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2021-04-21 第204回国会 参議院 国際経済・外交に関する調査会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    令和三年四月二十一日(水曜日)    午後三時四分開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         鶴保 庸介君     理 事                 今井絵理子君                 柘植 芳文君                 中西 祐介君                 川田 龍平君                 三浦 信祐君                 柳ヶ瀬裕文君                 上田 清司君                 伊藤  岳君     委 員                 朝日健太郎君                 猪口 邦子君                 小野田紀美君                 金子原二郎君                 二之湯 智君                 森 まさこ君                 山田 修路君                 吉川ゆうみ君                 小沼  巧君                 熊谷 裕人君                 田島麻衣子君                 横沢 高徳君                 里見 隆治君                 高橋 光男君                 高良 鉄美君                 ながえ孝子君    事務局側        第一特別調査室        長        清野 和彦君    参考人        公益財団法人笹        川平和財団理事        長        角南  篤君        名古屋経済大学        副学長        同大学大学院法        学研究科特別教        授        富岡  仁君        東北大学大学院        理学研究科教授  須賀 利雄君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○国際経済外交に関する調査  (「海を通じて世界とともに生きる日本」のう  ち、海洋環境をめぐる諸課題及び取組在り方  (海洋環境保全及び海洋気象に関する諸課題  への対応)について)     ─────────────
  2. 鶴保庸介

    会長鶴保庸介君) ただいまから国際経済外交に関する調査会を開会いたします。  国際経済外交に関する調査を議題といたします。  本日は、「海を通じて世界とともに生きる日本」のうち、「海洋環境をめぐる諸課題及び取組在り方」に関し、「海洋環境保全及び海洋気象に関する諸課題への対応」について三名の参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行いたいと思います。  御出席いただいております参考人は、公益財団法人笹川平和財団理事長角南篤君、名古屋経済大学学長・同大学大学院法学研究科特別教授富岡仁君及び東北大学大学院理学研究科教授須賀利雄君でございます。  参考人皆様一言御礼の御挨拶をさせていただきたいと思います。  本日は、このコロナ禍にもかかわりませず、押して御出席をいただきましたこと、誠にありがとうございます。  参考人皆様の御意見を糧に、また、これからの議論の糧にしていきたいと思いますので、闊達な御議論よろしくお願いをいたします。ありがとうございました。  次に、議事の進め方について申し上げます。  まず、角南参考人富岡参考人須賀参考人の順にお一人二十分程度で御意見をお述べいただいた後、質疑を行いますので、御協力をよろしくお願いをいたします。  また、御発言の際は、挙手をしていただき、その都度、会長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきをいただければと思います。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず角南参考人からお願いをいたしたいと思います。角南参考人
  3. 角南篤

    参考人角南篤君) 本日は、国際経済外交に関する調査会、「海を通じて世界とともに生きる日本」に参考人としてお招きいただきまして、ありがとうございます。  前回、ここへお招きいただくということで資料を用意させていただいたんですが、コロナ関係で一年延びたということで、その間にいろんな動きもありましたので、それを、情報を足したものですから、かなり資料が分厚くなってしまいまして、限られた時間ということでございますので、多少駆け足になっていたしますが、御了承いただければと思います。  私の方からは、海洋プラスチックごみの問題について、特に笹川平和財団あるいは日本財団とともにいろんな活動をしてきております。特に、私の専門であります科学技術外交という観点から、この海洋プラスチックごみの問題について幾つ問題提起も含めてお話をさせていただければと思っておりますので、よろしくお願いいたします。  それでは、お手元の配付させていただいている資料パワーポイント資料がございますけれども、それに沿ってお話しさせていただきます。  まず最初に、めくっていただきますと、現在、プラスチック汚染現状ということで、ここに幾つか数値を挙げさせていただいておりますが、特にこのコロナ禍におきましては、今日皆さんも、先生方もマスクを着用していただいておりますし、フェースシールドであったり、それからテークアウトの容器であったりということで、実はプラスチック消費量がかなり増えているということでございます。  その中において、このリサイクルというか、回収のプロセスもなかなかコロナ禍でできないということで、実はこの海洋プラスチックごみの問題についてはこの数年間でかなり山積してきているというような状況にあるんではないかというふうに思っております。  特に、発生源とされているのが、東南アジア中心に、我が日本の周辺にでも非常にこのプラスチックごみ発生源が集中しているということでございますので、日本にあるいはアジアに対してこの問題に取り組むということが非常に期待されているところでもございます。ですので、まさに、ウイズ・アンド・アフターコロナという時代において、この問題が我が国中心として非常に世界から注目されてくるということであろうというふうに私どもも考えております。  それから、後で御紹介いたしますけれども、最近は北極海でもプラスチックごみがいろいろと散見されていて、それについての調査も今やっているところでございまして、先生方も御案内のとおり、今回我が国砕氷船を建造するということを決定していただきましたので、今回、これからは北極海においてもこういった海洋プラスチックごみに関する調査日本が貢献していけるということになろうかというふうに思っているところでございます。  めくっていただきまして、こうした海洋プラスチックごみ生物への影響ということも現在幾つ研究が進んでおります。  まだ分からないところもたくさんありますけれども、いろんな形でこの海洋生物プラスチックごみを餌と間違えて食べて死んで、死亡してしまったりとか、それから、よく海外環境NGOさんなんかが映像なんかで使われている、ウミガメなんかが、捨てられた、海洋投棄された漁網に引っかかって、それで苦しんでいる姿なんかもよく使われたりするんですけれども、そういった海中に放棄された漁具による被害、ゴーストフィッシングというふうに呼ばれていますが、そういったこともかなり深刻な事例として言われております。  ですので、マイクロプラスチックを食べた魚、そしてそれを人間が食するということでの生体への影響というのはまだまだこれから研究がされないと、なかなか科学としてのはっきりとしたエビデンスまで至っていませんけれども、実際にはそういったような、漁網で苦しんでいる生物であったりとか、それから元々プラスチックそのものを餌と間違えて死んでしまうというようなことで、生物への影響ということも、海洋生物への影響ということも明らかになっているということであります。  めくっていただきますと、そういった、世界海洋プラスチックごみについては最近物すごく注目をされております。  私の経験でいいますと、G7の科学技術担当大臣会合というのは先生方も御案内だと思いますが、そのときに、かなり前から、特にドイツであったりイギリスがホスト国をしたときに、海洋プラスチックごみアジェンダとして取り上げたいということをずっと言っておりました。これを考えると、もう十年近くこの問題が国際会議等議論をされてくるというようなことになっていますけれども、特にここの四ページ目に挙げさせていただいております国連でのSDGs、特に目標十四・一というところ、これ海洋のところでございますが、を始め、あと生物多様性条約なんかでもこの海洋プラスチックごみについての問題は、国際、こういった会議議論をされてきているということであります。  そして、日本にとって重要なのがこのG20の大阪ブルーオーシャンビジョンということで、先般大阪で開かれましたG20で発表されましたこの大阪ブルーオーシャンビジョン、二〇五〇年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロに削減するということを打ち出しておりまして、これがどういう形で実行されるのかということが今世界から注目されているところでございます。  ただ、この大阪ブルーオーシャンビジョンなんでございますけれども、そのほかに、例えばその下に海洋行動の友ということでフレンズ・オブ・オーシャンアクションと、これはNGOとか、世界で非常に海洋問題について発言力のある人たちが集まってつくっているアクションコーリションというようなものなんですが、ここではもう二〇二五年までにプラスチック海洋流入を阻止するというようなことを目標に掲げておりまして、より高い、ハードルの高いターゲットを、NGOあるいは海外ではこういった動きをしておりますので、ある意味では、ブルーオーシャンビジョンはもう、現実的ではあるんだけれどもターゲットとしては世界から見るともっと踏み込んでもらいたいというようなところにまで来ているというのが現状であります。  ただ、これ実行が伴わないと、目標ターゲットだけではいけませんので、そこについてはまた後ほど幾つ事例も御紹介させていただきたいと思います。  続いて、めくっていただきまして、幾つ国際社会の動向を、日本が、我が国関係しているところを御紹介させていただきますと、一つはこのハイレベル・パネル・フォー・サステナブル・オーシャンエコノミー、これは持続可能な海洋経済ハイレベルパネルということで、ノルウェー政府が主導で二〇一八年に設立したものでございます。  これは、当時の安倍総理日本からは参加をされておりまして、現在こういった十五人のメンバーで、ほぼ各国の首脳が参加し、国連総会の前後で会議をしたりとか、そういったことでこの海洋問題について議論をしている。恐らく、メンバーレベルでいうと、これが最もハイレベルというような国際プラットフォームになっているんだと思いますけれども、そういったところで、実際、今、いろんなこの海洋環境についてのブルーペーパーを出して、いろんなアクションをまとめているというところでございます。  これにつきましては、菅総理も引き続き参加をされるということで安倍総理から引き継ぎまして、現在は菅総理参加をされています。この表明も、実は私ども財団でのシンポジウムのときに、ビデオメッセージということで、去年、菅総理の方からも海洋に対する思いを語っていただいたということでございまして、世界からも非常に菅総理参加表明に対しては感謝したいというような声が寄せられているところでございます。  めくっていただきますと、国連海洋会議、これはちょうど二〇一七年に第一回目が開かれましたけれども、今、実はコロナ関係で第二回目の開催延期になっております。これが二〇二一年に開催予定ということになっておりまして、ポルトガルのリスボンが開催地となっております。  この中でも、先ほど言いましたようなSDGs目標十四番の中にある海洋汚染の防止というものがかなり議論をされるということになりますので、こういったところでも大阪ブルーオーシャンイニシアチブについてはどんどん議論がされるのではないかというように思っています。  めくっていただきます。そして、七ページ目ですが、こちらの方で御紹介させていただいているのは、国連海洋科学の十年という取組でございます。  これは、国連が二〇一七年に国連総会において、ちょうど今年、二〇二一年から三〇年までを国連海洋科学の十年とするということを決議しております。そして、海洋科学を十年間推進することによって世界の海を健全な形にしていくんだということをうたっておりまして、これは国連を始め全世界的な取組だということになっております。  そこに挙げているのが六つのターゲットでございますけれども、それに加えて、魅力的な海という七つ目目標として立っております。この七つ目標に対して各国国内委員会というものを立ち上げさせていただいて、それでしっかりとこの国連海洋科学の十年をサポートするということになっておりまして、我が国も他国に先駆けて、つい先日、国内委員会が立ち上がったところでございます。ですので、海洋科学を推進することによってこうしたグローバルな地球規模課題日本がしっかり応えていくということで、私の先ほどの冒頭お話ししました科学技術外交という観点でも非常に期待できるところでございます。  めくっていただきまして、次からは、どちらかというと民間主体NGO主体となって国際的に活動している事例でございます。  これは、オーシャンズ・アクションデーというのが、これはCOP会議開催しているサイドイベントとして、一日、海に関係する世界NGOたちが集まって、我々もそのメンバーではあるんですが、一日掛けて海の未来について、海の重要性について議論をするということでございます。  最初の目的は、COPの中でなかなか海洋というのが入っていかないということで、海洋環境をやっている、活動をしている人たちから、なかなかこれではまずいんじゃないかと、是非COPの中にも、これは陸域中心森林のこととかいろいろ出ていますが、例えば海洋の中では、海藻なんかは海の森林でございますが、海藻が減少しているとか、海藻がCO2の吸収源になるんではないか、そういったことの大切さをもっともっとCOPの中で本格的に議論してもらいたい、それをやるために、このオーシャンアクションデーというのを設けさせていただいてやっておりました。  この活動が、実は私ども財団がだんだん主体をするようになりまして、前回は、ジャパンパビリオン、これ環境省さんと連携いたしまして、日本パビリオンがあるんですが、そこでこのオーシャンアクションデーを一日やるということで、全世界関係者がみんなジャパンパビリオンに来ていただいて、立ち見が出るぐらいな盛況の中で一日この議論をしていただきまして、小泉環境大臣にも登壇していただいて、日本取組お話をしていただいたということでございます。そういう意味では、世界から非常に我が国活動というものに注目をされているということでございます。  めくっていただきます。そうすると、九ページに、これは世界経済フォーラムワールドエコミックフォーラムで、こちらの方も、最近、海の将来についてたくさん議論がされるようになりました。  前回コロナのあれもあったんですが、ダボス最後に開かれたワールドエコミックフォーラムダボス会議にも私も行かしていただきまして、それで海の将来について議論をさせていただきました。特に世界経済界方々スタートアップで財を成したような、セールスフォースのベニオフさんとか、非常にこの海の問題に関心を持っているキーメンバー方々がいらして、そういう方々が、是非海洋問題をやりたい、それについては日本にも是非参加してもらいたいということで、私ども一緒にこういったことも、ワールドエコミックフォーラムダボスの中でもやらしていただいているというところでございます。  めくっていただきますと、アワオーシャン、時間の関係で余り詳しく行きませんけれども、これは実は非常に重要な会議でございまして、何が重要かといいますと、これを始めたのがジョンケリー、前の国務長官でございます。御案内のとおり、バイデン政権になりまして、ケリーさんが特使ということで先日も上海ですかね、中国に行かれて、この気候変動に関する交渉をされておりますけれども、このジョンケリーさんは非常に海洋のことに力を入れております。  これは、オバマ政権時代ジョンケリーさんの非常に強いイニシアチブ国際会議を、民間というか、政府レベルではないんですけれどもアワオーシャンというのをつくられまして、それから毎年いろんな国がホストをして、ぐるぐるぐるぐるいろんなところで開かれてきているんですが、ちょうどコロナで今延期になっていますけれども、今回、今開催を予定されているのがパラオでございます。  パラオは、アワオーシャンを初めて、このアワオーシャンという国際会議先進国じゃないとキャパが大変なものですからなかなかホストが難しいんですけれどもパラオ太平洋島嶼国の小さな国ではあるんだけれども是非自分たちの声をこのアワオーシャンで出したいんだという強い前大統領思いがあって、やりたいと。ただ、自分たちはなかなかキャパがないのでということで、私ども笹川平和財団及び笹川日本財団の方に協力お願いしたいということで、コーホストするという形でこのアワオーシャンの準備をしてきました、会場を整備したりとか、いろんなことをパラオとやって。パラオの前大統領も、アワオーシャンは、これはいろんな意味で、地政学的にも海の問題を議論する、初めて太平洋島嶼国でやるということもあって、日本には是非協力してもらいたいということで何回も日本にいらして、当時の安倍総理ともお話をして、で、日本協力するというところまで来たということでございます。  そういったアワオーシャンというのがあって、ジョンケリーさんが始めたということもありますので、これパラオで無事に開催されると一つの大きなプラットフォームとして注目されるんではないかというふうに思っております。  めくっていただきますと、十一ページ目には、エコノミストが毎年ホストしている、主催しているワールドオーシャン・サミットというのもございます。  こちらは、むしろ産業界中心に集めて、この海洋プラスチック問題なんかは中心的に議論をしながら、プラスチックに代替するような材料の開発であったり、産業界がむしろ意識を持ってこの問題にどう取り組むのかというようなことを世界的に議論をしているところでございまして、私ども一緒幾つかのイベントをやらせていただいているというところでございます。  めくっていただいて、ここから幾つか二国間でやらせていただいているバイ会談事例を御紹介させていただいております。  一つは、日中で議論されたところでございまして、これは日中環境ハイレベルパネル円卓対話というもの、これは私ども財団の場所を使っていただいて、中国とそれから日本環境省さんとの間で議論をしていただいて、合意をしていただいた事例でございます。  後で、最後に大体内容のポイントというのをまとめてお話しさせていただきますけれども、こういったバイのところでも、特に中国は、プラスチックごみ発生源ということで非常に重要な国でありますので、重要になってきています。そして、めくっていただくと、そういったことがアジア諸国で見られると。  それから、もう時間もありませんので、十四ページには、先ほど太平洋島嶼国お話、これはパラオ事例でございますが、御紹介をさせていただいておりまして、十五ページ目には、北極の話も少し紹介させていただいています。  もう時間がないので、最後に、またもし御質問があれば幾つ事例を御紹介したいと思いますが、二十ページ目まで飛ばしていただいて、ここで四つのこれからの課題ということを御紹介させていただいております。  先ほど冒頭で申し上げましたように、G20の大阪ビジョンから、さらに、今、国際社会の方ではより野心的なターゲットということでどんどん打ち出してきているという状況がございます。ですので、我が国としても、今度は具体的にこれをどういうふうに実行していくのか、実現していくのかというような議論をしていく段階にあるのではないか。  それから二つ目は、途上国への支援ということでございます。特に地政学的な議論で言わせていただきますと、私どもが思うには、インドネシアとか、先ほどパラオ事例もありましたが、そういった国々との間でこの海洋プラスチックごみ問題の解決についてしっかりと支援をしていくというようなことは、非常に自由で開かれたインド太平洋というようなところとも合致しているんではないかということで、という重要性があると。それから、TICADでもございます。TICADも、アフリカとこの問題についてどんどんイニシアチブを取れる場ではないかというふうに思っております。  三つ目は、やはり、先ほど科学技術イノベーションということで、我が国には、そういった技術をもっとしっかりと海外に、世界に対して発信していって、途上国でもモニタリングが簡単にできるような技術開発であったり標準化であったり、それから、プラごみ排出削減のためのイノベーションということで生分解性漁網開発であったりというようなこともしっかりとやっていくというようなことだと思います。  最後に、国際的な情報発信ということでございまして、G20では大成功いたしましたけれども、今、私ども関心を持ってお手伝いをさせていただいているのは大阪万博でございまして、大阪万博に向けてしっかりと、これは海の万博ということで、大阪G20そして大阪万博、この間に幾つか、もちろんいろんなありますけれども、最終的に、まずは大阪万博でその成功事例をどんどん出していけるというようなことが非常に重要ではないかというふうに思っております。  そういうときに、先ほどジョンケリーさんのことをちょっと簡単に御紹介いたしましたが、今日は先生方の前でお話をさせていただくということで、是非議員外交、つまり、政府間レベルでやるとなると、その今言ったジョンケリーさんがアワオーシャンを主導するようなことってなかなかできないと思うんですね。ですけど、この議員外交ということを是非民間と、まあ我々のようなところでもいいんですけれども、組んでいただいて、そして世界アジェンダをどんどん日本から動かしていただく、そういうことをやっていただけると、環境NGOやいろんな民間、それから企業もみんな付いてきて、ある一つの今流れになっていると思います。  もう国際社会は、民間あるいはNGOがかなりアジェンダセッティングに大きな影響力を持っております。その中で、やはりそれを主導している欧米の例を見ますと、議員方々の、先生方のやっぱり指導力というものが非常に見えますので、そういった国際会議には是非先生方にお出ましいただいて、そしてどんどん議員間のネットワークでまた外交をやっていただくのが一番こういった問題には物すごく効果があるんではないかというふうに思います。  以上、ちょっと、多少時間が過ぎてしまいましたけれども、私の方からのお話に代えさせていただきます。  御清聴ありがとうございました。
  4. 鶴保庸介

