○柴田巧君
日本維新の会の柴田巧です。
私は、会派を代表して、ただいま
議題となりましたデジタル
改革関連
法案について、賛成の立場で討論いたします。
我が国では、二〇〇〇年のIT基本法以降、デジタルガバメントを目指して幾つもの
法律が制定され、計画が策定されてきました。また、この二十年の間、毎年約一兆円程度デジタル
政策に投じられてきましたが、オンラインで完結できる行政手続は僅か七・五%と、デジタル化は進まず、オンライン
利用率はOECD加盟国の中で最下位という不名誉な地位にあります。加えて、今回の新型コロナ禍で
給付金の
支給が大幅に遅れるとともに、保健所からの感染者の報告がファクスや手入力等旧態依然の方法で行われるなど、迅速な
支援や業務処理が極めて困難であるという
実態が浮き彫りになりました。このように、我が国はまさにデジタル敗戦を喫しています。
そういう中、ようやく
政府は行政のデジタル化に本腰を入れ出しました。遅きに失したとはいえ評価するものであります。なぜ敗戦と呼ばざるを得ない事態に甘んじてしまっているのか、よく検証し、反省をした上で、
日本経済をアップデートするためにも、デジタル
改革関連
法案を成立させることは不可欠と考えます。
以下、賛成する具体的な
理由を述べます。
まず第一は、我が党の提案により
衆議院で
デジタル社会形成基本法案が修正され、透明で公平公正な経済
社会の構築がより可能になったことです。
同
法案の
政府原案では、国及び地方公共団体の役割に関する
規定が、国民の利便性の向上並びに行政
運営の簡素化、効率化及び透明性の向上を挙げるにとどまっていました。これでは合理化のみが国や地方公共団体のデジタル施策の中心であるかのような印象を与えることから、我が党としては、国民の
所得と資産を捕捉した上で、取るべきところから取り、手を差し伸べるべき方々にはしっかり手を差し伸べることのできる公正な
給付と
負担を
確保すべきと提案をいたしました。そうしたところ、自民、公明の
皆さんには御賛同いただき、三会派で修正案を提出、
衆議院で可決されました。この修正により、透明で公平公正な経済
社会の構築により近づける道が開かれたと確信をしています。
賛成する第二の
理由は、この
法案が成立すれば、マイナンバー活用のグラウンドが広がることです。
我が党は、当初より、透明で公平公正な経済
社会の構築にはマイナンバーのフル活用が必要と主張してきました。
本
法案によれば、医師免許等国家資格に関する事務へのマイナンバーの
利用が拡大され、添付書類の省略等による手続の簡素化、行政機関等における
登録等の処理の効率化、登録情報の正確性の
確保、最新化、マイナポータルを活用した資格証明などが可能になります。また、国民にとって
公的給付への申請手続の簡素化、
給付が迅速になることや、災害時や相続時に口座情報が提供されることにより、手続の
負担の
軽減等が
実現します。
しかしながら、全ての
預貯金口座にひも付けされないことは大変残念であります。
衆議院では、我が党と国民民主党が共同で全ての
預貯金口座へのマイナンバーのひも付けを義務化する
法案を提出をしましたが、与党も含めた多数に否決をされました。このことは、マイナンバーフル活用に向けて
政府・与党の覚悟が欠如しているあかしだと言っても過言ではありません。
行政の情報管理を効率化し、
給付と
負担の適切な
関係に資するマイナンバー
制度の
趣旨からすれば、本来任意ではなく全ての
預貯金口座にマイナンバーを付番すべきものです。中途半端な取り組み方では、
日本の
デジタル社会の未来を明るいものにはできません。我が党としては、引き続き、全ての
預貯金口座へのマイナンバーのひも付け義務化を強く求めていきたいと存じます。
賛成する第三の
理由は、行政デジタル化の司令塔であるデジタル庁が設置されることへの期待です。
これまでは、中央官庁のデジタルシステムは縦割りでばらばらである上、地方公共団体もそれぞれのシステムを有しており、有機的なつながりはおぼつかない状態でした。このため、本来ならば共通化、
