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2021-03-16 第204回国会 参議院 予算委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    令和三年三月十六日(火曜日)    午前九時開会     ─────────────    委員の異動  三月十五日     辞任         補欠選任         磯崎 仁彦君     加田 裕之君      山田  宏君     今井絵理子君      下野 六太君     塩田 博昭君      平木 大作君     河野 義博君      吉良よし子君     小池  晃君  三月十六日     辞任         補欠選任         今井絵理子君     山田  宏君      藤木 眞也君     清水 真人君      本田 顕子君     古川 俊治君      三浦  靖君     佐藤 正久君      宮島 喜文君     宮崎 雅夫君      梅村みずほ君     石井 苗子君      松沢 成文君     片山 大介君      矢田わか子君     小林 正夫君      井上 哲士君     岩渕  友君      小池  晃君     大門実紀史君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         山本 順三君     理 事                 青木 一彦君                 滝波 宏文君                 馬場 成志君                 藤川 政人君                 白  眞勲君                 森 ゆうこ君                 石川 博崇君                 浅田  均君                 山添  拓君     委 員                 青山 繁晴君                 今井絵理子君                 加田 裕之君                 片山さつき君                 北村 経夫君                 佐藤 正久君                 清水 真人君                 進藤金日子君                 高階恵美子君                 高野光二郎君                 高橋はるみ君                 古川 俊治君                 三浦  靖君                 三木  亨君                 三宅 伸吾君                 宮崎 雅夫君                 宮本 周司君                 山田 修路君                 山田  宏君                 石川 大我君                 打越さく良君                 熊谷 裕人君                 小西 洋之君                 田島麻衣子君                 福島みずほ君                 宮沢 由佳君                 河野 義博君                 塩田 博昭君                 杉  久武君                 若松 謙維君                 石井 苗子君                 片山 大介君                 礒崎 哲史君                 小林 正夫君                 浜口  誠君                 矢田わか子君                 岩渕  友君                 小池  晃君                 大門実紀史君    事務局側        常任委員会専門        員        藤井 亮二君    公述人        新型インフルエ        ンザ等対策有識        者会議新型コロ        ナウイルス感染        症対策分科会分        科会長      尾身  茂君        インターパーク        倉持呼吸器内科        院長       倉持  仁君        BNPパリバ証        券株式会社グロ        ーバルマーケッ        ト統括本部副会        長        中空 麻奈君        学習院大学経済        学部経済学科教        授        鈴木  亘君        神奈川大学法学        部・法学研究科        教授       大庭 三枝君        大阪市立大学大        学院経営学研究        科教授      除本 理史君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○令和年度一般会計予算内閣提出、衆議院送  付) ○令和年度特別会計予算内閣提出、衆議院送  付) ○令和年度政府関係機関予算内閣提出、衆議  院送付)     ─────────────
  2. 山本順三

    委員長山本順三君) ただいまから予算委員会公聴会を開会いたします。  本日は、令和年度一般会計予算令和年度特別会計予算及び令和年度政府関係機関予算につきまして、六名の公述人方々から順次項目別に御意見をお伺いしたいと存じます。  この際、公述人方々一言御挨拶を申し上げます。  本日は、御多忙中のところ本委員会に御出席を賜り、誠にありがとうございます。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  本日は、令和年度予算三案につきまして皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、新型コロナウイルス感染症対応医療ワクチン接種体制)について、公述人新型インフルエンザ等対策有識者会議新型コロナウイルス感染症対策分科会分科会長尾身茂君及びインターパーク倉持呼吸器内科院長倉持仁君から順次御意見を伺います。  まず、尾身公述人お願いいたします。尾身公述人
  3. 尾身茂

    公述人尾身茂君) 尾身です。本日は、このような機会を賜りまして、心よりお礼を申し上げます。  緊急事態宣言は、時期はともかく早晩解除されると思いますが、実は、解除されても、文字どおりゼロにすることはできないと思います。  本日は、ワクチンが多くの人に接種されるまでのしばらくの間に感染に強い社会をいかに構築していくかについて意見を述べさせていただきたいと思います。まずは現状分析、その後、感染に強い社会をいかに構築するかについて私の意見を述べさせていただきます。  まずは現状分析です。  この一年、私たちが学んできたことの一つは、恒例事業感染拡大契機になったということであります。実際、昨年、国や自治体がかなり前から、いわゆる時短や人の動きの抑制とともに、年末の忘年会などをなるべく控えるよう度々要請がしました。しかし、結果的には、結果的にはこのメッセージ社会に十分に浸透せず、忘年会などを契機に、まず比較的若い年齢層から感染が始まり、その後、世代を超えて高齢者などに感染が広がり、最終的には緊急事態宣言発出となりました。このことを、この事実を社会全体が私はしっかりと認識することが必要だと思います。このことが、来るべき年度末に、歓送迎会謝恩会卒業旅行宴会を伴う花見などを介しての感染を防ぐためにこの認識が重要だと思います。  さて、今回の緊急事態宣言は、言わば急所をついた対策でありましたが、多くの国民方々の協力もあり、一定程度の効果は間違いなかったと思います。しかし、首都圏中心感染減少下げ止まり、一部では微増の傾向が見られています。この下げ止まりには、少なくとも二つの理由が関与していると思います。  まず一つ目ですが、一年以上にわたる言わばコロナ疲れというものもあってか、緊急事態宣言期間内の現在でも既に高齢者の昼カラオケ、若者での会食を介しての感染がまた増えております。  二点目ですが、今回の緊急事態宣言発出の結果、飲食店でのクラスター感染は減ってきましたが、最近ではクラスターが多様化し、特に首都圏では、匿名性など、その特殊性のために、言わば見えにくいクラスター、つまり隠れた感染源が存在している可能性が否定できません。この隠れた感染源から高齢者高齢者施設や家庭内に広がり、それで見えてきているようになっているわけです。  ところで、変異株が最近話題になっていますが、この変異株が現在の下げ止まりにどれだけ影響しているかは現在のところまだ正確には分かりません。これからの課題だと思います。研究課題だと思います。  さて、次に、感染症に強い社会について少し述べたいと思います。  この感染症に強い社会の構築のためには、国や自治体が困難な問題解決のために率先して汗をかいていることを人々に知っていただくことが極めて重要だと思います。具体的には、人々納得感と共感が得られるように、具体的な目標数値目標も含めた具体的な目標を明示するなど、明確なメッセージを発信することが私は非常に重要だと思います。  まず、国や自治体に具体的に行っていただきたいことは、病床の更なる確保であります。そのためには、私は、三点、病床確保のためには三点が重要だと思います。  まず一点目は、既存病床を有効かつ弾力的に活用することであります。例えば、今四つ挙げますが、例えば、医療機関役割分担を今まで以上に明確した上で、各都道府県が司令塔を決めて入院調整などを行うことであります。次に、既存病床をゾーニングしてコロナ患者ICU病棟などをつくること。それから三番目は、コロナ患者を受け入れる病院を今まで以上に増加させること。それから、コロナ患者受入れ状況を全体として、もう既にやっていただいていますけど、今まで以上に見える化することなどであります。  それから二点目です。病床確保の二点目は、病床そのものを更に増加させることで、例えば、必要であれば臨時の医療施設の建設などが必要であります。  三点目は、施設確保しても医療人材が足りないということが問題でありますので、これには国がリーダーシップを発揮して全国的な医療従事者確保仕組みをつくることが、今までも幾つか行われていますけど、これが急務だと思います。  次に、国や自治体に行っていただきたいことの二つ目は、いわゆるリバウンド防止であります。  リバウンド防止策一つ目は、いわゆるサーキットブレーカーサーキットブレーカーというコンセプトの下に、具体的には以下の三つのことをお願いしたいと思います。  まず一点目は、感染拡大の予兆が見られた場合には、いわゆるまん延防止等重点措置の活用も含め迅速な対応が必要だと思います。二番目は、感染リスクが高いと思われる集団、場所中心に、軽症者、無症状者に焦点を当てた重点検査を強力に進めることが重要だと思います。さらに、変異株PCR実施目標は現在のところ陽性者の五%から一〇%となっておりますが、迅速に対応するためにはこの目標を更に高くしていくことが重要だと思います。  次に、リバウンド防止策二つ目としては、見えにくいクラスターの探知であります。このためには、都道府県保健所設置市区との広域的な連携、この連携がいろんな様々な日本地方分権ということもあって、なかなかうまく連携がなされていないことも時々ありましたので、この都道府県保健所設置区との広域的な連携を通して、言わば深掘り積極的疫学調査、つまり感染源を探るということですね、こうした深掘り積極的疫学調査実施していただきたいと思います。  さて、国や自治体に行ってほしい三つ目としては、重症化予防対策です。それには、高齢施設に対する定期的な検査実施、さらに、感染者が一例でも確認された場合には自治体が、自治体などのいろんな部門と連携して専門支援チームを迅速に高齢施設に派遣していただきたいと思います。  さて、感染症に強い社会を構築するためには、これまで述べてきたように、まず国や自治体が困難な問題、どんなに困難な問題であってもそれを解決するためにこれまで以上に汗をかいていただくことが私は求められると思います。このリーダーシップがあれば、多くの国民感染症に強い社会を構築することに積極的に参加してくれると思います。  私たち一般市民の果たす役割も重要であります。私たち一般市民の間で、感染リスクが低い行動と、感染リスクが低い行動と絶対に避けたい行動の区別をみんなで共有し、めり張りのある行動をこれから実践していくことが、めり張りのある行動を実践していくことが必要だと思います。  感染リスクが低い行動としては、三つ具体的に挙げたいと思います。感染リスクが低い行動としては、同居家族以外でいつも近くにいる四人での会食、また、人が混んでいる場所と時間を避けて行う例えば散歩、買物、映画、美術鑑賞など、これは人が混んでいる場所と時間を避けて行えればほとんどリスクはないと思います。それから、三密が生じないように工夫をした運動ですね、エクササイズ、ジョギング、テニス、野球などは、これはやってもリスクは低いと思います。  一方、絶対に守ってもらいたいこと、これはそんなに多くはありません。まあ、あえて言えば一言、二言で説明できます。それは、従来どおりの三密の回避と感染リスクが高い五つの場面ということだと思います。先ほど申し上げましたように、来るべき年度末において、花見を伴う宴会卒業旅行謝恩会歓送迎会などはできるだけ今回だけは避けていただければと思います。  また、事業者方々にも政府を通してお願いがございます。まずは、感染症対策に努力する事業者お客さんから選ばれ、報われる仕組み政府自治体連携して構築する必要があると思います。それから、お店では、換気、距離、お客さんへの注記、喚起を促し、などを促している飲食店お客さんが、仕組みお客さんが選択できるような仕組みづくりも重要だと思います。それで、こうした仕組み実効性を持たせるためには、国、自治体事業関係者連携して優良事業者を正式に認定する制度というのも重要だと思います。また、人が集中しやすい催物、イベントなどを企画する場合には、場所や時間帯で人数制限及び動線工夫などがお願いできればと思います。  最後に、この一年間、多くの人が経済的にも精神的にもつらい経験をしてきました。この感染症文字どおりゼロにすることはできません。また、感染リスクをゼロにすることもできません。しかし、個人や社会全体がこれまで学んできたことを基にめり張りのある感染対策を実践すれば、医療公衆衛生社会経済活動が特段の支障を来さない社会を構築できると思います。それがすなわち感染症に強い社会であると思います。  コロナへの対応も二年目に入り、ワクチン接種も始まりました。高齢者基礎疾患のある人に対しての接種が進めば、重症化予防も期待され、我々のこの病気に対する見方もかなり変わってくると思います。トンネルの先に少しずつ光も見えてきています。  どうも御清聴ありがとうございました。
  4. 山本順三

    委員長山本順三君) ありがとうございました。  次に、倉持公述人お願いをいたします。倉持公述人
  5. 倉持仁

    公述人倉持仁君) 今日はよろしくお願いいたします。  私、インターパーク倉持呼吸器内科院長をしています倉持仁といいます。臨床の立場から今日はお話をさせていただきます。  大きく分けまして、コロナ臨床の実際、それから我々の取組、そしてコロナ問題点とそれに対する提案という形でお話を進めさせていただきます。  私は四十現在八歳で、栃木宇都宮市生まれで、東京医科歯科大学卒業後、都内のいろいろな病院で勤務をして、そして二〇一五年から発熱外来があるクリニックをつくって、呼吸器内科あるいはアレルギーの専門医として診療していました。  私が医科歯科大学の元学長である吉澤靖之先生に師事していたんですが、吉澤先生からは、患者さんのためにとにかく命を懸けろと、そして必ず科学的な視点でやりなさいと、それを踏まえた上で今おまえができることを精いっぱいのことをしろと、それを二十年にわたり学んできましたので、私はコロナに関しても同じスタンスで臨んでいます。  我々の取組なんですが、我々は昨年三月から約一万五千人のコロナ患者さんを診察をし、発熱患者さんですね、そして、うち四百名、約二・七%のコロナ患者さんを診断してきました。その中でPCR検査を一万一千件ほど行い、その中で一つ気付いた大きな点が、検査単体では偽陽性、偽陰性の問題が出てくるんですが、これ臨床データや複数回検査をすることで、少なくとも偽陽性はゼロです。これは科学的にしっかりと認識をしていただきたい点だと思います。  それから、国立遺伝学研究所川上先生井ノ上先生らとタッグを組んで、変異株の検索というのを五例、ここ最近陽性になった、三月六日からの五例に対して変異株を調べたところ、残念ながら、その三例にはE484Kという単独の変異が見られ、さらに、その二つ三つ変異が見られた株のうち一つはポイントミューテーションといって、一か所また変異が起こっているような状況で、そういった変異が、栃木県でさえ、それも五例調べたうちの三例で出ているというですね。  そして、こういった変異の問題というのは、まず変異株の遺伝子のデータが膨大に集まらないと分かりません。そして、大事なことは、そこと臨床データとリンクをして初めて、どういう、感染性が強いのか、ウイルスを出し続けるのか、そういったこと分からないんですが、残念ながらそういう体制が今ないんですね。我々臨床現場からすると、それが非常にもどかしく、一年前から思っていました。  また、我々の取組として、宇都宮で千世帯の無作為抗体検査というのを行って、その結果では、実際の感染者よりも二百七十七倍の感染者が、既感染者がいたと。これは、実際、我々のように無作為抽出で行った検査というのは日本ではどこでも行われてほとんどないですから、非常に意味のあるデータです。  また、我々の職員五十三名いるんですけれども、毎日プール法で全職員ですね、出てくる者に関してはプール法PCR検査を行い、全例で、昨年九月からやっているんですが、三百五十六件全員陰性だったんですけれども、一人当たりのコストは五千五百円、ああ、一検体ですね、五人でやりますから千百円で検査ができています。  それから、自院でも、PCR検査体制を確立したり、あるいは二月には第三波のときの患者さん、自分の患者さん、肺炎でも入院させられない人がたくさん出てしまったということを反省して、国の補助も得られたので、コロナ病床を十床ほどつくって二月から稼働しています。  実際にクリニックでは、とにかく飛沫、エアロゾル、接触と、その感染をしないために、つい立て設置をしたり、濃厚接触者等診察は車中で行い、そして通常の風邪の患者さんの場合は発熱外来で行い、そして通常診療でさえこういうつい立て設置して、換気扇を増強して、感染をしないような形で診療に当たっています。  また、その発熱外来などは殺菌灯などで部屋ごと消毒をしたりとかそういった取組をしたり、あるいは採血やCTを撮るときなども、患者さんにビニール袋をかぶっていただいて、酸素を流しながら、その後工業用換気扇で短時間換気することで十分おきCTで撮影するような体制が取れています。  また、入院病棟でも、院内感染、これ都内の一月の死亡者の約八割が、経路不明者を除いた八割が病院福祉施設感染してしまった方が亡くなっているんですね。ですから、院内感染を防ぐという、徹底的に防ぐということも必要でして、我々は、お部屋の外から点滴をしたり、看護婦さんが安全に院内感染を起こさないような病院づくりというのを今回行ってきました。  また、今までのそういった臨床データを基に論文化を行ったり、結局日本データというのはほとんどないんですね。ですから、対策ができないのはそこに大きな原因がありますので、そういったことにも取り組んでおります。  また、第二波の発熱外来を受診した六百四名のうち三百七十名にPCRをやった結果なんですけれども、そのときには、PCR検査が有意に陽性になった方というのは、味覚障害があった方、あるいは、酒場に行ったか、頭痛があったか、たんがあったか、その三つのうち二つある方が陽性率が高かったんですね。つまり、熱があるから検査をするというのは明らかに間違った戦略なんですね。ですから、そういう間違った、これ、インフルエンザは熱があるから検査するんです。でも、コロナはそうじゃないんですね。ですから、こういう正しい日本データというのをきちんと認識をして行っていく必要がある。  あるいは、孤立や孤独を感じる方で、特に男性ではいろいろな炎症性の、炎症が起きやすいというようなデータも取られていますので、そういったことも念頭に対策を打っていく必要があると思います。  そして、コロナの問題でまず基本的に押さえなければいけないのが、三月十五日の段階で四十四・六万人の方が感染をしているんですが、これは日本人の〇・三五%にすぎません。これ、残念ながらこれが原因で、我々のように医療現場にいる人たちは毎日一年前からコロナコロナと騒いで、騒いでいると言ったら不適切かもしれませんが、まあ悩まされている一方、それに関係ない方というのは、周りに千人に三人とかですから、誰もコロナなんかいないんですね。そうすると、何でコロナのために我々はこんなに経済的な損失を生まなきゃいけないのかという声が聞こえてくるのは当たり前で、それを埋めるのがやはり政治が行うべきことだと思いますし、それを是非政治には行っていただきたいと。そして、徹底的な感染対策を行った上でやはり経済を動かすことが必要だと思います。  コロナ対策で大事なことというのは、生活様式というのが国によって、欧米の国と一方アラブ、アジアの国では感染者数が桁が違います。それはなぜかというと、マスク、手洗い、うがいの文化であったり、土足の文化であったり、そういったもの、あるいはキスをする、ハグをするとかそういった生活様式というのが大きく関わっていることが分かってきました。ですから、今までの日本というのはこの生活様式に対するお願いにこの一年終始をしてきて、ですから自粛しかできなかったんですね。ここをもういいかげんに変えて、必要なところは法整備、科学的な知見で法整備をしていくということが大事だと思います。  それから、何で日本PCR検査体制が拡充されないのかということを考えたときに、これ、逆に考えると諸外国では検査体制を拡充するしかなかったんですね。なぜかといえば、多くの国が皆保険制度がありません。つまり、簡単に外来アクセスができないんですね。入院に至ってはもっとできません。アメリカなどで、コロナ入院して保険に入っていなければ一億円以上のお金が実際に掛かります。ですので、日本では、そういったことにあぐらをかいてといったらいいのかは別として、PCR検査体制が、拡充が進んでこなかった。それから、外来診療体制も、昨年の秋と今年の秋を比べると、発熱患者さんを診なくてもいいですよというようなメッセージが流れてしまったがために、実際には今年、発熱患者さんを診療した医療機関というのは昨年の二割しかありませんでした。ですから、大変なところは大変な思いをし、そうじゃないところはおびえながら様子を見ているというような状況が続いてしまいました。  また、第三波では、残念ながら患者さんの数が増え過ぎたことで、先ほど申し上げましたが、私の患者さんでも、肺炎でもうあした死ぬかもしれないのに入院させることができなかったと。これは医者として絶対許すべきことではないですし、つまり、皆保険制度は、私医者になって二十何年ですがこんなことはありませんでした。こんな状況になったことに対して正直怒りを覚えますし、それから、あともう一つ怖いなと思うのは、指定感染症という法律にもかかわらず、三万五千人以上の人が自宅待機を余儀なくされて、それが今余り問題にされていないのかなというふうに、一般の開業医の立場からするとですね。ですから、そういったことを大いに反省をして、こういった、そこに治療薬であったりワクチンというものが、この六本が必要だということになってきます。  飛沫、接触感染対策としては飛沫、接触、エアロゾルの対策ということが大事になってきますので、短期間の接触の場合にはマスク、あるいはソーシャルディスタンスを確保するとか、つい立て設置とか、換気を義務付けるとかですね。そして、場合によって、抗原キットが簡易的に使えるのならば、そういったものを一般の市民の方々に使っていただいて、スクリーニング的に自分でやっていただくと。そういったことで、もしそれでイベントに参加しようとするときは自分でそれをして、もし陽性と出れば医療機関に相談していただければいいと思いますし、また、長期間の接触福祉施設入院施設では、先ほど、八割が死亡している方なんですね。ですから、そういった方には、やはり入所者には二回以上の検査ですとか、スタッフの方にも定期的な検査を徹底的にしていただく必要があると思います。  生活様式に対する法整備ですけれども、例えばマスクの着用義務も、宇都宮抗体検査の結果ですと、約二%の方はコロナ後もマスクは着けないという方がいらっしゃいます。そういった人たちのために感染が拡大してしまってもいけないですので、あるいはオリンピックをやるならばなおさら、海外の方は法律がなければルールは守りません、マスク着けてくださいと言ってお願いして聞いてくれるのは日本人だけかもしれません。ですから、そういったことを義務付けることが必要ですし、お店のつい立て設置義務や、それから今、建築基準法で換気の基準というのが決められていますが、これはシックハウス症候群に対する基準なんですね。結核なんかでは一時間当たりに何回、部屋、十五回ですね、部屋の換気を入れ替えれば感染しないということ分かっていますから、まずはそういう基準を設けて、今までのクラスター対策班のデータを再分析して、そういった飲食店が具体的に見て守れるような対策というのを国が指示をしていただけたらというふうに思います。  また、コロナにかかった方や疑いの方がどのぐらい休まなきゃいけないとか、どのぐらいから休んでいいとか、何度もPCR検査を要求されて陰性にならないと職場に行けないとか、そういった方の問題もありますので、その辺のところもしっかりとルール決めが必要だと思います。  PCR検査体制の拡充に関しても、医療現場においても、先ほど言いましたが、熱が一日だけだったら検査まず受けられません、これ地域差ありますが。嗅覚障害だけだと断られるところがたくさんあります。そういった状況が今あるので、医療だけでもPCR検査体制というのは少ないですから、是非、行政検査としてもそうですし、自費の検査もそうですし、自治体で行うべき検査なども含めて、大事なことは一定数の検査数をきちんと保つことで感染者が正しく増えているのか減っているのか分かるということです。今、感染者は減っているのか増えているのかということで議論になっていますが、検査数が減っていればこれは正しく誰にも分からないんですね。いろんな場面でスクリーニング的な検査を取り入れながら、うまく感染コントロールをしていくことが必要だと思います。  あと、無症状感染者という言葉がありますが、これも無自覚感染者なんですね。確かにコロナにかかっても軽い方はいますが、ほとんどの方はその検査をする段階で無症状と言っているだけで、その後、コロナで、解除後に我々CTなんか撮ると肺炎の方はたくさんいます。あるいは、気付いていなくて、お医者さんも分かっていなくてということで、これはコロナ臨床の最初は外来、その後、保健所管轄、そのまま場合によっては自宅待機とか、重症化すれば病院にやっと入院できるという、こう分断された診療体制というような問題がありますので、そういった無自覚感染者をいかに適切に検査をして保護するかということが大事だと思います。  それから、当初から、医療現場から去年の今頃、アルコールがなかったんですね。手の消毒ができませんでした。我々、患者さんにどうやって診ていけばいいんだと。それから、マスクの問題もそうです。ゴムの手袋もなくなったり、十倍ぐらいに価格が今上がっています。ですから、そういったことも、もうこれワクチンの問題も同じだと思うんですね。自国で生産できないがためにどうしても不利な交渉をされざるを得ないような状況はやはり改善していくべきだと思います。  また、先ほどの変異種の問題に戻りますが、我々のクリニックでもその変異株の問題、実は去年から遺伝研究所というところと一緒に共同研究として四百例の検体をもう送っているんですね。でも、我々も、あるいは遺伝研の先生方も自分の自腹の手持ちのお金で研究しているような状況なので、残念ながらなかなかこれ進みません、一日に二人ずつぐらいしかできていないので。一方、その五例しか調べていないのに三例日本独自の変異株が、かもしれないものが出ているわけですから、是非そういったところに研究費を出していただけますと、我々もせっかくの機器を無駄にせずできると思います。  あるいは、海外の状況なども、感染コントロールをうまくしている海外の状況などの情報ですね、これは治療薬などにも生きてくると思いますので、そういったまだまだやることというのはたくさん我々から見るとあると思いますので、どうぞ御参考にされていただけると有り難いと思います。  どうもありがとうございました。
  6. 山本順三

    委員長山本順三君) ありがとうございました。  以上で公述人の皆さんの御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより公述人に対する質疑に入りたいと思います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  7. 馬場成志

    ○馬場成志君 おはようございます。自由民主党の馬場成志です。  先生方、本当にお忙しい中、本日は予算委員会公聴会に御協力いただきまして、本当に心から感謝を申し上げます。  また、尾身先生にはもう分科会の会長として毎日御苦労いただいていますし、倉持先生の方は現場での御苦労とともに、先日のこの予算委員会のオンライン意見交換会にも御協力いただきまして、重ねて感謝を申し上げさせていただきます。  早速質問に入らせていただきますけれども、一月の八日から二月七日までということで最初の緊急事態宣言が出されたわけでありますけども、ああ、二回目の緊急事態宣言が出されたわけでありますけれども、当初の期限までに対象都府県を全て解除するには至らず、首都圏の一都三県については現在も宣言下にあります。延長の際、総理は年度末のイベントがめじろ押しということで、先ほど尾身先生から恒例事業の話もありましたけども、さらに花見の季節ということなどもありますので、こうした中においても感染対策を徹底してほしいというふうに言っておられました。  一方、活動自粛を緩めてほしいという声、自粛に疲れてきたという声も聞こえてきます。実際、先週末の人出は随分と増えたと報じられておりますし、緊急事態宣言の再延長期間の期限である二十一日が間近に迫って、また春のイベントが待ち構えている今が解除そして解除後のリバウンドを回避するための正念場であると誰もが捉えているというふうに思います。  そこで、専門家であるお二人の先生方から、ここまでの再延長中の対策をどう評価しているのか、そして、ここを今からでもこうした方がいいというところがあるのか、尾身先生、そして倉持先生にお伺いしたいというふうに思います。  先ほど御紹介のありました部分につきましては、またよければ更に詳しいお話でもお聞きできればと思います。よろしくお願いします。
  8. 山本順三

    委員長山本順三君) それでは、尾身公述人からお願いいたしたいと思います。
  9. 尾身茂

    公述人尾身茂君) 先生の御質問は、一つは効果があったかという話ですよね。  私は、今回のこと、これどうして急に上がって急に下がって、また少し徐々に下がって、今下げ止まっているのかということをしっかり我々の社会がみんな共有する必要があります。  急に最後の方にがあっと上がってきたのは、そのときは分かりませんでしたけど、ここの急の上がりは、もう明らかにその主要な原因一つは、先ほど申し上げましたように、再三のお願いにもかかわらず、結果的にこれは忘年会中心に、しかも若い人が最初です、それからすぐに世代間を超えていったということがほぼ分かっておりまして、感染のピーク、発症日とか報告日ではなくて、我々、感染日を大体推定していますけれども、感染のピーク、一番高くなったのは、これは十二月三十日、三十一日で、そういうことで、で、急に下がりましたよね。これ、急に下がったのは、別に緊急事態宣言の効果ではなくて、いわゆる忘年会要素がなくなりますよね。ということで、その後、ある程度になってから、今度は緊急事態宣言の、いわゆる時短なんかの効果が出てきたと思います。  それで、二段階ですよね、忘年会ファクターがまずなくなって、それから緊急事態宣言の効果がある程度、特に時短、夜の方のことが、飲食店がかなり閉じましたので、それで下がって、今のところで下げ止まりになっていると。これはどういうことかというと、今回は、経済等々、去年の四月と違ってエビデンスベースで急所をついてやってきたということで、それと同時に、今先生おっしゃったようにだんだんと人々が疲れてきたという、その二つの、で、ここで、今までの効果が有効だったけど、これ以上はなかなか、二つの要素ですよね、人々の意識もあるし、今回はいわゆるロックダウンしているわけではないですから。  したがって、これから何をすべきかというところが一番大事で、私は、緊急事態宣言の今解除あるいは延長というのが昨日も国会でも随分議論されて、それは非常に重要ですよね。どういう考え、どういう根拠で延長するのか解除するのか、そのことが極めて重要ですけど、私は、それと同時に、実は早晩解除されますよね。これ、一生ずうっと緊急事態宣言が延々と続くわけじゃなくて、いずれ解除される。私は、解除された後の期間の方が長いですね。これをどう、解除をした後にどういうふうな社会感染症対策も含めて、検査体制のことも含めて、医療提供体制の充実を含めて、あるいはサーキットブレーカーが効くような、実はサーキットブレーカーは、去年の私ども分科会も、もう七、八月の頃からステージの考えを出したのは、実はサーキットブレーカー、ところが様々な理由で効かなかったわけですよね。ステージ3で止めたいのが行っちゃった、このことはよく、なぜ行ったのかということも分析をしないと同じことが起きますから。  そういう意味では、私は、一つは、先ほどから議論があった検査、重点的な検査を、今まではキャパシティーの問題もあったし、我々分科会はもう去年の夏頃から、無症状者の方も重点的に、特にリスクの高いということを言っていましたけど、なかなかそれが国レベルでボリュームとしてがっと行かなかったので、ここはもう私は、これから早晩解除されるに備えて、これからの感染対策は、今までの単に延長じゃなくて、質的にも量的にも少しジャンプさせる必要が、これがないと、私は、なかなかこれからの、ワクチンが来て、いずれ安定する時期が来ます、その間ですね、この間が極めて重要で、ワクチンがかなりの人に行って、ある程度、これでワクチンが行ったからといって感染がゼロになることはありませんが、ただ、この病気に対するパーセプションといいますか、これは明らかに変わってきます。そういう、どこまで、いつまでかはちょっとなかなか、今ワクチンのサプライのロジスティックの問題がありますから。  ただ、そこに至るまでは、最低、さっき言ったように感染に強い社会をつくる。そのためには、国民の協力だけに頼る、国民一定程度の私は協力もこれからも必要だと思いますけど、やはりここは国、自治体が今まで以上のリーダーシップを取って、国民が協力してもいいという気分になるような検査体制であり、医療体制であり、そういうリバウンド防止のメカニズム、いざとなったら果敢にディシジョン、意思決定ができると。こういうことが、去年学んだわけですから、そういうことをする時期に来て、結論から言えば、今までのそのままの延長、その延長というのは今の緊急事態という意味ではなくて、同じことを続けるということでは私は無理で、質的にもいろいろ変える必要がある時期に、ちょうどいい今時期に来ていると思います。
  10. 山本順三

    委員長山本順三君) 続いて、倉持公述人
  11. 倉持仁

    公述人倉持仁君) 私、実際にこの第三波で患者さんを診察して、三百五十名ぐらいコロナ患者さん診察したんですけれども、やはり多くの方がコロナの友人と飲食をしたと言うんですね。二時間、三時間、久しぶりに会って、相手の家に行ったり、あるいはお店に行って、そうしたら大体みんなうつっているんですね。あるいはコロナの方と温泉に旅行に行って車に同乗したとかですね。ですから、長い時間コロナの人と一緒にいれば、これは普通にしていれば、例えばこの議場でも、コロナの方が三人いたときに、徹底的にそれでもうつらない体制になっているのかどうかと。  これ、病院ってそういう視点で考えるんですね。子供であろうが老人であろうが、院内感染を起こさないためには、基本的にはお願いベースではありません。絶対に起こさないためには、つい立て設置をし、それから換気扇なんかも、建築士の方に聞くと、三年間換気扇を掃除しなければ換気能力は半分以下に落ちるそうですね。そして、換気が大事と言われていながら、実際どのぐらいの換気扇の能力が付いていて、そしてそれがちゃんと掃除等もしているのかと。そういったところの視点で実際今までやってきていないと思うんですね。  つい立て設置も換気の基準を設けることも、これは私権の制限には当たらないと思いますので、それでいて、かつ飲食店を救う方法になり得る可能性がありますから、是非、まず、エビデンスがどうしてもないのでやりにくいというところはあると思うんですが、今は百年に一度の国難だと思うんですね。我々を含め、我々医療従事者も、患者さんが来なくなってもうやっていけなくなりつつあるところもたくさん出ています。これ飲食もそうですし、そういう方はたくさんいるので、我々もう命懸けなんですね。私が一生懸命PCRの機械買ったり病棟買ったり借金してやっているのも命懸けだからですよ。これをやって、みんなのためにならなければ、私、生きていけませんから、そういうつもりでやっているんですね。  ですから、是非そういった視点で対策を、できることを恐れずにやっていただきたいと思います。
  12. 馬場成志

    ○馬場成志君 ありがとうございました。  続きまして、これら、今、日本でもワクチン接種が始まってきておるわけでありますし、総理も訪米を迎えて本日一度目のワクチン接種するというようなお話でありますが、両先生に、医療に携わる人としてワクチン接種についてどのような期待と希望を持っておられるか、お尋ねしたいと思います。
  13. 尾身茂

    公述人尾身茂君) お答えします。  私は、ワクチンについては三つのステージで考えたらいいと思います。今は医療従事者の方が打たれていますよね。それで、それによって何が、どういうことが起こるかというと、今盛んに話題になっている副反応というのがどのぐらいあるのかということが欧米等の情報との比較で分かるということと、それから今、倉持先生なんかが、実際に患者さん診ていただいている医療従事者が、やはりそれなりの安心感、安全感というのは今まで以上には、マスクの上に更にもう一度プロテクションのレイヤーが出るということで、非常にそういうことがいい。  次に大事なのは、セカンドステップというのが私は非常に重要だと思いますけれども、これで、高齢者及び基礎疾患を持った人たちが打つことになって、その人たちがある一定程度の、どのぐらいの人が実際に打つかどうかは分かりません、希望者がいるか分かりませんけど、私の予想というか判断は、高齢者の方はかなりの人が接種を希望すると思いますが、このことによって、実はこれだけ、去年からずうっと多くの人、日本社会全体が非常に不安を持って過ごしてきたこの一年ちょっとですよね。これ、なぜかというと、先ほど倉持先生の話で、ほとんどの人は感染していないのになぜこれだけのエネルギーと心配とをやってきたかというと、これは重症化して、非常にこのコロナの肺炎は普通の肺炎とは違う、こういうのが、あっという間に亡くなってしまうという、これは人間としての当然の恐れ。これがそんなには起きなくても起きたということで、それに対して今何もないわけですよね、個人が。  ところが、ワクチンということで、これは私の今の判断では、このワクチンは優れ物です。私は優れ物だと思います。したがって、高齢者が打つと、かなりの人たちはそれで重症化予防が、このことが人々の意識を変えると思います。  そういうことで、第三の若い人になると、これでどれだけ感染のレベルを落とすかどうかは少しまだ、そういう、ということで、私はこれがなるべく早く、だから今、河野大臣がやっていただけている、こういうことで早くみんなに行き渡ることを願っております。
  14. 倉持仁

    公述人倉持仁君) 早くファイザー製のワクチンが手に入るといいと思うんですが、一つ大事なことは、やはり変異株との問題ですね。  これは、必ずモニタリングをして臨床データとリンクをさせてワクチンが効くのか効かないのかという検証をしていかないと、例えば日本国内で日本独自の変異が起こってワクチンが効かない株が出てしまったときに、果たして海外のメーカーにその製造を委託していて、シェアの小さい日本に向けてだけワクチンを例えば作ってくれるのかとか、そういう危機管理の問題にもつながってくると思いますので、そういう視点も必要だと思います。
  15. 馬場成志