    会長鶴保庸介君) ありがとうございました。  それでは次に、富岡参考人お願いをいたしたいと思います。富岡参考人
  5. 富岡仁

    参考人富岡仁君) 富岡でございます。  本日は、このような機会を頂戴いたしましてありがとうございます。早速、報告に入らせていただきます。  船舶は、海洋における主要な交通の手段として世界経済の発展に貢献してまいりました。とりわけそれは、輸出入のほとんどを船舶に依存している我が国にとりましては極めて重要な手段であります。そのことは、本調査会におきましても、これまでるる指摘されてきたことであります。しかし、船舶は海洋の環境を毀損する要因でもありました。本日、私は、船舶によりもたらされる海洋汚染現状とそこにおける課題について、若干の私見とともに申し上げたいと思います。  お手元の、カラーではありませんが、地味なレジュメで恐縮ですけれども、レジュメに沿って要点のみ申し上げますので、詳細につきまして、もし御質問いただければ幸いでございます。  まず、船舶による海洋汚染問題の現代的展開の特徴として、私は四つ挙げることができると思っております。それぞれについて、若干のコメントを付させていただきます。  まず第一は、規制対象が極めて多様化してきているということであります。そもそもは、海洋汚染、船舶からの海洋汚染の問題は、油による汚染をどう規制するかということで登場いたしました。二十世紀になりまして、船舶の動力源が石炭から石油に変わります。そのことに伴って、排出される油が生じました。  また、油タンカーが輸送に従事するようになりまして、例えば油タンカーのタンクの洗浄でありますとか、あるいは事故に伴うものでありますとか、いずれにしましても、油による汚染をどう対応するか、汚染にどう対応するかというのが国際社会関心事でございました。レジュメの①にございます海水油濁防止条約、一九五四年に初めて、船舶の海洋環境保全に関する初めての条約でございますが、これはそのためのものでございます。  しかし、やがてそれは、油にとどまらず、そのほかの有害な、例えば液体化学物質とか汚水、廃棄物、あるいは船舶の煙突から出ます窒素酸化物等の大気汚染物質にそれが拡大するという状況になってまいります。それに対して対応した海洋汚染防止条約は一九七三年に締結されております。  やがて二十世紀の後半になりますと、新しい海洋汚染問題が登場してまいります。それは生物多様性、生態系毀損物質への対象の拡大ということであります。  ここには二つ挙げております。  一つは、①、船底に付く有害塗料を禁止する条約というのがありますが、船底に貝とかそういったものが付きますと船舶の航行に悪影響を及ぼしますので、有機スズ系の塗料を塗りましてそれを防止するということが行われてきましたが、これ自身が非常に海洋生物に悪影響を及ぼすということが指摘されております。それでまた条約が二〇〇一年に採択されております。  もう一つは、船舶のバラスト水を管理する、バラスト水に関する規制する条約であります。本日、一つこの例として、この問題を若干御紹介したいと思っております。  船舶のバラスト水といいますのは、船舶は、軍艦とか政府船舶を別にしますと、物や人を運ぶ目的で造られます。つまり、物資を積み込んだとき最も安定的に航行するように造られています。ところが、物資を降ろして空荷になったときには、実は船舶は、喫水が浅くなってしまいますので、航行時の安定性を確保するのが非常に難しくなってしまいます。そこで、タンクに海水を取り込んで安定性を保とうといたします。この取り込む海水のことをバラスト水と申します。このバラスト水の中に本来の生息地ではない生物が取り込まれまして、移動先で排出されて、そこで被害が発生するという問題であります。  海洋政策研究所の統計によりますと、日本は移出バラスト水大国であります。年間約三億トン、バラスト水を移出しております。移入する方は千七百万トンですね。ですから、日本にとってこの問題は責任が大きいというふうに言えるのではないかと思います。具体的には、生態系被害、被害は生態系とか経済活動、人の健康等に、ここに書かれているような形で被害が多々報告されております。  条約は、したがいまして、自由に排出しておりましたこのバラスト水について、例えば一定の処理をして滅菌しなければ排出できないとか、沿岸から一定の距離を保って排出するとか、そういう形で規制をするというものでございます。  時間の関係で少し急がせていただきますが、次に、さらに新しい海洋汚染規制問題が登場してまいります。これは地球温暖化の防止の問題であります。  以上の一、二のお話しした問題は、どちらにしましても有害物質を船舶から海洋に排出すると、大気汚染物質にしても排出した後は海に雨で入るわけですから、そういった規制なんですが、これは新しい問題でありまして、温室効果ガス、つまり船舶の燃料から排出されるCO2、これをいかに規制するかという問題であります。  国際海運から排出される温室効果ガスは、二〇一二時点で八億トン、ドイツ一国に相当すると。更にこれは今後拡大する見通しであります。何らかの措置をとらないと非常に拡大する見通しになると、見通しがあるというふうに報告されております。  関連する三つの条約はここにあるとおりでありますが、実は、この問題に関しましては、国際海事機関、IMOですね、IMOによって既に検討されてきております。IMOは、これまで三つのCO2削減方策を取っております。  一つ技術的措置というものでありまして、要するに、船舶の省エネを義務付けるということであります。つまり、燃料効率の悪い船舶はできるだけ航行させないという形で、期限を区切って義務付けるという形を行ってきました。  もう一つは操作的措置でありまして、省エネ運航を導入する、義務付けるということであります。例えば、減速航行でありますとか、ウエザールーティングといいまして、荒天を回避しながら燃料を効率的に消費できるように航行するというような方法であります。  この技術的措置、操作的措置について言いますと、海洋汚染防止条約にもう規定されまして、義務付けられております。  もう一つの問題、実はIMO自体が言っているんですが、この二つの措置だけでは十分ではないと、明らかに十分ではない、したがって、もう一つ市場的措置を導入する必要がある。つまり、市場的措置といいますのは、船舶所有者や運航者などに対して一定の経済的インセンティブあるいはディスインセンティブを与えることによって排出削減を図る方策であります。温暖化防止条約も、国内の温暖化防止条約もそれでありますが、例えば、消費された燃料に課金するというあれですね、それから、排出量取引制度によって、燃料についての一定の制限をした上で、排出量を取引することによって削減を図るというような形、こういった形が考えられておりますが、なかなかこれはIMOでは合意されておりません。なぜかというと、経済的影響が非常に海運業界に大きいという理由がございます。  一番目がそういうことなんですが、二番目の特徴として私が挙げることができますのは、環境保護的観点からの規制が極めて総合的、多面的となってきたということであります。これは以下のようなことであります。  元々、先ほどお話ししましたが、船舶の海洋汚染規制の問題は、海洋汚染防止に関する条約を締結することによって対応されてきました。ところが、従来からあります船舶の安全運航に関する条約、例えば海上人命安全条約とか海上衝突予防規則などがあるんですけれども、こういった条約、それから、船員資格、労働条件ですね、船員の資格、訓練等に関する条約やILO海事条約等、これらは、前者が海難の防止、後者は船員労働条件の向上に関するものです。環境保護は元々は条約の目的ではありません。  ただ、こういった、例えば船体構造によって事故が起きるとかいう問題、海難が生じる、あるいは船員の操船ミスによって例えば事故が起きて海難が生じる、海洋汚染が生じるというようなことがあったものですから、これらに対しても法目的として環境保護が明記され、環境的対応を義務付けるということになってまいります。これはすなわち船舶運航者にとって問題なだけではなくて、要するに海事グループ、海事産業全体にとって環境保護というものが大きな課題になっているということを意味するのであります。  三つ目ですが、執行方式の多元化ということでございます。  元々は、条約を制定する、しかし、その条約に違反があった場合にどう対応するかということが実は大変問題でありまして、従来は旗国主義、従来は、公海自由の原則がありますので、公海上における違反については船舶の登録国、旗国を通じて条約の執行、取締りが行われてきました。しかし、海洋汚染防止に関して言いますと、これでは実効性がないと。  つまり、旗国は実際、世界中に生じている問題を全て把握しているわけではありませんし、また便宜置籍船の問題を取ればもっと明確でありますが、どうもそれでは実効性がないということで、国連海洋法条約におきましては、沿岸国、二百海里経済水域においては沿岸国に管轄権を与えようと。そして、公海上の違反については、寄港国、船舶はどこかに寄港しますので、そういった国に対して管轄権を与えて取締りを行おうという形で対応する条約を作成しております。  この寄港国管轄権というのは海洋環境保護の観点からいうと私は画期的なものだと思うんですが、これは後でちょっと触れたいというふうに思います。  四番目は、船舶汚染損害に対する賠償、補償に関する問題であります。  船舶からの海洋汚染の防止のためには、公法的な規制、つまり抑止とか防止、取締りだけではなくて、実はもう一つ、民事責任体制を確立することが必要になります。つまり、被害者救済とかあるいは環境侵害の回復を措置をとるとかということであります。また、これは船舶管理者、運航者への抑止ともなります。  これにつきまして、近年の制度の発展が顕著であることを取り上げて私は指摘したいと思うのであります。  二つのこれについては発展の系譜がございまして、一つは、油タンカーの貨物、燃料油による汚染損害に関するこの制度の発展であります。  これは、一九六九年の民事責任条約というのがありますんですが、そこの条約で新しく船舶所有者に対する厳格責任、過失責任ではなくて結果責任ですね、結果責任を課して、船舶所有者に対しては保険を義務付けます。保険の額は、船舶責任制限条約というのがありますが、そこの上限まで保険に入れということを義務付けております。  ところが、海難事故というのは大変大規模、大きなものでありますので、なかなかこれでは十分な被害者救済が確保できないということがすぐに明らかになりました。  そこで、それに加えまして、今度は利益享受者、つまり石油業界とか電力業界ですが、石油業界などが実は基金を出しまして、基金条約を作っております。その基金から民事責任の損害賠償額を超える部分については補償するという形で対応しております。これによって、後で適用の具体例であるナホトカ号事故とか、幾つかの事件についてはこれによって補償がなされたという事実がございます。  それからもう一つの系譜でありますが、これはタンカーではございませんで、貨物船が、油を燃料にしている貨物船が座礁して汚染損害を与えた場合の民事責任に関する条約であります。  バンカー条約と申しますが、これにつきましては、実はほとんど油タンカーの条約と形式的には似ているんですけれども一つだけこの条約については特徴がありまして、船舶の所有者、油タンカーの場合は船舶の所有者のみを補償責任者としておりますが、このバンカー条約につきましては船舶所有者の範囲を拡大しまして、管理人とか運航者、あるいは用船者、これも民事責任を問う対象にしています。これは非常に大きな法的な違いであります。昨年発生しましたモーリシャスの座礁事故がございました。これは、この問題、この条約が適用されるような問題でございます。また御質問等ありましたら、また更に詳しくはお話ししたいと考えます。  最後に、終わりにというところで、私が船舶による海洋環境保全問題に対処するために必要であろうと思うことを四点申し上げて、終わりにしたいと思います。  第一点は、我が国海事クラスターの発展、海事産業の基礎基盤の確立ということが大事ではないかと私は思います。これは、海洋環境保全の国内的基礎的条件の確保ということであります。  先ほど私は、船舶起源の海洋環境保全問題が多面的、総合的になっているということを申し上げました。そうであるならば、この問題、海洋環境保全問題は、船主とか運航者のみに関わる問題ではなくて、海事産業全体で対応すべき問題であろうと思います。また、運航者や船主の場合は、実は外航海運というのは大変厳しい世界単一市場の下に置かれて、競争環境に置かれておりますので、なかなか環境保護という形で十分に対応することが難しい現実がございます。なぜ便宜置籍船が一般的かというと、そのことが背景にあるのであります。  したがって、海事産業全体で環境保護問題に対応するということが必要であるならば、海事産業、海事クラスターそのものの基盤強化、発展の確保が必要であると私は思います。  二番目は、これの国際的側面と考えてもいいと思いますが、国際的な基礎的条件の確保でありまして、途上国への技術的な、財政的等の援助の必要性はあると思います。  実は、バラスト水規制条約には多くの途上国が加入しておりません。なぜかというと、海洋環境保護のコストを吸収できない自国の事情があるからです。つまり、バラスト水規制条約に加入するためには、加入しますると、例えば船舶にバラスト水を浄化する設備を設置する義務が発生します。また、その必要な人員も配置しなくてはいけません。さらに、港には処理設備も設置することが義務付けられております。こういった非常に技術的、財政的に厳しい条件に対応するためには、なかなか途上国が直ちに加入できないという事情がございます。この条約それ自体が十数年たってから発効したというのも、そのことを物語っているのではないかと思うのであります。  したがって、そういった国際的な基礎的条件を確保するためには、どうしてもこういった国際的な、先進国全体で援助などをする法体制の構築が必要になってくるというふうに思います。  三番目は、環境、これは海洋環境保全の法的な基礎的条件の確保と言えるのではないでしょうか。日本船籍船の増加、便宜置籍船の排除ということでございます。  船舶による汚染規制を実効的に行うためには、日本船籍船の増加が私は必要であると思います。つまり、日本は実質的に船舶を運航しているという意味では世界有数の国であります。しかし、形式的には便宜置籍船にそれを委ねています。そうすることによって実際十分な海洋汚染規制の対応ができているか。  例えばモーリシャスの先日の事故では、これは実際は船主は日本会社、日本法人でありますが、籍はパナマでありました。船員は一人も日本人はいませんでした。運航ミスによって座礁したと言われております。こういう事態を防ぐためには、便宜置籍船を排除して日本籍船を増加するということがどうしても法的な基礎的条件として必要になってくるのではないかと思います。もちろんこれは、日本船籍船の増加というのは、経済的に、海洋環境保護の問題だけではなくて、安全保障上の問題でもあるというのはこの調査会でも指摘されているところであります。  最後に一点申し上げますと、これはやや法律的な問題になりますが、寄港国管轄権制度を実質化して国際公益保護の新制度を定着させてほしい、発展させてほしいと私は思います。  寄港国管轄権制度というのは、公海、地球上の三分の二が海でありますし、公海というのは極めて広範な海域を含んでおりますので、したがって、そこで発生する海洋汚染について、船は必ず港に寄りますから、港に寄港した国、港に寄った国がきちんと規制の手続を取り、また証拠を保全し、締約国がそれを協力して行うということが私は地球環境保護のためには極めて重大だと思っております。  ところが、この寄港国管轄権制度は、国連海洋法条約ではそういう制度は取れると書いてありますが、実際にはほとんど取られておりません。なぜかというと、つまり、自国の利害に直接関係しないからということが言えるかと思います。積極的ではありません。ただ、海運国日本はこの点についてリーダーシップを発揮して、例えば海洋汚染防止法などを改正してこの手続を制度化して、また国際社会で政策を進めることをリーダーシップを取ってほしいというふうに私は思っております。  以上で私の報告を終わります。御清聴ありがとうございました。
  6. 鶴保庸介

