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参考人(
田中宝紀君) NPO
法人青少年自立援助センターの
田中宝紀と申します。
皆様のお手元には、当法人の
活動紹介のパンフレットとA4横長で刷っていただきました
資料をお配りしていただいております。
私たちNPO
法人青少年自立援助センターは、元々ニートや引きこもりといった若年無業者の若者の自立・就労
支援を
中心に手掛けてきた
団体なんですけれ
ども、東京都福生市に拠点を設けておりまして、横田基地がある関係等を含めて福生市周辺に外国住民の方々が多数暮らしている、その方々に対して、特に子供たちが
支援のないまま放置されているというような状況に
対応するために、二〇一〇年度より定
住外国人支援事業部を創設しまして、両親又はどちらか一方が外国出身者である海外にルーツを持つ子供たちのための専門家による教育
支援事業、YSCグローバル・スクール及び若者のための自立・就労
支援事業を運営しております。詳しい
活動については、是非お手元のパンフレットを御参照ください。
本日は、
外国人の子供の就学問題における現状と
課題についてということで
お話をさせていただくんですけれ
ども、
お話の中で海外にルーツを持つという表現を使わせていただいたときは、
日本国籍者を含む、
国籍を問わない両親又はどちらかその一方が外国出身者という定義で使っております。また、
外国籍の子供というふうに表現をしたときは、
国籍を限定した事柄というふうにさせていただきます。
私たちの現場では、年間百二十名以上、六歳以上の子供、若者が
支援に通ってきています。約十年間に及ぶ
支援現場での
経験に加えて、実は今回、この委員会で
お話をさせていただくことになりまして、全国各地で
活動をしている
支援者の方ですとか関係者の方々に改めて最新の状況どうなっていますかということでヒアリングをしてまいりましたので、そうした
支援者の
皆様の知見も併せて共有をさせていただければと思います。
では、お手元にありますA4横長の配付
資料を御覧いただきたいと思います。(
資料映写)
表紙には、先ほど最後にも
鳥井さんも御言及がありましたとおり、SDGsが掲げる「誰ひとり取り残さない」というメッセージを記載しています。私たちの法人では、これまでに千人以上の海外ルーツの子供たちや若者たちをサポートしてきましたが、彼らの入所時に、保護者に対して必ず、今後
日本以外の国に暮らす予定はありますかということを尋ねています。すると、これまでに約九七%の御家庭が今後出身国への帰国や他国への移住は考えていないというふうに回答するんですね。
つまり、海外にルーツを持つ子供たち、私たちが日々接している子供たちは、いずれ
日本の中で成長して自立をして定着していく可能性が高い
日本社会の子供であるというふうに言うことができますが、現状ではその多くが教育機会へのアクセスもままならず十分に学べないという、まさに取りこぼされた状況にあるというふうに認識をしています。
そして、そんな状況がこのおよそ三十年間、日系人のお子さんたちが多数
日本にやってきて以来ほとんど変化なく横たわっている中で、彼らの教育をめぐる諸
課題を解決して、さらに学ぶ権利を真に保障していくためには、
外国籍の子供を含め義務教育の対象とすることがやっぱり最も有効なんじゃないかなというような声は
支援者から多数あることをまずお伝えをさせていただきます。
では、
資料の二ページ目を御覧ください。
全体として、海外にルーツを持つ子供たちの
取組については、官民問わずですけれ
ども、
外国人住民が多く集まって暮らしている
地域と、
外国人がゼロではないけれ
ども割合として一%前後しかいないよというような少ない
地域との間で、様々な面で格差が存在しているという現状があります。
資料には、
外国人集住
地域と
外国人が少ない散在
地域、それぞれのメリットやデメリットなどを記載していますので、御確認を
お願いいたします。
海外にルーツを持つ子供たちは、
日本人の子供たち以上に、どの自治体に住んでいるか、どの
地域で
生活しているかによって、受けられる
支援や置かれた環境が一〇〇となったりゼロとなったりしているような現状です。この傾向は、様々な施策や
取組が昨今充実し始めている近年、より顕著になっていると感じています。予算や人材や知識と理解のある
地域ではどんどん充実した施策を活用して先に進んでいく一方で、まだ