    ○馬場成志君 ありがとうございました。  先ほどから先生方のお話の中で、多くの病院にまた役割を果たしていただくであるとか、あるいは現場の感覚で私どもにお聞かせいただかなければならないことをお尋ねしようと思っておりましたが、時間がもう迫ってまいりました。ほかの委員からの質疑の中でもまた出てくるかというふうに思いますので、よろしくお願いを申し上げます。  また、お二人の先生とも大変な激務であろうというふうに思いますので、先生方がまた活躍していただかなければこの収束に向けて大変困難が出てくるというふうに思いますので、お二人とも健康にしっかりとまた注意していただきながら御活躍いただきますようによろしくお願い申し上げて、私の質疑を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  16. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 おはようございます。立憲民主・社民の森ゆうこでございます。  今日は、お二人の先生方、大変貴重なお話ありがとうございます。尾身先生におかれましては、毎日、専門家とそして政治家をつなぐというか、大変な役を務められていらっしゃることに敬意を表したいと思います。また、倉持先生におかれましては、臨床現場でまさに命懸けでということ、伝わってまいりました。本当にありがとうございます。  それで、端的にお聞きしますけれども、倉持先生は、この緊急事態宣言、解除してもいいかどうか、今見解をお持ちでしょうか。
  17. 倉持仁

    公述人倉持仁君) 緊急事態宣言の解除については、私は一医者なのでその判断はできないんですが、感染拡大を、拡大の方向に持っていってしまうという点では、これは解除すべきではないと思います。これは医学的な立場からの意見ですね。  ただし、大事なことは、先ほども言いましたが、今でき得る今までの知見を基にした対策、つい立てとか換気だとかあるいはマスクの義務化を条例でもいいから作るとかですね、お願いじゃなくてそういうのがあると現場では困らないんですよ、少なくとも。一人そういう患者さんが、俺はマスク着けないという人が入ってくるだけでもう現場は疲弊して疲れてしまうので、罰則は別としても、そういったものがあると我々もやりやすいという点はありますので。そんなところです。
  18. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 ありがとうございます。  先生のおっしゃるとおりだと思うんですね。何か、政府、政権からはもう打つ手がないというような話が聞こえてきますけれども、いや、私たちからすれば、いろいろ今ほど倉持先生がおっしゃったようなことを提案しているんですが、なかなか受け入れてもらえないというものがございまして、まだまだ打つべき手はあるというふうに私も思います。  院内感染お話がありましたけれども、三密といっても、何というのかな、接触、そして飛沫、エアロゾル、この三つの要素があって、私は、去年、もう一年前からダイヤモンド・プリンセス号の経緯も踏まえて、やはりエアロゾル感染、相当注意を払うべきではないかということをこの予算委員会でも申し上げてまいりましたし、またダイヤモンド・プリンセス号のそのエアロゾル感染可能性ということについて新しい論文も出ているわけでございます。  今、変異株が早晩主流になるであろうと。感染力が強い、ただでさえこのコロナウイルス、これだけみんなマスクしているのに、インフルエンザは二桁、一か月二桁しか発生していないにもかかわらず、これだけみんなが気を付けているのにコロナウイルス感染症がまだまだ多数あるということは相当な感染力だと思いますので、やはりこのエアロゾル感染、その防ぐための換気扇、高性能の換気扇飲食店中心にしっかりと付けてもらう、そのための補助金、そういうことも去年から提案しているんですけど、これがなかなか実現してもらえないんですけれども。  倉持先生のところは院内感染がほとんどないということで、やっぱりこの換気扇、この重要性が何よりも必要であるということだと思いますし、それから、変異株ということになると、やはり満員電車というのはどうなんだろうと、ここはみんな議論を避けているところなんですが、その点について何か御見解があれば倉持先生のお話をお聞きしたいと思います。
  19. 倉持仁

    公述人倉持仁君) 今の、正直、その満員電車というのは、結局、コロナウイルス感染するしないというのは、その面積、体積、空気のある量の中に何人の人が入るか、そしてそこに何人のコロナの方が入ってくるか、そして、もうちょっと言うと、その一人一人がウイルス出す量が違ってくるんですね。ですから、これ自院でPCRをやっていると、どのぐらい、この人こんなに出しているんだとか出していないんだとかというのと臨床症状と比べることもできるので、最近それを調べているんですが、そういう状況によって大きく変わってくるんですね。  ですから、一人しかコロナの人がいなくて、一人しかお客さんいなければ、それはうつりません、離れていれば。ただし、それが満員電車になれば当然うつる可能性が出てきますから、そういったことこそ是非、「富岳」等でもし計算ができるならば検証して、必要であればやはり人数制限をするとか窓を開けておくとか、きちんと科学的なデータをある程度取った上で検証をして、そしてその効果を見るということが非常に大事だと思いますね。  結局、そういう検証する方法を持たないままいろいろな施策を打って、結果、感染したんだかしないんだかよく分からないという状況が続いているかと思いますから、せめてそういうプロジェクトを組んで、勇気を持って、限局的でもいいからそういう取組をすべきだと思います。
  20. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 ありがとうございました。  尾身先生に伺います。  今、倉持先生からお話がありましたが、科学的に分析をして、その実験をして、そのチームをつくって、もう少し具体的な、科学的な情報が、分かりやすい情報が国民も欲しいんです。ただお願いでマスクをして三密を避けて、もうみんなやっているんでね。もっと科学的に、新しい機器も使ったりしてその対策ができるものがあるということは、まあ我々も言ってきましたし、臨床現場の先生もおっしゃるわけですから、なぜそれが政府でできないんだろうかというふうに思います。  その点について是非先生の御見解と、そして、治療薬なんですけれども、いろいろ臨床現場で先生方がお使いになって、イベルメクチン、安い国産のお薬が、まあ使ってもいいということを答弁はされているんです、厚生労働大臣。しかし、医療救済制度にまだ入っていないとかそういう問題もありますので、早く、この一年間で分かって、完全に、その特効薬はまだないと思いますけれども、今、既存のお薬で、日本人が手に入れやすく、安価で、そしてそれなりの効果があるものは積極的に、特例承認の追加でも結構ですので、そういうふうに治療ができる体制を私はつくるべきだと思いますけれども、倉持先生、そして尾身先生、いかがでしょうか。
  21. 尾身茂

    公述人尾身茂君) 森先生の、一つは、いわゆる科学的な検証を基にエビデンスベースドの対策を打った方がいいと、これはもう私は大賛成で、これはもう、と思います。  それで、じゃ、なぜできないのかというのが先生の、少しずつやっていると思いますけど、これはほかのいわゆるPCRのキャパシティーをどう増やすか、あるいは保健所の機能をどう増やすかということは、これはもうかなり前から指摘されていて、少しずつ改善しているけれども、なかなか思ったほどのスピードでいかないというのは事実ですよね。全く進歩がないということではなくて、いろいろ。  で、私はそこは時々政府の方とも率直に意見交換して申し上げているんですけど、これはなかなか、こういう問題で、まあこういう席で申し上げるべきかどうかは分かりませんが、一つ課題としてあるのは、昨日も私、国会で呼ばれたとき申し上げたと思いますけど、今はこれは非常にしたたかなウイルスと今対峙しているんですよね。で、どんどんどんどん動きが速いウイルス、これは明らかに今、変異株のこともそうですけれども、感染のボリュームが全然去年とは違って、そういう意味ではかなり早い対応をしなければいけない。  ところが、いろんな、例えば今の検証の問題というのは、つまり、リサーチクエスチョンというものがありますね。先ほど倉持先生の方から、症状がなくても、実は軽い症状、私どもは実はいろんなリサーチクエスチョンを持っているんです。これを知りたい、発症する前にどんな前駆症状があるか、これが分かると。  そういうようないろんな課題があって、やるべきことあるんですけど、実際に、我々は提案する立場ですけど、それを実行してやるのには、いわゆるPCRのキャパシティーの強化といっても実はいろんなところに改善する余地があって、紙を書けばすぐ行くというわけじゃなくて、民間の人とどうネゴシエーションする、サプライヤーとどうネゴシエーションする、一般の人をどう仕組みの中に入ってもらう、仕組みをこれは誰かが専属してやらなくちゃいけないんですけど。  私が官僚群とは毎日のように会っていますけど、官僚群はもうこれはいろんなことをもうやっていますから、誰かが一人それに集中して、朝から晩までそれをやってモニターし、どうなっているのかと、こういう言ってみれば平時じゃない、まあこれは言葉は悪いですけど、今戦っているわけで、これ、ある意味では、言葉はちょっと語弊がありますけど、理解して、軍、まあ軍隊というと、こういうことはそういう戦いのモードでやらないと駄目なんですけれども、やっぱりみんな忙しいし、そこでそれぞれいろんなもう忙しい。大臣が国会で言えば、その準備、記者会、こういうことも含めて、もう官僚群はかなりもう時間を取られていて、誰かが一人この問題、あの問題に特化してやるというふうにはなっていないというのは私の、もちろん官僚群、日本の行政、優秀ですから、そういう中でもやっていてここまで来ていると。  だけど、その改善の余地があるという意味では、もう少し仕組みを、今のリサーチの方もそうです、それから治療薬の方もそうです、全て誰かが特化して、朝から晩までそれをフォローして、必要だったら大臣、総理にやって指示を待って、そういうアクション、非常にスピーディーなアクションというところには必ずしも。それは、だけどサボっているんじゃなくて、今のそういう仕組みになっているという、そこが私は非常に今の難しさのリアリティーを表していて、言うはやすし、だけどみんなもう目いっぱいになっている。  で、それをどうするかというのが、これから少しみんなで考えていったらいいと思います。
  22. 倉持仁

    公述人倉持仁君) 私の、治療薬の話ですけれども、実際にオルベスコというお薬が、ぜんそくの治療薬なんですけれども、これが最初効くんじゃないかということで使われていたんですが、実際には抗ウイルス効果はなかったと。ただし、我々臨床現場で見ていると、ぜんそくの治療をしている人はなぜか軽く済んでいるような兆候があるんですね。それで今、全例、コロナにかかった方、今四十例ぐらいですけれども、その検討をしているところです。いずれ論文化できると思うんですけれども。  ですから、先ほどのお薬のように、使用経験があって、ある程度安全性、効果は分からないかもしれないんですけれども、イベルメクチンですね、そういった薬に関しては、安全性はある程度分かっているわけですから、勇気を持って積極的にバックアップをしてあげれば、実際そんなに大きな副作用等ないと思いますから、早めに臨床に使ってみて、駄目であったら引き揚げるというような方法もこの緊急事態のときにはあってもよろしいかと思います。オルベスコが同じようなことでしたので。
  23. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 ありがとうございます。  改めて、非常、緊急事態と国民には言っておきながら、政府は平時の対応で、厚生労働省の官僚も本当に頑張っていらっしゃるんですけれども、今やらなくてもいいこと、例えば病床の削減やっているわけですよね、地域医療構想で。それに何百億も予算を付けて、本当にちぐはぐだと思うんです。これ、本当に政治の責任だというふうに思います。  分科会なんですが、私の認識では、倉持先生のような、実際にこの一年間、臨床現場でいろんなノウハウを積み重ねてこられた、実績を上げてこられたそういう先生が入っていないんじゃないかなと思うんですけれども、私はこの一年間の現場臨床の貴重な命懸けで積み重ねてきたそういう経験を政府の分科会、諮問会議等に生かすべきではないかと思うんですが、尾身先生、いかがですか。
  24. 尾身茂

    公述人尾身茂君) 分科会のメンバーは私が決めたのではないということがまず一点で、それから、分科会には臨床科の先生もおられて、私は、いろんな現場の先生、分科会にいない先生たちがどういうことを発表したり考えているということは、かなりみんな情報交換して、ほとんど毎日のように情報交換して、こういう意見があった、こういうということ、ということは十分当然我々は理解しています。なるべく、当然のことながら、分科会のメンバーは限られていますから、私としては、専門会議から分科会に移るときも申し上げましたけれども、やっぱり分科会の数は限られていますから、それと外にいる人たちとどうやって情報を適宜交換できるような仕組みというのは、これ仕組みとしてつくった方がいいと思う。  ただ、実態には、正式な仕組みはなくても実態的には我々はかなりの情報を今得ていますので、ただ、本当のことを言えば、その正式な仕組みがあって、何もしなくても自動的に、適宜、全部の会議を、分科会を、そんな二百人も三百人というわけにいかないので、いい仕事、いい何かそういうものがあれば、適宜そういう人の意見を収集するという、それは当然のことだと思います。
  25. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 ありがとうございました。  緊急事態宣言を解除してこのままのやり方でやって、そして再び、国民保険保険証一枚あればいつでもどこでも誰でもこれは世界に冠たる国民保険、第三波で本当に崩壊の危機にさらされましたが、二度とそういうことがないようにまた国会でもしっかりと提案していきたいと思います。  先生方、本当にありがとうございました。
  26. 若松謙維

    ○若松謙維君 公明党の若松謙維です。  尾身先生、そして倉持先生、本当に御両人、もう命懸けでの闘い、本当に心から敬意と感謝を申し上げます。  まず、尾身先生に二問御質問させていただき、同じ、関連ですけど、ちょっと角度を違って、倉持先生、お願いしたいんですが。  今月の五日ですか、尾身先生が一都三県の知事に対しまして、リバウンド防止対策強化のための七項目の対策を発表されました。その一つが拡大の予兆への迅速な対応ということで、この予兆というのをどうやって見付けるのか、結局はPCR検査だと思うんですけど、それが一点。  もう一つは、高齢者施設への感染対策ということで、総理も、三万の高齢者施設検査を行う旨を記者会見で発表されていることであります。ここは何か、検査は何でもいいと、PCR、抗原定量、抗原定性ですか、というこの国の考え、どう思われるのか。やはり、今のPCRが一日十七万の能力がありますので、やっぱりPCRでしっかりやるべきじゃないかと、そう思うんですけど、尾身先生のお考えをいただきたいと思います。  その上で、倉持先生はもう臨床で、本当に現場で、私、郡山なので、毎日宇都宮駅通りながら先生のクリニックに何か合掌しながら新幹線乗っているんですけれども、いや本当に。ですから、このPCRも、先ほど、無症状だから検査しないのはナンセンスと、ところが全員もできない。そこのあるべきPCR検査臨床の立場から御意見いただければと思います。よろしくお願いいたします。
  27. 尾身茂

    公述人尾身茂君) まずは、予兆という、これから少しまた感染が必ず、これゼロになりませんから、こう上がる。あえて比喩的に言えば、小さな山はこれからも起きますよね、毎日、数が全く一定ということはないので。我々は、小さな山はもうこれは織り込み済みということで、大きな山を減らしたいわけですよね。  実は、大きな山になってからでは遅いので、サーキットブレーカーという考えをして小さな山をどう探知するかということで、それは先生、PCRというのは重要な武器ですけど、これは我々は、PCRだけで判断するということは、これは総合的で、ほかは何かというと、実は疫学的な感覚というのは極めてPCRと同時に重要でして、例えば、これは今我々がそういうふうにいろんな仮説を立てて今やっていますけど、新規感染者の立ち上がりというのは当然重要ですよね。特に、解除というときには医療体制というのはより重要になりますけど、上がる方はどうしても感染の動向がより重要になってきますから、それをいち早く見るのにはどういうことがいいかというと、実は新規の感染者だけを見ているよりは、むしろ年齢別の新規感染者の動きということを見ることが一つ重要。それから、もちろんPCR陽性率というのはもう当然ですよね。それからもう一つは、やっぱりリンクの追えない割合というものも、絶対数も含めて、これはやっぱり初めの、になると、どうしてもそういうことになる傾向がありますね。  そういうような、先週と今週の比をやる、これは実効再生産数と近いですから、そういうものを総合的に見て、それは国が見てもしようがないので、地域が見ないと遅くなりますよね。そういうことを今各地域でやっていただいていると思いますから、何か早くあればその状況をみんなにシェアして、それ以上行きそうになったらたたくということが必要だと思います。  それから、二つ目の御質問は高齢者施設でのPCRのことですよね。高齢者施設でやるのは、今もう私どももかなりお願いして、結構、高齢施設でのいわゆる従業員に対する定期的な検査というのを各県で始まっていますが、そこで行われているのはPCRが多いと思います。  そこで、抗原検査をどうするか、抗原のいわゆるキットをどうするかということで、これについては様々な意見がありまして、実は、PCRと抗原検査を両方やるというところもあるし、PCRだけというところもあるし、抗原検査キットだけというところもあって、これは実は、御承知のように、抗原検査キットだけでやると、しかも感染リスクが低いところでやるとどうしても偽陽性の問題が出てくるので、これをどうするかというので、もう少しここはこれからの知見も含めて、ただ、有症者については、抗原検査というのはうまく使えば、時々はPCRのサポートも得てやれば私はかなり有効ではないかというふうに思います。
  28. 倉持仁

    公述人倉持仁君) 私の方からは、PCRの、特に無症状の人という話、無症状感染者PCR検査を余りしても意味がないというのが当初、第一波のとき言われていましたが、実際に患者さんを診てみると、無症状なのは当たり前のケース。これはつまり、濃厚接触者と言われて、隣の席の人がコロナだったからということで検査に来た方というのは、当たり前ですが、接触をして大体平均中央値五日間ぐらいで、一日から十日間ぐらい潜伏期間があると言われているんですが、その期間内にいらっしゃるんですね。つまり、症状がないのは当たり前なんです。そして、その五日間から、発症する段階から重症化する方もいれば急速に悪化する方もいるわけで、まず、その濃厚接触者だよと言われた方が無症状なのはある意味これは当たり前です。  それから、今度、コロナ患者さんを診てみると、二波まではよく分からなかったんですが、三波で四百例近い患者さんを診て、症状はインフルエンザのように単純では全くありません。熱があった方も一部いますが、熱があるということは、データを解析してみると有意差等はございません。つまり、腹部症状で下痢をちょっとしていたとか、鼻水がそういえば三日前ちょっと出たなとか、あるいは言われればちょっと味が変かなとかという患者さんの中にも、コロナの方というのはたくさんいらっしゃるんですね。  ですから、まずはそういうデータ軽症者を含めてデータの蓄積がまず日本にはないんです。で、大事なことなんですが、コロナウイルスってウイルスだけが怖いわけじゃないんですね。そこに日本人の免疫と合わさって、そのデータがリンクすることで初めて日本人がどうだこうだということが言えるんですが、今まで残念ながらPCR検査が熱がある方だけとか重症化した方だけということをやっていたので、そういうさらなデータがないんですね。ですから、まずそういったことは真摯に集めてデータを集めるということと、それから、あとは、なぜかよく分からないんですが、これ地域差があるということ。  それから、大きな問題だと思うのは、学校等で感染者が出た場合に、残念ながら誰が感染者か教えてもらえないんですね。我々、どうしても医療関係者ですので、そこからの拡大を防がなきゃいけないと思いますから、そして、たとえ子供が親には余り移しにくいとかって海外の論文で言われていても、我々医療現場で見ている者は、いや、そうじゃなかったらどうするんだという視点で、やはり積極的に検査をしたり調査したりとかということをしたいんですけれども、実際にはその辺の法整備がしっかりなされていないので、どうしても誹謗中傷の問題等もあって明かされずに、何となくうやむやにされていてと。  そして、一方、変異種で子供たちへの感染力が強いんじゃないかなんということが出てきていますから、やはり感染対策というのは、その場その場、場当たり的なものではいけなくて、原理原則は守って徹底して行って、まずデータをちゃんと出すと、そして日本データとして得られたものを基に戦略を変えていくというのが正しいやり方だと思いますので。  少なくとも医療においては、何らかの症状で、例えば頭痛のこともあります、熱がなくて。あるいは、ちょっと下痢をしたことでもコロナのことがあります。あるいは、霜焼けがひどくなったといってコロナで来る方もいるんですね。ですから、症状だけでは正直分かりません。そして、重症化して肺炎を合併したときに初めて熱が上がり、呼吸状態で酸素の数字が悪くなりますから、そういった方は当然誰でも気付くんですけれども、その前の段階で発見をすること、診断すること、そして、しっかりと隔離に協力をしていただきながら経過観察をすることで、重症化しそうな段階で早めに治療に介入するということで、もうほとんど死なない病気にはなってきたんですね。この前、九十何歳の方も助かったなんてニュース出ていましたけど。ですから、とにかく早く検査をして早く保護をして経過観察に入る体制づくりということをしていただきたいと思います。
  29. 若松謙維

    ○若松謙維君 ありがとうございます。  それでは、変異株について、尾身先生がたしか外交という本の中で、入国制限などをしっかりした水際対策が非常に重要と発言されておりますが、それ以外に、この変異株ですか、蔓延防止策として国内で取り得るべき肝的な手段が何かということをお尋ねしたいと思います。  あわせて、倉持先生にも同じくこの変異種の解析ということで、研究開発費の補助が急務だということなんですが、先ほど尾身先生も、今官僚の皆さん大変な仕事、いろんなことしながら、だけれども、責任、何というんですか、明確化とかスピードとかいろいろ課題があると。  やっぱりこれ、感染症専門家が少ないんじゃないかと。現場には臨床の先生いっぱいいらっしゃるんですよね。ところが、そこら辺生かされていないのか、ちょっとその点も御両人にお伺いしたいんですけど、済みません、もうあと五分なのでよろしくお願いいたします。
  30. 尾身茂

    公述人尾身茂君) 変異株についてはもう多くのことを語る必要がないと思うんですけど、大事なことは、今、国の方は各地域で最低五%から一〇%の陽性の中で変異株検査していただきたいということですけれども、私は、この五%、一〇%というのは最初の段階として、で、もうほとんどそこクリアしているんですよね。そういった中で、やっぱり私はこのパーセントを、何%とかはあれですけど、この一〇%では、迅速にディテクトすることが重要ですから、もう少しパーセントを上げた方がいいと思います。  それから二番目は、感染者の、先生の質問は……。
  31. 若松謙維

    ○若松謙維君 先ほど、医療従事者がチームにいるでしょう、厚労省のコロナ対策室に。
  32. 尾身茂

    公述人尾身茂君) ああ、分かりました、済みません。  ここは、私は、実は臨床の先生だけじゃなくて、もうこれは保健所も、もういろんなところが目いっぱいです。そういう意味では、全国にいる医療関係者、これは臨床の先生も公衆衛生の人も、必ずしも全部の都道府県が同じように感染のレベルではないわけですよね。ここは、こういう、ふだんのときには行政というのは各自治体で分かれているわけですけど、こういう今のような非常事態では、現場でいる先生たち、厚生省の例えば臨床科の先生で少し時間がある、あるいはどこかの大学の公衆衛生教授にいる人、あるいは大学病院研究している人、こういう人がたくさんいるので、そういう人たちも実は手助けして、そういうシステムが、IHEATというのはあるんですけれども、それは臨床科の先生、看護婦さんや含めて、医療人材は限りはありますけど、全国にいるそういう人をどう動員していただくかというのは、これは国のリーダーシップのものだと思います。
  33. 倉持仁

    公述人倉持仁君) 実際、今私どもは栃木県の株の四百株を国立遺伝学研究所に送って検査お願いしていて、そういった機関ではもう一気に数千の検体をばばっとシークエンスできる体制、機械は持っていらっしゃるんですね。ただし、お金と人がないんですね。そして、国で決められた予算内での研究しかできませんので、実際我々がお願いしている今の変異株の検索というのは、もう緊急の事態で必要だからといってお互いお金出し合ってやっているような状況なので、正直余り進んでいないんですね。  こういったことというのは、至急何かそういう、もう本当に、今PCR検査も正直コストはかなり安くできるようになってきているんです。一検体、コスト、原価でいえば二千円ぐらいです、物があって、そろえばですね。ですから、数が増えれば増えるほどコスト下げることできますから、是非これは国に、国に本当はやっていただきたいんですけれども、そういったことを見直すことと、そして、それを感染研などできちんと集約、データをさせて、先ほども言いましたけど、コロナ診ている方々と全く怖くて診ていないという方の、医療者の中でも相当ギャップが先生御指摘のようにあります。ですから、そういった方にお願いあるいは協力を要請して、是非そういうオールジャパンでコロナ対策できる、変異株を含め、そういう対策つくるべきだというふうに思います。
  34. 若松謙維

    ○若松謙維君 ありがとうございます。  今、予算が少ないと、で、予算消化主義というんですか、これだけ大変なのに。是非、尾身先生、予備費いっぱいありますので、どんどんどんどん必要な研究、今は戦時中ですので、要望していただいて、我々も与野党共にしっかり応援していきますので、引き続きの現場での御支援をよろしくお願い申し上げまして、終わります。  ありがとうございました。
  35. 石井苗子

    石井苗子君 日本維新の会の石井苗子です。  両公述人の皆様、お忙しいところ、本日は高貴な御説明をしていただきまして、誠にありがとうございます。  私は、大学で疫学・予防保健学を専攻いたしました。今率直な感想を申し上げますと、やはり、この国はやはり科学的なデータの取り方をしていないということと、国民の皆様が科学的なデータに基づいて理解をするという基礎的な体力といいますか、そういうものが欠けていると。皆様、SNSなどを御自身でいろいろ調べて、場当たり的な一喜一憂をしているような気がいたします。  一方、ヨーロッパやアメリカなどを見ますと、尾身先生がおっしゃったような感染症対策という専門家がたくさんいらっしゃって、それ専門に一人が一日中それを関わって司令塔になると。また、臨床の場合でも、その臨床との連携を取って、先を見越して対策を取っていくという形ができていると思うんですが、日本はやっぱり場当たり的であると思います。  そこで、個人、国民の皆様にしてみれば、こういった今日の様子を伺って、一体自分はいつ感染していて、いつほかの人にうつしているのか、それが分からないという、まあしたたかなウイルスだと尾身先生がおっしゃいましたが、ここが国民の皆様の一番の不可解な点であって、不安な点だと思います。  それで、私は国際的な動きを知ることが必要なのではないかと思っておりまして、その疫学的な観点からいきますと、ウイルスというのは、いろいろ変異株でイギリス型とかブラジル型とかいろいろ言われておりますが、ウイルスはそのウイルス次第で増えていったり減っていったりするものであって、この変異株というのが日本型なのかどうなのかとか、今そういうような議論もなされておりますけれども、私はやはりどこかの国で増えたら、株が増えたら必ず日本にも来るんだと思うんですね。  だから、南半球、北半球で見て、どこかで増えるという国際的に増えたその予兆を、まるで天気予報のようにキャッチして、必ず来るんだということをまず国民の皆様にお知らせをして、その後、その予兆を知るために国際的な動きをデータで示した後、その後、その重症者の数をしっかり抑えていくんだという対策を取って小さなパンデミックで抑えると。大きなパンデミックにならないということが必要だと思うんですね。フランスではもうウイルスがすっかり入れ替わっているとか言われておりますけれども、だったら日本でどうするのかという対策が必要だと思います。  今後、そのウイルスがどう変化するかというのは誰も分からないのだということをお二人の先生からおっしゃっていただいて、公衆衛生学の一般的な見地からひとつお答えいただきたいんですが、ワクチン接種のやり方からいけば、接種した人が今後、接種した人が今後重症なコロナ症状に陥った場合、このときに、公衆衛生学的に見て、ワクチン接種を中止して、すべからく早く、早い時点で日本製のワクチンに切り替えるのか、それとも、公衆衛生学的な一般的な考え方からいくと、取りあえず今あるワクチンを全員に打つのか。  この二点、ウイルスはどう変化するのかは誰も分からないのかということと、世界的な変異があった場合には水際で対策するのかということ、これに対するお考えと、最後の、ワクチン接種は最後までやるのか途中で止めるのかどちらがいいとお考えかということにお答えいただきたいと思います。順番はどちらからでも。
  36. 尾身茂

    公述人尾身茂君) まずは、石井先生のワクチン変異がどうするかどうか、分かるのか分からないのかということですけど、私はそれを分かるためには、やるべきことは比較的はっきりしていると思います。  それは、まずは先ほど申し上げましたように、陽性者がいないと検査できませんから、陽性者がいたらそのかなりのパーセント、それは、一〇%じゃなくて、変異株かどうかやる。それから、当然必要だったらそのゲノム解析もやるということで、遺伝子的な分析PCRのレベルでやる。それと実際の疫学情報。  これ三つの要素が、まずは遺伝子の、PCR検査をしっかりやる、それから疫学情報、どういうふうにして感染が広がった、これは臨床とは違いますね。それから臨床の症状、その三つをリンクさせた情報の共有というのが、これは日本も今少しずつやっていますし、先ほど臨床の方の、先ほど森先生の方で、全くないということを、少し遅いんじゃないかということで、実はもう厚生省で、日本、国際医療センターを、入院の人はもうレジストリーということでかなり情報を、もう少し症状の軽い人たちの方の全国的なあれというのは今だんだんと情報を集めているというところで、少しずつ行っていると思いますけど、まあそういうふうにして、しっかりとこの変異がどういう影響を、感染の伝播、それから臨床ですね、重症化するか、そういうことをしっかり見極めるということは極めて重要だと思います。  その上で、国際的な方は、もう当然のことながら、今、どこで、ブラジルであれ、あるいはあれでも、それは結構モニターをしていますので、どこでどういう変異株が起きているかというのは、これはリアルタイムに近い形で情報を、それによって、必要だったらそこのところの水際を更に、今もかなり強化していますけど、強化する。  そして、最後に、ワクチン接種を止めるかどうかということですけれども、これは、言ってみれば、そういうふうに、先ほど言った疫学、臨床、遺伝子を解析すると、ここでワクチンが効いているかどうかというのは、ワクチン接種した後の効果というのはすぐには分かりません、これは。すぐには分からないんですけど、ワクチンを打った後に感染するというのは、ワクチン打った後にすぐにそのことはできませんので、少しこれは時間が掛かりますが、いろんなところで、どうもこのワクチンを、変異が起きているということが分かって、ワクチンの効果が怪しいというふうに仮に判断されたときには、当然、今ももう既にいろんなメーカーはこのワクチンの免疫逃避ということを想定して次の技術をもう考えていますので、そこはそういうふうになったらやるんでしょうけれども、一つここで申し上げたいのは、これはなかなか、ワクチンを打つことによってまた変異株がよりドミナントになるというのをこれまた助長するというところがある、そういう部分もあるんですよね、難しさが。  そういうことがありますけれども、私は、今先生の御質問の中の一番重要な答えは、しっかりと、今の変異株がどういうふうな臨床的、疫学的な影響を与えるのかということで、ワクチンが、打った人がどうこうというのは今すぐには、まだ打っていないので、これについて判断するのは今はなかなか、変異株のモニターしたところでそれはなかなか今のところは難しいと思います。少し時間が必要かと思います。
  37. 倉持仁

    公述人倉持仁君) まず、世界のデータ変異株などの情報、それからさらには対策であるとかどんな治療薬が使われているかとか、そういったことはやはり逐一、逐次専門の部署でやはりすぐに情報が入ってきて、有効であれば検証に入るというような体制づくりというのは、やはり今後必要になってくると思います。  それから、変異株の起こり方が分かるのかというのは、これはいましばらくは分かってこないと思います。なぜあるポイントだけの変異が多いのかとか、そういったことは気付いてきたんですが、何でだかはまだよく分かっていないんですね。ですから、それはこれからのやはりデータの蓄積が必要なのと、それから、ワクチンが効くのか効かないのかというのも、そもそも、ファイザー製のワクチンは諸外国では効くというデータがあるだけなんですね。日本では、先ほども言いましたが、感染者は〇・三五%しかいませんので、同じファイザーの治験を日本でやったとしたら百万人以上の方で治験を組んでやっと有意差が出るというような状況なんですが、そこを緊急承認という形で、いや多分効くんだろうということで今打っているんですね。  一方、変異株が出てきていますから、当然、ワクチンが効くのか効かないのか、どのぐらいまず広がっているかもまだ分かっていませんから、それをきちんと調べた上で、じゃ、その変異がある、たんぱく質がどういったものが作られて、実際にそのファイザー製のワクチンが効くのかどうか。例えば、これは、南アフリカはアストラゼネカのワクチンは効かないのでといって早い段階で他国に譲るというようなことをしています。あるいは、諸外国ももう次のワクチン作り出しているわけですね。そして、日本としても、国内メーカーがあるわけですから、そういったメーカーさんにも資金投入をして、もし日本だけで変異株が出た場合にもきちんと国民を守れるような体制というのは、これは先生がおっしゃるとおり、そういったことは大いにやっていただきたいと思います。
  38. 石井苗子

    石井苗子君 ありがとうございました。  分からないことは分からないとはっきり言ってほしいという国民の皆さんの気持ちもあると思います。因果関係と申しますか、そういったものも理解できるような新しいリテラシーというものをつくっていくのは大変重要だと思っております。  今ワクチンお話がありましたが、国民の皆さん、ワクチンを打ったとすると、どういうことが体の中で起きているのかと思われるわけです。人にもううつさなくなったのか、人からうつらなくなったのか、端的にどうなのかと。  そうなりますと、公述人のお二方に、非常に単純な疑問で恐縮なんですが、ワクチンを打った人がワクチン打ったのに熱が出たなと思って不安になりますね。こうした場合もPCR検査をして、あなたはワクチンを打ちましたけれども人にはうつす体になっていますとか、そのPCR検査ワクチン接種した人が発熱した場合もするべきなのか。あと、単なる風邪の症状が出たと、先ほどおなかを壊しても分からないよとおっしゃっていらっしゃいました。そうすると、風邪の症状を起こした人でもPCR検査をすることに意味があるのかないのか、国民の皆様にそれをお伝えいただきたいんですが、この二つの質問をさせていただきます。
  39. 尾身茂

    公述人尾身茂君) 今先生の、ワクチンした後に熱というのは、これはちょっと、先生多分おっしゃりたいのは、ワクチンをしてすぐの、接種後のすぐの熱のことじゃなくて、ワクチン接種して、まあ二回やった後、まあ数か月たってその後熱が出たらどうかというお話ですよね、直後じゃなくて。  これは、私は、このワクチン日本ではまだ打ったばっかりだから分かりませんけど、外国の情報等々を基にすれば、このワクチンはいわゆる重症化あるいは発症化の予防にはかなり有効だというふうに思います。ただ、このワクチンを打ったからといって絶対に感染しないかということは、なかなかいろんな意見があってまだはっきり分からないと思います。  つまり、ワクチンを二度打ちました、三週間、その後二か月ぐらいたって症状が出たときに、これが、二つの考えは、ワクチンが打ったにもかかわらずまた再感染したのか、全くほかの病気なのかは分かりませんよね。このことについては、多分これはいわゆるワクチンフェイリアという問題で、恐らくワクチンの副作用と同時に、これはしっかりと国の方がリスクコミュニケーションしないと大きな不安になる原因になると思うので、ここについてはしっかり、ワクチンを打った人に症状が出たときには、当然これ、それについてどうだったか、中にはPCRもう一回やる人がいますよね、そういうことでいろんな情報が分かってくるので、しっかりとこういうこともリスクコミュニケーションの一環で説明を国の方は分かりやすくしていただければと思います。
  40. 倉持仁

    公述人倉持仁君) 今の段階でワクチンについて日本データとして分かっていることは、ワクチンの短期的な副反応は、どうもそんなに、アナフィラキシーがあるけれどもそのぐらいであろうということであって、常にワクチン行政というのは、十年単位ぐらいで重篤な中長期の後遺症というのが問題になってワクチン行政というのが揺らいだ過去が、実績がずっとあるんですね。  ですから、当然そういったリスクも国は念頭に置いておかなければいけないということと、それから、先ほども言いましたが、医学とか科学というものは、ほかの人から言われたものをそのまま信じてやることが医学ではないんですね。当然、ほかの、外国のデータを知った上で自国できちんとモニタリングをしているからこそ、南アフリカのようにアストラゼネカ製のワクチンは要りませんと言えるんですね。  ですから、大事なことは、他人にうつすのかうつさないのか、まだ分かりません。これはやってみないと、発症を完全に抑えるのか、自分は発症しないけど人にうつすこともあるかもしれませんから、当然PCR検査、熱が出れば、我々臨床医の立場からすれば、早く受けて、それもできれば二度、そういった体制をしていくのが国民の人にとって、自分が患者さんだったらそれが一番メリットがあります。やらなければこれは分からないことですから。ですから、そういう視点で自国のデータをしっかり取っていくということが大事だと思います。
  41. 石井苗子