    会長鶴保庸介君) ありがとうございました。  それでは、引き続き、須賀参考人お願いをしたいと思います。須賀参考人
  7. 須賀利雄

    参考人須賀利雄君) 東北大学の須賀です。  本日は、このような機会、気候変動海洋気象へ及ぼす影響とその問題への取組について意見を述べる機会をいただきましたことを大変有り難く、また光栄に存じております。よろしくお願いいたします。  今日は、まず、気候変動が海をどう変えつつあるのかということ、それから、その変化した海が、じわじわと温暖化しているという面もありますが、これが実は極端現象を引き起こすという、そういう大きな問題がありますので、これを中心に、前半ではそのような科学的な知見について述べさせていただきます。後半では、そういう問題に対する世界取組、これを戦略的な海洋観測システムをつくってこの問題に取り組んでいくという、そういう動き中心に御紹介して、最後日本の役割と課題、これ実は、日本はこの面での戦略的な取組はやや遅れております。その点についてお話しさせていただきます。  では、一枚めくっていただきまして、まず、海洋気象への影響ということで、海洋気象学という実は学問分野ありまして、これは、大気と海洋というのは相互に、相互作用しながら緊密に結び付いて一緒になって変動すると、そういう一つの流体地球系というふうに理解されていまして、これを把握して、そこで起こる変動を解明するという、そういう学問分野、私も広い意味ではこの学問分野に携わっています。これはまさに気候システムの変動の理解というものにつながっていく分野と言えます。  気候システムというのは、そこに非常に簡単なポンチ絵を用意しましたが、非常に大きく言ってしまえば、太陽から入ってくる太陽放射、これを、これと同じ量の赤外放射として、地球放射として宇宙に出していると。この二つがバランスして安定した気候が維持されているというものです。それが、地球温暖化の問題というのは、人間活動に伴って排出された温室効果ガス、二酸化炭素が代表的なものですが、これによって太陽放射と地球放射の均衡が崩れ、宇宙に出ていく地球放射が減っていると、それによって今地球に熱がたまりつつあるというのが、これが地球温暖化の問題です。  このたまりつつある熱がどこにたまったかというのが次のページで示してあるんですが、この問いに対する答えを、気候変動に関する政府間パネル、IPCCの第五次評価報告書で明確に回答を与えています。  この図は、一九七一年から最近まで、この地球の気候システムがどれだけの熱をため込んできたかというのを時間を追って示した図になっています。一年当たり七掛ける十の二十一乗ジュールという量で、これ私もぴんときませんが、原子力発電所一基の年間発電量の二十万倍以上という、そういう膨大なエネルギーです。これを地球システムは年々年々ため込んできました。そのうち、この色分けしてありますのが、薄い青と濃い青が海にたまっていた分なんですが、海に九〇%以上がたまっていた。大気には僅か一%ですね。気温の上昇と言っていますが、それは地球温暖化の僅か一%の現れにすぎないということです。  ということで、気候変動、地球温暖化の実態を正しく理解するためには、海の変化を正確に把握する必要があるということが言えます。  一枚めくっていただきまして、四ページ目。  海のどこが温まっているかということについても、かなり分かってきてはおります。この図は同じIPCCの報告書から引用したものですが、上の図は、海面から七百メートルまでの平均水温がどのように上昇してきたかというその上昇率を十年当たり何度Cという値で示したものです。それから、下の図は、それを断面で東西方向に平均して、深さと緯度に対して温度の上昇を示したもので、このように、緯度、経度、そして深度ごとに温度の上昇の傾向は異なります。  ですから、地球温暖化の実態を正確に把握するためには、世界全体の海を満遍なく測る必要があるということが言えます。ここには示していませんが、七百メートルよりも深い深海にも熱はたまっているということも分かっております。  ここまでが、海がどう変わってきたかということを、主に熱という観点だけから言いました。これ以外にも、二酸化炭素が溶けて酸性化という問題もありますが、その点は今日は割愛させていただきます。  五ページ目。  変化した海が何をもたらすかという話で、これは一昨年、令和元年の台風十九号、スーパー台風とも言われましたが、これが東日本を直撃して未曽有の被害をもたらしたというのは皆さんよく御記憶のことかと思います。  一枚めくっていただきまして、この台風十九号というのは、異例の強さといいますか、物すごく強かったんですね。これは、通常ですと、台風というのは発達するのにある程度海面の温度が高くなければいけませんので、十月の日本付近というのは普通だと温度がもう十分下がっていて、十月に日本に接近してくる台風というのは勢力が弱まるというのが通常なんですが、このときは違っていました。そこにこの台風十九号の経路を示しましたが、その黄色で囲った部分、ここの温度が、海面の温度がどうだったかというのが次のページです。  この図、左側の図がその海面水温を示していまして、二十七度というのが、台風というのは海面水温が二十七度より高いと発達するというふうに知られていますが、この二十七度の等温線がもう本当に日本のすぐ近くまで来ていた。日本の南方はもう二十七度以上の、非常に暖かいといいますか、熱い海になっていたんですね、この十月という時期なのに。  これを通常の年と比べたのが右側の図です。これは平年の温度と比べてどうだったかというのを示していまして、赤いところは平年よりも高かったということを表しています。日本の南方は、平年よりも一度から二度高い状態だったということが言えます。この異常に高かった海面水温が、台風十九号が勢力を弱めずに日本に接近した要因の一つというのは間違いないと考えられます。  この図をよく見ますと、東海上ももっと高いんですよね。非常に高くなっていまして、実はこの東海上の温度が高かったことがこの台風に伴って東北地方に豪雨がもたらされた原因だということも、その後の研究で分かっています。それから、この高温、サンマの不漁とも関係しているというふうに考えられています。  次のページに行きますと、今、一つの例について見ていただいたんですが、日本周辺の海面水温が長期的にどう変わってきたかというのがこの左側の図です、過去についてですね、この赤い線で。年々変動していて、一度ぐらいの振幅で温度が高かったり低かったりしていますが、長期的に見ると、百年当たり一・三度程度上昇してきたということが分かります。この長期的な上昇の結果、十月に日本付近に二十七度を超えるような、そういう水温が現れる可能性は高まっているということが言えます。ですから、今後も強い台風が日本を襲うリスクは高まるというふうに考えられます。  日本の周りですね、その右側の図、場所によってその温度の上がり方が違っていまして、日本海の中央部は百年当たり二度C近く上がっています。こういう日本海の水温の上昇というのは、例えば大雪、豪雪に関係しているというふうに考えられます。日本付近の海面水温の上昇傾向というのは世界平均の二倍以上の速さであるということに注意する必要があります。  次のページ、九ページ目ですが、今後の予測ということですが、これ、海面水温の上昇というのは、地球温暖化に伴って熱を地球システムが吸収している、そのほとんどを海が吸収しているということのためですので、これは今後も続いていくと予想されます。その結果、極端現象の発生頻度が増大すると予想されるんですが、その図に示しましたのは、いわゆるRCP八・五、緩和策をほとんど何もしない場合の未来の予測ですが、そうしますと、今世紀末には最大で四度程度海面水温が世界平均で増加すると。それから、パリ協定に沿ったような緩和策を施した場合がその青い予測になりますけれども、この場合でも一度程度は上昇する。日本付近というのはこれよりも明らかに速いペースで上昇しているということには注意しなきゃいけません。  次のページに行きますと、このように温度が、ベースの温度がどんどん上がってきたことによって、海洋熱波と言われる特定の海域の海水温が極端に高い状態が続く現象、これは数日から数か月、場合によっては年をまたぐようなこともありますが、こういう現象が頻発しているということが分かってきました。この海洋熱波は、極端な気象現象、台風十九号もその例ですけれども、とか、あるいは生態系、水産業へのダメージを引き起こすということが知られています。ただ、この海洋熱波の発生のメカニズムというのは一様ではなくて、場所により、時期により異なっています。ですから、これに対策を施すためには、観測や研究によってこの現象についてよく理解する必要があるということが言えます。  この現象は、元々、アラスカ沖で二〇一四年に発生した非常に大きな高温現象以来、非常に注目されているんですが、この右側の図は、過去に、このちょうど二十世紀の間ですね、一九二五年から五四年に発生した海洋熱波と一九八七年から二〇一六年にかけて発生した海洋熱波の発生頻度を比較したものです。そうしますと、ほとんどの海域で、その赤いところは発生頻度が、発生数が増加しているということを示しているんですが、ほとんどの海域で海洋熱波の発生頻度は増加している。斜線のあるところは統計的に有意な差であるということを示しています。  IPCCの海洋・雪氷圏特別報告書、一昨年、私もこれ執筆者として関わりましたけれども、この中では、海洋熱波は頻度、持続時間、空間的な広がり及び強度に関して更に増加するというふうに予測しています。  次のページに行きまして、海の温度が上がりますと、膨張して水かさが増すということで水位が上昇する。それから、南極とかグリーンランドの氷床が解けて海に流れ込みますと、それによっても水位上昇しますので、海水位が上昇しているというのはよく御承知のことと思います。これによって高潮、極端な海面水位現象のリスクが増大しているというのがこの図の示すところです。  ちょっと小さくて見にくいんですけれども、左上に図解がありまして、これは、左側の図は、ミーンシーレベルという黒い水面が一番下に描いてありますが、これが平常の水位。これに対して、大潮で満潮であるとか、それに低気圧が来る、あるいは巨大台風が来るというようないろんな条件が重なると、月に一回、年に一回、十年に一回、百年に一回の頻度で非常に高い水位が現れるということを模式的に示しています。これは、ベースラインの平均海面水位が上がったために、従来は百年に一回しか起こらなかったような現象が毎年起こるようになるということの概念図です。  右側の図は、先ほどのRCP八・五のシナリオでいくと、百年に一回程度の頻度で起こっていた高潮が毎年起こるようになるタイミングはいつかという、その予測の結果です。日本付近を見ますと紫からオレンジ色です。紫からオレンジというのは今世紀半ばから後半ということですので、今世紀半ばから後半にかけて、日本でも従来百年に一回だった高潮が毎年起こるようになるということが予測されています、RCP八・五の場合ですね。実際には、パリ協定に従うと下の図になります、真ん中の図になりますので、白い丸もありますから、来世紀以降に持ち越せるということになります。  一枚めくっていただきまして、ここまで極端現象という話をしてきたんですが、それにとどまらず、海の変化というのは広範な影響があるという例として、海洋生態系への影響です。  海の循環が変わって、植物プランクトンの光合成、これは海洋の生態系の基礎を支えている基礎生産ということですが、これが減少する、広範な海域で減少する。そのオレンジ色のところが減少ですね。