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2021-05-11 第204回国会 参議院 法務委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    令和三年五月十一日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  五月六日     辞任         補欠選任      足立 敏之君     山崎 正昭君  五月七日     辞任         補欠選任      今井絵理子君     岡田  広君  五月十日     辞任         補欠選任      山崎 正昭君     高橋はるみ君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         山本 香苗君     理 事                 磯崎 仁彦君                 豊田 俊郎君                 真山 勇一君                 伊藤 孝江君                 清水 貴之君     委 員                 小野田紀美君                 岡田  広君                 高橋はるみ君                 中川 雅治君                 福岡 資麿君                 森 まさこ君                 山下 雄平君                 難波 奨二君                 谷合 正明君                 川合 孝典君                 山添  拓君                 高良 鉄美君                 嘉田由紀子君    国務大臣        法務大臣     上川 陽子君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局家庭局長   手嶋あさみ君    事務局側        常任委員会専門        員        青木勢津子君    政府参考人        警察庁長官官房        審議官      堀  誠司君        警察庁長官官房        審議官      檜垣 重臣君        消費者庁審議官  片岡  進君        法務省大臣官房        政策立案総括審        議官       竹内  努君        法務省大臣官房        司法法制部長   金子  修君        法務省民事局長  小出 邦夫君        法務省刑事局長  川原 隆司君        法務省矯正局長  大橋  哲君        法務省保護局長  今福 章二君        厚生労働省子ど        も家庭局児童虐        待防止等総合対        策室長      岸本 武史君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○少年法等の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付)     ─────────────
  2. 山本香苗

    委員長山本香苗君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日までに、足立敏之君及び今井絵理子さんが委員辞任され、その補欠として岡田広君及び高橋はるみさんが選任されました。     ─────────────
  3. 山本香苗

    委員長山本香苗君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  少年法等の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、法務省刑事局長川原隆司君外九名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 山本香苗

    委員長山本香苗君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 山本香苗

    委員長山本香苗君) 少年法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 山下雄平

    山下雄平君 自由民主党の山下雄平です。質問の機会をいただき、ありがとうございます。  この少年法改正案については、衆議院審議などを聞いておりますと、少年被疑者可塑性を重視する立場の方からは現行法規定改正すべきではないとの主張がなされて、少年法適用民法などの規定に合わせて十八歳までに引き下げるべきだとの立場の方からは、権利責任、罪と罰のバランスを欠くと批判を浴びています。  まさに両側からいろいろな御指摘が出ている状況ですけれども、改めて法務大臣として、今回の少年法改正について、少年法適用年齢自体は変えずに、十八歳、十九歳に特定少年という新たな枠組みを設けた意義について御説明願えますでしょうか。
  7. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 本法律案は、十八歳及び十九歳の者が、選挙権年齢やまた成年年齢引下げ等によりまして重要な権利、自由を認められ、責任ある主体として積極的な社会参加が期待される立場となった一方で、いまだ成長途上にあり、可塑性を有するということを踏まえまして、これらの者が罪を犯した場合につきましてはその立場に応じた取扱いを定めようとするものでございます。  具体的に申し上げますと、罪を犯した十八歳及び十九歳の者につきまして、原則逆送事件範囲を拡大すること、また公判請求された段階で推知報道禁止を解除するなど、十七歳以下の者とは異なる取扱いをすることとしつつ、全ての事件家庭裁判所に送致をし、家庭裁判所原則として保護処分を行うという少年法の基本的な枠組みは維持することとしております。  そこで、十八歳及び十九歳の者の法律上の位置付けに関しましては、引き続き少年法適用対象とした上で、特定少年として十七歳以下の少年とは異なる特例を定めることが適当であると考えたものでございます。
  8. 山下雄平

    山下雄平君 先週の参考人質疑でお越しいただいた東京大学の橋爪教授法制審議会の部会で、十八歳、十九歳の者が成人であるか少年であるかは明確にされておらず、国民一般にとって理解しづらいといった側面は否めないと述べられているとおり、法体系としてすぱっと理解しやすいというわけではないとは思いますけれども、ただ、民法その他の改正を踏まえて権利責任が変化する中では、私は必要な改正だというふうに思っております。  その上で、私、以前、新聞記者をしておって、少なからず事件取材をしていた経験から、この法の規定にあります推知報道について中心に質問をさせていただければというふうに思っております。  少年事件被疑者特定する推知報道禁止する少年法六十一条の規定意義というのはどこにあるのでしょうか。参考人質疑の中では、実名報道されると後々にも犯罪者として名前が知られて社会復帰が難しくなるという指摘も出ました。ただ、それは成人被疑者名前を報じられた場合でも同じだと思います。なぜ少年は罪を犯しても匿名という形で守られるのでしょうか、お聞かせください。
  9. 川原隆司

    政府参考人川原隆司君) お答えいたします。  推知報道禁止を定める少年法第六十一条の趣旨は、少年一般成長途上にあり、可塑性を有することに鑑み、少年が犯した罪について、その氏名など少年特定に関する情報が広く社会に伝わり社会生活影響を与えるのを防ぎ、その更生に資することにあるとされているところでございます。
  10. 山下雄平

    山下雄平君 成長途上、そして可塑性、この点については後の質問で伺おうというふうに思っております。  この実名報道云々についての実務について少しお伺いしたいんですけれども、報道機関が独自に取材して主体的に判断している面もあると思いますけれども、推知できるような報道をするかどうかというのは、実際は捜査当局発表情報提供に依拠しているところが大きいというふうに、私自身、自らの経験からも考えます。  警察は、少年事件発表報道機関への情報提供をめぐり、名前など被疑者少年特定できる情報公表するかどうか、どのように判断しておられるのでしょうか。少年法六十一条の趣旨を踏まえて、少年事件では原則として名前などは公表していないというふうに理解してよろしいのでしょうか。警察庁にお聞かせいただければと思います。
  11. 檜垣重臣

    政府参考人檜垣重臣君) お答えいたします。  御指摘のとおり、警察では、少年法第六十一条の趣旨を踏まえ、犯罪捜査規範において、少年事件について報道機関発表する場合においては当該少年を推知することができるようなことはしてはならないことと規定しております。  少年事件に関わる報道発表につきましては、都道府県警察において、この規定にのっとり適切に対応しているところでございます。
  12. 山下雄平

    山下雄平君 適切に対応している、つまりはそうした本人特定されるような情報は提供されていないというふうに思います。  では、この少年法改正案が、今回の改正案施行された場合、警察において少年事件被疑者氏名などの情報提供の基準というのは変わり得るんでしょうか、お聞かせください。
  13. 檜垣重臣

    政府参考人檜垣重臣君) 一般的に警察事件捜査公判請求以前に行われるものでありますので、本法案が成立した場合におきましても、警察における少年事件に係る報道発表の在り方につきましては現状と大きく変わることはないものと考えております。
  14. 山下雄平

    山下雄平君 警察においてはこの対応は変わらないということでしたけれども、では、検察においてはどうでしょうか。  現行法で、十八歳又は十九歳が事件を起こし、検察当局事件自体公表すると判断した場合に、十八歳、十九歳の被疑者名前などを公表することはあり得るのでしょうか。現行法上ではどのように対応されているのか、お聞かせください。
  15. 川原隆司

    政府参考人川原隆司君) お答えいたします。  検察当局におきましては、事件広報に当たっては、刑事訴訟法四十七条の趣旨を踏まえ、個別事案ごとに、関係者の名誉、プライバシーへの影響及び将来のものも含めた捜査公判への影響の有無、程度等を考慮し、公表するか否かや、その程度及び方法を慎重に判断しているものと承知しております。  被疑者被告人少年のときに犯した罪につきましては、推知報道禁止する少年法六十一条の趣旨をも踏まえ、事件自体公表するか否かを判断し、事件自体公表する場合にも、被疑者被告人氏名年齢職業住居容貌等により本人を推知することができる事項を含まないように留意しているものと承知しております。
  16. 山下雄平

    山下雄平君 当然ながら、現行法上では実名その他は公表しないということだというふうに思います。  では、今後、少年法改正案施行された後に十八歳、十九歳が事件を起こして、検察当局が逮捕し、その当該事件自体公表すると判断した場合に、逮捕時点では被疑者である十八歳、十九歳の名前などは公表しないというふうに考えてよろしいんでしょうか。
  17. 川原隆司

    政府参考人川原隆司君) お答えを申し上げます。  先ほどお答えいたしましたが、検察当局におきましては、被疑者被告人少年のときに犯した事件につきましては、推知報道禁止する少年法六十一条の趣旨をも踏まえ、本人を推知することができる事項を含まないように留意しているものと承知しております。  改正法施行後も、公判請求前には、推知報道禁止する少年法六十一条の趣旨をも踏まえ、現行法の下と同様に、被疑者被告人氏名年齢職業住居容貌等により本人を推知することができる事項を含まないように留意していくものと思います。  以上でございます。
  18. 山下雄平

    山下雄平君 それでは、改正案施行後は、起訴時点での対応はどのようになるんでしょうか、名前を含めて検察当局側から公表することもあり得るんでしょうか、お聞かせください。
  19. 川原隆司

    政府参考人川原隆司君) お答えを申し上げます。  御質問改正後の検察当局の運用ということでございますのでちょっと一概には申し上げられないところでございますが、一般論として申し上げれば、本改正により、十八歳以上の少年のときに犯した罪により公判請求された後は、少年法六十一条が適用されないこととなった場合には、検察当局において、個別事案ごとに、先ほど申し上げた諸事情のほか、本改正趣旨を踏まえつつ、少年健全育成更生が不当に妨げられることのないよう、公表するか否かや公表する事項及び方法を適切に判断するものと考えております。
  20. 山下雄平

    山下雄平君 起訴時点では、対応については考慮して、つまり公表する可能性もあるということだというふうに思います。  ここからは、推知報道禁止規定実効性であったり効力について伺えればというふうに思っております。  ネットのない時代では、事件について多くの人に情報を提供できるというのは報道機関、マスコミだけだったと思いますけれども、このネット全盛時代では、今は誰もがそうした情報をいろんな人に公表することができる世の中になってしまいました。  少年法推知報道禁止規定は、報道機関による報道と同様に、個人によるネットによる発信についても対象となるのでしょうか、この推知報道禁止効力について、報道個人では効力に違いがあるんでしょうか、お聞かせください。
  21. 川原隆司

    政府参考人川原隆司君) お答えいたします。  少年法第六十一条は、家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者について、当該事件本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物掲載してはならないと規定しておりまして、文言上はいわゆる紙媒体出版物への掲載禁止するものとなっております。  もっとも、少年法第六十一条の趣旨は、少年特定に関する情報が広く社会に伝わり少年社会生活影響を与えることを防ぎ、その更生に資することにあるところ、紙媒体出版物への掲載以外の方法によるものであっても、インターネット上で本人であることを推知させる情報を流布する行為はこのような趣旨に反するものであり、同条による禁止対象に含まれると考えております。  また、少年法第六十一条は主体を限定していないことから、報道機関であるか個人であるかにかかわらず同条の適用対象となり、法的効果にも違いはないと考えるところでございます。
  22. 山下雄平

    山下雄平君 条文上はいわゆる紙媒体について前提で書かれているけれども、インターネットでのそうした個人による配信などについても対象になると。そしてまた、その禁止規定効力について、個人であるか報道機関であるかは効力に違いはないということでした。  それではまず、報道機関について、報道機関少年実名を報じるなど、この六十一条に違反した場合、推知報道禁止には罰則規定はありませんけれども、報道機関に対して、そういった違法行為を犯した場合、捜査機関としてはどのように取り締まるんでしょうか、お聞かせください。
  23. 川原隆司

    政府参考人川原隆司君) お答えいたします。  委員指摘のとおり、少年法第六十一条につきましては、違反行為に対する罰則は設けられておりません。そのため、この違反理由として捜査刑事処分が行われることはございません。
  24. 山下雄平

    山下雄平君 報道機関への刑事処分はないということでしたけれども、では、個人被疑者少年実名ネットでさらした場合に刑事的な責任は問えるのでしょうか、お聞かせください。
  25. 川原隆司

    政府参考人川原隆司君) お答え申し上げます。  先ほども答弁申し上げましたとおり、少年法第六十一条には違反行為に対する罰則は設けられていないため、個人でありましても同条の違反理由として刑事責任を問うことはできないところでございます。
  26. 山下雄平

    山下雄平君 個人であれ報道機関であれ、六十一条違反推知報道禁止違反をしたとしても刑事的な責任は問えないということでした。  では、これ、報道機関個人の別に問わず、少年法六十一条、いわゆる推知報道禁止違反したことをもって民事賠償責任というのは問えるんでしょうか、お聞かせください。
  27. 川原隆司

    政府参考人川原隆司君) お答えいたします。  少年法第六十一条に違反する行為が直ちに民法上の不法行為を構成するかにつきましては様々な考え方があると承知しております。  例えば、同条違反報道少年に対する人権侵害行為として特段の事情がない限り不法行為に当たるという考え方がある一方で、同条は少年のとき罪を犯した者に実名報道されない権利を与えるものではなく、同条の違反当該報道不法行為に当たるか否かの判断に当たって一事情として考慮されるという考え方もあるところでございます。  いずれにいたしましても、少年法第六十一条に違反する行為民法上の不法行為を構成する場合には、行為者損害賠償責任を負うものと考えられるところでございます。
  28. 山下雄平

    山下雄平君 直ちに責任を問えるかどうかというのは、その事象についてと、またいろんな考え方があるということで、問える場合もあれば問えない場合もあるということでしたけれども。  では、実名報道による不法行為が成立するかどうかを判断する際に、全国紙などの新聞であったりテレビがニュースで報道する場合と個人インターネット掲示板に書き込むなどの場合では、行為性質の違いがそうした判断の中で考慮されるのかどうか、お聞かせください。
  29. 小出邦夫

    政府参考人小出邦夫君) お答えいたします。  少年被疑者実名公表につきましては、一般に、名誉毀損又はプライバシー侵害に基づく不法行為が成立するかどうかが問題になると考えられます。  名誉毀損につきましては、判例上、その行為が公共の利害に関する事実に係り専ら公益を図る目的でされた場合において、摘示された事実がその重要な部分において真実であることの証明があるとき又はその証明がなくても行為者真実と信ずるについて相当の理由があるときは不法行為は成立しないとされております。  最終的には個別の事案における裁判所判断に委ねられることにはなりますが、これらの要件該当性判断におきまして、報道ネット書き込みといった行為態様、またその目的等のそれぞれの行為性質の違いが考慮されることはあり得ると考えられます。  また、プライバシー侵害につきましては、判例上、その事実を公表されない法的利益とこれを公表する理由とを比較考量し、前者後者に優越する場合に不法行為が成立するとされております。  この点についても最終的には個別の事案における裁判所判断に委ねられますが、この比較考量において、公表された情報の内容や情報伝達範囲などのそれぞれの行為性質の違いが考慮されることはあり得ると考えられるところでございます。
  30. 山下雄平

    山下雄平君 報道ネット性質の違いが考慮されることはあり得ると。  つまり、個人の勝手な書き込みの方が不法行為が成立しやすいということだというふうに思いますけれども、だからといって、個人だから必ず民事責任が問われるわけではない、確実に問えるかどうかというのは分からないということで、個人によるネットでの被疑者情報公表について一律に責任が問えないのであれば、今後もネットによる情報の流布が起きる可能性があります。これはまた、法務省だけじゃなくていろんな、総務省含めいろんなところで手だてをしていかなければならないと思いますけれども、現状としてそういう可能性が今後もあるということは我々頭に置いておかなければならないと思いますけれども。  ネット被疑者特定されて、広く、そうしてその情報が流布されたとしても、報道機関に対する推知報道禁止規定というのは効力を持ち続けるというふうに考えてもよろしいんでしょうか、お聞かせください。
  31. 川原隆司

    政府参考人川原隆司君) お答え申し上げます。  少年法第六十一条は、その文言上、対象が非公知情報、すなわち公に知られていない情報であることを要件としていないことから、仮に委員指摘のように既に被疑者特定する情報インターネット上で広く流布しているような場合であっても推知報道禁止されると考えるところでございます。
  32. 山下雄平

    山下雄平君 推知報道禁止というのはいわゆる非公知情報に限定していない、つまり世の中で知れ渡っているか知れ渡っていないかにかかわらず推知報道禁止しているという規定だということですけれども。  では、ネット被疑者個人情報が流布されていることをもって報道機関実名報道に踏み込んだときに、既に公表された情報であるので民事プライバシー侵害に基づく不法行為責任が問われることはないというふうに考えていいのかどうか、お聞かせください。
  33. 小出邦夫

    政府参考人小出邦夫君) お答え申し上げます。  先ほど申し上げましたとおり、プライバシー侵害につきましては、判例上、その事実を公表されない法的利益とこれを公表する理由とを比較考量し、前者後者に優越する場合に不法行為が成立するとされております。  委員指摘の場合において、この被疑者実名等の事実を公表されない法的利益がその公表する利益に優越するかどうかの比較考量につきましては個別の事案に応じて判断されるものでございまして、一概に申し上げることは困難でございます。  もっとも、一般論として申し上げますと、報道機関による報道影響力インターネット上の掲示板への書き込みなどとは大きな差異があると考えられるため、報道された事実がインターネット上で既に摘示されているという一事をもって当然にプライバシー性が否定されるということにはならないと考えられますが、他方で、報道された被疑者実名などがインターネット上で既に摘示されているという事情は、さきに述べた法的利益公表理由との比較考量判断において考慮要素一つとされることはあり得るというふうに考えております。
  34. 山下雄平

    山下雄平君 なかなか難しい答弁だったと思いますけれども、既に周知の事実であったり誰もが調べればすぐ分かる情報であったとしても、報道機関がそれを報じた場合に責任が問われることもあるし問われない可能性もあるというような、なかなかこう断定的に言えない状況なんだというふうに思っております。  この事件報道実名であったり個人特定される情報をいろんなところに報道していいかどうかというのを法的に認めるかどうかというのは、政策判断としては大きく三つ考え得ると思います。  一つは、犯人社会復帰の障害にならないように成人も含めて一切の実名を認めない、こういう考え方も取り得ると思いますし、二つ目に、少年可塑性に富むことに着目して少年だけは匿名しか認めないという選択肢もあると思います。また、三つ目に、憲法が保障された表現の自由の一部である報道の自由を重視して全ては報道機関に委ねるという考え方もあろうかと思います。  日本政府法務省は、この二番目の、いわゆる少年可塑性に富むことに着目して少年だけは匿名にするというような政策判断を取っているんだというふうに理解しております。  それでは、そのことを前提にした場合、どういうふうな、このことについてはどう考えればいいのかという具体的な事例についてお伺いできればと思いますけれども。今日皆様には席上配付させていただいた私の地元佐賀県で相当前に起きた事件なんですけれども、これは一九九七年八月二十八日の未明に起きた事件で、私自身高校三年生で十八歳になった日の翌日というかその日が過ぎた数時間後に起きた事件で、私自身もすごく記憶に残っていたのでこの事件を取り上げさせていただければと思うんですけれども。  これは、佐賀県の江北町というところで一九九七年八月二十八日に起きたゲーム店の店主の殺人事件で、当時十五歳の高校一年生が犯人でしたけれども、逮捕されたのは八年五か月後の二〇〇六年でした。逮捕時点では二十四歳でしたけれども、匿名報道になっておりました。これは、警察当局においては、先ほど警察からも説明があったとおりだと思うんですけれども、実名警察公表しなかったんだと思います。  今回、少年法改正されても同じことが起こり得ると思います。可塑性が考慮されて少年の場合は匿名になるはずなのに、成人になっても、何年も逃げていた人が守られる、このことの整合性はどのように考えればいいんでしょうか。  今回の改正特定少年は起訴時に実名報道を解禁することになっているので、起訴時点年齢判断するという選択肢もあったのではないかと思います。若しくは、長く逃亡していた場合には推知報道禁止規定の時間的制限を設けるということも考えられ得るのではないかというふうに思うんですけれども、その点についてお聞かせいただければと思います。
  35. 川原隆司

    政府参考人川原隆司君) お答えいたします。  少年法第六十一条が処分のときではなく罪を犯したときに少年である場合に推知報道禁止しているのは、捜査、審判等の手続の進捗にかかわらず、できるだけ広く、成長過程にある者の更生社会復帰に悪影響が及ぶことを防止しようとするものと考えられるところでございます。  委員が御指摘のように、罪を犯したときの年齢ではなく処分のときの年齢を基準に推知報道禁止を規律することや、推知報道禁止効力に期間的な制限を設けることについては、少年法第六十一条が犯行時の年齢を基準として規律を設けている趣旨との関係をどのように考えるか、捜査、審判の手続が遅延したために一定の年齢に達したときであっても推知報道が解禁されることになるが、そのような取扱いが適当と言えるか、禁止効力に期間的な制限を設けるとすると、更生して社会復帰している場合であっても推知報道が解禁することになるが、合理的な期間を設定することができるかなどの課題があり、慎重な検討を要すると考えているところでございます。
  36. 山下雄平

    山下雄平君 私が提案したような案というのはいろいろな課題があるということでしたけれども、ただ、できるだけ広くその成長途上にある者の罪に対する保護を取るということであれば、例えば三十歳であれ四十歳であれ匿名になるということについての矛盾はなかなか、どう説明していいのか、どう整合性を取ればいいのかというのは理解しづらいんですけれども、元少年についてどう報道するかということで議論になった事件がつい最近起きました。この佐賀県の事件においてはいわゆる元少年について匿名だったわけですけれども、今回、茨城県で一家四人が殺傷された事件で殺人の容疑で逮捕された二十六歳の男性について、報道機関の中には未成年時代の殺人未遂事件など過去の犯歴を実名報道しているところがあります。  今回の事件は、過去の事件との関連性も非常にあって、報道する意義があるというふうに判断して報道されているというふうに理解しておりますけれども、成人が重大事件を起こしたときに未成年時代の過去の犯歴を報道することも少年法六十一条の違反という認識でよろしいのかどうか、お聞かせください。
  37. 川原隆司

    政府参考人川原隆司君) お答えいたします。  少年法第六十一条は、推知報道禁止効力について期間を限定しておらず、一般的に、少年のとき犯した罪についてはその者が成人に達した後も推知報道禁止されると解されているところでございます。
  38. 山下雄平