    石井苗子君 時間が来ましたので。ありがとうございました。
  42. 浜口誠

    ○浜口誠君 国民民主党・新緑風会、浜口誠です。  今日は、尾身先生、倉持先生、ありがとうございます。大変お忙しい中、貴重なお話をお聞かせいただきまして、ありがとうございます。  お話聞いていて、やはり、これからこれまで以上に感染対策、量的にも質的にも強化していくことが大事だと、まさにそのとおりだと思います。いずれ緊急事態宣言も解除になって、その後どうしていくかというところが我々国民の側からしても一番大事な観点かなというふうに思っております。  そうした中で、尾身先生、倉持先生、お二人にお伺いしたいんですけれども、政府感染の予兆を早期に把握するという観点からモニタリング検査を二月の二十二日から始めております。ただ、実施規模が日当たり一万件というのが政府目標になっておりますけれども、やはりいろいろな変異株のことですとか、無症状の方、無自覚の方等しっかりと把握していくということからすると、もっと、規模も一万件ではなくて多くしていく、こういったスタンスが必要ではないかなというふうに思っておりますので、是非お二人の先生から、このモニタリング検査の今後の対応として、こういう点をもっとしっかりやるべきだというような視点で御意見がありましたら是非お聞かせいただきたいというふうに思います。
  43. 尾身茂

    公述人尾身茂君) この政府が始めた重点のモニタリング検査ですけど、そのボリュームについてですよね。今、国は一応一日一万というのを目標にしていますけど、実はこのモニタリング検査やるところが、重点検査としたって、今の日本ではそんなに陽性率が高いわけではないので、今少しずつ下がっている、まあかなりの量をしないとピックアップできないですよね。  したがって、この初めを一万人ということをやっていろんな経験を積んで、私は、もう少し増やす、まあかなり増やす必要があるので、これもそのときには、やっぱり行政の機関だけじゃなくて大学とか、これは別に国公立の大学じゃなくて、そういう大学じゃなく私立の大学も含めて、あるいは自費でやっている民間検査も、まあ量が少ないところはともかく、多いところにはしっかりと国といろんな約束をして。そういう民間のところで今多くの人が行っていますので、特に若い人が、そういう人も、陽性の中の、さっきのX%ですよね、今一〇%になっています、これについてはしっかりとやってくださいというような、件数ということが重要で、国のしっかりした数的目標も含めたコミットメント、そのときには数字をしっかり設定すると同時に、今までは民間の人は特に政府とほとんどリンクなしにやっていたわけですよね。これをしっかりとした共通の目標の中でオールジャパンでやるということが私は今求められる。そのためには、強い、誰かが、一生懸命やるという人が中心になってこれを、これはそう簡単ではないですから、ネゴシエーションが必要だし、説得が必要だし、調整が必要で、これはただ紙に書けばいいというものではないので、そのためにはかなりのエネルギーが必要だと思うので、しっかりやっていただければと思います。
  44. 倉持仁

    公述人倉持仁君) 今、例えば入院する患者さんには入院時にB型肝炎の検査とか梅毒の検査とか、これ当たり前にやっているんですね。ちょっと、年間二百万件だったかちょっと忘れちゃったんですけれども、これ、全例に入院するごとに今までやってきたんですね。そして、それはなぜかといいますと、それが院内感染の問題になっていたから国は入院時に義務付けてやっていたんです。  そして、なぜそれに対してコロナで同じことをしないのかなというのは、私、現場にいる者として、特に今、院内感染が非常に問題になっていますから、入院時。それも、大腸がんの検診で検便の検査二回やらないと、これ見落とすんですね。それなぜ二回やるかというと、二回やらなければ見落とすから二回やるんであって、単純な話なんですね。PCR検査もそうなんですね。一回だけやったのでは、ウイルスが出ていない潜伏期間に検査をしたのではウイルス検出できません。これは、偽陰性と呼ぶのはちょっと私は間違いだと思うんですが。いずれにしても、時間を置いて二回検査すればいいだけの話で、コストもその分下げられますから、それが患者さんにとって院内感染を起こさないということにつながりますので。  それから、いろいろな小児領域の感染症では当たり前ですけど、インフルエンザや手足口病、ヘルパンギーナ、いろんな病気が日本全国で五千か所ぐらい定点観測で数字が上がってくるシステムが既にあるんですね。なぜコロナでそれをやらないんですかと。それは、検査が保健所経由で、じゃないと、許可が下りないとなかなかできないとか、実際、私も周りの小児科の先生方に聞くと、ほとんど検査していないですね。  ですから、それはいろいろなそういう問題があると思うんですが、もう普通に検査をして、感染しているんだよということを基にやはり戦略を練っていく必要がありますから、検査を増やすということは、これはコストの問題も含めて、あるいはいい定性、抗原キットなんかもより開発していけばいいだけの話ですので、あるいはコストを下げていけばいいだけの話ですので、これは国策としてやればそういったことは必ずできると思いますから、そういう方向になっていただきたいと思います。
  45. 浜口誠

    ○浜口誠君 ありがとうございます。  続きまして、今日、尾身先生の方からもお話ありましたし、倉持先生もおっしゃっていることなんですけれども、いろんな科学的知見に基づいて、換気の基準ですとかあるいはお店のお客様との距離をどう取るとか、いわゆる、先ほど尾身先生は優良事業者を認定するような制度も入れたらどうかというお話、冒頭していただきましたし、倉持先生も誰が来てもうつさない店というのは科学的につくれるんじゃないかと。そういうことをこれからやっていくのはすごく大事だと思うんですね。単に時短要請してお店に来るなということでシャットアウトするのじゃなくて、感染がある程度、うまくウイズコロナ社会は共存していかないといけない面もあるというふうに思っていますので、こういう考え方をしっかり国民の皆さんにも理解していただくのがこれから重要になってくるのではないかなと私自身は感じております。  そこで、お二人の先生に、今後、そういった飲食店始め、オフィスもそうですけれども、今後こういった科学的知見に基づいて、こういうお店であれば、あるいはこういうオフィスであれば安心して仕事ができる、安心して飲食ができる、こういう基準というのをしっかり作っていく、この重要性について、もう一度お二人の先生から御意見いただきたいなというふうに思います。
  46. 尾身茂

    公述人尾身茂君) 先ほど森先生の方からもマイクロ飛沫というか、こういうことがございましたよね。私は、もちろん接触感染も大事ですけれども、私は、このマイクロ飛沫という、このことがより重要になっているんじゃないかというのは去年の段階で申し、あれは分科会だったか、まだあのときは専門会議だったと思いますけど、そういう認識の下に、実は今、飲食店のことありましたけども、私も、時短をずっと永久に続けるわけにいかないんで、私は、その換気というものが実は、エビデンスベースということでありますけど、今のところ、我々が今国に提案して、もうこれは前回ももうはっきり申し上げましたけど、各店にはしっかりした二酸化炭素のモニターを作ってもらう、置いてもらって、まあ必要だったらそれはお金は国が、そんなに高くないですよね、維持費もそんなに高くないということで置いて、まあ何か所か置いてもらって。今のところは、完全なエビデンスということを得るまでには時間が掛かって、それも待っているとあっという間に時が過ぎてしまいますから、ある程度これならいいんじゃないのかというのが、実はいわゆる産業衛生というような分野で一〇〇〇ppmというのがいいんじゃないのかというので、私たちは今のところ完全にまだ感染症対策というのでは実証実験が行われていませんから、ただそういうものを手始めにして、一〇〇〇ppmになったら換気してください。今、ある企業が、ある一定の濃度にCO2がなると自動的に換気が回るというようなことも開発したんですよね、そういうことも。  それから、お店の方は、今までは人数も制限しなくてやっていたわけですよね。だけど今回、こういうこと、感染がどういうところで起こるかがクラスターサーベイで分かったわけですから、私は四人以下の、しかも、いつもやっている人を四人以下というのは当分やってもらうということと、人と人の距離をしっかり取る、で、必要だったらアクリル板もやると。そういう、そんな大した、重要な点はそんなに多くないんですよね。  今申し上げたような点をしっかり守って、あとはお客さんがそれを守ってもらわなかった場合には、お店の人は丁寧に、お客さん、少し守ってくださいよと言える仕組みをつくって、それを国が支援するということは大事で、そういう意味では、私は、飲食店のオーナーの方には物すごい経済的な負担を掛けてきたわけですよね。もうそういう時代はそろそろ終えて、しっかりとした、普通に感染対策をしっかりした店というのはそういう店ですから、そういうところの店が報われるような認証制度等をやれば随分意識が変わってくるし、一般の人はそういうところがいいんだといってそういうところに、満員にはならないけど一定程度の分散したお客さんが入るということで、持続可能な感染に強い社会飲食店ということになると思います。
  47. 倉持仁

    公述人倉持仁君) 私の場合、実際に患者さんを診て思ったんですけれども、実際に例えば自分のおいっ子が千葉県から久々に宇都宮に帰ってきて、みんなでお店に行って、そこで飲食をしたと。そうしたら、そのおいっ子がコロナだったといって全員感染してしまったんですね。  そのときに言えることは、一つは、そのおいっ子の方がコロナだって事前に分かっていれば感染は抑えられたはずなんですね。ですから、一つは、そういう場面においては検査がより簡易にできるようにしておくことというのは感染防止につながりますから、そこのハードルを上げても、もはや仕方がないと思います。それから、コストも安くできますから、そういう仕組みを取り入れていけばいい。これは、抗原検査でもPCRでも、感度の問題はありますけれども、いいと思います。  それから、実際に、じゃ、お店で今度食べてしまったときにコロナの方がいても、これ、我々のクリニックがそうです。コロナの方がたくさん来ますが、そこでうつらないように、あるいは病棟もコロナの方が入院してもうつらないようにやっているんですね。  つまり、飲食店でも誰がコロナか分からないという状況で飲食を提供しなければいけませんので、飲食店はそれができない限りは経営が成り立たないですし、時短だけされても、いずれもうあと一年やったら潰れると思いますから、そうだとするならば、やはりしっかりと高さのある、あるいはちゃんと「富岳」なんかで、飛沫、横向けば横の人に飛ぶよなんてことが分かっているわけですから、お友達と飲食する場合にはつい立て設置を義務付けると。  そして、それを都なり県なり国なりがしっかりと言っていただければ、これ、お客さんからこんなの要らないよと言われると、現場の方みんな困っちゃうんですね。ですから、そうなるにもある程度、罰則は別として法整備をしていただくことでお店側も安心して経営が続けられると思いますので、そういう取組をしていただけると感染拡大予防にいいと思います。
  48. 浜口誠

    ○浜口誠君 ありがとうございます。  本当大事な視点だと思いますので、我々政治の側からしっかりと、やるべきことはまた提案なり行動もしていきたいというふうに思っております。  最後になりますけれども、国産ワクチンの重要性、必要性について両先生にお伺いしたいと思います。  今、なかなかワクチンのめどが付かないというのは、EU等からファイザー製のワクチンの輸出許可が下りないというところで日程が明確にならないと。今後、この感染症どうなるか分かりませんし、新たな感染症が生じたときも、やはり日本で、国内でワクチンをしっかり供給できる体制を整えていくというのが、安全保障の面でも国民の皆さんの命と健康を守る面でも非常に重要だというふうに私自身は感じております。ただ、今、足下ではなかなか国産のワクチンがまだ供給できる状況にはなっていないというふうに思います。  今後、その国産ワクチンというのをしっかり日本として作っていくための大事な点、それぞれ先生方からもう簡潔に、この点をしっかりやることが大事なんだという視点で御意見いただければ大変有り難いと思います。
  49. 山本順三

    委員長山本順三君) 残り時間が少なくなっていますので、簡潔にどうぞよろしくお願いします。
  50. 尾身茂

    公述人尾身茂君) もうこれは重要で、今頑張っていただいていますけど、国がもっといろんな意味の支援をすることが必要だと思います。  それで、国産ワクチンについては、今年の実用化はなかなか難しいと思いますけど、来年以降になれば少しずつ見通しが出てくるんじゃないかと思います。
  51. 倉持仁

    公述人倉持仁君) どうしても感染者が少ない日本ですと、ワクチンの有効性を検討するというのが非常に難しいんだと思うんですね。ですから、これはもう感染流行国に国が営業を掛けて、そういったところで治験を組ませてもらうぐらいの、要するに、自国のためじゃなくて海外に売り込むぐらいのことでデータを集めれば、もっと国内のワクチンは早くいいものが作れると思います。
  52. 浜口誠

    ○浜口誠君 ありがとうございます。  まさに国がこれまでなかなかこのワクチン行政に対しての姿勢として踏み込んだ対応ができていなかったというのもあるんじゃないかなというふうに思っていますので、引き続き、我々の立場で、国産ワクチンの重要性と国の支援の在り方というのはしっかりと議論をして、やるべきことには対応してまいりたいなというふうに思っておりますので、また機会あるごとにいろんな御意見も両先生始め専門家の皆さんからいただければ有り難いというふうに思っております。  今日はありがとうございました。これで終わります。
  53. 小池晃

    小池晃君 日本共産党の小池晃です。  今日最後の質問になりますので、よろしくお願いします。  貴重なお話聞かせていただきました。やはり、その現状を打開するためにあらゆる手だてを取ることが必要だということですが、今日はちょっと中心問題として、検査の問題に中心を置いてちょっとお聞きしたいと思うんですね。  私どもの党として、十二日に、コロナ封じ込めのための大規模検査政府、菅首相に緊急要請いたしまして、要請の文書は昨日、両公述人にもお届けをさせていただきました。  私たちの提案は三点で、一つは、社会検査高齢者施設とともに医療機関、障害福祉施設などにも広げて、職員に対して頻回、定期的に行う、利用者にも対象を広げて感染防御を図っていくということ。それからさらに、モニタリング検査については、一日一万というのではなくて、やはり一日十万程度、やはり桁を上げる、大規模に行って感染封じ込めを図っていく。そして、変異株検査の割合を大幅に引き上げるという三点を要請をしております。  一つずつちょっと御見解を聞いていきたいんですが、まず高齢者施設などへの社会検査の問題です。これ、一回限りでは余り意味がないというふうに思うんですね。鍵はやっぱり頻回に行うことではないかと。もうやるというのは大体もう政府も言っているわけで、これはやっぱり頻回、定期的にやっていく。  私どもとしては、まずはやっぱり高齢者施設などの職員に対して、その地域の感染状況を踏まえて毎週あるいは隔週、定期的な検査を行う仕組みをつくるべきだと思うんですが、両公述人の御意見をお聞かせください。
  54. 尾身茂

    公述人尾身茂君) 先ほどのいわゆる社会検査ということですね。  これは実は、今、小池委員がおっしゃった高齢施設とかいうのは、もう我々は実は去年のもう夏の頃から、無症状者でも、ここでいくとインパクトが高いですよね、感染が、インパクトという意味は、重症者がたくさん出ちゃうし、特に高齢者の場合には従業員がウイルスを持ち込むということが、まあこれ本人の責任じゃなくて、分かっていますから、そういう意味で、これは一般のコミュニティーに全員にやるということとは違って、ここに重点的にやるというのは、私は、これは感染対策上、社会的というよりはもう感染対策上非常に意味があるので、これについては私はしっかりと、今は高齢者施設はやっていますけど、ほかの福祉施設とか医療機関なんかもだんだんと同じようなことでやっていけばいいんじゃないかと思います。  頻度ですね。これは、委員おっしゃるように、この検査というのは一回だけやるというのはほとんど意味がないですね。そのときのことが分かるけれども、これは、どのぐらい頻回というのはキャパシティーの問題でありますけれども、なるべく定期的に何回か続けてやるということは極めて重要で、それをしないとほとんど感染対策に意味がないと思います。
  55. 倉持仁

    公述人倉持仁君) 社会検査に関しては、もうこれは明らかに院内感染、それから福祉施設感染した方が亡くなっている率が明らかに多いということですから、これは国民の命を守るためにはもう至急やらなければいけないことだと思いますし、それから、私のクリニックでは、九月から全例、職員プール法で五人やっております。そして、自院で機械を持っていますので、プール法で一人千円でできる、一人といいますか、一検体千円ぐらいで原価ですとできるんですね。そうしますと、スタッフ一人当たり二百円ですから、そういう仕組みさえつくれば安くできます。  それから、実際に栃木県の那須塩原市や芳賀町とは一緒に協力をして、希望する福祉施設の方には一回千円とかで安い値段で公的な補助を出してやるというような動きも出ていますから、ですから、できるだけ頻度は多い方がいいに決まっていますし、それから、その仕組みが簡単であればそういう仕組みをどんどんつくっていけばいい。それから、PCRの機械も今は安くできるキットがたくさん出てきていますので、一年前とは大分違います。  ですから、それほど、あとは人員の問題とか資金面の問題ですから、そういったところを整えて、まずはきちんとそういう体制を構築するというのは非常に意味があることだと思います。
  56. 小池晃

    小池晃君 ありがとうございました。  キャパシティーの問題というのが出ましたけれども、これは十七万できるというふうに、一日ね、政府も言っているわけですね。一年前からこのキャパシティーというのは、ちょうど一年前、この場で尾身公述人と私、議論させていただいて、あのときも公述人はキャパシティーの問題があるのでなかなかPCR広げられないということをおっしゃいましたが、やはり今ある意味では感染が一定少なくなってきて検査にも余力があるわけで、そういうときに検査数を減らしてしまうとまた悪循環になるというふうに思いますので、こういう検査能力にある程度余裕がある今こそ思い切って社会検査を広げて感染を事前に抑えていくということが必要ではないかと思うんですね。  それから、モニタリング検査について、今日、尾身公述人は、見えにくい感染源、隠れた感染源、これを抑えるんだと。そのとおりだと思うんですが、先ほどもちょっと議論ありましたけど、一日一万件では、これはそういう感染源を抑えるのはなかなか困難で、余りに少な過ぎるのではないか。先ほども、最初は一万件でやるけど、これからとおっしゃったけれども、やっぱり私は、きちんと最初から目標を示して、やっぱり一万だったら対象地域十三都道府県でいうと一県当たり一日千件ぐらいになりますから、これではやっぱり感染源を抑えられないと思うんですね。  感染拡大の予兆をつかむというのであれば、やっぱり少なくとも一日十万件ぐらいの規模に思い切って広げていくという方針を政府として私は示すべきではないかというふうに思うんですが、両公述人の御意見をお聞かせください。
  57. 尾身茂

    公述人尾身茂君) 私は、今、いわゆる検査のキャパシティーを格段に増やす絶好の今機会だと思います。なぜかというと、いろんな民間の方も少しずつやっているし、国の方もキャパシティーがだんだんと。今、しかも今こういう大事な時期に来ているので、これはもうしっかりと国が高い目標を持って、それを決意を示してやることが私は重要だと思います。
  58. 倉持仁

    公述人倉持仁君) 今日私がちょっとお配りした資料の一番最後に検査数が書いてあるんですけれども、それを見ると、今回の第三波のピークのときで十万件行かないぐらいなんですね。これを見ると、民間のやはり検査会社を入れてから検査件数が圧倒的に増えています。  実際にこのモニタリング検査一万件というのがどこから出てきた数字なのか、つまり、それはコストの問題なのか、あるいは、統計学的に今感染率が二、三%だと思いますので、そこからきちんと疫学的に意味がある数字として出したのか、まずそういった説明なりデータをしっかりと明示するべきであって、もしそれが十万件必要であるのならば、十万件の余力を持つことは第四波に備えることにもなると思います。もし第四波が来たときに、その検査件数をそちら、医療側に振り向ければいいですから。今の検査体制というのは全部医療での限局されたPCRにとどまっていると思いますので、是非これを機会に、尾身先生も賛成していらっしゃいますし、そういう体制を至急つくるというのが大事なことだと思います。
  59. 小池晃

    小池晃君 非常に大事な問題だと思います。やはり一日一万件というのは、やっぱりきちんと科学的な根拠を、疫学的にどれだけモニタリングの件数をやれば感染の予兆をつかめるのかということを国民の納得のいくような形で示していただくということも分科会の先生方にも強くお願いしたいというふうに思います。  それから、変異株の問題なんですが、これも先ほどから議論ありますが、厚生労働省は三月八日に、変異株PCR検査陽性であれば感染研でのゲノム解析を経ていなくても変異株と確定してよいというような連絡文書も出しておりまして、今実際、自治体レベルでは、神戸市だけではなくて埼玉県、広島県などが、五%から一〇%という国の基準に縛られずに、ウイルス量が一定程度存在する検査が可能な検体についてはできる限り調べるという方針を取って、実際実践をされております。  そういった自治体にもお聞きしましたけれども、実際にはロシュ製の試薬なども購入をして、連続的にやれば、もうPCR検査に連続をして、あるいは一体に変異株検査までできるようになっているということなんですね。それで数時間で変異株の確定まで時間も要せずにできるんだと。  私たちはやっぱり今の五%から一〇%というのは余りにこれも低過ぎるというふうに思っていまして、私はもう全例やるべきだというふうに思いますよ。やっぱり変異株の死亡率の高さということがいろんなリサーチで今示されつつありますから、これやっぱり対策にとって非常に重要な情報になってくる。  今、やっぱり変異株ウイルスPCR検査変異株PCR検査を大規模に、五%、一〇%という規模じゃなくて、もっと広げていく技術的な可能性はあるというふうに私は理解しているんですが、その点についての御意見をお聞かせください。
  60. 尾身茂

    公述人尾身茂君) 技術的なことは、私はそれが障害にはならないと思います。むしろ、国がいわゆる大学とか先ほど申し上げている民間の自主検査も含めて一緒に巻き込むというようなことをやれば、技術的な問題はそれが主たる障害にはならない。むしろ意思、意思ですね、どれだけをしっかりやるかという意思を持てば、それは可能な状況だと思います、技術的には。
  61. 倉持仁

    公述人倉持仁君) 小池先生おっしゃるように、変異株の検索ももっともっとできる範囲で、実際に本当にこのウイルス学的に追跡をしていく、濃厚接触者の追跡、これニュージーランドとかそうやっているようですが、やはり変異をちゃんと追っていくことでこの人が感染者かそうじゃないかと調べているので、医学的、科学的な意味からいえば全例きちんとやるというのが好ましいと思いますし、逆に言えば、それを目指すならばやはり感染拡大をどんどんどんどん許してしまってはいけなくて、コントロールできるならば一定数に抑えるべきだと思います。  どうしてもその変異株の問題を検索するに当たって、実はそういうことができる、例えば、私の母校の医科歯科大学でもできますし、遺伝研でもキャパシティーはあるんですが、先ほども言いましたが、人を雇うお金と試薬を買うお金がないんですね。ですから、こういう緊急事態ですので、我々全力で、例えばそういうロシュ製のいいものがあれば我々のクリニックでも一日六千件できます。ですから、そういったものを活用していただいて、是非今のこの国難に立ち向かえるように、先生方からも我々に是非お力をいただきたいと思います。
  62. 小池晃

    小池晃君 ありがとうございます。  やはり五%から一〇%などという低い数字ではなくてね、戦略をやっぱり政府として明確に示して、で、民間の力、大学の力なども総動員してやはり変異株を抑えるんだという決意を示すような方針を出していただきたいというふうに思うんです。  最後の質問になるかと思いますが、その見えない感染源を見付け出すためには、広域的な連携、深掘り積極的疫学調査が必要だということを、今日、尾身公述人も強調されました。だから、これは変異株への対応という点でもこれ重要な提起だというふうに思うんです。それを実効あるものとするためには、やはり濃厚接触者に限らないより広い接触者への検査、トレース体制の強化、保健所の体制の抜本的強化が必要だと思いますが、御意見をお聞かせください。
  63. 尾身茂

    公述人尾身茂君) 濃厚接触者以外にもっと広げるべきだというのは、今重点検査、モニタリング検査というのはそういうことですね。おっしゃるとおりで、その濃厚接触者がいるとかそういうことじゃなくて、もっと、今までもクラスターが起きた、あるいはこれから起きるような場所を先にもう決めて、そこを頻回に、しかも、かなり、なるべく、できるだけ範囲を広くしてやるということがいわゆる初兆、予兆をつかむ。  で、積極的な疫学調査というのは、ちょっと私の説明が足りませんでしたが、それは、もう少し更に深掘りで、さらに、検査するだけじゃなくて、今までのデータをもう一回深掘りして、感染者がいれば後ろ向きの、過去の行動を振り返って感染源を突き止めるというのは、今ほとんどやられていないんです。それは、今先生おっしゃる保健所の方がもう目いっぱいになっていて、いわゆる濃厚接触者等の調査はやっていますけど、いわゆる我々が前から言っている後ろ向きの感染源を突き止めるということはやっていないので、私は、首都圏はそれがかなり高い蓋然性で至る所に起きていて、見えない。で、そのために、いわゆるさっきの重点検査とは少し別に、重点検査PCRだけですから、検査、これは、その検査というよりもそこの今までのデータがあるわけです、それをもう少し深掘りにやっていくとどういうことがあって、で、必要だったら検査もやるし、抗体検査もやる。そういうことで、ちょっと説明があれでしたけど、両方必要だと思います。
  64. 倉持仁

    公述人倉持仁君) これから、今まだまだいろいろなやること、やっていくべきことというのはあると思いますので、例えばその検査も、PCR検査変異の検索だけじゃなくて、接触者の追跡をするんだったら、やはりそのCOCOAのようなアプリが何で一年たって駄目なんだろうとかですね、我々すごくがっかりしていますし、それにめげずに早くそういったものをつくっていただいて、少しでもそういうトレースができるような体制というのを至急つくっていただきたいと思います。
  65. 小池晃

    小池晃君 ありがとうございました。  終わります。
  66. 山本順三

    委員長山本順三君) 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。  この際、公述人方々一言御礼を申し上げます。  本日は、大変有益な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。(拍手)  速記を止めてください。    〔速記中止〕
  67. 山本順三

    委員長山本順三君) 速記を起こしてください。     ─────────────
  68. 山本順三

    委員長山本順三君) それでは、引き続き公述人方々から御意見を伺います。  この際、公述人方々一言御挨拶を申し上げます。  本日は、御多忙中のところ本委員会に御出席いただき、誠にありがとうございます。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  本日は、令和年度予算三案につきまして皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、新型コロナウイルス感染症による国民生活・経済への影響について、公述人BNPパリバ証券株式会社グローバルマーケット統括本部副会長中空麻奈さん及び学習院大学経済学部経済学科教授鈴木亘君から順次御意見を伺います。  まず、中空公述人お願いいたします。中空公述人
  69. 中空麻奈

    公述人(中空麻奈君) ただいま御紹介にあずかりましたBNPパリバ証券、中空麻奈といいます。どうぞよろしくお願いいたします。  今日拝命いたしました何を話すかなんですが、新型コロナウイルス感染症による国民生活・経済への影響という話だったんです。だけど私は、ふだんから国民生活については余り見ておりませんで、専ら経済の方を見ておりますので、今日は経済お話をしたいと。ペアを組ませていただいた鈴木先生が国民生活のプロなのでそちらにお任せして、私はマクロの話をさせていただきたいというふうに思っています。もちろん先生方が政策を取られるときには、マクロを見る、セミマクロを見る、ミクロを見る、どれも大事な観点だと思うんですが、マクロとかセミマクロの観点でのお話ということで聞いていただければと思います。  では、お配りしているお手元に資料があると思うんですが、今日、大きく二つに分けてお話をします。コロナ禍の経済というお話コロナ禍下でどういうことが起きているかという現状認識を共有したいということと、これからの課題として何を金融市場は思っているかと、大きく二つでございます。  見ていこうと思うんですが、ページが四ページからでございます。四ページの表というのは、左側に株価推移になっています。御案内だと思います、株はすごい上がっているんですよねという状態です。もうこれはどんどんどんどん上がっていて、よく今の株価は説明が付かないと言われています。説明を付けることが正しいのか、そもそももう概念が変わってしまって、もはや今まで私たちが使ってきたPERとかああいう発想は間違っているんじゃないかということも考えなきゃいけないぐらいの状況になってきていると思っているんですね。  といいながら、株価がこのように上がっていて、一方、右側、これが私がずっと見てきましたクレジットマーケットなんですが、クレジットは何かというと、信用力です。なので、債券価格がどれぐらいで推移しているかというふうに見ていただければと思います。  株価は上がれば上がるほど安定していますが、クレジットというのは、日本国債みたいなものの安定したものに対してどれだけ上乗せの金利を払うとちょうどいいかということを見る指標なんですね。なので、言ってしまえば、お金持ちの友達とお金がない友達に、お金持ちのお友達の方に金利を上乗せすることはないですよね。やっぱりお金が返ってこないかもと思うと金利が上乗せになるということを考えていただくと、このページ右側を見ていただくと、どんどんスプレッドがタイトになってきているわけです。  そうなってくるということは、信用力が改善していて、クレジットリスクも減っていて、金融市場が安定して見えるということが起こってきているんです。だけど、ちょうど去年の今ぐらい、コロナの話が出てきたときというのは、リスクがあると思いましたので、このスプレッドがばあっと広がっているところがありますよね。そこから様々な対策や政策が出て、ずっとタイトニングをしてきた、信用力も改善してきた、金融市場が安定してきたということを確認ができますという表でございます。  次のページ、五ページ見ていただくと、よく聞かれるんじゃないかと思うんですが、VIX指数といって、これは恐怖指数という言い方もしますが、この表でいくと、黄色いところが上に上がってくれば上がってくるほど金融市場はどきどきしてきて、何か起こるんじゃないかなと思うんですけれども、今、足下でも意外と高い恐怖指数、VIX指数なんですが、このクレジットスプレッド、私が先ほど申し上げたようなマーケットの価格はやっぱり安定しているんですよね。政策が効いて、金融市場はとても落ち着いた状態にありますよということです。株価が上がっていることと裏腹だと思っていただければ結構でございます。  それから、六ページ見ていただきますが、様々な価格が上がってきています。流動性がたんまりあるものですから、いろんなところにお金が行きます。お金が入っていくと、やっぱり価格って上がっていくんですよね。ということがありまして、需要の逼迫ということもあり、価格が上がってきている様子が様々な市場で確認ができるということです。  こういうふうになってきた。となると、我々金融市場にいる者としては、この合理的バブルに見える、この合理的というのは金融政策と財政政策によって支えられているので合理的というふうに呼んでいるんですが、この合理的バブルはいつまで継続するのであろうかと、それから、何をもって収束するんだろうかということを我々はいつもいつも冷や冷やして見ているわけです。なので、御存じかと思うんですが、金利が上がりましたよというと株価が下がったりする。それは、もうそういう金融市場の、何かあったら崩れていくんじゃないかというどきどき感から来ているわけですね。  さはさりながらなんですが、七ページ、今私申し上げた合理的バブルの説明をしたいと思います。  金融政策と財政政策でマーケットは支えられています。金融政策というのは、ほかでもなく、流動性を供給しているからですね。流動性が、がんがんお金が入ってきているということはどこかにお金が回るので、どこにお金が回っているんでしょうかというと、それが各資産市場の価格を上げているということなんです。  ところが、ここもと、今週は日銀もFRBも様々な決定会合とかありますけれども、なので、マーケットとしても、そこで何が出てくるのかなということを注目しているわけです。注目はするんですが、きっと金融政策は緩和モードで継続でしょうという期待感があります。この期待が裏切られると株価が急速に下がったりするわけです。マーケットはほとんど期待感で形成されていきますので、この期待が形成されているということ、それがなくなってしまったら今はマーケットを混乱させてしまうということ。  そうはいっても、中央銀行もどこかで正常化しなきゃいけないと思っているので、この正常化に対していろんなことをやってきています。例えば、社債というのも、買入れプログラムが世界中にあったのですが、欧州でもアメリカでも、特にアメリカに関しては、社債の買入れプログラムをもうやめているんですね、去年の十二月から。日銀も、今までは月々三千億円とか買っていたんですが、最近は二千億円に下げてきています。  このように、枠はあるんですけど結局買わないとか、少しずつサポートの体制を減らしてきているということも言えるわけです。これは、言ってしまえば、正常化への道筋を取っているというふうに言ってもいいんだろうと思います。ただし、正常化というのは結構気を遣っていただかないとなかなか難しいという状況は後半で述べたいと思います。  その次のページ、八ページ御覧いただいて、よくこの合理的バブルの状況、本当にこのまま続くのかどうかとよく言われています。バブルですからどこかで崩れるんじゃないかと言われているんですが、今回のバブルはいつもと違いますよと言われています。  それはなぜかというと、左の上ですけど、欧州銀行というのは相対的に一番弱い銀行、日本とかアメリカと比べてということなんですが、それでも自己資本比率が高くなっているし、右の表ですけど、貸出しもちゃんと出ているということなんですね。なので、金融システム不安がないということがいつもと違う点。なので、バブル、合理的バブルは継続するのではないかという期待感がある。その割にはですけど、左の下、世界債務はどんどん増えてきているので、ここはちょっと注意していかなきゃいけないですよねということもある。  一方、その金融市場だけじゃなくて企業はどうなっているかということなんですが、セミマクロに入りますが、政策が効いてきていて、やっぱり収益も回復過程に入っています。十月―十二月期、十―十二月期の決算が出ましたが、ここに書いたように、やっぱり随分と改善してきているんですよね、まちまちですけど。  で、回復してきているということを見ていただきたいんですが、その理由としては、次のページ、十ページですが、様々なところで需給の逼迫があるので、それを理由に価格が上がったり収益上がったりするところが出てきました。中国やアメリカの景気がいいので輸出をしてもいいよということになってきていて、輸出が増えているので、結果、収益も上がってきた。いいことも結構あるんです、なんですね。  ところが、十一ページ見ていただいて、確かに三か月前と比べると、左側ですけど、今期の計画利益と三か月前とでは、やっぱりかなり良くなってきた、足下は改善しているということが分かるんですけど、右側の表を見ていただくと、前年度と比べると、まだまだ収益も前年には及ばないということですね。だから、足下の急激な回復、それから、でも過去と比べたらそこまで戻っていないという現状、この辺が現状のアップデートだということだと思っています。  さて、この辺から、これからの課題についてお話をしたいと思っていますが、十三ページ見ていただいて。  合理的バブルは続くのかどうかという懸念のときにいつも出てくる話題が、長期金利が上がっているということなんですよね。金利が上がってしまうということです。  十三ページの右の下にありますが、国債利回りが下がってきている。これ、どこまで金利下がるんでしょうかというふうにみんな思っているんですけど、足下上がってきたというのが懸念材料になっているわけですね。これは当たり前で、景気は二〇二一年の下期良くなるんですと言われている。景気が良くなると、金利は本来上がるんです。だけど、金利を上げないでいってしまう、上げないでいくよねとみんなが思っている、そういう期待感が醸成されているので、余り変わっていかない。その割にはですけど、左の上、マネーサプライはどんどん増えていて、こういうバブルの状況をつくっているという現状がある。  これをどういうふうに終着させるか、帰着させるかということは、一つの大きな課題になってきているというふうに思います。余りクラッシュされても困るし、どこかに破綻リスクがどんどん出てきても困るしという話です。  その割には、よくクレジットマーケットから何か綻びが出るんじゃないかと聞かれるんですが、十四ページにあるように、様々なところをチェックしましても、余り変なものは今のところ出ていないです。ですので、足下で今の合理的バブルがはじけるかというと、はじけることはないんですよと。だけど、金融政策と財政政策に依存している部分が大変多いので、それをどのように皆様が帰着させてくれるか、そこは期待感を持って見ていきたいというふうに思っているところでございます。  それから、十五ページですね、金利が上がってくると、債務が増えていることが気になります。悪い金利上昇のときに債務がこれだけ増えていると、やっぱり返せないんじゃないかとか、あと、これだけ債務が増えましたから、利払いが増えていくということも気にしておいていただかなきゃいけない点です。  なぜかというと、次のページですね、十六ページ、国債の格付下がりますよということです。  国債の格付なんか下がったって市民生活には影響ないと言われてしまうとそれまでなんですが、でも、そんなことないんですね。国債が格付下がると、資金調達コストが確実に上がります。それが上がっていくと、日本の国際競争力に確実に転嫁されてきますので、下げてはいけないんですということだと思っています。  ということで、十七ページですね、合理的バブルはどうやってはじけさせないで終着させるのか、これは一つの大きな課題ですということでございます。  それから、そのセミマクロの方に話を移しますが、十八ページ見ていただいて、デフォルトです。  デフォルトというのはもっともっと上がってもよかったはずだったんですけれども、余り上がらなかったんですよね。なぜ上がらなかったか。世界中に持続化給付金的なプログラムがあったからです。なので、お金が回っているということでデフォルトが避けられた。  デフォルト避けられたことは非常にいいことです。いいことなんですが、ちょっと見ておいていただきたいなというのが、まず十八ページからですね。これは欧米のデフォルトの話です。  見ていただくと、思うよりはデフォルト率は上がらなかったということが一つ言えることと、それから、フォールンエンジェルと書いてありますけど、何かというと、格付がトリプルBとか投資適格と言われるものからダブルBという投機等級のところに落ちるような、そういう格付がとても落ちてしまうものをフォールンエンジェルと呼ぶんですが、それの件数が思うほど増えなかったと言われています。なので、お金が回ってきたので意外と安定的に企業も推移したんですよねということが言えるんです。その結果、左の下、デフォルト率も思う以上には上がらなかったんです。  ところが、アメリカはというと、十六ページに、あっ、十九ページにありますが、デフォルトは、上二つ見ていただきたいんですけど、左側は、短期で見ると、デフォルト率、確かにじわっと上がっているんですけれども、右側、長期で見ると、そんなに目くじら立てるほど上がらなかった。なぜなら、いろんな流動性が付いたから。だけど、左の下、デフォルト率を牽引しているセクターがある。アメリカはエネルギーセクターでございます。  じゃ、同じような発想で欧州を見てみると、何か、今度二十ページですけど、左の下ですね、色とりどりですよね。これは結局セクターに偏りがないんです。形としてはこちらの方が日本に似ています。日本はデフォルト率が本当に上がってきてないんですよね。なので、マクロで見て、デフォルト率が心配ですというほどのことは正直ございません。だけれども、このデフォルト率、セクターで見ると、いろんなセクターがデフォルトしそうだという欧州の話は日本にも転用できるかということと。  それから、二十一ページですね。日経二二五構成銘柄で二〇二〇年三月以降に格下げがあったものを抜き書きしたら、三十九銘柄ありました。なので、数としては一七%、格付が下がってくると資金調達コスト上がりますということは一応考えなきゃいけないこと。  さらに、ここが一番先生方に見ていただきたいところなんですが、二十二、二十三、二十四、これ何かというと、実は日本企業、デフォルトもしてないし、収益回復してきているんですけど、それでも自己資本がこんなに下がっているという事実です。私、長いことクレジットやっていますが、自己資本比率が一〇%下がるというのは大変なことなんです。それがこれだけ企業が多いということを考えると、どれだけのり代が減っているかということは見ておいていただきたい。政策でもつものがあるのかどうか、この財務内容が改善する前に流動性が付かなくなったらデフォルトはたくさん出てくるはずということは意識していただきたいなというふうに思います。  最後、まとめです。二十五ページになりますが、今日お話ししたかった点、ここに三つ書きました。コロナ禍でもマクロ的には回復過程に入ってきているんですが、金融政策や財政政策は単に合理的バブルにすぎないのではないかという点。それから、債務が増えているので、金利上昇というのが突然来ると、それは私たちの負担になるということ。それから、収益回復のばらつきがあって、かつ財務毀損をかなりしているので、デフォルトが今のところ低いようなんですけど、ここから増える可能性は大変高いこと。この三点を中心お話ししました。  お時間になりました。私からのお話、以上でございます。ありがとうございました。
  70. 山本順三