その結果、動物の現存量も減り、最終的には最大潜在漁獲量が減少するというふうに予測されています。ただ、これは様々な仮定を用いて、経験則を用いて予測したもので、より精度のいい予測のためには、海洋環境と生態系の関係ですね、これまだよく分かっていません。これに関する観測、研究が不可欠です。  このような状況の下で、どのような取組世界でしているかということをこれから御紹介いたします。  測定できないものを管理することはできないと、そういう考え方に基づいて、海洋の変化が気候や生態系、さらには人間社会へ与える影響をより深く理解し、対応するためには、持続的な海洋観測システムを構築する必要があると、そういう認識に立って、ユネスコ政府間海洋学委員会、IOCユネスコが主導して、全球海洋観測システム、これ略してGOOSというふうに呼んでいますが、こういうプログラムが一九九一年から行われています。ここでは、現場観測ネットワーク、これ現場観測というのは、衛星観測とかリモートセンシングに対して、現場で測器で測る観測を現場観測と言いますが、このネットワーク、それから衛星システム、各国政府、国連機関、個々の科学者等が参加してこの観測システムの構築を目指しているという、そういうプログラムです。  ただ、このプログラムとしてのGOOSは、システムのビジョンやデザインを策定して協働の枠組みを整備するというようなことをしていまして、実際の観測を実施する、観測システムを実際に実施していくのは各国が行うという、そういう形になっています。  これは、始まって以来様々な技術革新もありましたし、データに対するニーズも変わってきましたので、二〇一九年にGOOS二〇三〇戦略というものが発表されました。これは、幅広いユーザーの要求を満たすような、そういうシステムをつくっていこうということで、統合された全球海洋観測システム、これは、様々な分野の観測を統合し、様々な手法も統合した非常に効率のいい、そういうシステムをつくろうということですね。これによって持続可能な開発、安全、福祉、繁栄に必要な必須情報の提供を幅広いパートナーシップで実現しようという、そういうものです。  各国には、このGOOSに対応するナショナルGOOSを立ち上げて活動してほしいということが推奨されています。  このGOOSの具体的なイメージとしまして、一つ、GOOSを構成する例として国際アルゴ計画、アルゴというものを紹介します。  実は私、これに始まった当初から関わっております。これは、その自動観測ロボット、そこにあるようなものなんですが、これが十日に一回、二千メートルから海面までの水温と塩分を自動的に測ってデータを人工衛星経由で転送してくるというもので、現在約四千台のロボットが二十か国以上の協力によって展開されています。データは準リアルタイムで配信されて、地球温暖化監視、季節予報、海流予報、学術研究等に活用されているということです。  そこに各国の運用しているロボットの数を書いたんですが、日本は二百台ちょっとで全体の五%程度を現在見ているということですね。アメリカが大体半分ぐらい、オーストラリアがその次、アメリカの次で三百二十七台ということになっています。これは、各国の言わば自主的な貢献の集合体ということで、分担を決めてやっているわけではないんですね。  次に、世界各国取組のうち、非常にいい取組をしているところ、三件御紹介します。  オーストラリアは、二〇〇六年にインテグレーテッド・マリン・オブザービング・システム、統合海洋観測システムというものを開始して、これによってオーストラリアの沿岸から外洋まで様々な装置、手段を用いて観測を進めて、全てのデータを幅広いコミュニティーに使えるようにということをやっています。  これ、完全に統合された国家システムとしてやっておりまして、ポイントは、政府があるまとまった金額、ちょっと私もその金額、疎いので分かりませんが、ぽんとこうテーブルに載せて、これを使って最も最適なデザインで観測をしなさいということをIMOSに、ここに言って、IMOSは、政府、産業界、その他の利害関係者意見を取り入れながらプランを立てて実施していくと。そういう非常に、ちょっとそんなこと本当にできるのかなと思うんですが、やっているそうなんですね。  これ、二〇〇六年というと、主な現在使われているような装置が大体開発された後でしたので、非常に先進的なものを組み合わせて、そこにあるような、図にあるような様々な方法を最大限効率化して観測をしているということです。その結果、アルゴに対する貢献も世界二位になっているということですね。だから、非常にお金の使い方、効率的にやっているということになります。これがオーストラリア。  次のページ、十六ページ目はヨーロッパでして、ヨーロッパはユーロアルゴというものをかなり早くからやっています。ただ、これは非営利団体ということでやっているんですが、ポイントは、設立の目的が、ヨーロッパが必要とするデータプロダクトと便益を保証するように、その国際GOOSの全球的なインフラストラクチャーが設計されていることを確実にするというんですね。だから、国際プログラムには貢献するんだけれども、それがちゃんと自分たちの役に立つということをきちんと自分たちで、何といいましょう、監視するわけじゃないですけど、そういう方向に持っていこうという、そういう意図で動いていると、まあちょっと悪い言い方をするとそうなります。  その背景には、ヨーロッパの現場観測は断片的であって、広範囲にわたっては維持されていなかったと。それから、現場観測というのは、短期プロジェクトを通じて支援されていて、長期的な持続性が保証されていなかったと。そういうことを踏まえて、こういうことをやったということですね、ユーロGOOS。これによって大分改善されてきました。  現在は、EUレベルの調整の枠組みができまして、二〇一六年、ユーロピアン・オーシャン・オブザービング・システム・フレームワーク、これはEOOSと言うんですね。この下で活動しています。  時間がなくなってきましたので、アメリカの取組ですが、アメリカは、これ、GOOSの開始当初から自国のUSGOOSのコンセプトの検討をして、運営委員会をつくって、二〇〇二年には、そこにある、アイウースと読みますけれども、この実施計画、予算案を議会に提出して、米国のIOOSというものを開始しています。そこにあるように、生活や人生を向上させる海洋、沿岸、五大湖の情報を提供するんだというビジョンを掲げて、国家の安全、経済、スチュワードシップのニーズを満たす質の高い情報を作成、統合、発信するということを目指しているということですね。ですから、国際的な海洋観測の半分ぐらいをアメリカが大体やっているんですが、それをやりながら、国内的にはちゃんと国内のニーズに応えるような仕組みをつくってやっているということです。  ということで、時間になりましたが、あと、先ほど御紹介あった、これは国連海洋科学の十年ですね。これはSDGsを、海洋科学を革新的に進歩させることでSDGsの諸課題の解決を目指すという、そういうものだと思うんですが、このためには、持続的な海洋観測システムを確保することが重要であるということがうたわれています。これは、まさにGOOS二〇三〇戦略と調和しています。というのは、これは同じ国連機関がプランしていますので、それはある意味当然なんですが、そういうことになっています。  その中で、日本の役割と課題ということで、十九ページ目。  日本は、これまで持続的な海洋観測の先進国だったと言っていいと思います。一九六〇年代から、これ有名な気象庁の東経百三十七度定線観測というのがありまして、これは気候と海という関係世界がまだ注目していなかったときからやっていました。それから、各都道府県の水産試験場による沿岸・沖合定線観測というのも、これももう世界に誇る非常にすばらしいもの、こういうものをやってきました。  それから、アルゴの開始時には、これは実は国会議員の皆さんに相当サポートして、支援していただいて、ミレニアムプロジェクトとしてこれに日本は参画しました。これで言わばロケットスタートを切りまして、アメリカだけではもしかしたら本当に実現まで行かなかったかもしれないものが、数年の間に観測網が完成したというのは、日本の貢献が大きかったというふうに見られています。  このような事情、これまでの国際連携や海洋観測の実績から、今構築を目指しているシステムに対しても日本は期待されてきたというふうに考えていいと思います。  ところが、さっき、今お示ししたような、ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアのような、GOOSに対応するために整備している省庁、産学官の枠を超えた分野横断の統合的海洋観測システムに関する国家的ビジョンと、それから、戦略的な実施計画を策定してそれを実施するための体制というのが実は日本にはありません。  このまま行くと、言わばナショナルGOOSの体制を整備しないと、このGOOSの戦略や国連海洋科学の十年、これへの組織的な貢献が難しくなって、せっかく努力しても国際的な枠組みとか目標に合わなくて国際的な地位が低下するんじゃないかというふうに危惧しております。ここ一、二年のうちに何とかその体制の整備をしないと手遅れになりそうだというふうに危惧しているところです。  一番最後のページは、これ実はヨーロッパのEOOSのポンチ絵をそのまま借用して日本というふうに直しているだけなんですが、事情は非常に似通っておりました。戦略が欠如しているためにいろいろ問題がある。それを、ここではJOOSというふうに、ジャパンOOSというふうに仮に名前を付けましたが、これをつくることで戦略的な取組をしていく、これが必要であるというふうに考えています。  以上です。時間が超過しまして済みません。
  8. 鶴保庸介

    会長鶴保庸介君) ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行いたいと思います。  本日の質疑はあらかじめ質疑者を定めずに行うこととし、大会派順に各会派一名ずつ指名するように整理してまいりたいと存じます。  なお、質疑及び答弁は着席のままで結構でございます。  また、質疑者には、その都度答弁者を明示していただくとともに、答弁を含めた時間がお一人十分以内となるように御協力お願いをいたします。  質疑のある方は順次御発言願います。  今井絵理子君。
  9. 今井絵理子

    今井絵理子君 自由民主党の今井絵理子です。  本日は、参考人先生方、様々なことをお話しいただき、ありがとうございます。大変勉強になりました。  角南参考人へ質問をさせていただきたいと思います。  日本がIMOの設立以来、理事国であることであるとか、G20首脳会談で打ち出された大阪ブルーオーシャンビジョンの実現に向けて日本はもっと踏み込んだことをした方がいいであるとか、また、世界をリードすることが求められているのではないかなと感じております。  中でも私が関心を寄せているのは、新たな技術開発による環境保護と持続可能な経済の実現です。最近は、レジ袋の有料化であるとか、また今日委員会で使用されているストローもプラスチック製品から紙製品に変わるなど、プラスチックの使用抑制に向けた意識は高まってきていると思いますが、先ほど参考人からコロナ影響によりプラスチックのごみの総量が増えているなどといったことも私もすごく感じておりまして、新たな技術である、例えば生分解性プラスチックであるとか生分解性のものに関する何か期待というもののお話をお伺いしたいのと、新たな技術に対する日本取組課題など、お聞かせ願えたらと思います。
  10. 角南篤