    山下雄平君 この事件についても推知報道禁止されるけれども、元少年実名報道機関判断で報じたということでありました。  憲法で保障された表現の自由の一部である報道の自由は保障されなければならないので、推知報道禁止という制限も未成年に限定した、非常に限定した形になっているんだと思います。  一方で、その禁止規定違反しても、刑事では責任は問われないですし、民事でも必ず不法行為と認定されるわけではないという曖昧なこの法規範、規制になっています。また、成長途上少年可塑性に着目して少年に限定して推知報道禁止しているはずなのに、法律上は、少年時代に罪を犯して、その後何年も成人になった後逃げていて、大人になった後もそうして逮捕されたときに推知報道禁止して元少年の大人を守ることに法上はなっています。加えて、被疑者情報社会に既に知れ渡っていたとしても、推知報道禁止された状態は変わらないということでした。  法の目的趣旨、それと法の規定にずれが生じている部分が私はあるんだろうというふうに思っております。これは、法の規定社会の規範意識、国民の意識のずれとも言えるのではないかというふうに私は考えています。このずれの部分は、これまでは、報道機関が自らの規範意識に基づいて報道し、仮に法律違反とみなせても報道の自主性に任せるということで私はバランスを取ってきたのが実態、ずれを埋めてきたんだというふうに私は認識しております。  ただ、今は、報道機関だけではなく、個人が自由にネットで配信できるような時代になりました。推知報道禁止規定には手を付けず、法と国民の意識のずれの部分は報じる側の自主性に任せるだけでバランスが取れているという状態が今後も続いていくのかどうかという点については、私は非常に疑問に感じております。  改正案の附則に盛り込まれた五年後の見直し条項には、施行後の社会情勢及び国民の意識の変化などを踏まえて検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずると規定しています。  ここまでの質疑を踏まえた上で、少年法規定が国民の意識を踏まえることの重要性について法務大臣としてどのように認識されているかどうか、お聞かせください。
  39. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 本改正によりまして、罪を犯した十八歳及び十九歳の者に係る事件の手続また処分等の在り方につきましては、今委員とやり取りをさせていただいたこの推知報道におきましても現行制度と相応に異なるものというふうになるわけでございます。  また、これらにつきましては、社会情勢また国民の意識、こうした動向を踏まえた検討が必要であるところでございまして、本法律案によりまして、改正後の少年法等やまた成年年齢の引下げに係る改正民法施行された場合、それに伴いまして十八歳及び十九歳の者を取り巻く社会情勢や国民の意識が更に変化をしていく可能性があるというところでございます。  そこで、本法律案の附則第八条におきましては、施行後五年が経過した段階で、十八歳及び十九歳の者に係る事件の手続、処分等に関する制度の在り方に関し検討を行うこととしているところでございます。その検討に当たりましては、お尋ねの推知報道の問題も含めまして、運用の実績や社会情勢の変化のほか、この国民意識の動向、これを十分に踏まえることが重要であると考えております。  法務省といたしましても、国会での御議論等も踏まえまして、多角的な観点から検討を行うことができるよう適切に対応してまいりたいというふうに考えております。
  40. 山下雄平

    山下雄平君 法務省においても、今後も不断の検討をしていただければと思います。  以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。
  41. 真山勇一

    ○真山勇一君 立憲民主・社民会派の真山勇一です。よろしくお願いします。  少年法の前にちょっと一つお伺いしたいことがあります。コロナ関連なんですけれども、本年度の司法試験についてお伺いしたいというふうに思います。  先日、四月二十七日も高良委員が取り上げたんですけれども、その後、やはり試験日が近づく、あしたかららしいんですが、近づくにつれてその反響がいろいろ出てきておりますので、その辺を中心に伺いたいというふうに思っております。  今年の司法試験というのは、予定どおりあした五月十二日から四日間ということで、間、日が空くらしいんですけど、四日間で実施するということなわけです。ただ、やはり受験生がとても心配しているのは、コロナ感染が広がっているということです。ちなみに、去年の場合は、五月にやる予定が八月に延期したという実績があります。  今年、見てみますと、昨年に比べたら明らかにいろいろ懸念が広がっていますね。感染が拡大しております。それから、大きく異なるのは、去年より状況が悪化しているということです。変異株ウイルスが爆発的に拡大している。そして、その変異ウイルスは特に若い世代に感染が広がっているということが言えると思います。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置も各地で現在、延長、拡大ということになっております。  去年はそういうことで延期して慎重な姿勢を取ったのに今年は予定どおり実施するよということなんですけれども、やはり、去年もそうですし、今年もそうですし、会場では当然コロナ対応、コロナ対策しっかり取っていると思うんですが、去年は延期して今年はそのまんま実施するということは、何かコロナ対応で変わったこと、改善されたこと、そうしたことがあるのか、その辺りを中心にお答えください。
  42. 竹内努

    政府参考人(竹内努君) お答えいたします。  委員指摘のとおり、令和三年の司法試験につきましては明日から実施するということにして、予定をしております。  令和三年司法試験の実施に当たりましては、新型コロナウイルス感染症の状況等も踏まえまして、実施主体である司法試験委員会において、受験者間の距離が十分確保できる配席とすること、それから試験室等の換気、消毒を徹底すること、受験者にマスクの着用を義務付けること、全ての試験場にサーモグラフィーを設置いたしまして受験者の体調確認を実施すること、あるいは、試験監督員等につきましてもマスク及びフェースシールドの着用を義務付け、検温等による体調管理や消毒を徹底するなどの感染防止対策を講じるものと承知をしております。  特に配席につきましては、昨年は三人掛け用の机に二人ずつ座ることにしておりましたのを、本年は三人掛け用の机に一人ずつ座ることとし、前後左右それぞれ少なくとも一メートル以上空けた配席としております上、マスクの着用につきましても、昨年は要請としておりましたが、これを義務付けることとしたなど、昨年よりも感染防止対策を強化しているものと承知をしております。  昨年の試験におきましては、先ほど申し上げたような会場を確保することが困難でございましたのでやむを得ず延期という措置に至りましたが、本年の試験につきましては、このような万全の措置を講じた上で実施をする予定としているものでございます。
  43. 真山勇一

    ○真山勇一君 去年はマスクが任意だったのがもう今年は義務になっているとか、それから特にデスク、その試験の会場の机ですね、この問題も改善しているという今お話だったんですが、実はこの机、去年やはりこの会場で司法試験を受けた方なんかから、非常に受験生同士が接近していたと、それからマスク着けない人もいたということでとっても不安があったということなんですね。  それで、今年、じゃ、どういうふうになったのか、その辺改善してくれているんですかということで問合せをしたんです。ところが、それに対して明確な回答がなかったと、対応をしていますという答えだけで、それ以上やはり教えてもらえなかったと。問合せした受験生おっしゃるには、やっぱり気になったのはその会場の中の密状態、マスクしていない、だから、そういう辺りをきちんと対策取っているんならやはり情報開示してちゃんと説明をしてほしい、そういうことを言っているんですけれども、その説明の仕方に何か問題があったというふうには思いませんか。
  44. 竹内努

    政府参考人(竹内努君) 問合せの時期等によりまして少し、その時点でお答えできることとできないことがあったのかもしれませんが、確かに受験生の御不安はなるべく解消した上で試験は実施すべきものというふうに考えます。  先ほども申し上げましたとおり、今年の試験につきましては、十分な前後左右の距離を確保して、マスクも義務付けた上で万全の対策を講じて実施するということでございますので、御理解を賜れればと存じます。
  45. 真山勇一

    ○真山勇一君 やはり事前にその辺の不安を取り除くということがとても大事なことだったんではないか、もうあしたに迫っているんでね、やはりそういうことは本当に必要なことではなかったのかというふうに思うんですけれども。  実は、大阪府、自治体の試験とはちょっと違うんですけど、大阪府は今回、大阪府の職員の採用試験、延期を決めました。五月十六日からやる予定のところを六月六日というふうに延期したんですね。まあ私の個人的な感じでは、今の状態でいうと六月六日になってもどうかなというそういう懸念はあるんですけれども、大阪府はこういうことで直前に延期を決めました。  まあ一自治体と、この司法試験というのは全国的にやるわけですからやっぱり規模が違うので、それは違いがあるとは思うんですけれども、それだけに、逆に司法試験の受験生というのは広い地域を移動することになる。しかも、会場で長時間、四日間、長時間、十時間以上になるんでしょうかね、試験って、一日、もうその会場にとどまるということになります。それから、昼食も結局お弁当か付近のレストラン、食堂へ食べに行かなくちゃいけないんですが、これもちょっと、なかなか会場の関係で外にうまく食べるところがない。それから、お弁当を持ってくると、やはりみんな集まってお弁当を食べるみたいなこともあるというようなことも言われております。  試験地見ますと、全国七都市ですね、これ、札幌市、仙台市、東京、名古屋市、大阪市、広島市、福岡市、どこも今コロナが爆発的に感染者増えているところ。ですから、やっぱり受験生としてはそういうところへ移動しなくちゃいけないです。北海道の場合は札幌市だけですよね、北海道中から集まるわけですよね。それから、東京の場合だったら関東近県から全部東京へ集まるという移動があります、受験生たちの。そういうことを受験生たちは非常に心配しているということなので、これを大臣にお伺いしたいんですけれども、やはりできることなら何か対策を取るべき状況だろうというふうに判断できるんじゃないかというふうに思うんですが、何か考えなかった、これから、まああしたからなんですが、考えませんか。その辺はいかがですか。
  46. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 今、司法試験の大変重要な年一回の開催ということでございまして、昨年は八月に延長して実施ということでございました。今年は、去年の教訓ということでしっかりとそれを踏まえた上で、さらに、委員から御指摘いただきましたとおり、感染の拡大、そして変異株の問題等につきましては昨年とはまた別の要素が更にリスクとして加わっていると、これが実態でございます。  そういう中におきまして、今、国挙げての対策を取っている状況でございますし、国民の皆さんの御理解ということでございますが、先ほど指摘いただいたように、やはり問合せに対してもしっかりと回答していく、そうした姿勢はリスクコミュニケーションの基本中の基本でありますので、その意味で今回は、まあ明日ですね、現場におきまして、対策ということにつきましては、会場におきましての対策のみならず、移動の面とか様々なフェーズ、場面がございますので、それにおきまして注意をそれぞれしていただくべく、また、マスクの着用につきましても今回義務化ということになりましたが、不織布を着けていない方につきましてはしっかりとそれを替えていただくという形で現場でしっかりとリスクを最小限にすると、こうした努力をぎりぎりまで検討しているところでございます。  今回、この間の知見が、それぞれの大型の様々な施設におきましての取組等、保健所からもそれぞれの地域におきましての会場におきましてコミュニケーションをしている状況でございますので、本当にリスクヘッジしっかりと対応した上で、きめ細かな対策につきましては今日もまだ詰めている状況もございます。そして、あしたのその現場におきましても、さらにいろんな状況を踏まえまして随時リスク管理を重ねてまいりたいというふうに思っております。  細かな実施直前までのシミュレーションということでございますので、私も徹底して、そのフェーズごとの部分のリスクを最小限にしていくためのことについては緊張感を持って、そして対応するようにということで強く指示をしているところでございます。
  47. 真山勇一

    ○真山勇一君 今の全国的なコロナの感染状況というのを見ていると、本当に受験生の心配、懸念というのはもう私は当然だというふうに思いますね。やっぱりその司法試験の会場で万が一のことがあっちゃいけないというふうに思います。  その一方で、やっぱり受験生は、一年間、まあ一年間じゃないですね、もっと長く準備している人もいますね、そういう機会なので、それを奪ってしまうということもまたやはり別な意味で問題があるというふうに、難しいことだと思うんです。  ですから、今大臣がおっしゃったように、やはりもう予定どおりやる、もうあしたからなので、今更どうやると言ったらもうこれは大混乱になっちゃいますから。それは私は、あとは現場で今おっしゃったようにきめの細かい、やはり受験生はぴりぴりしている、非常にナイーブになっているわけですね、やっぱり。だから、そういう受験生を扱うやはり会場の方の心遣いというのがとても大事になるんじゃないか、そういうことを切にお願いしたいというふうに思っております。よろしくお願いします。  それでは、少年法改正について伺いたいと思います。  私、今回、確かに今回の少年法改正って、ううん、何かもわっとしているなという、曖昧だなという、そういう感じを受けているんですね。だから、今のままじゃいけないのかな、でも、まあ変えるべきこともあるのかなという、その辺からスタートすると、やはり私がとても引っかかったのが特定少年という言葉なんです。今回の改正で出てきた言葉だと思います、特定少年。  何か私が懸念するのは、やはり法律の用語というのは一旦決まっちゃうと、その言葉は、いや、そうじゃないんだよというふうに言っても独り歩きを始めて、何だかんだ言って、ああ、特定少年だからとか、あれは特定少年だったからとかという、その言葉が独り歩きするんではないかなと、そんな懸念を感じているので、そういう観点からちょっとお伺いしたいというふうに思うんですね。  今回の少年法改正で生まれたこの言葉、特定少年法制審議会の議論の中では、この十八歳、十九歳については特別な呼び方というのは別になかった、触れていなかったというふうに伺っています。そうすると、少年法改正のその条文作りの中で特定少年というのが出てきたということです。  そうすると、この特定少年というものは一体どこで決まったんでしょうか。それから、十八歳、十九歳を特定少年と決めたその理由は何なんでしょうか。
  48. 川原隆司

    政府参考人川原隆司君) お答えいたします。  本法律案の基となりました法制審議会の答申におきましては、十八歳及び十九歳の者の位置付けやその呼称、呼び方につきましては、国民意識や社会通念等を踏まえたものとすることが求められることに鑑み、今後の立法プロセスにおける検討に委ねるのが相当と記載をされているところでございます。  そして、まず十八歳、十九歳の者の位置付けでございますが、これにつきましては、法務省におきまして答申に基づいて法律案を検討する中で、原則逆送事件の、原則逆送対象事件範囲を拡大することなど十七歳以下の者と異なる取扱いをすることとしつつも、全事件家庭裁判所に送致し、原則として保護処分を行うという少年法の基本的な枠組みを維持することから、これらの者を少年法適用対象とすることが適当であると考えたところでございます。  このように、まずこの十八歳及び十九歳の者を少年法適用対象とするということとした上で、その呼称、呼び方につきましては、少年法の法文上、十八歳以上の少年という表現が繰り返される事態を防ぐために、避けるために、法制技術的な観点から特定少年という略称を定めることとしたものでございます。
  49. 真山勇一

    ○真山勇一君 確かに、その十八歳以上の少年という言葉繰り返すのは、まあ面倒といってはおかしいですけれども、ちょっと煩わしいということなんですけれども、だから特定少年というふうに決めたというふうに、まあ非常に明快といえば明快な答弁だなというふうには思うんですけど。  ただ、これまで、局長、年長少年という言葉がありましたよ、年長少年。年少少年、年中少年、それから年長少年という、そういう呼び方もあったんじゃないですか。
  50. 川原隆司

    政府参考人川原隆司君) お答え申し上げます。  委員指摘のように、これまで年長少年あるいは年少少年という言葉はございましたが、これはいわゆる講学上の言葉でございまして、少年法の法文上、条文上に出てくる言葉ではございません。  その上で、今回、先ほども申し上げましたが、今回の改正によりまして、十八歳、十九歳の者を十七歳以下の者と異なった取扱いをすることから、十八歳以上の少年という言葉が少年法の条文上繰り返されるということから、これを踏まえまして、先ほど申し上げたように、法制技術的な観点から特定少年という略称を用いることとしたものでございます。
  51. 真山勇一

    ○真山勇一君 ちょっと私は、今の御説明だと、そうしたら無理に特定少年とそれこそ特定しなくても、年長少年という言葉で、今までなかったけれども新しく決めるんですから、特定少年じゃなくて、年長、年長さんですよね、幼稚園なんかありますよね、そういう呼び方がね、年少さん、年長さん、それで十分足りるわけですよ。十八歳以上の少年と言わなくたって、年長少年と言えば同じイメージがあるんじゃないかなと私は思うんで、その特定という区別、この特定という言葉でレッテル貼りになるんじゃないか、この言葉が独り歩きするんじゃないかと、そういう危険性を感じるわけなんです。  例えば、それこそ先ほどのお話にあったみたいに、少年時代にやった事件で、大人になってから、ああ、彼はあのとき特定少年のときにやったことだねとかね、そういう使われ方も出てくるんじゃないか。少年でもない成人でもない異なる扱いをするということなわけですけれども、これはやはり差別、言ってみれば差別に当たるんじゃないか、憲法十四条の法の下の平等という、そういうことにやはり反するんではないか、特定少年というその名称を法律的に作ったがゆえに社会的な差別がそういうことで生まれるんではないかという、そういう私は危険性を感じているんですが、それについてはいかがでしょうか。
  52. 川原隆司

    政府参考人川原隆司君) お答え申し上げます。  先ほど来答弁申し上げておりますように、特定少年という言葉につきましては法制技術的な観点からそういった略称を定めたものでございまして、なぜその法制技術的な観点から特定という用語を用いたかという点でございます。  これにつきましては、十八歳以上の少年は二十歳未満の者を指す少年のうち一部の者であることから、こういったその略称について、法律上、一定の範囲の事物等を指す場合にしばしば用いられる特定の語、すなわち他の法律でも特定の語がこういった場合に、一定の範囲の事物等を指す場合に用いられていることから、今回も二十歳未満の者を指す少年のうち一部の者を指すということから、特定少年という略称を先ほど来申し上げておりますような法制技術的観点から用いたものでございます。
  53. 真山勇一

    ○真山勇一君 法制技術的観点からというのは分かります。多分、非常に明確になってクリアになるから特定少年。私が申し上げたいのは、やっぱり特定という言葉の響き、それから特定という持つやっぱり意味合いとか、世間一般でのその使われ方ということですよね。やはり特定なんですよ、特定しちゃうんですよ、特定しちゃうんですよね。  だから、例えば、これまでの条文になかったけれども、局長、そうすると、特定少年と年長少年というのは、法律的な私議論したくありません、法律的な議論じゃなくて、年長少年というのと特定少年ってどういうふうに違うと思います。
  54. 川原隆司

    政府参考人川原隆司君) お答え申し上げます。  先ほども申し上げました年長少年という言葉は、講学上、すなわち法律の条文とは別の場面で出てくる言葉でございますので、若干この場面が違うところだと考えます。  したがいまして、その場面によって特定少年、すなわち少年法の条文上どういう取扱いをしているかということにつきましては、今回、十八歳以上の者を特定少年ということになりますので、条文上特定少年と出てくる場面については特定少年という言葉を用いられることになろうかと思いますが、元々年長少年をどういう場合に用いるかというのは法律とは別のところでございますので、私どもの立場で云々必ずしも言えるものではないと思いますけれども、その場面によっては、従来年長少年と用いていた場面、これは例えば年少少年であったり、その間のたしか中間少年ですか、そういった年齢区分の、何というか、何段階かを示すものとしていろんな場面で使っていた場合にはそういった使われ方もあり得るかと思いますがというところでございます。
  55. 真山勇一

    ○真山勇一君 まさに、だから私としては、そこを気にしているというか、懸念して伺っているんですよね。やっぱり特定というのは特定しているわけで、やはりその一つの区別というか、その部分だけを取り上げてしまっているという感じがして、もちろん法律で決める場合はそういう厳密な言葉の定義というのが必要だというふうに思うんですけれども、私は年長少年という言い方でも問題がないんじゃないかなというような、そんな気がしております。  将来、この法律ができた場合に特定少年という言葉が独り歩きしてしまうのを私は非常にちょっと懸念をしているということを申し上げておきたいというふうに思います。  次に、投票権は十八歳に認められました。民法は、いよいよ来年、二〇二二年の四月一日から成人年齢を十八歳ということにやる。これに合わせるべきだという意見があって、今回のその十八歳、十九歳の特定少年というのが生まれたというふうに言われておりますけれども。  これについては、先ほど山下委員の方からもあったように、参考人の招致のときに橋爪参考人から、やはりその成人年齢十八歳に合わせるべきだという意見をお持ちだったけれども、その一方で、やっぱりちょっと理解しにくい面もあるというようなことをおっしゃっていました。やっぱりこの辺は非常に難しい、責任主義という一方でやはり少年をどうやって守るかという、そのことだと思います。  法律というのは一つ一つ独立しているから合わせる必要がないという、そういう意見もあります。連動させる必然性はないということですね。  お配りした資料を見ていただきたいんですが、二枚あって一枚目、上の方はイギリスBBC放送が流したものの、これネットニュースで流れたものです。思春期というのが十歳から二十四歳までというオーストラリア・メルボルンの病院の研究からの記事です。いつから大人かという世間の認識が変化しているというふうにこの記事は言っております。  その一方で、二枚目の方の紙、これは新聞からの記事なんですけれども、こちらも、近年、医学の進歩で脳は二十五歳頃までは成熟していないことが分かってきましたという、科学的な一つのそういう研究からの発表です。未成熟な脳は、善悪を判断したり、怒りをコントロールしたり、恐怖を感じたりする能力に乏しい。現在は十八歳未満としている少年法適用年齢を、逆に、まだ二十四歳ぐらいまでは発達するということで、真ん中辺に書いてあるんですが、二十一歳未満に引き上げる、そういう動きもあり、アメリカ・バーモント州ではそういう引上げがあったということです。  こういう記事も出ているわけですけれども、飲酒とか喫煙も二十歳まで禁止されていますね。これもやっぱり子供の成長に悪い影響を与えるからということですね。ギャンブルも二十歳以下、二十歳以下は禁止ということですね。  そういうふうになっている中で、十八歳、十九歳は少年という扱いが合理的かどうかということなんですけれども、私はこの両方の意見を見て、やはりある程度まだ発達途上にある、可塑性もあるということで、少年というふうに捉えた方が合理的と思うんですけれども、これについてはいかがでしょうか。
  56. 川原隆司

    政府参考人川原隆司君) 委員の今の御指摘は、十八歳、十九歳の者について少年として捉えるべきということでございまして、まさに今回の改正案先ほども御答弁申し上げましたが、まず十八歳、十九歳の者についてはその法律的な位置付けを少年ということといたしまして、その上で十七歳以下の者と異なった取扱いを定めているところでございます。
  57. 真山勇一

    ○真山勇一君 少年という扱いは分かりました。  次の質問に行くんですけど、そうすると、特定少年、十八歳、十九歳の年齢の枠から虞犯を除いていますね、今回、虞犯を除外しました。じゃ、この十八歳、十九歳の中から虞犯を除外した理由は何でしょうか。
  58. 川原隆司