    委員長山本順三君) ありがとうございました。  次に、鈴木公述人お願いいたします。鈴木公述人
  71. 鈴木亘

    公述人(鈴木亘君) 学習院大学の鈴木でございます。  私、医療とか社会福祉、社会保障を専門とする経済学者でございますけれども、今日はちょっと、個別にはいろいろ御質問いただければと思うんですが、十五分でございますので、もう少し大きな話をしたいと考えております。  まず、現状でございますけれども、国民生活への影響、経済じゃなくて生活への影響という面で見ますと、今、過去最大の不況と言われていますが、意外にいいということでございまして、失業率で見ましても、有効求人倍率、賃金、まあ雇用関係ですね、あるいは生活保護とか株価、地価、金融資産という面で見ても、相当そんなに悪くはないという現状だと思います。  理由は何かと申しますと、そもそもアベノミクスで非常にスタート時点が高かったということ、それから、金融政策、財政政策、今回の場合は雇用政策が非常に特徴ですけれども、非常に迅速で規模もでかかったということで、この点は過去のいろんな不況を学んでいるという意味で大変評価できると私は思っております。  ただ、それなりの金も掛けてきたということでございまして、各種の給付金、協力金を始めとして、不必要で非効率な支出が非常に多いということで、現状だともう世界で一人当たりだと一位、二位というぐらいの財政支出をしておりますけれども、まあ一言で言うとコスパ悪いということだと思います。まあ現状しようがないという見方もありますけれども、この後、コロナ収束後に、この大量に膨れ上がった債務どうするのかというのは、相当苦しい今後状況は迫られますし、その後大変だということなので、今からでも無駄な非効率なことはなるべく控えた方がいいというふうに考えております。  そもそもの問題として、欧米各国より感染症がもう非常に桁違い、二桁ぐらい違うぐらい少ないんで、小規模でございますけれども、GDPとか生産へのダメージが非常に大きいというのが今回の大きな特徴でございますけど、これがなぜかということなんですが、大きく見ると、私はコロナ対応の基本戦略が間違っているんじゃないかと思っておりまして、人災的な側面が非常に大きいと考えております。  一言で言うと、ちょっと言葉は過ぎますけれども、マッチポンプだというふうに思っております。つまり、政策として不必要に経済をダメージを与えるようなことをやって、緊急事態宣言もそうですけれども、やっておりまして、それで経済がダメージを受けて財政政策で莫大な規模の財政政策をやらざるを得なくなるという意味で、自分で火付けて自分で消すというような構造になっていると。そして、これが何回も何回もループになっているということでありまして、感染拡大、非常事態宣言、財政政策、で、また感染拡大が起きて非常事態宣言という、このループが続いてしまうという状況は非常にまずいことになっているなということでございます。  じゃ、基本的な経済政策はどうあるべきかということなわけでございますけれども、非常に重要なことは、今回の不況はいつもの不況じゃないということを御認識いただくことが重要だと考えております。一言で言うと、計画化された不況というのが今回の大きな特徴でございまして、不況というと大体大規模な財政政策やるというのがステレオタイプになっているわけでございますけれども、不況もいろいろございますので、財政政策が効くものもあれば効かないものもあるし、処方箋はいろいろ、いろいろあるんですね。  一番典型的なのは需要ショック型の不況というものでございまして、これはリーマン・ショックとかバブルの崩壊というのが典型的で、需要が喪失しちゃうわけですので、政府が代わって需要をつくり出す必要があると。これが典型的な処方箋ですけれども、今回それかというと、違うということでございまして、確かに需要はできていないんだけれども、需要する気はあるわけですね。つまり、消費も投資もする気は満々なんですけど、物理的にただできないという状況なので、これは違うと。  じゃ、もう一つは供給型の不況というのがあります。これ震災なんかが典型なんですけれども、津波で人も物も流されちゃうと、もう設備がないので物が作れなくなって不況になるというパターンですけれども、それかというと、それでもないですよね。人も物もありますよね、温存されていて、ただ、売る気も満々にあるんだけれども、ただ物理的に売ることができないということになっているので、これも違うと。ちなみに、供給型不況の場合は、財政政策やると、物不足ですのでインフレになりますから、これは財政政策が効かないというような不況でございます。  で、どっちでもないんですね。今回何なのかということなんですが、これ、ハーバード大学のマンキューという有名な経済学者が言っているんですけれども、計画化された不況であると。つまり、自分で自分の首絞めているんだと。外的なショックで不景気になっているんじゃなくて、自分で首を絞めて不況になっているということでございます。なので、一番経済政策として正しい政策は何かというと、首を絞めなくて済むことをやると、首を絞めなくて済むような対策を打つというのが一番効率的であるというふうに思います。  じゃ、それはどういうことなのかということですが、一言で言うと、人を動かさず金を動かすということですね。そして、全力で医療提供体制へてこ入れするということになりますけど、一言で言うと、両立化策ということですね。感染症対策経済の両立化策ということになるわけですが、ただ、両立化策というともう使い古された言葉で、しかも、マスコミなんかは間違った使い方しています。つまり、何かGoToキャンペーンとかやって経済を重視する政策が両立化策だと思っているんですが、経済学の立場でいうとそれは全然違うものでありまして、GoToキャンペーンなんかやるのは経済を重視する政策で、両立化策ではないんですね。  じゃ、両立化策って何なんですかということなんですが、例えば、女性、ちょっと話は変わりますけど、例を挙げると、女性のあの仕事か育児か家事かという、その何か両立化策という、女性の両立化策ってありますけど、それを思い出していただくのが一番分かりやすいんですが。女性が仕事を選ぶか、育児、家事を選ぶかというのはトレードオフがありますよね。仕事を選んで仕事を、就業を継続しようとすると家事、育児がおろそかになると。家事、育児を一生懸命やろうとすると仕事が継続できなくてパートになったりとか一回辞めなきゃいけない、どっちを選ぶかみたいなことになるわけですよね。それがまさに経済重視か感染症重視かという政策のトレードオフでありまして、経済重視すると感染症対策がおろそかになって人が死ぬと。でも、感染症対策を一生懸命やると経済がおろそかになって失業が増えて、これも人が死ぬというトレードオフ上にあるんですね。  どっちを選ぶかという政策ではなくて、さっきの仕事の話に戻ると、女性の就業と家事を両立化させる政策は何かというと、例えば待機児童対策をやって、女性が働いてもちゃんと保育園に預けられるようになるとか、あるいは何かお手伝いさんを雇えるようになるとか、いろんな支援をするとか、あるいはお総菜とかですね、コンビニでお総菜を売るとかというのも食事の時間を、作る時間を減らせますので両立化策になりますね。そういう第三の道を選ぶというのが両立化策というものでございます。これができれば、大規模な経済政策とかそういうことをやらなくても、元々需要も供給もあるわけですから、要するに感染症に足を引っ張られずに経済のアクセルを吹かすことができれば自律回復が望めるということでありまして、実際みんな我慢しているわけなので、リベンジ消費とかペントアップディマンドとかですね、そういうものが出てくるわけですので、大規模な経済対策をする必要はないと。  最大の問題は何かというと、医療提供体制ですね。これがもう、すぐ崩壊するというのが問題でありまして、ここの何というか、てこ入れに全力を注ぐのが正しい経済政策であるというふうに考えます。  具体的にはどういうことが重要かということなんですが、具体策というふうに書いてあるところでございますけれども、とにかく無駄でもコロナ病床をつくるということでありまして、第三波が今収まってきているので、今チャンスですね。次、第四波、必ず来ますので、その前に用意しておきなさいということでございます。とにかく予算化はしなきゃいけませんけど、予算の使い勝手も余り良くありませんので、例えば病院の収益が減ることに対して、病院が出す領収書には払いますけれども収益が下がることには払えませんので、こういう使い勝手を良くすると。  それからマッチングですね。病床が空いているところと必要なところをこうマッチングするというのを、今もう人に頼っていますけれども、こういうものはIT化を進めるとか、ECMOの訓練をしてECMOを使える医師を増やしておくとか、こういうことはもう今できることなのでやるべきであるということですね。  それから、今は都道府県にいろんな病床の調整とかも任せているわけですけれども、これ必ずしもうまくいっていないというのが現状だと思います。結構ミスマッチが生じているわけですけれども、これはやっぱり国が出ていく余地は非常にありまして、例えば病床の調整で、東京が足りなかったら、神奈川が空いているんだったら神奈川に持っていくとかというような調整が今できないので、その県をまたぐ調整みたいなのはこれ厚労省しかできませんので、それをやるべきだと。  それから、国がグリップを握っている国立病院とか大学病院とかありますので、これは省が違いますけれども、これこそ政治リーダーシップを発揮していただいてこの増強をしておくということになると、いざというときに対応がすぐできるわけですね。そして、フリーランスの医師とか看護師も実際いっぱいいますので、こういう者を直接雇用しておいて、何かあったときに派遣するというようなことも考えられます。今、自衛隊がそれやっているわけですけれども、自衛隊と同じような緊急で派遣できる部隊みたいなものをつくるというのが一つだと思います。  それから二番目でございますけれども、ワクチン接種等は一番の両立化策なんですね。ここ重点を置かないと経済の方も駄目になるということでありまして、長引けば長引くほど経済的なダメージが大きくなります。まだいろいろワクチン承認これからしますので、とにかく厚労省の平時の承認手続を根本的に見直した方がいいと思います。厚労省の中では一番迅速な手続取っているんですけれども、ただ、それでも遅いので、ワクチンの会社は厚労省が時間掛けてやること分かっているので、わざと後から承認出すんですね、すぐ出せないわけですね。なので、そこを見直すと。ただ、責任は厚労省に取らせると厚労省動きませんので、責任の所在は政治決断だったら政治が取るべきだということですね。  それから、アストラゼネカが今使えないんじゃないかというようなニュースが今日流れていますけれども、供給不足がもう生じていますので、やっぱり優先順位を付けるということは現実的に考えた方がいいだろうということでありまして、首都圏とか関西圏の大都市部の高齢者を重視して先に配布するというのも一案だと思います。それをやると経済のエンジンの部分が、高齢者感染の心配なくなれば動かせますので、これをやるというのは経済政策としても重要なことだと思います。  あと三つぐらい挙げておりますけれども、テレワークですね。テレワークとにかく進んでいないですね。もう元に戻りつつありますけれども、これを、今はあめですね、どちらかいうと。補助金を出して設備なんかのあめを出すということをやっていますけど、これじゃもうらちが明きませんので、もうむちも必要であろうということで、通勤手当の損金算入させないとかオフィス面積に課税するとかということをやって、とにかくテレワークを進めるということを力を入れてやるべきだと。  テレワークは、商売相手が、取引相手がテレワークになったら自分もやらざるを得ませんし、同僚もテレワークになったらやらざるを得ないので、ある程度のところまで進めば自動的に進むというメカニズムもありますので、そこは多少最初金を出してもやったらいいと思います。  それから、ITインフラの重点性投資とITの経済インセンティブということは、もういろいろ言われていることでありますけれども重要です。とにかく、5Gとかファイバーとかの設備投資に今こそ金掛けるべきだと思います。これは、失業者、休業者の仕事をつくり出すことにもなりますので、しかも一時的な仕事ですので、ちょうど飲食店なんかの失業が多いときにちょうどその仕事ができるという意味でいいと思います。  最後に、人が動かない、露出しないということに対してその政策をもっと支援すべきだということで、宅配とかいろいろ規制緩和も書いておりますけれども、とにかく結論としましては、人を動かさず金を動かすということに対してとにかく政策の重点を置くと。そして、経済を動かせない今唯一のネックは医療の問題ですので、医療の提供体制にとにかく全力で力を入れると。今こそ、つまり第三波が収まってきている今こそやらなかったら次もまた間に合わなくなりますので、それが重要であるというのが今日のお話でございます。  ありがとうございました。
  72. 山本順三

    委員長山本順三君) ありがとうございました。  以上で公述人の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより公述人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  73. 藤川政人

    ○藤川政人君 中空公述人、そして鈴木公述人、ありがとうございました。  それでは、早速質問に移りたいと思います。  自由民主党の藤川でございますけれど、私は愛知県選出の参議院議員でありまして、愛知県は、両先生御存じのとおり、日本一の製造業の拠点でありまして、製造品出荷額が四十年以上日本一を誇っているというのは私も自慢の一つではあるんですが、全国の一五%のパーセントを占めております。その中でも、このコロナ禍でかなり製造業も痛手を被りました。しかし、先ほど中空公述人の資料にもございましたとおり、完成自動車の輸出入も愛知県の三つの港で約五割、入ってくるものも出すものも完成自動車というのは愛知県が五割担っています。  やはり世界的な買い控えもあって完成自動車の輸出もかなり落ち込んだわけですけれど、第三波が来る前、昨年十一月の例でいうと、コロナ禍、コロナのこのウイルス感染症が広まる前の状況の約九割まで完成自動車の輸出は回復していた、そして、年末の忘年会等々で第三波を迎えた。これからその数字が出てくるかと思いますが、先ほど中空公述人の資料にもありましたように、コンテナ船の運賃にこれが反映されているんだろうなと思って見させていただいたんですが、そうした中で、製造業、この事業者支援においては、持続化給付金、そして無利子無担保の融資等々、これは奏功したと私は思っています。  ただ、やはり会社に行って、本社からサプライチェーン、工場まで愛知県は多々それが一貫してあるというのは一つの特性ではあると思うんですが、やはり物を作るだけでは駄目です。やはり家計が潤って、町のにぎわいがあって、そしてそれぞれ家庭、それぞれ個人の幸せがないとこれは成り立たないやはり社会であると思います。  そういう中で、やはり重要なのは、やはり低い倒産件数、三%近傍と言われるところの失業率、抑え込めたというのはあらゆる施策の総合的なやはり奏功したおかげだと思うんですけれど、そうした中においても、倒産件数の形でいえばやはり飲食業が最多、そして宿泊業が第四位という、これはもう結果として出ている中で、やはり人々の潤いや、そして幸福感、ゆとりを持つためには、一つは観光業のやはり支援も同時に進めていかなければいけないと思っています。  しかし、人が動けばどうしてもコロナを抑制することができない現状を見れば、今話題となっているGoToキャンペーン等々の施策、そういう施策について、製造業ではない分野のなりわい、そのことに対しての先生方のそれぞれの率直なお考えをお聞かせをいただきたいと思います。
  74. 中空麻奈

    公述人(中空麻奈君) ありがとうございます。  今、愛知県なんだというふうにお聞きして、自動車セクターについての私も思いが結構あって、その話も併せてさせていただきたいと思っているんですが、御指摘いただきましたように、製造業というのは回復過程には入っている。だけれど、一番今回のコロナ禍で私が重視しなきゃいけないと思っているのは、相当セクターによってまだら模様だということだと思っているんです。御指摘にあったような宿泊施設とか、あとは航空セクターとか、人が動かないことによって問題になっているセクターというのは、やっぱりこれからもまだ問題なんだろうと思います。オリンピックが無観客かもしれないという話が出てくると、それを当てにして建てられていたホテルとかはやっぱり大変なことになってしまうというふうに思うんですね。  なので、この全体的にGDPは回復過程にありますよ、収益も良くなってきましたよなんですけど、それでいいかというと、セクターによる物すごい大きなばらつきをどう先生たちが修正していくのか。どこかが負けっ放しでいいのかという問題は、それは調整をしていただかないといけないなというふうに思います。  ついでに余計なことをもう一つだけ言わせていただくと、コロナの問題が回復するかしないかのみならず、自動車セクターなんか特にそうですけれども、それこそ二〇五〇年のカーボンニュートラルを目指して電気自動車にしていきましょうと。電気だ、水素だ、ハイブリッドだ、ガソリン車だといろんなものを造る日本と、欧州なんかではもう電気自動車一本にするという発表が相次いでいます。これ、どちらが国際競争力を高めるのかと思うと、何となく心配になってしまうんですね。  なので、そういったその気候変動ですとか、様々ないろんなAIとかIoTとかで今までと違う構造が発生しているということ。なので、コロナで影響が出たことをどう回復させるかだけではなくて、違うものに変わっているときにどういう支援が適切かということもお考えいただくことが重要じゃないかなというふうに思っています。  以上です。ありがとうございます。
  75. 鈴木亘

    公述人(鈴木亘君) ありがとうございます。大変重要な御指摘だと思います。  確かに、最初、休業に、物すごく休業補償にお金を出して失業率とか、まあ倒産も融資をやって下げて、とにかく経済を悪化させないようにしたというのは非常に大きな経済政策だったと思うんですが、もう既に一年たちましたので、そろそろ次の局面を考えていかなきゃいけないというところに来ていると思います。  一つは、もうオリンピックもその海外の観光客を、観光客というか客ですね、客を呼べなくなるというようなことですと、先ほど中空さんがおっしゃったように、過剰設備になっている可能性が非常に高いということでありまして、これをいつまでも塩漬けにするということがいいことかどうか、公費が掛けているわけですよね、という意味で、何か、その従業員に対しては転職支援をするとか、あるいはホテルとかそういう観光業についても転業、廃業の支援をするというのがあり得るんじゃないかと思います。  ちょうど中小企業庁のいろんな支援策が、廃業支援という名前ですが転業支援もありますので、そういう転業することに対して融資をするとか、もう、ちょっと観光業はこの先ないなという人に対しては、もっとITのいろいろな教育をしたりして転業するというようなことを支援していくというのも、実際そういう政策メニューはいっぱいありますので、使えばいいだけの、求職者支援制度とかいろんなものがありますので、それを使うというのが一つだと思います。  それから、実際に仕事がないということに対しては、先ほど言ったIT投資、インフラ投資とか、あるいは従来型の公共投資も補修、更新関係はまだまだありますので、そういうもので仕事をつくり出して、とにかく一時的に飲食業の人を、その仕事をつくって、また戻れますので、そういう一時的な仕事をつくるというのも決断の一つだと思っております。  以上でございます。
  76. 藤川政人

    ○藤川政人君 鈴木公述人がおっしゃった一時的な仕事、そういうような政策も必要だと思います。  そして同時に、やはり家計を守っていかなくちゃいけない。やはり働く現場も用意しなくちゃいけないけれど、やはりそこのためには生きるために家計を守っていかなくちゃいけない。製造品、中空公述人が言われたセクターの問題でいけば、ある程度回復期に入っている産業もあれば、やはりGoToキャンペーン等々で支援したけれど、増えれば必ず見直さざるを得ない、若干抑えざるを得ない施策が必ず出てきます。  そうした中で、やはり正規雇用と非正規雇用ということも同時に考えて、やはり労働環境、我々は考えていかなくちゃいけないと思うんですが、先ほど言った分野においては、当然のごとく非正規雇用のパーセントが高い、そういう方々のやはり雇用の寸断が必ずそこで、現場で起きていることを考えれば、十万円という特定の家計支援の給付金が、特例給付金がありました。僕は、三十八万とか言われるところでかさ上げを進めておりますけれど、そういうことを考えれば、GoToキャンペーンも含め、どういう政策で、またその家庭支援、家計支援でどういうことがこれから必要になってくるか、その考え方も、率直な御所見を伺えればと思います。
  77. 中空麻奈

    公述人(中空麻奈君) ありがとうございます。  もうそういう分野になってきますと、本当に一国民としての意見になってしまうんですが、と言いながら、やはりばらまき政策というのは先ほど申し上げたように債務残高を増やすだけ、これから金利上がるかもとみんなで思っているぐらいなので、債務が増えて日本国債の格付が下がったら、それは回り回って日本の国際競争力を落とすと真剣に思っています。なので、ばらまき政策をもうやめなければいけない。もう必要なお金というのはあるはずですから、本当に困っている人たちにお金を配るという、そういう工夫が必要になっているんだろうと思います。  これは、話が飛びますし、時間も掛かりますが、やはりマイナンバーカードの徹底と、それによってひも付ける本当に必要な人に必要なお金が行くこと。アメリカのように更に追加で二十万とか言われても、それはうれしいですけど、一国民としては。だけど、一国民として瞬間うれしいのと、それから、本当に役に立つお金なのかということを考えると、適切な人に必要なお金が行くという仕組みを先に考えるべきなのではないかと、その上で本当に重要な必要だと思っているお金が配られることが望ましいというふうには思います。  取りあえず以上です。ありがとうございます。
  78. 鈴木亘

    公述人(鈴木亘君) 大変重要な御指摘だと思います。いろいろ困った人もおりますので、そういう人たちにいかに手の届く支援をするかということは大事なんですが、先ほど中空さんもおっしゃったように、日本では本当に困った人というのを特定するのが非常に難しいという状況ですので、これはきちんと特定できるような手だてをとにかく考えるべきだということに尽きると思います。  その代わりとして、シングルマザーへの支援とか非正規の女性への支援とか、いろいろな手だてはあるわけですが、やっぱり無駄が多いというか、本当に困っていない人にもいっぱい配ってしまうという問題もありますし、本当に困っている人はそのシングルマザー以外にもたくさんいるという問題があって、なかなかここは難しいところです。  万病に効く風邪薬としましては、やっぱりマクロ政策が一番だと思います。つまり、今の問題が生じたのはどうしてかというと、景気が非常に悪化して、全体の景気が悪くなったので、非正規とか本当に困窮者たちが苦しんでいるわけですので、逆にマクロの景気が良くなれば、ある程度個別のターゲットを絞らずともかなり浮揚策ができるわけですね。なので、マクロの政策を持続していくというようなことで解決する部分も多いのではないかというふうに考えております。  以上でございます。
  79. 藤川政人

    ○藤川政人君 もう最後の質問になるかと思いますけれど、いわゆるウイズコロナ、アフターコロナ、それにおける経済政策と雇用政策、それを最後にそれぞれ先生方に伺いたいと思いますが。  特に中空公述人には、デフレ状況下でも厳しかったです、まあ円高不況の中でも。でも、必ず、もうけが増えているところは必ずその裏ではあるわけですし、我々は苦しいときにそういう方にお会いする機会というのはめったにないんですけれど、このコロナ禍でもやはりマスク産業や努力してやはり収益を上げている産業もあると思います。そうしたところで、ついこのコロナが始まる前、内部留保、企業内が持っている、それを給料にするのか、やはりそれを設備投資にするのか、やはり企業に求められる、我々は課税という言葉も使ったりしたんですが、今回そういうことを総合的に考えていくと、今後、ウイズコロナ、そしてアフターコロナ、その種を同時にまいていかなくちゃいけない時期にももう入っているかと思うんですけれど、そこにおける経済政策。企業内における、今率直な内部留保の話もお伺いできればと思いますけれど、そういうことに対して、企業が持ち得る使命と政治が行わなけりゃいけない使命、その経済政策についてのお考え。  そして、鈴木公述人には、雇用政策を含め、生活支援全般における、これからのコロナ対策に対する、社会に対する思いをお伺いできればと思います。
  80. 中空麻奈

    公述人(中空麻奈君) ありがとうございます。  非常に私もよく考えている質問を最後にしていただきました。  ウイズコロナ、アフターコロナということを考えると、しばらくウイズコロナが続いてしまうのかなと思いながら、その後をどうやって描いていくかということがとても大事になってきているというふうに思います。  内部留保、企業の内部留保についてはよく問題だと言われます。私はずっと民間にいるので、内部留保をしてしまうというのは、特にクレジットの観点ではとてもいいことなんですね。お金をためている方が格付は高くなるし、信用力は高まっていく。なので、いいことなんです。しかも、日本の企業だけにとどまらず、企業というのは収益を上げることが使命ですから、収益が上がるところがあるのであればどんどんお金は使ったはずなんです。使えなかった理由は何かというと、それこそバランスシートを良くしなきゃいけないという不安感があったせいなのか、それとも投資する先がなかったのか、投資しようと思うような面白いものが実はなかったのか、いろんなことを考える必要があって、内部留保だけを実は余り敵視しないでくださいというふうに私は訴えたいところでございます、これが一つと。  それから、じゃ、その内部留保が仮に悪いとか悪くないじゃなくて、でもお金は使ってもらわないと経済に寄与しないよねということで、私、一案申し上げたいんですけど、やっぱり二〇五〇年カーボンニュートラルというのは日本にとってとても大きな課題だと思っています。だけど、そのお題目はあるんだけど中身が余り伴っていないのが現状だと思っていて、日本の企業の中には、CO2を本当に削減できる技術とか様々なものを持っておられます。是非そういうものに税金で、税制で少し援助をするなりして、世界に打って出るような技術がたくさんありますので、先生たちの力で見付けていただいて、出していただくと新しい収益源になるんじゃないかなというふうに本気で考えていますので、そこは新しい経済政策に十分なり得ると思っています。  ということで、私からの意見は以上でございます。ありがとうございます。
  81. 山本順三

    委員長山本順三君) 時間が来ておりますから、できるだけ簡潔に。恐縮です。
  82. 鈴木亘

    公述人(鈴木亘君) はい、簡単に。  雇用と生活支援ということでございますけれども、一言で申しますと、結構メニューはあるということでありまして、むしろメニュー自体はもうあり過ぎるぐらいあるというので、あとはそれ使うか、使えるようにするということが重要ですね。  今回、物すごい政策メニューがたくさんありまして、古いものも新しいものもいっぱいありますが、それを、じゃ、貧困・困窮者の立場に立ってどれを使ったらいいかということになると、分からないですよね。なので、やっぱりワンストップ窓口のような者がいて、ちゃんと話を聞いて、これはあなたはこのメニューだというようなことを勧めるような、そういう相手に届くというような政策を考えるということが非常に重要だと思います。  やっぱりアウトリーチぐらい掛けるぐらいが重要で、なぜかというと、もうシングルマザーとか貧困の人たちというのは、メニューはあっても、教えてもらっても頭に入らないというか、もういっぱいいっぱいなんですね。だから、いっぱいいっぱいの人に届くような働きかけをするというのが一番重要なこれからの施策になるんじゃないかと考えております。  以上でございます。
  83. 藤川政人

    ○藤川政人君 ありがとうございました。
  84. 宮沢由佳

    ○宮沢由佳君 立憲民主党・社民の宮沢由佳です。  今日は、お二人の公述人、大変勉強になりました。ありがとうございました。  では、早速質問させていただきます。  先ほどもGoToキャンペーンの話が出ましたけれども、このGoToキャンペーン、またGoToイート、これは国民がかなり喜んだり、泣いたり、振り回されたりということだったと思うんですけど、この評価をお二人の先生からいただきたいと思います。時期や内容についても触れていただければ有り難いです。中空公述人、鈴木公述人の順でお願いいたします。
  85. 中空麻奈

    公述人(中空麻奈君) ありがとうございます。  GoToイート、GoToキャンペーンって世界でもやっておりますし、あっていいメニューだというふうには思います。実際に効果も出た部分もあるというふうに思います。  しかしながら、それをいつやるのか、いつ終わるのか、それから、タイミングによっては、得をしなかった人、得をした人の差が出たのもまた事実かなというふうに思います。ですので、利用できる人とできなかった人がいるという、ここは政策のもしかしたらミスだったのかもしれないというふうに思います。もちろん、緊急事態宣言のあるなしで世の中が変わっていくのはある程度仕方ないにせよ、そこの不平等というのはまた考えていただく、何かしら考えていただく必要もあるのではないかというふうに思いました。  以上です。ありがとうございます。
  86. 鈴木亘

    公述人(鈴木亘君) ありがとうございます。大変重要な御指摘だと思います。  今回の不況の大変大きな特徴は、飲食と観光というところがもう大打撃を受けて、ピンポイントで大打撃を受けているということなので、これにターゲットを絞った政策としては大変重要な政策だったんじゃないかと私は考えます。  ただ、それをやる以上はコロナ患者が増えるのは当たり前でございまして、人が動くわけですから、そのための用意をしていなかったというのが最大の問題で、人が動いて感染が増えても問題がないように医療提供体制をちゃんと用意しておいて、それをやるべきだった。今からでも遅くないので、それはセットの政策でございますので、それをやるべきだというふうに考えます。
  87. 宮沢由佳

    ○宮沢由佳君 ありがとうございます。  次は、企業への給付金、また協力金への評価を伺いたいと思います。  先ほど、国民一人一人への給付金などへの評価を伺いましたけれども、企業への様々な給付金、協力金、先生方の評価をいただければと思います。お願いいたします。先ほどの順でお願いします。
  88. 中空麻奈

    公述人(中空麻奈君) ありがとうございます。  先ほどプレゼンの中にも触れさせていただきました。あれは大企業ばかりだったんですが、中小企業も含めまして日本はやっぱり相対的にデフォルト率が低くなっています。なので、給付金やいろんな、雇用調整金とかいろんなものが本当に功を奏しているというふうに思っています。  この協力金とかが逆になくなってしまったときというのは、私たちは心配しているんですね、突然ばたばたとデフォルトが増えてくるんではないかとか。結局、何が言いたいかというと、コロナが収束して景気が良くなってくるとプログラムがなくなりますので、なくなったらデフォルトするっておかしなことが起きてきて、コロナがなくなってうれしいはずなのにそういう心配が出てくるという不安があります。  これはやっぱり、無理を通していただいたこの政策が功を奏した分というのはどうやって帰結させるかということを見ていただかなきゃいけないんだと思うんですね。やり始めちゃった政策をどういう形でどれだけモデレートに、穏やかに帰着させるかということを考えていただくときになっているんだろうなというふうに思います。  以上です。ありがとうございます。
  89. 鈴木亘

    公述人(鈴木亘君) 私も全く同意見でございます。  協力金あるいは給付金というのは最初は非常に効果的で必要な政策だったと思いますけれども、そろそろ次の転換というか、今のままに塩漬けするんじゃなくて、次の転換にもお金を動かせるというような制度設計をすべきなんじゃないかと思っております。  特に雇用調整助成金、前のリーマン・ショックのときに典型的だったんですけれども、雇用調整助成金が終わった途端廃業するとかというのがありましたので、やっぱり次に生きる金ではなくなってしまうんですね。なので、何か、休業をしているのはいいんですけれども、休業を補償するのはいいんですが、次につながる、あるいはもう廃業することを自分で考えているんだったら前もって廃業して次の転換につなぐような、何かそういうことを考えていくのが時期なのかなと思います。  それと、いろいろ、まあ最初だったのでしようがないですけど、結構制度設計がずさんで、かえってもうかっちゃったとか、あるいはデータを作り替えるとか、あるいは前年の、あるいはわざと収入を減らしておいて給付金を受けられるようなことをするとかということが結構見られたと思いますので、制度設計はそろそろ、もし続けるのであれば、もう少し考えた方がいいだろうなというふうに考えております。  以上でございます。
  90. 宮沢由佳

    ○宮沢由佳君 ありがとうございます。大変勉強になりました。  次は、減税についてお伺いしたいと思います。  国内外から、世界の、海外の方では減税に踏み切った国もたくさんありますし、国の中からもそういった声もございますけれども、専門の先生方のこの減税に対する御意見いただきたいと思います。お願いいたします。
  91. 中空麻奈

    公述人(中空麻奈君) ありがとうございます。  私は、本当、専らマクロを見ていて、日本の財政再建をしなければいけないという考えをしています。  そうすると、そうでなくても債務残高が増えていて、今このコロナ禍でもっと膨張している状況の中でどこで減税をするのかということが重要になってくると思います。めり張りを付けて減税をするところと、あとは残念ながら増税をしなければいけないところってあると思っているんですが、一番いいのは、本当、みんな減税減税といって、わあっとお金回していれば何となく世の中的にはハッピーかもしれないんですけど、現実を見ると増税をしなければいけないところも出てくると思っています。  なので、政策面でどこに力を入れるかということで減税をするところがあっていいと思うんですが、一方で、そこは増税も考えて、どういう形でこの債務も財政再建もしていくかということも視野に入れながらの減税というのが重要になってくるというふうに思います。  例えば、法人税の減税というのは国際競争力のために仕方がなかったというふうに私は思っているんですね。なので、国際競争力を確保するための減税なのか、そういうことをいろいろ御配慮いただければなと思います。私は、先ほど申し上げたように、環境問題とかに投資をするときの減税とか、一つの発想なんではないかなというふうに考えています。  余計なことも申し上げましたが、以上です。ありがとうございます。
  92. 鈴木亘

