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参考人(
山本修一君)
山本でございます。
私、三月まで千葉
大学におりまして、六年間、千葉
大学病院長を務めておりましたので、本日は、
大学病院の立場からお話をさせていただきます。
資料を一枚おめくりいただきましたところが全
国医学部長病院長
会議の概要でございますが、全国に八十二あります
大学医学部の医学部長及び
病院長で構成されております。
もう一枚おめくりいただいて、三枚目、この
大学病院の本院の概要でございます。
真ん中辺を見ていただきたいんですが、ここで働く
医師数は六万人でございます。日本の
勤務医の数、およそ二十万人でございますから、三分の一が
大学病院で働いています。しかも、そこの年齢構成を見ていただきますと、二十代から三十代、今回働き方
改革の主役となるべきこの若手の
医師がその六割を占めております。これまで厚労省の
検討会では、
大学病院の事例は特殊だからということで余り深く議論をされてきておりませんでしたが、このデータを見ていただくと、ここを避けては
医師の働き方
改革は成し遂げられないということは御
理解いただけるのではないかと思います。
四枚目を御覧ください。
これは、厚労省の
研究班が全国の十
大学を対象として、かなり詳細な聞き取り及びアンケート
調査を行った結果でございます。
この
グラフは、横軸に
大学病院での
労働時間、縦軸は兼業先での
労働時間を取っております。この斜めの線がございますが、黒の斜めの線よりも右側にあるぽつぽつは、年間の時間
外労働が千八百六十時間を超える
人たちということになります。上のこの散布図の左側は
大学での待機時間、出待ちの時間を
労働時間に含めた場合、そして右側は
大学病院での待機時間を外した場合ということでございますが、見ていただくと分かるように、かなりの数がこの千八百六十のラインより右側に来ています。
これを今厚労省で進めています水準に当てはめると、下の
グラフになります。一番左端の紫色はいわゆるA水準、時間
外労働が九百六十時間未満でありますが、右端の黄色、これは千八百六十を超えます。一番下の、この
大学病院の待機を含めて、それから兼業先の待機を除いても、まだ一割の
医師がこの千八百六十を超えるということであります。ここのドクターの働き方を何とかするのがまず喫緊の
課題というふうに考えております。
次、五枚目を御覧ください。
このような
状況を受けまして、全
国医学部長病院長
会議では、
大学病院の
取組が遅いとか認識が甘いとかいろいろお叱りを受けておりますが、AJMCとしても各
病院長に対して様々な
教育活動を行っているというところでございます。
次、六
ページ目を御覧ください。
今申し上げましたように、
大学病院の働き方というのはいささか特殊ではございますがかなりの数を占めているということで、問題点を以下に列挙させていただきます。
まず
一つ目でありますが、
一般病院の
医師はほぼ一〇〇%
診療だけを行っていますが、
大学病院の
医師の場合には、
診療に加えて
教育と
研究というこの
二つの
タスク、要するに三つの
タスクを同時にこなすことが求められております。働き方
改革による長時間
労働の是正を行いつつ、なおかつ我が国の医学、
医療の発展に寄与するような
仕組みと
環境整備が求められるというふうに考えております。
次、おめくりください。
この
医師の働き方
改革に関する
検討会の報告の中で、
医師の
診療業務の特殊性としては公共性、不確実性、高度の
専門性、そして技術革新と水準
向上、これが掲げられておりますけれども、これに、先ほど申し上げたように、これに加えて
教育と
研究が加わっております。しかも、これは非常にモザイク状に入り交じっている、あるいはもう裏表とも言っていいかもしれません。きれいに分けることが不可能な状態であります。
例えば、
診療におきましては、その
診療によって得られた
臨床データというのが
研究に使われますし、あるいは、その
診療行為そのものが医学部の学生であったり
研修医の
教育に使われます。また、
研究を通じて学生や
大学院生の
教育を行ったり、あるいは、その
診療の結果から新たな
医療技術あるいは薬物の開発というのも行われます。また、兼業に
代表される
地域医療への貢献というのも、これも
大学病院の
医師の極めて重要な仕事でございます。
次、おめくりください。
また、
