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参考人(
小島延夫君) 本日は、
発言する機会を与えていただき、誠にありがとうございます。
私は、簡単に自己紹介しますと、今から二十四年前にちょうどこの参議院の
環境委員会で
環境影響評価法ができるときに公述人として
意見を述べさせていただいたということがあります。それ以来ですので大変緊張しておりますが、主には私は町づくりですとか都市
計画ですとかその辺のところをやっているんですけれども、縁あって今、横須賀石炭火力
発電所の操業を止めるための行政訴訟の弁護団長もしております。
本日の話題としては、大きく四点話をしたいと思っていますが、主には二点の話をします。
一つは、
日本における
地球環境、
地球温暖化の
影響というのが極めて深刻な状態にある、その中で、特に漁業被害という問題についてちょっと認識を是非持っていただきたいというふうに
考えているところです。
IPCCの
報告書などでも、海洋に対する
影響というのはサンゴの白化の問題は書かれているんですが、漁業被害の問題というのは余り書かれていないですね。農林被害の方も出ていますが、水産資源の被害というのは余り書かれていません。恐らくこれは、
日本という国が
世界の中でも最も海洋資源というか水産資源を食べ物として一番使っている国の
一つだろうということに関係してくるのですけれども、実は
日本における水産資源の今の状態というのは極めて深刻な状態です。
この点を痛感したのは、二〇一九年に私は五島列島の一番北にあります小値賀島という島に地方自治の問題で調査に行きました。そのときに、小値賀島というのはずっと
日本のアワビの
生産量の一位ぐらいを占める大変豊かな島なんですけれども、その島でほとんどアワビが捕れなくなっているという話が出ました。それで、調べてみると、二〇一三年に九州北部から山口県、島根県の西部まで至るところで極めて大規模ないそ焼けが起きて、その辺りの海藻がほとんど全滅するという状態が起きました。その
影響を受けて、その
地域のアワビがほとんど捕れない状態になっている。
それで、
日本海側だけではなくて、実は相模湾におけるアワビ漁というのも極めて深刻な状態にありまして、今、
環境大臣が出身の横須賀市などの辺り、三浦半島も実はアワビ漁が非常に盛んなところなんですけれども、このところで、ちょうど今日ちょっと紹介させていただきましたけれども、
写真を
二つ紹介させていただきました。私の
資料の三番目のところにちょっと添付してありますが、これは二〇一二年の江の島の沖の状況と二〇二〇年の江の島の沖の状況を
写真で撮ったものです。二〇一二年のときではまだ海藻が生い茂って、本当に海藻の森というような状態が存在していました。ところが、二〇二〇年の三月に
写真を撮ると、ほとんどこの海藻が消えて、全く砂漠のような状態になってしまっている。
どうも
日本全体で見ると、やはり二〇一三年から二〇一五年頃にかけて海洋
環境というのは極めて悪化した状態がありまして、先ほど二〇一三年の九州北部から島根県にかけての大規模ないそ焼けの話しましたけれども、実は次の
ページにちょっと、四
ページのところに神奈川県の水産
技術センターの業務
報告を出してありますけれども、実は神奈川県では、やっぱりアワビがだんだん捕れなくなってきているということで、アワビの稚貝を放流してアワビ
生産を回復する措置をずっととってきて、二〇一二年までは順調に回復してきたんですね。ところが、二〇一三年からそれがすとんと減ってしまったと。
それで、その
報告書に書いてあるのを四
ページのところに引用してありますけれども、二〇一六年の神奈川県水産
技術センターの業務
報告によりますと、芦名地区は〇・一五個平方メートルしかないと、長井では前年に続き〇・〇〇個平方メートルであると。つまり、前の年も翌年もアワビが見付からないと。この
地域の漁師さんの話が下に書いてありますけど、
海底のいそ場に以前は
森林のように密生していたアラメやカジメ、ヒジキなどが一本も見えないと、一日潜ると前は三十個ぐらいのアワビが捕れたのが、今は一日一個捕れればいいぐらいだと。この極めて深刻な状態が今起きているんですね。
それから、次の
ページめくっていただくと、養殖ノリの話ですけれども、実はノリというのは
日本の海洋養殖漁業においては最大の