    公述人(鈴木亘君) ありがとうございます。  減税というと、消費税減税というのは皆さん思い浮かぶと思うんですが、私も最初は、消費税減税、まあ時期を限った減税というのは十分あり得たと、給付金よりも実は経済対策の効果としては減税の方が大きいわけでございますので、それはあり得たと思うんですが、現状のマクロ経済状況で見ますと、まだそこまでは必要ないんじゃないかなと、まあ次、またこの後の局面次第では考えざるを得ないと思いますけれども、今は取りあえず要らないんじゃないかなと思います。  懸念しているのは、減税を、増税は今していないんですけれども、実質的に社会保険料がどんどん上がったりとか、あるいは炭素税の議論が出てきたりとか、あるいは高速料金が上がったりというようなことが起きておりますが、この個別に何か料金上げるというのは、むしろ、マクロ、失礼、コロナ対策としては、例えば高速料金上げると車で移動しにくくなりますので、運搬とか宅配とか、あるいは自家用車でみんな移動したいわけですけど、それができにくくなるという意味で、何か減税をやらない代わりにやっている増税が、ちょっとターゲットが、そのトータルとして考えてコロナ対策になっていないというものがありますので、そこはやっぱり、税ではないですけれども、トータルで負担増という問題が果たして適切かというのは考えていくべき必要があろうかと思っております。  以上でございます。
  93. 宮沢由佳

    ○宮沢由佳君 ありがとうございます。とても勉強になります。  次の質問は中空公述人お願いしたいんですけれども、このコロナ禍、またコロナ後、この投資家の変化について教えていただければ有り難いです。
  94. 中空麻奈

    公述人(中空麻奈君) ありがとうございます。  コロナ禍で、去年の三月ぐらいなんですが、やっぱりいきなり何が起こってくるか分からないので、リスクオフというのが起きます。リスクオフって何かというと、取りあえず持っているものを整理するんですね、変なものを売ってみるとか。そうすると、わあっとスプレッドはワイドになる、株価は下がるということが起きてきます。でも、その後、世界中でもうサポートが出ましたんで、ということは底割れしないということを確信したので、多くの投資家がやっぱり戻ってきて、今の金融資産市場のバブル的な様相のところに入り込んできています。人が買わないと価格って上がらないので、そういう意味でいくと、投資家が多くのサポートを期待して戻ってきているんですね。  今も、この中央銀行による金融政策がどうなるかということで割と右往左往していますけど、結局そこにいろんなことが集約されたからです。投資家も、そこ次第ではまたリスクオフだって変わる可能性は大いにあります。コロナになったからといって、投資するしないという態度は変わっていないのですが、コロナになったおかげで金融政策、財政政策が大幅に出たんだとすると、それは投資家の後ろ盾になった、お金が入ってくる理由になったというふうに思っています。  この先も、金融政策がどういうふうに変わっていくかによって投資家の態度も日本に入ってくる資金フローも変化すると思っていますので、そこら辺を先生方にはよろしく見ていただきたいなと思います。  以上です。
  95. 宮沢由佳

    ○宮沢由佳君 ありがとうございます。  次は、鈴木公述人に質問させていただきたいと思います。  様々な課題国民生活に及んでいる中で、私はソーシャルビジネスをもっとしっかり支えていかなければいけないんではないかと思っています。特に、とても生活に困っている人たちに寄り添って、そして、かなり人によって課題が、細かい課題が違っていますから、困っている人全体にこんな政策をということはなかなか要求に、皆さんの思いに寄り添えない。だからこそ、やはりNPO法人や、今は一般社団法人でこういったサービスをされている方も増えてはいるんですけれども、こういったソーシャルビジネス、コミュニティービジネスをしっかりと、ただの政府の下請機関のようになってしまいがちなんですけれども、欧米の方ではこのNPOやソーシャルビジネスがかなりの大規模で、もうそれこそ政府の代わりのような動きもできているということで、ここをしっかりと支えていくことがとても大事だと思うんですけれども、鈴木公述人の御意見伺いたいと思います。
  96. 鈴木亘

    公述人(鈴木亘君) ありがとうございます。  全くそのとおりでございまして、やっぱり公的な福祉事務所とかというのは、どんどん人も替わりますし、やっぱりずうっとその困窮者をずうっと追いかけていくというのは、並走型の支援というのは難しいんですね。  で、前、民主党のときに困窮者自立支援事業というのができまして、ようやくそのソーシャルビジネスというか民間の人たちがその支援を追っかけるということはできるようになったんですが、なかなかそれが広がっていないという状況がありますので、やっぱり、民だけというのもどうかと思うんですけれども、官民が協力して並走型でできる体制をつくるというのが非常に重要な観点だと思います。  是非、なかなかソーシャルビジネスやっている人の方が貧困であるというような、そういう状況もありますので、是非そこの公的な支援というのがやっていただければと考えております。  以上でございます。
  97. 宮沢由佳

    ○宮沢由佳君 ありがとうございます。  まさにおっしゃったとおり、こういったことをやっている方々が、お給料がなかなかもらえなかったり、ボランティアでやっているということが課題なんですけれども、例えば、アメリカだったかイギリスだったかどっちか忘れたんですけれども、成績優秀な大学生、また大学院生の一番の就職希望先がNPOである。つまり、しっかりとお金をもらえて、そして社会のためになる、貢献ができる、そして、もうとても自分自身も自分の能力を発揮できる、両方が手に入る、大満足ができるのがこのNPOだということで、残念ながら日本にはこういったNPOがなかなか出現しない、実際ありますけれども。  こういった、それこそ事業支援、ボランティア活動ではなくビジネスに変えていくこの手法について、私もどういう施策があればこれがしっかりと事業として進んでいくのかというのを大変悩んでいて、さっき公、民って、官民っておっしゃいましたけど、ここにやっぱり企業も入ってしっかり利益を上げていく、そういった活動になっていけばいいというふうに思っているんですけれども。  時間が来ましたのでこれで終わりたいと思いますけれども、今日はお二人の先生のお話を聞いて大変勉強になりましたし、私たち政治家がやらなければいけないやっぱり困窮者支援であったり、あとマクロで外交政策、また海外とのやり取りも勉強していかなければいけないということ、大変学びになりました。是非、先生たち意見を参考にして私たちも頑張っていきたいと思います。  今日はありがとうございました。
  98. 杉久武

    ○杉久武君 公明党の杉久武でございます。  本日は、中空参考人、鈴木参考人、お忙しい中お越しいただきまして、大変にありがとうございます。様々、今日いろいろと私自身もお二人の公述をお伺いをして勉強させていただきました。  まず、中空参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。  このコロナ禍で政府が財政政策、金融政策を大胆に行ってきた結果、経済の痛みはあるにしても、失業率もそれほど上がらず、一定程度経済は守られてきたんではないかというふうに思っております。  ただ一方で、やはりこの金融市場を見ておりますと、正直、私自身、公認会計士を長らくやっておりましたので、一定程度経済の分野には経験が、現場の経験も長いんですけど、やっぱりこの株価の動きというものに対しては非常に違和感も覚えるところはあります。  やはり、世界的に金融政策を拡大する中で、やはり先ほど御説明の中にありました合理的なバブルが発生をしているというこの現状があると思うんですけれども、先ほども御説明いただきましたが、何をもってこれ収束をさせていくのか。とはいえ、これが変にはじけて経済に悪影響が与えてはいけないと思いますし、なかなかここは政府としても政策の立ち位置が難しいところだとは思うんですけれども、なかなか難しい質問になるかもしれませんけれども、これがどう軟着陸というか出口を迎えていくことがやはりその国民生活、経済にとって一番望ましい形なのか、もし御見解があればお教えいただければと思います。
  99. 中空麻奈

    公述人(中空麻奈君) ありがとうございます。  実は、本当に日夜悩んでいるところでございます。  合理的バブルというのは、バブルという言い方をした以上どこかではじけるんじゃないかという恐怖感が元々あります。だけれども、軽々にはじけてしまってはやはり大きな打撃があるんだろうと。それから、先ほど申し上げたように、今回のコロナ禍はセクターによって結構まだら模様なので、ある特定のセクターだけ影響がとても出てしまうという懸念も出てくるんじゃないかと思っているんですね。  なので、できますれば、一番いい軟着陸は、金融緩和を継続し、財政を使いながら、時間を稼ぎ、緩やかな長期金利の上昇をみんなで見守っていく、その期間が確保できることが大事になるんじゃないかと実は思っています。  だけど、それは物すごくナローパスです。どこかで何かがミスをしたりとか、あるいは私が見ているクレジットマーケットでどこか大きな大型デフォルトが出てきてしまったとか、それから、例えばCLOとかそういう証券化商品で何か影響が出てきたとか、そういう特定のものでリスクが出るということもあり得るシナリオです。  何が出てくるかまだ分からない中で、時間を稼いで緩やかに金利を上げることを世界中で見守れますかという物すごいナローパスを先生方には支援をしていただいて、うまく軟着陸できれば時間も稼げて財務内容も改善できるということだと思っているんですけど、どこかで失敗すればやっぱり影響が出てしまうので、その影響を最小限に次は食い止める策に変えていかなきゃいけないんじゃないかなというふうに思っています。  私も日夜考えていることなので、私の今の時点での私見ですが、以上です。ありがとうございます。
  100. 杉久武

    ○杉久武君 貴重な御意見いただきまして、ありがとうございます。  続けて中空参考人にお伺いしたいと思います。  今の関連にもなるんですけれども、やはり私も日々いろいろな支援者の方と、また親身相談も数多く受けております。そういった中で、やっぱりいろんな御意見があります。一つは、やはり、両公述人からもいろいろお話あった中で、やはりこの支援策が行き届いているというか、やはりどうしても漏れるというか、どうしても自分は公平に支援の手がないと感じる方は少なからずいらっしゃるのが現実だというふうに思います。  そういった中で、もっと、ある意味MMTのような理論でもっと財政出動、金融緩和、もっと財政出動できるんじゃないかと、もっともっと給付すべきだという御意見もある一方で、財政のこのワニの口、今回がばっとこう開いてしまいました。やはり将来の、やっぱり財政、日本の財政に対する不安を感じるというお声も実際いただいております。  やはり、先ほど財政再建のお話も少しいただきましたけれども、この財政再建について、先ほど税の議論もありました。私自身は、やはりこの財政再建を成し遂げていくためには、増税では私はなかなか難しいんだというふうに思っています。やはり大事なのは、やはり経済をもっと強くしていかないと、この財政再建というのはなかなか成し遂げるのが難しいというふうに思っておるんですが、これ、ただ、先ほどおっしゃったように、金利が緩やかでも上がると今の日本の一千兆円の債務残高に対してのインパクトは相当なものがあると思うんですけれども、この辺りについての御見解をいただければと思います。
  101. 中空麻奈

    公述人(中空麻奈君) ありがとうございます。  まさに、経済成長なくして財政再建なしというのはそのとおりだと思っています。ただし、財政が増えて債務残高がこれだけ増えているというのはもう日本が世界一ですので、何として減らすかというと、やり方はもう大げさにざっくり二つしかなくて、もう増税をするか社会保障等も含めて使い道を減らすか、もうこの二つしかないわけです。どちらかをきちんとやっていきましょうという道筋にあるので、今この状態の中で財政をばらまいていいかというと、先ほど申し上げたように、本当に必要な人への支援を除けば、やっぱりどこかでは無駄になってしまうというふうに思うんですね。  財政、一回膨れてしまった財政というのはなかなか減らすことができないし、しかもこれから金利が上がるので、利払い費だけで雪だるま式に増えていくことも分かっているわけです。なので、そういう意味でいくと、財政政策の在り方というのは、もちろん両輪です。金融政策があって財政政策があって両輪が出るので、カンフル剤のように、マーケットも含めて安定して見えているんですが、徐々にやめていこうという考え方を先生方は持っていただいて、どういう形でやると国民経済には影響が少なくて、かつ正常化に行けるのかというのを考えていただかなきゃいけなくなっている。  私は、余り長いこと財政を使い過ぎると、結果として日本国債にも影響が出て、国際競争力にも影響が出て、日本にとっては不利益になるんではないかなというふうに危惧しています。  以上です。
  102. 杉久武

    ○杉久武君 ありがとうございます。  続いて、鈴木参考人にお伺いをさせていただきたいというふうに思います。  ちょっと今日の本題とは若干ずれるかもしれませんけれども、やはりこのセーフティーネットの在り方というものもこのコロナ禍では非常に重要な課題でありました。そういった中で、昨年は一律定額の給付金十万円という形を行いましたけれども、ベーシックインカムに近いような、まあ一時的ではありますけれども、対応が行われたわけであります。  私、同世代の、若い世代の皆さんともお話しする中で、やはり負担感というものが非常に感じるお話を伺うことがあります。やはりこの子育て世代、特にやはり負担が重いという中で、ベーシックインカムの議論、先生の寄稿も読ませていただきましたが、そのベーシックインカムと、あともう一つはベーシックサービスという考え方があろうかと思うんですけれども、鈴木参考人としては、このセーフティーネットのこういった、本当に必要最低限の生活保障をするという観点での御意見をいただければというふうに思います。
  103. 鈴木亘

    公述人(鈴木亘君) ありがとうございます。  ベーシックインカムの議論が給付金を契機にいろいろ出てまいりまして、非常に人気のある議論なんですが、私自身は、これは現実的ではないというふうに考えております。  つまり、今回の給付金規模のものを一年間やろうとすると百五十兆円ぐらいということになりますので、今もう二百兆政府支出がありますから、三百五十兆ですね、そうすると、GDPの半分以上が政府支出ということになりますので、これは現実的ではない。  で、どこを減らせるかというと、生活保護の、医療の方は減らせませんので、生活保護の生活給付とかそういうものを減らしたりとかいろんな控除を減らしたとしても、やっぱり私の試算ですと、所得税でやろうと消費税でやろうと、二〇%とかですね、それぐらいの率になるということでございますから、ちょっとそれは現実的ではないんですが、ただ、現実の問題として、非常に生活が困っている人たちにお金が届くような仕組みをつくらなきゃいけないというのが今回非常によく分かったことだと思います。政府は全然把握していないわけですね、誰が困っているかというのを把握できていないので、そこを何とかするという政策は早急に考えなきゃいけないと。  ある意味ベーシックインカムとのハイブリッドの考え方で、民主党のときに給付付き税額控除という考えが出て、賛成していた人も多いと思うんですけれども、つまり、本当に困った人には、税金を取るんじゃなくて税金を逆にあげるというようなそういう政策ですね、これはまだまだ追求してもいいんじゃないか。それは事実上のベーシックインカムなんですね、最低の所得を保障するということになりますので、それはやり得るべきだと思うんですが、ただ、マイナンバーとかいろんなものがありますので、そこのハードルを越えなきゃいけないと言われております。  ただ、私は、そこはブレークスルーがあると思っていまして、本当に困っている人は自分で名のり出たっていいんじゃないかと思っておりまして、政府が、どこに名のり出るかというと、税務署に名のり出ればいいんじゃないかと思っていまして、市町村が所得把握していないのに給付するというのはもうそもそも無理な、難しいことなので、ところが、税務署は大体分かっているわけでございますので、自分が本当に貧困であると、それを証明しますというふうに名のり出た人に対して、きちんと税額控除だけじゃなくて税額給付をするというような政策はあり得るし、それはマイナンバーがなくてもできる政策ですので、ちょっとその辺りを、せっかくベーシックインカムの議論がいろいろ出てまいりまして、それはもうナンセンスだというので蹴るんではなくて、そのいい要素を取り出すような、迅速にできる政策というのを考えていただくのがいいんじゃないかと考えております。  以上でございます。
  104. 杉久武

    ○杉久武君 貴重な御意見ありがとうございます。  続けて鈴木参考人にお伺いしたいと思います。  今のお話の中で、給付付き税額控除のお話がありました。今、アメリカでは三度目の給付金をやるということでなっておりますけれども、アメリカの仕組みは、もう皆さんも御存じのとおり、所得制限付きの一律給付、一律でもないですね、逓減をしていきますので最終的にはフェーズアウトをして、高所得者はゼロということにはなっております。  私もアメリカで三年ほど会計事務所で働いておりましたので、今回の制度いろいろと調べて勉強いたしましたが、IRS、米国歳入庁が全て把握をしているこの所得税、前年の所得税の申告書を基に申請もなく自動的に給付をするという仕組みになっておりましたので、非常に合理的だなというふうに感じておりました。そしてまた、中間層に対してもしっかりと手が差し伸べられたのではないかなというふうに思います。  アメリカは、御存じのとおり、全員確定申告義務がある国で、サラリーマンでもやりますので、国がこれ把握できていると。私も、そういった意味では、もうちょっと簡単な、簡単に国が給付できる仕組み制度、今回デジタル法案も出されますのでどんどん進んでいくとは思うんですが、いかんせん日本の場合はサラリーマンは確定申告しなくていいという制度がある以上、かなりの割合がやはり納税申告を自らしていないという現状もあって、この辺りも整理をしていかないとなかなかこの制度設計というのが難しいかなと思っているんですけれども、ちょっと私の今の意見に対して何か御見解があれば是非教えていただければと思います。
  105. 鈴木亘

    公述人(鈴木亘君) 大変重要な御指摘ありがとうございます。  私もアメリカにいたことがあるので、ソーシャル・セキュリティー・ナンバーがないと生きていけない国ですので、やっぱりそこまで強制しないとなかなかアメリカのような仕組みにはならないんだなという感じがいたしますが、一つアメリカから学べることは何かというと、アメリカの所得をうそつけないように、非常に重要な仕組みとしては預金をリンクさせているんですね。つまり、金融資産が、預金をソーシャル・セキュリティー・ナンバーがないと作れないことになっていますので、所得が、うちは低所得ですと言っても、銀行預金の残高が増えていたらうそだろうということが言えるように、そこをリンクさせているというのが非常に重要な要素ですので、そこは日本も踏み越えられる、全部は無理だと思いますけれども、金融資産とリンクするというところさえ達成すればかなり、自動的に給付するとか、低所得者を、ターゲットを絞れるというような要素になりますので、そこがポイントかなというふうに考えております。  以上でございます。
  106. 杉久武

    ○杉久武君 貴重な御意見ありがとうございます。私も、ソーシャル・セキュリティー・ナンバー取らないと何もできないというアメリカの、入国したときのことをちょっと少し思い出させていただきました。  今回、デジタル法案でいろいろと一歩前に進められると思いますので、今日いただいた御意見も踏まえて頑張ってまいりたいと思います。  以上で終わります。ありがとうございました。
  107. 浅田均

    ○浅田均君 日本維新の会、浅田均と申します。  今日は、両公述人におかれましては貴重な意見聞かせていただきまして、本当にありがとうございます。  私の方から、まず中空公述人にお尋ねしたいんですけれども、正直に今回の株価が何でここまで上がっているのかというのがよう分からぬと、説明が付かないというふうなお話がありまして、まとめのところで、金融政策、財政政策による合理的バブルにすぎないというふうな結論付けをされているんですが、そこで金利上昇についても一定の警戒が必要とおっしゃっているんですが、先ほどのお話の中でこれは突然やってくる可能性があるとおっしゃいましたけれども、このトリガーになるのはどういうことであるというふうにお考えなのか。例えばFRBが金利を上げるとか、いろいろ考えられると思うんですけれども、突然やってくるその原因になるものの、原因になる可能性のあることを教えていただきたいと思います。
  108. 中空麻奈

    公述人(中空麻奈君) ありがとうございます。  もう本当にそれは日夜考えていることでございまして、合理的バブルというのが今できていて、何があるとこの合理的バブルが合理的に終われるかと考えると、一番、金融政策と財政政策ででき上がったのだから、金融政策と財政政策がうまいこと終わってくれればバブルがはじけることなく収束していくのだということが仮説としては成り立つわけです。  そうすると、中央銀行なり政府なりが失敗するということが起きてくればマーケットはクラッシュしかねないと思っています。でも、じゃ、中央銀行や政府のその財政支援、財政政策とかが失敗するということを我々予想して何か動いていいですかというとなかなか難しくて、なので、金融政策と財政政策はうまくサポートしていただけるということを前提にしたいというふうに思うんですが、ただし、一応出来事としては、中央銀行の総裁がマーケットとの対話を失敗してしまって、それによるクラッシュが起きるということはあり得る、一番あり得るシナリオだと思います。  それ以外でいくと、突発的なことですので、大型デフォルトが急に来るとか、つい先般、グリーンシルというファンドが経営破綻するというニュースが出たんですが、ああいうファンドの閉鎖が起きてきて、それが次から次へと起きるとお金が回りにくくなるとか。  あとは、アメリカの金融機関が、今、今まで規制を緩めていたのをもう一回厳しくしますとし始めると思うんです。そうすると、米中間の厳しい関係もそうなんですけど、何が言いたいかというと、マネーフローが恣意的に変調すると、それはクラッシュを起こしかねないというふうに思います。なので、政治的な思惑なのか規制なのか何か分かりませんが、マネーフローを恣意的に動かしてしまう、変調を来すようなことが起きないか起きるかということを確認していくことが大事だと思っています。大体そんな感じだと思います。  以上です。ありがとうございます。
  109. 浅田均

    ○浅田均君 そこで、今中央銀行とマーケットの対話がそごを来すというのがトリガーの一つになり得るというお話を聞かせていただきまして、日銀のバランスシートについてどういうふうにお考えになっているかというのをお聞かせいただきたいんですけれども、物すごく、御承知のとおりバランスシートを大きくしてしまって、金利が上がると、その長期金利はちょっとしか上がらないけれども、日銀、こっちの資産、負債に入っている付利のところが上がってしまって債務超過になってしまうのではないかという懸念を持つ実務家あるいは経済学者の皆さんいらっしゃるんですけれども、日銀のバランスシートに関してはどういうふうにお考えになっているかということと、それから、これ僕もやがて黒田総裁に聞きたいと思うんですけれども、世界の中央銀行で株式をこれぐらい持っている中央銀行というのはないと思うんですよね。日本銀行が日本で一番の株主になっている、こういう状態に関して中空公述人はどういうふうに評価されているのか、お聞かせいただきたいと思います。
  110. 中空麻奈

    公述人(中空麻奈君) ありがとうございます。  健全か不健全かというと不健全だと思っています。バランスシートが中央銀行も増え過ぎたというのも本当は不健全だと思っているし、実は私、何十年もこの仕事をしてきたんですが、ここまで中央銀行の一挙手一投足に目くばせをしなきゃいけない時代というのも初めてだなというふうに思っているんです。  それぐらい世界中の人たちが中央銀行に依存、見てしまう理由は、やっぱり金融緩和とバランスシートの膨張とそれによるマーケットの安定というのを見てきたからです。なので、だから健全か不健全かと言われると不健全だけれども、じゃ、急速にじゃ減らしますよ、バランスシートを落としていきますよと言われても、それはどうやって落とすんですか、マーケットにインパクトなしでどうやってやるんですかという話になってしまう。  なので、例えばですけど、株だって、何でもかんでも日銀ですといったときに、これだけコーポレートガバナンスの時代にコーポレートガバナンスが問われないというのは一体どうしたらいいのかとか、様々考えなきゃいけなくなります。ただ、ほかの国、中央銀行は、ほかの国の中央銀行は気候変動とかESG投資のコンセプトを自身に導入したりして、だからそういうことも多分日銀は考えていく可能性もあるなというふうに思っているぐらいなんです。  なので、日銀の中でも変貌が必要ですが、健全か不健全かなら不健全だけど、かといってそれを大問題かと言われてしまうと、これを否定してしまうとマーケットのクラッシュが起きかねないと思うので、緩やかにどれだけスムーズに移行させるかということを先生方には考えていただく必要があるんじゃないかなというふうに思います。  以上です。ありがとうございます。
  111. 浅田均

    ○浅田均君 ありがとうございます。  宿題を預かったという感じ。お答えをいただきたかったんですが、こちらも考えさせていただきますので、公述人におかれましては、また講評していただきますようよろしくお願い申し上げます。  それで、一番最初に、このコロナ禍下の経済というところで、株価がこれだけ、三万円を超えてしまったというのは説明が付かないと。ただ、そのCDSの推移について、これ去年の一月から三月ぐらいにぼっと上がって、左の図でいくと、これ一番下がったところですよね。まさに、僕、そのマーケットというか、過剰流動性みたいなのがあって、それがお金がどういうところに流れているのかを調べる必要があると思って、ビットコインというのをずっと見ているんですね。そうすると、去年の緊急事態宣言が一回目に出される直前に、ビットコイン、一ビットコインが五十万円を割ったと。今はもう七百万円に近づいていますよね。だから、まさしくそのCDSがぼかっと上がったときに、皆さんどうしようかなと思って、五十万円に下がったけれど、また安定してきて、そこにお金が流れていると。だから、もうじき七百万円をうかがうというようなところまで来ていると思うんですね。  そういうそのCDSの推移とお金の流れについて中空公述人はどういうふうに分析されているのか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  112. 中空麻奈

    公述人(中空麻奈君) ありがとうございます。  もうまさに御指摘のとおりで、リスクがあるところの方が利益は出るわけですよね。だけれども、CDSはそうなんですが、クレジットリスクが高い、あるいはここは買いたくない、ここは持っていたくないと思うとみんなが売ってしまうので、さっき申し上げたように、スプレッドがわあっと広がって、でも、その後、いやいや、スプレッドが広がっているということは価格が安いということです、なので、価格が安いときに、いや、でもちょっと待てよと、これだけ世界中でサポートしてくれるなら必ず良くなるよねと思うからみんな買って、ぐうっとタイトニングしたわけです。  いずれにしましても、過剰流動性があるおかげで、このお金はどこに持っていこうとそのお金が行ったところの価格が上がっているわけです。ビットコインも同じだと思っています。なので、ビットコインには、その裏付けがあるかとか、制度上どうだとか、違う問題もいろいろ発生してきますが、ここは安全、ここはと思ったら、あと、ここはもうかると思ったらお金は本当に入ってきますので、びっくりするぐらい、それが過剰流動性の怖さであり、マーケットの逆に言うと面白さなんだというふうに思っています。CDSとの関係というよりは過剰流動性があるためにこうなっているんだということですね。  ただ、一つだけ申し上げたいのは、必ずしもコロナだけが理由じゃありません。コロナになる前からずっと中央銀行の緩和は続いていましたので、過剰流動性でどこに行くかを探していました。それがいいあんばいで様々なサポートが入って、わあっと入り込んだ結果、資産価格の市場が上がっているというふうに見ていただいたらいいかなと思います。  以上です。ありがとうございます。
  113. 浅田均

    ○浅田均君 もう時間がありませんので、次、鈴木公述人にお尋ねしたいと思うんですが、先ほどのお話の中で、医療体制がすぐに崩壊してしまうと、だからここに全力を傾注すべきというお話を聞かせていただいて、なるほど、そのとおりだと思うんですけれども、この原因、何で日本医療体制というのはかくも簡単に崩壊してしまうのか、どういうふうにお考えでしょうか。
  114. 鈴木亘

    公述人(鈴木亘君) ありがとうございます。  結構長い話になってしまうので短くやりたいと思うんですが、一言で言うと、自由過ぎるということに尽きるんじゃないかと思います。つまり、もうこれ戦時ですので、こういうときに義務が課せないというのは、一定数、大病院は引き受けるべきだというようなことが命令できないというのは、やっぱりこれは大きな問題だと思います。お金を配って何とか引き受けてくださいと言っても、嫌だと簡単に言えるというのが非常に問題だと思います。  構造的な問題としては、いろいろあるんですけれども、とにかく民間病院が多いということと、その民間病院が多いということはよく言われるんですが、もう一つ重要な要素は、みんな小さいんですね。なので、例えば百床とか二百床の病院に、五床を引き受けろと言われたら、もう全部、全棟ごとコロナ病床にしなきゃいけなくなってしまいますので、それはやっぱり難しくて、かなり大きな病院にしかそれは課せないということですよね。日本病院、小さ過ぎますので、すぐにそれは変わらないんですけど、もうちょっと大きくすべきだと。そのためには、やっぱり役割分担みたいなのを、大病院は大病院になるというような役割分担をもっとしていくということが重要だと思うんですけれども。  すぐにできなければ、すぐにできることは何かというと、もう少しチェーン化するということだと思いますね。例えば、二百床、三百床、小さな病院が、例えば全部お互いに何か資本関係になってまとまるみたいなことにもしなれば、例えばその中の一つ病院を全部コロナ病床にするというようなことができるわけですので、何かもう少し、今は個別の病院が全部一国一城のあるじになっていますけど、もう少し資本関係を融通できるような体制をつくるというのは割と早くできることなんじゃないかなと思っております。  以上でございます。
  115. 浅田均

    ○浅田均君 ありがとうございます。  そういう観点から、今回、新型インフルエンザ等対策特別措置法というのも、若干、我が方の意向は完全に反映されていないんですけれども、若干反映されて、指示ができるよう、都道府県知事にそういう権限を与えるということになりましたけれども、こういう点は先生、先生としては評価していただけるんでしょうか。
  116. 鈴木亘

    公述人(鈴木亘君) ありがとうございます。  それはもちろん今よりはずっといいことだというふうに考えておりますけれども、問題は、やっぱり都道府県知事にとどまるというところが問題だと思っていまして、こういう一国全体の戦時には一国で命令できるというようなことじゃないとなかなか難しいですね。各都道府県知事というのは、一見その権限が集まって大統領のように見えますけれども、実は支えられている人たちに支えられた結果としていらっしゃる首長というのが非常に多くて、そうすると、なかなか、その県の中で、これは地域医療体制のときもそうだったんですけれども、命令、権限はいっぱい持っているんですけれども、命令して病床の調整をするということは今までもできなかったことですので、それをやる権限を持ったとしても、なかなかその伝家の宝刀は振るえないということだと思いますので、もう少し国がグリップを握るようなことでバージョンアップできればというふうに考えております。  以上でございます。
  117. 浅田均

    ○浅田均君 もう時間がありませんので最後の質問になります。鈴木公述人にお尋ねいたします。  今、杉委員お話の中で、ベーシックインカム、ベーシックサービス等のお話があったんですけれども、先生、ここで御提案になっています還付型給付、自己申告方式でと参考資料にお書きになっておりますけれども、これをごく簡単に御説明いただきたいと思います。
  118. 鈴木亘

    公述人(鈴木亘君) ありがとうございます。  本来であれば、マイナンバーとかその所得把握、歳入庁とかいうことがやるのが本筋だと思います。でも、それはもうずっとできないわけでありまして、この先も進むのは非常に難しいと思います。それであれば、もう全部低所得者への給付ができないかというとそんなことはなくて、自分が低所得者であるというのを名のり出てもらう、そして、先ほど申しましたように、預金の、自分で預金の残高というか口座を持って税務署に行って、自分はこういう状況だから出してほしいということを自分でできると、彼らはそれをやれば収入を、還付を受けられるインセンティブがありますので、その手があるということですね。  もちろん、それが望ましいとは思いません。やっぱりスティグマがありますので、恥ずかしいことだろうとかいろいろ問題はありますけれども、でも、ほかの、マイナンバーが進まないとかいろんな状況を考えると、低所得者が自ら自分の資産も持って税務署に還付を申し出るというようなことが現実的にはあり得るんじゃないかということでございます。  以上でございます。
  119. 浅田均

    ○浅田均君 ありがとうございます。  両公述人に御礼申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。本日はありがとうございました。
  120. 小林正夫

    小林正夫君 国民民主党・新緑風会の小林正夫です。  今日は、大変貴重なお話をありがとうございました。  私は、今日質問に立たさせていただくということで、一般の方から御意見も聞いてまいりました。特に子育てをしている主婦の方から幾つかこういう話を聞いてもらいたいと、こういうお話を承ってきましたので、その中心は、これから国民負担がどうなっていくのかということと、医療関係、やはり医療崩壊を心配する声、さらには学生さんの今の置かれている状況、こういうことが中心的な私の方に上がってきた課題でありました。  そこで、両公述人にお聞きをしたいんですけれども、政府、今はコロナ対策が一番ということで財政出動をやっております。それで、子育てしている主婦から、湯水のように使っている税金の尻拭いが将来心配だと、こういう声が届いております。  そこで、お二人にお聞きしたいのは、これまでの財政出動をどう見ているのかということと、総理は、戦後最大の経済の落ち込み、このように総理は表現をしているんですが、このコロナ対策の支出がこれからの国民生活にどのような影響を及ぼすのか、また、国民負担がどのような形で現れてくるのか、この辺のお考えについてお聞きをいたします。
  121. 中空麻奈

    公述人(中空麻奈君) ありがとうございます。  子育て世代ということで、私も子供がおりますが、やっぱり将来的に財政が増えて負担が増えてくると、恐らく子供たちが支払わされることになるのであろうということだと思っていて、その懸念は計算上は増えていくばかりですよねという話だと思います。なので、今、現役世代で生きている者として、やっぱり少しでも、まだ生まれていない子供たちも含めて、その財政負担がないように持っていかなきゃいけないんだろうというふうに思います。  ただ、今の現状を放置して、今までの財政負担あるいはコロナ禍で使ったお金というのが余分だったかどうかというのは、やっぱり細かく精査していく必要があると思います。区別ができなくて、例えば国民全体に十万円ずつ配ったことがありました。あのときに、確かに誰が必要かというのを選んでいても分からなかったので、必要な政策だった気もするんですね。なので、全部が全部否定する必要は全くないと思っているのですが、今、一年以上たって少し小康状態、マクロ的には回復過程にある中で、必要なものが何だったか、不必要なものはないのかということを見直す必要はあると思っています。  それから、そうでなくても増えている債務と今回コロナで増えた債務というのは分けなければいけないというふうにも思っているんですね。しかも、ドイツなんかはそうですが、これをどうやって返すかという話を既にしている国とまだそういう話になっていない国とでは雲泥の差があると思っていて、ちゃんとこうやって返していきますよという話が出ることによって、国民の、特に子育て世代のお母さんたちには不安感が減るんじゃないかなというふうに思います。  ですので、今までの政策を否定するというよりは、不断に見直しをして、何が大事だったか、何が大事じゃなかったかを分けていきましょうと。それから、それがどういう形で国民負担に返ってくるかなんですが、先ほども申し上げたように、我々がつくった我々の負担ですから我々が返すしかなくて、急激なハイパーインフレというのが嫌であれば、やっぱり堅実に増税をするか歳出を減らすかしかやりようはないんですということだと思います。それを、必要な人に必要なものを配りつつ実行できるかという話になってくるので、これはもう政治家の先生方の責任は重いという話になっていくのかなというふうに考えています。  以上です。ありがとうございます。
  122. 鈴木亘

    公述人(鈴木亘君) ありがとうございます。  非常に大問題でありまして、なかなかいい知恵もないわけでございますけれども、まず二つ重要な点があって、一つは、今回コロナで相当な債務残高が積み上がっておりますけれども、実はその前からずっと社会保障、高齢化でですね、社会保障が積み上がっていて、この先もそれは収まらない、ますます広がるというような状況にあるということですね。ですので、コロナがなくても非常に負担が増えていくという状況にあるというのが一つでございます。  ただ、その債務残高、全部返さなきゃいけないかというとそんなことはなくて、増えていかなければいいわけですね。つまり、持続可能であればずっと、人だったら、人間だったら途中で自分が死ぬ前に返さなきゃいけませんけれども、国というのはずっと続きますので、ずっとロールオーバーして、貸し借り貸し借りでロールオーバーして、発散していかなければいいということでございますので、とにかくこの先にどんどん増えるような要素を芽を摘むというのがまず第一歩かなというふうに思います。  ただ、難しいのは、ここで支出を、増税をするとか支出を減らすということをすると、せっかくここまで頑張ってマクロの景気を支えているものがクラッシュというか、非常に期待をしぼませてしまって、大きな影響が及ぶことが懸念されるわけでございますので、私は、景気の腰を折らずに、でも将来の財政破綻の不安を和らげる措置としては、将来の財政再建計画を立てると。今はやってしまうと景気は悪くなりますけれども、将来のものを立てるということが非常に重要だと思っておりまして、まあ税制はいろいろ手がある。  私の専門社会保障でお話しすると、例えば年金が非常に持続可能性が今不安視されているんですが、例えば支給開始年齢の引上げというのは今やると影響が及びますが、実際には二十年後とか三十年後の話なんですね。その時点でしっかりやるよという議論を今開始して計画を立てるということになりますと、なるほど、このままほっておくわけじゃなくて、将来は財政再建の方向に行くんだなということが市場も信じることができますので、だから、今直ちにそれをやるというんじゃなくて、将来の計画を立てるということをやるのがまずは必要なことかなというふうに考えております。  以上でございます。
  123. 小林正夫