    政府参考人川原隆司君) お答えを申し上げます。  保護処分が施設への収容を含めた権利、自由の制約という不利益を伴うことからいたしますと、民法上の成年とされ監護権の対象から外れる十八歳及び十九歳の者に対して、罪を犯すおそれがあるとして保護の必要性のみを理由に後見的介入を行うことにつきましては、成年年齢引下げに係る民法改正との整合性責任主義の要請との関係で許容されるか、国家による過度の介入とならないかといった問題点があるところでございまして、法制度としての許容性と相当性の点で慎重であるべきと考えられるところでございます。そこで、本法律案では、十八歳以上の少年については虞犯による保護処分対象外としているところでございます。  もっとも、十八歳以上の少年健全育成のためには対象者の任意に基づく支援、措置が重要であると認識しており、法務省としても引き続き、関係機関と連携しつつ、法務少年支援センターや更生保護サポートセンターにおける各種取組など、少年の非行防止のための取組を強化するなどしてまいりたいと考えているところでございます。
  59. 真山勇一

    ○真山勇一君 それでは、局長、その保護という意味でしたら、やっぱり何だか、やっぱり結局少年の扱いなのか成年の扱いなのかがはっきり分からないんです。  私は、この十八歳、十九歳も成長の途上ということであれば、犯罪を未然に防ぐ、つまり、いわゆるセーフティーネットという言い方されていますけど、やっぱり犯罪に走るのを防ぐという意味でいうと虞犯ってとても大事な扱いじゃないかというふうに思うんですね。  今おっしゃったように、じゃ、民法で十八歳以上成人ですからそういう保護はおかしいというんだったら、例えば、じゃ、たばことかお酒とかギャンブルはどうなんですか。それも大人の責任で、責任ということの考え方はないですか。
  60. 川原隆司

    政府参考人川原隆司君) お答え申し上げます。  今御指摘のその飲酒、喫煙、ギャンブルそれぞれ、それぞれの法律目的に従ってその一定の区切りとなる年齢をどのようにするかと考えるところでございまして、その意味では、私ども、少年法の関係では、先ほど来申し上げているところでございますけれども、十八、十九の者は少年と位置付けた上で、公職選挙法の選挙年齢民法少年年齢引下げなどといった、こういったことによりまして選挙権を与えられ、あるいは民法上も成年となる一方で、成長途上にあり、可塑性を有する存在であると。十八歳、十九歳はそのような存在と考えたことから、少年とした上で十七歳以下と異なる取扱いをしたものでございまして、御指摘のたばこ、それからお酒、それからギャンブルはそれぞれの法目的に従って決めているところでございまして、少年法少年法として今申し上げた考え方でやっているところでございまして、この間、必ずしも取扱いが異なっていても不合理ではないと考えております。
  61. 真山勇一

    ○真山勇一君 そうです、私もそう思うんです。法律それぞれでそれぞれ決めても不合理ないというふうに思っているんですね。  だから、別に虞犯についても、繰り返しになりますけれども、別に成人の扱いをする必要ないんですよ。これはやっぱり法律法律で見て、それで、しかも十八、十九、二十四歳までまだ脳は発達するんじゃないかと言われているわけですよね。そうしたら、何もここを、いや、民法で十八になっていますから外しますというのは、やっぱり私、それは矛盾するんじゃないかというふうに思うんですね。  成人とは別な扱い受ける一方で、一方ではまた成人というふうになっています。矛盾生じているとしか私は思えないんですけど、これは法務大臣、お考え聞かせてください。
  62. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) まさに今刑事局長から答弁をしたとおりでございますが、民法上の成年とされ、また監護権の対象から外れるわけでございまして、その十八歳及び十九歳の者に対しまして、罪を犯すおそれがあると、こういうことで、保護の必要性のみ、これを理由に国が介入をするということにつきましてはこれは慎重であるべきと、こうしたことが法制審でも議論をされたところでございます。  そして、この法律案におきましては、虞犯による保護処分対象外とこの十八歳以上の少年についてはしたわけでございますが、まさに政策的判断ということでございます。じゃ、そうした者、対象者がですね、全てのそうした支援を受ける必要がないかといえば、やはり極めて大事なことは、この健全育成というためには、対象者の任意に基づきまして支援、措置、この重要性はあるというふうに認識しておりまして、法務省といたしましても引き続き、この関係機関等と連携をしながら、私どもの組織におきましては法務少年支援センターがございますし、また更生保護サポートセンターが地域の中で機能しているところでございますので、こうした各種の取組をしっかりと束ねながら、少年の非行防止のための取組を強化をするということにつきましてはしっかり対応してまいりたいというふうに考えております。
  63. 真山勇一

    ○真山勇一君 今大臣がおっしゃったようなことは今現状でやっているわけで、それが、ある一部の少年かもしれないけれども、非行に走ったり、もしかしたら犯罪を犯すんじゃないかという少年たちを防ぐという、そちらへ走ることを防ぐということで私は大きな効果を出してきたと思うんですよね。大臣もそれはお認めになっていると思います、大きな効果があったということを。  でも、この十八、十九って非常に多感な、いろんな価値観で、もういろんな考え方持っている。しかも、その一方で、脳がまだこれからも発達するという、そういう状況の中の子供たちを虞犯から外してしまうということは、私はやっぱり、何か犯罪を、かえってこれによって犯罪を起こす、する少年が増えるんじゃないかという、そういう危険、もういきなり犯罪の方へ行ってしまうと。  やっぱり少年法の一番大事なところは、もうおっしゃっているように健全育成だと思うんですね。だから、そのためにはやっぱり、虞犯を外すということは、局長もおっしゃったように、それぞれの法律のところでやれば問題ないんですから、何も一つに合わせることはない、民法が十八歳だから民法の十八に全部合わせるんだという必要はないと思うんで、この虞犯の扱いというのは是非これは何とか考えた方がいいんじゃないかというふうなことを申し上げておきます。  ちょっと時間がなくなりましたので、もう一つお伺いしたいと思います。  特定少年先ほども出ました推知報道についてなんですが、先ほど非常に明快な分類を聞きました。よく分かりました。  ただ、一つは、起訴後は推知報道が解禁されるということが分かりました。起訴された時点で実名報道が解禁されます。その後、その後ですね、ただ、その後やっぱりいろんなことあって、裁判の行方で家裁に戻されたり、あるいはいろいろ裁判やっているうちに無罪になっちゃったということもあり得るわけですね。  そうすると、先ほどのお話ですと起訴された時点で公表することになるということで、これ逆戻りしたらまた名前が伝えられなくなってしまう。つまり、解禁したのに、また逆戻りすると名前が言えなくなるというふうなことになるわけですけれども、これの、この整合性についてお聞かせください。
  64. 川原隆司

    政府参考人川原隆司君) お答えいたします。  推知報道禁止を定める少年法第六十一条は、少年更生に資することを趣旨とするものでございますが、憲法で保障された表現の自由や報道の自由を直接制約する例外規定であることなどからいたしますと、十八歳以上の少年について事件の内容や手続の段階を問わず一律に推知報道禁止するのは、責任ある主体としての立場等に照らし、適当ではないと考えられるところでございます。  そこで、本法律案では、少年更生報道の自由等との調整の観点から、十八歳以上の少年のときに犯した事件につきましては、推知報道一般的に禁止した上で、検察官に逆送され、公判請求された場合には公開の法廷で刑事責任を追及される立場となることを踏まえ、公判請求の時点から推知報道禁止を解除し、社会的な批判や論評の対象となり得るものとしたところでございます。  この解除の時期につきましては、委員指摘のように、家庭裁判所への移送や無罪判決の可能性もあることに着目して、全ての事件について刑事裁判で有罪判決が確定するまで解禁しないという考え方もあるところかとは存じますが、このような考え方につきましては、三審制の下、公判請求から有罪判決の確定までには相応の期間を要することからいたしますと、一般に適時の報道が困難となりかねないことなどから、報道の自由等との調整の観点からは適当ではないと考えたところでございます。  したがいまして、本法律案におきましては、逆送され、公判請求された時点をもって推知報道禁止を解除するという考え方に至ったものでございます。
  65. 真山勇一

    ○真山勇一君 これもやはり難しい判断というふうに私は思うんですけれども。  まあ、裁判始まったら一般の公開の法廷でやるからということも一つ理由はあるかもしれませんが、例えば法廷でやったとしたって、今いろいろ、やはり被告、原告の中に、希望で、例えば名前は知られたくないとか顔を見られたくないとかいうことで、法廷の中でいろいろ工夫がありますよね。ですから、そういう形で、公衆の、公の場になる中でも工夫というのはあるんじゃないか。やはり、少年更生とか健全育成とかそういう面から見たら、更生していくためにはそんなこともやはり考えた方が、考えることも必要なのではないかなというふうに思うんですが。  先ほどの局長の答弁の中でちょっと私は気になったことがあるんです。つまり、起訴後は原則推知報道解禁ですね、公表することになるけれども、その公表するかどうかのところで適切に判断という言葉をお使いになったんですけれども、つまり適切に判断するということは、これどういうこと、意味ですか。
  66. 川原隆司

    政府参考人川原隆司君) 済みません、御質問趣旨を確認させていただきたいんですが、私の先ほどの答弁と申しますのは、もしかしますと、検察当局捜査機関としての公表に当たってということでございますか。分かりました。  推知報道禁止というのは、基本的には、その少年特定する、少年が誰かということを推知する事項公表することを禁止ということですので、公表する主体に対して禁止が掛かっております。  先ほどお尋ねがあって私が申し上げましたのは、検察当局公表するというよりは、その公表する主体になるであろう報道機関に対して事件広報としてどのようなことを広報するかという問題でございます。ここは実はずれが生じることがございまして、検察当局捜査当局公表をしていないのに、当然、報道機関ですから独自の取材をされて、独自の取材の結果その被告人氏名を分かったので公表するかという問題がありますので、その今の真山委員からのお尋ねは、まさに推知報道禁止ということで、公表すべき主体がどう考えるか、がどうするかということを御答弁申し上げたものでございまして、一方、先ほど検察当局捜査機関としての公表というのは、その推知報道をするかしないかというその主体である報道機関に対して、捜査機関公表というよりはどのような広報をするかという観点で、そこはその改正法趣旨、あるいは少年健全育成とかそういったことを踏まえて適切に、広報に当たって適切に対応するものと考えていると、そのようにお答えを申し上げたところでございます。
  67. 真山勇一

    ○真山勇一君 じゃ、時間になりまして、また少年法については今後もまだ質疑の時間あるので譲りたいと思いますけれども、やっぱり、まだ始まったばっかりですけど、やっぱり何か大人なのか子供なのかという非常にこの辺の曖昧なところが論議いろいろ出てくる、私はこの辺が非常に曖昧なところが今回の改正、問題ではないかということを指摘して、私の質問、今日はここまでで終わりにします。  ありがとうございました。
  68. 伊藤孝江

    ○伊藤孝江君 公明党の伊藤孝江です。よろしくお願いいたします。  本会議でも質問をさせていただき、ありがとうございました。今回の改正法に関しまして、少年法適用年齢を引き下げなかったこと、また全件家裁送致という基本的な枠組みを維持したことについては高く評価するということも本会議でもお話をさせていただいたとおりでもあります。少年事件数、また凶悪犯罪が減少していることを踏まえても、現行少年法少年の改善教育やまた再犯防止に資するものであるというふうにも考えているところです。  私も弁護士として、少年事件少年の付添人をした経験もありますし、また少年事件の被害者の方の代理人をさせていただいた経験もあります。本当に少年事件の中でまた一つ実感をしていることは、やっぱり少年可塑性、本当にここは強く言われているところですけれども、強く感じているところでもあります。  今回、その法制審議会の部会の中でも、現行少年法が有効に機能していることを前提にしつつ、十八歳及び十九歳の者に十七歳以下とは異なる対応をするというふうな意見となっています。それに沿う形の法案となっているところですけれども、現行少年法が有効に機能しているという評価に対して、まず大臣の御所見をお願いいたします。
  69. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 少年法につきましては、この第一条、これに規定がございます、「少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の措置を講ずること」、これを目的としているところでございます。  このような少年法に基づく現行の制度は、十八歳及び十九歳の者も含めまして、少年の再非行の防止と立ち直りにおきまして一定の機能を果たしているものというふうに認識をしております。
  70. 伊藤孝江

    ○伊藤孝江君 この十八歳、十九歳の少年も今回の改正少年法の枠内に置かれることとなりました。このことは、この改正法案における様々な運用や個々の解釈、これから様々問題になるところが出てくるかと思いますけれども、そういう解釈の中で、特定少年に対する調査、処遇についても健全な育成を期すという少年法目的及び理念が及ぶということでよいかどうか、確認をお願いいたします。
  71. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) まさに今申し上げた同法の第一条、目的規定でございますが、この法律におきましては改正をしておりません。ゆえに、十八歳以上の特定少年につきましても引き続き少年法のこの目的が及ぶというふうに考えております。
  72. 伊藤孝江

    ○伊藤孝江君 ありがとうございます。  では、それに沿いまして、この改正法少年事件に対する実務に与える影響について、以下お伺いをさせていただきたいというふうに思います。  まず、今回、原則逆送対象事件範囲が拡大をされることとなりました。現行法原則逆送対象事件は、故意の犯罪によって死亡を招くという極めて重大な結果が生じているということから逆送対象を広げたものというふうに承知をしているところであります。  今回範囲を拡大する原則逆送対象事件、この拡大の趣旨についてはどのように捉えたらいいんでしょうか。これまでの現行法趣旨と同じかどうかということについても教えていただけますでしょうか。
  73. 川原隆司

    政府参考人川原隆司君) お答えいたします。  現行のいわゆる原則逆送制度は、故意に人を死亡させるという重大な罪を犯した場合には少年であっても刑事処分対象となるという原則を明示することにより、自覚と自制を求め、少年の規範意識を育てて健全な成長を図るとの趣旨で設けられたものでございます。  一方、本法律案において原則逆送対象事件範囲を拡大する趣旨について申し上げますと、十八歳及び十九歳の者が公職選挙法及び民法改正等により重要な権利、自由を認められ、責任ある主体として積極的な社会参加が期待される立場となるに至ったことを踏まえると、これらの者が重大な犯罪に及んだ場合には十八歳未満の者よりも広く刑事責任を負うべきものであるとすることが、その立場に照らして適当であり、また、刑事司法に対する被害者を含む国民の理解、信頼の確保という観点からも必要と考えられるところでございます。  そこで、本法律案におきましては、十八歳以上の少年について、一定の重大犯罪に及んだ場合に刑事処分が適切になされることを制度的に担保するため、原則逆送対象事件範囲を拡大することとしたものでございます。  このように、本改正は、原則逆送制度が設けられた趣旨前提とした上で、十八歳以上の少年についてその立場に応じて原則逆送対象となる事件範囲を拡大するものでありまして、これによりまして原則逆送制度の趣旨を変更しようとするものではございません。
  74. 伊藤孝江

    ○伊藤孝江君 今回拡大する事件についても、これまでと同じように、いずれも逆送の例外として家庭裁判所の調査官による調査を受けて家裁で対応するという場面も想定をされています。  原則逆送の例外とするかどうかの判断において、現行法上の対象事件と今後の対象事件について考慮要素は変わらないということでよろしいんでしょうか。
  75. 川原隆司

    政府参考人川原隆司君) お答えいたします。  現行法におきましては、少年法第二十条第二項ただし書により、原則逆送対象事件についても、家庭裁判所が個別具体的な事情を考慮して刑事処分以外の措置を相当と認めるときは原則逆送の例外とされているところでございます。これは、重大な事件についても、個別の事案に応じた最も適切な処分をするため、家庭裁判所判断により逆送せずに保護処分を選択できるようにしたものでございます。  この趣旨は十八歳以上の少年に係る原則逆送対象事件についても同様に妥当すると考えられることから、本法律案では、少年法第六十二条第二項ただし書におきまして、現行法と同様の例外規定、具体的には、犯行の動機、態様及び結果、犯行後の情況、特定少年の性格、年齢、行状及び環境その他の事情を考慮し、刑事処分以外の措置を相当と認めるときは、この限りではないとの規定を設けることとしております。  このように、十八歳以上の少年原則逆送の例外規定について、その考慮要素判断基準を現行と変えようとするものではなく、条文に従って考慮、判断されることになるものと考えております。
  76. 伊藤孝江

    ○伊藤孝江君 今、考慮要素は変わらないということで条文を提示していただきました。法六十二条二項のただし書ですね。ただし、調査の結果、犯行の動機、態様及び結果、犯行後の情況、特定少年の性格、年齢、行状及び環境その他を考慮し、刑事処分以外の措置を相当と認めるかどうかということになるんだと思うんですけれども、この例外として個別具体的な事情というふうな御説明ありましたけれども、一般的には、例えば犯情であったり要保護性であったりというような言葉でくくられることもあります。  この条文上書かれている要素のどれがいわゆる犯情に当たって、要保護性に当たるのか、これを分けることができるのかできないのかも含め御教示いただければと思います。また、この条文から、逆送すべきかどうかというところについて、犯情だけでなく特定少年の要保護性も考慮しなければならないというふうに読めるかどうかの点についても確認をさせてください。
  77. 川原隆司

    政府参考人川原隆司君) お答えいたします。  本法律案で用いております犯情とは、当該犯罪の性質、犯行の態様、犯行による被害等を意味するものでございます。一方、要保護性とは、一般に、少年による再犯の危険性と保護処分によるその防止の可能性を併せたものと解されております。  その上で、少年法第六十二条二項ただし書に列挙しております各事情については、個々の事案に応じて、犯情に関わるものとして考慮される場合もあれば、要保護性に関わるものとして考慮される場合もあると考えられるところでありまして、どの事情がいずれにおいて考慮されるのかということを一概に申し上げることは困難であるということを御理解賜りたいと存じます。  いずれにいたしましても、原則逆送の例外を定める現行の少年法第二十条第二項ただし書の運用に関しては、一般論として、家庭裁判所は、原則逆送事件が基本的に重大な事件であり、少年が根深い問題を抱えていて丁寧な調査が必要となることが多いとの認識の下、要保護性に関する調査結果をも十分に考慮し、逆送決定をするか否かを慎重に判断しているものと承知しております。  少年法第六十二条第二項ただし書はこれと同様の例外規定でございまして、新たに原則逆送の対象となる事件におきましても、現行の原則逆送対象事件と同様に、家庭裁判所においては、要保護性に関するものをも含め、調査で判明した様々な事情を考慮し、逆送決定をするか否かについて慎重な判断が行われるものと考えております。
  78. 伊藤孝江

    ○伊藤孝江君 これまでの議論の中で、衆議院も含めですけれども、今回拡大される原則逆送対象事件の中でとりわけ強盗罪がよく挙げられています。この原則逆送対象事件のうち特に強盗罪を念頭に置いて、様々な犯情があることを踏まえて犯情の軽重を十分に考慮する運用が行われるべきというやり取りがなされているわけですね。この強盗罪というのは、事後強盗罪なども含めた犯行形態であったり、また被害額などの結果についてもかなり大きな幅がある犯罪ということでは典型的なものかというふうに考えています。  この議論に関して確認をさせていただきたい点が二つあります。  まず一つですけれども、強盗罪において逆送するか否かの判断において、様々な犯情があることを踏まえ犯罪の軽重を十分に考慮する運用とされているところですけれども、ここは犯情の軽重だけではなく要保護性も踏まえて検討するということで進めるということですよねということの確認をしたいというのが一点。  もう一つが、様々な犯情がある犯罪というのは、今回拡大される事件についても、決して強盗罪に限られるものではなくて、現住建造物等放火罪、また非現住建造物等放火罪も含めてほかにもあるというふうに考えています。これらの強盗罪以外の犯罪についても犯情の軽重と要保護性を十分に考慮して運用すべきというふうに考えますけれども、この二点について御説明いただけますでしょうか。
  79. 川原隆司

    政府参考人川原隆司君) お答えいたします。  十八歳以上の少年原則逆送の例外を定める少年法第六十二条第二項ただし書は、現行の原則逆送の例外を定める少年法第二十条第二項のただし書と同様の趣旨規定でございまして、御指摘の強盗罪あるいはその強盗罪以外の罪も含めまして、新たに原則逆送の対象となる事件におきましても、現行の原則逆送対象事件と同様に、家庭裁判所においては、犯罪の軽重だけではなく要保護性に、犯情の軽重だけではなく要保護性に関するものを含めて調査で判明した様々な事情を考慮し、逆送決定をするか否かについて慎重な判断が行われるものと考えております。
  80. 伊藤孝江

    ○伊藤孝江君 この原則逆送になるのか、あるいは例外として家裁で審理をすることになるのかというのが家庭裁判所調査官による調査によって決められていくことになります。この調査官調査についてお伺いをさせていただきたいと思っています。  少年事件において、まずこの家裁調査官の調査が担う役割というのがどのようなものなのかと、また、最終的には裁判官が少年の処遇を決定するということになるかと思いますけれども、この調査官の調査が裁判官の判断に与える影響について御説明ください。
  81. 手嶋あさみ

    最高裁判所長官代理者手嶋あさみ君) お答え申し上げます。  家庭裁判所は、少年法八条一項によりまして、審判に付すべき少年があると思料するときは事件について調査しなければならないとされておりますところ、この調査につきましては、同条二項により、家庭裁判所調査官に命じてこれを行わせることができるとされているところでございます。  行動科学の専門的な知見及び技法を有する家庭裁判所調査官におきまして、いわゆる社会調査、すなわち、客観的な非行事実の内容等に加えまして、少年の心情、被害者を含む関係者の受け止めや少年の性格、生活状況、家庭状況、生活史等の少年の資質や環境に関する種々の事情につきまして十分な調査を行い、その少年にとって最適な処遇は何かを明らかにするべく、非行に至った要因を分析し、様々な教育的な働きかけも行っているところでございます。  家庭裁判所は、このような専門性を有する家庭裁判所調査官の調査や働きかけの結果を十分に踏まえた上で、少年の再非行防止の観点から適切な処遇選択を行っているものと認識しております。
  82. 伊藤孝江

    ○伊藤孝江君 この裁判官の判断というのは調査官の調査のままされるわけですか。調査官の調査とか調査官の判断、評価に対して、それとは違う判断というのを裁判所がすることというのはあるんでしょうか。
  83. 手嶋あさみ