課題認知自体がこれからですよというような
地域に暮らしている子供たちはどんどん置いてけぼりになっているということを現場から見ていると感じます。
海外にルーツを持つ子供に関連する施策や
取組を検討、推進していく際には、是非、この自治体間格差、
地域間格差をどのように是正していくのかということを視点や配慮として必須としていただければというふうに考えております。
続いて、三ページ目に移りたいと思います。
三ページ目に掲載の表は、御存じの方も多いかと思いますが、文部科学省が令和二年三月に公開した
外国人の子供の就学状況等
調査結果の確定値から作成をしたものです。この
調査によって、義務教育年齢相当の
外国籍の子供たちのうち不就学又はその可能性がある子供が約二万人いるということで、かなり大きなインパクトをもたらしました。
一方で、この
数字を確認する際の注意点については
資料に記載をしていますが、加えて、この
データは自治体さんが把握している学齢期のお子さんの数ということなので、例えば短期滞在の
在留資格の子供ですとか非
正規滞在の子供などは就学状況を把握する前段階、この
調査では対象となっていないという点が挙げられます。
続いて、四ページから、子供たちの就学の問題について要因別に五点整理をいたしましたので、御説明をいたします。
第一に、四ページ目ですが、行政の
課題になりますけれ
ども、入学、転入時の手続に起因する不就学の発生ですね。就学案内が多言語されていなかったり説明が十分になされていないなど、まだ
対応できていない自治体があります。細かな状況については文部科学省の先ほどの表の基にしました就学状況
調査でも明らかとなっていますので、詳細はそちらを御参照いただければと思います。
また、それに対して必要な施策や
取組については昨年の二月にこの委員会において小島祥美先生が御
指摘なさったとおりですが、一点私の方から付け加えさせていただくとすると、例えば小中学校の入学時ですとか自治体への転入手続のときだけ
対応していてもカバーできない子供たちがいるというところですね。
例えば、保育園や幼稚園に就園していない未就園の家庭であったり、何らかの理由から
外国人コミュニティーからも孤立しているような家庭の場合、情報不足や誤解から就学手続まで至らないというようなケースもあります。こうした孤立リスクの高い家庭に対しては、妊娠、出産時や予防接種のタイミングなど子育て上のタイムラインに沿って、保健、医療、福祉の連携の下、家庭との
社会的接点を逃さず丁寧な情報提供を続けていくということが必要と認識しています。
二番目に、タイミングに起因して不就学となるケースがあります。
資料にはよくある事例を記載しましたが、その中でも特にお伝えしたいのが、学校側の都合によって就学待機となっているような状況です。具体的に言えば、例えばその学年の一月に来日した場合、いや、ちょっと年度終了間際で三学期も始まっちゃっているので四月まで待ってくれというふうに言われたりですとか、運動会の練習が始まっちゃって途中から参加することが難しいので、それが終わってからにしてというふうに言われるというようなケースがあります。そして、こうした
対応が同じ自治体の中にある学校であっても学校ごとに異なっているというようなケースがあって、問題です。
少なくとも、就学を希望している場合においては一〇〇%学籍を作ること、そして学校とのつながりやその責任の範囲を明確にするということが徹底されるように必要な体制や規定などの整備を行っていくことが重要だというふうに考えています。
三つ目は、
受入れ体制の不足や欠如に起因をするものです。
これ、
日本国籍のお子さんでもこういった事例があるんですけれ
ども、
外国人保護者の方がお子さんの就学を希望して自治体の窓口に行ったところ、学校が、学校側が
支援体制が何もないので
受入れをためらっていて、どこかで
日本語を学んでからある程度できるようになって戻ってきてというふうに言われ、就学手続をしてもらえないというケースです。
これについては、学校内での
日本語教育等の
受入れ体制の整備を一層いち早く促進していくということが重要なんですが、やっぱりそのための人材や予算を常時確保できるような自治体は限られているんですよね。なので、広域圏によるICTを活用した遠隔教育機会の提供ですとか通訳
制度の導入、あるいは学校の先生が恒常的に、どうやって
支援したらいいの、これはどうなのというふうに
相談ができるようなリソースセンターの設置等によって、もう本当に子供たち、日々直接サポートをする
