○打越さく良君
立憲民主・社民の打越さく良です。
私は、会派を代表し、全
世代対応型の
社会保障制度を構築するための
健康保険法等の一部を改正する
法律案に対し、反対の立場から討論を行います。
討論に先立ち、感染症禍において
東京オリンピック・パラリンピック開催に突き進む
菅総理及び菅
内閣の姿勢について苦言を呈します。
政府の新型コロナウイルス感染症
対策分科会の尾身茂会長は、開催するとしても、何のために開催するのか明確なストーリーとリスクの最小化をパッケージで話さないと
一般の人は
協力しようと思わないと述べられ、
国民の理解が必要との
認識を示されています。
ところが、菅首相は、過日の厚生労働委員会で
国民の命と健康を守ることより五輪を優先させることはないと私に答弁されましたが、そのリスク評価を行うことについて明言せず、尾身会長の御
懸念には答えていません。
また、
総理は平和の祭典であるとの
認識を示されていますが、選手にはワクチン接種がなされても、
国民にはまだワクチンが行き渡っていない
状況で開会を迎えるオリンピック・パラリンピックは、むしろ分断と格差の象徴になりかねません。
多くの報道で
指摘されているように、五輪成功による熱狂の余韻冷めやらぬうちに衆院解散を打って勝利し、その後の自民党総裁選は無投票で乗り切るというシナリオがあるとすれば、
国民の納得は決して得られないでしょう。
さて、反対の
理由の第一は、本
法律案が全
世代対応型をうたい、現役世代への給付が少なく、給付は高齢者中心、負担は現役世代中心というこれまでの構造を見直すとしながらも、その
実態は、現役世代の負担増を抑制するとの名目の下、後期高齢者のみに七百二十億円もの負担増を押し付けることばかりが突出した、その場しのぎのびほう策にすぎないからです。
一方、限界に近づいているとされる現役世代の本人負担は僅か月額三十円の減であり、負担軽減には全く寄与していません。その反面、公費負担は九百八十億円もの減少が見込まれています。国の財政事情を優先させた、全
世代対応型とは名ばかりの看板倒れ
法案と言わざるを得ません。また、財政
影響に係る将来推計が二〇二五年までしか考慮されていないこともその場しのぎであることを証明しています。
なお、そもそも現役世代への給付が少ないのは、医療に対する需要の違いからして当たり前であり、これを世代間対立のように捉えることは適当ではありません。
反対の
理由の第二は、本
法律案が後期高齢者の受診抑制による財政縮減効果を見込んだ
法案であるということです。
本
法律案では、長瀬効果による受診抑制効果が九百億円と見積もられています。しかし、窓口負担が高いためや償還払いなどを嫌って高齢者が受診をためらったりすれば、必要な医療が受けられないことになります。また、そのために症状が悪化したり慢性化したりすれば、医療費がかさむばかりでなく、高齢者のクオリティー・オブ・ライフをも
阻害することになるのです。
厚生労働省が巨額化、複雑化する健康保険財政の指標に九十年近くも前の二次関数式をいまだに使用しているのは、高齢者を標的とした医療費抑制を強調するためだけであり、高齢者いじめそのものでありましょう。また、厚生労働省が医療費の効率化に資する実証的な研究を怠っていることは無
責任としか言いようがありません。
反対の
理由の第三は、医療扶助におけるオンライン資格確認について、福祉事務所やケースワーカーの方々から導入が拙速ではないかとの
懸念があることです。
マイナンバーカードが普及しない中での事実上の強制が行われれば、マイナンバーカードの
取得の支援も行わなくてはいけない上、マイナンバーカードを持たない方には旧来のやり方を併存しなくてはならないので、仕事はむしろ増えるという御
指摘や、精神疾患をお持ちの方や認知症の方などに頻回受診
対策は一律には当てはまらないなど、現場の
実態を無視しているとの声が上がっています。ケースワーカーの負担軽減やその前提となる増員もないままでは、現場が混乱することは必至です。
反対の
理由の第四は、本
法案が将来的な見通しや抜本改革への視点を全く欠いていることです。
抜本改革の
必要性は、
制度改正ごとに
指摘されてきました。ところが、本
法律案は、附則において、全
世代対応型の持続可能な
社会保障制度を構築する
観点から、
社会保障制度の改革及び少子化に対処するための施策について、その
実施状況の検証を行うとともに、総合的な検討に着手し、その検討の結果に基づいて速やかに法制の
整備その他の必要な
措置を講ずるなどと言い訳めいた言及があるばかりです。本
法案は抜本改革先送りの欠陥
法案であると断ぜざるを得ません。
田村厚生労働
大臣は、
国民の理解を得るには時間が掛かるとの答弁を行っていますが、
法案提出そのものが時期尚早であったことを正直に吐露されたものと
考えます。
反対の
理由の第五は、立法府での議論が不十分なことであります。
衆議院において、野党が十分な
質疑時間の
確保を求める中、五月七日の厚生労働委員会で、突如、
質疑終局、討論省略、直ちに採決との動議が自民党から出され、あろうことか委員長がこれを認めてしまったために可決された経過があります。このことによって、
立憲民主党が
提出し、
審議中であった高齢者の医療の
確保に関する
法律の一部を改正する
法律案は、採決もされないまま衆議院にとどめ置かれたままです。
立憲案は、保険料の賦課限度額を引き上げ、後期高齢者の中で特に高所得の方に負担をお願いすることによって、公費の投入と併せ、
政府案の見込みと同程度、現役世代の負担を軽減することを
目的としたものでした。これは、
政府案で
懸念される高齢者の受診抑制による重症化などを防止するために必要な改正であり、与党側からも傾聴に値するものと評価が得られておりました。したがって、立憲案を可決の上、本院で
審議が行われるべきものでありました。
審議時間、また
審議内容とも不十分なままの
政府提出法案を可決する前提はないのです。
このように、全
世代対応型の
社会保障制度を構築するための
健康保険法等の一部を改正する
法律案は、財政的な側面に主眼を置いた小粒で場当たり的なものにすぎません。
菅総理は、六月一日の本院厚生労働委員会で、世界に冠たる
我が国の
社会保障制度、この
制度を次の世代に引き継いでいくことは私たち世代の極めて重要な役割であると述べられました。確かに、
我が国の保険証一枚で誰でも、いつでも、どこでも医療機関にフリーアクセスが可能な
国民皆保険
制度は世界に誇り得る
制度です。
しかし、本
法律案は、このフリーアクセスを実質的に抑制し、必要な医療の
提供を怠るものであり、必ずや将来に禍根を残すことになるでしょう。
国民本位、患者本位の医療の実現のためには、医療のみならず社会保障全般にわたる
制度横断的な一体改革を行うことが不可欠です。そのための長い目こそが政治に求められています。
抜本改革の名に値する
国民本位の健康保険
制度実現のため、賢明な議員各位におかれましては、何とぞ本
法律案に反対されることをお願いして、私の反対討論を終わります。
ありがとうございました。(
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