    最高裁判所長官代理者手嶋あさみ君) お答え申し上げます。  もちろん、最終的な処遇の選択、処分の決定を行いますのは裁判官ということになりますけれども、その社会調査、家庭裁判所調査官の専門性を生かした調査を踏まえた再非行防止に最も有効である処分の選択を裁判官において行うということになります。
  84. 伊藤孝江

    ○伊藤孝江君 この調査官の調査は、裁判官の指示の下に裁判官が求めるものを行うという考え方でよろしいんでしょうか。
  85. 手嶋あさみ

    最高裁判所長官代理者手嶋あさみ君) お答え申し上げます。  裁判官の調査命令に基づいて行われるものではございます。
  86. 伊藤孝江

    ○伊藤孝江君 行われるものではございますというのは、済みません、具体的に。
  87. 手嶋あさみ

    最高裁判所長官代理者手嶋あさみ君) お答え申し上げます。  裁判官の調査命令に基づいて行うものでございます。
  88. 伊藤孝江

    ○伊藤孝江君 結局、この調査官の調査についても、具体的に動くのは調査官ではあるけれども、裁判官の判断の下で行われているというふうに捉えていいのかというふうに思います。  この原則逆送対象事件において今回拡大される事案については、十八歳、十九歳の少年民法上は成年であるということを踏まえてもなお家裁で対応すべき事案なのかどうかという観点で判断することが求められます。特定少年の処分を適切に審理するためには、先ほど答弁いただいたような、少年が非行に至った原因を科学主義の原則に従って分析するに足りる十分な材料が提供されなければならず、原則逆送対象事件であっても非行の外形的事実だけでは足りないというふうに考えます。  犯情とともに要保護性についても十分な調査、鑑別が必要であると考えますけれども、この点いかがでしょうか。
  89. 手嶋あさみ

    最高裁判所長官代理者手嶋あさみ君) お答え申し上げます。  一般に、家庭裁判所調査官におきまして、非行の動機、態様、結果等だけでなく、少年の性格、年齢、行状及び環境なども含めまして、少年の問題性について十分に調査を尽くし、それらの結果も十分に踏まえて処分を決定するという点におきまして、少年法第二十条二項に規定する原則逆送事件とその他の事件とは特に異ならないものというふうに承知をしております。  本法案成立後の原則逆送事件につきましても、具体的な審判の進め方や処分決定は個別の事件に応じ裁判体が判断するということにはなりますけれども、本法律案では、六十二条第二項ただし書におきまして現行法二十条二項ただし書と同様の例外規定を置くこととされておりまして、基本的に現行法の、現行の第二十条第二項の原則逆送事件と同様に、家庭裁判所調査官による丁寧な調査を尽くし、それらの結果も十分に踏まえた上で個別の事案に応じた処遇選択をすることになるものと承知しております。
  90. 伊藤孝江

    ○伊藤孝江君 今、最高裁の方からは、原則逆送対象事件とそれ以外の調査であっても同じように十分な調査がなされるべきであるというふうに最高裁としては考えているという答弁だったかと思います。  この点、法務大臣にも確認をさせていただきます。  原則逆送対象事件における調査官調査、それとそれ以外の事件における調査官調査の場合に同じ質、量の調査がしっかりとなされるべきであるということで、また、原則逆送対象事件であっても、逆送しなくてよい特段の事情があるかどうかと、そこだけ調査すれば足りるんだということではないというふうに思いますけれども、大臣、いかがお考えでしょうか。
  91. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 現行の少年法でございますが、家庭裁判所が逆送するか否かを判断するための考慮要素につきましては、原則逆送対象事件とそれ以外の事件とで変わるところはないわけでございまして、適切な処分選択のために個別事案に応じて十分な調査が行われるべきこと、これはいずれの事件でも同じでございます。  本法律案におきましては、特定少年の逆送について定める少年法第六十二条でございますが、現行の逆送規定であります同法の第二十条第一項及び第二項と同様の規定ぶりを採用しているところでございます。そのため、原則逆送対象事件であるかそれ以外の事件であるかにかかわらず、個別事案に応じて十分な調査が行われるべきことにつきましては特定少年事件においても同様であるということでございます。
  92. 伊藤孝江

    ○伊藤孝江君 今大臣からも最高裁の答弁と同じ趣旨で御答弁いただいたかと思いますけれども、実際には、原則逆送対象事件とそれ以外の事件で調査官調査がしっかりと同じように充実して行われているかというと、そういうわけではないというふうに評価している実務の方、大変多いと思います。  二〇〇九年、最高裁において、簡にして要を得た調査報告書を作成することの必要性、また、原則逆送対象事件においては逆送しない特段の事情があるか否かを中心に調査すべきということが強調されて、詳しい生育歴や生育歴上のエピソードなどを含めてしっかりとその資質、環境等についての調査が詳しくなされないというふうな傾向になったというふうに現実としては捉えられている実務の方が大変たくさんいらっしゃいます。  この現状原則逆送対象事件における調査官調査の在り方、調査票の作成に対し、最高裁からはいかなる考え方また方向性を示しているのかという点について改めてお聞きいたします。
  93. 手嶋あさみ

    最高裁判所長官代理者手嶋あさみ君) お答え申し上げます。  原則逆送対象事件における調査官調査の在り方や調査票の作成の在り方について、最高裁として特定考え方や方向性を示しているということはございません。  原則逆送対象事件においても社会調査を尽くして非行のメカニズムをできる限り解明することが求められているということは変わりはなく、家庭裁判所調査官は、他の事件の場合と同様に、非行の動機、態様、結果などだけではなく、少年の性格、年齢、行状及び環境等も含め、少年の問題性について十分に調査を尽くし、その結果を的確に調査票に記載するよう努めているものと承知しております。
  94. 伊藤孝江

    ○伊藤孝江君 では、調査報告書で、簡にして要を得た簡潔な調査報告書でいいですよという考え方は最高裁としては一切示していないということを確認させていただいてよろしいでしょうか。
  95. 手嶋あさみ

    最高裁判所長官代理者手嶋あさみ君) お答え申し上げます。  特定の方向性、考え方を示しているものではないということは先ほど申し上げたとおりでございます。  他方、委員指摘のとおり、家庭裁判所調査官を対象とする研究会におきまして、原則逆送事件少年調査票を素材として、簡にして要を得た記載になっているかといった観点から調査票の記載の在り方に関する議論が行われたということは承知をしております。  もっとも、原則逆送事件においても、先ほど申し上げたとおり、社会調査を尽くしていくべきことは変わりがないというものと認識しておりまして、この簡にして要というところでございますけれども、一般に、少年調査票は、家庭裁判所事案を解明し適切な処遇選択を行うのに資するとともに、保護処分決定がされた場合の執行機関による処遇に資するために作成されるものであるとされております。  そのような目的に照らしますと、調査過程で得られたあらゆる情報を網羅的に少年調査票に記載することは相当ではないところでありまして、少年の要保護性の理解や適正な処遇指針の策定のために必要な事項は何なのかということを十分に検討、吟味することが重要であると。そのような意味で、一般に、必要な情報を簡潔に記載し、簡にして要を得た表現に努めることが望ましいというふうにされているところでございまして、この点は、原則逆送対象事件に限らず、他の事件の場合でも少年調査票の記載の在り方一般として家庭裁判所調査官による研究等でも議論されているところでございます。
  96. 伊藤孝江

    ○伊藤孝江君 今長く御説明いただきましたけれども、通常考えて、簡にして要を得た報告書を出していますかと、たくさんいろいろ調べてもそれが全部必要になるわけじゃありませんということを言っているふうにしか聞こえないですし、普通そう捉えると思います。  様々な資質や環境等も含めた少年の背景事情、もう本当に複雑なものがたくさんあると思います。その事情をしっかりと裁判官が把握をするのかどうか、できるのかどうかということがあってこそ初めて適切な処遇を決めることができるんだと思うんですけれども、なぜそこで得られた情報をはしょる必要があるのかというのが全く分からないんですが、この点、いかがお考えでしょうか。
  97. 手嶋あさみ

    最高裁判所長官代理者手嶋あさみ君) 先ほど説明させていただきましたところは、はしょるということではなく、目的を意識して必要なことを漏れなくきちっと記載すべきであるというところでありまして、そのことは、原則逆送対象事件のみならず、ほかの事件につきましても当てはまるところであるというふうに認識をしております。
  98. 伊藤孝江

    ○伊藤孝江君 じゃ、ほかの事件でも、調査したものを全て出すわけでもなければ、簡潔にまとめた短い報告書を出すという対応をしているということですか。
  99. 手嶋あさみ

    最高裁判所長官代理者手嶋あさみ君) お答え申し上げます。  短い長いというところについては個別の事案に応じてということになってしまうので一概にお答えするのは難しいところでございますが、簡略であればよいという指導は一切行っていないということでございます。
  100. 伊藤孝江

    ○伊藤孝江君 個別の事情によるというのはもちろんそういう面もあるかと思いますけれども、ただ、その最高裁の考えですね、大本としては、原則逆送対象事件もそれ以外の事件も充実した調査、鑑別が行われなければならない、そこは全く変わらないと。法が、これまで少年法改正をされてきたといってもそこは変わらないんだというところで、また法務大臣としても、法の趣旨はそのようなものだというふうな御認識を先ほど言っていただいたかと思います。  ただ、実際にはそう受け止めることができない調査報告書が増えているというのは、実務に携わっている先生方、また元裁判官であったような方から指摘をされているところでもあります。  この少年法の理念が変わらないというふうにされているにもかかわらず、この調査や調査票の作成に関する運用に現実に違いが生じてきていると、この現状原則逆送対象事件における調査官調査に対して十分な調査がなされていないという批判、たくさんされていることはもちろん最高裁は御存じだと思いますが、その点についての受け止め、いかがでしょうか。
  101. 手嶋あさみ

    最高裁判所長官代理者手嶋あさみ君) お答え申し上げます。  委員指摘のとおりのいろいろな御意見、御指摘をいただいているということは認識をしております。もっとも、実際の原則逆送対象事件におきましては、十分調査は、調査は十分に尽くした上でそれをどう調査票に表すかというところはあるかと思っております。  他方、その調査が十分になされているかというところが非常に大事なところではないかというふうに考えるわけですけれども、実際の原則逆送対象事件におきましても、調査の結果、刑事処分以外の措置を相当と認めて、現行法少年法二十条第二項ただし書を適用して実際に保護処分を選択している例というのが相当数あるものと承知しているところでございまして、このようなことからしても、家庭裁判所調査官は、原則逆送対象事件においても、他の事件の場合と同様に、少年の問題性について十分に調査を尽くした上でその結果を的確に調査票に記載するよう努めているものと承知しております。  一方、この改正法成立した暁には、この法の趣旨等、ここでの御議論、いろいろな御指摘も踏まえて、引き続き適正な運用がされるよう最高裁としてもしっかり支援をしてまいりたいというふうに考えております。
  102. 伊藤孝江

    ○伊藤孝江君 ありがとうございます。  今最後に、今後改正法施行されるときには最高裁としてもしっかり伝えていくというお話がありましたけれども、この原則逆送対象事件においても十分な調査官調査と鑑別を要すること、調査票の内容も充実させるべきこと、当然だと思っています。これは法が改正されても全く変わらないというふうに思っているところです。  これをいかに裁判官や調査官に周知徹底するのか、きちんと運用してもらうのかというのが、本当にこの原則逆送対象事件をきちんと適正対応できるかどうかに懸かっていると。調査官の判断でたくさん調査はするんです、でも必要がないと思いましたから記載からは省いていますということでは、裁判官の判断が適切になされるかどうかというのは分からないと思います。そこは、しっかりと調査をしたんであれば裁判官に伝える、報告をするというのも当然必要になってくることかと思っています。  この裁判官、調査官に対してこの法の趣旨をしっかりと周知徹底すること、具体的に最高裁として何をされるのか御説明いただけますでしょうか。
  103. 手嶋あさみ

    最高裁判所長官代理者手嶋あさみ君) お答え申し上げます。  改正法審議過程に関しましても、法制審等での御議論も含めて各家庭裁判所にはその内容を周知をしているところでございますけれども、改正法が成立しました折には、この委員指摘の法の趣旨目的、その辺りを含めまして、しっかり説明、十分な周知を図りたいというふうに思っております。
  104. 伊藤孝江

    ○伊藤孝江君 現状原則逆送対象事件、この運用が調査官調査含めて硬直化しているという中で、現状原則逆送対象事件に合わせてくださいねということでは意味はないと思っています。しっかりと調査を充実させるように指導していただきたいというふうに思います。  では、次のテーマに移ります。  保護処分が犯情の軽重を超えない範囲でなければならないとする点についてお伺いをいたします。  まず、特定少年の処遇の選択に関連する点についてお伺いをいたします。  今回、改正法案の六十四条で、犯情の軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲内において、六か月の保護観察、二年の保護観察、少年院送致を決定するというふうにされております。  犯情の軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲内においてとされているのが、これまでの御説明からすると、行為責任の観点から処分の上限を定めるけれども、その範囲内で要保護性に応じた処分の決定を行うという考え方かと思うんですが、この考え方でいいかどうかについてまず確認させていただけますでしょうか。
  105. 川原隆司

    政府参考人川原隆司君) お答えいたします。  本法律案におきましては、十八歳以上の少年に対する保護処分は、犯情の軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲内、すなわち犯した罪の責任に照らして許容される限度を超えない範囲内でしなければならないこととしております。  この限度を超えないとは限度を上回らないという趣旨でございまして、裁判所は、犯した罪の責任に照らして許容される限度を上回らない範囲内で対象者の要保護性に応じて処分を選択することとなるところでございます。  すなわち、十八歳以上の少年に対する保護処分は、刑罰とは異なり、応報としてではなく、専ら少年健全育成を図るために課すものであることから、犯した罪の責任に見合うほど重く処分をすべき要請はなく、要保護性が小さければそれに応じた軽い処分を選択することになるところでございます。
  106. 伊藤孝江

    ○伊藤孝江君 この行為責任の観点という言葉ですけれども、この行為責任の観点というのは、仮に同じ犯罪を成人がした場合に言い渡されるであろう刑罰、想定できるものあるかと思いますけれども、これの相場という考え方なんでしょうか。
  107. 川原隆司

    政府参考人川原隆司君) お答えいたします。  本法律案による改正後の少年法第六十四条第一項における犯情の軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲内とは、あくまで十八歳以上の少年に対する保護処分の限度を定めるものでございまして、保護処分による権利、自由の制約が犯した罪の責任に照らして許容される限度を超えてはならないという趣旨でございます。  十八歳以上の少年に対する保護処分は、専ら少年健全育成を図るために課すものであり、応報として科される刑罰とは法的性格が全く異なるものでございますので、両者を単純に対照して許容される限度をお示しすることは困難であることを御理解賜りたいと存じます。
  108. 伊藤孝江

    ○伊藤孝江君 例えば、一点確認をさせていただきたいんですが、成人が犯した場合に執行猶予付判決になるだろうと想定される犯罪あると、多いと思います。その犯罪を特定少年が犯して逆送の対象にならなかった場合、保護処分にするという場面、当然あるかと思うんですが、この場合、特定少年に対する処遇として、改正法では、少年院には送致できないというふうに理屈上なるものなのか、保護観察も少年院送致も選択肢としてあり得るというふうに考えるのか、この点、教えていただけますでしょうか。
  109. 川原隆司

    政府参考人川原隆司君) お答えいたします。  十八歳以上の少年の保護事件につきましては、具体的にいかなる保護処分を選択することが許容されるかは家庭裁判所が個別の事案に応じて判断すべき事柄であり、一概にお答えすることは困難であることを御理解賜りたいと存じます。  そして、具体的な判断基準についても裁判所による運用の集積の中で徐々に形成されていくものと考えられ、詳細をお答えすることはこれもまた困難であるということを御理解賜りたいと存じます。  その上で、刑事裁判で言い渡される刑罰との比較であくまで大まかな考え方を申し上げますと、刑罰が保護処分よりも一般的、類型的に不利益な処分であるとされていることからしますと、一般論として、御指摘のような刑事裁判であれば実刑ではなく執行猶予付きとなることが想定されるような事件であっても、そのことから直ちに少年院送致処分を選択できないことには必ずしもならないものと考えております。
  110. 伊藤孝江

    ○伊藤孝江君 結局、この法六十四条一項との関係では、特定少年に対する処分の選択に関しての実務上の運用については現状と変わらないという認識でいいんでしょうか。
  111. 川原隆司

    政府参考人川原隆司君) お答えいたします。  先ほど来御答弁申し上げましたように、本法律案による改正後の少年法第六十四条第一項におきましては、十八歳以上の少年に対する保護処分は、犯情の軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲内、すなわち犯した罪の責任に照らして許容される限度を超えない範囲内でしなければならないこととしているところでございます。  その上で、現在の、現行の少年事件における実務の運用上も一般的には犯罪事実の軽重と処分との間の均衡を考慮して処分選択が行われているとされており、また、一般的には、犯罪事実の軽重と要保護性には対応、相関しているとの指摘がなされているものと承知しております。  そのため、十八歳以上の少年に対する保護処分につきまして犯情の軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲内で行うことといたしましても、実務上、要保護性に応じた適切な処分選択を行うことに直ちに支障が生ずるものではなく、現在の少年事件における実務の運用が大きく変わるものではないと考えております。
  112. 伊藤孝江

    ○伊藤孝江君 この実務の運用が大きく変わるものではないという点、大臣、確認をさせていただければと思いますが、よろしいですね。
  113. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) ただいま刑事局長が答弁したとおり、実務上、要保護性に応じた適切な処分選択を行うことに直ちに支障が生じるものではなく、現在の少年事件における実務の運用が大きく変わるものではないというふうに考えております。
  114. 伊藤孝江

    ○伊藤孝江君 次に、処遇の期間に関して、この六十四条等の関係でお伺いをいたします。  少年院に収容する期間、上限が三年というふうに定められていますけれども、この三年と定める趣旨について御説明いただけますでしょうか。
  115. 川原隆司

    政府参考人川原隆司君) お答えいたします。  本法律案におきましては、十八歳以上の少年に対する保護処分は、犯した罪の責任に照らして許容される限度を超えない範囲内で対象者の要保護性に応じて課すものとしております。  そして、十八歳以上の少年に対する少年院送致処分は、対象者の身体拘束という大きな不利益を伴うものであることからしますと、その収容期間は刑事政策的観点から処遇の必要性、有効性が認められる範囲を超えないようにしておくことが適当であると考えられるところでございます。  このような観点から、本法律案では、少年法第六十四条第三項におきまして、家庭裁判所少年院に収容する期間として定めることができる期間の上限を法定することとしております。  その上で、現行法上、犯罪的傾向が矯正されていないことを理由とする少年院への収容継続は二十三歳に達するまでとされており、少年院における矯正教育が二十三歳に至るまでの者に対して処遇効果を有することは広く承認されていると考えられるところでございます。  そして、現在の少年院における十八歳及び十九歳の者に対する処遇の実情を踏まえますと、一般的に三年あれば仮退院後の社会内処遇も含めて必要な処遇期間を確保できると言える一方、施設内処遇についてはその期間を長く取れば取るほどそれに単純に比例して処遇効果が上がり続けるというものでは必ずしもないという指摘もされていることから、本法律案におきましては、家庭裁判所少年院に収容する期間として定めることができる期間の上限を三年としたものでございます。
  116. 伊藤孝江

    ○伊藤孝江君 運用について確認をさせてください。  これまで処遇期間に関しては、一般短期処遇、長期処遇等の処遇期間のめどを類型化して処遇をされています。裁判所がこれについて勧告を行うという運用になっております。  この改正法におきましては、特定少年について少年院の処遇期間の上限を定めるというのは示されているところですけれども、裁判所として処遇期間に関して勧告をする運用が取られるのかという点について教えていただけますでしょうか。
  117. 手嶋あさみ

    最高裁判所長官代理者手嶋あさみ君) お答え申し上げます。  いわゆる処遇勧告は、保護処分の決定をした家庭裁判所が処遇機関に対して少年の処遇に関する勧告をすることができるという仕組みでございまして、少年審判規則第三十八条第二項に規定が設けられております。  処遇勧告は、保護処分の決定機関と執行機関とが分離されているという現行法の下において、決定機関の意向を伝えるとともに処遇の一貫性を確保しようとする趣旨の仕組みでありまして、処遇機関においてはこれを十分に尊重する運用が行われているものと承知しております。  本法律案におきましては、十八歳以上の少年に対する保護処分につきまして、犯した罪の責任に照らして許容される限度を上回らない範囲でしなければならないものとされてはおりますものの、家庭裁判所はその範囲内において対象者の要保護性に応じ課すべき保護処分を選択することとされておりまして、その点の家庭裁判所の役割には変わりがないものと認識をしております。  いずれにしましても、裁判所としましては、以上のような改正法趣旨も十分に踏まえた上で、処遇勧告に関し適切な運用に努めてまいりたいと考えております。
  118. 伊藤孝江

    ○伊藤孝江君 早く出ることができるのであれば早く出ていただくということも踏まえて、念のため長めに設定しておこうかと、短期でいけるかなと思いながら長期言っておこうという形で、上限を二年、三年と長めにしておくというような運用はないということでよろしいんですか。
  119. 手嶋あさみ

    最高裁判所長官代理者手嶋あさみ君) 先ほど申し上げたところは、結局現行法の下における構造と変わりがないというところでございまして、そのような趣旨でございます。
  120. 伊藤孝江

    ○伊藤孝江君 ありがとうございます。以上で終わります。
  121. 山本香苗

    委員長山本香苗君) 午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午前十一時五十二分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  122. 山本香苗

    委員長山本香苗君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、少年法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  123. 清水貴之

    ○清水貴之君 日本維新の会の清水です。よろしくお願いをいたします。  まずは、非常にシンプルなのですが、この法改正に関して非常に根本となるような質問をさせていただきたいと思います。  十八歳、十九歳は成人なのでしょうか、少年なのでしょうか、こういった問いに対して、政府として、大臣としてはどのようにお答えになられるでしょうか。
  124. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 少年法適用対象とする年齢の在り方は、成長過程にある若年者をどのように取り扱うか、また、どのように改善更生、再犯防止を図るかに関わる問題でございます。民法上の成年年齢が引き下げられたからといって、論理必然的にこれを引き下げなければならないものではないというふうに考えております。  民法成年年齢の引下げは、十八歳及び十九歳の者が大人として完成されたことを前提とするものではなく、これらの者はいまだ成長の過程にあるものの、その社会参加の時期を早め、様々な分野で積極的役割を果たさせることは我が国社会に大きな活力をもたらすと考えられたことによるものでございます。  このような認識を前提といたしまして、本法律案におきましては、十八歳及び十九歳の者が選挙権等を認められ、民法上も成年として位置付けられるに至った一方、成長途上にあり、可塑性を有する存在であることを踏まえまして、これらの者について、引き続き少年法適用対象としつつ、その立場に応じた取扱いをするための特例を定めることとしているところでございます。
  125. 清水貴之