    小林正夫君 ありがとうございました。  医療関係で鈴木公述人にお聞きをしたいと思います。  コロナ感染症で、先ほどもいろいろお話があったとおり、医療が心配だ、崩壊をしている、こういうお話でした。  具体的に私の方で生活者の方から意見もらったのは、一つは、老人ホームで急変があったときに病院の受入先がなくて、五か所、あっ、十五か所断られて、その間二時間も救急車が出ないことがあった。医療機関が大変なのは分かるけれども、このような状況、これから高齢社会ですので非常に困ってしまうという意見。  それと、また、感染を恐れて病院に行くことを避けて長期間診療を受けられなかったことで、元々の病気の悪化に気付かず過ごしている人が増えているんじゃないだろうか。さらには、入院患者医療スタッフがコロナウイルス感染するなどして、手術の延期など、感染症以外の診療を大きく制限せざるを得ない医療機関が出ている。  あともう一つは、これまで子供が体調を悪くすれば、すぐ行って診てもらえたんだけれども、今はなかなか制約が掛かってそのことができなくなってしまった、こういうような訴えがありました。  そこで、医療崩壊を防ぐために国はどういう施策をすべきなのか、この辺についてお考えをお聞きいたします。
  124. 鈴木亘

    公述人(鈴木亘君) ありがとうございます。大変重要な問題だと思います。  先ほどのちょっと浅田先生の御質問にも答えたときでお話ししましたけれども、やはりこういう緊急事態、戦時というのは、ある程度強制力が働けるような、法律を作るなりして一定の数を確保しなさいというようなことが、強制もあり得るんではないかというふうに考えます。それは平時とは別の考えということですね。  平時におきましても、日本の場合は役割分担が非常にできていないんですね、ほかの諸外国に比べて。諸外国は、例えば開業医が最初にゲートキーパーとして診て、これは手に負えないということになると病院にするとかというように役割分担がはっきりしているわけですけれども、日本の場合はそういう何か体制ができていなくて、全て商売敵になっているんですね。  つまり、開業医も小病院も大病院も、患者はどこに行ってもいいというルールになっていますので、お互いライバルになっちゃっているんですね。そうすると、なかなか協力関係はできませんので、こういうときにお互いに協力関係になれないという関係があるので、やはりある程度のめり張りを付けて役割分担をするというようなことをやっていくことが重要かと思います。  先ほど、いろんなお声を拾っていただいて大変参考になるんですけれども、病院も病気が放置しているという問題もあるんですが、もう一つ、やっぱり隠れて進行しているのが、老人病院の認知症とか要介護度の悪化というのが、実際統計がないので分からないんですが、私が耳に入っている範囲でも相当に進んでいると思います。  ですから、ここは何か手だてを考えるのが重要で、とにかく家族も会えませんので、今、老人ホームはずっと中にいてもう動けないで、そうすると、もうだんだん認知機能が落ちてまいりますので、その問題は結構大きな負担となってこれから出てくるんじゃないかなというふうに考えております。  以上でございます。
  125. 小林正夫

    小林正夫君 今、鈴木公述人がおっしゃったように、私も、身内で特養ホームに入っているんですが、会えないんですね、全く。したがって、入っている、入院している方も心配でしょうけれども、家族から見ると、何とか工夫して、ガラス越しにでも面会ができるような、そういうような工夫ができないのかどうか、そんなふうに思っているんですが、入院を受け入れている施設からすると、もうコロナ感染が広がってクラスターになったら大変だということで、今は今先生おっしゃったとおりで、私もこの問題が何とか、身内がガラス越しでも面会できるような、そんなような工夫が進んでいくといいなと、つくづく今感じました。  それで、学問、学生への影響について鈴木公述人からお聞きします。  これも主婦からの訴えなんですけど、地方学生への支援がもっとあったら子供たちの未来がもっと明るくなるのではないか、こういう視点で、地方の学生が都内の大学に合格して上京したのに、大学が休校で、地元に戻って生活をしているけれども、都内の家賃や大学費用は全額払い続けている状態で、親の収入は減るばかりで、子供もバイトが思うようにできず、泣く泣く大学をやめて地元に帰ってくる子供たちもいる。さらに、大学のオンライン授業について、学生から、学ぶことだとか人間関係の不安、父母や学生からは、授業料を下げてほしい、オンラインばかりで大学に行っていないのに、そして施設も使っていないのに費用が全く減額されないことにみんな不満を持っていると、こういう話が届いております。  私は、未来を担う学生たちのこういう声に対して、あるいは親の声に対して、政府はどのような施策をすべきか、このように考えているか、鈴木公述人にお聞きをしたいと思います。
  126. 鈴木亘

    公述人(鈴木亘君) 全くおっしゃるとおりの問題が起きておりまして、非常に大学業界としても大きな問題ですね。なかなか解決策も見付からないんですが、確かに授業料を下げたり、それ実際費用掛かってその全く受益を得ていないわけですので、それを戻すというのはあり得るんじゃないかと思います。大学の方も、ある程度費用は節減できている部分がありますので、そういう工夫はあってしかるべきかなと思いますが。  やっぱり、大学が閉鎖して思ったのは、オンラインで知識を享受することは割と簡単にできるんですね。でも、大学で本当に重要だったことは、対面で会って人間関係をつくったりとか、お互いに、ピアエフェクトといいますか、お互いに影響し合うような、そういうことが全くできなくなっていると。知が集結した場所にみんな集まって、簡単にいろんなことが解決するみたいなことが解決できなくなっているので、そこはもう補いようが今ないという状況ですので、やはりワクチンみたいなものを早急に普及していただいて、そこはオンラインではなかなかできないことですので、大学という、若者たちは幸い病気になってもそんなに深刻な状況にはなりませんので、とにかく高齢者たちさえワクチンを打ってしまえば彼らは活動できるわけですので、やっぱり対面を再開するというのが一番の施策かなというふうに考えております。  以上でございます。
  127. 小林正夫

    小林正夫君 中空公述人に最後一点だけ。  GoToキャンペーン、GoToイート、先ほどもお話出ていましたけど、再開をするとしたら、どういう状況になったら再開をすべきだとお考えでしょうか。
  128. 中空麻奈

    公述人(中空麻奈君) ありがとうございます。  いつ再開すべきかというのは非常に難しいのですが、景気を回復させるための政策としてはやっぱり効果があると思うんですね。実際に、お金を使いたいけどお金を使ってこなかったという人たちから見ると、やっぱりやりやすくなる、毎日行きやすくなると思います。なので、先ほども言いましたけど、ちょっと長い目で見ていただいて、景気が正常化してくる、それと金融緩和、財政政策、全て正常化してくる過程で、そういう経済政策も併せて付いてくるというのが重要なんじゃないかなというふうに思います。  これ、いつなんだ、何月何日なんだと言われると非常に難しいんですが、こういったバランスを取って経済政策を再開していただくというのは効果があるというふうに思います。  以上です。
  129. 小林正夫

    小林正夫君 これで終わります。ありがとうございました。
  130. 大門実紀史

    大門実紀史君 日本共産党の大門実紀史です。  お忙しい中、ありがとうございます。  せっかく中空公述人に来ていただいているので、やはり金融、日銀政策についてまずお聞きしたいというふうに思います。  コロナ対策で世界の中央銀行が金融緩和をやって、そのマネーがなかなか実体経済に回らないで株式市場に入ってバブルをつくり出しているんじゃないかということが大体の感覚じゃないかと思います。つまり、緩和マネーがつくり出したバブルと言えると思いますが、それだけでなく、日本銀行は今までも積極的に株価の下支えといいますか、ETFの購入を進めてまいりまして、今回のコロナ対策で、年間今まで六兆円だった購入額を十二兆円に増やしました。特に、株価が急落した去年の三月、四月ですかね、日銀が二か月で二・七兆円もETFを購入しております。特に三月、細かく調べてみると、ちょうど最安値になった三月十九日に、それまでの倍、一日で二千億円のETFを購入しております。まさに株価の下支えをしてきた面もあると思うんですね。  このことをある市場関係者の方にお話を聞きますと、僕らちょっと分からないんですが、現場の方じゃないと、午前中に株が下がると午後に日銀の買いが入ると、こんなことはみんな知っている話だということなんですね。これは健全な、先ほどありました、不健全とありましたが、健全な株価の形成、株式市場の在り方をゆがめているんじゃないかということと、もう一つは、バブルという点でいきますと、日本の株式市場は、下がったら日本銀行が介入してくれると。そうすると、海外の投資家も含めて、日本の株式市場はまあ安心だというんでよりバブルを膨らませるというようなこともあるんではないかという、現場の方ならではのリアルな話を聞いたわけであります。  中空公述人現場でいろいろ見ておられると思うんですが、そういう、日本銀行というのは株式市場にとって今やそういう存在になっているんでしょうか。
  131. 中空麻奈

    公述人(中空麻奈君) ありがとうございます。  それを言うんであれば、株だけじゃなくて日本国債市場もそうだと思います。  基本的には健全じゃない、そういう取引があっても、おかしい、おかしいよねという御指摘いただいたと思うんですが、本当はそうだと思っています。でも、かといって、いざ金融市場にいると、最後の買手がいるかいないかというのは、マーケットを安定して参加する上ではとても重要なポイントになってくるんですね。ここまでしっかりと介入してもらった以上、急に豹変されることは物すごいリスクだと思うんです。  なので、先ほど来しつこく言っているんですけど、どうやってモデレートに、緩やかにやめていってくれるかということが大事になってくるんですが、今までのところは逆にマーケットの安定にも寄与してきたと思うので、どれぐらい時間を掛けて正常化していくかということを見守る必要が出てきたなということです。  逆に言うと、今の現状というのはそういう、日銀が買ってくれる、最後の買手としての立ち位置がはっきりし過ぎて、それをマーケットも期待し過ぎてそれをやってくれると思っているので、逆にやらなかったら、とってもがっかりしちゃって株が落ちると思うんですね。そういうからくりをつくってしまったことは間違いでないのかと御指摘になれば、それは間違いだと思います。でも、訂正しようがないというのも事実で、それを緩やかに訂正していくという過程が始まるんだろうと思っています。  以上です。ありがとうございます。
  132. 大門実紀史

    大門実紀史君 私、国会の財政金融委員会というところにおりまして、日本銀行とはそういう議論をしてきて、まあ最初から言ったんですけど、十年以上前に始めたときから、これ、買い始めると出口がないよといいますか、引き揚げられないと。引き揚げた途端、株が下がるということになりますので、結局、緩やかにといってもなかなか難しいところありまして、そもそもやるべきじゃない政策を踏み込んだんではないかと思っております。先ほど、浅田議員とのやり取りもありましたけれど、なかなかソフトランディングといっても、もう入っちゃったら出られないような政策に踏み込んだんではないかと思います。  その点で、この合理的バブル論というのを大変興味深く読ませていただきまして、あのリーマン・ショックのときはですね、サブプライムローンという、まあアメリカの住宅バブル、実物を介したバブルがあって、それにマネーが絡んで、それが破綻してというのがありましたが、今回は、先ほどもございましたとおり、中央銀行のこの金融マネーがつくり出したマネーバブルといいますか、金融のバブルでございます。  その点で、中空公述人も先ほど、最後の買手がどうするかというのが、言わば中央銀行がつくり出して中央銀行が最後の買手として支えているようなバブルでございますので、中央銀行が今後どうするかという、今の日本、日銀でいえばETFも国債も同じなんですけど、そういう中央銀行の出口戦略はどうなるかというのがバブルの今後を左右するんではないかと思うんですね。  ただ、FRBとかECBと違いまして、日銀はコロナ以前から大規模な金融緩和をやって、ETFだけじゃなくて、おっしゃったとおり国債も大量に購入しておりますので、そう簡単にFRBやECBと違って出口に向かえないと。この点でも、元々出口なんかないからこんなのやめるべきだと言ってきたんですけど、やめないんですね。もうどん詰まりになっているんですけれども、そういうところにあります。  私、この出口の問題では常に、出口というのはもう難しいから、せめて正常化に踏み出すべきだということを日本銀行に何度も提案してきておりまして、一つは、今の物価上昇目標の二%ですね、もう今は意味がないからやめたらどうかと、誰もそんなの見ていないし、期待もしていないからやめたらどうかということと。今はちょっとコロナ禍ですからすぐは難しいんですけれど、もうちょっと落ち着いたときにやっぱり正常化できますと、日銀の国債保有残高は減らしますと、これから、いう方向を明確に打ち出すということと。三つ目は、やっぱり、中空公述人、詳しい世界ですけど、投機筋の動きが必ず、国債の空売りとか仕掛けがこの間も、何年か前にもありましたけれど、そういうことがありますので、投機筋の動きを規制する空売り規制とかですね。  何より大事なのは、マーケット、国民の皆さんに、日本銀行はこれからゆっくり国債については減らしていきますから協力してほしいと。例えば、長期で国債を保有してくれる人には優遇して日銀の国債を売却するとか、このコロナ禍での積み上がった債務というのは一緒にできませんので、私どもは、特別会計にして特別な長期償還でやるべきだというようなことも含めて、正常化には、出口なくとも正常化には踏み出すべきだということを提案はしてきているんですけど、なかなか難しい話ではあると思うんですが、中空公述人のお考えをちょっと聞かせてもらえればと思います。
  133. 中空麻奈

    公述人(中空麻奈君) ありがとうございます。  いずれも、タイミングを間違わなければ本当にいい政策だというふうに思います。  タイミングを間違わなければという言い方をわざわざした理由は、今は、もう先ほど来申し上げているように、マーケットは期待感で、金融政策と財政政策が動くだろうという期待感で動いていますから、それが急になくなったときのクラッシュはできれば人為的に動かす、つくりたくないわけです。  そうすると、例えばおっしゃっていることももう超まともで、正常化を促しますとか、あるいはその長期の保有者を見付けていきましょうとか、いずれもそうだと思うんですけれども、タイミングを間違えると、あっ、国債を減らすんだというメッセージだけ伝わる、それだけ伝わって、金融緩和やめるんだというふうになって、日本発のクラッシュシナリオに火を付けることは間違っているというふうに思うんです。なので、やり過ぎちゃった以上は、そこはちゃんとメンテナンスをしつつ終えていっていただく責任もあるんだろうと思います。  じゃ、タイミングはいつかというと、金融緩和は財政再建ができるときとセットだと思いますので、財政再建をしていくという目途をきちんと政府立ててもらって、それとのセットで金融緩和は語られるときが来るということを固く信じたいというふうに思います。  以上です。
  134. 大門実紀史

    大門実紀史君 鈴木公述人に伺います。  鈴木公述人は金融政策専門ではないかも分かりませんが、日本銀行出身ということで、もう思い出したくないかも分かりませんけれども、今の日本銀行をどういうふうに見ておられるか、御感想でもあれば。
  135. 鈴木亘

    公述人(鈴木亘君) ありがとうございます。  景気予測の主任をしておりましたので、懐かしい議論を聞いておったわけですけれども、バブルのときを思い出しますと、バブルがどうして起きたかという、いろいろ諸説あるわけですけれども、やっぱりバブルって一種の妄想ですので、もう妄想が膨れ上がっちゃうわけですよね。なので、そういうシナリオを断っていくということが非常に重要で、つまり、将来こういう条件だったらやめますとか、こういう条件になるまでやりますとか、そういういろんな対話の回路があの頃は全くなくて、そういうことを全く、時間軸とかやっていなかったわけですけれども、やっぱり時間軸でこういう条件だったらこうするという先のことをどんどん発信して、妄想の種を断っていくというのが結構重要かなと思うんですね。  先ほど中空さんが言ったように、もう一つは、あのときの過ちは政策協調できていなかったということですので、今回かなりできておりますけれども、やっぱり政府の財政再建シナリオに合わせて日銀はこういう条件だったらこういうふうにするというような、両方が協調してやるということがないと、例えば金利は上げるわ融資規制はやるわと、ダブルのことをやってクラッシュさせるとかそういうことが起きるわけですので、やっぱり将来との対話、将来のむしろいろんなシナリオを政策協調で発信していくということが多分重要なのかなというふうに思った次第でございます。  以上でございます。
  136. 大門実紀史

    大門実紀史君 ありがとうございます。  鈴木公述人にもう一つお聞きしますけれど、今回、このコロナ対策で大量の国債がまた発行されて、一年間の予算に匹敵する規模になるような国債が発行されております。このコロナ対応で発行した国債をどうするかというのは、先ほどちょっと申し上げましたけど、通常の国債と同じように考えると大変なことになると。やはり特別会計にして長期償還、考え方としてはMMTという考え方もございまして、いいんだと、借金はどんどんしてもいいんだというような考え方。で、私申し上げているのは、特別会計にして長期で償還するというような別個の償還の方を考える。もう一つは、もう増税で、財務省はそういうところに傾いていますが、増税で、あの復興のときそうでしたけどね、増税で償還していくというようなことがあると思います、言われていますけれど、経済のことを考えますと、鈴木公述人の率直な御意見で結構なんですが、どれが一番ふさわしいとお考えでしょうか。
  137. 鈴木亘

    公述人(鈴木亘君) 大変難しい御質問をいただいたと思うんですけれども、ちょっとまだしっかり考えてはいないんですが、特別会計というのは一つの考え方かなというふうにちょっと思っております。つまり、財政再建のシナリオは捨てないということが言えるわけですね。これは特殊な事情で膨れ上がったものであるので、既存の財政再建のシナリオは捨てずにそれは達成するんだということが両立できますので、それは一つ模索していいルートかなと思うんですね。  ただ、非常に難しいのは、どこまでがこの今回の問題で生じたものなのか、どこまでがそうじゃないのかというのを分けることは非常に難しいので、そこは大きな宿題になると思いますけれども、一つの考え方だなと思った次第でございます。  ありがとうございます。
  138. 大門実紀史

    大門実紀史君 同じ質問、中空公述人お願いいたします。
  139. 中空麻奈

    公述人(中空麻奈君) 私も、先ほどのプレゼンの中でも少しだけ申し上げたんですが、今、鈴木さんもおっしゃいました、特別会計にするかどうかは別として、別勘定にしておくというのは大事だと思うんですね。コロナで増えた分というのは、あとはドイツと同じで、どうやって返すか、いつ返すかということを彼らは言い始めているので、そういう発想を日本でも持つ。日本国債の格付を下げないための秘策は、この政府方々政治家の方々日本国債というのの格付を下げないために財政再建をちゃんとしますよということにコミットしていただくことなので、それをやっていただくことが大事というふうに思います。  増税がいいのか、何がいいのかというと、どちらにしろ誰かに負担が行くので、そこはうまくやっていただくしかないとは思っているんですが、会計を分けて、きちんとこれは返していきます、財政再建はしていきますという意思表示をするということに意義があるというふうに思います。  以上です。ありがとうございます。
  140. 大門実紀史

    大門実紀史君 どうもありがとうございました。  終わります。
  141. 山本順三

    委員長山本順三君) 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。  この際、公述人方々一言御礼を申し上げたいと思います。  本日は、有益な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  それでは、午後二時に再開することとし、休憩いたします。    午後一時九分休憩      ─────・─────    午後二時開会
  142. 山本順三

    委員長山本順三君) ただいまから予算委員会公聴会を再開いたします。  令和年度予算三案につきまして、休憩前に引き続き、公述人方々から御意見を伺います。  この際、公述人方々一言御挨拶を申し上げたいと思います。  本日は、御多忙のところ本委員会に御出席いただき、誠にありがとうございます。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。  本日は、令和年度予算三案につきまして皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、内政・外交の諸課題について、公述人神奈川大学法学部・法学研究科教授大庭三枝さん及び大阪市立大学大学院経営学研究科教授除本理史君から順次御意見を伺います。  まず、大庭公述人お願いいたします。大庭公述人
  143. 大庭三枝

    公述人(大庭三枝君) 本日は、参議院予算委員会公聴会意見を述べるという貴重な機会をいただき、誠に光栄に存じます。このような機会を得られたことに心から感謝をいたします。  日本として取り組まなければならない外交的課題は多々存在しますが、時間の制約もあり、私自身がアジア太平洋の国際政治、特に地域制度や地域主義、地域協力を専門にしていることもありますので、その観点から、現代日本が心掛けるべき外交課題について私見を述べさせていただきたいと思います。  先日、我が国の菅首相、アメリカのバイデン大統領、オーストラリアのモリソン首相、インドのモディ首相が初めてQUAD、日米豪印四か国の首脳会議を開き、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて協力していくことで合意しました。また、昨年十一月、日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、そしてASEAN諸国が東アジア包括的経済連携、RCEPに署名しました。  これらの事例は、日本外交において伝統的な二国間のバイの外交のみならず、多国間や地域単位のマルチの外交が重要になりつつあること、また、そのための枠組み形成に日本が積極的に関わっていることを示しています。その背景として、現在、冷戦が終結して以来、国際社会が大きく規定してきたリベラル国際秩序が動揺していることが挙げられます。  リベラル国際秩序は、自由で開かれた市場経済の一層の推進、多元的民主主義や人権保護などのリベラルな普遍的価値の優位、そして、力による現状変更ではなく国際協調や協力によって各国が問題に取り組むといった国際協調主義、この三本の柱で支えられていました。  皆様に配付した資料を見ていただくとお分かりのように、アジアにおいて様々な地域制度や枠組みが存在しています。  三枚目の図を御覧ください。二つの図があります。図一は一九九〇年代、二〇〇〇年代の約二十年間に主に発展したASEANを中心とする地域アーキテクチャーと呼ばれている小地域制度中心にまとめたものです。実線で示された円がこのアーキテクチャーに当たります。中心的な位置を占めているのが東南アジア諸国連合、ASEANです。東南アジア十か国で構成されており、二〇一五年にはASEAN共同体の設立が宣言されるなど、アジアにおいて最も制度化が進んでいる地域制度です。そして、それを囲む形で内側の円から東アジアにおける実質的な協力を行う枠組みとしてのASEANプラス3、東アジア首脳間での共通の問題を対話する枠組みである東アジア・サミット及び防衛協力枠組みであるASEAN防衛大臣会合、これはADMMプラスと言います。最も外側の円として示されているのが、安全保障、政治対話の枠組みであるASEAN地域フォーラムです。加盟国等の詳細は注や記載を御覧ください。  このように、ASEANを中心に重層的な地域制度が形成、発展したのは、ASEANが様々な域外国を巻き込んで地域の制度化を進めていこうという戦略を推進したこと、また、それに対して域外国の側、これは日本も含めてなんですけれども、域外国の側もそうしたASEANのイニシアチブを尊重したという事情がありました。また、それはリベラル国際秩序の時代において、アジアにおいても国際協調主義が重視され、マルチで地域の問題に対処することが重視されていたことも背景にありました。  二〇一〇年代に入り、リベラル国際秩序の揺らぎが顕著になってきております。図二は、主にこの二〇一〇年代に発足、発展した新たな枠組みです。  TPP、環太平洋パートナーシップ協定は、元々アメリカが積極的に動いて二〇一〇年に交渉が開始され、二〇一六年に署名に至りました。残念ながらアメリカは離脱してしまいましたけれども、改めてアメリカ抜きで二〇一八年三月にTPP11協定が署名され、同年十二月に発効済みです。RCEP、東アジア包括的経済連携は、二〇一二年に交渉開始されました。交渉は難航し、インドの離脱などの紆余曲折がありましたが、冒頭に述べたとおり、昨年十一月に署名されました。  これらは、レベルの違いはあれども、共に貿易投資の自由化を包括的に促進し、国境を越えた生産ネットワークの拡大、深化によって発展するための共通の経済ルールの設定をしたという意義がございます。QUADも近年活発化し、二〇一九年に外相級の会合が開催され、冒頭に述べましたように首脳会議も最近開催されました。また、日本などからは自由で開かれたインド太平洋、FOIPが提唱され、現在に至っております。  リベラル国際秩序の揺らぎの時代とされているこの十年間は、一般的にはマルチの後退、多国間主義の後退が起こったというように指摘がされています。ブレグジットやアメリカのトランプ政権のTPP離脱はその例だとされます。  しかしながら、興味深いことに、アジアにおいて、むしろ図二に見られるように様々なマルチの動きがこの時代に活発化しました。これは、米中間のパワーバランスの変化、米中対立の激化といった事態を受けて不透明化する地域環境の中で、日本を含めた各国がリスクヘッジのためにマルチ外交をむしろ推進したということによるものです。日本もTPP、RCEPの妥結に大きく貢献しましたし、FOIPの提唱やQUAD連携にも努めてきました。  このように、マルチの枠組みを活用した外交は、アジア太平洋における国際政治において重要度を増しています。また、日本も自国及び地域全体にとって長期的に望ましい地域秩序を構築していく際、マルチ外交を重視するようになっています。  しかしながら、一般的には二国間の伝統的なバイの外交を重視する言説も多々見られます。国際政治学の観点からすると、マルチ外交の効用は主に二つあると考えられます。一つは、共通のルールや制度、枠組みによって規定されるマルチ外交においては、超大国や大国の一方的かつ一国主義的な行動一定程度抑止し得るということです。そして、二つ目として、外交交渉上、イシューリンケージがしにくくなるということです。イシューリンケージとは、例えば安全保障の懸案で対立があるときに、通商政策上の圧力を掛ける、あるいは通商政策上の妥協策をちらつかせて自国の言い分を通すといった異なる外交課題を結び付けて交渉するという、特に国力で大きな差のある二国間で外交が展開されるときに起こりがちなことがマルチでは抑制され得るということです。  日本は、これら重層的に展開する地域制度を並行して活用して、協力や推進を進める多層的なマルチ外交を行っていく必要があると思います。特に強調したいのは、国際秩序が動揺し、米中対立の先行きが見えず不確実性が一層高まる時代にあって、米中それぞれのリスクヘッジをすべきであって、その際のツールとしてマルチの枠組みが重要であるということです。  習近平体制下の中国は、一帯一路等を標榜し、東南アジアを始めとするあの幅広い世界の諸地域に対する経済的な影響力を強め、政治的影響力の強化につなげています。日本と尖閣諸島をめぐっては深刻な対立がありますし、南シナ海における権益拡大の動きも地域環境の安定化にとって非常に深刻な懸念を投げかけています。  ただ、ここで確認しなければいけないのは、中国は日本にとって重要な隣国でもあり、この国との関係を決定的悪化させてはならないと、それは避けねばならないという現実です。そして、二〇一〇年をもって中国の名目GDPが日本のそれを追い越し、その差が拡大していることに表れているように、残念ながら日中のパワーバランスは逆転しています。こうした状況では、日本が単独でできることは限られます。よって、中国に対して様々なマルチの枠組みを使い分けつつ対処する努力が必要となります。  前述のQUAD首脳会議で言及された包含的、インクルーシブなQUAD、あるいは自由で開かれたインド太平洋の連携の強化を通じて、中国に対して様々な懸念を持つ国々と望ましい地域秩序の在り方についての認識を共有し、並行してプラグマティックにインフラ整備やエネルギー関連協力、環境、コロナ対策といったような、ワクチンワクチン協力といったような、そうした様々な協力を行っていくことは非常に重要です。  その一方で、日本は、RCEPやTPPといったアジア太平洋、東アジア地域全体の発展を目指すための共通ルールの設定にも深く関わってきました。中国はRCEPに参加しています。中国も地域全体の経済ルールを共有したという点で重要です。また、習近平国家主席がTPP参加の可能性について言及したことも注目されます。  このように、中国に対しては、様々なマルチの活用を通じ、その権益拡大に対して牽制を掛けるとともに、一定の関係を維持しつつ、地域の共通ルールにも巻き込んでいくといった多彩な戦略を取っていく必要があります。  また、アメリカの動向に鑑みても、日本にとってマルチ外交は重要になってきています。バイデン政権は、現在のワシントンの超党派的な対中強硬論も背景にあり、中国との長期的な戦略的競争を展開する姿勢を示しています。前トランプ政権と比べ、多少のアプローチの変更はあれども、その姿勢は今後も当面は維持していくでしょう。  ただ、国内における深刻な社会的分断、格差の拡大、財政上の制約等によりアメリカの超大国としての実力はかなりそがれている上、前述の中国の台頭により相対的にも低下しています。よって、アメリカが今後どこまでアジア国際秩序の維持にコミットするかについては、長期的な観点から注視する必要があります。アメリカがもはや世界の警察官ではないという立場は、中東政策に絡めての言説ではありますけれども、既にオバマ大統領が口にしていたことです。  日本としては、アメリカとのバイの関係の強化とともに、アメリカをも巻き込みつつ、戦略的利益やあるべき地域秩序像を共有する他の国々との連携を深めていくことが肝要です。この意味で、QUADやインド太平洋は重要な枠組みとなり得ます。また、TPPへのアメリカへの復帰は簡単ではないと思いますけれども、粘り強く働きかけていく必要があります。  さらに、中国やインドといった大国、地域大国の台頭のみならず、ASEAN諸国も発展を遂げ、地域秩序の在り方を決定付ける重要なアクターとなっていることに目を向ける必要があります。  よく米中の影響力拡大の草刈り場としてのみASEAN諸国を見る見方がなされますが、このような認識は、この地域のより複雑な現実を看過することにつながります。東南アジア、東アジア情勢は、米中からの働きかけで一方的に決定付けられるものではなく、ASEAN諸国それぞれの国益の観点からのアメリカと中国の働きかけにどう対応するかということにも大きく左右されています。  こうしたASEAN諸国との連携を深めていくためには、個々の国との関係維持強化とともに、中小国連合としてのASEANが地域制度中心として機能してきたことをより重視し、ASEAN統合により一層貢献するとともに、ASEANを中心とするアーキテクチャーの活用を今後も一層図っていく必要があります。  最後に挙げたいのが、公正で持続可能な社会の存立を各国内で可能にする地域秩序という観点から日本がなすべき貢献をしていくことの重要性です。  例えば、TPPやRCEPによって促進される国境を越えたサプライチェーンの拡大、深化によって、そうしたサプライチェーンに参入し得た経済アクターや地域とそうではない経済アクターや地域との間の格差は当然開くでしょうし、また、競争の激化によって環境など公共の利益を損なう事態も引き起こしかねません。よって、こうした課題に対処するため、TPPやRCEPには公正かつ持続可能な発展を実現するための共通のルールを一層強化することが重要です。TPPには既に労働者の人権やその環境への配慮に関するルールが盛り込まれていますが、一定程度盛り込まれていますが、それを一層強化していくこと、またRCEPにも新たにそうしたルールを盛り込んでいくことが挙げられましょう。  地域全体が揺らいでいるときに特定の国との関係を個別に考える発想は限界があります。今後の日本にとって望ましい国際環境の維持のためには、二国間で関係を調整するという線の発想のみならず、地域全体そして国際社会全体の秩序の在り方そのものを自らにとって望ましいものにするという面の発想が一層重要になってきているというふうに考えます。  これで終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。
  144. 山本順三

    委員長山本順三君) ありがとうございました。  次に、除本公述人お願いいたします。除本公述人
  145. 除本理史

    公述人除本理史君) 本日は、貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございます。  先日、あの三・一一の東日本大震災から十年を迎えたということでございまして、今日は、今後の復興政策の在り方を考えるという観点から、原発事故被害の問題、それから復興の現状についてお話をさせていただきたいと思っております。  私、福島原発事故の被害調査ですとかあるいは賠償、復興政策の研究を三・一一後ずっと続けてきておりまして、福島には百回以上通って調査をしてきております。今日お話しするのはそうした経験を踏まえてのことでございまして、資料の一枚目に、共同通信から配信されております短文でございますけれども、本日のお話のポイントをまとめてございますので、御覧いただければと思っております。  先ほど申し上げましたが、三・一一から十年ということで、その記憶の風化ということが懸念をされております。しかしながら、その復興の歩みというのは途上でございまして、課題も多く残されているということでございます。  福島のその被災地、原子力災害の被災地に目を向けますと、二〇一四年の四月以降、避難指示の解除が進んできておりまして、一七年の春には三万二千人に対する避難指示が解かれたということです。最近では帰還困難区域の解除ということも話題に上り始めております。しかし、その避難指示が解除されても、その住民の帰還、これ地域差ございますけれども、全体として見るとなかなか進んでいないという下では、例えば、以前よりも少ない人数で同じ面積の農地を管理していかなければならないとかいったような、様々なその地域における課題が山積をしているということです。  除染ですとかあるいは建物の解体、ハードのインフラ整備といったようなことはたくさん行われてきたわけなんですけれども、そうした中で、確かに復興しているのかもしれないけれども、風景がどんどん変わっていってしまって、まるで自分の知らない土地のようになっていくというような声も聞かれるわけですね。復旧というよりも、自分の町がなくなっていくようだというふうにおっしゃる方もいらっしゃる。  確かに、福島の復興にはいろんな新しいチャレンジをしなければいけないんですが、それだけではなくて、やっぱり地域の中のその歴史の積み重ねの延長線上に復興があるんだということですね。それぞれのその地域が培ってきたその地域の価値というのを再確認して、それを踏まえて今その復興政策のその問題点を見直していくというようなことが大事になっているんではないかということでございます。  では、どういうところに問題があるのかということですが、これは私が言っていることだけではありませんで、例えば資料の二枚目御覧いただけますと、最近の朝日の社説にもほぼ同旨のことが書いてありますけれども、私どもも財政学者なんかと一緒に復興財政の分析をいたしますと、数字上これは明らかなのですが、ハードの公共事業というのはやっぱり重点が置かれていて、被災者支援というところへの割合が非常に低いということです。これは、日本の災害復興政策全般の特徴でもありますし、これ東日本大震災における同様に特徴でもあります。福島でもそうなのであります。個人に直接届く支援施策よりも、除染やインフラ復旧、整備といったようなことが大きな割合を占めている。私どもが、二〇一〇年度から一七年度まで、ちょっと前の数字でありますが、震災復興財政のデータを見たところ、ハード関連とみなされるものが約六割、生活やなりわいの再建に関係するものが一二%程度、一割強というような比重でございました。  こういうような特徴を持った復興政策というのは、いろんなアンバランスをもたらさざるを得ないということですね。例えば、復興需要が建設業に偏っていって、雇用もそうしたところが中心になっていく。あるいは、ハードの事業が中心になって進んでいきますので、今避難指示が解除された地域では、例えば教育や医療、介護、こういった機能がやっぱりどうしても回復が遅れていると。ですので、そうしたインフラへのニーズが高い方というのはなかなか戻れない。子育て世代だとか高齢者中心に帰還しているというイメージがありますけれども、医療、介護ニーズが高い方なんかはやっぱりなかなか戻れないというような現状があります。やっぱりそこそこ自分で車も運転できて、移動の手段が確保できて、もう仕事をリタイアしていてというような方でないとなかなか戻れない。あるいは自営業者で、戻っても仕事はできるような方、場合によっては役場の方というような感じになっています。  そうしますと、避難者が戻れないと、その地元のコミュニティー相手に商売していたような小売業の事業者の方は再開が困難になるというような様々なアンバランスというのが出てきてしまうと。ですので、こうしたアンバランスを踏まえて、個々の、インパクトを受けた様々な被災者の状況に即したきめ細かな支援というのが非常に大事になってきているということであります。しかし、現在の復興政策は、この点のきめ細かな支援策という意味での側面で弱さを抱えているというふうに言えるかと思います。  福島の原子力災害の被災地の場合、個々人の生活再建というのは賠償に委ねられてきているということですね。原発事故の賠償は、原賠法という法律がありまして、無過失責任という制度がもう御案内のとおりございますので、それに基づいて東京電力は賠償してきていると。確かに、無過失責任の制度がありますので、故意、過失の立証を必要とせず、四大公害などとは違って、裁判が提起される前から東京電力の賠償というのはスタートしてきている。ただ、一方で、この無過失責任の制度が津波対策の不備に関する責任の解明というのを妨げている面もあるということも申し上げておかなくてはなりません。  原賠法に基づいて原賠審と言われる審査会の指針が出されて、それに基づいて東京電力は賠償の基準を定めていくというような仕組みになっておりますが、ただ、これには、無過失責任でスピーディーに賠償が始まったという一方で、いろんな問題点があります。  特に、その賠償の中身を決めるガイドラインである指針の策定に当たって、当事者の参加の機会がほとんどないということですね。そうなりますと、被害者から見ると、賠償の中身や金額というのは一方的に提示されてくるということになってしまいます。それから、当事者の参加が保障されていないということから、その賠償の内容とか金額がその被害当事者の納得を得られない、被害実態を反映していないというような問題が生じてきているということでございます。  特に、区域間の賠償格差とかいうようなことが非常に大きな問題になってきましたし、それから、ふるさとの喪失というふうに私が呼んできたような被害ですね、これは例えば避難元の地域での日常の生活を支えてきたもの、例えば、家があれば暮らせるというだけではなくて、周辺の自然環境との関係だとか地域の人々のつながりがあって初めて暮らしが成り立つといったような側面があったわけですけれども、そうした人々の暮らしを支えてきた周辺的な条件から切り離されてしまったということですね。これをふるさとの喪失というふうに呼んでおりますが、それがその慰謝料の賠償の対象から外れている。当事者の実感としては非常に大きなものがあるわけですけれども、賠償の対象から外れているということはございます。  例えば、原発事故の被災地では山菜とかキノコ取りといったような活動が広く行われておりました。これは住民の暮らしと非常に密接に結び付いた大切な活動でありまして、山林というのは生活圏だったんですね。これは、単に食料を得るというだけではなくて、例えばキノコ取りの名人はキノコ取りが上手であるということによって周辺の住民からそうしたステータスを確保するというような、人々の人間関係を構築する活動としても重要な意味を持っておりました。しかしながら、現在の政策上はこうした山林の意味というのが重視されておりませんで、除染がほぼ手付かずになっていると。例えば、原木シイタケの生産者というのはこうした山の汚染の影響を非常に大きく受けております。  これは、資料の三枚目のところにちょっと付けておりますが、これは福島出身の荒井広幸先生のお嬢さんたちがなさっている活動なんですけれども、あぶくま山の暮らし研究所、これ見ていただきますと、百五十年先を見据えないと元の暮らしの回復というのは展望できないというような長期的なビジョンですね、こうしたものを掲げながら活動せざるを得ないというような状況があります。こういう、ふるさとを再生していくためには何が失われたのかというものの総体をきちんと明らかにして、その重要性を確認をしていくという作業が不可欠であろうと思います。  このふるさとの喪失というものは、今全国各地で裁判が広がっておりますけれども、被害者による集団訴訟が広がっておりますが、そこでも焦点になっております。この賠償は、慰謝料の対象から、先ほど申し上げた原賠審の指針や東電の基準では慰謝料の対象から外れているのですけれども、裁判所はこれを慰謝料の賠償を行うべきであるという形で判決を出すようになってきているということです。  例えば、二〇二〇年の三月に二つ、高裁の判決が集団訴訟で出されております。これは初めての高裁判決でありますが、この二つの判決、仙台高裁、東京高裁ともふるさと喪失慰謝料の賠償を東京電力に対して命じるという判決を出しております。今全国で二〇一二年十二月以降、三十件ぐらいの裁判、原告数は一万二千人に上るような裁判が各地で提起をされ、今もう最高裁まで行っているものもあります。  全体として言いますと、温度差はありますが、先ほど申し上げたような原賠審の指針や東京電力の賠償基準では十分ではなくて、独自に判断して賠償を命じるというような判決が多く出されている。それから、国の責任についても、地裁レベルでは半々でありますけれども、高裁レベルでは、三件のうち二件が国の責任も認めるというような判決を出しているということですね。  ですので、こうしたことを踏まえますと、原賠審の指針の見直しということが課題になってくるのではないかと。これについては資料の四枚目に宮城県の新聞の論説記事を添付しておりますので、御覧をいただければと思います。  最後にまとめでございますが、今、その三・一一から十年を経たということでありまして、一人一人の生活再建と復興というところに向けて、きめ細かな支援策を継続していくということが強く求められていると。長期的な視点ということでいいますと、先ほどの百五十年というような話もございました。  その賠償の格差というのは個人間でもありまして、元々その収入や資産がない人というのは賠償も少ないので、帰還困難区域の避難者の方でも困窮されているケースがあります。こうした実情をきちんと把握をして、対応する施策をきめ細かく実施していく必要があるんではないかというふうに考えております。  復興政策は、予算規模としては減少していくと思われますので、ますますこうした施策の中身というところが問われているというふうに思っております。  以上でございます。
  146. 山本順三