生産量を誇っているものなんですけれども、これも二〇〇七年以降急激に減少して不作状態になっています。
東京湾では経営体数が変化しても二〇〇〇年頃までは
生産量が維持されてきたんですが、それが大幅に減ってきていると。二〇一五年のところを見ますと、過去十年間の平均の五千六百万枚のノリ
生産があったのが僅か五百万枚、一割まで減ってしまっていると。多分
東京湾のノリを購入されている方なら分かると思うんですけれども、この数年間は、千葉とかあるいは横須賀の流水といったところのノリがほとんど手に入らない状態になってきている。極めて深刻な状態が起きているということです。
ちょっと時間の関係があるので飛ばしますけれども、七
ページのところに回遊魚の話が出ています。これは、去年サンマが捕れないという話がありましたけれども、下の図はこれスルメイカです。
日本海におけるスルメイカ
生産が、漁獲高が、かつては年間一万トンとかそういう
レベル、これが一九九〇年代初めまであったんですけど、現在、二〇〇〇年代の後半になってほとんどなくなってきていると。秋田から山口にわたるところでは大きく減少して、九五%以上減少してしまっていると。これは、五%減少して九五%になったんではなくて、九五%減少しているという状態であります。
もう本当に、
日本というのは今まで豊かな海産資源に恵まれて、それが私たちの食文化を形成してきたと思っているんですが、それが失われようとしてきているんじゃないかと。やっぱりこれを止めるためには、今本当に真剣に
地球温暖化対策を取らないと、私たちの貴重な食文化、
食料というものが失われてしまうのではないかと、そういう強い危機感を感じたところです。
そういう中でいうと、昨年の十月に
総理が
カーボンニュートラル宣言、二〇五〇年
カーボンニュートラル宣言をされて、それに向けて今回もこの温対法案できているということは非常にすばらしいことだと思っております。しかしながら、是非ともその中で触れていただきたいことの
一つとしては、その
カーボンニュートラルを実現するために、今、
小西参考人の方からもお話がありましたけれども、二〇三〇年の電源構成ではやはり石炭火力ゼロ、そういうことを
考えていかなきゃいけないと。そうすると、再生可能
エネルギーを飛躍的に拡大すると、二〇三〇年時点でやっぱり五〇%ぐらいのところ以上まで達成していかないと現実的には難しい状態にあるだろうというふうに思っています。
そして、それを実行するためには、この第二の話題ですけれども、やっぱり統合的な行政組織というものを
考えなければいけないだろうと。
日本の国内では、先ほど
小西参考人の話にもありましたけれども、
エネルギーについての見通しは全部経産省が作ると、それで、その経産省が作った
エネルギー見通しを受ける形で
地球温暖化の
対策が進められると。これは、もう
パリ協定の約束草案を作るときの政策過程が実際にそういう形であったわけですね。これ、順番は本来逆でありまして、
削減目標を先に定めて、その
削減目標に即してその
エネルギーミックスをどうするかということが議論されるべきでありますけれども、それができないと。
それで、例えば、先ほどお話にも出てきたイギリス、ドイツ、そういった国では、基本的には
エネルギー部門が
気候変動対策のところに統合してそういう政策を取ることができていると。やはり、そういうことを
考えていかないと、実際、実効的な
環境、
気候変動対策ができないのではないかと。
十
ページ以降にですね、十
ページ、十一
ページのところに、その統合組織をつくる、さらには統合的な政策実行していくと。それからもう
一つ重要なのが、独立の専門機関をつくって、これもイギリスの話になりますけれども、イギリスは独立の専門
委員会があって、そこがどういう政策が実施可能か、それの実施状況がどこまで進んでいるか、これを全部専門機関がチェックして反映していくという仕組みになっています。やっぱりこういう仕組みを
日本の国内でもつくっていかないと駄目だろうと。
それからあと、地方自治体のやっぱり取組というのが再生可能
エネルギーでは決定的に重要です。
それで、この地方自治体の、十三
ページ以降に地方自治体の取組をちょっと書かせていただきましたけれども、実際資源があるのはどこかというと、今回再生可能
エネルギーの
実施目標を策定されるとされる中核市、政令市ではないんですね、もう少し地方のところにその再生可能