    ○清水貴之君 やっぱりその説明をお聞きすると、僕も真山さんと一緒で、もやもやしたものがやっぱり残ってしまうところがあるんですね。  今大臣から民法に必然的に連動するものではないという話があったんですが、ただ、今回の措置というのは、やはり民法成人年齢の引下げに伴って何か対処をしなければいけないというところから議論がスタートしているわけです。それならば、十八歳、十九歳に様々な権利を与えるのに合わせて少年法年齢も引き下げるべきではないか、連動させるべきでは、そろえるべきではないかというのが我々の考え方です。  ただ、その引下げに反対の立場を取っていらっしゃる皆さんが言われているように、現行法、この現在の少年法が問題なく機能しているということ、これはもう政府がずっと答弁で認めていらっしゃるわけですね。そうすると、引き下げる立法事実はないんじゃないかとおっしゃるのはまさにそのとおりだというふうに思います。なので、中間的な特定少年という仕組みをつくろうとしているわけなんですが。  結局、審議会、これはもう何十回も開いてきて議論してきて、三年以上にわたって議論してきても意見を一つに集約できなかったわけです。ですから、どういった立ち位置を取るかによって結論が全く違ってしまう非常に難しい問題だなというのを改めてこの審議を通して、また様々資料を読んでいて感じるところです。  処罰対象としての成年というふうになるのか、又は更生対象としての少年になるのかが曖昧なわけですね。ですから、現改正案は中途半端な位置付けになっているのではないかというふうに感じています。結局、なかなか決められないので、特定少年といういわゆる折衷案のようなところで落ち着かせようとしているというふうに感じますので、やっぱり何かすとんと落ちない、もやもやした部分が残るのではないかなというふうに感じているところです。  その法制審の議論なんですが、これ、衆議院の参考人として出席されました東大の川出先生ですけれども、このように述べられています。法制審の最終的な結論は、少年法適用対象年齢を引き下げるかどうかは立法府に委ねるということになっているが、あれは結局、あの法制審の段階でどちらにするかは決められる状態ではなかったので、そこはある意味オープンにするということという発言を衆議院の方でされております。  ということは、法制審から今度は行政府の方にバトンが渡されてこの改正案ということになったわけですが、その後のどのような経路を経て、どのようなプロセスを経て今回の法案ということに相なったんでしょうか。
  126. 川原隆司

    政府参考人川原隆司君) お答えいたします。  本法律案の基となりました法制審議会の答申におきましては、委員指摘のとおり、「十八歳及び十九歳の者の位置付けやその呼称については、国民意識や社会通念等を踏まえたものとすることが求められることに鑑み、今後の立法プロセスにおける検討に委ねるのが相当である。」と記載されているところでございます。ここに言う立法プロセスとは、答申後の政府部内での検討や国会での御審議を経て法案の成立に至るまでの一連のプロセスが念頭に置かれたものと理解をしております。  その上で、十八歳及び十九歳の者の位置付けに関しまして申し上げますと、法務省といたしましては、答申に基づいて法律案を検討する中で、これらの者について、いわゆる原則逆送対象事件を拡大することや、犯した罪の責任に照らして許容される限度を超えない範囲内で保護処分を行うことなど、十八歳未満の者と異なる取扱いをすることとしつつ、全事件家庭裁判所に送致し、原則として保護処分を行うという少年法の基本的な枠組みを維持することから、少年法適用対象とすることが適当であると考えたものでございます。  法務省といたしましては、ただいま申し上げた検討を経て法律案を国会に提出したところでございまして、現在立法プロセスとして国会で御審議をいただいているものと認識しております。
  127. 清水貴之

    ○清水貴之君 今おっしゃった、今は立法プロセスですね、この審議をしているわけで、その手前の段階、法務省内の議論、どういった手順を踏んで、どういった形で議論を進めていってこういった法案ができ上がった、例えば、どういった立場の方々がどういった状況で議論をして、どういった結論に至ったのか、この辺りというのはどうなっているんでしょう。
  128. 川原隆司

    政府参考人川原隆司君) お答えいたします。  私ども法務省といたしましては、少年法年齢引下げにつきまして法制審議会に諮問をいたしまして、それは、先ほど委員も御指摘のとおり、昨年の秋にその答申を得ているところでございます。  その上で、答申に基づいて今度は法務省事務当局として法律案を立案するということになりまして、その過程におきまして、まず法務省の中では、国会に提出させていただくまでの間、法務省事務当局において折々政務三役の御判断を仰ぎつつ最終的な法律案の内容を決定するに至ったものでございます。
  129. 清水貴之

    ○清水貴之君 今の話ですと、やはり法制審の答申というのも話出てくるわけですが、じゃ、その法制審議会委員の選定についてお伺いをします。  法制審議会委員、これは大臣が任命をすると、任命権者は大臣ということですが、じゃ、その手前ですね、この委員にどのような基準で選定をし、そして任命までのプロセスをたどっていくのでしょうか。
  130. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 法制審議会には法制審議会令というのがございます。法制審議会委員は、学識経験のある者のうちから法務大臣が任命することとされているものでございます。  法制審議会でございますが、民事法、刑事法その他法務に関する基本的な事項、これを調査審議することなどを目的とするものでございます。この法制審議会の調査審議に当たりましては、法律専門的な調査検討を行うとともに、国民各層の意見を適切に反映をする必要がございます。そのため、法制審議会委員につきましては、幅広い意見を述べていただくため、法律専門家や各界の有識者といった多様なお立場の方々を任命するよう適切な人選に努めているところでございます。
  131. 清水貴之

    ○清水貴之君 大臣が最後は任命ということですが、その手前、今おっしゃったとおりバランスを取るような形で選ばれているということですが、これはまたそのプロセスの話になるんですけれども、大勢候補者というのは出てくるものだと思うんですけれども、その候補者は誰がどの立場で選んで、そしてその上でどうやって、最後は大臣が僕の感覚だと選ぶのではないんじゃないかと、その手前でいろいろ審査をした上で上がってくるんではないかと思うんですけれども、どういった過程を経てこの審議会のメンバーというのが最終決定まで至るものなんでしょうか。これは大臣じゃなくて、これは多分事務局の話だと思いますので、お答えいただけたらと思います。
  132. 金子修

    政府参考人(金子修君) まず、一般論として法制審議会委員の任命のプロセスについて御説明しますが、今大臣から答弁がありましたとおり、法制審議会の設置の趣旨目的に照らしまして、法律専門家や各界の有識者といった多様な方々を任命するように努める、その人選に努めるということになりますが、適切な人選を行うに当たりましては、法制審議会の構成が公正かつ均衡の取れたものとなるように配慮しているというものでございます。  部会について言えば、諮問事項を勘案しながら、また部会が設置された趣旨等を踏まえまして、公正かつ均衡の取れた構成となるように選任されているというように承知しております。
  133. 清水貴之

    ○清水貴之君 今、部会の話が出ました。部会の選任に関して、部会だけじゃないですね、失礼しました、法制審議会もそうですし、部会もそうなんですが、行政機関の職員というのも数多く参加していると。今答弁されている刑事局長も、審議会の方にもメンバーで名前を連ねられておられますし。  ただ、この委員については、審議会等の組織に関する指針、資格要件で、委員等については行政への民意の反映等の観点から原則として民間有識者から選ぶものとする、国会議員、国務大臣、国の行政機関職員、地方公共団体又は地方議会の代表等は当該審議会等の不可欠の構成要素である場合を除き委員等としないものとするというふうにあるんです。ただ、その一方で、なお、国の行政機関職員、地方公共団体又は地方議会の代表等である者を属人的な専門的知識及び経験に着目して委員とすることは排除しないものとするという記述もあります。  このメンバーを見ますと、審議会はそこまででもないですが、この少年法・刑事法の部会の方を見ますと、これ、幹事も含めますと半分ぐらいは行政機関の職員である、若しくは、裁判所が入っていますので、裁判所は行政機関ではないかもしれませんが、そういった公の機関の方々で占められているということになります。  これは、その資格要件のところからしますと、原則として民間有識者から選ぶものとする、その原則からするとかなり逸脱しているのではないかと思うんですが、これについてはいかがでしょうか。
  134. 金子修

    政府参考人(金子修君) 今、清水委員指摘の指針において、今委員からも御指摘もありましたけれども、国の行政機関職員等である者を属人的な専門的知識及び経験に着目して委員等とすることは排除しないとされております。この少年法の部会について行政機関の職員等が委員又は幹事になっているのは、この要件に着目して任命されているというふうに理解しております。
  135. 清水貴之

    ○清水貴之君 ただ、その割合は多いと思いませんか。原則はしないと、でも特定の場合は任命も可能だというこの規約だというふうに思うんですが、それにしては多いというふうに感じませんか。
  136. 金子修

    政府参考人(金子修君) 多い少ないというのはちょっと評価にわたるので説明するのが難しいのですが、結果として、結果としてというか、いずれにしましても、先ほど申し上げたような、いろんなお考えのある方、バランスを取りつつ、均衡が取れるようにというふうに配慮して部会のメンバーも決まったものというふうに承知しております。
  137. 清水貴之

    ○清水貴之君 それでも行政機関が半分入っているんですよ。半分というのはバランスが取れているというふうに感じますか。
  138. 金子修

    政府参考人(金子修君) 一言、御理解いただきたいのは、まず、幹事は表決権を持たないので、あくまで委員の補助的な役割ということでございますので、幹事は確かにいろんな事務的なこともしますので、そういう意味では少し多いということがあるのかもしれませんが、委員について言えば特段多いというような批判には当たらないのではないかというように思います。  いずれにしても、バランスを取った結果だというふうに理解しております。
  139. 清水貴之

    ○清水貴之君 今おっしゃった委員では十九名中五人が行政機関のメンバーになっております。  何でこんな話するかといいますと、やはり被害者の方の声というのも私は大事にするべきかなというふうに思っておりまして、この被害者の代表の方が武るり子さん、少年犯罪被害者当事者の会の代表の方、部会の方で参加をされておりますが、被害者の方はこの武さんお一人であるということです。  最終的に、議論を経て武さんも今回の法改正には一歩前進ということで賛成の意を表されているというふうに理解をしてはいるんですけれども、ただ、こういったバランスというのを先ほどから述べられている中では、やっぱりちょっとその辺のバランスが十分取れているのではないのではないかというふうに感じてしまうんですが、今回の法改正全般を見て、犯罪被害者の方々の声を十分に反映しているというふうには考えられるでしょうか、いかがでしょうか。
  140. 川原隆司

    政府参考人川原隆司君) お答え申し上げます。  本法律案は令和二年十月の法制審議会総会において採択された答申に基づくものであるところ、法務省では、法制審議会への諮問に先立ち、若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会を開催し、犯罪被害者やその支援者計八名の方々などからヒアリングを行い、その結果を報告書に取りまとめたところでございます。  法制審議会の部会では、この報告書を配付して共有するとともに、少年犯罪の被害当事者である武るり子さんにも委員に加わっていただいた上で調査審議が行われたものでございます。法制審議会総会の答申は、このような部会での調査審議の結果を踏まえて全会一致で採択されたものでございます。  本法律案はこのような答申を基に立案されたものでありまして、衆議院法務委員会における審議におきましても、参考人として意見を述べた、先ほど申し上げました武さんから、本改正につきまして、少年法適用年齢が引き上げられず、十分な結果ではないが、大切な一歩である、強盗、放火、強制性交等が原則逆送の対象に加わることはとても大事なことである、起訴後は基本的に大人と同じ扱いになることや推知報道が解禁されることも良かったと思っているなどの御意見が陳述されたところでございます。  以上のことから、本法律案は被害者の立場からの御意見も踏まえたものとなっており、御理解を得られるものと考えております。
  141. 清水貴之

    ○清水貴之君 今、武さんのコメントも紹介いただきまして、私もまた別の観点から後ほど武さんのコメント御紹介したいと思うんですけれども、少年法年齢を維持すべきだというお立場からすると、少年には可塑性があり、更生の機会を奪うべきではないと、しっかりと教育をして、もうその次の人生、第二の人生をしっかりとサポートしていくべきだという御意見、これは全くそのとおりだと思いますので異を唱えるつもりはないんですが、やっぱり被害者側の視点というのも十分取り入れられてないのではないかというふうに感じます。  世論調査では、結局七割ぐらいの方が少年法の引下げに賛成という立場を世論調査だと取られるわけですね。結局、被害者側の気持ちを十分酌み取れていない、被害者の方々に対して責任を果たすような誘導ができているのか、再犯を減らして同じ苦しみを持つ人を一人でも減らすことにつながるのか、そのような仕組みになっていないんじゃないかと感じている方々が多いのではないかと思います。こういったところが何か解消されないままにいろいろ議論が進んでいっているので、何となくすとんと落ちない、もやもや感が残るのではないかなというふうに感じるんですけれども。  そういった視点から、これ武さんの、これまた衆議院での参考人のときの武さんのコメントですけれども、私たちがいつも言っていることは、刑事裁判、民事裁判、審判の中で一生謝る、償うと言った、国の機関の中で約束したことを果たさないことを国が許していることが非常に残念だというようなコメントをされていらっしゃいます。  ですから、武さんが関わっていらっしゃる被害者団体、大体加害者が百五十人ぐらいいるという話なんですが、本当に謝りに来たのは数人でしかないと。結局、こういう裁判などを通して、もう、済みません、しっかり償っていきますと言うけれども、やっぱりその後の対応などが十分でないと。この辺りが被害者の方々からすると、世の中、国民の多くの方からすると、何かもう納得いかないなと、少年法に守られている、あとはもう知らぬ顔、もう被害者の方が非常につらい思いをずうっと抱えながら生きていくというふうにどんどんどんどん行ってしまう理由ではないかなというふうに感じております。  ですから、加害者からのこの謝罪とか賠償、こういったものを、強制するものではないかもしれませんが、ただ、教育の中でしっかりそういった考えをサポートしていく。出所したから、少年院出たからとか、保護観察終わったからもう関係ないじゃなくて、その後もそういった気持ちを持ち続けさせるようなそういった対応を国がしっかりと取ることによって、こういった被害者の皆さんの感情若しくは国民の感情というのも大分変わってくるんじゃないかと思うんですけれども、この辺りの加害者側の対応についてどうしていくべきかということに関して、これも答弁いただけたらというふうに思います。
  142. 今福章二

    政府参考人(今福章二君) お答え申し上げます。  罪を犯した者が反省、悔悟の情に基づきまして犯罪被害者の方々に対し謝罪をし、被害弁償をするということにつきましては、被害者のお気持ちにお応えして被害者の経済的な損害を回復するという点におきましても、あるいは加害者の改善更生、再犯防止にも資するという点におきましても大変重要であると認識しております。  そこで、実務におきましては、まず少年院においてでございますが、被害者を死亡させ、又は生命、身体等に重大な影響を与えた事件を犯した者などを対象に、自らの責任とともに被害者及びその家族の方々に対する謝罪等について考えさせるため、被害者の視点を取り入れた教育を行っております。  また、NPO法人等の協力を得まして、ゲストスピーカーとして被害者による講話の機会を設けるなどいたしまして、償いということに、在院中のみならず、出院後も含め長きにわたって向き合っていくよう指導しているところでございます。  また、社会に出ました保護観察所におきましても同様に、重大な犯罪をした保護観察対象者に対しましては、少年院から引き継いだ指導内容も踏まえながら、被害者やその遺族のお気持ちや被害の状況などの実情を理解させ、そして謝罪や被害弁償等の責任あることを自覚させること、そして、具体的な贖罪計画を策定させ、被害者等の意向に十分配慮しながらその誠実な実行について助言、指導することなどを内容とする贖罪指導プログラムを実施しております。  今後は、法制審議会の答申なども踏まえまして、被害者に対する謝罪や被害弁償に向けた指導の充実強化に努めてまいりたいと存じます。
  143. 清水貴之

    ○清水貴之君 ただ、現状はまだ十分なされているとは言えないということだというふうに思います。  最後になりますが、先ほど刑事局長の方から衆議院参考人質疑、武さんのコメントをいただきまして、あっ、法制審のコメントですかね、武さんの、被害者の会の武るり子さんのお話をいただきました。おっしゃったとおり、一歩前進だというふうに受け止めていらっしゃいますが、これは衆議院参考人質疑、今回、参議院の参考人質疑では被害者側の方のコメントというのがなかったもので、ここで改めて私の方から紹介をさせていただきたいと思います。  今回の改正案少年法適用年齢が十八歳に引き下げられなかったことについて十分な結果だとは思っていない。私たちは、子供を殺された後もずっと、加害少年可塑性に富んでいる、加害者はこれからも生きていかなければいけない、将来があり、未熟だから保護しなければいけない、そんな言葉を何度も何度も聞かされてきました。そのことが大切なことだとは分かっていますが、そのことを理解するのに大切なもの、被害者の視点が欠けていると思います。加害者が自分の罪と向き合い、その重さを分かること、そして責任を果たしていくことがなされていないことが問題なのです。  未熟だから保護処分になった加害少年、将来があると大人より減刑された加害少年、ほとんどが謝罪もなく、賠償責任も果たしません。再犯もしています。私たちが経験していることは、加害者も親も逃げ得が許され、誰も責任を取ろうとしない姿なのです。だから少年法改正を言い続けているのです。  私たちの会の人たちの事件を見ると、多くの加害少年は、自らが少年法で守られ、刑が軽くなることを知った上で罪を犯したケースが目立ちます。被害者である子供たちの命はとても軽く簡単に扱われたと感じ、悲しく、悔しくてなりません。  事件を大人と同じように刑事裁判にしてもらっていたなら、罪に見合った罰が与えられていたなら、そして加害者から心からの謝罪があったら、賠償責任がきちんと守られていたなら、きっと私たちはもっと違った人生があったのではないかと思います。少年法改正されることは、決して厳罰化ではありません。時代に合った適正化なのです。  私も、もちろん抜粋をさせていただいておりますが、こういった被害者側の意見というのも重く受け止めながら、時間が来ましたので、また今後の審議に臨んでいきたいと思います。  今日はありがとうございました。
  144. 川合孝典

    ○川合孝典君 国民民主党・新緑風会の川合でございます。  私からも質問させていただきたいと思いますが、私も皆さんと一緒で、もやもやしながらこの法案の一連の調べ物をさせていただいていた人間でありますが、さきの参考人質疑橋爪教授のお話を聞かせていただきまして、自分なりに割り切ったと申しますか、腹に落ちましたのは、いわゆる反対派、今回の法改正に反対派の皆様、方々は、このいわゆる少年法がこれまで機能してきている、有効に機能してきているということをもって法改正することの立法事実について疑義を唱えていらっしゃるということに対して、橋爪教授は明確に、民法成年年齢が十八歳に引き下げられたこと自体が立法事実であると、こうおっしゃいましたので、ということは、論理的な帰結ではなくて政策的な判断であるという、もうそこに尽きるのだなということを私はその場で理解をさせていただきましたので、しからば、今後、この法改正に伴って新たな新法が適正に運用されるのか、いわゆる被害者、加害者双方、関係者にとって適正に運用される法としてどうこれから見直していくのか、変えていくのかということを建設的に議論をしなければいけないというふうに私自身は捉えました。  そうした視点にのっとって質問させていただきたいと思いますが、今日の質問の論旨は清水委員とかぶる論旨ということになっておりますので、若干かぶっている部分がございましたら御容赦をいただきたいと思います。  まず一点目の御質問、大臣にさせていただきたいと思うんですが、いわゆる法改正に反対をされている方々の方から、今回のこの法改正の立法事実の有無について、いわゆる少年犯罪は減少傾向にあり、さらには保護、更生の機能というものもしっかり果たしている、したがって立法事実がないということを繰り返しおっしゃっておられましたので、私もその目線からいろいろ調べ物をさせていただいてきたわけでありますが、素朴な疑問としてお伺いしたいのは、確かに少年事件の数が物すごくここ近年減っております、二〇〇〇年以降。この少年事件が顕著に減少傾向に現状あるこの背景に一体何があるというふうに法務省としては把握していらっしゃるのか、ここをまずお教えいただきたいと思います。
  145. 川原隆司

    政府参考人川原隆司君) お答えいたします。  御指摘のように、少年法による刑法犯の検挙人員は全体として減少傾向にあるものと承知しております。少年犯罪の動向については、これまでも少年の就学・就労状況少年による家庭内暴力の状況、いじめに起因する事件状況少年院入院者の保護者の状況、被虐待経験など、様々な観点からの調査が行われているところでございます。  その上で、少年犯罪の背景には、経済的問題、家庭環境、少年の資質など様々な要因が考えられ、その減少原因についても一概にお答えすることは困難であります。その上で、引き続き少年犯罪の動向やその要因の把握に努めてまいりたいと考えております。
  146. 川合孝典

    ○川合孝典君 もう皆さん御承知だと思いますが、少年法改正に関しては、二〇〇〇年に検察官関与制度が創設されて十六歳以上の原則逆送制度が導入され、二〇〇七年に十四歳未満の触法少年への警察調査の導入と少年院送致年齢の引下げが行われ、さらに二〇〇八年、被害者による審判傍聴制度が創設されて、直近では二〇一四年に検察官関与対象事件の拡大、刑期の上限の引上げといった少年法改正が行われておりますが、こうしたいわゆる少年法改正とこの一連の減少傾向との間に何らかの関係というものがあるのかどうかということについてどのように分析していらっしゃるんでしょうか。もし分析しているんだったら教えていただきたい。
  147. 川原隆司

    政府参考人川原隆司君) お答え申し上げます。  先ほど少年犯罪の減少傾向の分析については先ほどお答えしたところでございまして、今委員が御指摘になったような観点からの分析というのは特段行っていないところでございます。
  148. 川合孝典

