○真山勇一君
立憲民主・社民の真山勇一です。
会派を
代表し、
少年法等の
改正案について、反対の立場から討論をさせていただきます。
反対の
理由は明確です。
改正の
理由が全く見出せないからです。
衆議院そして参議院での審議を通じて、上川法務
大臣からも法務省の
政府参考人からも、なぜ今回の
改正が必要なのか納得のいく
答弁を全くしていただけませんでした。何度も何度も求めましたが、
法改正を必要とする立法事実は示されませんでした。
改正理由の一つとして、少年による犯罪の実情ということが挙げられています。しかし、現行の少年法は非常によく機能していることを法務
大臣も法制審議会もはっきり認めています。上川法務
大臣が自ら
答弁されているように、少年犯罪は大きく減少しており、凶悪犯罪も激減しているのが現実です。従来からの更生
保護行政の成果もあって、
状況は大いに
改善してきているのです。それなのに、なぜ今、わざわざこれを後退させるのか、全く理解に苦しみます。
本
改正案の大きな柱は、十八歳、十九歳を特定少年として区別することです。この年代の少年は可塑性に富み、更生や教育の
効果が高いと言われていることは法務
大臣も認めていらっしゃいます。人間の脳は二十五歳頃まで発達を続けるという研究結果もあります。諸外国のように、むしろ少年法の適用
年齢を引き上げて、更生と教育の
取組を
強化するということならまだ分かりますが、その逆をやる
理由は全く道理に反しているのではないでしょうか。
十八歳、十九歳の特定少年の事件も全件家庭裁判所への送致が維持されることだけは一応の評価ができますが、少年であると言いつつ、その一方で、処罰は成人と同じようにするというのです。こうした
改正がなされることに、十数年間
保護司をしてきた私としては、少年たちに寄り添ってきたこれまでの努力が否定され、ばかにされているような気すらします。
上川
大臣は、今年三月の京都コングレスにおいて、日本の
保護司
制度をローマ字のHOGOSHI、HOGOSHIとして世界に広め、世界
保護司デーを設けると宣言されました。しかし、あくまでもこの
改正案を成立させるのであれば、もう一度京都コングレスをやり直して、日本の更生
保護行政を後退させるという旨を全ての参加国に伝え、釈明すべきだと思います。
もう一つの大きな
改正理由として、
成年年齢の
引下げ等、
社会情勢の
変化が挙げられています。これが今回の
改正案とどう
関係があるのか、最後まで明快な答えは示されませんでした。成人として参政権など権利行使が認められることと、本人の健全育成のために国家が必要な
措置をとることは、本来別問題ではないでしょうか。
法律上の
成年年齢が十八歳に引き下げられても、お酒やたばこ、公営ギャンブル等は二十歳まで禁じられています。これは、本人の健全な発育を
考えてのことであり、全て自己
責任として解禁しようなどという論議はナンセンスと言えます。十八歳になったからといって直ちに
行為責任を問うことはせず、本人の健全な育成を考慮し、国家として更生及び教育に力を尽くすことの方が、むしろ現行の法体系と矛盾なく整合するのではないでしょうか。
理由もない
改正だからというだけではありません。大いに弊害があることも
懸念されています。これも私たちが反対する
理由です。
特定少年は検察に逆送致されます。
原則として、短期一年以上の刑に当たる事件は、一律に検察への逆送の
対象になります。これは、現行の故意による
被害者死亡という条件から大幅に
拡大され、極めて広い範囲の犯罪が含まれることになります。現行では、
対象者の立ち直りを考慮し、家庭裁判所がきめ細かい処分を行うことを
考えていますが、今後は一律で検察に逆送致されるというのです。再犯
防止の点からも逆
効果になることは明らかですが、法務省からは納得のできる説明はありませんでした。
無論、
改正後の第六十二条第二項ただし書には、短期一年以上の罪であっても逆送致をしない例外事案もあり得るとの
規定もありますけれども、どんな例外があり得るのか、今も判然としません。恣意的判断や
社会的圧力によって判断がゆがめられる余地があるのであれば、欠陥