エネルギーの資源が存在しているわけです。しかし、そこは今回
努力目標にとどまっていて、義務とはなっていないんです。
ただし、ここが非常に難しいところでして、そこを義務にしたところで、じゃ、本当にできるのかという話になっちゃうわけです。現在の、今の体制を前提にして全ての
市町村にその
実施目標を義務としてやれというふうに言ったら、恐らく何が起こるかというと、全国の
市町村から猛烈な反発が出る。この話をする前に、私、ずっとこの間、地方自治の問題で各地の農村とか漁村に行って話を聞いてきたものですから、こんなことを提言したら、私が会ってきたあの人やこの人から相当反発を食うだろうなというのを感じました。
それで、それをやるためにはどうしたらいいかということでいうと、やっぱりこれ、実は地方自治体の取組を強化するための問題というのは、地方自治体の問題というよりも、やっぱり
中央政府の問題なんじゃないかと。要するに、地方自治体ができるような体制を十四
ページのところに書きましたけれども、やっぱり
中央政府がそういうの全体を、要するに
エネルギー政策ですとか町づくりですとか農林水産政策ですとか、そういうものを統合的に
考えられるような組織を
中央政府の
レベルでつくると。
しかも、その義務付けをするということは、千八百
地方公共団体が
計画を作るわけです。それをチェックする仕組みというのをちゃんとつくれるのかという問題があります。今の
環境省に、誠に申し訳ないですけど、
環境省のスタッフで到底できるとは思えない。だから、やっぱり、これは民間の力も借りて、そういうのがチェックできるような体制をその組織の中につくっていかなきゃいけない。そういうことができて初めて
地方公共団体が本気になってやり始めると思います。
それで、本当に今回の再生可能
エネルギーをこれだけ拡大するためには、
地方公共団体がその気になってやるというふうな形をつくり出さない限りは再生可能
エネルギーの飛躍的拡大は不可能だと思います。そのために、やっぱり
中央政府が組織をつくってチェックできるような体制を整えた上で、さらに
地方公共団体のやる気になったところへの支援策を
考えていくと。
そして、そのためには、やっぱり政策決定過程に
地方公共団体に参加してもらうんですよ。それで、自分たちが参加して決定した政策だから自分たちもやりましょうというふうな形になっていく。やっぱり、そういう仕組みをつくってあげないと、下手すると、単純にこの
法律で義務化だけすると、そんな勝手につくられたって俺たちは知らないよという話になりかねない。やっぱり、そうならないようにするためには、本当にそういう人たちに参加してもらって、かつ支援策を出すわけですから、今度、国民の税金をそこに投入する以上、やっぱり政策決定過程を透明化しないとなかなか納得が得られないと思います。そういうようなことを具体的に
考えていくというのが必要になると思います。
それで、
最後にちょっと一言だけ。メガソーラー問題というのがあります。これ、
弁護士として最近いろんなところで相談が来ています、私だけじゃなくてですね。極めて深刻な問題が起きている状況です。
それで、このメガソーラーの問題は、本当に再生可能
エネルギーを増やすために吸収源としても機能を果たしている
森林が破壊されていきかねないという極めて深刻な問題だと思っています。それと同時に、この問題を放置すると、先ほど来申し上げているように、再生可能
エネルギーを飛躍的に増やすために非常に重要な役割を果たす地方自治体が、要するに、再
エネというと我々の
環境を破壊するだけの何かとんでもないものだから、そういうものには余り関わりたくないという雰囲気が醸成されてしまうんですね。
やっぱりこの問題にちゃんと対処できる体制をつくっていかないと、一方でこの問題はきちんと対応しますと、だから各自治体一生懸命取り組んでくださいというふうな仕組みをつくっていかないと、やっぱり前に物事が進んでいかないというふうに思うんですね。やっぱりそこのところをきちっと
考えていかなきゃいけないだろうと思っています。
その後ろの方に、私がドイツだとかアメリカだとかフランスだとかそういうところで見てきたこともちょっと書いてありますので、もし時間あればまた見ていただければ有り難いというふうに思います。
私の話は以上で終わりにさせていただきます。