主義の
弊害是正に取り組む
おつもりでしょうか。
本来
分配戦略に入っていてもおかしくない人生百年時代の不安解消を、
総理はあえて
成長戦略の第四の柱と位置
付けられました。しっかり働けば結婚や持家につながるだけの賃金がもらえる、今年よりも来年は賃金が上がっていく、このような安心感を
国民に持ってもらうことが
成長の原動力になることは間違いありません。
一方で、医師不足、孤独・孤立、
地域の消滅・崩壊といった不安には、やはり
分配戦略の
アプローチも重要です。不安に寄り添う
政治のあり方勉強会で分かったことは、本当に困っている人ほど声を上げない、悩みが深刻な人は自分が何に悩んでいるかすら分からない、各
支援制度がばらばらで一本化されていない、
生活維持に必死で申請書類の記入に時間が掛けられないといった現実であります。
支援の申請を待つのではなく、行政から積極的に手を差し伸べることの重要性や、行政だけで
対応するのではなく、現場で活動するNPOなどとの協働
体制を構築する
必要性、そして、徹底した省庁縦割りの打破とスマホで
支援を申し込める仕組みの構築、
政府が一刻も早く取り組むべき多くの課題が明らかになりました。
岸田総理は、不安を抱える
方々への
対応体制を
分配戦略の視点からどのようにつくり上げていく
おつもりでしょうか。
さて次に、
所信表明演説で深く触れられなかった、しかし
国民生活にとって極めて重要なエネルギー
政策についてお聞きします。
岸田政権下においても、二〇五〇年
温室効果ガス排出ゼロ
目標を掲げ、二〇三〇年度四六%減の国際公約をしっかりと達成し、ESG投資や排出権取引等で、諸外国に遅れることなく脱炭素を
日本の競争力を高めるための
成長の機会につなげる努力が重要です。
しかし、エネルギーが二十四時間三百六十五日安定的に供給され続けるということがその大前提にあることを忘れてはなりません。余り知られていませんが、昨年十二月から今年一月にかけての寒波の中で、
日本の電力供給はあわや
全国的な停電発生寸前の
危機的な
状況にありました。
暖房用の電力需要が急増しましたが、LNGの在庫は払底、悪天候の日には太陽光は発電できず、東北地方の風力も雪と凍結のため稼働できないときがありました。停止をしていた
石炭火力発電所に重油を注入して稼働させることで少しでも必要な電力量を
確保しようとする場面もあり、綱渡りの時期がありました。
これから訪れる次の冬の電力需給も楽観できません。脱炭素の流れの中で、
日本国内では、この一年間で原発五基分に相当する合計五百万キロワット分
程度の古い火力発電が引退しました。二酸化炭素排出量の少ないLNG発電については、LNGの国際的な争奪戦が激しくなっていて、価格高騰が続いている
状況です。そもそも、LNGは物質としての性質上、長期の備蓄が不可能です。次の冬、再び寒波が
日本を襲ったらと、背筋が冷たくなります。
再生可能エネルギーの
比率を単純に上げるだけでは電力の安定供給はおぼつきません。残念ながら、地政学上、
日本は周辺国との電力融通のためのネットワークを接続することもできません。また、電力料金の大幅な高騰を招くことも大きな
懸念です。既に
日本の家庭は年一万円の再エネ賦課金を負担していることを忘れてはなりません。
安定的で経済的な電力供給を継続しながらカーボンニュートラルを
実現するためにも、再エネ
比率の向上とともに、CO2を排出せず安定的に大量の電力を供給できる原子力を、安全を最優先にしながら、ベースロード電源として活用することを車の両輪と位置
付けるべきだと
考えますが、
岸田総理のお
考えを伺います。
また、
世界には現行の原発よりも更に安全、低コストで、再生可能エネルギーとの相性も良い小型モジュール炉等の新技術の導入も進んでいます。
日本も新たな技術の研究、導入に進むべきだと
考えますが、いかがでしょうか。
さて次に、我が国の
外交・
安全保障についてお尋ねします。
岸田総理は、戦後、連続・単独任期としては最長となる四年七か月にわたり外務
大臣を務められました。日米同盟の強化や、自由で開かれたインド太平洋、
北朝鮮の拉致、核、
ミサイル問題を始めとする重要な
外交課題についても、その
内容、経緯を熟知しておられます。国際的知名度も高く、各国首脳にも人となりを知られており、短期での首相交代による
日本外交へのダメージは最小限に抑えられると
考えます。
とはいえ、課題は山積しています。
先日、退任間際に米国を訪問された菅前
総理は、対面では初の日米豪印首脳会合に参加し、自由で開かれたインド太平洋の
実現に向け結束することを確認しました。基本的価値観を共有し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を目指す四か国が、今後、毎年首脳会合を開催することに
合意したことは画期的成果です。
一方で、四か国で微妙な思惑の違いや温度差も感じられます。元々
日本が主導してきたこの枠組みを
岸田内閣においてどう承継し、深化させるべきか、各国の思惑の違いをどう乗り越えていくべきか、お伺いします。
TPPへの