    ○川合孝典君 私が懸念しておりますのは、要は、言い方が適切かどうか分かりませんが、厳罰化することによって要は犯罪を未然に防ぐという判断だけに偏ってしまうことがむしろ私は逆に怖いんです。  そうではなくて、事実関係をきちんと精査、把握した上で、客観的事実に基づいてどういうところに成人年齢の線を引くのかということの議論がなされなければいけない。今回の場合は政治的判断で十八歳に、成年年齢というか、いわゆる少年法対象年齢を事実上引き下げるに近い措置を講じるということになっておりますけれども、そこにも合理的なスケールはないわけでありまして、したがって、その時々の社会情勢や国民感情で上がったり下がったりということが行われるようでは正直言って困ると思っております。  今回の一連のやり取り、質疑を聞かせていただいておりましても、引下げに当たっての合理的なそのいわゆる判断の根拠になるエビデンスが非常に薄いんですよね。したがって、そのことが皆さんのもやもや感にも多分つながっているんだろうなというふうに理解しておりますので、今後、このいわゆる一連の法改正だとか様々な新たな措置等がどう少年犯罪の動向や抑止効果や更生等に効果を発揮しているのかということも含めて分析する必要は私はあると思うんですけれども、分析する必要性についてどのように御認識されているのかをお聞かせいただきたいと思います。
  149. 川原隆司

    政府参考人川原隆司君) お答え申し上げます。  委員指摘のとおり、今後、この改正法施行された場合に、それがどういった形で社会の中で運用されていくか、それがどういった意義を持つようになったかということにつきましては、実は、本法律案改正、附則におきまして五年後の検討条項というのを設けておりますので、そういった検討をするに当たって、本改正法の運用状況については十分に把握した上で検討を行ってまいりたいと考えております。
  150. 川合孝典

    ○川合孝典君 きちっと検証していただくということで現時点では理解をさせていただきましたけれども、是非そこはよろしくお願いしたいと思います。  時間がありますので次の質問に行きたいと思います。  被害者の権利保護と補償、賠償の在り方について少しお考えをお聞かせいただきたいと思いますが、社会全般に、今の少年法だと少年犯罪に対して厳罰が適用できないというある意味誤った認識が広がっている部分があると思うんですが、この背景に一体何があるんだろうと。少年の犯罪に対して甘いという社会的なコンセンサスですね、これを考えたときに、先ほどの清水委員質問にもつながる話ではあるんですが、これは加害者のいわゆるプライバシーを非常に大切に取り扱っていらっしゃるんですが、その加害者のプライバシー保護に偏った報道情報発信というこの在り方と昨今のSNSの普及、こういうものが相まって、被害者、被害者家族の方々の感情を私は逆なでするような作用が生じているのではないのかなというふうに、実は私は素人っぽく把握させていただいております。  少年事件における報道の在り方が全般的にやはり加害者のプライバシー保護に偏っているというのは、実際映像を見ていると要は極めて如実に表れておるわけでありまして、被害者若しくは被害によりお亡くなりになられた方は写真入り実名でどんどん報道されるにもかかわらず、加害者側の方はずっとプライバシーが保護されているということなわけなんですけど、社会一般的な常識として、加害者のいわゆるプライバシーをどう守るのかということの前提に被害者のプライバシーがどう守られるのかということがなければいけないと私は実は素朴に考えておるわけでありまして、このいわゆる被害者のプライバシーを守るということについての法務省としての御認識はどうなのかということをお聞かせいただきたいと思います。
  151. 川原隆司

    政府参考人川原隆司君) お答え申し上げます。  お尋ねの被害者のプライバシーということでございますが、御指摘のとおり、犯罪被害者やその御家族のプライバシーが適切に保護されることは、少年事件であるかどうかにかかわらず重要なことであると考えております。もっとも、そのために報道に対する事前規制を設けることにつきましては、一般に、憲法で保障された表現の自由や報道の自由との関係で慎重な検討を要するものと考えております。  少年事件における事件広報に当たりましては、関係機関において、被害者やその御家族の名誉、生活の平穏が害されることがないよう、十分配慮して適切に対応していくことが必要であると考えております。
  152. 川合孝典

    ○川合孝典君 刑事局長がおっしゃっていることが理屈としてはそうなんだろうと思うんですが、現実にそうなっていないから問題が起こっておるわけでありまして、憲法の問題も、今御発言、御答弁の中にありましたけど、それを言えば推知報道禁止もそもそもはメディアのいわゆる自主規制の枠組みの中でやっている話でありますので、要は推知報道禁止するということが一定部分できるにもかかわらず被害者に関する報道についてそれがなされないということの合理的な理由にはならないと思うんですけど、その辺りはいかがでしょう。
  153. 川原隆司

    政府参考人川原隆司君) お答え申し上げます。  今委員の方から加害者の推知報道の関係で御指摘がございました。まさにこの法律でも改正をしようとしているところでございますが、加害者の推知報道に関しましては現行少年法六十一条でその推知報道禁止規定が設けられていると、一方、被害者の方にはそういった被害者に関する事項報道に関する規制につきましては法律上の規制がないと、そういった違いがございます。  そういったことがありまして、まさに委員指摘のように、こちらとこちらという形で大きな差が生じていると。そういったこともございまして、別の場でも御答弁させていただいているところでございますが、今回、推知報道特定少年に関しまして一部禁止を解除するという中には、被害者に関する事柄は報道される一方、少年に関する事柄は現在全くその推知報道禁止されていると、こういった取扱いの差も問題点として指摘されて議論をされてきたところでございます。
  154. 川合孝典

    ○川合孝典君 推知報道禁止することでバランス、均衡を取るという考え方ということも分かるんですけど、推知報道禁止を要は解除することでバランスを取るということもさることながら、被害者の情報を保護するという部分についてのアプローチの必要性なんですよ。  要は、厳罰化して抑え込もうという話ではなくて、どちらに合わせるのかということの議論を私は正直言ってするべきだと思っておりますので、そういう意味で、いわゆる報道や、これ大臣の御認識を是非お伺いしたいんですが、今後の被害者、被害家族のプライバシー保護のための報道情報発信の在り方について、今後、是非この点については御検討いただけないでしょうか。済みません、通告しておりません。
  155. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 十七年前でございますが、犯罪被害者等基本法ができまして、累次にわたりまして基本計画が策定される中で、被害者の方々の権利利益の保全と保護ということについては制度化を随時してきているところでございます。まさにプライバシーの問題、そして人権の保護という観点におきましても、これは今のままで立ち止まることなく、こうした加害者とのバランスの中でという議論も含めまして、これからもこの問題につきましてはしっかりと対応すべき事柄であると思っております。  基本計画におきましても、運用のレベルにおきましても、この被害者の人権をしっかり守っていく、権利利益の保全を図ると、こういう視点からたゆまぬ改善をしてまいりたいというふうに思っております。
  156. 川合孝典

    ○川合孝典君 ありがとうございます。是非御検討いただきたいと思います。  現実問題として、犯罪の被害者の方々、今も現実、現在進行形で、被害者が出たら、その亡くなった方の御家族やいろんなもの、プライバシーがどんどん丸裸にされていって報道が繰り返しなされているという状況が今現実に起こっているわけです。  それに対して、当然検討を行って今後どういう措置を講じるのかということについて御議論いただくのも大事なんですけど、そのことを、いわゆる被害者のプライバシー保護について今後法務省として検討を行うことの必要性を認識しているという情報を発信していただくだけでも、これはメディアやいろいろな関係者の方々に対して考える機会を与えることに私はつながると思いますので、是非、そういう問題意識を持っているということ自体をすぐにでも情報発信はできるものならしていただきたい、この法務省としての考え方というものを外に向かって発信していただきたいと思います。是非御検討をお願いします。  次の質問に移りたいと思いますが、少年事件の被害者や被害者家族のいわゆる知る権利というものについてどう今後取り扱うべきかということについてでありますが、徐々に情報の公開がされ始めているということは聞いておるんですけど、元々は加害者の例えば名前氏名ですとか少年審判の場合の審判の日時も含めて一切情報が被害者側に対して知らされてこなかったということが過去の経緯としてあったというふうに伺っておりますが、これ、何でそういうことになっておったんでしょうか。
  157. 川原隆司

    政府参考人川原隆司君) お答え申し上げます。  従前のそういった仕組みにつきましては、基本的には少年プライバシーの保護あるいは健全育成の観点から情報が開示されない時代が過去あったところでございます。その後、委員も御指摘になりましたが、累次の法改正によりまして、被害者やその御家族の知る権利について配慮された規定が整備されているところでございます。
  158. 川合孝典

    ○川合孝典君 この知る権利の部分につきましても、やはり被害者側の立場から、被害者の気持ち、心情に寄り添うということも当然必要でありますので、加害者、生きて更生可能性があるとはいいながらも、被害者の、いや失礼、加害者の方々のプライバシーということよりもむしろ被害者の方々が愛する人を失ったその心情を考えたときに、その人たちがやり場のない憤りの気持ちを持ちながら知りたいと思っていらっしゃるその思いにどう寄り添っていくのかということは、これはとても大切なことだと思うんです。  最後までもちろん被害者の方は納得できないと思うんですけれども、しかしながら、納得できないながらも理解できるところまではどう寄り添っていくのか、制度、法律制度として寄り添うのかということは私はこれ求められていると思いますので、そういう観点から、いわゆる被害者、被害家族の知る権利というものについても、今後、法改正後の運用の中で是非御議論を進めていただきたいというふうに思います。  時間の関係ありますので、次に移りたいと思います。  いわゆる賠償の問題について少し御質問させていただきたいと思います。  先ほど、これも清水委員質問にもありましたが、加害者側から被害者側へのいわゆる謝罪やいわゆる賠償、損害賠償等が、要は、本当は責任があるにもかかわらず、なされないまま放置されてきている事案というのが散見されるわけでありますけれども、この問題について、いわゆる賠償責任が果たされていない、謝罪がきちんと行われていないということについて、法務省としてはそうした状況についてどういった問題意識をお持ちになっているのかということをお聞かせいただきたいと思います。
  159. 今福章二

    政府参考人(今福章二君) 法務省といたしましては、ただいま委員指摘のとおり、被害者に対する謝罪ですとか被害弁償に向けた指導の充実強化を図っていくということは、被害者の方のお気持ちにお応えするとともに、加害者の改善更生、再犯防止の観点から重要な課題であると認識しているところでございます。
  160. 川合孝典

    ○川合孝典君 私がこれ申し上げさせていただきましたのは、いわゆる犯罪の被害者に対する補償だとかそういうものが十分なされていない、不足しているということが、結果的に、被害者、加害者のいわゆる均衡の観点からいわゆる加害少年に対する責任を追及する姿勢につながっているとも考えられるわけでありまして、したがって、やはりきちんと賠償責任、贖罪をし、賠償責任を果たすということが前提となった上での更生ということでないと私は筋が通らないと実は思っておりまして、そういう意味では、この賠償等の枠組みというものについても今後どう見直していくのかということが非常に大きな論点になろうかと思いますので、そのことも指摘させていただきたいと思います。  その上で、今回、民法上の成年と十八歳以上が位置付けられることによって、民法上の監督義務者の責任追及ができなくなるのではないのかということが今回の少年法改正に当たって指摘をされているわけでありますが、この民法上の成年となった場合、十八歳及び十九歳の者の犯罪に対する損害賠償責任をどのように法律上で担保していくのかということについてお聞かせいただきたいと思います。
  161. 小出邦夫

    政府参考人小出邦夫君) お答えいたします。  委員指摘の監督義務者の賠償責任に関します民法七百十四条という条文ございますが、これによりますと、未成年者が他人に損害を加えた場合に、その未成年者が責任能力を有していたとき、すなわち一般的な理解ではその未成年者がおおむね十二歳から十三歳に達していたときは、賠償責任を負うのはその未成年者であると。言い換えますと、その責任能力を有していない場合には監督義務者が責任を負うという構造になっております。  したがいまして、十八歳及び十九歳の者が犯罪行為をした場合には、現行法の下においても、通常はその十八歳及び十九歳の者自身不法行為責任を負い、監督義務者は責任を負わないことになります。  こういった意味で、今回の成年年齢の引下げがこの民法七百十四条に基づく監督義務者に対する責任追及の可否に与える、可否に影響を与える可能性は少ないものと考えているところでございます。
  162. 川合孝典

    ○川合孝典君 分かりました。  もう一点、それに関連して御質問したいと思いますが、少年法では換刑処分が禁止されておりますが、例えば、現行少年法上、罰金刑に処された少年が罰金の納付から逃れることが可能となっているということでありますけど、これ、特定少年では何らかの措置を講ずる予定はあるのでしょうか。
  163. 川原隆司

    政府参考人川原隆司君) お答えいたします。  現行の少年法第五十四条は、少年に対しては労役場留置の言渡しをしない旨を規定をしております。これは、少年の情操への影響を考慮し、罰金、科料を完納しない場合でも労役場留置を行わないものとするものでございます。  もっとも、公職選挙法及び民法改正等により責任ある主体として積極的な社会参加が期待される立場となった十八歳以上の少年について、家庭裁判所により検察官送致決定がされ、刑事責任を追及される立場となった場合にまでなお少年法健全育成のために設けられている刑事事件の特例をそのまま適用することは適当でないと考えられるところでございます。  そして、労役場留置の禁止の特例につきましては、少年は罰金、科料を納めなくとも済むという風潮を生み出しかねない等の指摘もあり、これを十八歳以上の少年適用することは情操保護の観点を過度に優先するもので適当ではないと考えられるところでございます。  そこで、本法律案では、十八歳以上の少年に対しては、労役場留置の禁止の特例を適用せず、労役場留置を行うことができることとしております。
  164. 川合孝典

    ○川合孝典君 ありがとうございます。  いわゆる犯罪被害者の方々が損害賠償を受けられない場合に、どのようにその保護、その部分をどう補填していくのかというか、という観点というのはとても大事だなと思って考えておったんですけど、今日警察庁さんにお越しいただいておりますので、いわゆる刑事事件ということになるんでしょうか、損害賠償を受けることができない被害者や御遺族に対するいわゆる補償に当たる制度をお持ちであるということを聞いておるんですが、どういった制度内容で、大体どの程度のいわゆる補償の規模になっているのかということについてお教えいただきたいと思います。
  165. 堀誠司

    政府参考人(堀誠司君) お答えいたします。  殺人などの故意の犯罪行為により不慮の死を遂げた犯罪被害者の御遺族又は重傷病若しくは障害という重大な被害を受けた犯罪被害者の方に対しましては、社会の連帯共助の精神に基づき、犯罪被害などを早期に軽減するとともに、再び平穏な生活を営むことができるよう支援するため、国が犯罪被害者等給付金を支給する制度を運用しておるところでございます。  本制度の給付金は三種類ございます。死亡した方の遺族に支給される遺族給付金、重傷病を負った方に支給される重傷病給付金、それから障害が残った方に支給される障害給付金でございます。  なお、損害賠償を受けたときには、その価額の限度においてはこれらの給付金は支給しないこととされております。  本制度の令和元年度中の支給裁定に係る被害者数は三百十六人でございます。また、支給実績でございますが、遺族給付金につきましては平均六百十三万九千円、最高額が二千四百九十一万五千円、重傷病給付金につきましては平均二十四万二千円、最高額は百二十万円、障害給付金につきましては平均三百十九万六千円、最高額は三千二百八十三万二千円となってございます。
  166. 川合孝典

    ○川合孝典君 ありがとうございました。  時間が参りましたのでこれで終わりたいと思いますが、当事者、加害当事者が賠償能力がないということになったときに、いかに被害者の方々に対して補償を行うのかという意味では、国がどうそのことをバックアップするのか、そういう制度をつくるのかというところが非常に重要だと私考えておりますので、その辺りも含めてまた質問させていただきたいと思います。  終わります。ありがとうございました。
  167. 山添拓

    ○山添拓君 日本共産党の山添拓です。  法案について伺います。  そもそも立法事実が定かでない法案です。今、川合委員からもありましたけれども、少年事件は減少傾向にあります。少年人口そのものが減っていますが、人口比でも大幅に減少しています。少年法施行後、最も少年事件が多かったのは一九八〇年代ですが、その頃と比べて十分の一に減っています。その理由は一概には言えないという答弁が先ほどありました。背景には様々な事情があるかと思いますけれども、経済的にも、あるいは少年を取り巻く環境としても変化があるかと思います。  こうして大幅な減少は否定し難い事実ですけれども、内閣府の二〇一五年の世論調査では、少年非行は増加していると答えた人が七八・六%でした。増えたのは、掲示板に犯行予告や誹謗中傷の書き込みをするなどインターネットを利用したもの、自分の感情をコントロールできなくて行うもの、凶悪化したものや集団によるものだと思うという答えが上位四つを占めておりました。  菅総理は四月二十三日の本会議で、世論調査の結果については様々な評価があり得るため一概にお答えすることは困難と述べましたが、この調査は一九五〇年から行われているものです。政府が何ら評価できないというものでもないだろうと思うんですね。  そこで、大臣に改めて伺います。  少年事件の実態と世論調査の結果との乖離はなぜ生じているとお考えですか。
  168. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) ただいま委員から御指摘がございました少年による刑法犯の検挙人員数及び原則逆送の対象となる罪の事件の終局人員数は全体として減少傾向にあると認識をしております。  他方で、平成二十七年度実施の内閣府世論調査結果におきましては、実感としておおむね五年前と比べて少年による重大な事件が増えていると思うかという質問に対しまして、増えていると回答した者の割合、七八・六%であったと承知をしております。  検挙人員数等の動向とこの世論調査の結果の関係につきましては様々な評価があり得るところでございますが、いずれにいたしましても、少年犯罪の現状等につきまして国民の御理解を得ること、極めて重要であるというふうに考えております。現在、少年犯罪の動向につきましては、例えば犯罪白書等によりまして国民に広く公表するなどをしているところでございます。引き続き、正確な情報提供に努めてまいりたいというふうに考えております。
  169. 山添拓

    ○山添拓君 今大臣から国民の理解というお話がありました。そのとおりだと思うのですが、少年犯罪が起きると殊更にクローズアップされ、社会的に印象付けられるということも背景にあるかと思います。正確な事実認識が共有されていないということでは、この法案に対する国民の理解という点でも大変問題だと思うんです。ですから、まず誤解を解く、実態をきちんと伝えるということは欠かせないと思うんです。その意味で、非行少年の実態はどういうものなのかということを明らかにし、共有することが必要だと思います。  大山参考人からは、少年院収容者の六四・五%が中卒、高校中退者、被虐待経験のある者は男子で三四・六%、女子で五四・九%、多くの少年が家庭の状況によって勉強に動機付けられていないとお話しでした。  川村参考人は、犯罪白書によるこの数字は本人の申告によるものであって、客観的には虐待を受けていても自ら認識していないケースも多いとお話しでした。発達障害や知的障害があるにもかかわらず、専門的な治療や療育を受けられなかった少年もいると、そういう指摘もありました。  少年自身が言わば被害者でもあると、ですから、こうした少年少年法の下で保護されるべき存在だと考えますが、大臣、その必要性をどう認識されていますか。
  170. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 先ほど御紹介いただきました調査でございますが、これは、例えば令和元年の少年院への入院者におきましての被虐待経験、これは身体的、性的、心理的なもの、また、及びネグレクトも含めましてこうした経験があると申告した者でございますが、男子で約三割、そして女子では約五割というふうになっております。また、知的障害又は発達障害を有する者は約二割となっておりまして、処遇上配慮を要する者が一定数いるものと承知をしているところでございます。  こうした少年は、例えば他者への不信感を有するなど、資質上及び環境上の様々な問題や困難を抱えておりまして、少年院におきましては、法務教官との深い信頼関係を基盤といたしまして、個々の在院者が抱える課題に応じた指導を計画的に実施するなどして、この問題性に着目したきめ細やかな働きかけを行っているところでございます。こうした処遇の、丁寧な処遇の在り方につきましては極めて重要であるというふうに考えております。
  171. 山添拓

    ○山添拓君 そして、今の点は十八歳、十九歳にも変わらず言えることだということです。  八田次郎元小田原少年院長は、虐待された体験というのは人との信頼関係を築く上で支障を生じ、関係ができても長続きしない、無力感が強く、自己肯定感や自尊感情を持ちにくいと述べています。これはもう育ちの場を奪われてきたということであって、成長発達権を保障し、保護する必要性が高いということを示していると思います。  今の点に関わって矯正局に伺いたいと思いますが、犯罪白書や司法統計では、少年非行の数というのは十五歳ないし十六歳が一番多い、十七歳を過ぎると著しく減少すると、そういう傾向があると思います。その理由は何だとお考えでしょうか。
  172. 大橋哲

    政府参考人(大橋哲君) お答え申し上げます。  御指摘のとおり、途中でピークが終わりましてだんだん減少するという状況がございますけれども、個々の少年によってその事由は異なるということもございますけれども、その少年の中には、徐々に成熟度が増していくことによって非行に陥らない、あるいは犯罪に陥らないという者もあるかと思います。一概には申し上げられませんが、そんな事情もあるものと承知しております。
  173. 山添拓

    ○山添拓君 つまり、十八歳、十九歳で非行から脱していないのは多くの問題を抱えているということを示していることになります。すなわち、要保護性の問題が多く残されているということでもあります。  刑事局に伺いますが、法制審ではこうした点についての分析や評価、何か行われたのでしょうか。
  174. 川原隆司

    政府参考人川原隆司君) お答え申し上げます。  法制審における議論の状況でございますけれども、法制審における議論におきましても、十八、十九の者も成長途上にあって、まだ可塑性があるのだと、そういったことを前提にした議論が行われているところでございます。
  175. 山添拓

    ○山添拓君 今の話は成長途上にあって可塑性があるという話であって、十八歳、十九歳が置かれた現状、なぜ十八、十九、非行から脱していないのか、そこに要保護性の問題が極めて強い、そういう年代だということについては、その様々な実態などを踏まえて議論がされたという形跡はないと思うんですけれども、いかがですか。
  176. 川原隆司

    政府参考人川原隆司君) 先ほども矯正局長から御答弁がありましたけど、なぜ十五歳ぐらいが多くて、十八、十九、年を経るに従って減っていくかということは様々な要因がありますので、それについて一概にこうだという前提に立った議論というのはなかなか困難でございまして、ただ、申し上げましたように、成長途上にあって可塑性があるんだと、そういうことを前提にして議論を行ったということでございます。
  177. 山添拓

