○清水貴之君
日本維新の会の清水貴之です。
会派を代表して、ただいま議題となりました
少年法等の一部を
改正する
法律案について
質問をいたします。
今回の
法改正では、
少年法の適用
年齢を
現行どおり二十歳
未満にとどめつつ、十八歳、十九歳の
検察逆
送致の罪種の
範囲を拡大し、起訴後の
実名報道も解禁するとしています。後ほど個々の問題点に触れますが、
権利と
責任、そして罪と罰のいずれの
バランスも欠く、中途半端な法
整備ではないかと我々は
考えます。
十八歳、十九歳は成人なのか
少年なのか。この単純な問いに答えを出さないまま、彼らを新たに
特定少年なる言葉でくくり、いびつで不安定な
存在に据えているのが今回の
法案の姿ではないでしょうか。
大人と
少年の境界については、既に平成二十八年施行の
改正公職選挙法で十八歳以上に
選挙権が与えられており、来年四月には民
法改正により成人
年齢が十八歳に引き下げられます。
改正公選法は、附則で、
少年法と
民法については必要な法制上の
措置を講じると明記していました。要は、無用な混乱を招かないために、法的な線引きをそろえるよう促したものです。当然、
少年法の適用
年齢は十七歳以下に引き下げ、
刑事上も十八歳、十九歳を成人として扱うべきです。
政府の曖昧な
措置では、
民法で新たに成人に加わる世代に大人としての
責任を植え付けるための明確かつ有効なメッセージにならないのではないかと
考えます。
総理にお伺いをします。
選挙権を有し、投票
行動で政治や
社会を変えることもできる十八歳、十九歳が、罪を犯したときだけは
少年として扱うことが理にかなっていると言い切れるのでしょうか。
法案のベースとなった
法制審議会の
少年法改正要綱は、十八歳、十九歳は十分に成熟していないと
指摘しました。十分な成熟が認められない彼らが
民法では大人に扱われ、
選挙権も有することは大いなる矛盾です。
選挙の際、未成熟としている十八歳、十九歳の有権者に党が投票や支持を呼びかける構図を是とされるのでしょうか。
民法の
成年年齢の
引下げに伴い、理論上、十八歳、十九歳も公認会計士や医師免許などの国家資格に基づく職業に就く道が開かれ、裁判員裁判の裁判員を務めることも可能となります。他人の財産や生命を預かり、あるいは裁くことができる人間を、
犯罪に手を染めたときは特別扱いすることが認められることが果たして公正な法
制度だと言えるのでしょうか。
親の監護から離れ、自由に意思
決定できる代わりに、自らの
行動に
責任を持つことは世の理ですが、それと十八歳、十九歳を成人扱いしない
少年法とのそごをどのように説明されますか。
世界を見渡しても、
刑事法制上十八歳、十九歳を成人として扱っていない国は一割強しかありません。
我が国の十八歳、十九歳の成熟度は国際
基準から後れを取っているというのでしょうか。
少年に対する
刑事政策をめぐって、
世界の趨勢と
我が国の
対応が乖離している
理由を
お答えください。
法案では、加害者の
保護や
更生に重きが置かれ、
犯罪被害者本人や御家族の思いが置き去りにされています。加害者が
少年であろうと誰であろうと、
被害者本人や御家族が受けた痛みや悲しみ、悔しさは一つも変わりません。
私の地元、兵庫県神戸市で平成九年に起きた連続児童殺傷
事件で
少年にお子さんを殺害された土師守さんは、去年の夏、与党が今回の
少年法改正の方向性を固めた直後のメディア取材で、こう切々と訴えられました。
残念としか言いようがありません。
民法でも成人と扱われるのには、
責任のある
行動を取れると認定されているからです。それなのに、罪を犯したときだけ
少年ですというのは筋が通りません。この根本にメスを入れないのなら、
改正は大きな意味を失うのではないでしょうかと。
総理は、土師さんのこの言葉をどのように受け止めますか。土師さんが言う根本にメスが入れられたと胸を張れますか。併せて
お答えください。
政府は、従来、
犯罪被害者等の
支援のための
取組に当たっては、
被害者やその御家族の