先生方が、ああ、これがあるんだったら受け入れできるよねというような安心感のある体制構築が重要だなというふうに感じています。
あともう
一つ、
外国人コミュニティーの中で、
日本の学校に入ると外人はいじめられるよというような情報が出回っていることがあります。それを耳にして就学を見合わせたというケースが実際にあります。私たちのところにやってくる海外ルーツの子供たちも、その多くが学校の中でいじめを
経験します。その情報がコミュニティーで広まった結果、やっぱり、じゃ就学見合わせるわというような判断、引き起こしたりすることがあります。これは、海外にルーツを持つ子供たちだけが幾ら
日本語頑張っても、学校になじもうと努力をしても、解決することができない問題なんですよね。マジョリティーである
日本人の子供こそが
共生社会の一員となっていく上で必要な力を育むことができるような学校教育の中での
取組が必要だというふうに感じています。
四つ目に、移動やトラブルに起因をする不就学の発生についてです。
外国籍の子供たちの中で、
日本と外国との間を行ったり来たりするような子供がいます。その過程の中で就学や転入のタイミングを逃してしまって学校に通わないままとなるケースもありますので、これについては、出入国ですとか転出入時のタイミングで情報提供を徹底するなどすることで大使館を含め横断的な連携などを推進するということが考えられると思います。
さらにもう
一つは、学校側とトラブルになって除籍となる場合です。例えば、公立学校に在籍をしていた
外国籍の生徒さんなんですけれ
ども、学校に居場所がなくなったということで、非行ですとか家出を繰り返すような状況になったんですよね。それに対して、学校と保護者との間でコミュニケーションがうまくいかなくて擦れ違いが積み重なった結果、中学校を除籍されてしまったというケースですとか、不登校となった途端に学籍が削除されたというような事例もあります。
さらに、中学校三年学齢の場合は、特に来日時期ですとか
出席状況等によっては転入を認められなかったり卒業証書を出してもらえないということが学校長の判断で行われているという現状があります。少なくとも、属人的な判断による
対応格差を是正、防止することが必要です。そのためには、原則的な
対応基準を定めることですとか、研修による啓発、意識改革などの
取組を推進していくべきだと感じます。
最後に、五つ目となりますが、複合的な困難に起因する不就学状況の発生です。
これは、例えば
外国人保護者が病気であったり、貧困やネグレクトによるもの、保護者が女子に教育は必要ないと考えるようなケースを含んでいます。これらの困難を有する家庭の場合、幾つもの
課題を同時に抱えていることも少なくないんですよね。このような複合的困難の不就学の子供たちって、実は私たちのような教育を
中心とするNPOでもなかなか発見ができないんです。なかなかつながってこない。
ただ、こうした子供たちこそ
社会から取り残された真に
支援を必要としている存在であり、
社会全体で手を伸ばしていきたいと思っています。自治体による家庭訪問等、不就学ゼロの
取組の実施に加え、
地域住民による虐待防止のキャンペーンなんかが
参考になるなというふうに思っているんですが、情報提供窓口を設置することですとか啓発キャンペーンの展開など、発見の目を増やす、そうした不就学状態にある困難を抱えた家庭や子供を見付けていくという
取組が重要になります。
さらに、やっぱり複合的な困難に十分に
対応していくためには、教育と福祉の接合を避けて通ることができないというのは
支援者の間で合意されている事項です。
資料では、多文化ソーシャルワーカーの導入、育成というふうに記載をしました。
外国人の子供や家庭に対する十分な知識ですとかノウハウを持ったソーシャルワーカーを積極的に育てていくこと、必要な施策の創出と予算措置を是非
お願いをしたいと思います。
例えば、既にSSW、スクールソーシャルワーカーとして配置されているような方々への研修な
ども有効かと思います。家庭や子供、保護者の困難に適切に寄り添って、必要な専門性を持つ関係機関との連携を推進できる多文化ソーシャルワーカーの存在は、結果として子供たちの学ぶ権利を保障することにつながります。
続いて、六ページ目の
資料を御覧いただきたいんですけど、こちらには海外ルーツの子供たちが、ライフステージごとに幾つかのリスクの高い局面をまとめています。
例えば、