    委員長山本順三君) ありがとうございました。  以上で公述人の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより公述人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  147. 滝波宏文

    ○滝波宏文君 自民党、福井県選出の滝波宏文でございます。  今日は、大庭先生、除本先生、当委員会においでいただきまして、ありがとうございます。経歴拝見させていただきましたら、ほぼ同世代というようでございまして、アカデミアの方で両先生が頑張っていらっしゃる姿、非常に心強く思ってございます。  今日はそれぞれ、アジアにおける地域枠組みとそれから福島復興、原子力と、ちょっと離れたテーマそれぞれお話しされてございますので、お一人ずつちょっと質問をさせていただければと思います。  まず、大庭先生にでございますけれども、冒頭、QUADの首脳会議の話がありました。外相会談から積み上げてきた、数年掛けて積み上げてきたというところは、まさに平成に入る頃だと思いますけど、一九八九年にAPECの閣僚会議が開催されて、その数年後に首脳会談がAPECにできた。あれはまさに日本外交の当時の非常な成果だったかと思いますけれども、今度QUADというものを、ある意味、これ安倍総理が第二次政権の前に提唱されて結実したというふうに言われてございます。そういう意味で、TPPを完成ということと併せて、久々の日本外交の成果ではないかなと、こんなことを思ったりして今お話を聞かせていただきました。  質問につきましては二つございます。経済成長と、我が国のですね、あと台湾の問題であります。  一つには、先ほど先生の方からリベラル国際秩序というふうなのがございました。自由で開かれた市場経済という部分というのは、まさにベルリンの壁が落ちて冷戦が終わって、ワシントン・コンセンサスと、フリーマーケット、オープンエコノミーというものがまさに成長をもたらすんだというふうな考え方が世界的には非常に強くなったわけでありますけれども、その考え方は、実はリーマン・ショックが私はある意味ピークであったかと思います。あのリーマン・ショックの後にG20におきまして、イギリスの首相、当時ブラウン首相だったかと思いますけれども、古いワシントン・コンセンサスは終わった、というふうなことをG20首脳会議でおっしゃっていたかと思います。  そういう中で、国境をもう越えた経済、そして、とにかく規制のない経済というのが成長をもたらすんだという、ある意味単純な神話というのは終わっている中で、日本をどういうふうに見るかといいますと、我々世代がほぼ多く過ごしてきた平成の期間というのは、実は、その冷戦が終わった後のそういった時代、恐らくこのリベラル国際秩序の時代だと言っていいかと思いますが。  平成の時代、じゃ、どうだったかと振り返ってみますと、中国に、先ほど話ありましたように、経済大国第二位の地位を抜かれ、そしてアメリカにもヨーロッパにも残念ながらこの間の成長率は我が国は劣っている、というような状態であります。  一方、この目前には、今度は米中の新冷戦というものがもう始まっているというふうに言われる中で、じゃ、我が国がどうやったら成長していくのか、そこの点につきまして、実はデカップリングの話もかなり言われてございますけれども、新冷戦の中にこそ我が国の成長があるのではないか、少なくともその中で活路を見出していくしかないんじゃないかというようなことも思いますが、その点、大庭公述人のお考えを聞かせていただきたいと思います。  そして、もう一つ、やはり大きな論点としての中国の覇権的台頭、香港の国安法の問題もございますが、そういった中において台湾、今の香港が明日の台湾、そして将来の沖縄、日本というふうなことになりかねないか、こんな懸念もある中で、台湾の在り方について、我が国との関係においてどういうふうに見られるか、教えていただきたいと思います。
  148. 大庭三枝

    公述人(大庭三枝君) 滝波先生、御質問ありがとうございました。手短にお答えしたいと思います。  一つには、リベラル国際秩序、市場経済、そしてワシントン・コンセンサスの時代は終わっていて、その次の時代における日本経済成長への方策はどうあるべきかという質問だと思います。  二つ挙げたいと思います。  一つは、日本経済的に残念ながら低迷したのはやはりイノベーションの不足ということでありまして、例えば日本は、やっぱり自動車産業にしても何にしても、半導体にしても、一時期は非常に世界の先端を走っていたわけです。ところが、やはりこれは日本社会の在り方そのものがいわゆるイノベーションや新しいアイデアの創出というものに合致していないという非常に余り条件のよろしくない中で、イノベーションを起こせなかった、自分たちが先頭に立ってイノベーションを起こせなかったということにあるんだと思います。その点では、そのQUADの中に新技術の促進ということについての協力についてワーキンググループを設置するという話がございます。日本単独では難しくても、ほかの意を同じくする国々とそのイノベーションについて協力をして、新技術の立ち上げというものに貢献していくことというのが一つのキーになるのかと思います。  それと、もう一つ。確かにリベラル国際秩序及びワシントン・コンセンサスの行き過ぎというのが世界経済危機をもたらし、世界の格差を増大させ、いろんな不利益を多くの社会にもたらしている。特に格差の増大による社会の分断というのはどの国でも議論されていて、今でも深刻です。ですので、私が最後に申し上げた公正で持続可能な成長というのは、そういった国境を越えてサプライチェーンを拡大して、それの深化によって成長していくという、このモデルは今でも私は生きていると思います。特にアジア、東アジアではこのモデルは生きていて、どの国もそういったことを目指し、それでRCEPやTPPが成立したんだと思っています。  ですけれども、それの弊害というもの、それをどのように制御していくか、コントロールしていくかということが非常に重要で、そういう新しい要素を加えた通商政策を進めていくことが日本にとって非常に大事だと、これは日本にとっても地域全体にとっても国際社会にとっても非常に大事だと考えている次第です。  台湾については非常に難しい問題です。ただし、日本は確かに中国との、一つの中国原則に従って中国との関係を維持している以上、台湾を何か国家承認する、政府承認するということは非常に難しい、ほとんどできないと私は思います。なんですけれども、今の台湾と日本とのこれまでの積み上げてきた関係上、何かできることはあるだろうというふうに思っておりまして、台湾との間では、常にそのパイプを維持しながら地域における共通の懸念について協議するといったことについては、協議あるいは意見交換ということについてはやっていく必要が、公式、非公式にやっていく必要があるし、それを今後も継続していく必要があるだろうと思います。台湾は日本にとって非常に重要な友人であるというふうに考えています。  以上です。
  149. 滝波宏文

    ○滝波宏文君 我が国の自由と民主、そして人権、法の支配、こういったものを守っていくために我が国の経済成長は間違いなく必要でありますし、先生がおっしゃったこのアジア太平洋におけるマルチな面での取組というのも、しっかりやっていかなきゃいけないなとの思いを新たにしたところでございますし、その中で、台湾、まさに家族のように思い合う、ちょうど復興から十年になりましたけれども、その関係、大事にしていきたいというふうに思います。  続きまして、除本公述人お話を聞かせていただきたいと思います。  私は福井の選出でございます。福島の方に非常にお力を注がれていらっしゃるかと思いますが、原子力のこと幅広く御知見あるかと思いますので、福井や新潟含めた、ほかの立地地域も含めて御意見をいただければというふうに思ってございます。  一つには、原子力推進、脱原発というふうな一つの軸があるんですが、私は前から、その一軸だけで物事を、原子力を語ることがおかしいんではないかと思っておりまして、二次元で語るべきだというふうに思ってございます。  それはどういうことかといいますと、今言った脱原発、推進という横軸のほかに、立地に寄り添うか寄り添わないのかというふうな軸が縦軸にあるかと思っておりまして、それの一つの例としていつも言っておりますのは、原子力の避難道の整備の問題であります。福島事故にあったように、停止中の炉も事故を起こしたように、停止中であってもそこにリスクがある以上、あれだけのことがあったのであれば、いざというときの避難道をもっと力を込めて整備しなきゃいけないんですが、残念ながら十年たっても必ずしもはかばかしく進んでいない。そういう中で、その原子力避難道の整備について御知見をお聞かせいただければと思います。
  150. 除本理史

    公述人除本理史君) 御質問ありがとうございます。  先ほどおっしゃった二次元での把握というのは非常に重要な視点といいますか、実際、そうしたことがやっぱり大きな問題になってきている、福島でもそうなんですね、やっぱり。やっぱり、福島の中で被災を最も強く受けた方々というのはその立地自治体方々でしたので、じゃ、被災者の中で原発あるいは原子力政策を今後どう考えていくのかということはかなり複雑な思いがあることは事実です。  ただ、やっぱり、被災をされた当事者の方々は、新潟に避難されていたりする方も私、お付き合いありますけれども、今新潟で再稼働の動きが進んでいて、やっぱりすごく内心穏やかでないというところがあるのも事実ではないかなというふうに思います。  今再稼働の動きが各地で進んでおりますが、今論点になっているのは、今出てきたような避難計画が十分に立てられるのかどうかというところでありまして、特に福島の状況を見ますと、特に避難弱者と言われるような、病院施設におられたような方々の避難がすごく問題になりました。本当に残念ながら亡くなってしまった方もいらっしゃったわけですね。  それこそSDGsじゃありませんけれども、最後の一人まで取り残さずにきちんと避難できるような担保があるのかないのかというところが再稼働や原発の利用ということを今後考えていく上で決定的に重要なことだというふうに思いますので、避難道の整備ということも重要だと思いますけれども、特に地形の問題とかでそう簡単でないような原発もございます。そうしたことも含めて、避難計画がきちんと立てられるのかどうかというところが重要な論点になってくるのかなというふうに思っております。
  151. 滝波宏文

    ○滝波宏文君 ありがとうございます。  避難道につきましては、今、衆議院の方を通りましたけれども、原子力立地特措法という国の援助のかさ上げの法案出てございますので、何とか参議院でも通過を早く、日切れ、三月三十一日で切れてしまいますので、皆様に御協力いただければ、立地の一人としてお願い申し上げる次第でございます。  その上で、もう一つ、時間も限られてございますので、除本先生にお聞きしたいと思います。  大きな、私、やはり問題は、先ほど、やっぱり地元で見ていますと、中央の議論がとにかく一軸ですね、横軸、脱か推進かの議論だけになっていることがすごく地元の人からすると、自分たちのことにちゃんと寄り添ってもらいたいと思うのに向こうで話をしてしまっていて、自分たちのことは放り投げ出されていると、棄民だという、捨てられた民みたいなことも聞いたことがあります。  そういう中で、やっぱり非常にしてほしいことは、都会の、大都会の消費地の方に、自分事として引き受けてほしい。すなわち、我が国は高度成長のときも安定安価な原子力の電力を使いながら成長してきた、それについて、立地地域がリスクを引き受けてきたことについて、それで享受をしてきた消費地の皆さん、大都会の人も、もう他人事ではなくて、そのことについて立地の人たちに感謝もしてもらいたいし、その功績について誇りと思えるようにしたい、させてもらいたいというものが、なかなか中央の方から届いていないと、こういう問題があるかと思います。  そういった観点でお言葉いただければと思います。
  152. 除本理史

    公述人除本理史君) 全くおっしゃるとおりだと思います。  立地地域の社会経済がどういうふうに次のステージに移行していけるのか、もし、廃炉というようなことが今進んでいますが、なっていくのかというところの政策的な担保というのも大変重要だと思います。これ、日本では例えば鉱山の閉山とかそうした経験もありますので、どう地域の社会経済を別の方向に組み直していくのかという観点で政策を立てていくということは重要になるんじゃないかなと思っております。
  153. 滝波宏文

    ○滝波宏文君 時間も近づいていますので、これで終わらせていただきたいと思います。  ありがとうございます。
  154. 福島みずほ

    福島みずほ君 立憲・社民の福島みずほです。  今日は、お二人の公述人、本当にありがとうございます。  まず、除本公述人にお伺いをいたします。  今日のお話の中でもありましたが、各地で進む原発事故集団訴訟で、少なくとも中間指針で示された賠償では足りないと示されております。そのことから見直しを絶対にやるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  155. 除本理史

    公述人除本理史君) ありがとうございます。  原賠審の指針の性格というものは、賠償すべき損害の最低限の損害を示すガイドラインであるということです。ですので、そもそも例えばそこで漏れているような損害があれば賠償を上積みしていくというのは当初から前提されていて、原賠審もそのように指針の中に書いてあるということはまず一つでございます。  それを踏まえた上で、今、集団訴訟の状況を見ますと、指針を超える賠償が認められるようになってきているということはございます。  それも、例えば、個別具体的な事情を考慮してというような場合もございますが、昨年の九月のいわゆるなりわい訴訟という最大の原告を抱えている裁判の仙台高裁の判決なんかでも、区域一律で、例えば避難指示解除準備区域におられた方はというような形で、個別事情というよりは区域ごとに賠償の上積みを認めているというような判決も出てきておりますので、これ、指針が今やっている区域ごとにその賠償の中身を決めていくというような考え方と全く同じ考え方になりますので、しかしながら、それでも、判決によれば、指針の額では十分ではないというような判決も出てきているということを考えますと、原賠審の指針の見直しというのは当然論理的には導き出されてくるんではないかなというふうに思っております。
  156. 福島みずほ

    福島みずほ君 裁判の判決で、ふるさとの喪失というのを認めました。さっき公述人がこのことを、ふるさとの意味ということも語っていただいたわけですが、改めてこの裁判の評価をお願いいたします。
  157. 除本理史

    公述人除本理史君) ありがとうございます。  全国に広がっている集団訴訟は、いろんなタイプのものがありますけれども、基本的にはほとんどが賠償請求という形で組み立てられています。この方が法律上やりやすいからということでありまして、原告の方々の要求というのは、お金が欲しいということよりは、元の暮らしを取り戻したいということの一点に尽きるということです。ただ、今の裁判のやり方としてそういう請求をするのは難しいので、じゃ、どういう形で賠償請求をするかというふうに言ったときに、今の例えば復興政策やあるいは東京電力による直接請求と言われている賠償のやり方では軽視されているけれども、自分たちが非常に大事だと思っているもの、これに焦点を当てて賠償請求をしていこうということで俎上に上ってきたのがふるさとの賠償ということになるかと思います。  ふるさとの賠償というのは、これは別に個々人の所有物ではないじゃないかというふうに思われるかもしれませんが、これは二重の意味がありまして、確かにふるさとというのは誰のものでもないんですが、そこに暮らすことによって個々の住民が得ていた利益というのは当然あるわけで、それは法的に保護されるべきであろうと。それは例えば、先ほど申し上げたようなコミュニティーの中で暮らすことによって人々が日常生活を送っていけるというようなことですとか、逆に考えますと、避難先で家を買ったらそれで元の暮らしが取り戻せるのかといったら、そんなことはないですよというようなことがございますし、先ほどの豊かな自然の恵みといったようなことも非常に重要な意味を持っていたので、こうしたものをきちんと損害として評価してほしいということを訴えているというのが集団訴訟の一つの論点であります。  その他、国の責任のことですとか、除染がなされていない帰還困難区域の方々は除染をちゃんとしてほしいというようなことを求めていると、こういうような裁判もございます。
  158. 福島みずほ

    福島みずほ君 福島県内に、そして全国に避難者の方がいらっしゃいます。私も、たくさんというか、お友達がいるわけですが、問題は、避難者、被災者の数が全くまちまちで正確な実態が把握されていないという問題です。  福島県内では、災害救助法の定義をそのまま利用していて、仮設住宅やみなし仮設住宅を退去し、家を購入、賃貸契約をした場合は、原発事故前の自宅に戻れていなくても避難者から外されると。福島県外では、復興庁が帰還の意思がある人は避難者と定めていると。福島県内と県外で避難者の定義が違っていると。  また、県と市でも全く違うと。福島県が原発事故の避難者数をめぐって三万六千人としているのに対して、県内の各自治体が避難者とする総数は少なくとも六万七千人超で、三万人以上の開きがあります。県と市と国で全く避難者の数がばらばらです。しかも、福島県外において、総務省が、この県外においてもまた更に問題があって、復興庁が避難の意思がある人と定めておりますが、その意思を確認しないまま福島県外において避難者から外している事例がたくさんあったと。  ですから、避難先の自治体において避難者が軽んじられているんじゃないかと当事者はおっしゃっているんですが、結局、自分たちが自動的に外されてしまっている、どんどん避難者がいなくなって数が少なくなっていっているという問題があり、まず実態把握をしない限り、どういう支援が必要かということも見えてこないと思いますが、この点についていかがでしょうか。
  159. 除本理史

    公述人除本理史君) ありがとうございます。いや、おっしゃるとおりだと思います。  例えば、被災者支援ということを言う場合に、じゃ、誰が支援対象なのかということがはっきりしないというのでは当然困りますので、じゃ、どういう状態の方がその支援対象なのかと、政策の対象なのかというのをきちんと本来は定義をして数字を把握していくべきだというふうに思いますが、今御指摘あったような、集計する主体によって定義が異なっているということによって、例えば、被災自治体、市町村と福島県が集計している県内避難者の数字に万単位の開きが出ているというようなことが生じています。  福島県の場合は、仮設住宅を出てしまえばもう避難の状態は終了するというふうに考えている、定義をしていますけれども、私が当事者の方々からお話を伺いますと、あるいは各種のアンケート調査なんかでも出ているんですが、例えば、復興公営住宅に入居した方でも半数ぐらいの方は避難を続けているという認識を持っておられるとかというようなことがあるわけですね。  先ほど申し上げましたように、家を買って定住すればそれで元の生活が回復するというわけでもないと、こういう状況がありますので、特にその周囲とのつながりがなければ孤立してしまうというようなこともありますので、そうしたその状況をきめ細かに実は実態把握をしていくという課題がいまだに残されていると。特に、十年たって御家族との関係がだんだん希薄になって孤立化していくというケースも見られますので、こうした状況は更にきちんと把握をしていく必要があるんじゃないかなというふうに思っております。
  160. 福島みずほ

    福島みずほ君 あと、区域避難、いわゆる自主避難、区域外避難、いわゆる自主避難の人たちの住宅手当が打ち切られてしまいました。その後、どうしようもなくて、東京の東雲住宅に残っている人たちが立ち退かないというので、福島県が家族や親族に連絡をして立ち退かせようとしています。このコロナ禍で県外避難をした人は、派遣が、派遣や契約社員のため仕事が減らされたり、切られたりしています。二重被災になっている人たちへの救済策など、本当に今必要だと思いますが、いかがでしょうか。
  161. 除本理史

    公述人除本理史君) ありがとうございます。  私、新潟県で原発事故検証活動というのの生活分科会というのに参加をしております。そこで実施したアンケートでも、やはり避難前と避難後と比べますと、正規雇用の方の数が減っておりますし、雇用が非常に不安定になっていて、生活も厳しく、経済的に厳しくなっているという状況は見て取れます。  そうした中で、今コロナの影響で、今御指摘があったような、特に非正規の方中心経済的なインパクトが大きいというのは当然ありますので、ここも実はきちんとした実情把握がなされていないところだと思いますので、まずは実態を把握するというところから始めていくというのが大事なのではないかなと思います。支援施策も当然必要になってくるだろうと思います。
  162. 福島みずほ

    福島みずほ君 除本公述人にお聞きをします。  原発事故の損害とは何か、損害賠償論が御専門でいらっしゃるので。でも、海に汚染水を流したり、これから汚染土を農地として使う、もう拡大していく、どこまで何が損害なのか。私自身は、原発はもう高く付くし、決して安い電力ではないし、手に負えないというふうに思っているんです。損害賠償論の観点からいって、事故を起こしても事故を起こさなくてもすさまじい損害が発生する、こういうことを損害賠償論の観点からいうと、どうお考えでしょうか。
  163. 除本理史

    公述人除本理史君) ありがとうございます。  学術上の通常の定義ということでいえば、もう福島先生に申し上げるようなことはないんですけれども、事故と相当因果関係があるものというくくり方を一般にはされてしまい、じゃ、その相当因果関係とは何ぞやということが当然争いにもなってくるということでありますけれども、私は法律というよりはむしろ環境経済学という観点から見ておりますので、そういたしますと、基本的にはその事実的な因果関係といいますか、事故によって引き起こされたネガティブなインパクト全てを被害というふうに見ていくべきではないかというふうに思っています。それが、その賠償として対処すべきものなのか、あるいは政策上の課題になるのか、例えば復興政策の中で対処すべきものなのかと、これは切り分けが当然存在するだろうとは思っております。  特に、私たち環境経済学の観点からいいますと、絶対的損失という概念があります。これは、もう取り返しが付かない被害ということですね。お金でも償えないし、代わりのものを持ってくることもできない。これはもう典型的なものは健康被害、公害の健康被害のようなものでありますが、そうした取り返しが付かない被害、これは、例えば山の被害が百五十年続くといったような場合に、これは回復可能と言えるのかというような時間スパンとの関係もありますけれども。  こうしたその取り返しが付かない被害というのは基本的には引き起こしてはならないだろうということで、これに対して、例えばその原子力を利用していくという場合には細心の注意を払って予防的に、予防原則にのっとって対処しなければならないということも論理的には流れとして出てくるということだろうと思います。
  164. 福島みずほ

    福島みずほ君 大庭公述人にお聞きをいたします。  コロナによって強化されたASEAN諸国の権威主義体制というのは非常に興味深かったです。今、ミャンマーにおいて軍部が非常に弾圧をしているわけですが、このミャンマー問題、どのように考え、どのように解決したらいいか、是非御教示をくださいませ。
  165. 大庭三枝

    公述人(大庭三枝君) 時間も迫っていると思いますので、手短に。  質問ありがとうございます。  ミャンマーについては、正直なところ、日本が打つ手というのが非常に限られているという印象を持っております。一般的には日本は軍部とそれから民主化勢力と両方にパイプがあるということだったと思いますが、どうもそれが見えてこないというのが政府の外から見ている私の印象でありまして、とはいっても、ミャンマーの事態というのは日本にとっても日本を含む地域全体にとっても非常に憂慮すべき事態ですから、限られているとは思いますけれども、日本としては今までよりはもっと強く、ミャンマーの現状というか民主化勢力の復帰、選挙の尊重ということを強く主張するべきだろうというふうに考えております。  以上です。
  166. 福島みずほ

    福島みずほ君 ありがとうございました。  ありがとうございます。
  167. 河野義博

    河野義博君 公明党の河野義博でございます。  両先生、大庭公述人除本公述人、本当に大変貴重なお話をありがとうございました。  滝波先生はほぼ同世代とおっしゃっておられましたが、私はやや後輩世代でありまして、七七年生まれ、日本が、バブルを知らないデフレ世代でありまして、小学校のときにバブルがはじけまして、社会人に出たときにはもう既にゼロ金利のこの二十年間でありました。経済の世界で生きてきましたので大庭先生にも後ほどたくさんお話しいただきたいというふうに思いますが、まず除本公述人にお伺いをしたいと思います。  東日本大震災並びに福島原子力発電所事故から十年がたちました。あの事故発生当時、私は海外出張しておりまして、その現場に立ち会うということはなりませんでしたが、しばらく日本に戻れない日がありましたので、海外から日本を眺めたときに、あれだけの大惨事でありながらも皆さんが本当に協力をして何とか復旧しようという懸命のお姿があり、そして、しかも発災現場でも整然として物資を待ったり、そういう姿を見て、本当に日本人としての誇りを強く思いましたし、この復旧そしてその先の復興に向けて自分の微力を尽くしたい、そういう思いで政治を志したということを十年たって改めて思い返す次第であります。  先日、公明党も、この十年を節目とした復興会議、全国の会場と被災三県を結んで、公明党の多くの議員が地方議員さんも含めて参加をし、会議を行いました。やはり十年たって、二つの風とともにしっかり闘っていこうと、風化と風評、二つの風との闘いだと。誰一人取り残さずに、最後のお一人が心の復興を遂げるまでしっかり被災地に寄り添って、全員が復興担当の責任者だと、そういう思いで頑張っていこうという新たな出発をさせていただいた次第であります。  また、私、昨年は農林水産省で大臣政務官をやらせていただきました。職責の一つに復興担当の政務官という役目も仰せ付かりまして、福島にも通わせていただきました。  先生がおっしゃるふるさとの喪失との闘いというのは、本当に大きな闘いであります。その中で我々ができること、たくさんやらなければならないこと、今までの答弁の中でもるる御紹介をいただきましたけれども、やはり、何といってもなりわいがなければ帰ることはできない。やっぱりなりわいの創出ということをしっかりやっていこうということで取り組んでまいりました。  先生御案内のとおり、山林は除染されませんでしたので、林業やキノコの育成というなりわいが途絶えてしまったわけでありますが、原木シイタケの生産というのができなくなりましたので、代わりにおがを使ったシイタケ栽培というのを始めまして、他地域から持ってきたおがで、これはもう工場ですね、畑というよりは、工場を建ててその中で湿度も温度も二十四時間管理をして、そして大規模にシイタケを栽培する。そこでなりわいを創出し、福島県産のシイタケを広げていこうという取組をさせていただきましたし、また、例えばイチゴ、イチゴのこれはまさにもう工場でありまして、二十四時間空調設備がなされた無菌のイチゴ工場を造って、これも季節に合わせて一番高値で取引されるようなイチゴを栽培し、そして安定的に収入が得られるように、そういった取組もさせていただきました。  課題は、こういった農産品も、買ってくれなければ意味がないということで、なお、昨年、もう発災から九年たった当時ですら福島県産品の輸入規制をやっている国というのが幾つかあって、その中の一つがUAEだったんですが、UAE大使館にも私も訪問させていただいて、直接大使にこの福島県産品を是非受け入れていただきたいということも申し上げ、これ私が、私だけがやったことでありませんが、政府全体となって取り組んだ結果、昨年十二月にUAEの輸入が解禁になったという出来事もありました。  先生にお伺いしたいことは、元の暮らしを取り戻すと。先生の本当に思いと我々思いを一にしておりますけれども、なりわいの創出、それから、もろもろやっぱり帰るためにどういうことが必要なのか、今までの議論も重複する面もあるかもしれませんけれども、そういった観点でアドバイスをいただけたらというふうに思います。
  168. 除本理史

    公述人除本理史君) ありがとうございます。  本当になりわいの再生というところが被災地の復興の鍵になりますので、その点が大変重要だということなのでありますが、なかなか、自然と非常に密接な関わりを持って暮らしてきた地域であるがゆえに、元のライフスタイルを取り戻すということはなかなか難しいというところが非常に大きなネックになっているのだと思います。  先ほどおっしゃったように、今進んでいる施策というのは、今までの暮らしやなりわいの在り方というよりは、そこから少し外れたところで、工場の建設とか、それ自体は雇用を生んだとすればそれ自体意味がある、ないわけではないと思いますけれども、元の暮らしを取り戻すというところからすると少しずれてしまうという思いを当事者の方は持っておられると。もちろん、被災当事者の方も、そうしたいろんな補助金なんかを使いながら積極的に事業にチャレンジしておられる方、たくさんおられますけれども、ただ、そのことと自分たちの実感としてなりわいを取り戻せているかということとはまた少しずれがあるのかなというふうに思っております。  特に、産業として成立しないようなレベルの農的な営みの位置というのが非常に大きかったわけですね。例えば自家菜園レベルのもの、あるいは、多少販売するぐらいで基本的には自家消費に回ったり親類で分配するだとかいったようなものですね、こうしたレベルの、日々の日常生活と切り離せないような農的な営みで、彼らにとっては、彼ら、彼女らにとっては、もちろんそれによって食品を買わずに済んでいるとか経済的な意味がありましたし、近隣で作物を交換することによって人間関係が成立するとかいろんなような意味があった。もちろん体を動かすということも非常に重要なことであります。  そうした産業とは言えないようななりわいとしての農とか、生活の一部になっているような農業、それから、先ほど言いましたような山菜取りとかキノコ取り、これは学術上はマイナーサブシステンスとかと言われていまして、メジャーと対比してですね、お金を稼ぐ生業ではなくて、お金を稼ぐわけじゃないんだけれども、実はすごく重要な意味を持っていると。  これは、例えば環境研究分野なんかであれば、教育的な価値だとか文化的な価値というようなものが非常に注目されていますけれども、そうしたものというのは、これ全く基本的には金銭を目的にしませんが、非常に重要な活動であった。こうしたものが断たれてしまっているということも大きな問題で、それが先ほど御紹介したあぶくまの山の暮らし研究所という活動の関心事の一つなんですね。そうしたなりわいの在り方あるいは山の暮らしの在り方を再建していくためには、今のこの山の汚染の状況だとなかなか難しくて、百五十年先を見なければならないというようなところなのかなと思っております。  そういうこともありまして、帰還をするということも必ずしも簡単ではないので、単にその被災地域に帰還をするというところだけを目指すのではなくて、やっぱりその避難先で暮らしが成り立っていくというようなところに目標を置くというのもその方々の選択としては支えていくべきなんだろうなというふうに思っております。
  169. 河野義博

    河野義博君 ありがとうございます。  先生のおっしゃるように、やっぱり実感を持って元の暮らしを取り戻していただけるように、お一人お一人に私どもも本当に力を尽くしていきたいというふうに思っております。ありがとうございます。  大庭公述人に伺います。  外交というのは本当に難しいんだなというのを実感をいたしましたのはやはりTPPの署名の際でございまして、やっぱり日本とアメリカが中心となって国益を懸けて相当な時間と費用と人的コストを割いて交渉してきたにもかかわらず、やはり政権が替わればそこに参加しないということが起こり得る。ビジネスであれば、契約書を交わして、交わしたならば、そこの中に存続、裁判所が書かれて、準拠法が書かれて、何か契約履行されなくても解決する手段が明確になっているわけでありますが、なかなか外交の世界では仲裁をする機能も不全に陥っている場面も多々ありまして、本当に外交というのは難しいなという思いをしておりまして、先生がおっしゃられているように、やっぱりこのマルチの枠組みということを活用して超大国をやっぱり取り込んでいくということは非常に大事なんだろうということを改めて今思っております。  その中で、幾つかお伺いをしたいんですが、やはり中国がRCEPに入ったというのは大きな節目なんだろうというふうに思います。やはり今まで強い国の統治形態を持って、そしてがむしゃらに経済成長と軍事力強化を遂げてきたその国が国際社会の枠組みでどう振る舞っていこうかということを考えた結果、恐らくRCEPに入ってきているんであろうし、かつ、TPPにも前向きなメッセージを示しているというのは、そういうことからも見て取れるんであろうと。やっぱり世界に開かれた国へと進化しているということを印象付けよう、またそれを裏付けようとしているんだろうというふうに私は感じておるんですけれども、先生、その辺り、中国のこの動向というのをどういうふうに分析されておられるでしょうか。
  170. 大庭三枝