中国と台湾の同時期の申請も、
岸田外交にとって重たい課題です。
中国は、国有企業問題を抱えるなどTPPのハイスタンダードなルールに
対応するのは困難な一方で、加盟国にとっては非常に魅力的な巨大
市場です。
台湾は、全てのTPPルールを受け入れる用意があることを表明するなどTPPのスタンダードに
対応できるポテンシャルが十分にある一方で、
中国が強硬に加入に
反対していることなど、
中国、台湾の加入申請には難しい手綱さばきが求められます。
議長国としてまさに
日本外交の手腕が問われています。TPP議長国としてどのような
方針で臨んでいかれるのか、現段階での
方針をお聞かせください。
さらに、日ロ関係について伺います。
岸田総理は外務
大臣時代、
ロシアのラブロフ外相とウオツカの飲み比べで引けを取らない酒豪ぶりを発揮され、良好な個人的信頼関係を築いてこられたと伺っています。
しかし、東京オリンピック期間中の
ロシア首相の
北方領土上陸、特区の設定、
領土の割譲禁止明記の
改正憲法の発効、国後島周辺海域の射撃訓練など、
平和条約締結に向けた努力に冷や水を掛ける
行為が続いています。
コロナの
影響もあって、先月、
世界女性議長
会議で山東議長とマトビエンコ連邦院議長が会談した以外は、ハイレベルでの交流もほとんど途絶えている
状態であります。
二〇一八年の
シンガポール合意に基づいて、両国の経済関係強化を進めることが、ひいては
平和条約を締結することが
ロシアにとって大きな利益だということを粘り強く働きかけ、理解させることが重要です。
岸田総理の日ロ
交渉への意気込みを伺います。
さて、
コロナ禍にあっても、この夏、希望の明かりが東京にともりました。オリンピック・パラリンピックの開催であります。
新型
コロナウイルス禍を
考えると、
日本が行ったような大会開催は諸外国ではできなかったと確信している、
世界は
日本が果たした
役割を決して忘れない。国際パラリンピック
委員会のパーソンズ会長が閉会式前の総括記者会見で語った言葉でありました。
開催に当たっては様々な御意見もありました。しかし、躍動するアスリート
たちの姿を見て、
世界は沸きました。感染予防や患者の
治療に当たられた医療従事者や、大会運営に御協力いただいたボランティアの
皆さんへの心からの敬意と感謝を胸に抱きつつ、私はオリンピック・パラリンピックはやはりやって良かったと
考えます。
開催に当たって、参議院
自民党は、開幕前の三月、四月、所属議員で担当を決めて在京の各国大使館をほとんど全部訪問し、選手団の派遣を呼びかけました。その際、大半の国が派遣を明言してくれ、自国と比べて感染
拡大を抑えている
日本だからこそ開催できると信じている、このタイミングでは
日本でしか開催できないのではないか、今回が東京開催で本当に良かったと話していただいたことは忘れられません。私
たちは開催国としての
責任をしっかり果たしたのです。
SNSを飾った選手村から見える東京の風景。選手村で提供された食事を
世界一と褒めたたえる選手
たちの投稿。もし、選手
たちが自由に外出できたなら、そして海外からも多くの観客をお迎えして
日本中を訪ねていただけたなら、何万倍も
日本の魅力を
世界中に発信できたであろうと思うと、率直に申し上げて残念でなりません。
しかし、まだ大きなチャンスが控えています。二〇二五年大阪・関西万博の開催であります。今度こそ、海外からも多くの
方々をお迎えして、
日本の魅力を大いに
世界に発信したい。
コロナ禍でのオリンピック・パラリンピックとなってしまった今、万博を誘致できて本当に良かった、その戦略は間違っていなかったと思っています。
「いのち輝く
未来社会のデザイン」、「いのちを救う」、「いのちに力を与える」、「いのちをつなぐ」という万博のテーマは、まさにポスト
コロナのテーマにふさわしいものであります。
コロナ禍で激減したインバウンドをV字回復させ、質が高く安全、安心な
日本の食材、多彩な魅力を持つ地方などを海外に発信できる絶好の機会であります。
世界が感染症を克服したことを高らかにうたう歴史的な万博、さらにはウイズ
コロナ、ポスト
コロナの新しい
生活様式と価値観を
世界に示す万博となります。
コロナ禍におけるオリンピック・パラリンピックの成果と経験を踏まえ、二〇二五年大阪・関西万博をどう位置
付けていく
おつもりか、
総理のお
考えをお聞かせください。
この一年間で
岸田総理は変わった、私は心底そう思います。苦杯をなめられた一年前の
総裁選以降も地道に
政治活動を継続され、決断する強いリーダーを目指し、粘り強く研さんされてきた気迫を感じます。試練が人間を磨くということを痛感しております。
総理の粘り強いリーダーシップを発揮していただくことを期待し、我々参議院
自民党も共にこの国難に立ち向かっていく決意をお示しし、質問を締めくくらせていただきます。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔内閣
総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