    参考人角南篤君) 御質問ありがとうございます。  今おっしゃっていただいたとおり、我が国は非常にいい技術がございまして、私も幾つか、数社、実際に見て、いろんな話を聞いたこともございます。  その中で、例えばペットボトルのリサイクル、単純にリサイクルだけじゃなくて、これを分解する技術、分解も、いろんな養分に、難しいその要素に分解をしていって、そして純度の高い材料に変えていき、そしてそれを使って別の付加価値の高いものを作っていくというような技術は非常に日本の中にも持っている会社がたくさんある、幾つかあるんですけれども、そういった会社をどういうふうにグローバルスケールでこれを商品化したものを出していくのかというところの戦略は、これはやっぱり民だけではなくて政府と一緒に是非いろいろ考えていかなきゃいけないことがあると。  例えば、ヨーロッパあるいはフランスというような国では、政府の方が非常に戦略的にこうした企業を掘り起こして、しかも一緒になって国際的なスタンダードを取りに行く。つまり、要は、こういういろんな国々で、先ほどおっしゃっていただいたようなプラスチックのリサイクルとか、そういったことをいろんなところがやっているんですけれども、じゃ、どれが一番、これからグローバルスタンダードとしてどういうやり方でやるのがいいのかというのを国際的に決めていくようなプロセスがございまして、そういったところにやはり一日本の企業が出ていって、そこに自分たち技術を売るというのはなかなか難しくて、これは政府がやっぱりやっていかなきゃいけないということもございます。  そういう意味では、技術標準化戦略ということになるかと思いますが、これは先生方も御案内のとおり、これからゼロエミッションの時代で、新たな技術をめぐる、これはおっしゃっていただいたような技術をめぐる国際的な競争がますます激しくなっていく中で、そこに日本の企業の、あるいは日本科学技術の強みを生かした標準化というところにやはり行かないと、せっかくいい技術があっても世界ではこちら側を使うというようなことになって、それが今度、プラント、ESG投資とか、そういうファイナンスのメカニズムと一体になって、この技術を使っているところには投資を、あるいは融資もできる、だけど、それ以外の技術は認められていないので、せっかくこういう技術をBツーBで売りに行ってもなかなか売れないというか、そういったところの状況にもう既にあるところもありますので、そういった意味では、リサイクルのところも技術面でしっかりと戦略を立てていただいて、ここはやっぱり政府が、国がやっていくことだろうということだと思います。  ちょっとサンプルがあったかな。今日たまたま、これプラスチック漁網なんですが、こういうのが捨てられて、こういうのに魚が引っかかったりとかいろいろしています。こういうのを今、日本技術でこういうような結構ファッショナブルなバッグに変えて製造するようなところまでもうできているんですね。  ですから、問題は、捨てられた漁網を回収し、そして、こういった企業が、これそんな大きな企業じゃない、スタートアップのような会社なんですが、こういうような非常にファッショナブルなバッグに変えて、そしてこれを売り出していくと。これがどういう形でビジネスモデルとして定着していくのか、そういったことと、それから、回収していくということにおいては、これはこの会社だけではできないことで、漁業の従事者の方々とか、そういう仕組みを自治体の方あるいは政府と一体になってつくっていけばこういう技術が生きてくるということになりますので、これは今、私どもの方もいろいろとサポートをさせていただきながら、自治体の方々とも今モデルケースをつくって、それを是非スタンダード化していくような、そんなことも必要かなというふうに思っております。  以上です。
  11. 今井絵理子

    今井絵理子君 ありがとうございます。  民だけではなくて、やっぱり政府も一体となって支援していくことが重要だということをお伺いできて、また、漁網のリサイクルですか、も見れることができて、本当に参考になりました。  次、ちょっとお時間ないんですけれども富岡先生にちょっと御質問があります。  国際海運におけるGHG削減についてなんですけれども、IMOでの議論取組をちょっと事前にいただいた資料ども読ませていただいたんですけれども、一朝一夕に解決できるものではないことを知るとともに、着実に歩みを進めていることも学ばせていただきました。  富岡先生から見て、現状のIMOの取組による実効性はどの程度見込まれるのかであるとか、日本がリーダーシップを取るために、最大限の成果を出すために日本が取り組むべきことについてお考えをお聞かせ願えたらと思います。
  12. 富岡仁

    参考人富岡仁君) GHGガス削減のために果たしているIMOの役割は、非常に私は着実かつ大きいものだというふうに思っています。    〔会長退席、理事柘植芳文君着席〕  今日御報告はできませんでしたが、この資料でIMO及び日本対応というところで、IMOが二〇一八年にGHG削減戦略を採択しております。具体的に、これは、二〇三〇年までには燃費四〇%改善とか、五〇年までには、今世紀中にはGHGゼロ排出という形で、非常に具体的な政策を打ち立てた上で対応をしていくという目標を立てているところが非常に画期的だと思います。このGHG削減戦略の採択に当たっては、日本政府が、日本代表団が非常にこれは努力したと聞いております。  また、そのせいでしょうか、日本は、二〇一八年に産学公官による国際海運GHGゼロエミッションプロジェクトというのを立ち上げて、資料にも載っております。これを拝見しますと、ロードマップ作成されているんですけれども、極めて意欲的な日本政府の取組が、日本政府というか、日本による取組が見て取れるわけであります。日本は、もちろんこれまでもIMOでは、環境保護の側面だけではないんですけれども、環境保護も非常に、今の委員長、斎藤先生でしょうか、あるいは関水先生が事務局長になったりして、非常にリーダーシップを発揮しているところであります。  私は、ただ、日本政府は、日本はもっと貢献できるだろうと。それで、日本人というか、余り日本国籍にこだわるのはいけないんでしょうけど、もう少し日本は具体的に人員を送って、もう少しIMOに貢献できる方策はないか。例えば、運輸省にいる方が運輸省を辞めてから、国土交通省を辞めてからIMOに行くんでしょうか、ちょっと分かりませんけれども、その辺の人的交流とか、そういったものをもう少し活発にするような政府における方策が取れるのではないかと思います。その辺のところを少しお考えいただいて、もう少しIMOに対しては日本は貢献できるし、すべきであると思います。  実質的に、船舶について言えば、日本が一番船舶については責任を負う国であります。したがって、やはり今後の船舶関係に関する規則の定立については、日本はもっともっと貢献できるというふうに考えています。
  13. 今井絵理子

    今井絵理子君 ありがとうございました。時間になりましたので終わります。
  14. 柘植芳文

    ○理事(柘植芳文君) ありがとうございました。  小沼巧君。
  15. 小沼巧

    ○小沼巧君 立憲民主党の小沼巧です。    〔理事柘植芳文君退席、会長着席〕  今日は、貴重な御意見ありがとうございました。  まずは、須賀参考人にお伺いしてみたいと思っております。  この頂戴した資料の中の最後の二枚の中で、日本の役割と課題ということで様々述べていただきました。戦略についても述べていただいたところでありました。少し、先生のおっしゃるようなことを正確に理解するために、若干角度を変えてお伺いしてみたいなと思っておるところであります。  と申しますのも、私に言わせれば、戦略というものは何かというと、誤解を恐れず申し上げれば、やらないことを決めることであります。捨てることを決める、そこで捨てなかったものに対して資源を集中させるということが戦略の定義であると私は思っております。  という中において、様々見たときに、このような中で、アメリカもEUも含めていろんな取組をやっているという中で、あえて日本がつくるべき、研究するべき課題というか論点というのはどういうものなのか。それが日本にとってメリットとして返ってくるからこそ、その戦略というものはやろうということで理解されると思っております。  何でもかんでもというものは戦略にちょっとならないのかなと思っておりますが、その意味で、先生が考えるこの日本がつくるべき戦略、その勘どころとしてどういうことを想定していらっしゃるのか、それについて御見解をお伺いできればと思います。
  16. 須賀利雄

    参考人須賀利雄君) 御質問ありがとうございます。  捨てることを決めるのが戦略だというのは非常に痛いところをつかれたという気もしますが、日本は、持続的海洋観測に関しては様々なもう取組を既にやっています。ただ、それらの相互関連といいますか、これはこういう考え方の下に、国に対する、国のこういう戦略に基づいて、こういうデータ、情報が必要であると、このために必要である、だからこういう観測をするんだということが統一的に、国全体としてそういうものが、ビジョンがない状況で、各省庁ごとに、まあ各省庁は恐らく国の、何だろう、高次の政策に基づいてやっているとは思うんですが、それらが統一されていないといいますか、観測システムとしては統一されていないというところを言いたかったんですね。  ですから、今やっていることをやめて新しいことをやるというよりは、今やっているものも最大限それを活用しながら、それをアジャストしていくといいますか、国際的な枠組みを意識して、これは完全に国際的枠組みに従いましょうということじゃなくて、むしろ国際的枠組みの方を、自分たちがやっていること、このやり方が非常にいいんだということを主張していくというような、そのためには、国としてこういう考え方でこれをやっている、これはこういう情報を取るとこういうものに役立てられるんだ、日本ではこんないいことやっていますよという、グッドプラクティスという言い方もよくありますが、それを発信していく、そういうニュアンスで言わせていただきました。  ですから、様々な分野があると思うんですね。実際、日本海洋データをいろんな面に生かしてはいると思うんです。ただ、それが見えない、国際的にはそれが見えてこないという。それはなぜかというと、国際的な枠組みとか、その国際的な目標の言葉で言っていないからなんですね。それを発信していくためには、国としてこういう戦略でやっているというのをぱんと打ち出して、これをこういうJOOSという体制でやっていますというふうに示すことでそれができるんじゃないか、そういうふうに考えております。
  17. 小沼巧

    ○小沼巧君 ありがとうございます。  まさにおっしゃるとおりでありまして、そういったところをどう考えるのか、そしてそれをどう共通理解をつくっていくのかということが大事なのかなと思っております。  続けて、須賀参考人にもう一問、関連でお伺いできればと思っておりますが、まさにその気候変動の話で、台風の話なんかもしていただいたところであります。  私も、十九号でもそうなんですが、十五号でも被害を被った茨城県から来ておりまして、十五号では風台風でやられ、十九号では雨台風でやられということになったところであります。  なぜに気候変動対策が本当に重要なのか、それらの経験から考えると、実際に経済的な損失が物すごく起きてしまうということがあるんだと思います。保険の問題もありますし、さらには再保険とかというような問題も考えると、実は意外なほどに経済的な損失というところと気候変動、とりわけ海面の、海温の上昇についての因果関係というのは物すごい、因果関係ではないですね、失礼しました、相関関係ですね、相関関係については物すごい重要なところであるということは分かってきたと思います。  そういった観点から、まさに今回のJGOOSの中における戦略というものを考えていくということも一つの案ではないかなと思いますが、そういう案をやっていこうと思ったときに、どのような課題であったり、乗り越えなければいけない議論の対立というものが存在し得るのか、それについて御見解をお伺いできればと思います。
  18. 須賀利雄

    参考人須賀利雄君) ありがとうございます。  まさにそのポイントですね、それが今国際的にやろうとしていることなんです。海洋観測、我々、海洋観測して、それで予報、予測するという研究もして、そういう情報は出しているんだけれども、それが経済にどういうインパクトがあるかとか、そういうところがうまく結び付いていない。それは国際的にもそう認識されていまして、そこをつなげていこうというのがGOOS二〇三〇戦略であり、国連海洋科学の十年で目指しているところだというふうに理解しています。ですから、まさにそこなんですね。  それを、このまま、日本が今のままでいますと、今、体制づくりせずに行くと、そういうことをほかの国が全部やって、さあ、これがいいですよ、こういうやり方でやりましょうということになってしまいそうなんですね。そうならないために、日本として独自の体制をつくって、独自というのは国際的な枠組みを意識した体制をつくって、その中でそういう発信をしていく、それが大きな課題かと。その課題自体は、国際的なまさに課題であります。
  19. 小沼巧

    ○小沼巧君 ありがとうございます。  まさにおっしゃるとおりであると思いますし、そういった観点から今後の政策を検討していく考えにしていきたいと思います。ありがとうございます。  続きまして、それの関連で、次は富岡参考人にお伺いできればと思っております。  参考人、今までの二つの質問の中で、いわゆる国際的な枠組みに対してどう日本がコミットしていくのかというようなこともありましたが、とりわけレジュメの四ページで、(3)で、船舶の汚染規制の話、温暖化対策、GHGとの関係で述べていただきましたが、私自身の見解になりますが、この辺のIMOとの関係において日本が本当にコミットしていくべきなんだろうかということについて実は疑いを持っているところであります。  と申しますのも、GHG、じゃなくてIMOの中では、恐らくヨーロッパ勢が主体的にコミットしているんだろうと思っています。で、GHGを、影響するということに関しては、船の油の、エンジンからモーターにという電化の大きな流れになっていると思うんですけれども、それに加えて温暖化ガス排出削減取組を持っている技術、スクラバーということだと思っておりますが、それを持っているのは大抵ヨーロッパ勢であると思っています。その意味で、IMOに日本としてコミットしていくということをやると、結局、特許料だけ取られ続けてしまうんじゃないのかというような懸念もあるわけでありまして、その意味で、IMOとの関わり合いの在り方、気を付けなければいけない点があるのではないかなという疑いを持ってしまっておるところでありますが、それに関して、富岡参考人からの御見解をお伺いできればと思います。
  20. 富岡仁