    ○山添拓君 先ほど紹介した八田氏は、十八歳、十九歳が精神的、肉体的に、また社会的、経済的にどういう存在であるかと、そういった議論を抜きにして、高度情報社会で子供の考えも変わってきたことについて、そうした議論もなく、法改正が誠実ではないという批判もされております。  この下で、なぜ、では今度の法改正かといえば、先ほど来お話ありますように、民法成年年齢の引下げ、遡って公選法の選挙年齢の引下げ、更に遡れば国民投票法の制定というところに行き着くと思います。社会情勢が変化したから改正だと言うのですが、そこで言う社会情勢というのは法律が変わったということだけなんですよね。  少年法が有効に機能していることを認めつつ、少年事件の実態や十八歳、十九歳の実像についての分析や評価も十分に行われたとは言えず、法律年齢引下げのみを理由改正に及ぶのは、これは結論ありきだと、少年健全育成という法の目的を否定するに等しいものだと言わなければなりません。  だからこそ、法制審は、少年法適用年齢を引き下げるべきか否か、その諮問の中心的な課題について明確な答えを用意することができませんでした。橋爪参考人も述べていたように、成年年齢の引下げと少年法適用年齢引下げは論理必然的な関係ではないからであります。そこで、法制審の答申は、十八歳、十九歳の位置付けや呼称、呼び方については国民意識や社会通念等を踏まえたものとすることが求められる、そう位置付けて、今後の立法プロセスにおける検討に委ねるのが相当としていました。  法務省は、国民意識や社会通念等としていかなる事実を考慮したんですか。
  178. 川原隆司

    政府参考人川原隆司君) お答え申し上げます。  本法律案の基となりました法制審議会の答申におきましては、「十八歳及び十九歳の者の位置付けやその呼称については、国民意識や社会通念等を踏まえたものとすることが求められることに鑑み、今後の立法プロセスにおける検討に委ねるのが相当である。」というふうに記載されております。ここに言う立法プロセスとは、答申後の政府部内での検討や国会での御審議を経て法案の成立に至るまでの一連のプロセスが念頭に置かれたものと理解をしております。  法務省といたしましては、十八歳、十九歳の者の位置付けにつきましては、原則逆送対象事件範囲を拡大することや、犯した罪の責任に照らして許容される限度を超えない範囲内で保護処分を行うことなど、十八歳未満の者と異なる取扱いをすることとしつつ、全事件家庭裁判所に送致し、原則として保護処分を行うという少年法の基本的な枠組みを維持することから、少年法適用対象とした上で、ごめんなさい、ことから、少年法適用対象とすることとしたものでございます。  その上で、こういった検討を経て本法律案を国会に提出したところでございまして、現在まさに立法プロセスとして国会で御審議をいただいているというふうに認識をしております。
  179. 山添拓

    ○山添拓君 いや、国民意識や社会通念等を踏まえたものとすることが求められると、そこで法務省での検討に立法プロセスの一部として委ねられていたはずですが、国民意識や社会通念等についての御説明は今ありませんでした。  資料をお配りしています。七月三十日付け、昨年ですね、少年法のあり方についての与党PT合意です。十八歳、十九歳の者の位置付けとして、少年法適用対象とした上で、その取扱いについては特別の規定を設けるなどといったことを始めとして、今回の法案とほぼ同じものであります。  つまり、法務省が考慮した国民意識や社会通念等というのは、この与党PT合意のことですか。
  180. 川原隆司

    政府参考人川原隆司君) お答え申し上げます。  法務省では、法制審議会の答申に基づいて本法律案を検討する中で、立法プロセスの一環として御指摘の与党・少年法検討PTの合意も参照としたところではございます。
  181. 山添拓

    ○山添拓君 参照としたと。しかし、結論はそのとおりということになっているわけですね。  私、この与党PT合意の内容を全て、全くけしからぬということで否定するつもりはないんですけれども、しかし、元はといえば、少年法制に関わる専門家が三年半掛けて議論してなお結論に至らなかった問題です。これを法務省内での僅か数か月の検討で結論を出しました。しかも、その際考慮されたのは、少年事件の実態や現場の声ではなく与党PT合意だと、今のお話ですと参照したのはこれだということですから。  結局これは、来年四月に迫った民法成年年齢の引下げを見据えて、期限ありき、結論ありきで進められたものだと指摘されてもやむを得ないと思うんですね。そのことが、十八歳、十九歳を形式上は少年法上の適用対象としながら実質的には刑罰化をする、その矛盾した事態をもたらしたと思うんです。  橋爪参考人は、今回の法改正少年犯罪に対する厳罰化とは考えていないと述べていました。大臣に伺いますが、大臣も同じ認識でしょうか。原則逆送事件を始めとして、十八歳、十九歳の事件をこの法案によって刑罰化することになります。それに伴って、結果として保護処分による更生の機会が奪われることになります。そのことをどう認識しておられますか。
  182. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 本法律案でございますが、先ほど委員も御指摘の中にございましたとおり、十八歳及び十九歳の少年が選挙権等が認められ、また民法上も成年として位置付けられるに至った一方で、成長途上にあり、可塑性を有する存在であることを踏まえ、これらの者につきましては、いわゆる原則逆送対象事件範囲を拡大しているところでございますが、全事件家庭裁判所へ送致をし、原則として保護処分を行うという枠組み、これについては維持をするということでございます。家庭裁判所におきましての保護処分につきましては、犯した罪に対応する責任を超えない範囲内で行うものとすると、こうした規定も設けているところでございます。  本法律案につきましては、十八歳、十九歳の者を取り巻く社会情勢の変化を踏まえまして、少年法適用につきましてはその立場に応じた取扱いを定めようとするものでございまして、これらの者に対するより重い処分そして処罰の実現を追求しようとするものではございません。
  183. 山添拓

    ○山添拓君 大臣が最後に述べられたように、重い処分を追求しようとするものではない、厳罰化を意図するものではないと言いながら、刑罰でないものを刑罰化していくわけです。それはすなわち厳罰化になります。健全育成の理念とは相入れないものだという点を指摘せざるを得ないと思います。  少年法は、制定直後から一貫して適用年齢の引下げが狙われてきました。成立から十年後、一九五〇年代の後半には早くもそのことが国会でも答弁されています。今回の法制審でも、元々は十八歳、十九歳、刑事処分原則としようとしたものでありました。それを、先ほど述べたような与党PT合意を含め紆余曲折あって今回の法案になっていますが、そういう意味で、立法事実は成年年齢引下げなどと説明にならない説明に終始することになってしまっています。  川村参考人は、家裁から検察官に事件を送り返す原則逆送対象事件を拡大し、犯情重視、結果重視となると家裁調査官の調査が弱体化する、調査、審判が変質すると批判をされました。大臣はこの法案について、きめ細かく調査することには変わりがない、原則逆送事件とそれ以外とで変わらないと今日も答弁されておりましたが、本当にそうなのかということは伊藤委員からも指摘がありました。  二〇〇〇年に十六歳以上の少年の重大事件、故意に人を死亡させる事件原則逆送とする規定が作られたときにも、国会では同様の答弁があったんですね、変わらないと、健全育成の理念に変わりはないと。そう述べていましたが、その後調査は弱体化し、変質しているといいます。  資料の二枚目を御覧ください。  最高裁に伺います。二〇〇〇年の改正で導入された原則逆送規定の下でいわゆる逆送率はどのように変化したのか、またその理由についても御説明をいただきたいと思います。
  184. 手嶋あさみ

    最高裁判所長官代理者手嶋あさみ君) お答え申し上げます。  委員の方で御提出いただいた資料を御覧いただければと思うのですが、少年法二十条二項が施行される前、これは第一表がそこに当たりますけれども、この施行される前につきましては、その施行後に原則逆送の対象となる事件のみを正確に把握する統計数値を持ち合わせておりませんけれども、この第一表の二つ目の米印のところにどういう表かというのを記載させていただいております。行為時十六歳以上の事件のうちで、例えば殺人、強盗致死、傷害致死事件、ただしこの中の殺人につきましては、ここにも記載させていただいておりますけれども、原則逆送とはならない未遂を含んでいる数字になっております。  これらにつきまして、平成八年から平成十二年の五年間の刑事処分相当とする検察官送致決定の割合を見ますと、平成八年が総数百五十二件のうち検察官送致二十七件で割合的には一七・八%、平成九年が百十七件のうち検察官送致十八件で一五・四%、平成十年が総数二百八件のうち検察官送致四十二件で二〇・二%、平成十一年が総数百四十二件のうち検察官送致二十件で一四・一%、平成十二年が総数百四十六件のうち検察官送致二十一件で一四・四%というふうになっておりまして、五年間を通じて申しますと、総数七百六十五件のうち検察官送致が百二十八件、一六・七%というふうになっております。  これに対しまして、その下のところにございます表が少年法二十条二項を施行された後ということになりまして、直近の平成二十七年から令和五年、これ第三表の中の最後の方になりますけれども、ここで御紹介をさせていただきますと、直近の平成二十七年から令和元年の五年間の原則逆送対象事件対象事件、申し訳ございません、原則逆送事件対象事件のうち刑事処分相当の検察官送致の割合は、平成二十七年が総数三十二件のうち検察官送致二十件で六二・五%、平成二十八年が総数二十四件のうち検察官送致が十五件で六二・五%、平成二十九年が総数十七件のうち検察官送致九件で五二・九%、平成三十年が総数十四件のうち検察官送致十一件で七八・六%、令和元年が総数十件のうち検察官送致が四件で四〇%となっておりまして、二十七年から五年間を通じて申しますと、総数九十七件のうち検察官送致五十九件で六〇・八%というふうになっております。  分析ということになりますと、最初に申し上げましたとおりで、母数が異なっております上に、先ほども申し上げましたとおり、平成八年から十二年につきましては殺人の未遂事件なども含まれておりまして、結果において差があるということも考えますと、なかなか一言で申し上げるのは難しいところでございます。
  185. 山添拓

    ○山添拓君 一言で言うのは難しいというお話があったんですけれども、当初は、原則逆送規定が設けられた下でも、二十条二項ただし書に基づいて刑事手続に行くのか保護処分に行くのか、どちらが適しているかを比較するような調査が行われていました。  少年による殺人や殺人未遂というのは、その半数以上が親殺しや嬰児殺し、家族内の事件で、背景には長年にわたる親の虐待やあるいは性暴力などが存在することも少なくありません。ですから、いかにも凶悪犯というような、全く落ち度のない第三者に対する事件は少ないわけです。調査すればするほど保護の必要性が浮き彫りになるケースが多いということもあると思います。  しかし、こうした比較論は、二〇〇六年頃にかけて否定されていくことになります。司法研修所の「改正少年法の運用に関する研究」、ここにもお持ちしていますが、これによれば、原則逆送事件は故意に人を死亡させるという行為の反社会性、反倫理性に着目している、したがって、保護処分社会的に許容されない保護不適、保護に適さない場合を推定した規定だと。したがって、家裁が保護処分を選択するのは、保護処分の方がよいというだけではなく、保護処分を必要とする特段の事情が必要だと、そういう解釈を導いています。  先ほど最高裁は、最高裁として特定考え方を現場に示していることはないとお話しでしたけれども、こうして教本になっているわけです。研修を通じて家裁の調査官に浸透させてきたのではなかったですか。
  186. 手嶋あさみ

    最高裁判所長官代理者手嶋あさみ君) 委員指摘のような研究報告等があることは承知をしておりますけれども、さきにも御答弁させていただきましたとおり、家裁調査官としては少年の問題性についても十分に調査を尽くした上で、それらの結果も十分に踏まえて処分を決定するということでありまして、その点については変わりはないというふうに承知をしているところでございます。
  187. 山添拓

    ○山添拓君 いや、変わりはないと言いますけれども、実際に運用を変えてきたわけです。二十条二項ただし書の事件とそれ以外の事件とで調査の在り方を変えてきた。原則逆送事件については、保護処分の許容性、保護処分をしてもよいかという判断を、調査をするようにここでは言っているわけですね。しかし、少年法社会調査というのは、本来、少年に対してどのような処遇が最も有効、適切であるかを明らかにするための、つまり要保護性に関する判断のために行われるものであって、保護処分が許容されるかどうかと、そういう調査ではないはずです。  その意味では、要保護性を見極める調査と、保護処分の許容性、保護処分にしてもよいかどうかという例外事情を探すような調査とは、これは相入れないものではないかと思うんですけれども、調査の在り方については、今おっしゃったように、引き続き要保護性について調査をしていくのだと、例外事情を探すのではなく、要保護性についての調査が中心的な課題であって、そのために丁寧に行うのだと、こういう認識でおられますか。
  188. 手嶋あさみ

    最高裁判所長官代理者手嶋あさみ君) お答え申し上げます。  先ほど来の繰り返しになり恐縮でございますが、御指摘のような論考があることも承知をしておりますが、他方で、裁判官を含む実務家等の論考等におきましても、犯行の動機及び態様、犯行後の情況、少年の性格、年齢、行状及び環境その他の事情を総合考慮するという考え方や、総合考慮をする中でも犯情の悪質性を重視する考え方など、様々な考え方があるというふうに承知をしているところでございまして、いずれにしましても、家庭裁判所調査官において、非行の動機、態様、結果だけでなく、性格、年齢、行状及び環境等も含めて、少年の問題性について十分に調査を尽くした上で、その結果を踏まえて個別の事案に応じた最も適切な処分がされるべきものというふうに承知をしているところでございます。
  189. 山添拓

    ○山添拓君 続きについては次回の審議に譲りたいと思います。  ありがとうございました。
  190. 高良鉄美

    高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美でございます。  少年法質疑に入る前に、選択的夫婦別姓についてお伺いします。  アメリカ・ニューヨークで夫婦別姓のまま結婚した日本人の夫婦が婚姻関係にあることを戸籍等で公証される地位にあるということの確認等を求めた訴訟の判決で、東京地裁は四月二十一日、戸籍等で公証される地位にあることの確認を求める訴えを却下し、そのような請求は棄却しました。が、理由中で、日本でも婚姻自体は有効に成立していると認定し、この判決は五月七日に確定しました。  婚姻が有効に成立するか否かは、配偶者としての相続や、あるいは婚姻中に生まれた子供が嫡出子とされるかなど、実体法上の取扱い影響すると考えられます。また、戸籍においてその婚姻関係を公証することができないと、婚姻関係にあることなどの証明などの負担が生ずることになります。  夫婦の氏の合意があるかないかによりそのような差異が生じることは好ましくなく、法務省としてこのような差異が生じないように取り組む必要があると考えますが、法務省の見解をお伺いをします。
  191. 小出邦夫

    政府参考人小出邦夫君) お答えいたします。  御指摘の東京地裁の判決でございますが、外国の方式に従い夫婦が称する氏を定めないまま婚姻の手続を行った原告らが戸籍等により婚姻関係の公証を受けることができる地位の確認を求めた訴えについては不適法として却下するとともに、そのような公証の方法を設けていない立法不作為が憲法第二十四条に違反するとの原告らの主張を認めず、その国家賠償請求を棄却したものでございまして、国が全面的に勝訴したものと承知しております。  この判決の理由中におきまして、米国で日本人の男女が婚姻後の夫婦が称する氏を定めずに婚姻の手続を行った場合については、我が国においても、夫婦の氏を定めるまでの暫定的なものとされていますが、婚姻自体は有効に成立しているとの判断が示されたものと承知しております。この判断部分は判決理由中の判断でございまして、政府としましては、このような場合については我が国において婚姻が有効に成立していないと考えていることに変わりはございません。  この訴訟では夫婦同氏制度を定める民法七百五十条の位置付けが争点となりましたが、この規定の合憲性につきましては、これとは別の事件の特別抗告審で既に最高裁大法廷への回付がされており、今後改めて司法の判断が示されることが想定されます。  法務省といたしましては、夫婦の氏に関する具体的な制度の在り方に関し、国民各層の意見、国会における議論の動向や司法の判断を注視しながら検討を進めてまいりたいと考えております。
  192. 高良鉄美

    高良鉄美君 いずれにしても、今、最高裁の判断を注視するということでしたけれども、この判決が全く意義を持っていないというわけではなくて、今、暫定的にせよ、やはり有効であるということがあるわけですね。  それは、今、判決に対して法務省が、行政機関がこの判決の中身を勝訴だということではあるんですけれども、やはり法の支配ということを考えますと、これ人権の問題ではないかと。法の支配の中身の人権の問題、それから憲法の最高法規性、さらには司法権に対する優越性の問題ですね、司法権の優越、あるいは適正手続と。こういった中身を常に法務省も、大臣の最初の所信の表明でもありましたし、内閣でも法の支配をこの国の中心として訴えているわけですから、この問題がやはり今回、次の質問にも関わってまいりますけれども、一つの人権の問題、あるいは適正手続、あるいは憲法の最高法規性の問題と関わりがあるということを申し上げたいと思います。  少年法改正案について次に質問したいと思います。  五月六日の参考人質疑は、三人の参考人が少年法は有効に機能していると答弁され、改めて立法事実が脆弱であることが示されました。特に、法制審議会のメンバーだった橋爪参考人は、少年法が機能していることを認めた上で、選挙権年齢が引き下げられたこと、そして民法成年年齢が引き下げられたことを法改正理由として挙げられました。  成年年齢の引下げについては多くの問題があり、沖縄の風として以前にも委員会質疑で問題提起をしましたが、審議当時に懸念は払拭されませんでした。そこで、本日は対政府質疑の初日になりますので、まず法改正の根拠とされた成年年齢の引下げの問題について質問します。  二〇〇九年の法制審議会は、十八歳への引下げを適当としながらも、引下げの法整備を行うには、若年者の自立を促すような施策や消費者被害の拡大のおそれ等の問題点の解決に資する施策が実現されることが必要であるとしていました。  そこで、若年者が消費者被害に遭わないようにするため、実践的な消費者教育がどのように行われ、若年者が消費者被害を受けた場合の救済体制がどのように整備されているのか、消費者行政への国の支援の充実が行われたのかどうかを消費者庁の参考人にお伺いします。
  193. 片岡進

    政府参考人(片岡進君) お答え申し上げます。  近年、若年者における情報商材などの消費者被害が増加していること、それから、来年成年年齢が引き下げられるということから、消費者庁といたしましては、若年者の消費者被害を防止することは最重要課題の一つであるというふうに考えているところでございます。  このため、これまで、消費者の自立を促し、また消費者被害を防止するための消費者教育の充実、被害救済としては、主として若年者に発生している被害事例を念頭に置いた消費者契約法の改正等の制度整備や厳正な法執行、また消費者被害の相談を受ける消費生活相談窓口の充実、周知などに取り組んできたところでございます。  地方消費者行政に対する国の支援についてのお尋ねがございましたけれども、地方公共団体における若年者への消費者教育の推進につきましては、平成三十年度以降、地方消費者行政強化交付金を通じた支援を行ってきているところでございまして、令和二年度には全国で二百を超える事業に対して交付金を交付して支援をしているところでございます。  また、消費者教育の取組としましては、成年年齢の引下げをも見据えまして、平成三十年二月に若年者への消費者教育の推進に関するアクションプログラムを関係四省庁で取りまとめて、契約成立時期等について学ぶことができる教材であります「社会への扉」などを活用した実践的な消費者教育が全国全ての高校で行われることなどを目標に掲げて集中的に取組を行ってきたところでございます。  また、令和三年度は成年年齢引下げ前の最終年度に当たりますことから、更に取組を強化するため、成年年齢引下げに伴う消費者教育全力キャンペーンを、関係四省庁の連携の下、去る三月に決定をしたところでございます。  消費者被害の最新の状況にも留意をしながら、若者に対して消費生活上の契約や家計管理等に関する教育、また消費者被害防止に資する教育の取組を更に強化し、関係四省庁が連携をして地方公共団体、大学等、関係団体、それからメディアなどを巻き込んだ重層的な取組を行っていくこととしているところでございます。
  194. 高良鉄美

    高良鉄美君 取組の数々を御紹介いただきましたけれども、これ来年施行であるということを考えますと、もう既に一年は切っていると。そういう中で、何年か掛けて取り組んできたということがあるわけですけれども、これは地方自治体も巻き込んでいろんなキャンペーンをなさっているということでした。  今回、少年法改正に関しましては、これから議論していくだけじゃなくて、本当にもしその十八歳、十九歳の問題というのを取りかかるのであれば、これ相当な覚悟を持ってこのようなキャンペーンでしっかりやらないといけないということも含まれておると思うんですね。しかしながら、この中身を、やっぱり来年施行される際にどれぐらいこのとおりのキャンペーンがうまくいっているのかと注視したいと思います。  次に、養育費について。  実務において、特別の事情がない限り養育費の支払終期は二十歳に達する日の月までとするのが一般的であり、成年に達した子については養育費の支払を受ける対象になっていないため、成年年齢が十八歳に引き下げられるということになれば、これは養育費の支払終期が早まるんじゃないかと、そういう懸念がありました。  また、成年年齢引下げの結果として、大学は成年になった者が行くところ、まあ十八歳以上になりますから、であり、監護している親が裕福であるか、あるいはもう自分の力でお金を調達できた者が行くところというような風潮が生まれ、養育費としての大学の学費を分担すること自体がなくなってしまうんじゃないかという懸念もありました。  養育費の支払終期が早まるということについて法務省としてどのような取組をなされているか、お伺いします。
  195. 小出邦夫

    政府参考人小出邦夫君) お答えいたします。  平成三十年の民法改正により成年年齢が十八歳に引き下げられるわけでございますが、親子の扶養義務の有無、これは子が成年年齢に達しているか否かと直ちに連動するものではございません。  したがいまして、子が十八歳の成年に達した後であっても、学生であるなど経済的に自立することができない場合には、子を監護していない親は引き続き養育費の支払義務を負うと考えられるため、養育費の支払の終期は必ずしも子が十八歳の成年に達したときとは言えないと解されるところでございます。  この趣旨を明確にするため、法務省では、離婚届書に設けられている養育費等に関する取決めの有無のチェック欄に付した説明書きについて、平成三十年にその記載内容を見直し、成年年齢の引下げと養育費の支払の終期が連動するかのような誤解が生じないように工夫をしたところでございます。  具体的には、養育費の分担の取決めに係るチェック欄におきましては、従前は未成年の子がいる場合としていた記載を経済的に自立していない子と改めまして、さらに、その直後に括弧書きで未成年の子に限られないと、その旨を記載しまして、成年に達した後も養育費の支払義務を負う場合があること、これを明確にしたところでございます。  この見直しは法務省ホームページでも周知しているほか、子供がいる夫婦が離婚をする際に考えるべき内容等を説明した法務省のパンフレットにおいてもQアンドAの形式で説明しているところでございます。  この養育費の支払の終期の点も含めまして、養育費など子の監護に必要な事項については、子の利益を図る観点から父母の離婚時に必要な取決めがされることが望ましいと考えられます。  そこで、法務省では、離婚を考えている方に向けた専用のウエブページを開設したり、自治体の戸籍窓口におけるパンフレットの配布等に取り組んでまいりました。さらに、養育費等の取決め促進の観点から、本年四月、離婚届書の標準様式を変更し、養育費について公正証書による取決めの有無の記載欄を追加したほか、相談先である法テラスに関する情報提供の追加をし、またチェック欄の趣旨等の説明動画を提供し、QRコードからアクセスできるようにするなどしたところでございます。  法務省といたしましては、委員指摘の養育費の支払の終期の点も含めまして、引き続き、離婚を検討している方などに向けて必要な情報を適切に提供することができるよう、広報、周知にしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
  196. 高良鉄美