    公述人(大庭三枝君) 河野先生、御質問ありがとうございました。  今の点は非常に重要でして、中国、RCEPについて一つ誤解があって、これはもう中国が自分たちの支配を広げるために、影響力を強化するために設立した枠組みだということを言う方がメディアでも多いんですけれども、私はそうは思っておりませんで、むしろ、電子商取引にしましても、いろんな共通ルールに免除なしに中国がちゃんと入っているということが非常にこれは重要だと思います。  これを主導したのはむしろ日本等の国々であろうというふうに考えているのですが、これは非常にある意味脅威でありまして、今、河野先生がおっしゃったように、むしろ国際社会の枠組みの外にある中国が勝手なことをするというのは非常に批判しやすい、おまえらはルール違反であるということを言いやすい対象なわけです。しかしながら、こういう共通ルールにちゃんと入っている、我々は入って、TPPについては、もしかしたらあれは何かのその政治的な意図があったバルーンかもしれないけれども、でも、そういうことを口にする。そういった中国の方が、非常にこちらとしては批判もしにくいというのがまず一つです。  あともう一つは、明らかに今の現状からして、先ほどから述べている国境を越えた生産ネットワークの拡大、深化の中で中国の存在というのは非常に大きいわけですね。それで、なおかつそこで共通のルールが設定されて、そのような拡大、深化のネットワークがどんどん広がっていくとすると、そこで中国の実質的な経済的影響力は多分拡大します。  なので、そこでどのようにそういった中国への依存というものを相対化するかというまた別の議論が出てくるわけです。なので、私は、それをいろんなマルチ、あるいはほかの国々との様々な連携、そして日本としてサプライチェーンの多元化といったような様々な試みを組み合わせて対応していくべきだと。  ただし、問題は、中国は日本の隣国で決定的に環境を悪化させることができないということで、そういった限られた状況の中で何ができるのかということが非常に重要だということです。  私の中国に対する見方は以上になります。
  171. 河野義博

    河野義博君 あと幾つかお伺いをしたかったんですが、済みません、時間がそろそろ来そうですので、私の意見ですけれども、やっぱり、中国、今回の枠組みをどう正しく履行させるかということも大事な観点だと思うんですね。我々は署名したから守ってくれるのが当たり前だろうと思っていますが、そうではない価値観を持っている方々がこの世の中にはたくさんいますので、そういったこともしっかり気を付けなければならないし、先生がおっしゃるように、ASEANって非常に大事だと思います。政治的情勢は各国不安定な面もありますが、やはり経済成長でいけば年率すごい成長を遂げている。そこにやはりアジアの、東南アジアの成長を我が国に取り込んでいく、ひいては、やっぱり東南、北東南アジアの地域の平和と安定にやっぱり日本リーダーシップを果たしていくという観点からも非常に大事な隣国だと思っております。  中国との関係をこれ以上やっぱり悪化させるのも得策ではないというのは先生のおっしゃるとおりだと思います。やっぱり外交力を高めるというのは日本の力をやっぱり上げていくということでありまして、しっかり経済ももっともっと回復をさせていかなければならない。実体がある経済回復をしっかりやっていかなければなりませんし、我々は軍事による国威発揚をもう八十年前に諦めた。したがって、やっぱり、経済であり、それから文化であり、芸術であり、哲学であり、そういった総合力を高めていくということが大事なんだろうというふうに思っております。  今日は本当にお二人の公述人、ありがとうございました。
  172. 片山大介

    片山大介君 日本維新の会の片山大介です。  今日は、大庭先生、除本先生、大変貴重な話、ありがとうございました。  半分ずつぐらいで聞いていきたいと思っております。  それで、まず大庭先生にお伺いしたいんですが、私もちょっとRCEPの関係でちょっと聞きたいんですけど、RCEPの意義を、日本、先ほど中国の話も出ましたけど、日本、中国、そして韓国が参加した形での初めての貿易協定という形になるんですけど、これの意義、日本側から見た意義というのはどのようにお考えなのか、教えていただけますか。
  173. 大庭三枝

    公述人(大庭三枝君) 片山先生、御質問ありがとうございました。  日中韓が初めてそろったFTAというのは非常に大きな意義があると思います。それは、日中韓FTAについては既にもう二〇〇〇年代からずっと議論がありまして、しかしながら、この三国は残念ながら非常に政治的な関係の連動、何というか、変動に非常に影響を受けやすい。なので、そのたびに、結局、その日中韓だけでFTAを結ぶということが非常に難しかったわけですね。  しかしながら、東アジアにおいて非常に重要な経済単位であるこの三つの国がFTAを結び、共通のルールというものを遵守する少なくとも準備ができたということは非常に重要だというのがまず一点です。  あと、日中韓だけで結局何ができるのかということでありまして、やはりそこにはASEAN諸国も含めたもっと広がりのあるサプライチェーン、経済圏というものを形成しなければいけないわけで、そういった国も取り込んだ上で日中韓がそこに入ったということも非常に大きな意義であろうというふうに思っております。  何よりも、二国間外交というのは、もろにその国々がどういうような利害関係があるかということに大きく左右されるわけです。マルチの枠組みやマルチの交渉というのは、そういった各国の事情、各個別の事情というのは取りあえず脇に置いて前に進むということができるわけで、それでも日中韓はちょっと数が少な過ぎて、日韓だけで非常にもめたりするともう前に進まないのが、ASEANを入れて、あるいはほかのオーストラリア、ニュージーランドを入れることで前に進んだというのは非常に大きいというふうに考えています。  以上です。
  174. 片山大介

    片山大介君 先ほど先生が言われた、まさにそのイシューリンケージ、リンケージですか、まさにそれなのかなというふうに思うんですけれども。  そうすると、その多国間のこの中にその三か国が入ったことによって、それ、対中とか対韓のバイも、バイの方の少し動きが、何というか、効果が出てくるのかと、そこら辺はどのようにお考えですか。
  175. 大庭三枝

    公述人(大庭三枝君) RCEP自体は協定で、しかしながら、今後も締約国会議を開いていくということであり、新しいルール化をする際に一堂にこれらの国が会す回数が増えれば、それだけ意見交換もしやすいというのがまず一つあると思います。  それから、日中、日韓の関係が非常に冷え込んだときでも何とか日中韓の枠組みだけは動いていたという実態もありますので、やはりその二国間の関係とともにマルチを動かしておくというのは、そうした長期にわたる信頼醸成には大きな影響があると思います。  ただし、先ほども出ましたけれども、RCEPはあくまでも共通ルールでありまして、この共通ルールをどういう形でちゃんとその各国の経済主体に遵守させるかということについて、やはりお互いに、監視というのはちょっと強い言い方ですけれども、遵守の仕組みというものももっと気を付けて強化していく必要があるだろうというふうに思っています。  以上です。
  176. 片山大介

    片山大介君 それで、やっぱり私も、さっき出た中国なんですけれども、やっぱりその協定の中に入ってルールを守った上で影響力を拡大していこうということに対しては、やはり何というのか、一歩、中国のやろうとしている外交はフェーズ上がってきているのかなと思うんですけれども、これに対してやっぱり日本はどういうふうに見ていったらいいのかということを教えていただけますか。
  177. 大庭三枝

    公述人(大庭三枝君) これに対しては、もう既に我が国でももう懸念するところであり、これはRCEPのもう締結以前のことですけれども、やはり特にこれは新型コロナのときにサプライチェーン網に非常に大きな中国への依存というのが見られたときに、それを多元化するような取組というのが既に経産省、ジェトロの方でなされております。  このように、意識的に日本及び各国がやはりサプライチェーン網というのをその一つの国に依存しない形でどういう形で構築できるかというこの試みを別途していくことというのが必要になると思います。ですので、RCEPだけで何か解決するわけではないということです。  ただし、RCEPは中国にとっても利すりますけれども、日本やほかの国々にとってもサプライチェーンの強化ということに非常に大きく利するわけで、各国がこの枠組みを活用して各国の経済主体がサプライチェーン強化、拡大ということに取り組むことが肝要かと存じます。
  178. 片山大介

    片山大介君 それで、あと、そのRCEPでいえば、インドが不参加をしました。それで、QUADの方はインドはもう大切な四か国のうち一つとして入っていて、ここのその何というのか、入っている入っていないという、アンバランスになっていますけれども、ここら辺は今後どうしていけばいいというふうにお考えでしょうか。
  179. 大庭三枝

    公述人(大庭三枝君) インドについては関心が高いと思いながら私の意見陳述の中には入れておりませんでしたが、インドにつきましては、RCEPとQUADは分けて考える必要がある部分と、それから同じに考える部分があると思っています。  まずRCEPについては、インドの側からすると、言わば我々、我が国の自由で開かれたインド太平洋の延長線上にあるというふうには見ていないと思います。むしろもっとプラグマティックに、これは経済協定であって、そうすると、今明らかに中国との貿易赤字が拡大している、ASEANとの貿易赤字も拡大している、しかもそのインドの経済が非常に悪いという中で、インドの中の様々なセクターがRCEPに非常に強く反対していた。モディ政権は、今ポピュリスト政権というふうに言われることもあるように、国内における声というのをある意味無視できない政権であるということから、とてもではないけれどもRCEP加盟には踏み切れなかったということだと思います。  ただし、インドは、二〇〇〇年代、二〇一〇年代の初めぐらいから、メーク・イン・インディアというようなそういった試みもしていて、むしろ東アジアを中心とするサプライチェーン網の強化に自分たちをいかにそこに参入させて製造業を発展させるかという試みもしてまいりました。その試みとして、いかに外からの外資を導入するかということもやってはきたんですね。だけれども、その流れが多分RCEPへの加盟、RCEP交渉への参加につながったんでしょうが、最終的なところではやはり国内の反対を押し切ることができなかったということだと思います。  インドは、あと、インドの今の経済規模はそれほど大きくはありません。なので、ここは冷静になって、インドに対しては、門戸は開いているけれどもインドの覚悟ができるまで待つことが重要だと思います。  それから、QUADについてですが、インドは元々非同盟諸国であって、どこの国とも同盟を組みたくないという、そういった自立的な外交姿勢が非常に強い、だけれども対中懸念というのも非常に強まっている、そういう中でQUADに参加しているということはあると思います。インドの中でも様々な外交政策の揺れや議論があるんだと思いますが、それでも、今回のQUADにおいて、いかにインドに入っていただくかということで、ワクチン外交についてインドを特にフューチャーしたり、いろんな気を遣っているわけですね。  ですので、インドはQUADに安定的に入っているというよりも、やはりかなりほかの国々が気を遣いながらインドをここに引き込んでいるということも言えるわけで、そういうふうに考えると、やっぱりQUADという枠組みを使うということはインドを引き付けておくという意味でも重要ではないかというふうに考えます。  以上です。
  180. 片山大介

    片山大介君 大庭先生、大変ありがとうございました。  じゃ、ちょっと除本先生にお話聞きたいと思います。  私は実は元々NHKの記者で、福島のNHKに勤務していたことがあったので、原発事故の前ですが、事故の後にやっぱり風景が変わったことはかなり僕としてもショッキングだったと思います。  それで、私がその福島の問題いろいろ考えるときに、やっぱり一番のまず問題だなと思うのは、やはりその除染にしろ、それから指示の解除にしろ、それからその除染の汚染土のその三十年後の運び出しについても、やっぱり先が見えているようで全然示していないこと、これが私は一番の問題だと思っているんですけれども、先生、まずそこについてはどのようにお考えでしょうか。
  181. 除本理史

    公述人除本理史君) ありがとうございます。  長期的な復興政策の重要性ということについては先ほども申し上げたとおりでありまして、やっぱり放射能汚染が起きてしまった場合の影響の非常に時間的なスパンの長さというところが、政策的にも見通しが立たない難しさというのを抱えているということがあるかと思います。  それだけではなくて、先日、三月十日に「NHKスペシャル」で除染マネーというのが放送されておりましたけれども、その中でもありましたけれども、制度の実態と建前というのが乖離をしていて、建前上はこうなんだけれども実態それ難しいよねというようなこと、例えばそこで出てきていたのは、除染の費用を国が出すわけにはいかないから東京電力の株の売却益でそれを賄うんだという仕組み、これは余りリアリティーがあるものとは受け取っていないんだけれども、立て付け上そうせざるを得ないというようなことで、結局問題を先送りしていると、こういうような影響も実は無視できないというか、非常に大きいんだろうと思っています。  例えば、除染に関わって言えば、その中間貯蔵施設というのはかなりの方があれは最終処分場になるんじゃないかというふうに思っている人もいらっしゃるわけですけれども、一応、県外最終処分というのが目標に掲げられていて、私も、元環境省におられた、あそこのあの中貯を管理しておられる会社の方にもお話を伺うことありますが、とにかく今はそういう立て付けになっているんだからそれでやるしかないというようなことになってしまっているというようなことも余計問題を複雑化させているなというふうに感じております。
  182. 片山大介

    片山大介君 私もあの除染マネーの番組見て結構驚いたんですけど。  それで、やっぱりコストの面で、当初、中間貯蔵はたしか六兆円だったのが、もう六兆円近くまで来ていると、まだこの先も運び入れは続くと。こういうふうに、経済学の立場から、こういうコストが膨れ上がっていくこと、これについてはどういうふうにお考えですか。
  183. 除本理史

    公述人除本理史君) コストが膨れ上がっている原因は、大きくは二つぐらいの要因があるかなと思いますが、一つは単純に見通しが甘かったということがあるかと思います。それとも関わりますけれども、やっぱり現場でのその合意形成が非常に難しくて、前例もないことでもありますし、非常に広域な問題なので、例えばどこかで出た除染の除去土壌を別のところに運搬しなければならないということになりますと、地域間のいろんな対立というのもそこに生じてきてしまう。  「NHKスペシャル」でも出てきていたのは、焼却施設の問題ですよね。焼却施設を少数のものを長く稼働させて使った方が当然効率はいいんだけれども、何でほかの市町村のごみを引き受けなければいけないんだというようなことがあって、幾つも造らなければならない。これはいかんともし難いというか、それぞれ理解できる立場ではあります。ですので、そうした要因が積み重なってコストが膨れ上がってきた。それで、時間がたつことによってコストが膨れ上がるという面もあって、除染であれば、例えばフレコンバッグの中の土からどんどん芽が出てきて、発芽してきて、その袋を破ってしまって交換しなければならないとか、いろんな想定外の問題がどんどんどんどん起こってきて膨れ上がっていくと。  ただ、原子力政策においては、それこそ「もんじゅ」の話ではありませんけれども、当初の見積りよりもどんどん膨れ上がっていくということは今までも起こっていて、そこはやっぱりその想定や見通しの甘さという要因が非常に大きく作用しているのかなというふうに思っております。
  184. 片山大介

    片山大介君 最後に、国に求めることというか、今後の復興に当たって、それをお聞きして終わりたいと思いますが。
  185. 除本理史

    公述人除本理史君) 私がやっぱり国にとって重要だなと思うのは、被災当事者の方に、やっぱり事故を起こした当事者の一員として被災者に向き合うということは恐らく当事者の方は望んでおられることだろうと思いますし、それと関連して、国の事故に係る対応のその問題点だとか、あるいは津波対策問題点を積極的に明らかにしていくということも求められているのではないかなというふうに思っております。  以上でございます。
  186. 片山大介

    片山大介君 終わります。ありがとうございました。
  187. 礒崎哲史

    ○礒崎哲史君 国民民主党・新緑風会の礒崎哲史でございます。  本日は、大庭先生、除本先生、大変貴重なお話を頂戴しまして、誠にありがとうございます。  それぞれの先生に幾つか質問をさせていただければと思いますけれども、まず除本先生にお伺いをしたいんですが、先生のお話の中でも、復旧から復興に向けて、ハードへの偏りというようなお話がございました。今年十年を迎えて様々な特集番組が行われた中で、私もまさに、そのハード面への偏り、あるいは住むところもあって道路もできて、でも復興が感じられないという、そういう意見がアンケート結果として出てきているというのを見ました。  震災当時は私自身はまだ議員ではありませんで、まだ民間で普通に職場で仕事をしていた立場ですが、それから二年してこの立場になって、改めて被災地に足を運ぶようになって、今振り返ってみると、自分自身もちょっとそれを感じていたなというふうに思うんですね。政府の説明で、当時も、まずは住むところがなければ、ああ、それはそうだなと思いました。そして、その次になりわいをしっかりと、ああ、確かにそうだな。確かに理解もできるし、納得もそのときはしていたんですが、被災地に行ってみますと、ダンプカーがもう走っていて、いろんな整備が始まっていて、まだでも誰もいない。海の方に目をやると、防潮堤がどおっともう造られ始めていて、でもまだ誰もいない。  で、十年たってみると、結果としてそういうアンケート結果が出ていたというのは、何か、いや、当時の市長さんなんかに聞くと、市民の皆さんはまずは住むところを造ってくれという意見が大半なんだと。いや、そうだったと思うんです。でも、それが十年たったときにそういうアンケート結果になるというのは、これはどうすれば良かったのかな。  ちょっと今更のような質問なんですけれども、今更というよりも、今後またこうした災害が仮に起きたときに行政としてやはりどういうふうに対応すればいいのかという、その振り返りの思いも込めて、やはり結果として十年たって今そういう声がアンケートとして出てきている中で、もし当時に振り返る、戻ることができるのであれば、もっとこういう施策があったんじゃないか、もっとこんな観点で考えることができたんじゃないか、行政に対してもっと今後こういうことを考えていってもらいたいと、そのようなお考えがあれば是非お聞かせいただきたいんですけれども、いかがでしょうか。
  188. 除本理史

    公述人除本理史君) ありがとうございます。  日本の災害復興政策の特徴として、やっぱり自らの生活再建は自己責任で果たしていくべきであるという考えが非常に根強いと思います。そうではなくてという考え方も当然あり得て、被災者の私有財産である例えば自宅の再建なんかも含めて公的な支援の対象にしていくべきだという議論も当然存在しております。  何でこれだけハード偏重になってしまったのかというと、基本的には、個々の生活再建というのは当事者の方の範疇であり、行政がやるべきなのはインフラであるとか公共土木事業的なものを中心にやっていくんだという基本的な枠組みが非常に強固にありましたので、かつ、今回の場合は非常に大きな震災であったということから大規模な財政投入がなされた、そのことによって、先ほど申し上げたような二項対立が非常に際立ってしまったということがあるかなというふうに思っております。  福島の場合は、それがそのハードのインフラ整備だけではなくて、先ほどから出てきている除染という土木事業という形で現れているということになるかと思いますので、こうした考え方の枠組みをもう一度見直していくというのは今後にとって非常に重要になってくるかなというふうに思っております。
  189. 礒崎哲史

    ○礒崎哲史君 ありがとうございました。  なかなか、時間を掛けてあの状況で考えるというのは、実際に被災されている皆さんを目の前にして勇気のあることですから、言うはやすし行うは難しなのかもしれませんが、今先生からいただいた意見はしっかりと胸に刻んで、私も今後に備えていきたいと思います。  それと、あと、先ほどのいろんな意見交換の中で中間貯蔵のお話もちょっと出ていました。これが最終的な貯蔵の最終形になってしまうんではないかという不安もあるということですけれども、それと併せて、今、最終処分場の話も国の中では進められている最中ではありますが、先生、いろいろなこれまで公害に関することを研究されてきて、やはりそこに住む人たち納得感といいましょうかね、そういう点についても研究をされてこられたお立場として、やはり今言った中間貯蔵施設の今後、あるいは最終処分場を決定していく、そういうプロセスという観点で見たときに、もっとやっぱりこういうところを丁寧に進めるべき、あるいはこういうプロセスは絶対に踏み外しちゃ駄目だと、何かそういう観点で是非御助言をいただければ有り難いと思うんですが、いかがでしょうか。
  190. 除本理史

    公述人除本理史君) ありがとうございます。  私、中間貯蔵施設の問題につきましては、用地の確保の段階から中間貯蔵施設の地権者会の方々とお付き合いをさせていただいて、いろいろお話を伺ってまいりました。一緒にシンポジウムも福島県内で開催したりしてきた経緯があります。  今回は、確かに前例のない問題で、制度自体がないという中で行われてきたことで手探りであるという側面があるのは事実だと思いますが、例えば、一般の例えば廃棄物処分場の設置プロセスなんかと比べてみてもかなり、何というか、行政の側のフリーハンドの余地が大きいというようなこともありますし、これは今までから起きてきている問題ではありますが、誰に対して合意を取るのかといった場合に、どうしても、首長が合意をすればそれでよいというような形の合意形成プロセスというのも中間貯蔵施設のケースでは見られました。  ただ、実はこれもふるさと喪失と同じような問題で、今回のその施設の場合は、非常に大規模な土地が国のものに移管をされて、町や村が丸ごと面的に別の施設に転換されていくという、ダム建設みたいなものに近いような状況です。そうした中で、やっぱりその地権者の方々は、土地を売りたくない、またいつか返してほしいという思いもあって、売らずに頑張っている地権者の方々というのも相当数存在しております。  そうしたやっぱり土地を追われる方々の思いをどこまで政策の中に反映していけるのかというところが非常に重要かなと思っておりますし、今回の場合はそれが地上権の設定という形で一部はやられていますが、今でも交渉は続いているというようなことがあります。
  191. 礒崎哲史

    ○礒崎哲史君 ありがとうございます。今後にまたしっかりと生かしていただければと思います。  それでは、残りの時間、大庭先生の方にお伺いをしてまいりたいと思いますが、先ほども若干触れられてはいたんですけれども、ミャンマーの情勢の点で、日本にできることは限られるというようなお話でもございましたけれども、この今のミャンマーの情勢、民主化とは反対の方向になるわけですけれども、こうした動きがASEAN全体に及ぼす影響ということでは、ほかの国に何らかの形で波及をしていくことになってしまうのかどうか、その点について、先生どのように見られていますでしょうか。
  192. 大庭三枝

    公述人(大庭三枝君) 御質問ありがとうございました。  今の点は非常に重要でして、先ほど私がリベラル国際秩序の後退というところで特に今回は余り言及しなかったのが、これが、普遍的な価値ですね、多元的民主主義や人権保護といったことについての後退が起こっているという現実があります。これは、元々は欧米諸国の中で排外的な保護主義が台頭しているというようなことの議論として出てきたんですけれども、実はアジアにおきましても、非常に深刻な民主主義の後退がもう既に起こっておりました。  タイはちょっと早くて、やはり二〇〇六年に当時のタクシン首相、このタクシン政権自体も問題があったんですけれども、タクシン首相がクーデターで倒されて、その後ずっと混乱が続き、そして二〇一四年に軍政が登場してからずっと軍政があり、そして選挙というものもされずにずっと二〇一九年まで来て、で、もうその選挙をやっても結局実質的にはその軍政のトップであった人が首相のままでいるという、そういうことがあります。  そして、カンボジアは、選挙の前に野党を解体したり、無理やり解体したり、あるいは政権に批判的な英字紙をシャットダウンしたりというような非常に厳しい対応を取った上で、一応選挙を開催して、今のフン・セン政権が維持されているという、そういうことがあります。  このように、アジアにおいてどうも人権や民主主義といったことの後退が起こっているという状況が見られるということは、もう既に、もうこのミャンマーの前から見られていたんですね。  ミャンマーについては、今回のクーデター以前の話ですと、ロヒンギャ問題が、実は二〇一一年に民政移管といって、これは、新しい憲法の下で一応文民の大統領であるテイン・セインが大統領になった後、その後の方がむしろ人々のロヒンギャへの差別的感情というのが、表現の自由という波に乗ってむしろ深刻化したということで、民政移管自体の一定の評価はされながらも、ミャンマーの中でのロヒンギャ問題への状況についての非常に大きな懸念というのは国際的にも非常に強く見られたわけですね。  でも、民政移管はしているので何とかなるかなと思っていたところにこの軍のクーデターというのが起こりました。これはミャンマーの国内を見ている専門家からすると、実は国内的な政治ロジック、政治的な文脈があって、その辺りは今日は時間の関係で割愛しますけれども、全体で見たときには、このようなもう既に二〇一〇年代を通じて起こっていたアジアにおける民主主義や人権の後退の一環としてこのミャンマーの問題を捉えることができます。  それに加えて、コロナ対策というものに名を借りた権威主義体制の強化、国内の締め付けの強化ということが行われているという、そういう現実もあります。例えば言論統制、言論統制をどういう形でするかというと、コロナに関するデマを飛ばす、デマを、デマというか今の言葉で言うと言わばフェイクニュースですね、フェイクニュースを取り締まるという名目の下でその言論統制を強化するといったような、そういった動きが各地で見られまして、インドネシアでもこういったコロナ対策の名を借りて、それに乗ずる形で国軍の力というのが強まっているといった、そういった流れがあります。  そういった大状況の中でこのミャンマーの話を見ると非常に興味深いのですが、ASEANとしての声明は、これは、とにかくミャンマーの人民のその利益というものに沿ってちゃんと原状回復しなさい。それから、ASEANは、目的の一つとして人権保護の推進や民主化の推進ということは既にうたっております。ですので、こういった元々の原則というものに立ち返りなさいといったような声明も出しています。  ですので、ASEAN全体としてはこのような民主化や人権というものに沿った声明は出しているんですね。だけれども、各国の状況がそれとそぐわないという、そういった、いわゆる実態とその建前の乖離というものが既にASEANの中で生まれていて、それが一層広がる可能性、懸念があるわけです。  なので、日本としては、先ほど私は打つ手が非常に限られているとは言ったんですけれども、ここは単にミャンマーが中国の方に行ってしまうとかそういう理解ではなく、やはりその長期の流れを見据えて、日本として、民主主義や人権というのは非常に大事で、それをちゃんと遵守するような形にすべきということを強く主張すべきだと思います。というのは、ミャンマーの中でも多くの国の中でもこういった強権体制へのデモはずっと続いているからです。  以上です。
  193. 山本順三

    委員長山本順三君) 時間が来ています。
  194. 礒崎哲史

    ○礒崎哲史君 はい。  今、人権、民主主義の後退というお話がありました。経済的なマルチの連携がこうした人権問題にどのように対応できるのか、これもしっかりと自分自身勉強してまいりたいと思います。  ありがとうございました。
  195. 岩渕友

    岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。  お二人の公述人に貴重な御意見をいただきました。ありがとうございました。  まず、除本公述人にお伺いをいたします。  私は福島の出身なんです。三月十一日の予算委員会で原発事故によるふるさと喪失について取り上げました。私も、避難先にマンションを買ったんだけれども周りに知っている人は誰もいないという話ですとか、帰還困難区域の方からは代々受け継いできたお祭り、これを継承することができないという話を伺ったことがありまして、家を再建をさせたり、復興公営住宅に入居すれば終わりではないし、ふるさとというものは非常に広いなというふうにも思いました。  改めて、ふるさと喪失とはどういうことなのかをお聞かせください。
  196. 除本理史

    公述人除本理史君) 御質問ありがとうございます。  先ほどのお祭りの話というのがございましたけれども、お祭りというと、都会のお祭りとこうしたコミュニティーに根付いたお祭りと大分様相は異なっていまして、例えば神社、多くはそこの氏子であったりするような方々が集まって共同で一つのステージをつくり上げていったり、そこに集まって同じ時間、空間を共有するということによって人々の間のきずなが強化されていくというような効果を持っていたわけですね。そうした、よく詳しく見てみるとそれぞれの意味が分かってくるというようなことは、被災地域の調査をしていくと、先ほどの山菜取り、キノコのように、いろいろございます。  地域の中で、例えば賠償や復興政策の中では重視されていないけれども、実は重要だという要素が非常に幾つもあるということです。それにスポットライトを当てるために、私、あえてふるさと喪失というような言葉を作っていると。  生活再建という場合にやっぱりどうしても重視されがちなのは住宅であります。自然災害の場合には、先ほど申し上げたように、基本的には自己責任でということでありますが、原発事故の場合はこれ人災だというところで東京電力のその賠償がある。ただし、ある人はあるということですね、避難指示区域の場合はある。けれども、家だけ再建しても元の暮らしが戻るわけではないということなんだろうと思います。  じゃ、何が大事なのか。例えば、家だけ建ってもその周りの人たちとのつながりが切れてしまえば、当然日常の生活が営めないでやっぱり孤立化していってしまうというようなことありますし、ですから、人々の間のつながり、コミュニティーと言ったりしますけれども。  避難元で例えば農業をやっていたような場合は、個々の農地だけ管理していても駄目で、用水路みたいな、みんなで共同作業することによってそれぞれの個別の農家のなりわいが成り立つという、共同集落の共同作業というのは重要な位置を占めていました。これもコミュニティーの役割ということになります。それから、豊かな自然の恵みだとか伝統や文化、こういうことについては今申し上げたとおりです。  こうしたものについての評価が非常に不十分だというのがありまして、ただ、当事者の実感としては非常に大きな被害なので、このことをふるさと喪失という形で、あるいはふるさとの剥奪という形で論じてきたということでございます。
  197. 岩渕友

    岩渕友君 ありがとうございます。  続けて、除本公述人にお伺いします。  原発事故による商工業の営業損害賠償について、その実態を私も国会の質問の中で取り上げてきました。  二〇一四年に今後の賠償方針が示されると商工団体などから反対の声が上がって、翌年、二倍一括賠償という方針が示されました。けれども、特に避難指示区域外では、二倍どころか一倍とか、支払われないという事業者の方が多くいらっしゃって、追加の賠償についても一月末時点で約千十件の請求に対して二十九件しか行われていないということが東京電力からの資料で明らかになっています。損害があるのに賠償が打ち切られているということなんですよね。賠償が被害の実態と合っていないというふうに考えています。  さらに、賠償の方針の決め方にも問題があるというふうに思うんですけれども、公述人の御意見をお聞かせください。
  198. 除本理史

    公述人除本理史君) 営業損害の賠償の終期、打切りの時期に関しましては、資源エネルギー庁と東京電力が、これは商工業者に提示するという形で設定をされたという経緯があります。これは二〇一四年以降の経緯があります。  これは本来であれば原子力損害賠償紛争審査会などが関与すべきところだと思いますが、そうしたことがなされないまま、エネ庁と東京電力の説明会という形で提示をされてきたということがあります。これはちょっとプロセスの問題として指摘をしておきたいと思います。  それから、被害の実態とのこと、関係でありますが、私ども、共同研究者と一緒に二〇一六年に福島県商工会連合会の会員事業者方々にアンケート調査を実施しております。これはちょうど営業損害の賠償終期が設定された時期に当たりますが、このときの結果でありますけれども、避難指示区域内の事業者で半数、当時も休業を続けておられていたり、区域外でも例えば三七%の事業者の方が売上げが減少していたりというような結果が出ておりました。  こうした被害が継続していると考えられる下で、実態からすると、かなり拙速に賠償の終期というのが設定されたんではないかというふうに考えております。
  199. 岩渕友

    岩渕友君 ありがとうございます。  事業者の皆さんの実態は、今もいろいろ困難抱えているということだというふうにも思います。  それで、続けて除本公述人にお伺いをするんですけれども、原子力損害賠償・廃炉等支援機構法によって、本来であれば東京電力が払うべき損害賠償などの費用を国であるとか国民が負担する仕組みにしたということは、加害者である東京電力を救済するものであると。同時に、損害賠償の抑制につながっていくのではないかというふうに考えるんですけれども、公述人の考えをお聞かせください。
  200. 除本理史

    公述人除本理史君) ありがとうございます。  東京電力に対する救済措置ではないかというところは、私も全く同感であります。損害賠償の抑制ということでありますが、これは先ほど申し上げた三月十日の「NHKスペシャル」、除染マネーの中でも指摘をされていたことでありますけれども、賠償や除染やその廃炉などの費用がどんどん増加をしていく中で、これを、東電改革を進めるためには東京電力にそれを全て負担させることができないので、じゃ、国が代わりに乗り出してくるというような流れであります。じゃ、そうなると、国が乗り出していくにしても、とにかく総額を抑制したいという話になるのは当然かなというふうに思っております。  番組の中にも出てきていた東電改革委員会の議事録というのは私も全部読みました。その中でもはっきりとこうした賠償総額抑制へというような流れが読み取れたということはございます。
  201. 岩渕友

    岩渕友君 実際には抑制につながっているということだと思います。  続けて除本公述人にお伺いをするんですけれども、先ほど来、賠償の基準を示す指針の見直しの問題について話が出されています。  それで、この見直しの問題ですけれども、原発事故をめぐる集団訴訟で、その賠償の基準を、示しているその指針を上回る損害賠償が認められているというだけではなくて、被害に遭われた方々や、あと自治体の皆さんからも見直しをする必要があるんじゃないかというふうな声が相次いでいます。実態に合わない指針の見直しが必要だというふうに私も思っているんです。  改めてどうお考えかということと、そして、損害賠償請求の時効についてなんですけれども、特例法で十年に延長されましたけれども、これ再延長が行われませんでした。それで、東京電力は何と言っているかというと、時効を理由に一律に損害賠償を断ることは考えていないと、こういうふうに言っているんですね。だけど、こうした東京電力の話を聞いた方からは、じゃ、個別には賠償を拒むこともあるのかということで不安の声が上がっています。この問題についてどのようにお考えかも併せてお聞かせください。
  202. 除本理史

    公述人除本理史君) ありがとうございます。  指針の見直しにつきましては、福島先生からの御質問にもございましたけれども、私も指針の見直しというのが必要になっているというふうに考えております。  もう高裁レベルでも、ふるさと喪失や区域外の避難者への賠償の上積みを始め、原賠審のその指針とは異なる形での判断というのが、あるいはそれを基礎にしているとしても、それでは足りない、不十分であるというような裁判例というのが出てきているということでありますので、これは指針の見直しという課題の必要性を示唆しているということだろうと思います。日弁連も意見書を出しているとおりではないかなというふうに思っております。  それから、その時効の問題でありますが、私が意見書を出している避難者訴訟という、いわき支部に提起をされた裁判が今最高裁に行っております。ここで東京電力が最高裁に出している上告理由の説明書のようなものがありますけれども、これ読みますと、裁判では認められているふるさと喪失などの損害について賠償を拒んでいる内容なんですね。こうした法的利益はないんだと、存在しないというふうに主張しているので、こういう裁判で認められたことも拒否をしている。これは、裁判、法廷戦術上はそう言われればということなのかもしれませんが、だとしても、本当にきちんと対応してくれるのかなと不安を覚える方が出てくるのは全く不思議ではないなというふうに思っております。
  203. 岩渕友

    岩渕友君 今お話があった、東京電力がそのふるさと喪失という法益はないということを上告理由で述べているということは非常にひどいということで私も予算委員会で取り上げたんですけれども、驚きの声が上がった問題でもあります。  では、最後になるんですけれども、大庭公述人にお伺いをします。  中国による香港やウイグル自治区での人権侵害、尖閣諸島周辺での中国公船による領海侵犯が深刻な国際問題となっています。さらに、中国が海警法を施行して、私はこれ自体、国際法に違反したものだというふうに考えているんですけれども、公述人がどのようにお考えか、お聞かせください。
  204. 大庭三枝

    公述人(大庭三枝君) おっしゃるとおりで、全てこれは、日本にとってということだけではなくて、国際社会の全体の秩序という観点からも中国のこうした様々な行動というのが懸念されるというのは、多くの方々、多くの政府の合意するところだろうというふうにお答えをいたします。私もそれに同意をするわけです。  それに対してどうするかということについては、どこの国も非常に考えあぐねているというか、それはなぜかというと、やはり今の国際社会は主権国家が併存している分権的な社会であるというのが大原則で、その上で協力するべきところや共通するところはある、対話をするところはあるけれども、結局、国内における様々な問題はその国の主権に委ねられているといった大原則があります。  そういったその大原則がある上で中国が様々なこのような行動を取るということについて、もうこれは中国に対して、こういう行動は非常によろしくないと、そういう形でかなりプレッシャーを掛けていくしかないということです。  ただし、一つ私が、何か希望じゃないんですけれども、ああ、こういう動きがあるんだというふうに思っているのは、二〇二〇年に中国は海洋権益の拡大にしても様々な意味で非常に目立った行動をするんですね。それに対する、世界中の対中警戒心というのは物すごく上がっております。中国を取り巻くその目というのは、実は東南アジアにおいても、当然日本においてもそうですけれども、ヨーロッパにおいても非常に厳しくなりつつありまして、正直なところ、そういった多方面でのある種の対中脅威論の高まりというものをこのまま放置して中国がやっていけるのかと、中国がいかに大国であってもこのような不安定な関係を各国と続けていくことができるのかということで、その観点から中国が行動を変えるということを非常に期待をするところです。  その際には、引き続き、こういった懸念材料については日本からも懸念、強い懸念を表明していくということが重要だろうというふうに考えています。
  205. 岩渕友

    岩渕友君 以上で終わります。
  206. 山本順三

    委員長山本順三君) 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。  この際、公述人方々一言御礼を申し上げます。  本日は、有益な御意見をお述べいただき、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  これをもって公聴会を散会いたします。    午後四時五分散会