    参考人富岡仁君) 前々、昨年でしたか、失礼しました、ちょっと今記憶に出てきませんが、田中誠一参考人発言しておりました。日本は、技術的な意味でいうと、例えば新しいエンジン、二酸化炭素を排出しないエンジンとか、あるいは技術的にいうと極めて優れていると、ところが、逆に、価格的にいうと船舶を造っても売れぬということを言いました。  私も、実は御指摘のようなところ、つまり、特許の関係日本がどの程度ヨーロッパ諸国との関係で優れているかというのは実は余り正確に申し上げられませんけれども、私は、かなりの程度、田中誠一先生のお話もお伺いしながら、あるいは、船舶業界が出している年報などがあります、そこでは十分そういった意味でリードできるというような記述があるものですから、恐らくその辺は可能ではないかと、競争可能ではないかというふうな意識を持っております。済みません、ちょっとお答えになっておりませんが。
  21. 小沼巧

    ○小沼巧君 ありがとうございます。  時間が参りましたので終わります。ありがとうございました。
  22. 鶴保庸介

    会長鶴保庸介君) 御苦労さまでした。  それでは、引き続き、高橋光男君。
  23. 高橋光男

    ○高橋光男君 公明党の高橋光男と申します。  本日は、三人の参考人皆様、貴重な御講演いただきましてありがとうございます。  まず、私、富岡参考人にお伺いしたいと思います。  先生による、油による汚染損害に対する責任と補償に関する国際制度につきましての論文を拝読させていただきました。そこには、今日も御説明ありましたように、今日ではこの油濁事故に対処するための司法的な体制につきましては、民事責任条約、基金条約、民間自主協定、三層構造で制度化されているとの御説明がございました。  一方で、私、関心を持っているのは、昨年のまさにモーリシャス沖での事故のように、こうしたガバナンスの低い途上国の近海でこうした事故が発生した場合に、被害を受けたその現地人の方に果たして十分な補償がきちんとなされるのかといったようなことは、この因果関係を証明することの難しいことなどから大きな課題があるのではないかというふうに思います。  この点、ふと思ったんですけど、我が国の近海で起きた場合との、どのような制度があるのかといったような、そうしたような被災者救済制度の国際比較、司法上のその国際比較の観点から御意見をまずいただければと思います。
  24. 富岡仁

    参考人富岡仁君) モーリシャスの事故についてですが、まず、これはタンカーではなくて貨物船の燃料油が流出したことによる事故であります、汚染であります。そうしますと、これは、要するに、対象となりますのは、いわゆる基金条約というのはこの対象になりません。  日本の近海、ちょっとあれですが、日本の近海で起きた場合にどうかということなんですが、実はバンカー条約というのは、一九七六年とその後、何年でしたでしょうか、八〇年か九〇年に改正されております。補償の上限が、一九七六年で現状の条約だと約十九億円、改正された条約だと約八十億円ではないかと思います。  そうすると、日本は実は改正された条約に入っております。ということは、日本はこの条約に基づいて補償を請求できます。争いが生じた場合には、事故が起きた国の裁判所に訴えることができるので、日本の裁判所が判断して補償は請求することができます。ところが、このモーリシャスの事故の場合、モーリシャス政府は旧条約しか入っていません。そうすると十九億円が限界であります。そこで、その意味では、非常にこのバンカー条約についての補償は不十分だというふうに言わざるを得ません。  この条約で実は、ちょっと先生の御質問と異なってはいけないんですが、実はこれ、船主は長鋪汽船という法人です。もう一人、商船三井が運航者になっています。つまり、船舶を運航しているのは商船三井です。長鋪汽船が船主です。船主は責任があることは間違いありません。ただ、この条約では、運航者及び、この場合は用船者と言いますが、船舶を借りて使っている三井船舶に責任がないかという問題が生じます。これは非常に大きな論点でありますが、この辺はちょっと議論が異なるところで、私としては意見もあるところですけれども、商船三井は結果的に言うと恐らく責任を問われることはないだろうと思いますが、この辺りが問題になります。  それから、どうしても、実は補償について言うと、これは不十分であることは間違いありません。したがって、ここで議論になってきておりますのは、油タンカーの基金条約のように、基金をきちんとつくって、つまり、船舶を運航して利益を得ている用船者、船舶保有者がいるわけですから、そういう人たちが利益を出し合って、基金を出し合って補償に応じるという体制をつくるのがやはり必要ではないかと思っています。  つまり、船主だけに責任を負わせて解決しようというと、船主は上限を、船主制限条約が、あれは補償の上限を定められておりますので、やはり基本的には不十分になるというふうに考えざるを得ないというところがこの事故の教訓ではないかと思います。
  25. 高橋光男

    ○高橋光男君 ありがとうございます。  責任がどこにあるのかという問題と、私は今、先ほど指摘しましたように、被災者をどうやって救済していくのかと。本当に現地の方々、大きな被害を受けている中で、ガバナンスが低いと、やはり政府が仮にその賠償を得たとしてもそれがちゃんと行き渡るのかといったような課題というのは私はまだまだあるんではないかというふうに思いますので、そうした課題というのに指摘をさせていただいた次第でございます。  そうしましたら、次に角南参考人にお伺いしたいと思います。  参考人科学技術外交、長年関与されていると。私も、大使館経験、外交官として十七年働いてきたんですけれども、その中で実感したことは、まさに外交を通じてこういう科学技術というのを振興するのはすごく大事なことだと。特にグローバルな課題SDGs、またその観点では気候変動、今ではまさに感染症対策、こうした観点は非常に重要だというふうに思います。  一方で、やはりその最前線たる大使館の中というのは非常に縦割りです。政務班があり、経済班があり、広報文化班があって、科学技術というとどこがやっているかというと、大体環境省のアタッシェとか、あと文科省のアタッシェとか、そうした方たちの仕事みたいなやはりところに域を超えない部分があると思います。  そうした中で、やっぱりどうやってそうした現場の外交官のそうした知見を高めていくことができるのか、こうした観点課題というのはまだまだ大きくあると思うんですけれども、やはりもちろん官の仕事だけではない、そういう学者の皆さんとかのそうした交流をファシリテートしていく、そうした役割も大変大事だと思うんですけれども、それに当たっての課題、御意見いただければと思います。
  26. 角南篤

    参考人角南篤君) 御質問ありがとうございます。  まさにおっしゃるとおり、制度的な課題、まだまだたくさんあると思っております。  科学技術外交一つの考え方としては、私は、そのルール形成であったり、それから実際の国際世論に対するインパクトであったり、そういった意味では非常に重要な外交のツールになるということの理解はかなり浸透してきたんではないかなと思っていますが、特に外務省さんの方には科学技術顧問というのを外務大臣の下に設置していただきまして、やっと活動がスタートしたというところでございまして、あとは、外務省内の、科学技術顧問には省内での勉強会を実は頻繁に今開いていただいております。  それから、各大使館に対しても、大使会議の中でも、できるだけそういった科学技術の専門的な話というよりはその意味について省内で共有していただくような、そういう取組をしていただいておりますが、やはりまだまだその科学者あるいはそういった方々が実際に外交参加するチャンスがなかなかないということで、これは、一つは、外交の現場に若い科学者を早い段階から関わらせて、そして外交ということも学び、そして政治ということも学んで、そしてまたそれを自分たちのキャリアに生かしていくような、そういう人材が日本にいないと。アメリカとかヨーロッパにはそういう人材が出てきていますので、そういう意味では、そういう専門的知見を持った外交官になる、あるいは外交が分かる科学者になるという、こういうところの人材育成というのが最終的には一番大きな課題として残っているのかなというふうに思っています。
  27. 高橋光男

    ○高橋光男君 ありがとうございました。私も、是非そういった官学間の人材交流というのが外交の現場でも進むように期待したいし、後押しもしてまいりたいと思います。  今日はありがとうございました。  以上です。
  28. 鶴保庸介

    会長鶴保庸介君) 御苦労さまでした。  引き続き、柳ヶ瀬裕文君。
  29. 柳ヶ瀬裕文

    柳ヶ瀬裕文君 お三方、ありがとうございました。大変貴重な御意見をいただけたかなというふうに思っております。  時間の関係で、ちょっと角南参考人に特にお伺いしていきたいというふうに思いますけれども、このマイクロプラスチック影響なんですけれども、これ生物に対してどれだけのインパクトがあるのかということがなかなかよく分かっていないんだということも言われているわけですけれども、率直に、これが、じゃ、巡り巡って人体等々にどれくらいの影響があるのかというのは、どれほど今知見が重なっているのかということ、それから、これからの研究の何か展望等々あればお聞かせいただければというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  30. 角南篤

    参考人角南篤君) 幾つか、参考資料の方に掲載させていただいた幾つかの科学的な成果も出ていますが、まだまだそのエビデンスとしては決定的な影響というのがあるんだということまで行っていないというのが実態だと思います。  やはり、これは須賀参考人からもありましたように、我々まだデータが不足している。海というのは本当に目の前にあるんですが、なかなか我々そこが見えていない部分がたくさんありまして、そこに対してやはりしっかりとデータを取ってきて、そしてそのインパクトを出していくための研究というのはまさにこれから進んでいくんだと思っておりますので、まだそういう意味では、この段階では実際に人間の生体に関して必ずどれぐらいのインパクトがあるのかというところまでは、いろんな意見がまだ出ているという段階でありまして、これからの科学はそういったところに期待されるというところだと思います。
  31. 柳ヶ瀬裕文

    柳ヶ瀬裕文君 ありがとうございます。これは研究を進めていくことが必要だなというふうに思います。  それで、この海洋プラスチックごみの排出量の推定値という二十三ページの資料があるんですけれども、これを見ていると、日本からの流出は二万から六万トンに比して、中国は百三十二万トンから三百五十三万トンということで、桁が違うということになっていて、かなりボリュームの差の開きがあるなというふうに思っているんですけれども、ということであれば、これはやっぱり中国や流出量の高いインドネシア等々に国際的な枠組みでしっかりとキャップをはめていくというような作業が必要なのかなというふうに思うんですけれども、そのときに、今重要となってくるこの枠組みというのはどういったものなのか、またその中で日本はどういう役割を果たしていくべきなのかと、この点についてお聞かせいただければと思います。
  32. 角南篤

    参考人角南篤君) 重要な御指摘ありがとうございます。  関連する話でございますけれども中国が廃プラの輸入規制をしたときに、ほとんどの日本プラスチックは、中国に輸出されていたものがASEANの方に変わっていったということでありまして、それぐらい中国というのは、排出源でもあると同時に、その処理の方も非常に大きな力を持っているということであります。  それで、やはりここは国際的な枠組みも重要ではあるとは思うんですが、やはり私自身、私が思うには、バイ中国としっかりと交渉しながら、どうしたら彼らが、彼らにとって現実的なソリューションというのがあり得るのかということを一緒議論し、そしてこちら側も技術あるいはやり方も含めてしっかりと提供していくということが重要かなと思います。国際的な枠組みをつくっても、実際にそれが行われるかどうか、あるいは、やれやれと言うだけではなかなか動かないということもありますし、中国、それから例えばインドネシア、インドといったような国については、やはりしっかりと協力もしていきながら、そして彼らと一緒にそのソリューションを考えていく。そのためには、やっぱりバイ関係の中で、二国間の中でもしっかりと議論していく必要があるのかなと。  ですから、国際的な枠組みも必要なんですが、それとは別に、それを二国間対話もしっかりやっていって、そして具体的なソリューションを地域レベル一つずつ出していくような、そういった地道な努力も必要だろうと思っています。
  33. 柳ヶ瀬裕文

    柳ヶ瀬裕文君 ありがとうございます。  となると、ちょっとお伺いしたいんですけれども、これ日本はかなり意欲的だと思うんですね。このプラスチックごみの処理であったり技術開発等々にもかなり意欲的だなというふうに思っておるんですけれども、この流出量の多いその他の国、中国、インドネシア等々は、これ意欲があるんですかね。そもそも、その意識がどれくらいのレベルであるのかということ、これをちょっと現実感としてお伺いできればなというふうに思うんですけど、いかがでしょうか。
  34. 角南篤

    参考人角南篤君) もちろん私自身は、意欲があると、国としてはですね、思っています。ただ、そのソリューションが現実的な、何から手を着けていいのかとか、そういったことがなかなか難しいんだろうと思います。  それは、政策の執行の仕組みも全然違いますし、地方、あるいはインドネシアでありますと、いろんな島がたくさん集まっておりますので、そういったところをまずしっかり調査をして、どこが一番問題なのか、どこの地域に何をすれば効果的なのかということは彼ら自身ではなかなか調査ができないということもありますので、一緒にそういったところを探してあげて協力をしていくという、ピンポイント幾つか効果的なことをやっていくというのが必要かなと。  パラオ事例なんかはこの中で少し御紹介させていただきましたけれども、それぞれの国情に合わせたソリューションというのをやっぱり一緒に考えていって、日本外交的な戦略性の高いところからそれを一つずつやっていくというようなことが重要かなというふうに思っています。
  35. 柳ヶ瀬裕文

    柳ヶ瀬裕文君 ありがとうございます。  これは国際目標幾つか、SDGsも含めて、ブルーオーシャンビジョンというものも含めて幾つかの目標数値が出ているんですけれども、これ、二〇五〇年までに追加的な汚染海洋プラスチックごみによる汚染をゼロにするというようなことがうたわれているんですけれども、これ、具体的にこの海洋プラスチックの流出をゼロにするということというのは、今おっしゃったような、どういったソリューションによって、これはゼロということを具体的には想定をされているのかということなんですけど、何かビジョンがあればお聞かせいただければと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  36. 角南篤