標準化できるシステムや事務が多くあるにもかかわらず、重複投資が長い間放置されてきただけではなく、組織間で
連携させることが難しかったがために、
給付金の遅延といった事態に陥ってしまいました。この反省の上に立ってデジタル庁が設けられます。
デジタル庁は、
デジタル社会の
形成に関する司令塔として他の省庁への勧告権を持ち、強力な総合調整機能を有する組織とされています。また、基本方針を策定するなどの企画立案や、国、地方公共団体、準公共部門等の情報システムの統括、監理を行うとともに、重要なシステムについては自ら
整備するものとされています。
社会全体のデジタル化に向けて、行政の縦割り打破、大胆な規制の
改革を行い、新型コロナへの対応において明らかとなった様々な
課題を根本的に解決していくことを期待をします。そのためにも、デジタル庁は、行政業務を単にデジタルに置き換える旗振り役としてではなく、組織横断的に徹底した
改革を
推進する役割こそ果たすべきです。そして、行政の現場で非効率となっている業務プロセスや不合理な
制度、慣行などを
利用者視点から徹底的に
見直し、
仕事内容やサービスの
課題を改善するなど、質を高めていかなければなりません。
デジタルトランスフォーメーションがコーポレートトランスフォーメーションを導く新たな行政経営モデルを
実現しなければ、
日本に明るい未来はありません。供給者側の事情を優先する発想が変わらない限り、行政のデジタル化も規制分野のデジタル化も絵に描いた餅となり、そのツケは
利用者たる国民が負うことになります。失敗を繰り返さないためにも、デジタル庁は国民起点で業務を遂行すべきであることを強調をしておきます。
賛成する第四の
理由は、審議を通じて、国民の行政手続コストを削減するために、明確な数値目標や工程表を策定することを
政府が明らかにしたことです。
行政のデジタル化を進めれば、行政業務の簡素化、効率化を
実現するだけではなく、その手続コストが削減され、民間の活力を引き出して、経済の活性化を図ることができます。
二〇一九年十二月に公表された経済産業研究所のレポートによれば、国の行政手続だけでも、民間は
年間に作業時間三億三千三百三十七万時間を要し、金銭に換算すると八千二百八億円も掛かっているとのことです。したがって、行政手続コストを削減し、それらを本来投資すべきところに適切に振り向けられれば、民間は新たな価値を生み出していくことが可能です。
しかし、いつまでに、どれだけ、そして、どのように手続コストを削減するのかは判然としませんでした。
そこで、
政府挙げてコスト削減に取り組むには、明確な数値目標を設定するとともに、
実現に向けた具体的な工程表を策定すべきと本
会議でただしたところ、菅総理は、今後、デジタル庁において全ての
政府情報システムについて統括、監理を行う中で、具体的なコスト削減
効果も含め、明確な数値目標や工程表を策定してまいりますと
答弁をしました。
やはり、目標とスケジュールがはっきりしなければ事は進みません。デジタル庁設置後、できるだけ早期に数値目標と工程表が策定され、それに基づき、
政府全体でコスト削減の
効果的な
取組が
実施されることを求めておきます。
終わりに、まさに敗戦から立ち上がり、これがラストチャンスと位置付け、これまでにない
取組を強力に繰り出して、我が国の新たな発展、飛躍を期すとともに、誰一人取り残さない、人に優しい
デジタル社会を今こそ構築しなければなりません。
さいは投げられました。転換期にあるからこそ、小手先の微修正を繰り返すのではなく、また、びほう策の連続ではなく、未来のあるべき姿を大きく描き、その
実現に向け大胆な
改革を断行すべきであります。
日本維新の会は、引き続き、このような考えの下、前例踏襲主義や縦割り行政、そして既得権を打ち破り、新たな時代の幕を開けるべく果敢に挑戦し続けることをお誓いをし、私の賛成討論といたします。
ありがとうございました。(
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