法案と言うほかはありません。
特定少年に対する
保護処分も大きく後退します。現行では、個々の少年の健全な育成を重視して、犯情の軽重を問わずに
保護を要する、
保護を優先するとしていますが、これが大転換されます。
改正案では、特定少年に対する
保護処分は、犯情の軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲内とされました。もはや要
保護性は重視されないのでしょうか。少年法の理念や更生
保護制度、再犯
防止制度の根幹を台なしにする
法改正には、断固として反対いたします。
推知報道
禁止の解除
規定も大問題です。本
改正案では、特定少年が公判を請求された時点で実名での報道が認められることになりますが、その
理由は全く不明です。実名報道によって、少年犯罪への抑止
効果があるわけではありません。刑事裁判所の事実審理の結果、家庭裁判所への移送もあり得るとされています。また、審理の結果、無罪になる
可能性も否定できません。しかし、起訴された時点で既に広く推知報道がなされてしまっているのです。
社会復帰を支援する
家族の生活にも著しい困難をもたらし、帰住先を失うことで、
対象者の更生を妨げるおそれもあります。こうした推知報道による
回復不能の
事態に対する救済
措置、
回復措置等について、法務省の具体的な実効策を示すことはありませんでした。
事件報道の中で
被害者の名前が報道されるのだから、加害者も、特定少年であったとしても名前を報道されるべきという
意見があるのは承知しています。しかし、本来なら、
被害者本人と御遺族の心情や生活の立て直しに配慮して、加害者の実名報道を推進するのではなくて、
被害者側についての報道を抑制することを
検討すべきではないでしょうか。少なくとも、
被害者側の十分な救済策を用意すべきですが、それをしないで、ただ加害者に
社会的制裁を加えても、
被害者側には何も良いことはありません。
特定少年から虞犯を除外することも大いに問題です。少年は全て要
保護性に基づく処分が必要だというのがこれまでの少年法の
趣旨でした。司法の現場に携わる
人々には、虞犯とする家庭裁判所の司法
手続は選択肢として極めて有効であり、セーフティーネットの役割を果たしているという主張に耳を傾けてください。特に、虞犯の女子少年には、虐待とか精神疾患など大変切実な問題があるのです。それなのに、具体的な代替策をつくることなく、一方的に虞犯から除外するというのは余りにも乱暴で無慈悲です。
特定少年に不定期刑が適用されなくなることも反対
理由です。少年は成長発達の途上にあり、教育による更生や
改善が期待されるからこそ、幅のある刑期で柔軟な
対応を可能にしています。特定少年も本人の個別事情に応じた処遇により、教育、更生の
可能性が高まるはずですが、今回の
改正でこれができなくなるのです。不定期刑の適用が除外されると、有期刑の上限は三十年になります。十八歳、十九歳の特定少年が長
期間の刑に服した場合、
社会復帰を著しく困難にしかねません。
さらに、
社会復帰をした後、仕事を探す際の資格制限排除の特例が適用されなくなります。現行法は、資格制限からできるだけ早く少年を解放し、本人の更生を助けることを目的にしています。しかし、これが撤廃されると、特定少年の将来の選択肢は狭められてしまいます。一生を左右するほどの大問題ですが、法務省はどれだけの資格がこの制限
対象になるのか、厳密な
検討をせずに本
改正案を
提出しました。怠慢と言わざるを得ません。何百、何千もの資格が
対象になるかもしれないという説明がなされたんですけれども、何百、何千あろうとも、その全てをきめ細かく精査して
法案を
提出すべきでしょう。そうしたことが誰一人取り残さないということにつながっていくのではないでしょうか。
このように、本
改正案は、少年の立ち直りや更生
保護を大きく後退させるものです。
菅政権は
国民の命や人生を軽んじていると言われても仕方がない
内容です。
会派として到底賛成できないということを申し上げて、私の討論を終わります。
ありがとうございました。(
拍手)