    参考人角南篤君) この議論をしたときに、やはり我が国において、リサイクルも含めた3Rということで、もちろん現実的に今すぐプラスチックの使用をやめると、あるいは、物によってはプラスチックが非常に役に立っているようなプロダクト、製品もいっぱいありますから、それを全部一気にやめるというのは現実的ではないだろうということもあります。  ただし、必要なプラスチックをどれぐらい発生源を特定し、それが海に流れないようにするか。そのためには、一〇〇%に近い形のリサイクルということを実現しなきゃいけない。これもそれなりに課題は非常に高いんですけれども、そこがまず一つあると思います。そして、そうやりながら、最終的にはプラスチックに代わる製品を作っていく。ですから、そういうその技術開発も同時にやっていくという二段階で実現していくということになろうかと思います。  ただ、欧米の中では、もう3Rじゃなくて2Rだと。つまり、もうやめる、基本的にはプラスチックを使っている以上は必ず海に出てしまうものですから、そもそもそこを止めなきゃいけないというような議論もありますので、その辺のところをどういう形で具体的にこの目標に向けてインプリメンテーションをやっていくかというところが、これから、日本大阪ビジョンを出しましたので、それに向けてちゃんと実行していくということと、それから、途上国に行って、あるいはそういった発生源に行って、まずはここに解決するシステムをつくっていくと、協力してつくっていくということになろうかと思います。
  37. 柳ヶ瀬裕文

    柳ヶ瀬裕文君 ありがとうございました。  時間が来ましたので、終わります。ありがとうございました。
  38. 鶴保庸介

    会長鶴保庸介君) 御苦労さまでした。  それでは、上田清司君。
  39. 上田清司

    ○上田清司君 国民民主党・新緑風会の上田清司です。  三人の先生方、誠にありがとうございました。  角南先生に一点と、須賀先生に一点お伺いしたいと思います。  今、柳ヶ瀬議員のところで少し触れていただいたんですが、基本的にやっぱり人間、安くて便利なものを使うという法則があるというふうに私は思っております。  したがって、このプラスチックに代わる安くて便利なものを作らざるを得ないと。これを作ることによって一掃することができる、できればもうこれは自然界に戻るようなものという、そういう、例えば花壇のポットなんかが、紙でできているんでそのまま土に戻るというものが現実に販売もされているし使われているわけですけれども、ただ、コストの面でいろいろ課題があると思いますが、こうした部分に関してもう相当先進的な研究が進んでいるのかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  40. 角南篤

    参考人角南篤君) 技術的にはかなり進んでいるところもございまして、最近は国際会議、こういった海の国際会議に行くと、レセプションで配られるお皿なんかは食べられる素材で作っていたりとか、ほとんどそのプラスチックを使わない代わりのいろんなものが出てきています。幾つかその分解するという話も、技術も出しましたけれども、代替としての素材というのも、メーカーさんも含めて研究開発が進んでおりますので、そんなに遠くない将来にこれは出てくると思います。  ただ、コスト面についてどうするかというのは、まさにその政策の必要なところでございまして、先生も御案内のとおり、例えば再生可能エネルギーなんかもやはりコストの話をしてしまうとなかなか広がらないんじゃないかというのはずっとこれまで議論があったと思いますが、いろんな仕組みを導入することによって、最近は技術の方もだんだんコストダウンができるようになってくるということで、最初のところは政策的なものが必要になってくる、だけど、その後、だんだんだんだん技術が付いてくるとコストダウンにもつながっていくという、こういう時間の、ある意味では長期戦略で臨むことが必要だろうというふうに思います。
  41. 上田清司

    ○上田清司君 ありがとうございます。  続いて、須賀先生に、日本付近の海面水温の上昇傾向が世界平均の二倍以上の速さというような御指摘、分析をお伺いしたところですが、これ、なぜそうなのか、知り得る限りにおいて御教示いただければと思っております。
  42. 須賀利雄

    参考人須賀利雄君) 御質問ありがとうございます。  これについては幾つ研究がなされていまして、日本付近というのは黒潮という海流が、これは大洋の西の端を流れる海流で、黒潮、あるいは北米沖には湾流、メキシコ湾流というふうに俗には言っておりますけれども、流れだとか、そういう流れなんですが、これが低緯度から中緯度に熱を輸送しています。それによって、その作用が強まってといいますか、そもそもそういう環境にあるために温度の上昇が大きくなっているのではないか、それに黒潮が熱を運んでくる、それに付随した様々な海洋の循環のプロセスがあるんですが、そういうものが作用して熱がたまりやすい海域なんじゃないかというふうには考えられています。  ただ、そこも今まだ研究の途上でありまして、今後どういうふうに推移していくのかということに関しては、更に観測、研究が必要な分野ではあります。ただ、セッティングとしてそういう場所になっているということなんですね。
  43. 上田清司

    ○上田清司君 重ねてお伺いしたいんですが、黒潮の流れは今までも同じですよね。今まではそういうふうな熱波が出ていなかったと。  やはりほかにも原因があるんではなかろうかと思いますが、それはもう先ほどからの話が、この日本海の、この太平洋側の周辺に特別にあるものなのかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。
  44. 須賀利雄

    参考人須賀利雄君) ありがとうございます。  そもそも、地球上の海面、海の温度というのは、流れと混合とか、循環と海の混合ですね、そういうものが存在する中でバランスしてある温度が保たれていたわけですね。それがどこかでバランスが崩れると、いろんなところでずれてくるわけですよね。  そのずれが、日本付近というのは、黒潮という海流が熱を運んでくる場所にあるというその性質から温度が上がりやすいという、そういうことになる。日本海には、黒潮から分かれた対馬暖流が入っていきますし、そもそも熱が供給されていた。それを効果的に冷やしていれば、冷ましていればある温度が保たれていたんだけれども、その例えば冷ます機能が弱まったかもしれない、温暖化に伴ってということですね。  ですから、いろんなバランスでそもそも気温だとか降水量だとかが決まっていたんですが、それがいろんな場所でずれてしまっているというのが様々な異常現象の本質だと思います。そこは全体の仕組みが分からないと理解できないということで、それが観測、研究が必要だと言っている理由でもあります。
  45. 上田清司

    ○上田清司君 ありがとうございました。終わります。
  46. 鶴保庸介

    会長鶴保庸介君) 御苦労さまでした。  それでは、伊藤岳君。
  47. 伊藤岳

    ○伊藤岳君 日本共産党の伊藤岳です。  参考人の皆さん、今日はありがとうございました。  須賀参考人にお聞きします。須賀参考人の前半の部分に関わってお聞きします。  気候変動で熱がたまる、特に海にたまるというお話がありました。二〇一九年九月に提出された気候変動に関する政府間パネル、IPCC特別報告書にも、この海に熱がたまるということに関わって、世界の海面水位は、グリーンランド及び南極の氷床から氷が消失する速度の増大、氷河の質量の消失及び海洋の熱膨張の継続により、ここ最近の数十年、加速化、上昇していると書かれていました。そして、IPCCは、地球温暖化と海面上昇を気候変動との関連を明確に位置付けています。  また、気象庁も毎年の天候と台風のまとめを発表しておりますが、そこでも二酸化炭素などの温室効果ガスの増加に伴う地球温暖化の影響と自然変動の影響が考えられると記述をするようになっています。  IPCCの報告書は、結びで、社会のあらゆる側面において急速かつ広範な前例のないシステム移行が必要だと述べています。須賀参考人の論文も読まさせていただくと、産業構造の在り方を見直す必要があるだろうというふうに述べられていますが、これに関わって、このIPCCの言う前例のないシステムの移行という点での参考人の御所見をお聞かせいただきたいと思います。
  48. 須賀利雄

    参考人須賀利雄君) 御質問ありがとうございます。  これは、私のように気候システムの仕組みを研究している者にとっては言わばちょっと専門外のことになりまして、私の意見、どこまで国際的な議論を踏まえたものになっているかちょっと自信はありませんが、いろんな側面、まさにそこのIPCCで言われているように、例えば先ほどお話あったような環境に負荷の掛からない製品を使うということを考えても、いろんな問題がありますよね。安くてコストの掛からないものが使いたいんだけれどもということで、それ、代替エネルギーの問題もそうですし、そこを変えていかなきゃいけないということですね。技術は後から進んでくるということでありますから、初期にはコストが掛かるように見えても、そこを思い切って変えていくという、そういうことをしなきゃいけないというのが一つ。  あと、人々の意識、我々がやっている活動、人間活動が環境に、気候システムに大きな影響を与えているんだということがもう、何だろう、常識として人々がそれを感覚的に分かっているという状況になるという、そこも一つあるのかなと、社会の。これは教育を通じてそういうことができるかなと思うんですが、そういう社会の様々な分野でもうがらっと今までと違う、それは人間のある意味次元が変わったというか、我々のやっている活動というのが地球環境とこう結び付いているんだということを一人一人がもう自覚して生活できるようになるというような、そういうことを、私、科学者としては、そういうふうになるということがそのシステムの大きな変革というものに必要な側面かなというふうに思います。
  49. 伊藤岳

    ○伊藤岳君 ありがとうございます。  この前例のないシステムの移行という点で、角南参考人お話しされた海洋プラごみの問題も大きな課題だと思います。  日本では、年間三億トンも生産されていると。私の地元埼玉、お隣二人も埼玉ですが、この埼玉メンバーのいる埼玉の荒川ですね、荒川の川の保全に取り組んでおられるNGOは、年間三万本のペットボトルをこの荒川だけで回収していると聞きました。これがやがて海に流れて海洋プラスチックごみになるということだと思います。  先ほど、3R、2Rという話が出ましたけれども、リデュース、削減、リユース、再利用、リサイクル、再資源化というこの3Rでプラスチック汚染を低減するということが提唱されていますが、とりわけ私はリデュース、削減が最優先ではないかと思っております。世界では、使い捨てプラスチック製品の製造、販売、流通の禁止に踏み込む流れも広がっていますし、不必要なプラ製品を生産しないよう、発生元での削減対策に取り組むべきだという流れが生まれています。  例えば、プラスチック製品は、単一素材の使用を義務付ければ焼却ではなくて削減の方向に進むと言われていますし、プラスチック製品の大量製造、大量消費という経済社会の在り方を見直すこと、そのためにプラスチック生産者の、プラスチック製品の生産者、使用者の企業責任を明確にするということも重要だと思うんですが、その辺に関わって角南参考人の御所見をお聞かせください。
  50. 角南篤

    参考人角南篤君) ありがとうございます。  まさにリダクションというか、そういったところをどういうふうに取り組むかというのは世界的に大きな今流れにもなっておりますし、おっしゃるとおり、シングルユースプラスチックはもうほとんど、いろんなところでは、これを使わない、使用しないということと生産しないというようなところが議論されております。ですので、我が国もその辺のところをどこまで踏み込むか。今のところ、リユースあるいはリサイクルというようなところは我々の強みというふうにも言えるところもあるんですけれども、リダクション、そういったところの取組というのが企業と一緒にどこまでできるかというのがおっしゃるとおりの課題であろうと思います。  私自身が、どうすれば、じゃ、そうなるのかという、その政策的な答えを持っているわけじゃまだなくて、今は企業の方々、自治体の方々関係者方々と、とにかく一緒になって考えようというプラットフォームを我々のような財団も音頭を取りながらつくらせていただいておりまして、そちらの方ではまさにみんなで知恵を出そうということでやっているところでございます。ですので、やはりいろんなステークホルダーの方々が現実的に取り組める課題というのをやっぱり見付けていかないと実際には広がらないんだろうなというふうに思っていますので、その辺については、まさに御指摘のとおり、やはりリサイクルだけですと、やはり必ずどこかで海に出ていくものが出ていくわけですから、それが一〇〇%というのはなかなか望めないということもありますので、まずはその全体の量を減らしていくということをどういう形で実現できるのか、それの国民的な大きな議論をしていく場というのが必要なんだろうということで、我々の民間財団がむしろ一生懸命先駆けてそういったプラットフォームを今つくって、今日幾つかその事例も紹介させていただきましたし、瀬戸内を囲む四県の知事の方々、それから自治体の方々に集まって、瀬戸内のチャレンジ、オーシャンチャレンジを、プロジェクトXのようなことをやらせていただいている事例も紹介しておりまして、ここでは非常に、ターゲットをつくってどこまでリダクションできるかというようなことをみんなで議論していくということをやらせていただいております。
  51. 伊藤岳

    ○伊藤岳君 時間があれば、サーマルリサイクル、いわゆる熱回収に依存する日本在り方についてもお聞きしたいと思っていました。結局燃やすとCO2を排出することになりますので逆行ではないかと思うんですが、ちょっと時間がありませんので、今日の御意見参考にさせていただいて問題の解決を進めていきたいと思います。  今日はありがとうございました。
  52. 鶴保庸介

    会長鶴保庸介君) 御苦労さまでした。  それでは、引き続き、高良鉄美君。
  53. 高良鉄美

    高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美でございます。沖縄といえばもう海という感じになると思いますけれども。  今日は、参考人方々、本当にありがとうございました。  まず、角南参考人からお聞きしたいんですけれども、レジュメの方開けて最初に、北極海の方もマイクロプラスチックが見付かっているということでしたけれども、先日はスエズ運河での座礁の話がありました。そのときにテレビのニュースでは、ロシアの方が北極海使ったらどうかというのを割かし推薦をしているということが映って出ました。それ考えると、日本の企業としては、北極海を使おうかなとか、そういう気になってくるんでしょうけれども、この辺り、いかがなものかなというふうに私は少し感じるところもあるんですけれども参考人の御意見対応とかですね、いかがでしょうか。
  54. 角南篤