日本人家庭と比べて乳幼児年齢の未就園率が一・六倍に上っているという研究があるほか、学齢期で不就学の可能性がある子供が多数いるということ、それから、不登校出現率も実は海外にルーツを持つ子供、かなり高いんじゃないかということが全国の
支援者間では
指摘をされています。
さらに、海外ルーツの子供の
高校進学率の低さ、昨年の八月に
日本学術
会議が公開した提言書なんかでも、六割強というふうに進学率推計されていましたが、例えば
高校進学率が七割だった場合に、端的に残る三割の生徒は進路未決定のまま卒業しているんですよね。その三〇%の子供たちがどこで何をしているのかというのは、自治体さんの方で把握するすべがなくて、実態が全くつかめていないんです。この状況は
高校中退した後ですとか進路未決定で卒業した若者についても同様です。
義務教育年齢の子供の場合は、教育の外側にいる海外ルーツの子供たちに対してはボランティアやNPOによる
活動が存在しているんですけれ
ども、その量、内容、質共に
地域間格差がありますし、セーフティーネットとしての機能は限定的です。
また、十五歳以上の若者の場合、
日本人の若者に対しては
厚生労働省による
地域若者サポートステーションといった自立・就労
支援ですとか、自治体による学び直し、居場所
支援等のセーフティーネットが存在していますが、
日本語力が十分でない若者にとってこれらのセーフティーネットは機能しないという状況です。
こうした
課題を解決していくために
一つ御提案をさせていただきたいのが、
資料の七ページ目に記載をしました
社会資源の多文化
対応の推進です。
ここで言及している多文化
対応とは、
外国人も裨益者であるという視点に基づいて行われる必要な配慮や方策のこととしています。福祉、教育等の行政サービスにとどまらず、子供食堂ですとか無料塾、フリースクールといった現存する公益的な
活動について、これまで
日本人を主たる対象者や受益者としていたところから、
外国人、海外にルーツを持つ人も対象者の一部として位置付けていくことで、必要な配慮を行うことが、既存の
社会資源へのアクセスを確保していくということが重要だと考えています。
具体的な
取組としては、幾つか挙げていますが、さっきの多文化ソーシャルワーカー同様、保育士さんですとか幼稚園教諭、保健師さんなど子供と家庭に関わる資格取得者、実務者について、養成課程や免許更新時に多文化
対応スキルの習得のための研修を行っていただいたりですとか、あるいは国や行政が公益
活動団体等に委託をする
支援事業のうち子供や家庭に対する事業についてはその受益者の多様性に配慮することを求め、通訳や翻訳など配慮に必要な予算を計上できるような仕組みな
ども併せて実施をしていただくことで、全国へ速やかなセーフティーネットの波及、
社会的資源へのアクセスの確保が
実現されることが期待されます。
ちょっとそろそろ時間なんですが、最後に一点、新型
コロナウイルスの影響について、最後の
資料で言及をさせてください。
保護者の方の
経済状況が本当に厳しくなっているというのは恐らく
指宿先生の御
指摘でも出るかと思うんですけれ
ども、特に
高校受験や大学進学、専門学校への進学の時期を控えて、中三生、高三生のいる家庭が入学準備金が準備できないというような状況になっているので、何らか緊急の
支援が、
外国人家庭に限らず、
日本人家庭に対しても必要な時期であるというふうに認識をしています。
それから、
コロナ禍の中で
支援者が本当に直面しているのは、子供たちの健康と安全確保をどういうふうにしたらいいのかということなんですよね。認可外の
外国人学校ですとか私たちのようなNPOが運営するフリースクール等で学ぶ不就学の子供については、学校保健の対象外になっています。感染予防策ですとか健康管理は運営者に一任をされていて、クラスター発生時に行政が踏み込みづらいというような
課題も
指摘されています。
日本で学ぶ全ての子供たちの健康と安全確保の必要性が
コロナ禍で高まっているなというふうに思っています。一定の要件下において学校保健安全法を適用するなど、体制整備に御検討をいただきたいと思います。
二〇一八年を境に、海外ルーツの子供や
外国人住民の存在の可視化が進んでいます。子供の
日本語教育大事だよねとか、不就学の問題大変だよねというような理解を示してくださる方も本当に増えています。この変化の流れを逃さないように、子供たちが本当に誰一人取り残されない環境を
実現するために
社会全体で歩んでいけるよう、是非
皆様の御協力を
お願いいたします。
以上です。