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委員長(
野村哲郎君) 速記を起こしてください。
これより討論に入ります。
各会派の討論に先立ち、この際、御報告いたします。
令和元
年度決算についての
内閣に対する警告及び
令和元
年度決算審査措置要求決議案については、
理事会において協議の結果、お手元に配付の案文とすることに意見が一致しました。
それでは、警告の案文を朗読いたします。
内閣に対し、次のとおり警告する。
内閣は、適切な措置を講じ、その結果を本院に報告すべきである。
1
厚生労働省は、
令和二年六月に新型
コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)を公開したが、アプリ改修時の動作テストが不十分で、同年九月末から一部利用者に対して接触通知を配信できていなかったことに気付かず、三年二月になって
事態を公表したことは、遺憾である。
政府は、アプリの不具合が発生したのがまさに感染拡大の時であり、利用者等からの
指摘があったにもかかわらず、長い間放置していたことを重く受け止め、発注者としてシステムの開発や運用保守を実施するに当たって必要となる責任を自覚した上で、
再発防止を含めた体制
整備に万全を期すとともに、COCOAに関する情報を適時適切に提供してアプリの利用及び感染時の登録を促進し、感染拡大防止に役立てるべきである。
2
内閣府の企業主導型保育事業により
整備した二十五施設の病児保育室又は一時預かり室について、八施設で看護師等の
確保ができないなどの理由により病児保育等を全く実施していなかったこと、三施設で病児保育等の実施を中止し再開する予定がないこと、また、補助事業者である公益財団法人児童育成協会が、助成申込書を審査する際に、実施体制等に係る計画の提出を求めず
職員の
確保等に係る審査を行っていなかったこと、病児保育室等の
整備後において、利用実態を把握し必要に応じて指導を行う仕組みを
整備していなかったことは、遺憾である。
政府は、補助事業者を通じて事業者に制度を十分に周知するとともに、病児保育の実施体制に係る計画等を審査の際に提出させるなどの改善を図り、
整備された病児保育室等については、
政府自身もその利用実態を十分に把握し、適切な指導監査を行うべきである。
3
総務省の複数の幹部
職員が、
利害関係者との
会食において、当該
利害関係者から飲食費の
負担や贈答品等を受けていたことなどが明らかとなり、
国家公務員倫理規程違反として懲戒処分が行われるに至った。当該幹部
職員のうち総務
審議官は、
総務省の内部
調査において、事実と異なる説明を繰り返し、追加の懲戒処分が行われた。また、自己の飲食に要する費用の
負担が一万円を超える
会食の際には倫理規程上の届出を行う必要があるにもかかわらず、
総務省の幹部
職員はその認識が欠如していたことも内部
調査で明らかになった。公務員倫理に反する行為により、
情報通信行政がゆがめられたのではないかとの
疑念を
国民に抱かせ、公務への
信頼が損なわれたことは、遺憾である。
政府は、
利害関係者との不適切な
会食等の実態や
情報通信行政への
影響の有無を
調査するとともに、可能な範囲で公表し、公務員倫理に関する意識啓発や監督体制の強化等の実効性ある
再発防止策を講じるなど、公務に対する
国民の
信頼回復に向けて徹底的に取り組むべきである。
4 株式会社
東北新社は、
平成二十九年一月に
放送法に基づく基幹放送事業者の
認定を受けたが、
令和三年三月、同社は
認定申請時及び
認定時において同法が定めるいわゆる
外資規制に違反していたことが明らかになり、同社から
認定基幹放送事業者の地位を承継した株式会社
東北新社メディアサービスの
認定が取り消される
事態となった。
総務省による審査が不十分であったことにより、本来基幹放送事業者として
認定すべきでない事業者を
認定していたことは、遺憾である。
政府は、
外資規制違反という重大な瑕疵を看過したことを重く受け止め、今般の
事態に係る審査プロセスを徹底的に
検証するとともに、可能な範囲で公表した上で、審査体制の強化を図るなど
再発防止に万全を期すべきである。
5 国立
大学法人佐賀
大学が
平成二十四
年度の運営費交付金を原資として措置した震災復興医療体制
整備システムについて、佐賀
大学及び九州地区の六国立
大学法人の保有する医療データを佐賀
大学で集積、分析し、災害時に
効果的な薬剤配給等ができるよう
支援を行うことなどを目的に運用することになっていたにもかかわらず、佐賀
大学が参加
大学と役割分担等について十分に合意形成を図らなかったなどのため、当該システムに医療データが取り込まれず、二十六年の納品以降全く利用されていなかったことは、遺憾である。
政府は、当該システムの活用
状況について把握しておらず、システムの運用を佐賀
大学が断念せざるを得なくなったことを重く受け止め、国立
大学法人等が行う運営費交付金による新規事業について、
予算の執行
状況や事業の進捗
状況を適時適切に確認し、必要に応じ指導するなど、
再発防止に万全を期すべきである。
6
日本年金機構は、事務処理誤りによる過払い年金が発生した場合の返還請求に係る事務を行っているが、事務処理の遅延等により過払い年金の一部又は全部について五年間の消滅時効期間を経過して返還請求が行えなくなった事案が多数発生していたことは、遺憾である。
政府は、年金事務所等において返還請求に係る事務処理の遅延が生じていたにもかかわらず、機構の本部において進捗管理を十分に行っていなかった
事態を重く受け止め、
再発防止策を講じるとともに、事務処理誤りによる過払い年金の発生を予防するための取組を進めるよう指導監督を徹底すべきである。
7 東京電力ホールディングス株式会社(東京電力)柏崎刈羽
原子力発電所において、IDカード不正使用や核物質防護設備の機能の一部喪失等の一連の不適切事案が発生し、テロ
対策に重大な不備があるとして、
原子力規制
委員会から特定核燃料物質の移動を禁じる是正措置命令が下されたことは、遺憾である。
政府は、福島第一
原子力発電所事故を引き起こした当事者である東京電力において、組織的な管理機能の低下や安全文化の劣化が問題となっていることを深刻に受け止め、東京電力が
原子力規制
委員会の検査に真摯に
対応し、徹底的な根本原因の究明と管理機能の抜本的な
対策を講じるよう厳しく指導すべきである。
8 環境省は、
平成二十七
年度から再エネ発電により水素を製造して燃料電池自動車等に供給する水素ステーション(
地域再エネ水素ステーション)の導入事業を実施していたが、
会計検査院が十九事業を検査したところ、十七事業において、再エネ発電電力量により、水素の製造に必要な電力量(必要電力量)の全量相当分が賄われていなかった
事態のみならず、そもそも必要電力量を明確に把握できていない技術的な
課題があることも明らかとなり、同事業を廃止する
事態となったことは、遺憾である。
政府は、制度設計に当たって当然行うべき技術的
検証を怠ったことにより、このような
事態を生じさせたことを重く受け止め、今後同様の
事態を繰り返すことのないよう、
検証と公表を行い、新たな事業を実施する際には事前に技術的な実効性について確認することを徹底し、
再発防止に万全を期すべきである。
以上であります。
議決案はお手元に配付のとおりでございます。
それでは、御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べください。