    参考人角南篤君) 北極のことを聞いていただいてありがとうございます。  我々の方も北極についてはずっとこれまでも取り組んできておりまして、御指摘のとおり、今、北極海航路ということが現実的になってきている中で、これをどういうふうな維持可能な形で利用していくのかというのは、世界の大きな注目されている課題でございます。  そのためには、まずはサイエンスでしっかりとその北極状況を把握し、そして北極海の環境というものがどうなっているのかということのデータを取っていかなきゃいけないということで、今回、我が国砕氷船の建設ということに踏み出すことができましたし、そういう意味では、まずは、これは須賀参考人もおっしゃっていたような、やっぱりデータを取って、それでどこまで、どういう状況なのかということは、さらに、特に北極はまだまだ、もっと分からないことが多いということもありますので、ここからまず入っていく必要があるかなと。  そこから先、利用ということに行くということで、我が国北極政策は、一応、まずはサイエンスで、そしてサステナブルなユースというのを考えるというふうになっていると思いますので、御指摘ありがとうございます。
  55. 高良鉄美

    高良鉄美君 ありがとうございました。  やはり、海洋にこれだけ囲まれている日本がそういうようなことを最初に示すと、すごく大きいと思うんですね、お話の中にもありましたけれども。私も非常に感動しました。  次に、富岡参考人にお聞きしたいんですけれども、今スエズ運河の事故の話が出たんですが、先ほど幾つか、船主の国あるいは船籍のある国と、あるいは置籍というんですかね、そういう形という、何かいろいろお話がありました。  こういう中で、この企業ですね、それぞれの企業が責任を、まあ賠償の問題とか責任とか義務とかいろいろあると思うんですが、そこら辺りの企業の意識というんですかね、教育というんでしょうかね、そういったところを少しお話しいただけないかなと。今、やはり賠償の問題とかいうのはどうなのかなとか、こういう関心は持つんですが、実際に事故等々、何かあった場合の企業の姿勢というんですかね、基本的に意識されているのかなというのが、どれぐらいというのがあるものですから。
  56. 富岡仁

    参考人富岡仁君) 御指摘の点は、私も問題だろうと思います。  船舶、海洋法で責任の上限が制限されているというのは、要するに、船舶を運航する企業、産業にとって、運航者にとって非常に海難が発生する危険な事業で、業務でありますので、余り無限に責任を負わせてしまうと船舶、海運業に携わる人がいなくなるということで昔からそういう制限が出てきたのでありまして、それから、民事責任に関する条約で、船主に、先ほど来申し上げていますが、船主、船舶所有者ですね、所有者に責任が制限されている。これは、タンカーの汚染に関する条約の場合には船主に制限されています。バンカー条約、燃料油の場合は船主が広げられているというふうに申し上げました。  なぜ船主に責任が制限されているかというと、これは、もし船主じゃなくて、運航者とか管理者とかあるいは用船者とか船を借りている人とか全部に広げてしまうと、一体誰に責任、つまり被害者がどこに補償をまずしたらいいか分からないと。だから、とにかく船主に一元化して、船主から責任があるんだったら用船者やほかの人にまた求償権を行使してもらうという形にして、被害者救済という観点から船主に一元化しているということであります。  つまり、逆に言いますと、先生の御指摘だと思うんですが、じゃ、用船者とかですね、つまり、船を借りている用船者とか、あるいは船を運航している運航者が責任がないかというと、あると思います。つまり、例えば、具体的に名前出してはいけないですが、商船三井、これはいい意味でお名前出していいと思うんですが、今度のモーリシャス事故で商船三井は、法的責任は、実は議論はあります、説が分かれるところはあるけど、私はないと思います。  なぜかといいますと、定期用船者という用船形態の場合は、裸用船者といいまして、丸ごと借りてきて運航する場合と違うんですね。定期用船者はないと思います。ないんだけれども、商船三井は、責任は、法的責任はないけれども、しかし企業としての責任は負うといって、積極的に実はモーリシャスに対して、賠償に限らずいろんな技術的な援助とかあると思うんですが、私がインターネットのホームページで見る限り、非常にいろんな形で責任を果たそうとしています。  一つの企業の責任の果たし方というのは、法的には、したがって、かなり限定されている海事法の分野とは別に、やはり企業としては責任を果たすという場面があるのではないか。そういうふうに責任を果たすことによって、言わば企業イメージといいますか、つまり企業の評価が上がると思うんですね。むしろ、そういう企業であれば、例えば荷主はそこに委託するとかですね、いろんな意味でプラスになると思います。  したがって、法的責任がないから一切企業の責任がないかというのは、これは間違いでありまして、法構造がそうなっているだけの話で、具体的には企業の責任はあると思いますし、じゃ、その企業の責任をどういう形で法制度として構成していくか、実はこれがやはり大事で、やはり、あれこれ言っても、法律が定まっていないで道義的責任とか政治的責任というと、結局はみんな企業がきちんと、前向きな企業ばっかりじゃなくて、責任を負わないというのはたくさんあります。  だから、どうしてもそこは、最後の歯止めとしては、最低限の法的歯止めを付けておく必要があります。それをどうするかというのが実は非常に難しいと思いますが、ここでこうしたらいいとはなかなか私は言えないんですが、ただ、少なくとも言えることは、そういった法的な企業の責任を何らかの形で具体化しておくということは、条約でもそうでしょうし、まあ条約ですね、国際条約で具体的に定めておくことは私は必要だというふうに考えております。
  57. 高良鉄美

    高良鉄美君 ありがとうございます。  やはり、日本がこういう海洋立国というような形でしたら、やっぱりそれを率先して責任の問題を外に最初に示すことが、やはり最初の、角南参考人も言われたような、外に向けてもアピールになるんじゃないかなと思いました。  最後ですけれども、沖縄海洋博というのが一九七五年にありまして、海、望ましい未来というような感じで、すごい、これからの未来ということで、牧場を、海洋牧場というような形で、あの当時の、何というんですかね、サステナブルのような感じでやっていたんですが、今はやっぱり、この当時は、海洋プラスチックの問題ですね、マイクロプラスチックの問題が余り意識されていなかったと思うんですけれども。  先生、須賀参考人ですね、実際に教鞭を執られて、これからやっぱりそういう、何ですかね、未来について、NGOの、NPOの養成もそうですけれども、学生たちにこの海洋汚染の問題とかプラスチック問題というのをどのように伝えていらっしゃるか、あるいは、これからですね、若い人たちへのアピールというのか、何か一言あればお願いしたいんですけれども
  58. 須賀利雄

    参考人須賀利雄君) ありがとうございます。  学生にはなかなか、今の大学生は非常に忙しいものですから、何か自分のことで頭がいっぱいという人が多くて、なんですが、例えばSDGsとかそういうものに、我々がやっているサイエンスというのはそれを下支えするというか、そういうことなんだということは、我々、理学の、理学研究科の学生に私は伝えてはいます。  それから、もっと、実は子供はすごく成長が早いですので、小学生、今、私、小学生の出前授業を年に数回やっていますが、小学生はすごいですね。本当に柔軟に、言っていることを、私が言っている、なるべく、そんな簡単に言わずに難しいことをそのまま言ってくださいというふうに先生に頼まれたものですから、そうすると、非常に理解するんですね、本質を理解していきます。  ですから、小学生の段階からそういう教育の場に、この世界の仕組みの中に、海とか、気候システム、海というようなことがあるんだということをきちんと入れ込んで、そういう中で経済活動を、ああ、いろんな活動、我々活動しているんだという、そういう意識を早い段階から持つことが重要じゃないかなと、それが当たり前になることが重要じゃないかなというふうに思います。
  59. 高良鉄美

    高良鉄美君 時間が来ましたので、終わりたいと思います。ありがとうございました。
  60. 鶴保庸介

    会長鶴保庸介君) それでは、引き続き質疑を続けます。  ながえ孝子君。
  61. ながえ孝子

    ○ながえ孝子君 碧水会という会派におりますながえ孝子と申します。  今日は、三人の参考人方々、貴重なお話をどうもありがとうございました。  私の方からは、須賀参考人角南参考人に質問させていただきます。  まず、須賀参考人、全球的な海洋の監視システムがとても重要だということがお話を伺ってよく、改めてよく分かりました。命に直結する問題だなと思います。それで、日本の体制づくりというのが急がれるわけですけれども、そのヒントになればなと思ってちょっと教えていただきたいんです。  まず、オーストラリアが非常に前向きで、政府が机の上に資金をぽんと載せてという話も伺いまして、それだけ前向きな取組を政府がする理由といいましょうか、背景といいましょうか、を教えていただけますか。
  62. 須賀利雄

    参考人須賀利雄君) これは、オーストラリアは海に囲まれていて、オーストラリアは、農業という、非常に重要な産業ですけれども、これが海の影響を非常に受ける、海が変化して、それの異常気象というか気候変動、その影響を非常に受けるということで、もう金額に換算しているんですよね。海の観測をして、予報精度をこれだけ上げるとこれだけの経済効果があるということが、そういう研究がされています。そういうことも背景にあります。  それから、オーストラリアは世界国際的な海洋観測網に貢献することで、言ってみればプレゼンスを上げるというか、非常にオーストラリアは海洋観測に関して国際的に信頼される地位を獲得しています。あの小さい国なのに、主な海洋プログラムといいますか海洋研究プログラムでそのリーダーを務めるというケースが非常に多いですね。  ですから、非常に効率よく海というところに打ち出していくことで、限られたリソースを使って国のプレゼンスを上げるという、周囲から尊敬される国になるという、そういうことも背景にあるかなというふうに思います。リードしていく、お手本となるような仕組みをつくって、それを実際に実践するんですね。小さい国なので小回りが利くということはあるとは思うんですが、そこが大きいと思います。  日本もそれができるポテンシャルはあるんですね。ただ、日本は、非常に大きくて、いろいろと細分化してそれをやってしまっているために、それを国際的にアピールできていないというところが残念なところということです。
  63. ながえ孝子

    ○ながえ孝子君 ありがとうございます。  そうしたら、もう一つちょっと教えていただきたいんですが、事前資料の中で中国も貢献度が高くなってきたというふうに伺ったんですが、アルゴのロボット数見ていると、日本の十分の一ぐらいですかね。あれ、このぐらいなのかなと思ったんですが、状況といいましょうか、この先の見通しなどを含めて、いかがでしょう。
  64. 須賀利雄

    参考人須賀利雄君) 中国は、最近大きな予算を付けました。それで、三百台から四百台運用するということを今言っております。それで、今は、現在は、このアルゴの国際運営チーム、私、共同議長を務めているんですね。今、日本の貢献五%ですけど、立ち上げ時に非常に貢献したということがあって、恐らくまだ日本はこのコミュニティーで尊敬されているということがありまして、ところが、中国の代表とちょっと話をすると、いずれ中国が四百台展開するようになったら役割は交代だなというふうに言っています。そういう状況ですね。
  65. ながえ孝子

    ○ながえ孝子君 どうもありがとうございました。  それでは、角南参考人、実は私、愛媛県選出の議員でございまして、さっき瀬戸内オーシャンズXの話が出まして、とてもうれしゅうございました。瀬戸内モデルとして世界に発信するということで、とても期待申し上げております。  資料の十七ページのところですかね、課題幾つか書いていただいているんです。広域的な取組をするときって、こういうこと、本当に確かに問題になるなと思っているんですが、時間の都合もあるものですから、一つちょっと教えていただきたいんです。一番上に書いてある、ごみは県や市町村を越えて移動する、誰がどのように回収するのか、役割分担が曖昧と。普遍的な問題でもあろうかなと思うんですが、角南参考人の何か解決策のアドバイスみたいなものがあれば教えてください。
  66. 角南篤

    参考人角南篤君) 御指摘ありがとうございます。  まさにそういうようなことがあるものですから、取りあえずはこの四県の自治体の方々一緒になってもらって考えていくと。つまり、行政管轄が非常に細かく同じ瀬戸内海でございましても分かれておりまして、じゃ、ここに発生源のあるところと、実際に、例えば瀬戸内の島に幾つか無人島であったりすると、そこにごみが終着してしまう。これを誰が誰の責任で回収するのか、これが行政的にギャップになっておりまして、無人島でございますし、それの管轄をどうするのか、そのコストは誰が負担するのか。それを四県の、まずは四県の知事に集まっていただいて、全体で解決策を考えていく、そういう仕組みを今回トライさせていただいているところでございまして、いわゆる通常の行政の枠を超えて一つの新しい形態をつくるということから取り組んでいきたいと、そういうふうに思っております。
  67. ながえ孝子

    ○ながえ孝子君 ありがとうございました。とても期待しておりますので、また何かでお役に立てればなと思います。  示唆に富んだお話をどうもありがとうございました。終わります。
  68. 鶴保庸介

    会長鶴保庸介君) 御苦労さまでした。  他に御発言はございませんか。──他に御発言もなければ、参考人に対する質疑はこの程度といたします。  参考人皆様一言御礼を申し上げたいと思います。  皆様には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、誠にありがとうございました。特に、先ほど角南参考人から御挨拶があったとおり、御言及があったとおり、このお三方につきましては、一年ぶりでしょうか、もうずっと待機をしていただいた状態でございました。その面、大変感謝を申し上げたいと思います。にもかかわらず、こうして、ちょっと本会議の都合で時間が短くなってしまいました。そのことも重ねておわびを申し上げたいと思います。今日、その代わり、御発言いただいた、御言及いただいたことにつきましては、今後の我々の議論の糧に深くさせていただき、深く感謝を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十六分散会