医師は、
患者に最適な
医療を提供するために、知識や技能の
向上に日夜努めております。具体的に申し上げると、
勤務終了後あるいは
業務の合間などに
論文を読む、
論文を書く、あるいは技術の修練を行うというようなことに取り組んでおりますが、働き方
改革を進める中で、このような時間が決して犠牲になることがないようにするべきというふうに考えております。
また、四番目でございますが、
大学病院に
勤務する
医師の働き方
改革には、我が国の医学、
医療の発展、あるいは安定した
地域医療の確立等、現在抱えている、
医療体制が抱えているこの様々な
課題を同時に解決しないと進められないというふうに考えております。
私たち
大学病院も、古くからの慣例とかあるいは習慣というのもございますので、これはもう抜本的に見直す必要があるということは十分承知しておりますし、それを現在進めているところではございますけれども、しかしながら、やはり国及び地方自治体による
制度設計及び人的、財政的
支援も不可欠であるということを考えております。またあわせて、
地域の
医療機関の御協力、あるいは
患者となり得る
国民の皆さんの
理解というのも必要であるということでございます。
したがいまして、今回のこの
医師の働き方
改革を
実現するために、単にこの法令等で規制を掛けるのではなく、今申し上げたような点に配慮して、国としての
財政支援も含めた総合的な
取組を望むところでございます。
九枚目でございます。
このように、
研究者に対しましては、医学部以外の
研究者に対しては
一般的に専門
業務型裁量
労働制が適用されております。なかなか、ただ、
診療部分に関してこの裁量
労働の適用というのが難しい部分がございますが、これを可能な限り適用
拡大して、そして各
大学病院の
診療体制あるいは
地域医療の
実情に即した
労働が可能となるような
制度設計を是非していただきたいというふうに思います。
また、今申し上げたように非常に複雑、
業務が複雑にモザイク状になっているこの
労働時間の把握というのもなかなか難しいところがございます。したがいまして、このような複雑な
労働時間の適正かつ効率的な把握のためのシステムの開発というのも是非お願いしたいというところでございます。
また、今回の働き方
改革では
タスクシフティングなどが有効というふうに言われておりますが、例えば特定行為、看護師に対する特定行為
研修というのもなかなかまだ進んでおりませんし、人材そのものが少ないという問題がございます。また、
雇用には新たな財源も必要でございますので、このような人材の
育成と、そして財政的な
支援というのも強くお願いしたいところでございます。
また、七番目にもございますが、
医師の働きやすい
環境整備ということで、今全ての、ほとんど全ての
大学病院が院内保育は整備しておりますが、更に
充実させるとやはり病児保育ということが必要になってまいります。ただ、これは非常にお金が掛かって、
一つの
大学病院で賄うと、例えば千葉
大学はそれだけで四千万を投資したりとかしておりますので、ここはやはり国としても
制度設計が必要ではないかというふうに考えるところでございます。
最後のペーパーでございますが、今後の検討
課題というのをまとめてございます。
制度面では、先ほど申し上げました専門
業務型裁量
労働制、これは、明文としては講師まで適用ということになっていて、助教はまだ検討ということになっていて、助教への適用が明文化されておりません。この辺も明確にしていただきたい。あるいは、裁量
労働の場合には
宿日直ができないというような読み方になっておりまして、この辺もなかなか裁量
労働の適用を難しくしているところではないかなというふうに思います。
また、財政面では、この
大学病院の
機能を
維持するためには増員が不可欠でございます。この働き方
改革を進めつつ
大学病院の
機能を守るためには増員が不可欠と考えますので、この辺の財源
確保、あるいは
タスクシフト、
タスクシェアに必要な財源
確保などもお願いしたいところでございます。
そして
最後に、やはりこの
地域医療を守るということは非常に重要でございますが、今までのように
医師の長時間
労働でこれを守るのではなくて、適正な
労働時間でそれが行えるように、やはり
地域医療の
医療体制の
見直し、効率化、集約化などもしっかり進めていただきたいというふうに考えるところでございます。
以上でございます。ありがとうございました。