方々の御意見に常に耳を傾けながら、あらゆる
犯罪被害者に対して絶えず必要な施策を
検討し、速やかに実施することが重要である旨示しています。
では、今回の
少年法改正に当たって、
犯罪被害者や御家族の声はどこにどのように反映されたのでしょうか。
政府は現在、特に
少年犯罪による
被害者とその御家族に対し、いかなる
支援を行っているのですか。今後、どのように
支援を
充実させていくお
考えでしょうか。
法務大臣に答弁を求めます。
現行の
少年法でも、十八歳、十九歳の年長
少年に対しては、究極の刑である
死刑を禁じていません。加えて、逆送
範囲が拡大され、
実名報道も一部可能となるのであれば、既に
更生を旨とする
少年法の範疇にあるとは言えないのではないでしょうか。
法務大臣の認識をお示しください。
そもそも、
更生の機会は
年齢に
関係ありません。五十代でも六十代でも、全ての受刑者に対して与えられてしかるべきです。
民法で大人に扱われるのですから、十八歳以上はひとしく
刑事処分を科し、十八歳、十九歳の若年成人の受刑者には
教育の機会を更に提供すればいいのではないかと
考えますが、
法務大臣、いかがでしょうか。
逆送
範囲の拡大と
実名報道の一部解禁については一歩前進と評価する声がありますが、二十歳以上の大人と同様に扱わないためのびぼう的
措置にすぎません。
逆送の
対象は、
現行の故意の
犯罪行為により
被害者を死亡させた罪に、
死刑、
無期又は
短期一年以上の
懲役、
禁錮に当たる罪が加えられましたが、償うべき
犯罪に大きいも小さいもありません。どんな軽微な
犯罪でも、
民法で大人と認定されるならば、それに見合う
責任と罰を負わせるのが当然の姿だと思います。
罪を犯した
少年が反省もせず、二十歳
未満だから大丈夫だとうそぶく場面に幾度も接し、歯ぎしりした現場の捜査官、たくさんいらっしゃいます。特殊詐欺の犯行グループから、
少年法に守られているから安全だという甘い言葉で受け子に誘われ、犯行に手を貸すケースも後を絶たないと聞きます。
総理に伺います。
十八歳、十九歳によるあらゆる
犯罪の抑止
効果を上げる上で、
特定少年として中途半端に扱う
対応は妥当だと言えるのでしょうか。十八歳、十九歳を漏れなく成人として同等に扱うのと比べ、どちらにより
犯罪抑止
効果があると
考えますか。
法案では、
少年事件において、捜査機関は一定の嫌疑がある限り、
原則として
家庭裁判所に全件
送致するという枠組みは維持されています。全件
送致主義を堅持する意義は何でしょうか。また、十八歳、十九歳による重大
犯罪案件について、全件
送致した上で逆送するという手続を取る
理由を御説明ください。
重大
犯罪の十八歳、十九歳については、起訴段階で
実名や
年齢、職業などの
記事等への
掲載、いわゆる
推知報道の
禁止が
解除されます。これ自体も
犯罪の抑止につながると
考えますが、では、なぜ
犯罪の
軽重で
推知報道の是非について線引きをするのか、
法務大臣に伺います。
推知報道解禁の
対象媒体については、新聞紙その他の
出版物とされたままで、SNSなどの
インターネット上の媒体の扱いが明確になっていません。情報化
社会が進んだ今、誤った情報であっても瞬時に広がり、その影響は計り知れません。
推知報道された
特定少年の家族や十七歳以下の共犯者などまで推知できる情報がネット上に
掲載、拡散される懸念も拭えません。
被害者とその家族ら周辺の情報もしかりです。
推知報道に関する
インターネット上の扱いをしっかり定める、
少年法で明文化するなどし、さらには罰則
規定も設けるべきではないかと
考えますが、
法務大臣の認識をお示しください。
十八歳、十九歳を変わらず
少年の枠に押しとどめる今回の
少年法改正の中身は、まさに決められない大人たちの問題であると申し上げ、私の
質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(
拍手)
〔
内閣総理大臣菅義偉君
登壇、
拍手〕