    高良鉄美君 成年年齢の問題とは別の形で経済的自立というのが一つのメルクマールというんですか、基準になっているとは思うんですけれども、やはりそういった面でいいますと、子供の利益を尊重するというようなことの視点も加わって、随分配慮された形で、この成年にこだわらずもう一つの視点から取り組んでいるということについてはやっぱり重要なことかなと思っております。  厚生労働省にお伺いします。  厚生労働省が四月三十日にまとめた社会的養護経験者の調査結果では、高校を卒業すると経済的自立がしていなくても養護施設から出ていかなければならないという十八歳の壁があることが分かりました。十八歳は大人だから大人と同じ責任を負うべきだという考えがある一方、少年たちは未熟で支援や保護が必要という声もあります。  厚生労働省は、社会の扉を開いて困難に直面した十八歳にどのような支援を行っているのか、伺います。
  197. 岸本武史

    政府参考人(岸本武史君) お答えいたします。  児童福祉法におきましては、児童養護施設等に入所する社会的養護が必要な子供の年齢を、原則は十八歳としつつ、必要に応じ二十歳まで延長できることとしております。また、退所後も二十二歳の年度末までの間、児童養護施設に居住できることとする社会的養護自立支援事業を実施しているところでございます。  これらの年齢要件につきましては、令和四年四月の成年年齢見直し後におきましても、対象となる方々への支援の必要性を考慮いたしまして維持をするということにしております。この点につきましては、これまでも局長通知や全国会議等を通じて周知を図ってきたところでございますが、令和四年四月に施行を控えていることを踏まえまして、今年度中に改めて自治体や施設関係者等に対して周知を行いたいと考えております。
  198. 高良鉄美

    高良鉄美君 先ほど法務省の捉え方、それから厚生労働省の捉え方を含めて、成年年齢に達しても未成熟なりあるいは自立をしていないという問題があって支援が必要だということでは、そういう認識の中で取り組まれているということが分かりました。特に厚労省の方では、年齢も十八を超えているからということではなくて、やはり二十歳まであるいは二十二歳までと、そういう視点からきちんと経済的な部分での支援ということを考慮しているということを改めて認識をいたしました。  最高裁にお伺いしたいと思います。  少年法改正については、少年事件の現場に近い方ほど反対あるいは懸念の声が上がっております。先日も大山参考人から、少年院の教官の親身の接し方、そういったような存在が大きかったというような話がありました。また、家裁の調査官からも、現場ではもう危惧の声というのがあります。  昨年の五月二十六日には、少年事件を担当したことのある元裁判官百七十七人が法制審議会に意見書を出されました。また、裁判官や弁護士、法学者などで構成する日本女性法律家協会の皆さんもいち早く意見書を出されました。三月十六日の委員会でも申し上げましたけれども、少年犯罪を防ぐのは厳罰主義ではないと、事件の深層を探り少年を立ち直らせることという少年法の理念がゆがめられることへの懸念だったと思います。  二〇一八年十一月二十二日の法務委員会で「家庭裁判所物語」の受け止めを尋ねられた最高裁の手嶋家庭局長は、感銘を受けましたと答弁されました。何に感銘を受けられたのか、再度お伺いしたいと思います。
  199. 手嶋あさみ

    最高裁判所長官代理者手嶋あさみ君) お答え申し上げます。  かつて御答弁させていただきましたとおり、家庭裁判所創設の経緯やこれに関わった諸先輩の思いに深い感銘を受けた、その思いは今も変わっていないところでございます。  家庭裁判所は、家庭や親族間の問題が円満に解決され、非行に及んだ少年が再び非行に及ぶことがないよう、事案に応じた適切、妥当な措置を講じ、将来を展望した解決を図るという理念に基づいて創設された裁判所でありまして、こうした理念が「家庭に光を、少年に愛を」という家庭裁判所創設当時の標語にも込められているというところでございます。また、この家庭裁判所の創設に関わられた諸先輩が戦後の非常に厳しい状況の中でこの理念を掲げて奔走、奮闘されたということに非常に感銘を受けたところでございます。  そのような意味でも、今般の法改正審議、検討に際して、現行の少年法の下における家庭裁判所の調査、審判等の手続について、少年の再非行防止と立ち直りに有効に機能しているという御指摘をいただいてきていることを大変感慨深く受け止めているところでございます。  法制審におきましても、現在の家庭裁判所における実務の運用について十分に御説明の機会をいただき、同様の現状認識の下で御議論いただいたものというふうに承知をしております。  その上で、今般の少年法改正の当否につきましては、基本的には立法政策の問題であるというふうに承知をしているところでございまして、裁判所としては意見を述べる立場にはないものというふうに考えておりますが、いずれにせよ、改正法が成立した際には、国会での御審議法制審議会での議論も踏まえて、少年の再非行防止と立ち直りに向けて一層の適切な運用に努めてまいりたいというふうに考えております。
  200. 高良鉄美

    高良鉄美君 局長の今の御答弁、感銘を受けた中身を非常に知ることができました。「家庭に光を、少年に愛を」というのは現在も本当に引き継がれていると私は信じております。  やはり法制審の質疑等々の中にこの家庭裁判所というのがどういう位置付けになるのかということを考えますと、立法政策の問題だというお答えをしましたけれども、私は、裁判所は当事者だと思うんですよ。もう一番中心だと思うんです。この家庭裁判所ができてきた過程というのを、そのプロセスを考えますと、これまでなかったものなんですね。それはもう戦前にはなかったもの、それで裁判所という形になった、少年審判所がですね。  こういったところの本当の理念というのを考えますと、やっぱり家庭裁判所にしても、先ほど一番最初に言いました法の支配からいっても、裁判所の役割って非常に重要だと思うんです。だから裁判所は、私は、以前の少年法改正のときには裁判所を挙げて法務省に対して意見書を出していますよね。それも、政治の問題だ、立法政策の問題だというよりも、やはり裁判所がどういうふうな姿勢で向かうんだということを強く強調されていたというふうに私は記憶をしております。  今回、少年法という法の場合に、まあ法という字のそもそもの起源は、水の中に去ると書きますけど、これは島流しのことなんですよ。水を周りにやって真ん中から去っていったらここだけで、もう刑罰が法だったわけですよ。しかし、今の時代は、刑罰が法ではなくて、人権保障が法なんですね。そういう取組をしないといけない。今、漢字の起源からいっても、これはもう相当、紀元前かあるいはそれぐらいの時代にできた考え方なんですよ。やっぱり、基本的人権の尊重というのがあるのはやはり法の支配の根本ですので、そこに向かって是非家庭裁判所が、最高裁が私は頑張ってほしいなと思います。  最後に一つだけ言っておきますと、今回のこの刑法の問題というのが、一般的な成人の刑法の問題というと、憲法でいうと三十一条から四十条まで、刑事被告人権利あるいは被疑者権利というのがいろいろ手続も置いて入っていますけれども、少年法というのはそれとは違うんですよ。教育の問題であるということになると、これ憲法二十六条の問題なんです。児童福祉等も最初にいろいろありましたけれども、児童福祉というのは二十五条なんですよ、福祉の問題で。そうすると、全く違う法形態のところから同じようにやろうと、だから、十八だからというこの問題とは全く別なんですね。だから、そこの部分を捉えていくというのが、私たちは法の支配を考えるときに、本当にこれが大事なことなんじゃないかなと私は思います。  そういうことを訴えながら、今回、これで終わりたいと思います。ありがとうございました。
  201. 嘉田由紀子

    嘉田由紀子君 ありがとうございます。碧水会の嘉田由紀子でございます。少数会派にも時間を割り当てていただき、ありがとうございます。  今回のこの少年法改正の問題で、まず、本日、資料を出させていただきました。少年法で、言わば加害少年と、男女おりますけれども、加害少年の生育歴なり家族環境というところをまず最初に見ていただき、法務大臣質問させていただきたいと思います。  資料一では、少年院入所者の保護者の状況と虐待を経験した入所者の比率が示されています。例えば、実の父母に育てられた少年院入所者の割合は男児で三三%、女子で二六・三%です。実は、離婚の問題の中で、四人に一人の子供が離婚を経験しているということで、そうすると、四人に三人は離婚を経験していないわけですから、実父母に育てられている子供さんは七五パーかというような数値になると思うんですけれども、ここで実父母に育てられている男児三三パー、女子二六パーというのはかなり乖離がございます。  私自身はこの法務委員会で一貫して日本の子供の幸せづくりと未来ということを考えておりますけれども、今、本当に日本は子供の数が少なく、少子化の問題で、法務大臣もチルドレンファーストと言っていただいております。こどもの日の新聞記事、皆さん見ていらっしゃったと思いますけど、昭和二十五年、私がちょうど生まれた年、三千万人子供さんおられました。今、千四百九十三万人、半減です。そういう中で、一人ずつの子供たちをいかに言わば愛情を持って丁寧に育ててあげるかというのは、これはもう国家的使命だと思います。  そういう中で、今回、この少年法改正に対しては、私自身は基本的には、後からまた述べますけど、立法事実も少ないし、何よりも子供のニーズに寄り添っていない、今回の加害と言われる子供たちは生育歴あるいは環境などで被害者ではないかということを最初に申し上げたいと思います。  そして、身体的な虐待の問題ですけど、男児で二七パー、女子で三九・八パー、女子については更に二・三%が性的虐待を受けております。  これ、資料一にございますけれども、先日の参考人質疑で川村百合弁護士が、実はこれは申告制なので、自分が外から見たら虐待に相当するような加害をされていても自分でそう思わない子供たちが多い、川村弁護士によると、ほぼ一〇〇%の子供たちが何らかのネグレクトなり虐待を受けていたんじゃないのかということを現場の声として言っていただいております。  そういう中で、生育環境やあるいは様々な育てられた環境の中で、法務大臣に、少年事件の加害者の特徴について詳しく御説明をいただけましたら幸いでございます。
  202. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 少年事件加害者のうち少年院の在院者につきましては委員がお示しいただいたこの資料一のとおりでございますが、被虐待経験があると申告をする者が一定割合いらっしゃいます。特に、女子の少年につきましては入院者の半数以上が何らかの被虐待経験を有しているなど、それぞれ多様な課題を抱えているものと承知をしているところでございます。  一般的に、非行は資質上及び環境上の問題が複雑に関連をして生じておりまして、こうした特徴と個々の犯罪行為との関係、また評価のことにつきまして一概に申し上げることは困難でございますが、少年院の在院者のこの調査におきましての、申告ということではございますが、非常に厳しい状況の中で子供たちがいるということについては私自身は深刻に受け止めているところでございます。  少年院におきましてこうした個々の在院者の方々に対してどのように対応するかということが大変大事でありまして、この一人ずつ、お一人お一人の特徴に応じた対応をしていくということが非常に重要であると思っております。  例えば、在院者が他者への不信感などを有していることを踏まえまして、法務教官との間で深い信頼の関係を構築するということ、そしてその基盤の上に初めて個々の在院者が抱える課題にしっかりと応じた指導ができるということでありますので、そういった指導ができるような環境については計画的に実施をしている状況でございます。  また、再非行防止に当たりましては、何といっても家族関係の調整、改善が必要でございます。そういった在院者に対しましては、家族プログラム、またコミュニケーションスキルの向上に向けた指導も行っている状況でございます。特に女子の在院者におきましては、自傷とかあるいは摂食障害などの問題を抱えている女子在院者が多いということでございますので、こうした方々に対しましては、特別のプログラムを通じて、この自尊心を取り戻すための働きかけを重点的に行っている状況でございます。  どのような特徴を持つ在院者でありましても、再非行防止におきまして、特に少年院の出院後のサポート体制の構築、これは大変重要でありまして、引き続き、少年院在院中から更生保護官署やまた福祉関係機関と連携を図り、帰住先の確保、また円滑な社会復帰に向けました支援、こうしたことにつきましても計画的に進めていくことが重要と考えております。
  203. 嘉田由紀子

    嘉田由紀子君 御丁寧にありがとうございます。  先ほど来、家庭裁判所の役割、また少年院の役割、本当にある意味で、山添議員も言っていらっしゃいましたけれども、ここのところ少年犯罪が少ない、これは逆に皆さんの御努力のおかげだろうと思いますけれども、検挙数は平成十五年以降急激に減少しているわけです。つまり、少年犯罪の件数減っている。それなのに、今回のように少年法を厳罰化あるいは刑罰化という形で厳しくしているわけですけれども。  そもそも、そして国民の間には、いや、少年犯罪は増えていると、イメージとしてはそう思われている。そうしたら、まず法務省としてやるべきことは、国民の間に事実を事実として正確に伝えることではないでしょうか。そして、法制審議会でもきちんと結論が出なかった、三年やって結論が出なかった、そのことをもっともっと国民に呼びかけて、実は刑法犯の検挙人数減っているんですよ、それでも皆さんが増えていると思っているのは、今のネットワーク社会とか情報の問題があるんですよということを、例えばせめて二、三年、国民の間に広げていただいて、同時に、今、日本社会にとって一人一人の子供がとっても大事なんだと、その大事な子供を社会全体で育てていくという、そういう姿勢が必要なんではないでしょうか。  先ほど高良議員も言っていらっしゃいました、法というのはまさに水を去るというところで、社会の中で一番弱い立場の人たちを守っていただくという意味では、この立法事実がそもそも今回の刑罰化、厳罰化にはないのではないかと。法務省さんの御認識をお伺いしたいと思います。
  204. 川原隆司

    政府参考人川原隆司君) お答え申し上げます。  今回の少年法改正の立法事実についてでございますが、御指摘のとおり、少年による刑法犯の検挙人員数は全体として減少傾向にありまして、少年法に基づく現行制度は、十八歳及び十九歳の者を含め、少年の再非行の防止と立ち直りに一定の機能を果たしているものと認識しております。  本法律案は、十八歳及び十九歳を取り巻く社会情勢の変化を踏まえ、これらの者について少年法においてもその立場に応じた取扱いをするためのものであり、現行制度に問題があることを理由とするものでもなく、また、お尋ねのように、厳罰化を図ってより重い処分、処罰の実現を追求しようとするものでもございません。  本法律案の立法事実について改めて御説明申し上げますと、そもそも少年法適用年齢につきましては、選挙権年齢を十八歳に引き下げる公職選挙法等の一部改正法の附則により、国会の御意思として、民法成年年齢とともにこれを引き下げるかどうかの検討が求められたものでございます。  そして、公職選挙法及び民法改正等により、十八歳及び十九歳の者は国政に参加する権利や経済取引の自由等の重要な権利、自由を認められ、責任ある立場社会に参加し、様々な分野で積極的な役割を果たすことが期待される立場となり、また、親権者の監護権の対象から外れ、基本的な法制度において一般的に自律的な判断能力を有する主体として位置付けられたことからいたしますと、刑事司法制度においてもその立場に応じた取扱いをすることが必要であり、かつ、刑事司法に対する国民の理解、信頼の確保という観点からも適当であると考えられるところでございます。  そこで、本法律案は、少年法改正し、十八歳及び十九歳の少年の特例等を定めることとしたものでございます。
  205. 嘉田由紀子

    嘉田由紀子君 ありがとうございます。  実は、この立法事実がないということの一つの傍証ですけれども、先ほど清水議員も言っていらっしゃいましたが、審議会で議論してきたところの方向と違うものが与党PTで出て、その与党PTのところで、六か月で急ぎ厳罰化に行ってしまったと。私は、これは一貫して家族法のところでもお伺いしておりますけれども、審議会の中が、言わば行政職の皆様が、判検交流の、その権限を持った行政職の皆さんが人事交流の中で、どちらかというと法務省が先走ってやってしまわれたということはないのでしょうか。  この辺りを何としても、国民の皆さんの利害としては、子供を一人ずつ大事にしてほしいということの結果が今回の立法には入っていないということを、もう答弁は結構です、御指摘をさせていただきます。  そして、この間も、参考人の中で大山さんという方が、少年院でいかに自らが立ち直ったかということ、本当に勇気をいただく御発言いただきました。また、今日、資料二として、戦慄かなのさんの新聞記事を出させていただきました。収容二年間、少年院で自分が変わることができたと。小学校一年で両親が離婚して、母と子、母子家庭になり、まさにお母さんから殴る蹴るの暴力、食事がないとか、そういうことで、大変厳しい子供時代、万引きをしてしまい、そしていわゆるJKビジネスなどに入ってというところで少年院に収容された。そこでいかに温かい雰囲気で自分自身を見詰めることができたかと。教務の教官の皆さんの言葉は一つずつ心に刺さってきて、そして内省の時間、自ら振り返ることができたということを切々と訴えておられます。  先日の大山参考人のお話と共通ですけれども、やはり子供たちを大事に一人ずつ育てていくには、例えば離婚家庭で片親で苦しんでいる、あるいは様々な障害を持ちながら、発達障害など持ちながら社会的支援がない、そういうところで犯罪を犯してしまった子供たちは、社会全体としてサポートする方向に行かなきゃいけない。それが社会を代表する言わば法務行政への一つの期待だろうと思うんですが、今回の場合にはやはり逆方向に行っていると私も思わざるを得ません。  そういうところで、法務大臣に、十八歳、十九歳を大人並みに扱って罰する必要どこにあるのか、確認をさせていただきたいと思います。
  206. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 今般の本改正案について提出した背景におきましては、まさに公職選挙法の改正によりまして、十八歳及び十九歳の者は選挙権を与えられる、また国政に参画をする権利を得るとともに、国会議員の選挙という公務に参画をする義務を負うことになったところでございます。また、これらの者は、民法上の成年として経済取引の自由を認められるとともに、親権者の監護権から外れ、自律的な法的主体となるに至ったところでございます。  これらによりまして、十八歳及び十九歳の者は、社会において責任ある主体として積極的な役割を果たすことが期待される立場として位置付けられたと言えるところでございます。  そこで、これらの者については、少年法適用においてもその立場に応じた取扱いをすることが適当というふうに考えたところでございます。その上で、本法律案につきましては、十八歳及び十九歳の者が成長途上にあり、可塑性を有するということを踏まえまして、少年法適用対象とする、しかし、十七歳以下の者とは異なる特例規定を設けつつも、全事件、全事件家庭裁判所に送致をする、そして原則として保護処分を行うと、この少年法の基本的な枠組み、これは維持をするということでございます。  このように、本法律案におきましては、委員指摘の大人並みに扱って罰するということを目的としたものではございませんで、家庭裁判所におきまして、個々の少年が抱える様々な事情を含め十分な調査を行った上で、個々の事案に応じた適切な処分選択が行われるというものと考えております。
  207. 嘉田由紀子

    嘉田由紀子君 御丁寧に答弁いただきましたけれども、これはまさに社会判断でございます。飲酒やあるいは喫煙は二十歳、そして、先ほど来、離婚の後の養育費については経済的必要ということで十八歳という年齢を区切らないと、今民事局長が答弁をくださいました。ですから、これはまさに社会判断、そういうところで、私自身は、繰り返しになりますけれども、教育をして支えていかなきゃいけない子供たちを厳罰化するのは大変賛成しかねるということは申し上げさせていただきます。  そして最後に、推知報道の解禁の問題でございます。  本日、自民党の山下議員も言っていらっしゃいました。また、先回の参考人の中で大山さんが、もし、自分が小さい町で少年院から帰って、そして名前が知れてしまっていたので、その自分の町では仕事できなかった、でも、隣の町だったら名前を知られていなかったので仕事ができた、立ち直れたと言っていらっしゃいました。それが今の時代のようにネットで自分の名前出されたら、もうどこにも立ち直るチャンスがなかった、これは経験者として大変重要な御指摘だろうと思います。  少年社会復帰の障害となってしまう推知報道の解禁について、事務方で結構でございます、答弁いただきたいと思います。
  208. 川原隆司

    政府参考人川原隆司君) お答えを申し上げます。  一般論として、犯罪に関する報道により、報道された者の社会復帰影響が生ずる場合があり得ることは必ずしも否定できないところであろうと思います。しかしながら、それは犯罪報道一般に妥当する事柄でありまして、少年事件特有のものではないと認識をしております。  そして、十八歳及び十九歳の者に係る推知報道禁止するかどうかにつきましては様々な御意見があるものと承知しておりますが、推知報道禁止は、少年更生に資するものである一方で、憲法で保障された表現の自由や報道の自由を直接制約する例外規定であることなどからいたしますと、十八歳以上の少年について一律に推知報道禁止するのは、委員の御質問の中にも御指摘がありましたインターネットといったものの現状を踏まえましても、責任ある主体としての立場等に照らして適当ではないと考えられるところでございます。  そこで、本法律案では、少年更生報道の自由等との調整の観点から、十八歳以上の少年については、一般的に推知報道禁止した上で、公開の法廷で刑事責任を追及する立場となる公判請求の時点から禁止を解除することとしたものでございます。  その上で、推知報道の一部解禁によって健全育成更生が不当に妨げられることがないよう、関係機関において事件広報に当たって適切に対応することが必要であると考えているところでございます。
  209. 嘉田由紀子

    嘉田由紀子君 ありがとうございます。  御答弁いただきましたけれども、あくまでも、子供たち一人ずつがいかにこの日本社会で、言わば一旦犯罪を犯してしまってもそこから立ち直りそして社会人として成長していくという、それを法務省も、また私たち国会議員も支えていきたいと思っておりますので、そういう原則からいたしますと今回の法案には大変大きな疑問がございます。  時間来ましたので、以上で終わらせていただきます。  嘉田由紀子でございました。ありがとうございます。
  210. 山本香苗

    委員長山本香苗君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会をいたします。    午後三時散会